JP4623252B2 - スイッチング電源装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変圧器に帰還巻線を設けこの帰還巻線に生じた電圧で出力電圧の安定化および過電流制御を行う自励式のスイッチング電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
帰還巻線を備えた自励式スイッチング電源装置は、帰還巻線に生じた電圧で自励発振を継続するため、IC等で構成される発振回路を別途付加する必要が無く、簡単な回路で構成できる。このため、小型、低価格にできることから、小容量スイッチング電源の分野で多用されている。
【0003】
帰還巻線を備えた自励式スイッチング電源装置については従来から種々の提案がなされており、その一例として、特開昭63−87170号公報や特開平11−122924号公報等に記載された技術が知られている。この種の自励式スイッチング電源装置は、1次巻線、2次巻線、帰還巻線および必要に応じて制御巻線を有するトランスと、前記1次巻線の電流を断続するスイッチング用トランジスタと、該スイッチング用トランジスタに対する前記帰還巻線からの正帰還信号を制御する制御用トランジスタと、前記帰還巻線または前記制御巻線の起電圧を所定時定数で充電するとともに、前記制御用トランジスタに対して制御電圧を与える時定数回路とを備えてなる自励発振型スイッチング電源装置である。
【0004】
更に、この自励発振型スイッチング電源装置は、前記時定数回路を構成する抵抗と並列にフォトトランジスタが接続されている。フォトトランジスタは、スイッチング電源装置の出力電圧に応じて発光量が制御されるフォトダイオードと光結合し、その発光量によりインピーダンスが制御される。前記時定数回路は、フォトトランジスタのインピーダンスが制御されることによりその時定数を調整し、前記制御用トランジスタのオンタイミングを調整する。前記制御用トランジスタがオンすることにより前記1次巻線の電流を断続するスイッチング用トランジスタはオフ制御される。
【0005】
スイッチング電源装置の出力電圧の安定化および過電流制御作用は、前記フォトトランジスタのインピーダンスが制御されるという上述の構成により行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記フォトトランジスタは大きな電位変動を生じる帰還巻線の一端に接続されており、電位が変動した瞬間に流れる異常電流により、時定数回路の充電が正確に行われないことがあった。
【0007】
一般的に、フォトトランジスタはそのベースとコレクタ間に浮遊容量を有しており、コレクタ電位が変動したとき、前記浮遊容量に起因する電流が流れる場合がある。
【0008】
図3は、フォトトランジスタのベース・コレクタ間の浮遊容量に起因する電流の説明図である。図3(a)に示すように、フォトトランジスタPTは、通常、そのベースが光LIGによって駆動されて、コレクタ・エミッタ間に流れる電流を制御する。ベース・コレクタ間には大きな浮遊容量Cを有している。このため、コレクタ電位が変動して、図3(b)に示すごとく、コレクタ・エミッタ間電圧VCEが急激に上昇すると、ベースが光駆動されていないときでも、図3(c)に示すように、その変動の瞬間にパルス状の電流IEがコレクタ・エミッタを介して流れてしまう。このパルス状の電流IEは、コレクタ電位の変動が矩形波に近いほど大きくなる。
【0009】
上述の自励発振型スイッチング電源装置において、フォトトランジスタのコレクタは前記帰還巻線の非安定電位側に接続されており、コレクタ電位は矩形波状に変動する。このため、前記帰還巻線に誘起電圧が発生したとき、前記フォトダイオードが発光していなくても、その瞬間に前記フォトトランジスタに電流が流れる場合があり、時定数回路の充電が正確に行われないという問題が生じる。
【0010】
この問題は、前記制御用トランジスタのオンタイミングのずれを引き起こし、出力電圧の安定度の低下や、過電流制御時の垂下点変動の原因となっていた。
【0011】
本発明の課題は、上述した問題を解決し、出力電圧の安定精度が高く、正確な過電流制御が行える自励式スイッチング電源装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため、本発明に係るスイッチング電源装置は、変圧器と、スイッチング素子と、出力整流平滑回路と、出力電圧検出回路と、制御回路とを含む。
【0013】
前記変圧器は、入力巻線と、出力巻線と、帰還巻線とを含む。
【0014】
前記スイッチング素子は、前記入力巻線を通して供給される直流電圧を断続して前記出力巻線と前記帰還巻線とに電圧を誘起する。
【0015】
前記帰還巻線は、前記スイッチング素子のオン期間に誘起した電圧で前記スイッチング素子を導通方向にバイアスする。
【0016】
前記出力整流平滑回路は、前記スイッチング素子のオフ期間に前記出力巻線に誘起した電圧を整流平滑して出力する。
【0017】
前記出力電圧検出回路は、フォトカプラを含み、出力電圧を検出して前記制御回路に前記出力電圧とは絶縁された出力電圧信号を供給する。
【0018】
前記制御回路は、時定数回路と、時定数制御用トランジスタと、スイッチング制御用トランジスタとを含む。
【0019】
前記時定数回路は、抵抗とコンデンサとの直列回路を含み、前記帰還巻線の両端間に接続される。
【0020】
前記時定数制御用トランジスタは、コレクタ・エミッタ間が前記抵抗と並列に接続され、そのベースに前記出力電圧信号が入力され、前記出力電圧信号に応じて前記時定数回路の時定数を制御する。
【0021】
前記スイッチング制御用トランジスタは、制御電極が前記抵抗と前記コンデンサとの接続点に接続され、主電極が前記スイッチング素子の制御入力側に接続される。また、前記フォトカプラは、フォトダイオードとフォトトランジスタとを含む。前記フォトダイオードは、出力電圧に応じて発光して前記フォトトランジスタを駆動する。前記フォトトランジスタは、コレクタが安定電位に接続され、エミッタが前記制御回路に接続される、もしくは、エミッタが安定電位に接続され、コレクタが安定電位、及び前記制御回路に接続される。ここで、後者の場合、前記時定数制御用トランジスタは、PNP型トランジスタであって、ベース・エミッタ間に抵抗が接続される。
【0022】
上述したスイッチング電源装置において、前記変圧器は、入力巻線と、出力巻線と、帰還巻線とを含む。前記スイッチング素子は、前記入力巻線を通して供給される直流電圧を断続する。このため、前記スイッチング素子がターンオンを開始すると、前記入力巻線に入力電流が流れ始め、前記出力巻線と前記帰還巻線とに電圧を誘起する。前記帰還巻線は、前記スイッチング素子のオン期間に誘起した電圧で前記スイッチング素子を導通方向にバイアスするから、前記スイッチング素子が完全に導通し、前記入力巻線に流れる電流が増加する。
【0023】
その後、前記入力巻線に流れる電流の増加が停止すると前記帰還巻線の誘起電圧が無くなり、前記スイッチング素子がオフとなって、前記入力巻線と、前記出力巻線と、前記帰還巻線とには、それまでとは逆方向のフライバック電圧が誘起する。フライバック電圧はフライバックエネルギーの消滅とともに低下し、リンギング電圧を発生させる。リンギング電圧は前記帰還巻線にも発生し、前記スイッチング素子がオンするきっかけを与える。以降この繰り返しで自励発振が継続する。
【0024】
前記出力整流平滑回路は、前記スイッチング素子のオフ期間に前記出力巻線に誘起した電圧を整流平滑して出力するから、継続的に直流電圧を出力することができる。
【0025】
前記出力電圧検出回路は、フォトカプラを含み、出力電圧を検出して前記制御回路に前記出力電圧とは絶縁された出力電圧信号を供給する。
【0026】
前記制御回路は、時定数回路と、時定数制御用トランジスタと、スイッチング制御用トランジスタとを含む。
【0027】
前記時定数回路は、抵抗とコンデンサとの直列回路を含み、前記帰還巻線の両端間に接続される。
【0028】
前記時定数制御用トランジスタは、コレクタ・エミッタ間が前記抵抗と並列に接続され、ベースに前記出力電圧信号が入力され、前記出力電圧信号に応じて前記時定数回路の時定数を制御する。
【0029】
前記スイッチング制御用トランジスタは、制御電極が前記抵抗と前記コンデンサとの接続点に接続され、主電極が前記スイッチング素子の制御入力側に接続される。
【0030】
上述の構成では、出力電圧が高いときは、前記時定数制御用トランジスタのインピーダンスが低くなるように制御され、前記時定数回路の時定数を小さくするから、前記時定数回路のコンデンサの充電が促進される。逆に、出力電圧が低いときは、前記時定数制御用トランジスタのインピーダンスが高くなるように制御されるから、前記時定数回路の時定数が大きくなり、前記時定数回路のコンデンサの充電を遅らせる。このため、前記スイッチング制御用トランジスタのオンタイミングは、出力電圧が高いと早まり、出力電圧が低いと遅れるように制御される。
【0031】
従って、出力電圧が高いと、前記スイッチング素子は、オン期間が短縮され、出力電圧が低下する方向に制御される。逆に、出力電圧が低いと、前記スイッチング素子は、オン期間が長くなり、出力電圧が上昇する方向に制御され、出力電圧が安定化する。
【0032】
また、過負荷や負荷の短絡によって過電流状態に至り、出力電圧が垂下したときも、前記時定数制御用トランジスタのインピーダンスが高くなるように制御され、前記時定数回路の時定数を大きくするが、この時定数で充電される前記コンデンサにより。前記スイッチング制御用トランジスタがオンするため、前記スイッチング素子のオン期間はある値に制限される。
【0033】
前記時定数回路の前記コンデンサは、前記スイッチング素子のオフ期間に帰還巻線に発生するフライバック電圧で逆方向に充電されるが、フライバック電圧が出力電圧と比例することから、その逆方向充電電位はわずかな量に留まる。このため、前記スイッチング素子がオンした後、すぐに前記スイッチング制御用トランジスタがオンするため、前記スイッチング素子のオン期間は更に短く制御される。このようにして出力電圧の垂下が促進され過電流制御が行われる。
【0034】
本発明の自励式スイッチング電源装置は、出力電圧検出回路にフォトカプラを含み、前記制御回路に出力電圧とは電気的に絶縁された出力電圧信号を供給
する。前記制御回路に含まれる前記時定数制御トランジスタはフォトトランジスタではない。このため、時定数回路のコンデンサの充電が正確に行われることになり、出力電圧の安定精度が高く、正確な過電流制御が行える利点がある。また、フォトトランジスタは、そのコレクタに入力側の安定電圧が供給されるので、コレクタ電位が一定に保たれ、ベース・コレクタ間の浮遊容量に起因するパルス状の異常電流が流れるのを防止できる。
【0035】
本発明の他の目的、構成および利点については、添付図面を参照して、更に詳しく説明する。図面は単なる例示に過ぎない。
【0036】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る自励式スイッチング電源装置の一実施例を示す電気回路図である。図示された自励式スイッチング電源装置は、電力変換用の変圧器1と、スイッチング素子2と、出力整流平滑回路3と、出力電圧検出回路4と、制御回路5とを含んでいる。
【0037】
変圧器1は、入力巻線11と、出力巻線12と、帰還巻線13とを含んでいる。入力巻線11は、スイッチング素子2の主電極と直列に接続され、直流入力端子Tinに接続される。
【0038】
直流入力端子Tinには直流電圧源Eが接続される。直流電圧源Eは、本発明の内部要素であっても、外部要素であってもよく、バッテリや、その他の直流電圧源、あるいは交流電圧を整流回路を介して直流に変換した電圧の何れでも利用できる。
【0039】
スイッチング素子2は、入力巻線11を通して供給される直流電圧Vinを断続して、出力巻線12と、帰還巻線13とに電圧を誘起させる。スイッチング素子2は、供給された直流電圧Vinを高周波でスイッチングできればよく、典型的には、バイポーラトランジスタや、電界効果トランジスタ等の制御電極を有する半導体素子が用いられる。本実施例はNPN型のバイポーラトランジスタを用いている。
【0040】
帰還巻線13は、特性向上回路6を介して、スイッチング素子2のベース・エミッタ間に接続され、スイッチング素子2のオン期間に誘起した電圧で、スイッチング素子2のベースを導通方向にバイアスする。特性向上回路6はスイッチング素子2のスイッチング特性を向上するための回路であり、コンデンサC6と抵抗R6とダイオードD6とを含んで構成される。スイッチング素子2のベースは、更に起動抵抗R7を介して入力ラインに接続される。
【0041】
出力整流平滑回路3は整流用ダイオードD3と平滑用コンデンサC3とを含んで構成される。整流用ダイオードD3と平滑用コンデンサC3とは直列接続されて、その両端が出力巻線12に接続される。平滑用コンデンサC3の両端は出力整流平滑回路3の出力端とされて、スイッチング電源装置の出力端子Toutに接続される。整流用ダイオードD3の向きは、出力巻線12に誘起するフライバック電圧に対して順方向となるように方向付けられている。
【0042】
この構成により、出力整流平滑回路3は、スイッチング素子2のオフ期間に出力巻線12に誘起する電圧を整流・平滑して出力する。整流用ダイオードD3の代わりにバイポーラトランジスタや電界効果トランジスタ等の制御電極を備えたスイッチング素子を用いれば、同期整流型の整流平滑回路を構成することができる。
【0043】
出力電圧検出回路4は、本実施例では、抵抗R41、R42、ツェナーダイオードZD4、フォトカプラPC4とを含み、出力整流平滑回路3の出力端、すなわち、スイッチング電源装置の出力端子Toutに接続される。フォトカプラPC4はフォトダイオードPD4とフォトトランジスタPT4とを含んでいる。フォトダイオードPD4はツェナーダイオードZD4と直列に接続されて、出力端子Tout間に接続される。フォトダイオードPD4とツェナーダイオードZD4には、それぞれ並列に抵抗R41、R42が接続されている。フォトトランジスタPT4はそのコレクタに入力側の安定電圧Vccが供給され、ベースがフォトダイオードPD4と光結合し、エミッタに出力電圧信号を生成する。フォトトランジスタPT4はそのコレクタに入力側の安定電圧Vccが供給されるので、コレクタ電位が一定に保たれ、ベース・コレクタ間の浮遊容量に起因するパルス状の異常電流が流れるのを防止できる。
【0044】
出力電圧検出回路4は、フォトカプラPC4を含み、出力電圧Voutを検出して、制御回路5に出力電圧Voutとは電気的に絶縁された出力電圧信号を供給できればよく、例えば、シャントレギュレータ等を用いた回路で構成してもよい。
【0045】
制御回路5は、時定数回路51と、時定数制御用トランジスタ53と、スイッチング制御用トランジスタ54とを含んで構成される。時定数回路51は、抵抗R51とコンデンサC5のそれぞれ一端が接続されて直列回路を構成し、その直列回路の両端が帰還巻線13の両端間に接続される。
【0046】
時定数制御用トランジスタ53はNPN型のバイポーラトランジスタで構成され、コレクタ・エミッタ間が時定数回路51の抵抗R51と並列になるように、そのコレクタが帰還巻線13の一端に接続され、エミッタが時定数回路51の抵抗R51の一端に接続される。D5は逆流防止用ダイオードである。時定数制御用トランジスタ53のベースは、抵抗R5を介してエミッタに接続されるとともに、抵抗R8、R45とを介してフォトトランジスタPT4のエミッタに接続される。C6はコンデンサ、R9は抵抗である。
【0047】
スイッチング制御用トランジスタ54はNPN型のバイポーラトランジスタで構成され、コレクタ・エミッタ間がスイッチング素子2のベース・エミッタ間に接続される。スイッチング制御用トランジスタ54のベースは、コンデンサC5の一端に接続される。
【0048】
このように構成された本実施例の自励式スイッチング電源装置において、入力端子Tinに直流入力電圧Vinが印加されると、起動抵抗R7を介してスイッチング素子2のベースにベース電流が供給される。スイッチング素子2がターンオンを開始すると、変圧器1の入力巻線11に入力電流が流れ始め、出力巻線12と帰還巻線13とに電圧を誘起する。
【0049】
出力巻線12に誘起した電圧は出力整流平滑回路3のダイオードD3により阻止されるから、出力巻線12には出力電流が流れず、エネルギーが変圧器1に蓄積される。帰還巻線13に誘起した電圧は、特性向上回路6を介してスイッチング素子2のベースにベース電流を供給し、導通方向にバイアスするから、スイッチング素子2は急激にオンとなる。入力巻線11に流れる入力電流は時間の経過とともに増加する。帰還巻線13に誘起した電圧は、同時に、時定数回路51の抵抗R51、および、時定数制御用トランジスタ53を介して、コンデンサC5を充電する。その後、コンデンサC5の電圧がスイッチング制御用トランジスタ54の閾値電圧まで充電されると、スイッチング制御用トランジスタ54がオンとなってスイッチング素子2の入力側を短絡する。この結果、スイッチング素子2がターンオフし、入力巻線11、出力巻線12、および帰還巻線13には、それまでとは逆方向のフライバック電圧が発生する。
【0050】
出力巻線12に発生したフライバック電圧は、出力整流平滑回路3により整流・平滑され、出力端子Toutに直流出力電圧Voutを出力する。帰還巻線13に発生したフライバック電圧は、時定数回路51のコンデンサC5を逆方向に充電する。その後、フライバック電圧は、フライバックエネルギーの消滅とともに低下し、リンギング電圧を発生させる。リンギング電圧は、帰還巻線13にも発生し、スイッチング素子2がターンオンを開始するきっかけを与える。以降この繰り返しで自励発振が継続し、出力端子Toutに継続的に直流出力電圧Voutを出力する。
【0051】
出力電圧検出回路4のフォトダイオードPD4は、出力電圧Voutに応じて発光量を変化させる。出力電圧検出回路4は、出力電圧Voutが高いとフォトダイオードPD4の発光量が増加し、フォトトランジスタPT4のインピーダンスが低下して高電位レベルの出力電圧信号を出力する。出力電圧が低いとフォトダイオードPD4の発光量が減少し、フォトトトランジスタPT4のインピーダンスが高くなり低電位レベルの出力電圧信号を出力する。出力電圧信号は制御回路5を構成する時定数制御用トランジスタ53のベースに供給される。
【0052】
このため、制御回路5において、出力電圧Voutが高いと、時定数制御用トランジスタ53のインピーダンスが低くなり、時定数回路51の時定数が小さく制御されるので、コンデンサC5は短時間で充電され、スイッチング制御用トランジスタ54のオンタイミングを早める。逆に、出力電圧Voutが低いと、時定数制御用トランジスタ53のインピーダンスが高くなり、時定数回路51の時定数が大きく制御されるので、コンデンサC5は緩やかに充電され、スイッチング制御用トランジスタ54のオンタイミングを遅らせる。
【0053】
従って、スイッチング素子2は、出力電圧Voutが高いと、オン期間が短縮されて、出力電圧Voutが低下する方向に制御され、逆に、出力電圧Voutが低いと、オン期間が長くなり、出力電圧Voutが上昇する方向に制御される。この制御作用により出力電圧を安定化する。
【0054】
また、過負荷や負荷の短絡によって過電流状態に至り、出力電圧Voutが垂下したときは、時定数制御用トランジスタ53のインピーダンスが無限大となる。コンデンサC5は、時定数回路51の時定数でゆっくり充電されるが、スイッチング制御用トランジスタ54の閾値まで充電されると、スイッチング制御用トランジスタ54をオンさせる。このため、スイッチング素子2のオン期間はある値で制限されてオフ期間に移行し、出力電圧Voutは上昇しない。スイッチング素子2のオフ期間において、コンデンサC5は帰還巻線13に誘起するフライバック電圧で逆方向に充電される。フライバック電圧は出力電圧Voutに比例しているので、コンデンサC5の逆方向充電量はわずかな量に留まる。従って、次のオン期間において、コンデンサC5は時定数回路51の時定数でゆっくり充電されるが、すぐにスイッチング制御用トランジスタ54の閾値まで充電され、スイッチング制御用トランジスタ54をオンさせる。このため、スイッチング素子2のオン期間は更に短く制御されて出力電圧の垂下が促進され過電流制御が行われる。
【0055】
本実施例の自励式スイッチング電源装置は、帰還巻線13に接続される時定数制御用トランジスタ53としてフォトトランジスタを用いず、バイポーラトランジスタを用いている。バイポーラトランジスタはフォトトランジスタと異なり、コレクタ・ベース間の浮遊容量が極めて小さい。このため、ベース電流が供給されていないときに、帰還巻線13に誘起する電圧でコレクタ電位が変動しても、浮遊容量に起因するパルス状の異常電流が流れるのを防止できる。また、出力電圧検出回路4にフォトトランジスタPT4を用いており、フォトトランジスタPT4はそのコレクタが安定電位に接続されているため、ベース・コレクタ間の浮遊容量に起因するパルス状の異常電流が流れるのを防止できる。
【0056】
従って、本実施例の自励式スイッチング電源装置は、時定数回路51の時定数制御が確実に行え、コンデンサC5の充電が正確に行われるので、出力電圧の安定精度が高く、正確な過電流制御を行うことができる。
【0057】
図2は、本発明に係る自励式スイッチング電源装置の更に別の実施例を示す電気回路図である。図において、図1に図示した構成部分と同一の構成部分については、同一の参照符号を付してある。
【0058】
図示された自励式スイッチング電源装置は、電力変換用の変圧器1と、スイッチング素子2と、出力整流平滑回路3と、出力電圧検出回路4と、制御回路5とを含んでいる。電力変換用の変圧器1と、スイッチング素子2と、出力整流平滑回路3とは、図1に図示した実施例と同様の構成である。
【0059】
出力電圧検出回路4は、抵抗R41、R42、ツェナーダイオードZD4、フォトカプラPC4を含み、出力電圧信号を出力電圧Voutとは電気的に絶縁した構成としてある。フォトカプラPC4はフォトダイオードPD4とフォトトランジスタPT4とを含んでいる。フォトダイオードPD4は、図1に図示した実施例と同様に、ツェナーダイオードZD4と直列に接続されて、出力端子Tout間に接続される。フォトダイオードPD4とツェナーダイオードZD4には、それぞれ並列に、抵抗R41、R42が接続されている。フォトトランジスタPT4は、そのベースがフォトダイオードPD4と光結合しているが、図1に図示した実施例と異なり、そのエミッタが入力側の安定電位に接続される。コレクタには入力側の安定電圧Vccが抵抗R10を介して供給され、コレクタに出力電圧信号を生成する。
【0060】
制御回路5は、時定数回路51と、時定数制御用トランジスタ53と、スイッチング制御用トランジスタ54とを含んで構成される。時定数回路51は、抵抗R51とコンデンサC5のそれぞれ一端が接続されて直列回路を構成し、その直列回路の両端が帰還巻線13の両端間に接続される。
【0061】
時定数制御用トランジスタ53は、図1に図示した実施例と異なり、PNP型のバイポーラトランジスタで構成され、コレクタ・エミッタ間が時定数回路51の抵抗R51と並列になるように、エミッタが帰還巻線13の一端に接続され、コレクタが時定数回路51の抵抗R51の一端に接続される。時定数制御用トランジスタ53のベースは、抵抗R5を介してエミッタに接続されるとともに、抵抗R8を介して、フォトトランジスタPT4のコレクタに接続される。本実施例のフォトトランジスタPT4のコレクタは、抵抗R10を介して安定電位に接続されており、大きく変動することがないため、ベース・コレクタ間の浮遊容量に起因する異常電流を低減できる。更に、時定数制御用トランジスタ53のベース・エミッタ間の抵抗R5の抵抗値を適切に設定することで、前記異常電流に起因する時定数制御用トランジスタ53への悪影響を防ぐことができる。
【0062】
スイッチング制御用トランジスタ54はNPN型のバイポーラトランジスタで構成され、そのコレクタ・エミッタ間がスイッチング素子2のベース・エミッタ間に接続される。スイッチング制御用トランジスタ54のベースは、コンデンサC5の一端に接続される。
【0063】
このように構成された本実施例の自励式スイッチング電源装置は、図1に図示した実施例と同様、入力端子Tinに直流電圧Vinが印加されると、自励発振が継続し、出力端子Toutに継続的に直流出力電圧Voutを出力する。
【0064】
出力電圧検出回路4のフォトダイオードPD4は、図1に図示した実施例と同様に動作し、出力電圧Voutが高いと、フォトトランジスタPT4のインピーダンスを低くして、時定数制御用トランジスタ53のベースを深くバイアスする。出力電圧Voutが低いと、フォトトトランジスタPT4のインピーダンスを高くして、時定数制御用トランジスタ53のベースを浅くバイアスする。
【0065】
このため、制御回路5において、出力電圧Voutが高いと、時定数制御用トランジスタ53のインピーダンスが低くなり、時定数回路51の時定数が小さく制御されるので、コンデンサC5は短時間で充電され、スイッチング制御用トランジスタ53のオンタイミングを早める。逆に、出力電圧Voutが低いと、時定数制御用トランジスタ53のインピーダンスが高くなり、時定数回路51の時定数が大きく制御されるので、コンデンサC5はゆっくり充電され、スイッチング制御用トランジスタ53のオンタイミングを遅らせる。
【0066】
従って、スイッチング素子2は、図1に図示した実施例と同様に制御され出力電圧を安定化する。また、過負荷や負荷の短絡によって過電流状態に至り出力電圧Voutが垂下したときも同様に、過電流制御が行われる。
【0067】
本実施例の自励式スイッチング電源装置は、帰還巻線13に接続される時定数制御用トランジスタ53として、フォトトランジスタを用いず、バイポーラトランジスタを用いている。バイポーラトランジスタはフォトトランジスタと異なり、コレクタ・ベース間の浮遊容量が極めて小さい。このため、ベース電流が供給されていないときに、帰還巻線13に誘起する電圧でコレクタ電位が変動しても、浮遊容量に起因するパルス状の異常電流が流れるのを防止できる。
【0068】
また、出力電圧検出回路4にフォトトランジスタPT4を用いているが、フォトトランジスタPT4のコレクタ電位が大きく変動することはないので、ベース・コレクタ間の浮遊容量に起因する異常電流を低減できる。
【0069】
更に、時定数制御用トランジスタ53のベース・エミッタ間の抵抗R5の抵抗値を適切に設定することで、前記異常電流に起因する時定数制御用トランジスタ53への悪影響を防ぐことができる。
【0070】
従って、本実施例の自励式スイッチング電源装置は、時定数回路51の時定数制御が確実に行えるので、出力電圧の安定精度が高く、正確な過電流制御を行うことができる。
【0071】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、その基本的技術思想および教示にもとづき、種々の変形例を想到できることは自明である。例えば、実施例では時定数回路51の抵抗R51を充電・放電の両方に用いているが、抵抗R51と並列に別の抵抗を接続し、それぞれの抵抗と直列に、互いに逆向きのダイオードを接続することにより、充電時定数回路と放電時定数回路とを別々に構成することも可能である。
【0072】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、出力電圧の安定精度が高く、正確な過電流制御を実行し得る自励式スイッチング電源装置を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る自励式スイッチング電源装置の一実施例を示す電気回路図である。
【図2】 本発明に係る自励式スイッチング電源装置の別の実施例を示す電気回路図である。
【図3】 フォトトランジスタのベース・コレクタ間の浮遊容量に起因する電流の説明図である。
【符号の説明】
1 変圧器
11 入力巻線
12 出力巻線
13 帰還巻線
2 スイッチング素子
3 出力整流平滑回路
4 出力電圧検出回路
5 制御回路
51 時定数回路
53 時定数制御用トランジスタ
54 スイッチング制御用トランジスタ
PC4 フォトカプラ
R51 抵抗
C5 コンデンサ
Vin 直流電圧

Claims (2)

  1. 変圧器と、スイッチング素子と、出力整流平滑回路と、出力電圧検出回路と、制御回路とを含み、自励発振動作をするスイッチング電源装置であって、
    前記変圧器は、入力巻線と、出力巻線と、帰還巻線とを含み、
    前記スイッチング素子は、前記入力巻線を通して供給される直流電圧を断続して前記出力巻線と前記帰還巻線とに電圧を誘起し、
    前記帰還巻線は、前記スイッチング素子の制御電極に接続され、前記スイッチング素子のオン期間に誘起した電圧で前記スイッチング素子を導通方向にバイアスし、
    前記出力整流平滑回路は、前記スイッチング素子のオフ期間に前記出力巻線に誘起した電圧を整流・平滑して出力し、
    前記出力電圧検出回路は、フォトカプラを含み、出力電圧を検出して前記制御回路に、前記出力電圧とは絶縁された出力電圧信号を供給し、
    前記制御回路は、時定数回路と、時定数制御用トランジスタと、スイッチング制御用トランジスタとを含み、
    前記時定数回路は、抵抗とコンデンサとの直列回路を含み、前記帰還巻線の両端間に接続され、
    前記時定数制御用トランジスタは、コレクタ・エミッタ間が前記抵抗と並列に接続され、ベースに前記出力電圧信号が入力され、前記出力電圧信号に応じて前記時定数回路の時定数を制御し、
    前記スイッチング制御用トランジスタは、制御電極が前記抵抗と前記コンデンサとの接続点に接続され、主電極が前記スイッチング素子の制御入力側に接続され
    前記フォトカプラは、フォトダイオードとフォトトランジスタとを含み、
    前記フォトダイオードは、出力電圧に応じて発光して前記フォトトランジスタを駆動し、
    前記フォトトランジスタは、コレクタが安定電位に接続され、エミッタが前記制御回路に接続される、
    スイッチング電源装置。
  2. 変圧器と、スイッチング素子と、出力整流平滑回路と、出力電圧検出回路と、制御回路とを含み、自励発振動作をするスイッチング電源装置であって、
    前記変圧器は、入力巻線と、出力巻線と、帰還巻線とを含み、
    前記スイッチング素子は、前記入力巻線を通して供給される直流電圧を断続して前記出力巻線と前記帰還巻線とに電圧を誘起し、
    前記帰還巻線は、前記スイッチング素子の制御電極に接続され、前記スイッチング素子のオン期間に誘起した電圧で前記スイッチング素子を導通方向にバイアスし、
    前記出力整流平滑回路は、前記スイッチング素子のオフ期間に前記出力巻線に誘起した電圧を整流・平滑して出力し、
    前記出力電圧検出回路は、フォトカプラを含み、出力電圧を検出して前記制御回路に、前記出力電圧とは絶縁された出力電圧信号を供給し、
    前記制御回路は、時定数回路と、時定数制御用トランジスタと、スイッチング制御用トランジスタとを含み、
    前記時定数回路は、抵抗とコンデンサとの直列回路を含み、前記帰還巻線の両端間に接続され、
    前記時定数制御用トランジスタは、PNP型トランジスタであり、コレクタ・エミッタ間が前記抵抗と並列に接続されるとともに、ベース・エミッタ間に他の抵抗が接続され、ベースに前記出力電圧信号が入力され、前記出力電圧信号に応じて前記時定数回路の時定数を制御し、
    前記スイッチング制御用トランジスタは、制御電極が前記抵抗と前記コンデンサとの接続点に接続され、主電極が前記スイッチング素子の制御入力側に接続され、
    前記フォトカプラは、フォトダイオードとフォトトランジスタとを含み、
    前記フォトダイオードは、出力電圧に応じて発光して前記フォトトランジスタを駆動し、
    前記フォトトランジスタは、エミッタが安定電位に接続され、コレクタが安定電位、及び前記制御回路に接続される、
    スイッチング電源装置。
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