JP4626375B2 - 車両用操舵制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、操舵角速度に応じた操舵反力を付与する車両用操舵制御装置の技術分野に属する。
従来の車両用操舵制御装置では、操舵反力制御の制御量に、操舵角速度に所定のゲインを乗じた値を付加し、ハンドルの振動を抑制する粘性項として作用させることにより、ハンドルの復元性とハンドル中立位置のわかりやすさとの両立を図っている(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−108914号公報
しかしながら、上記従来技術にあっては、操舵角速度に応じて変化する粘性項の影響により、操舵方法、すなわち操舵角速度の違いで操舵角ヒステリシスが変化するため、ハンドル中立位置がわかりづらくなるという問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、操舵角速度にかかわらず、ハンドルの復元性とハンドル中立点のわかりやすさとの両立を図ることができる車両用操舵制御装置を提供することにある。
上述の目的を達成するため、本発明では、
ハンドルの操舵角速度に応じた操舵反力を付与する車両用操舵制御装置において、
前記操舵角速度に応じた前記操舵反力を、前記操舵角速度が所定値を超える領域では、前記操舵角速度にかかわらず一定値とし、この一定値を、前記ハンドルの操舵角が大きいほど大きな値に設定することを特徴とする。
本発明にあっては、操舵角速度に応じた操舵反力を、操舵角速度にかかわらず一定値とするため、操舵角速度の変化による操舵角ヒステリシスの変化が抑制され、ハンドル中立位置がわかりづらくなるのを抑制できる。また、旋回状態量が小さい場合には、操舵反力を小さくし、ハンドル中立位置のわかりやすさを維持しつつ、ハンドルの操舵角が大きい場合には、操舵反力を大きくすることで、ハンドル復元性の向上を図ることができる。よって、操舵角速度にかかわらず、ハンドルの復元性とハンドル中立点のわかりやすさとを両立できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1〜5に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の車両用操舵制御装置を示す全体システム図であり、実施例1の車両用操舵制御装置は、(1)操舵部、(2)バックアップ装置、(3)転舵部、(4)制御コントローラにより構成されている。
(1)操舵部
操舵部は、舵角センサー(操舵角検出手段)1、エンコーダ2、トルクセンサー3,3、反力モータ5を有して構成される。

舵角センサー1は、ハンドル6の操作角を検出する手段で、後述するケーブルコラム7とハンドル6とを結合するコラムシャフト8aに設けられている。つまり、舵角センサー1は、ハンドル6とトルクセンサー3,3との間に設置されており、トルクセンサー3,3の捩れによる角度変化の影響を受けることなく、操舵角を検出できるようになっている。この舵角センサー1には、アブソリュート型レゾルバ等を用いる。トルクセンサー3,3は二重系を成し、舵角センサー1と反力モータ5との間に設置されている。
反力モータ5は、ハンドル6に操舵反力を与えるアクチュエータであり、コラムシャフト8aを回転軸とする1ロータ・1ステータの電動モータで構成されており、そのケーシングが車体の適所に固定されている。この反力モータ5としては、ブラシレスモータが使用され、ブラシレスモータの使用に伴ってエンコーダ2とホールIC(不図示)とを追加する。その場合は、ホールICのみでもモータトルクを発生するモータ駆動は可能であるが、微細なトルク変動が発生し、操舵反力感が悪い。そこで、より繊細で滑らかな反力制御を行うため、コラムシャフト8aの軸上にエンコーダ2を装着し、モータ制御を行うことで、微細なトルク変動を低減し、操舵反力感の向上させている。なお、エンコーダ2の代わりにレゾルバを用いても良い。
(2)バックアップ装置
バックアップ装置は、ケーブルコラム7とクラッチ9により構成されている。
クラッチ9は、コラムシャフト8aとプーリシャフト8bとの間に介装され、実施例1では電磁クラッチを用いている。このクラッチ9は、締結されたとき、入力軸であるコラムシャフト8aと出力軸であるプーリシャフト8bとが連結され、ハンドル6に加えられた運転者の操舵力は、ステアリング機構15に機械的に伝達される。
ケーブルコラム7は、クラッチ9が締結されるバックアップモード時、操舵部と転舵部との間に介在する部材との干渉を避けて迂回しながらも、トルクを伝達するコラムシャフト機能を発揮する機械式バックアップ機構である。ケーブルコラム7は、2つのリールに端部がリールに固定された2本のインナーケーブルを互いに逆方向へ巻き付け、2つのリールケースに2本のインナーケーブルを内挿したアウターチューブの両端を固定することにより構成されている。
(3)転舵部
転舵部は、エンコーダ10、舵角センサー11、トルクセンサー(路面反力検出手段)12,12、転舵モータ14,14、ステアリング機構15、操向輪16,16とを有して構成される。
舵角センサー11とトルクセンサー12,12とは、ケーブルコラム7のプーリが一端に取り付けられ、他端部にピニオンギアが形成されたピニオンシャフト17の軸上に設けられている。舵角センサー11としては、シャフトの回転数を検出するアブソリュート式レゾルバ等が用いられる。また、トルクセンサー12,12としては、上記トルクセンサー3,3と同様に二重系を成し、インダクタンスの変化によりトルクを検出するものが用いられる。そして、ケーブルコラム7側に舵角センサー11を配置し、ステアリング機構15側にトルクセンサー12,12を配置することで、舵角センサー11による転舵角検出に際してトルクセンサー12,12の捩りによる角度変化の影響を受けないようにしている。
転舵モータ14,14は、ピニオンシャフト17の舵角センサー11とトルクセンサー12,12との中間位置に設けたウォームギアに噛み合うピニオンギアをモータ軸に設けることで、モータ駆動時、ピニオンシャフト17に転舵トルクを付与するように構成されている。この転舵モータ14,14は、1ロータ・2ステータ構造とすることにより二重系を成し、第1転舵モータ14と第2転舵モータ14を構成するブラシレスモータとしている。また、上記反力モータ5と同様に、ブラシレスモータの使用に伴ってエンコーダ10とホールIC(図外)とを追加する。
ステアリング機構15は、ピニオンシャフト17の回転により左右の操向輪16,16を転舵させる舵取り機構であって、ラックチューブ15a内に内挿され、ピニオンシャフト17のピニオンギアに噛み合うラックギアが形成されたラックシャフト15bと、この車両左右方向に延びるラックシャフト15bの両端部に結合されたタイロッド15c,15cと、一端がタイロッド15c,15cに結合され、他端が操向輪16,16に結合されたナックルアーム15d,15dと、を有して構成されている。
(4)制御コントローラ
制御コントローラ(操舵制御手段)は、2つの電源18,18により処理演算等を行う2つの制御コントローラ19,19により二重系が構成され、通信線20,20により双方向通信を行っている。
制御コントローラ19は、操舵部の舵角センサー1、エンコーダ2、トルクセンサー3,3、ホールICと、転舵部のエンコーダ10、舵角センサー11、トルクセンサー12,12、ホールIC、車速センサー21、ヨーレートセンサー22、横Gセンサー23からのセンサー信号が入力される。
制御コントローラ19は、各センサー信号に基づいて、反力モータ5および転舵モータ14の制御量を設定し、各モータ4,14を駆動制御する。また、制御コントローラ19は、システムが正常に作動している間は、クラッチ9を解放し、システムに異常が発生した場合には、クラッチ9を締結させ、ハンドル6と操向輪16,16を機械的に連結させる。
次に、作用を説明する。
[反力モータの制御量設定方法]
制御コントローラ19において、反力モータ5の制御量Thは、下記の式(1)に基づいて設定される。
Th=Kp×θ+Kd+Kdd×d2θ/dt2+Ky×y+Gf×F …(1)
ここで、θは操舵角、Kpは操舵角ゲイン、Kdは操舵角速度ゲイン、Kddは操舵角加速度ゲイン、Kyはヨーレートゲイン、Gfは路面反力ゲインである。
式(1)において、右辺第1項(Kp×θ)、第2項Kdおよび第3項(Kdd×d2θ/dt2)では、操舵角θに基づく操舵反力の制御量が設定され、右辺第4項(Ky×y)では、車両挙動を示すヨーレートyに基づく制御量が設定されるため、車両の挙動変化によりタイヤに作用する外力の影響を操舵反力トルクに反映させることができる。また、右辺第5項(Gf×F)では、路面反力を示すFに基づく制御量が設定されるため、路面からタイヤに作用する力の影響を操舵反力に影響させることができる。
次に、操舵角速度ゲインKdの設定方法について説明する。
図2は実施例1の操舵角速度ゲインKdの設定マップであり、操舵角速度ゲインKdは、立ち上がり操舵力が得られるように、操舵角速度dθ/dtがゼロから大きくなるほど大きくなるようにKdの傾きが設定されている。操舵角速度dθ/dtがKdの傾きで決まる所定の微小値を超える領域では、操舵角速度dθ/dtにかかわらず一定値Kgとなるように設定されている。
図3は、実施例1の操舵角θに応じた一定値Kgの設定マップであり、一定値Kgは、操舵角θが大きいほど大きくなるように設定されている。
[従来の操舵反力制御]
特開2000−108914号公報に記載の車両用操舵制御装置では、操舵角θおよびヨーレートyに基づき、反力モータの制御量Thを下記の式(2)を用いて設定している。
Th=Kp×θ+Kd×dθ/dt+Kdd×d2θ/dt2+Ky×y …(2)
式(2)において、右辺第1項(Kp×θ)、第2項(Kd×dθ/dt)および第3項(Kdd×d2θ/dt2)にかかる演算により、操舵角θに基づく操舵反力の制御量が設定される。第1項は操舵角θに応じた操舵反力を付与する項として作用し、第2項はハンドルの振動を抑制する粘性項として作用し、第3項は反力モータの慣性モーメントの影響を抑制し、ハンドルの切り始めの操舵感を調節する慣性項として作用する。
また、右辺第4項は、ヨーレートセンサーで検出されたヨーレートyに基づく項となっており、操舵角θに基づく第1〜第3項で設定される制御量に対し、車両の挙動状態としてのヨーレートyに基づく第4項で規定される制御量を加算することにより、反力モータに対する制御量Thを設定している。
このような処理を繰り返し実行することで、操舵角θの変化に関連した操舵反力を付与することができると共に、ヨーレートyが車両に作用した場合には、この際に操向輪に加わる外力に応じた操舵反力を作用させることができるため、車両の挙動変化を反映させた操舵反力の制御を実施することができる。
ところが、上記従来技術では、式(2)の第2項(Kd×dθ/dt)、すなわち、ハンドルの振動を抑制する粘性項の影響により、以下の問題が現れる。図4は、一定操舵周波数で、操舵角を大きくしたときの特性である。このように、
a. 操舵の方法(操舵角速度の違い)により操舵角ヒステリシスに変動が生じるため、ハンドル中立位置がわかりづらい。
b. 切り増し時と切り戻し時とで操舵力が変化するため、切り戻し時に違和感を与える。
c. 操舵角を切り増ししているにもかかわらず、途中で操舵力が軽くなり、運転者に違和感を与える。
という問題点を有している。
[操舵角に応じた操舵角速度ゲイン設定作用]
実施例1の車両用操舵制御装置では、操舵角速度ゲインKdを、操舵角速度dθ/dtがKdの傾きで決まる所定の微小値を超える領域で、操舵角速度dθ/dtにかかわらず常に一定値Kgとするため、操舵角速度dθ/dtの変化による操舵反力の変動を抑制できる。よって、切り増し途中で操舵反力が軽くなるのを防止でき、急な操舵を行った場合に操舵力の抜けが発生するのを防止できる。
また、操舵の方法(操舵角速度の違い)によらず、粘性項Kdの影響による操舵角ヒステリシスの変化が低減されるので、ハンドル中立位置がわかりやすくなる。さらに、切り戻し時の操舵力のばらつきが減少するため、ハンドル6を中立位置へ戻すときの違和感が低減される。
図6は、参考例として、従来技術において操舵角速度ゲインKdを一定値とした場合の、一定操舵速度(周波数)毎の操舵角−操舵力波形であり、図6に示すように、操舵角速度ゲインKdを一定値とすることで、操舵力の抜け防止、操舵角ヒステリシスの変動抑制、切り戻し時の操舵力のばらつき低減が達成される。
ところが、操舵角速度ゲインKdを一定値とするだけでは、ハンドル復元時の振動悪化を伴う。図7は、上記参考例において、所定操舵角で手放しした場合の、ハンドル戻り具合を示す図であり、図5に示す従来技術に対し、ハンドル中立位置付近でのオーバーシュートが大きくなっている。
これに対し、実施例1では、一定値Kgを操舵角θが大きいほど大きな値となるように設定するため、操舵力の抜け防止、操舵角ヒステリシスの変動抑制、切り戻し時の操舵力のばらつき低減等、操舵角速度dθ/dtに対する操舵角速度ゲインKdを一定値Kgとした場合の効果に加え、切り戻し時の操舵力を切り増し時よりも軽くでき、ハンドル復元時の振動を低減できるという効果が得られる(図8,9)。
すなわち、操舵角中央付近では、制御量Thの粘性項(Kd)が小さくなるので、ハンドル中立位置がわかりやすさを保ったまま、大舵角時は、粘性項が大きくなるので、ハンドル6の振動を低減できる。言い換えると操舵角θに応じた反力に対抗する粘性項の阻止力を、小舵角で小さく、大舵角で大きくなるようにしているため、戻し操舵が速くなり過ぎるのを抑制でき、収斂性を向上させることができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用操舵制御装置にあっては、以下に列挙する効果が得られる。
(1) ハンドル6の操舵角速度に応じた操舵反力を付与する車両用操舵制御装置において、車両の旋回状態量(操舵角θ)を検出する旋回状態量検出手段(舵角センサー1)と、操舵角速度dθ/dtに応じた操舵反力を、操舵角速度dθ/dtが所定値を超える領域では、操舵角速度dθ/dtにかかわらず一定値Kgとし、この一定値Kgを、旋回状態量(操舵角θ)が大きいほど大きな値に設定するコントローラ19と、を備える。よって、操舵角速度dθ/dtにかかわらず、ハンドル6の復元性とハンドル中立点のわかりやすさとを両立できる。
(2) 旋回状態量検出手段は、ハンドル6の操舵角θを検出する舵角センサー1であり、コントローラ19は、操舵角θが大きいほど、一定値Kgを大きな値に設定するため、車両の旋回状態量を容易かつ正確に検出できる。
実施例2の車両用操舵制御装置は、一定値Kgをハンドル6の切り増しと切り戻しとで異ならせる例である。なお、構成については、図1に示した実施例1の構成と同様であるため、説明を省略する。
次に、作用を説明する。
図10は、実施例2の操舵角θに応じた一定値Kgの設定マップである。図10において、曲線αはハンドル6の切り増し時の一定値Kgの特性、曲線βはハンドル6の切り戻し時の一定値Kgの特性であり、操舵角θに対し、切り増しα≦切り戻しβとなるように設定されている。
図11は、実施例2の制御コントローラ19で実行される一定値Kgの設定制御処理の流れを示すフローチャートで、まず、ステップS1では、各センサー信号を読み取り、ステップS2へ移行する。ステップS2では、ハンドル6が切り戻し状態であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS3へ移行し、NOの場合にはステップS4へ移行する。ステップS3では、一定値Kgを、操舵角θと図10の曲線αに基づいて設定し、リターンへ移行する。ステップS4では、一定値Kgを、操舵角θと図10の曲線βに基づいて設定し、リターンへ移行する。
[切り増し/切り戻しに応じた操舵角ゲイン設定作用]
実施例1では、図8に示したように、操舵力が全般的に重くなる傾向であったが、実施例2のように、ハンドル6の切り増し時の一定値Kgを、ハンドル6の切り戻し時の一定値Kgよりも小さな値に設定することで、実施例1の効果、すなわちハンドル6の復元性とハンドル中立位置のわかりやすさととの両立を確保しつつ、切り増し時の操舵力の重さを抑えることができる。
次に、効果を説明する。
実施例2の車両用操舵制御装置にあっては、実施例1の効果(1),(2)に加え、以下に列挙する効果が得られる。
(3) コントローラ19は、ハンドル6の切り増し時では、ハンドル6の切り戻し時よりも一定値Kgを小さな値に設定するため、ハンドル6の切り増し時のハンドル重さを低減できる。
実施例3の車両用操舵制御装置は、旋回状態量(操舵角θ)が小さいほど、切り増し時と切り戻し時の一定値Kgの差を小さく設定した例である。なお、構成については、図1に示した実施例1と同様であるため、説明を省略する。
次に、作用を説明する。
図12は、実施例3の操舵角θに応じた一定値Kgの設定マップであり、実施例3では、図10に示した実施例2に対し、曲線α,βは、操舵角θに対する値が中立付近(ハンドル中立位置付近)で同一の値となるような特性に設定されている点で異なる。
ハンドル6の切り増し時とハンドル6の切り戻し時とで操舵角速度ゲインKdを変えた場合、操舵角速度一定でハンドル中立位置をまたぐ操舵を行った場合、ハンドル中立位置でハンドル6が切り戻しから切り増しへと変化したとき、不連続な操舵反力が発生し、運転者に違和感やショックを与えてしまう。
これに対し、実施例3の車両用操舵制御装置では、図12の曲線α,βのハンドル中立位置付近の特性を同一に設定することで、ハンドル中立位置をまたぐ操舵を行った場合に、操舵反力が不連続となるのを防止できる。図13は、実施例3の一定操舵速度毎の操舵角−操舵力波形であり、ハンドル中立位置付近における不連続な操舵力変化が無く、ハンドル切り戻しから切り増しへと操舵力がスムーズに変化しているのがわかる。
次に、効果を説明する。
実施例3の車両用操舵制御装置にあっては、実施例1の効果(1),(2)、実施例2の効果(3)に加え、以下の効果が得られる。
(4) コントローラ19は、旋回状態量(操舵角θ)が小さいほど、切り増し時と切り戻し時の一定値Kgの差を小さく設定するため、ハンドル中立位置をまたぐ操舵を行ったとき、操舵反力が不連続となるのを防止できる。
実施例4の車両用操舵制御装置は、一定値Kgを路面反力が大きいほど大きな値に設定する例である。なお、構成については、図1に示した実施例1の構成と同様であるため、説明を省略する。
次に、作用を説明する。
図14は、実施例4の路面反力Fに応じた一定値Kgの設定マップであり、一定値Kgは、路面反力Fが大きいほど大きくなるように設定されている。また、実施例3と同様、一定値Kgは、ハンドル6の切り増し時(曲線α)では、ハンドル6の切り戻し時(曲線β)よりも小さな値となるように設定されている。
[路面反力に応じた操舵角速度ゲイン設定作用]
雪道など路面μの変化により、式(1)に示した制御量Thの路面反力項(Gf×F)により、路面からタイヤに作用する力が変化するが、これに伴い同一車速、操舵角において路面μの変化によってハンドル復元時の振動が変化する。例えば、乾燥路にて図2,3の特性を適正化すると、雪路では過減衰となる。すなわち、雪路では、路面反力項(Gf×F)が減少するので、粘性項Kdによる阻止力が過剰となり、ハンドル復元速度が遅くなってしまう。
これに対し、実施例4の車両用操舵制御装置では、路面反力Fが大きいほど操舵角速度ゲインKdを大きな値に設定することで、雪路等の路面反力Fが小さい路面を走行している場合でも、ハンドル復元性を確保できる。
次に、効果を説明する。
実施例4の車両用操舵制御装置にあっては、実施例1の効果(1)に加え、以下の効果が得られる。
(5) 路面反力Fを検出するトルクセンサー12,12を備え、コントローラ19は、路面反力Fが大きいほど、一定値Kgを大きな値に設定するため、路面状況に応じた減衰が得られる。
実施例5の車両用操舵制御装置は、一定値Kgを車両の横加速度(横G)が大きいほど大きな値に設定する例である。なお、構成については、図1に示した実施例1と同様であるため、説明を省略する。
次に、作用を説明する。
図15は、実施例5の横Gに応じた一定値Kgの設定マップであり、一定値Kgは、横Gが大きいほど大きくなるように設定されている。また、実施例3と同様、一定値Kgは、ハンドル6の切り増し時(曲線α)では、ハンドル6の切り戻し時(曲線β)よりも小さな値となるように設定されている。
[横Gに応じた操舵角速度ゲイン設定作用]
路面反力Fに応じた一定値Kgを可変する場合、操向輪16,16の微分転舵制御を行うと、路面反力Fの変動により一定値Kgも変動するため、その結果、操舵力も変動し、運転者に違和感を与える。操向輪16,16の補助舵角δfの演算については、基本的にハンドル6の操舵状態、または車速Vに応じて行うことができるが、操舵角θに加えて、例えば操舵角速度dθ/dtを操舵状態のパラメータとして使用する場合、それぞれの算出は下記の式(3)を用いた方法で行うことができる。
δf=Kf(V)×θ+Tf(V)×dθ/dt …(3)
ここで、Kf(V)は、それぞれ車速Vに応じて変化する比例定数、Tf(V)は、それぞれ車速Vに応じて変化する微分定数である。
式(3)を簡単に説明すると、それぞれ、操舵過渡期には微分項(Tf(V)×dθ/dt)を効かせてシャープさを得る一方、保舵期には比例項(Kf(V)×θ)を効かせて安定性を得る、といった操舵特性を実現する演算式である。
ここでは、式(3)を用いて操向輪16,16の舵角指令値の演算がなされるものとする。シャープさを得るには、微分項(Tf(V)×dθ/dt)を強く(大きく)する必要があるが、この場合、図16に示すように、オーバーシュート的な転舵となるため、これに伴い路面反力Fが変動する。
これに対し、実施例5の車両用操舵制御装置では、横Gが大きいほど操舵角速度ゲインKdを大きな値に設定することで、路面状況に応じたハンドル6の減衰特性を確保しつつ、微分転舵制御に伴う操舵力の変動を解消できる。
次に、効果を説明する。
実施例5の車両用操舵制御装置にあっては、実施例1の効果(1)に加え、以下の効果が得られる。
(6) 車両の横Gを検出する横Gセンサー23を備え、コントローラ19は、横Gが大きいほど、一定値Kgを大きな値に設定するため、路面状況に応じたハンドル6の減衰特性と、微分転舵制御に伴う操舵力変動の解消とを両立できる。
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1〜5に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例1〜5では、ハンドルと操向輪とが機械的に切り離されたステア・バイ・ワイヤシステムに適用した例を示したが、本発明は、電動パワーステアリングシステムの操舵アシスト力制御にも適用でき、実施例1〜3と同様の効果が得られる。
また、式(1)において、操舵角ゲインKp、操舵角速度ゲインKd、操舵角加速度ゲインKdd、ヨーレートゲインKyおよび路面反力ゲインGfを、車速により可変しても良い。
実施例4では、路面反力をトルクセンサーで検出しているが、サイドロッド軸力や転舵モータの出力から路面反力を検出しても良い。なお、路面反力に変えて、路面μを検出する構成としても良い。この場合、路面μが小さいほど、一定値Kgを小さな値に設定する。
また、実施例1では、一定値Kgを操舵角θに応じて設定したが、実施例4,5の路面反力F、横Gにも応じて設定できるように各配分を決め、一定値Kgを設定しても良い。
実施例1の車両用操舵制御装置を示す全体システム図である。 実施例1の操舵角速度ゲインKdの設定マップである。 実施例1の操舵角θに応じた一定値Kgの設定マップである。 従来技術における一定操舵角速度毎の操舵角−操舵力波形である。 従来技術における手放し時のハンドル戻り具合を示す図である。 参考例における一定操舵角速度毎の操舵角−操舵力波形である。 参考例における手放し時のハンドル戻り具合を示す図である。 実施例1における一定操舵角速度毎の操舵角−操舵力波形である。 実施例1における手放し時のハンドル戻り具合を示す図である。 実施例2の操舵角θに応じた一定値Kgの設定マップである。 実施例2の制御コントローラ19で実行される一定値Kgの設定制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例3の操舵角θに応じた一定値Kgの設定マップである。 実施例3の一定操舵速度毎の操舵角−操舵力波形である。 実施例4の路面反力Fに応じた一定値Kgの設定マップである。 実施例5の横Gに応じた一定値Kgの設定マップである。 路面反力Fに応じて操舵角速度ゲインKdを可変したとき、微分転舵制御で発生する転舵角δfのオーバーシュートを示す図である。
符号の説明
1 舵角センサー
2 エンコーダ
3 トルクセンサー
5 反力モータ
6 ハンドル
7 ケーブルコラム
8a コラムシャフト
8b プーリシャフト
9 クラッチ
10 エンコーダ
11 舵角センサー
12 トルクセンサー
14 転舵モータ
15 ステアリング機構
16 操向輪
17 ピニオンシャフト
18 電源
19 制御コントローラ
21 車速センサー
22 ヨーレートセンサー
23 横Gセンサー

Claims (6)

  1. ハンドルの操舵角速度に応じた操舵反力を付与する車両用操舵制御装置において、
    前記ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段と、
    前記操舵角速度に応じた前記操舵反力を、前記操舵角速度が所定値を超える領域では、前記操舵角速度にかかわらず一定値とし、この一定値を、前記操舵角が大きいほど大きな値に設定する操舵制御手段と、
    を備えることを特徴とする車両用操舵制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両用操舵制御装置において、
    前記操舵制御手段は、前記ハンドルの切り増し時では、前記ハンドルの切り戻し時よりも前記一定値を小さな値に設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。
  3. 請求項2に記載の車両用操舵制御装置において、
    前記操舵制御手段は、前記操舵角が小さいほど、切り増し時と切り戻し時の一定値の差を小さく設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用操舵制御装置において、
    路面反力を検出する路面反力検出手段を備え、
    前記操舵制御手段は、前記路面反力が大きいほど、前記一定値を大きな値に設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用操舵制御装置において、
    車両の横加速度を検出する横加速度検出手段を備え、
    前記操舵制御装置は、前記横加速度が大きいほど、前記一定値を大きな値に設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。
  6. ハンドルの操舵角速度に応じた操舵反力を付与する車両用操舵制御装置において、
    前記操舵角速度に応じた前記操舵反力を、前記操舵角速度が所定値を超える領域では、前記操舵角速度にかかわらず一定値とし、この一定値を、前記ハンドルの操舵角が大きいほど大きな値に設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。
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