JP4622434B2 - 異方性色素膜用色素、異方性色素膜用色素組成物、異方性色素膜および偏光素子 - Google Patents

異方性色素膜用色素、異方性色素膜用色素組成物、異方性色素膜および偏光素子 Download PDF

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Description

本発明は、特に、調光素子や液晶素子、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の表示素子に具備される偏光板等に有用な高い二色性を示す異方性色素膜、該異方性色素膜を用いた偏光素子、および該異方性色素膜を得るための異方性色素膜用色素組成物に関する。また、本発明は、異方性色素膜に有用な新規なアゾ色素に関する。
LCD(液晶表示ディスプレイ)では、表示における旋光性や複屈折性を制御するために直線偏光板や円偏光板が用いられている。OLEDにおいても、外光の反射防止のために円偏光板が使用されている。
従来、これらの偏光板には、ヨウ素や二色性を有する有機色素を、ポリビニルアルコール等の高分子材料に溶解または吸着させ、その膜を一方向にフィルム状に延伸して、二色性色素を配向させることにより得られる異方性色素膜が広く使用されてきた(例えば、特許文献1〜3)。しかしながら、このようにして製造される従来の異方性色素膜では、用いる色素や高分子材料によっては耐熱性や耐光性が十分でない;液晶装置製造時における異方性色素膜の貼り合わせの歩留りが悪い;等の問題があった。また、ヨウ素は昇華性が大きいために偏光板として使用した場合、その耐熱性や耐光性が十分ではなかった。また、その消光色が深い青になり、全可視スペクトル領域にわたって理想的な無彩色偏光板とは言えなかった。
そのため、ガラスや透明フィルムなどの基板上に、二色性色素を含む溶液を塗布する湿式成膜法にて二色性色素を含む膜を形成し、分子間相互作用などを利用して二色性色素を配向させることにより異方性色素膜を製造する方法(例えば、特許文献4〜9および非特許文献1〜3参照)が検討されている。
偏光素子としての用途においては、より高い偏光性能を得るために、二色性の高い異方性色素膜が求められているが、これら従来の異方性色素膜は、二色性に劣り、このため、偏光性能に優れた偏光素子を得ることができなかった。
従来、異方性色素膜には様々な色素が使用されており、色素の選択も重要な要素の1つである。例えば、特許文献1には、下記構造式で表される二色性色素を使用する旨、記載されている。
Figure 0004622434
また、特許文献2には、下記構造式で表される二色性色素を使用する旨、記載されている。
Figure 0004622434
しかし、上記特許文献1および特許文献2に記載される化合物はいずれも二色性が不十分であり、特に特許文献1記載の化合物は各種溶剤への溶解性も低いことから、湿式成膜法にて製造される異方性色素膜の材料として十分であるとは言えない。
さらに、特許文献6にも、下記構造式で表される二色性色素を使用する旨、記載されている。
Figure 0004622434
しかし、上記化合物はいずれもジスアゾ化合物であり、湿式成膜法にて製造される異方性色素膜の材料としては、二色性や溶剤への溶解性が不十分であるという問題があった。
特許文献9には、湿式成膜法にて製造される異方性色素膜を作製する旨、記載されており、使用できる二色性色素の一例として、下記構造式で表されるものが記載されている。
Figure 0004622434
しかし、上記化合物はジスアゾ化合物であり、またトリアジン環上にハロゲン原子が結合しているため分解しやすいという問題があった。
特開平3−12606号公報 特開平1−161202号公報 特開平1−252904号公報 米国特許第2,400,877号明細書 特表平8−511109号公報 特表2002−528758号公報 特開2002−180052号公報 特開2002−338838号公報 WO02/099480号公報 Dreyer,J.F.,Phys.And Colloid Chem.,1948,52,808.,"The Fixing of Molecular Orientation" Dreyer,J.F.,Journal de Physique,1969,4,114.,"Light Polarization From Films of Lyotropic Nematic Liquid Crystals" 入江正浩監修 「機能性色素の応用」 株式会社シーエムシー出版、1996年4月15日発行、96ページから106ページ
本発明は、二色性の高い異方性色素膜と、この異方性色素膜を用いてなる耐熱性、耐光性、偏光性能に優れた偏光素子を提供することを課題とする。また、耐熱性や耐光性を有する異方性色素膜として機能する異方性色素膜を実現し得る、新規な二色性色素および異方性色素膜用色素組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、異方性色素膜の結晶構造パラメータを特定することにより、二色性の高い異方性色素膜を確実に実現することができることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の異方性色素膜は、遊離酸の形が下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるアゾ色素を含有し、分子積層に由来した周期が3.445Å以下であり、その積層長が105Å以上であることを特徴とする。
Figure 0004622434
(式中、A 、B 、C およびD は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香族炭化水素環を表し、
Ar は水素原子、または任意の置換基を表し、
およびY はそれぞれ独立に、ハロゲン原子以外の任意の置換基を表す。
kは1または2を表し、mは1または2を表す。なお、kが2の場合、1分子中に含まれる複数のB は、同一であっても異なっていても良い。)
Figure 0004622434
(式中、D およびE は、置換基を有していても良いフェニレン基、または置換基を有していても良いナフチレン基を表し、
はカルボキシ基、スルホ基、またはリン酸基を表し、
はハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜3のアルコキシ基、カルボキシル基、或いはスルホ基を表し、
およびQ はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基、或いは置換基を有していても良いフェニル基を表し、
pは0または1を表し、tは1または2を表す。)
また、本発明者らは、新規な二色性アゾ色素としては、記一般式(1)で表される、トリアジニル基を有し、1分子中にアゾ結合を3個以上有する、特定構造の二色性アゾ色素が、基材との高い親和性を有することを見出した。また、このような色素を含有する組成物を用い、湿式成膜法にて膜形成することにより、二色性色素分子が高次の分子配向状態を示すこと、即ち、高い異方性を有する色素膜を形成することが可能であるということを見出した。
更にまた、本発明者らは、記一般式(2)で表されるアゾ色素を用いることにより、湿式成膜法で形成される異方性色素膜において無彩色で、高い二色性、高い分子配向度を示すことができることを見出した。
発明の偏光素子は、上記本発明の異方性色素膜を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、二色性の高い異方性色素膜を提供することができる。そして、この二色性の高い異方性色素膜を用いて、耐熱性、耐光性に優れ、しかも偏光性能に優れた偏光素子を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
本発明でいう異方性色素膜とは、色素膜の厚み方向および任意の直交する面内2方向の立体座標系における合計3方向から選ばれる任意の2方向における電磁気学的性質に異方性を有する色素膜である。電磁気学的性質としては、吸収、屈折などの光学的性質、抵抗、容量などの電気的性質などが挙げられる。吸収、屈折などの光学的異方性を有する膜としては、例えば、直線偏光膜、円偏光膜、位相差膜、抵抗率異方性膜などがある。すなわち、本発明の異方性色素膜は、偏光膜、位相差膜あるいは抵抗率異方性膜に使用できる。特に、本発明の異方性色素膜は、可視光領域に吸収を持つため、偏光膜に有用である。
本発明の異方性色素膜は、分子積層に由来した周期が3.445Å以下であり、その積層長が105Å以上のものである。
分子積層周期が3.445Å以下で、分子積層長が105Å以上である本発明の異方性色素膜が、高い二色性を示す理由は、以下の通りであると推測される。
色素分子は、一般に芳香環により形成された平面分子構造を持ち、そのπ−π相互作用等の強い分子間相互作用により、分子平面が重なり合った積層構造をもつ結晶となることが知られている。異方性色素膜の場合には、下記の非特許文献4、5にあるように、X線回折測定により、他の回折ピークとともに、色素分子積層構造の積層周期に由来した回折ピークが観察される。
非特許文献4:M.Ofuji et.al.,Jpn.J.Appl.Phys.2002,41,5467“Grazing Incidence In-Plane X-Ray Diffraction Study on Oriented Copper Phthalocyanine Thin Films”
非特許文献5:M.Ofuji et.al., Jpn. J.Appl.Phys.2003,42,7520“Growth Process of Vacuum Deposited Copper Phthalocyanine Thin Films on Rubbing-Treated Substrates”
このX線回折ピーク解析より得られる分子積層周期は、結晶内での色素分子の積層、配列状態を反映した値を示す。特に、色素分子平面の積層軸に対する傾きが、分子積層周期に重要と推定される。
以下に、異方性色素膜の分子積層周期および積層長と異方性色素膜の二色性について、図1〜3を参照して説明する。
図1、図2、図3(a),(b)は、いずれも異方性色素膜の膜面上方から見た異方性色素膜の二色性色素分子の配列を示す模式図であり、図1〜3において、破線は分子積層軸を示し、黒太線分は平面分子構造の色素分子を示す。図1,2において、dは分子積層周期、dmは積層分子間の最短距離、Lは積層長を示す。また、異方性色素膜の平面内の吸収方向をx軸、偏光方向をy軸にとったとき、kはxy平面に投影した色素の持つ吸収係数、kとkは吸収係数のx軸とy軸方向成分となる。
図1は、分子積層軸に対して色素分子平面が垂直から傾いた状態で分子配列している異方性色素膜、図2は分子積層軸に対して分子平面が垂直な状態で分子配列した異方性色素膜をそれぞれ示す。ここで、π−π相互作用などの分子間相互作用により、分子平面同士が取ることができる最近接間隔dmは、ほぼ一定と想定される。このとき、図1に示されるように、分子積層軸に対して分子平面が垂直から大きく傾くと、それに応じて分子積層周期dはd>dmとなり、より大きな値となる。また、図2のように、分子積層軸に対して分子平面が垂直な場合には、d=dmとなり、分子積層周期dの値は小さくなることが予想される。
一方、異方性色素膜の二色比は、吸収方向と偏光方向の吸収係数の比で決まる。従って、異方性色素膜の平面内の吸収方向をx軸、偏光方向をy軸とすると、二色比を高める目的には、用いられる二色性色素の持つ吸光係数のx軸成分kができるだけ大きくなるように、数多く揃えた分子配列となることが好ましい。
一般に、二色性色素の吸収軸は、ほぼ分子積層軸方向と一致すること(非特許文献3:入江正浩監修 「機能性色素の応用」 株式会社シーエムシー出版、1996年4月15日発行、96ページ)から、分子平面内に存在している。ここで、xy平面に投影した二色性色素の吸収係数をkとすると、分子積層軸に対して分子平面が垂直な場合(図2)はk=kとなり、分子平面が傾いた場合(図1)のk(<k)よりも大きくなる。従って、分子平面が積層軸に対する傾きが垂直により近い、つまり分子積層周期dがより小さい異方性色素膜が吸収係数kの値がより大きくなるために、二色性を高める観点から好ましいと考えられる。
また、X線回折ピーク解析から、周期的に並んだ分子の積層距離である積層長(図1、2におけるL)も同時に見積もられる。このとき、積層長に含まれ、同方向に配列した色素分子の個数は、L/dとなる。前述の通り、高二色比を得るには、最適な配列に数多く分子を揃える必要があることから、積層分子個数L/dが多い、つまり積層長Lがより大きい異方性色素膜が好ましいと考えられる。
以上の考察から、本発明者らは、パラメータとして、3.445Å以下の分子積層周期を持ち、その積層長が105Å以上である部分を用いることで、高い二色比を発現できる分子配列を持った異方性色素膜が得られることを見出した。
一方、従来の異方性色素膜は、通常、該パラメータを外れるものが使用されてきた。即ち、従来の異方性色素膜では、二色性色素分子が二色比発現に最適な方向に数多く配列していないために、高い二色比を得ることができなかったものと推測される。
上記パラメータで規定される本発明の異方性色素膜は、図3で示される分子積層軸の配向度も高二色性の発現に重要となる。つまり、より多くの分子を同じ方向に配列させるには、分子積層軸の配向度も高いことが望ましい。このため、本発明の異方性色素膜は、後述するX線回折測定により見積もられる配向度が85%以上であることが好ましい。
本発明の異方性色素膜の分子積層周期は、好ましくは3.300Å以上、さらに好ましくは3.380以上、最も好ましくは3.400Å以上であり、3.445Å以下、好ましくは3.440Å以下、さらに好ましくは3.435Å以下である。異方性色素膜の分子積層周期がこの上限を超えると、分子積層内での分子の傾きが大きくなり、二色比が低下する恐れがあり好ましくない。また、下限を下回ると分子同士が近接しすぎて、分子積層を阻害する恐れがあり好ましくない。
また、本発明の異方性色素膜の分子積層長は、105Å以上、好ましくは115Å以上、さらに好ましくは140Å以上であり、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下、最も好ましくは100nm以下である。異方性色素膜の分子積層長がこの上限を超えると、結晶構造のひずみが生じ易くなり、分子積層軸の配向度が低下する恐れがあり好ましくない。また、下限を下回ると、同方向に配列した分子数が少ないために、高い二色比が発現されないおそれがあり、好ましくない。
異方性色素膜の上記パラメータ、即ち、分子積層周期とその積層長の値は、薄膜評価用X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000PC」インプレーン光学系)或いはこれと同等の装置で測定されるX線回折プロファイルから得られる(例えば、非特許文献4、5参照)。
本発明の異方性色素膜では、これらは例えば次の手順(1)〜(3)により求められる。
(1)まず、異方性色素膜について、その吸収軸に垂直な回折面および偏光軸に垂直な回折面をそれぞれ観察する2方向からインプレーン測定を実施する。本発明の異方性色素膜では、分子積層周期に由来した強度の強い回折ピークが、CuCαに対して回折角(2θχ)約24.7°から約27°の間に、2方向からのインプレーン測定のうちいずれか一方向からの測定においてのみ通常観測される。
(2)分子積層由来のピークが観測された方向のX線回折プロファイルを、2θχが20°から30°までの範囲について、次の数式f(2θχ)で最適当てはめを行う。
f(2θχ)=B(2θχ)+Cexp[−((2θχ−2θ)/2σ
+Cexp[−((2θχ−2θ)/2σ
即ち、本発明の異方性色素膜では、周期的に積層した結晶部分とランダムに積層した非結晶部分が共存しているとして、2つのガウス関数で記述される上式を用いる。
但し、CとCはその係数、2θと2θはピーク位置、σとσは標準偏差を表している。
また、B(2θχ)はベースラインを表し、ここでは、分子積層由来の回折ピークが観測されない方向のX線回折プロファイルをベースラインとする。但し、この回折ピークに別の回折面からの回折ピークがある場合は、ピークを取り除き補間してベースラインとする。
(3)本発明で求めるパラメータは、分子が周期的に積層した結晶部分の構造パラメータであることから、σ<σのとき、回折ピークのピーク位置は2θ、ピークの半値幅はβ=2σ√(2ln2)となる。ピーク位置2θから分子積層周期dが次のBragg条件より見積もられる。
d=λ/(2sinθ
但し、λはX線波長(=1.54Å)である。
また、積層長Lは半値幅β(=β×π/180 rad)から次のScherrer式より見積もられる。
L=Kλ/(βcosθ
但し、KはScherrer定数であり、ここではK=1の値を用いる。
異方性色素膜の分子積層軸の配向度も上記装置による測定から、例えば次のようにして得られる(例えば、非特許文献4、5参照)。即ち、インプレーン測定で観測された上記回折ピークに関して、360°にわたってインプレーンロッキングスキャン測定を行うと、本発明の異方性色素膜では分子積層軸の配向性に応じたピークが2つ通常観測される。そのロッキングプロファイルを次の数式g(φ)で最適当てはめを行う。
g(φ)=C+Cexp[−((φ−φ)/2σ
+Cexp[−((φ−φ)/2σ
但し、C、C、Cは係数、φは回転角、φとφはピーク位置、σとσは標準偏差を表す。
本発明における分子積層軸の配向度P(単位:%)は次式で定義する。
P=(360−2σ−2σ)/360×100
本発明の異方性色素膜は、このようにして定義される分子積層軸の配向度が好ましくは85%以上のものである。かかる配向度はさらに好ましくは88%以上、最も好ましくは90%以上、特に好ましくは94%以上である。この配向度が上記下限を下回ると、同じ方向に配列した分子数が少ないために、高い二色比が発現されないおそれがあり、好ましくない。
これらのパラメータを満たす本発明の異方性色素膜は高い二色比を示すが、その二色比は11以上が好ましく、さらに好ましくは13以上、最も好ましくは15以上である。
本発明の異方性色素膜の膜厚は、通常乾燥後の膜厚で、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは50nm以上で、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。異方性色素膜の膜厚が30μmを超えると、膜内で色素分子の均一な配向を得ることが難しくなるおそれがあり、10nmを下回ると均一な膜厚とすることが難しくなるおそれがあるため、好ましくない。
分子積層に由来した周期が3.445Å以下であり、その積層長が105Å以上である異方性色素膜は、異方性色素膜に含まれる色素や添加剤の組合せを選ぶことにより、得ることが出来る。もちろん、異方性色素膜の製法も、該異方性色素膜を得るための重要な要素の1つであり、該異方性色素膜を得るためには、湿式成膜法を使用することが好ましい。
本発明の異方性色素膜に用いられる色素としては、例えばアゾ系色素、スチルベン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、縮合多環系色素(ペリレン系、オキサジン系)等が挙げられる。これら色素の中でも、本発明の異方性色素膜を得るために最適な色素としては、異方性色素膜中で高い分子配列をとりうるアゾ系色素が特に好ましい。後述の一般式(1)あるいは(2)で表される色素が特に好ましい。
アゾ系色素とは、アゾ基を少なくとも1個以上持つ色素をいう。その一分子中のアゾ基の数は、色調および製造面の観点から、1以上が好ましく、さらに好ましくは2以上で、6以下が好ましく、さらに好ましくは4以下である。
かかる色素は、後述する湿式成膜法に供するためには水溶性であることが好ましい。従って、水溶性を与える置換基として、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基等の酸性基、アミノ酸基等の塩基性基、水酸基等の可溶性基を有する色素が好ましく、水溶性の高さから、特にスルホ基、カルボキシル基を有することが好ましい。
かかる色素の分子量は、塩型をとらない遊離の状態で通常200以上、特に350以上で、通常5000以下、特に3500以下であることが、色調および製造面の観点から好ましい。
このような色素の具体例としては、前述の特許文献4(米国特許第2,400,877号)、非特許文献1(Dreyer,J.F.,Phys.And Colloid Chem.,1948,52,808.,“The Fixing of Molecular Orientation”)、非特許文献2(Dreyer,J.F.,Journal de Physique,1969,4,114.,“Light Polarization From Films of Lyotropic Nematic Liquid Crystals”)および非特許文献6(J.Lyndon,“Chromonics”in“Handbook of Liquid Crystals Vol.2B:Low Molecular Weight Liquid Crystals II”,D.Demus,J.Goodby,G.W.Gray,H.W.Spiessm,V.Villed.,Willey-VCH,P.981-1007,(1998))に記載の色素が挙げられる。
また、特に、本発明の異方性色素膜は、遊離酸の形が下記一般式(1)で表される、新規なアゾ色素を含有することが好ましい。
Figure 0004622434
(式中、A、B、CおよびDは、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香族炭化水素環を表し、
Arは水素原子、または任意の置換基を表し、
およびYはそれぞれ独立に、ハロゲン原子以外の任意の置換基を表す。
kは1または2を表し、mは1または2を表す。なお、kが2の場合、1分子中に含まれる複数のBは、同一であっても異なっていても良い。)
このアゾ色素は、二色性を示し、色調、溶剤に対する溶解性に優れ、溶液中での安定性の高い色素である。従って、様々な用途に使用することができるが、異方性色素膜に使用すると特に高い効果を得る事ができる。即ち、この色素を用いた本発明の異方性色素膜は、高い二色性を示すと同時に、従来のヨウ素系偏光膜に比べて高い耐熱性、耐光性を有する。
特に、前述の通り、溶剤に対する溶解性、溶液中での安定性が高いため、該色素を含有する異方性色素膜用色素組成物の保存安定性が高い。従って、本発明のアゾ色素は、後述の湿式成膜法による異方性色素膜の形成に適用することが好ましい。湿式成膜法によると、ガラスなどの高耐熱性基材上に異方性色素膜を形成することが可能であり、高耐熱性の偏光素子を得ることができる点から、液晶プロジェクタや車載用表示パネル等、高耐熱性が求められる用途に使用できる点が好ましい。
上記一般式(1)において、A〜Dの芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜20程度の芳香族炭化水素環が挙げられ、好ましくはそれぞれ独立にベンゼン環またはナフタレン環である。このうち、Dについては、Dがベンゼン環の場合、1,4−フェニレン基であることがより好ましく、ナフタレン環の場合には、2,6−ナフチレン基であることが好ましい。また、1−ナフトール環または2−ナフトール環由来の2価の基であることがより好ましく、色目が深い色素が得られる点から1−ナフトール環由来の基が特に好ましい。
〜Dの芳香族炭化水素環が有しうる置換基としては、色調を調節するために導入される電子吸引性基や電子供与性基から適宜選択された基や、溶剤への溶解性を高めるために導入される親水性基などが挙げられる。具体的には、後述する一般式(1−a)におけるA〜Cが有しうる置換基として挙げた基等が挙げられる。
Arの任意の置換基としては、色調を調節するために導入される電子吸引性基や電子供与性基から適宜選択された基や、溶剤への溶解性を高めるために導入される親水性基などが挙げられる。具体的には、後述する一般式(1−a)におけるArとして例示された基などが挙げられる。
およびYのハロゲン原子以外の任意の置換基としては、溶剤への溶解性を調節するために導入される親水性基や疎水性基などが挙げられる。具体的には、後述する一般式(1−a)におけるXおよびYとして例示された基などが挙げられる。
前記一般式(1)で表される本発明のアゾ色素は、好ましくは、遊離酸の形が下記一般式(1−a)で表されるものである。
Figure 0004622434
(式中、Aは、置換基を有していても良いフェニル基、または置換基を有していても良いナフチル基を表し、
およびCはそれぞれ独立に、置換基を有していても良いフェニレン基、または置換基を有していても良いナフチレン基を表し、
Arは水素原子、または置換基を有していても良い炭素数1〜5のアルキル基を表し、
およびYはそれぞれ独立に、−NR基、−OR基、または−SR基を表す。
但し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数2〜18のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数3〜15の炭化水素環基、または置換基を有していても良い5または6員環の、単環または2〜3縮合環からなる複素環基を表すか、あるいはRとRとが互いに結合し、窒素原子を含む5または6員環を形成する。RおよびRが結合してなる環は、置換基を有していても良い。
kは1または2を表し、mは1または2を表す。なお、kが2の場合、1分子中に含まれる複数のBは、同一であっても異なっていても良い。)
上記一般式(1−a)において、Aは置換基を有していても良いフェニル基、または置換基を有していても良いナフチル基を表す。
がフェニル基の場合、フェニル基の置換基としてはスルホ基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアルコキシ基などが挙げられる。
ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基およびアルコキシ基として、具体的には、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であるハロゲン原子;
アミノ基;
N−メチルアミノ基、N、N−ジメチルアミノ基、N、N−ジエチルアミノ基などの、炭素数1〜18(好ましくは1〜8)のアルキルアミノ基;
N−フェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基などの、炭素数6〜18(好ましくは6〜10)のアリールアミノ基;
アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などの、炭素数2〜18(好ましくは2〜11)のアシルアミノ基;
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ドデシル基などの、炭素数1〜18(好ましくは1〜12)のアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ドデシルオキシ基などの、炭素数1〜18(好ましくは1〜12)のアルコキシ基、
などが挙げられる。
上記した各種アミノ基、アルキル基およびアルコキシ基は、置換基を有していても良く、該置換基としては、水酸基、またはアルコキシ基などが挙げられる。
が置換基を有していても良いフェニル基の場合、該フェニル基が有する置換基としては、溶剤に対する溶解性および色調の観点から、スルホ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いアルキル基、および置換基を有していても良いアルコキシ基がより好ましく、スルホ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、およびアルキル基が特に好ましい。Aがフェニル基の場合、フェニル基はこれらの置換基から選ばれる1〜3個の置換基を有していることが好ましい。
がナフチル基の場合、ナフチル基の置換基として好ましくはスルホ基、カルボキシル基、水酸基等が挙げられ、このナフチル基は、これらの置換基から選ばれる1〜3個の置換基を有していることが好ましい。特に好ましい置換基としてはスルホ基が挙げられる。
,Cはそれぞれ独立に、置換基を有していても良いフェニレン基、または置換基を有していても良いナフチレン基を表すが、フェニレン基は1,4−フェニレン基が好ましく、ナフチレン基は1,4−ナフチレン基が好ましい。
およびCがフェニレン基の場合、有しうる置換基としてはスルホ基、カルボキシル基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアミノ基が好ましい。
アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基の具体例としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等の、炭素数1〜4のアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の、炭素数1〜4のアルコキシ基;
アミノ基;
N−メチルアミノ基、N、N−ジメチルアミノ基、N、N−ジエチルアミノ基などの、炭素数1〜8のアルキルアミノ基;
N−フェニルアミノ基などのアリールアミノ基;
アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などの、炭素数2〜8のアシルアミノ基、
などが挙げられる。
上記したアルキル基、アルコキシ基、および各種アミノ基は置換基を有していても良く、該置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
およびCが置換基を有していても良いフェニレン基の場合、フェニレン基の置換基としては、上記の中でもスルホ基、カルボキシル基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアシルアミノ基が好ましく、疎水結合性(分子間の相互作用)および色調の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が特に好ましい。
およびCがフェニレン基の場合、上記置換基に代表される、1〜3個の置換基を有していることが好ましく、1〜2個の置換基を有していることがより好ましい。
およびCがナフチレン基である場合、ナフチレン基の置換基としては水酸基、スルホ基、または置換基を有していても良いアルコキシ基等が挙げられる。
アルコキシ基として、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。該アルコキシ基が有しうる置換基としては、水酸基、ヒドロキシアルキル基、またはアルコキシ基が好ましい。
,Cのナフチレン基は、これらの置換基から選ばれる1〜6個の置換基を有していることが好ましく、1〜3個有していることが、より好ましい。B,Cのナフチレン基が有する置換基としては、特にスルホ基または置換基を有していても良いアルコキシ基が好ましい。
Arは水素原子または置換基を有していても良い炭素数1〜5のアルキル基であるが、好ましくは、水素原子または置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、エチル基等、或いはこれらが更に置換されてなる基など)である。特に好ましくは、水素原子である。なお、該アルキル基が有しうる置換基としては、水酸基、スルホ基、カルボキシル基などが挙げられる。
およびYはそれぞれ独立に、−NR基、−OR基、または−SR基を表し、ここでR,R,RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアルケニル基、置換基を有していても良い炭化水素環基(アリール基またはアリサイクリック基)、または置換基を有していても良い複素環基を表す。
具体的には、
水素原子;
メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等の、炭素数1〜18(好ましくは1〜12)のアルキル基;
ビニル基、アリル基、などの、炭素数2〜18(好ましくは2〜8)のアルケニル基;
フェニル基、ナフチル基などの、炭素数6〜18(好ましくは6〜12)のアリール基;
シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基等の、炭素数6〜18(好ましくは6〜10)のアリサイクリック基;
ピリジル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基等の、5または6員環の、単環または2〜3縮合環からなる、芳香族または非芳香族のヘテロサイクリック基、
などを表す。
上記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリサイクリック基、およびヘテロサイクリック基が有しうる置換基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、アリール基などが挙げられ、より好ましくは、水酸基、カルボキシル基、またはスルホ基である。
およびRとしては、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、または置換基を有していても良いアリール基がより好ましく、置換基を有していても良いアリール基が特に好ましい。
また、RおよびRのうち、一方が水素原子であり、他方が水素原子以外である場合が好ましい。
およびRとしては、水素原子または置換基を有していても良いアルキル基が好ましい。
およびYは、いずれも−NR基である(但しR,Rは、同一であっても異なっていても良い)場合か、あるいは一方が−NR基であり、他方が−OR基である場合が、より好ましい。
なお、XおよびYは互いに結合し、置換基を有していても良い含窒素環を形成していても良く、RとRとが互いに結合して窒素原子を含む5または6員環を形成する場合、この環としては、モルホリン環、ピペラジン環、ピペリジン環が好ましい。
kは1または2を表し、mは1または2を表す。なお、kが2の場合、1分子中に含まれる複数のBは、同一であっても異なっていても良い。
前記一般式(1)で表される本発明のアゾ色素は、より好ましくは、遊離酸の形が下記一般式(1−b)で表されるものである。
Figure 0004622434
(式中、Aは置換基を有していても良いフェニル基、または置換基を有していても良いナフチル基を表し、
およびCはそれぞれ独立に、置換基を有していても良いフェニレン基、または置換基を有していても良いナフチレン基を表し、
Arは水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基を表し、
およびYはそれぞれ独立に、−NR基、−OR基、または−SR基を表す。
但し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数2〜18のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数3〜15の炭化水素環基、または置換基を有していても良い5または6員環の、単環または2〜3縮合環からなる複素環基を表すか、あるいはRとRとが互いに結合し、窒素原子を含む5または6員環を形成する。なお、RおよびRが結合してなる環は、置換基を有していても良い。
kは1または2を表し、nは0または1を表す。なお、kが2の場合、1分子中に含まれる複数のBは、同一であっても異なっていても良い。)
上記一般式(1−b)における、A、B、C、Ar、X、Yの好ましい置換基の例としては、それぞれ、前記一般式(1−a)におけるA、B、C、Ar、X、Yで好ましい置換基として例示したものと同様である。
前記一般式(1)で表される本発明のアゾ色素は、例えば前記一般式(1),(1−a),(1−b)において、k=1の場合はトリスアゾ色素であり、k=2の場合はテトラキスアゾ色素である。合成しやすさ、工業的生産における原料の入手しやすさの点からは、k=1、即ちトリスアゾ色素であることが好ましく、後述するように異方性色素膜に使用した場合に、分子間相互作用がより強く働くと考えられる点からは、k=2、即ちテトラキスアゾ色素であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される本発明のアゾ色素は、遊離酸の形が、前記一般式(1),(1−a),(1−b)のいずれで表される場合であっても、遊離酸の形で分子量が通常500以上、好ましくは550以上であり、また通常5000以下、好ましくは4000以下、さらに好ましくは3500以下であることが好ましい。分子量が上記上限値を超えると、発色性の低下という問題が生じるおそれがあり、また上記下限値を下回ると、吸収スペクトルピークが短波長化する(色調が浅くなる)おそれがある。
前記一般式(1)で表される本発明のアゾ色素の具体例としては、遊離酸の形で例えば以下の(I−1)から(I−31)に示す構造の色素が挙げられるが、これに限定されるものではない。
Figure 0004622434
Figure 0004622434
Figure 0004622434
Figure 0004622434
Figure 0004622434
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Figure 0004622434
Figure 0004622434
Figure 0004622434
Figure 0004622434
Figure 0004622434
Figure 0004622434
前記一般式(1)で表されるアゾ色素は、それ自体周知の方法に従って製造することができる。例えば(I−1)で示される色素は、下記(A)〜(E)の工程で製造することができる。
(A)4−アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)と2−メトキシ−5−メチルアニリンとから常法[例えば、細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日、技報堂発行)第396頁第409頁参照]に従って、ジアゾ化、カップリング工程を経てモノアゾ化合物を製造する。
(B)得られたモノアゾ化合物を同様に、常法によりジアゾ化し、2−メトキシ−5−メチルアニリンとカップリング反応反応を行って、ジスアゾ化合物を製造する。
(C)6−アミノ−1−ナフトール−3−スルホン酸(J酸)を水にpH6として溶かし、0〜5℃に冷却する。このものに塩化シアヌルを加え、温度0〜5℃を保持して、2時間反応を行い、反応を完結させる。次いで室温にて、3−アミノベンゼンスルホン酸(メタニル酸)水溶液を加えて、pH6〜7で数時間縮合反応を行う。
(D)工程(B)で得た、ジスアゾ化合物に水とN−メチル−2−ピロリドンを加えて、25重量%苛性ソーダ水溶液でpHを9として溶かし、0〜5℃に冷却するなどして、常法によりジアゾ化する。このものと、工程(C)で得た縮合反応物とカップリング反応を行ってトリスアゾ化合物を製造する。反応終了後、3−アミノ−1,2−プロパンジオールを添加し、60℃に昇温し、25重量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、強アルカリ性(pH9〜9.5程度)とし、加水分解反応を行い、反応を完結させる。
(E)冷却後、塩化ナトリウムで塩析することにより目的の色素No.(I−1)が得られる。
また、特に、本発明の異方性色素膜は、遊離酸の形が下記一般式(2)で表される、湿式成膜法により形成される異方性色素膜用のアゾ色素を含有することが好ましい。
Figure 0004622434
(式中、DおよびEは、置換基を有していても良いフェニレン基、または置換基を有していても良いナフチレン基を表し、
はカルボキシ基、スルホ基、またはリン酸基を表し、
はハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜3のアルコキシ基、カルボキシル基、或いはスルホ基を表し、
およびQはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基、或いは置換基を有していても良いフェニル基を表し、
pは0または1を表し、tは1または2を表す。)
ここで、上記一般式(2)で表されるトリスアゾ色素について説明する。
該トリスアゾ色素は水溶性の黒色の二色性色素である。該トリスアゾ色素は、分子長軸の両端の特定位置に他の分子に強い引力を与える置換基を配した分子構造、およびD,Eに疎水性を有するため、互いの分子同士が疎水性による相互作用(疎水性相互作用)を有し、分子同士が会合状態を作りやすくなっている。
即ち、(i)それぞれの色素分子が分子長軸の両端に他の分子に強い引力を与える置換基を有しているため、互いに引き合い会合状態を作りやすくなっていると考えられる。更には、(ii)それぞれの分子が、D,Eに疎水性を有しているため、水溶液中で疎水性を有する部分同士が引き合い、会合状態を作りやすくなっていると考えられる。また、(iii)分子長軸の両端に他の分子に強い引力を与える置換基が特定位置にあるため(3位に置換基を有するフェニル基および7位にアミノ基を有するナフチル基)、造塩の際、前記3位の置換基と7位のアミノ基が、その位置関係から良く接近できるため、強く引き合うなどして、安定的に会合状態を作りやすくなっていると考えられる。
会合状態を作り易い前記(i)〜(iii)の3点の構成により、上記一般式(2)で表されるアゾ色素は高いリオトロピック液晶状態を形成しているものと考えられる。
また、前記一般式(2)で表されるアゾ色素は、黒色であるということだけでなく、この色素および色素を含有した組成物は、湿式成膜法特有のプロセス、即ち、基材表面に塗布などの積層プロセスを経ることによっても、高次の分子配向状態を示すことができる。それは、即ち、高い異方性を有する無彩色の色素膜を形成することが可能であることを意味する。
これまで、一種類の二色性色素を用いて無彩色な異方性色素膜を得ようとすると、色素分子に導入された置換基の立体反発により分子配向が乱れやすく、高い二色性を得ることが困難であった。そのため、従来の湿式成膜法による異方性色素膜は、複数種の色素の組合せにより無彩色な異方性色素膜を得ていることが多くあった。しかしながら、前記一般式(2)で表されるアゾ色素は、上記のように特定の色素構造を有するため、高いリオトロピック液晶状態を形成し、高次の分子配向状態を示すことができ、かつ1種類の色素でも黒色を示すことが可能である。従って、前記一般式(2)で表されるアゾ色素を含有した組成物は、高い二色性を示す異方性色素膜を提供することができる。
前記一般式(2)において、DおよびEは、置換基を有していても良いフェニレン基または置換基を有していても良いナフチレン基を表す。フェニレン基としては1,4−フェニレン基が好ましく、ナフチレン基としては1,4−ナフチレン基が、疎水性相互作用を示すために好ましい。このフェニレン基の置換基としては、置換基を有していても良い、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等)、置換基を有していても良い、炭素数1〜4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等)、置換基を有していても良い、炭素数2〜7のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)等の極性の小さい基がリオトロピック液晶を形成する上での疎水性相互作用による会合性向上の点で好ましい。
ナフチレン基の置換基としては、置換基を有していても良い、炭素数1〜4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)等の極性の小さい基がリオトロピック液晶を形成する上での疎水性相互作用による会合性向上の点で好ましい。前記アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基の有し得る置換基としては、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
としては、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基が上記のように強い引力を与える置換基であることから好ましく、広いpH範囲で引力を与えるという点で特に好ましくはスルホ基が挙げられる。
は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有していても良いアミノ基(好ましくはアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基)、置換基を有していても良い、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、置換基を有していても良い、炭素数1〜3のアルコキシ基、カルボキシル基およびスルホ基を表し、特に好ましくは水素原子、水酸基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。前記アルキル基、アルコキシ基の有し得る置換基としては、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
およびQはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、置換基を有していても良いフェニル基であり、特に好ましくはQあるいはQのいずれかが水素原子であることが挙げられる。前記アルキル基およびフェニル基の有し得る置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。
pは0または1を表し、tは1または2の数を表す。
前記一般式(2)で表されるアゾ色素は、色素構造中、分子長軸の両端置換基および置換位置(3位に置換基を有するフェニル基および7位にアミノ基を有するナフチル基)を特定し、かつ疎水性相互作用を有するD,Eを特定することで上記詳説のように会合性が向上し、高いリオトロピック液晶状態を形成することができる。従って、前記一般式(2)で表されるアゾ色素は、湿式成膜法により形成される異方性色素膜用の色素として適しており、またその二色比も高い。従って、該色素を用いた色素組成物を異方性色素膜に使用すれば、二色性の高い異方性色素膜を得ることが出来る。
前記一般式(2)で表されるアゾ色素は黒色を示すものであるが、中でも刺激純度0%〜12%の色素であることが好ましい。即ち、刺激純度0%〜12%の色素を使用すれば、特に、異なる分子を混合することによる分子配向の乱れがなく、高い二色性を示すことができる。
ここで、刺激純度とは、色度図より標準の光の色度座標Nと求めた色素の色度座標Cを直線で結び、その延長のスペクトル軌跡との交点に対応する波長を主波長とし、各点の比率からを算出する。色度座標Cは、水に色素を加え色素水溶液とし、この水溶液の可視光透過率を分光光度計で測定し、CIE1964 XYZ表色系、D65標準光源下での色度xyを算出して得ることができる。
本発明でいう色素の刺激純度とは、色素を水に加えて色素水溶液として測定、算出されたものをいう。
また、その算出法としては、日本色彩学会編「新編 色彩科学ハンドブック」財団法人東京大学出版会、1989年11月25日(第2回改訂)発行、104ページから105ページなどに記載の公知の方法により求めることができる。
前記一般式(2)で表されるアゾ色素は、刺激純度0%以上12%以下の色素であれば好ましいが、刺激純度は0%以上、更に好ましくは9%以下、最も好ましくは6%以下である。
また、前記一般式(2)で表される色素の分子量は、遊離酸の形で、通常595以上、通常1500以下、好ましくは1200以下である。
前記一般式(2)で表される色素の具体例としては、(II−1)〜(II−15)に示す構造の色素が挙げられるが、これらに限定されるものでない。
Figure 0004622434
Figure 0004622434
Figure 0004622434
前記一般式(2)で表されるアゾ色素は、それ自体周知の方法に従って製造することができる。例えば(II−1)で示される色素は、下記(a)〜(c)の工程で製造することができる。
(a)3−アミノベンゼンスルホン酸(メタニル酸)と2−メトキシアニリン(o−アニシジン)とから常法(例えば、細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日、技報堂発行)第396頁第409頁参照)に従って、ジアゾ化、カップリング工程を経てモノアゾ化合物を製造する。
(b)得られたジスアゾ化合物を同様に、常法によりジアゾ化し、3−メチルアニリン(m−トルイジン)とカップリング反応を行って、ジスアゾ化合物を製造する。
(c)得られたジスアゾ化合物を同様に、常法によりジアゾ化し、7−アミノ−1−ナフトールー3,6−ジスルホン酸(RR酸)とカップリング反応を行い、塩化ナトリウムで塩析することにより、目的の色素No.(II−1)が得られる。
特に、前示構造式(II−1)で示される色素は、水溶液中でリオトロピック液晶を形成するため、高い二色性を示す異方性色素膜を作製可能であり、特に湿式成膜法に適した有用な色素である。
本発明の異方性色素膜においては、前述の例示色素の中でも、(I−1)、(I−31)、(II−3)および(II−15)に示される色素が含有されていることが好ましい。
本発明で使用される色素のうち、酸性基を有する色素は、その遊離酸型のまま使用しても良く、酸性基の一部が塩型を取っているものであっても良い。また、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していても良い。また、製造時に塩型で得られた場合はそのまま使用しても良いし、所望の塩型に変換しても良い。塩型の交換方法としては、公知の方法を任意に用いることができ、例えば以下の方法が挙げられる。
1)塩型で得られた色素の水溶液に塩酸等の強酸を添加し、色素を遊離酸の形で酸析せしめた後、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウムや水酸化ナトリウム)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
2)塩型で得られたの色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウムや塩化ナトリウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
3)塩型で得られた色素の水溶液を、強酸性イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸の形で酸析せしめた後、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウムや水酸化ナトリウム)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
4)予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウムや水酸化ナトリウム)で処理した強酸性イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
酸性基が遊離酸型をとるか、塩型をとるかは、色素のpKaと色素水溶液のpHに依存する。
上記の塩型の例としては、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、炭素数1〜16のアルキル基もしくは炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基で置換されていても良いアンモニウムの塩、または有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシ基で置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン等が挙げられる。これらの塩型である場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していても良い。
本発明において、上述したような色素は単独で使用することができるが、これらの2種以上を併用してもよく、また、配向を低下させない程度に上記例示色素以外の色素を配合して用いることもでき、これにより各種の色相を有する異方性色素膜を製造することができる。特に、偏光膜に使用する際には深い色調の膜が好ましく、色相として、380〜780nmの可視波長領域において中性色(ニュートラルブラック。例えばL***表色系において、√{(a*+(b*}≦5を満たすものを表す。)を示す配合が表示素子、特にカラー表示素子用偏光子として好ましい。
他の色素を配合する場合の配合用色素の例としては、C.I.Direct Yellow 12、C.I.Direct Yellow 34、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Direct
Yellow 132、C.I.Acid Yellow 25、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 72、C.I.Direct Orange 79、C.I.Acid Orange 28、C.I.Direct Red 39、C.I.Direct Red 79、C.I.Direct
Red 81、C.I.Direct Red 83、C.I.Direct Red 89、C.I.Acid Red 37、C.I.Direct Violet 9、C.I.Direct Violet 35、C.I.Direct Violet 48、C.I.Direct Violet 57、C.I.Direct Blue 1、C.I.Direct Blue 67、C.I.Direct Blue 83、C.I.Direct Blue 90、C.I.Direct Green 42、C.I.Direct Green 51、C.I.Direct Green 59等が挙げられる。
本発明の異方性色素膜は、色素を少なくとも含む、異方性色素膜用色素組成物を用いて、後述の乾式成膜法もしくは湿式成膜法により作製されることが好ましい。本発明の異方性色素膜用色素組成物は、上記の色素を単独で使用できるが、これら同士、あるいは配向を低下させない程度に他の色素と混合して用いることができる。これにより、各種の色相を有する異方性色素膜を製造することができる。
本発明の異方性色素膜用色素組成物は、通常、溶剤が含まれており、通常、色素が溶剤に溶解もしくは分散されたものである。異方性色素膜用色素組成物に含有される色素としては、溶剤への溶解性等の観点からも前記一般式(1)および一般式(2)で表される色素が好ましい。また、組成物中には、界面活性剤、pH調整剤等の添加剤が配合されていてもよい。これらの添加剤も、通常、溶剤に溶解することにより使用される。
溶剤としては、水、水混和性のある有機溶剤、或いはこれらの混合物が適している。有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類などの単独または2種以上の混合溶剤が挙げられる。
異方性色素膜用色素組成物がこのような溶剤を含む溶液である場合、異方性色素膜用色素組成物中の色素の濃度としては、成膜法や、色素の溶解性、リオトロピック液晶状態などの超分子構造の形成濃度にも依存するが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上で、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは15重量%以下である。色素濃度が低過ぎると得られる異方性色素膜において十分な二色性を得ることができず、高すぎると色素が析出する恐れがある。
異方性色素膜用色素組成物には、基材への濡れ性、塗布性を向上させるため、必要に応じて界面活性剤等の添加物を加えることができる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性のいずれも使用可能である。その添加濃度は、目的の効果を得るために十分であって、かつ色素分子の配向を阻害しない量として、異方性色素膜用色素組成物中の濃度として通常0.05重量%以上、5重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましい。
また、異方性色素膜用色素組成物中での色素の造塩や凝集などの不安定性を抑制する等の目的のために、通常公知の酸、アルカリ等のpH調整剤などを、異方性色素膜用色素組成物の構成成分の混合の前後或いは混合中のいずれかで添加してpH調整を行ってもよい。色素組成物のpHとしては好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、好ましくは13以下、更に好ましくは12以下に調整されていることが、溶液の安定性と製造上の取り扱いやすさの点で好ましい。
さらに、上記以外の添加物として、“Additive for Coating”,Edited by J.Bieleman,Willey-VCH(2000)記載の公知の添加物を用いることもできる。
本発明の異方性色素膜は、色素を少なくとも含む、異方性色素膜用色素組成物を用いて、後述の乾式成膜法もしくは湿式成膜法により作製されることが好ましいが、本発明の異方性色素膜は、異方性色素膜中の分子配列性を高め、色素分子間の分子間相互作用を利用して高い二色性を得るものであるため、成膜フィルムの延伸を行う等の乾式成膜法よりも、湿式成膜法で形成された異方性色素膜であることが好ましい。
前記一般式(1)で表されるアゾ色素、特に前示構造式(I−1)で示されるような、水溶液中でリオトロピック液晶を形成する色素は、湿式成膜法により高い二色性を示す偏光膜(異方性色素膜)を作製可能であり、有用である。遊離酸の形が前記一般式(1)で表される本発明のアゾ色素には、高い二色性を示し、また水溶液中でリオトロピック液晶を形成するものが多く、また各種基材面との親和性が高いものが多いため、このような成膜法に好適である。
また、前記一般式(2)で表されるトリスアゾ色素は、特定の色素構造を有するため高いリオトロピック液晶状態を形成し、高次の分子配向状態を示すことができ、かつ1種類の色素でも黒色を示すことが可能であるため高い二色性を示すことができる。
湿式成膜法はまた、ガラスなどの高耐熱性基材上に異方性色素膜を形成することが可能であり、高耐熱性の偏光素子を得ることができる点から、液晶プロジェクタや車載用表示パネル等、高耐熱性が求められる用途に使用できる点が好ましい。
異方性色素膜の成膜法のうち、乾式成膜法としては、高分子重合体を成膜してフィルムとした後に異方性色素膜用色素組成物で染色する方法、または高分子重合体の溶液に異方性色素膜用色素組成物を添加し原液染色後成膜する方法等により得られた未延伸フィルムを延伸する方法、あるいは真空条件下での加熱により異方性色素膜用色素組成物を蒸発させてガラス等の各種基材に真空蒸着させる方法などを挙げることができる。なお、ここで、異方性色素膜用色素組成物で染色するフィルムの構成材料としては、ポリビニルアルコールなど、色素との親和性の高い高分子材料が挙げられる。
湿式成膜法としては、前述のような異方性色素膜用色素組成物を塗布液として調製後、ガラス板などの各種基材に塗布、乾燥し、色素を配向、積層して得る方法など公知の方法が挙げられる。
例えば、原崎勇次著「コーティング工学」(株式会社朝倉書店、1971年3月20日発行)253頁〜277頁や市村國宏監修「分子協調材料の創製と応用」(株式会社シーエムシー出版、1998年3月3日発行)118頁〜149頁などに記載の公知の方法や、予め配向処理を施した基材上に、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法などで塗布する方法が挙げられる。
異方性色素膜用色素組成物の基材上への塗布時の温度は、通常0℃以上、80℃以下、好ましくは40℃以下である。また、湿度は、通常10%RH以上、好ましくは30%RH以上で、通常80RH%以下である。
湿式成膜法は、基材上への異方性色素膜用色素組成物の塗布工程、および乾燥工程を経て色素膜を形成するが、これらの工程の操作条件は、色素の自己組織化による高いリオトロピック液晶性に基づいて形成される高次の分子配向状態を維持し、前述の分子積層周期および分子積層長を満たす本発明の異方性色素膜が得られるように制御することが好ましい。
このため、特に乾燥工程でも急速な温度上昇は好ましくなく、一般的には自然乾燥とすることが好ましいが、好ましい条件を挙げるならば、乾燥時の温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、通常120℃以下、好ましくは110℃以下である。また、湿度は、通常10%RH以上、好ましくは30%RH以上、通常80%RH以下である。
基材としては、ガラスやトリアセテート、アクリル、ポリエステル、トリアセチルセルロースまたはウレタン系の樹脂フィルム等が挙げられる。また、この基材表面には、二色性色素の配向方向を制御するために、「液晶便覧」(丸善株式会社、平成12年10月30日発行)226頁〜239頁などに記載の公知の方法により、配向処理層やフッ素樹脂層等を施しておいてもよい。さらに、光照射、コロナ処理、プラズマ処理等の併用により、表面エネルギー状態等の改質を行ってもよい。
本発明の異方性色素膜は、表面に保護層を設けて使用することが好ましい。この保護層は、例えば、トリアセテート、アクリル、ポリエステル、ポリイミド、トリアセチルセルロースまたはウレタン系のフィルム等の透明な高分子膜によりラミネーションして形成され、実用に供される。
このような本発明の異方性色素膜は高い二色比を示すが、二色比は9以上のものが好ましく、より好ましくは12以上、特に好ましくは15以上のものが使用される。
また、特に湿式成膜法で基材上に形成される異方性色素膜の膜厚は、通常乾燥後の膜厚で、好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、好ましくは50μm以下、更に好ましくは10μm以下、特に好ましくは1μm以下である。
また、本発明の異方性色素膜をLCDやOLEDなどの各種の表示素子に偏光フィルター等として用いる場合には、これらの表示素子を構成する電極基板などに直接、該異方性色素膜を形成したり、該異方性色素膜を形成した基材をこれら表示素子の構成部材として用いればよい。
本発明の異方性色素膜は、光吸収の異方性を利用し直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光膜として機能する他、膜形成プロセスと基材や色素を含有する組成物の選択により、屈折異方性や伝導異方性などの各種異方性膜として機能化が可能となり、様々な種類の、多様な用途に使用可能な偏光素子とすることができる。
本発明の偏光素子は、このような本発明の異方性色素膜を用いたものであるが、本発明の異方性色素膜を基材上に形成して本発明の偏光素子とする場合、形成された異方性色素膜そのものを使用しても良く、また上記の様な保護層のほか、粘着層、反射防止層など、様々な機能の有する層を積層形成し、積層体として使用してもよい。その際の積層順序は、用途に応じて適宜選択することができる。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、分子積層周期およびその積層長と分子積層軸の配向度は、薄膜評価用X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000PC」インプレーン光学系)を用いたインプレーン測定による回折プロファイルとインプレーンロッキングスキャン測定によるロッキングプロファイルを前述の方法で解析することから求めた。両測定ともに、CuKαについて入射角1°で実施した。
また、二色比(D)はヨウ素系偏光素子を入射光学系に配した分光光度計(大塚電子社製「瞬間マルチ測光システムMCPD2000」)で異方性色素膜の透過率を測定した後、次式により計算した。
二色比(D)=Az/Ay
Az=−log(Tz)
Ay=−log(Ty)
Tz:色素膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率
Ty:色素膜の偏光軸方向の偏光に対する透過率
また、異方性色素膜の色度xy(CIE1964 XYZ表色系、D65標準光源下)は上記TzおよびTyをJIS−Z−8701−1995の方法に導入して計算した。
また、偏光度は分光光度計で色素膜の透過率を測定した後、JIS−Z−8701−1995により2度視野における透過物体色の三刺激値X,Y,Zを求め、次の計算式により計算した。なお、三刺激値X,Y,Zの計算に用いる標準の光の分光分布はD65光源を用いた。
偏光度(ρ)={(Y2−Y1)/(Y2+Y1)}1/2×100
Y2:色素膜の偏光軸を平行に2枚重ねた時の三刺激値Y
Y1:色素膜の偏光軸を直交に2枚重ねた時の三刺激値Y
以下において「部」は「重量部」を示す。
[1]積層周期および積層長(実施例1〜6、比較例1)
(実施例1)
水89.8部に下記に示す例示色素No.(I−31)10部とノニオン系界面活性剤エマルゲン109P(花王社製)0.2部を撹拌溶解させて異方性色素膜用色素組成物を得た。
Figure 0004622434
一方、ガラス製基板(75mm×25mm、厚さ1mm)上にシルク印刷法によりポリイミドの配向膜が形成された基板(ポリイミド膜厚 約800Å)を、予め布でラビング処理を施したものを用意しておき、これに前記異方性色素膜用色素組成物をバーコータ(テスター産業社製「No.3」使用)で塗布した後、自然乾燥することにより膜厚約0.4μmの異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜のX線回折プロファイルを図4に、インプレーンロッキングプロファイルを図5に示す。図4は、この異方性色素膜に関して、その偏光軸に垂直な回折面および吸収軸に垂直な回折面をそれぞれ観察する2方向から実施したインプレーン測定結果を示し、実線は偏光軸に、点線は吸収軸にそれぞれ垂直な回折面を観察する方向から得られたX線回折プロファイルである。図5は、この異方性色素膜の分子積層由来の回折ピークのインプレーンロッキングカーブ測定結果を示す。
また、求められた分子積層周期、積層長、分子積層軸の配向度と二色比を表1に示す。
これらの結果から、本実施例の異方性色素膜は、二色比発現に適した分子配列を持ち、高い二色比を示すことが確認された。
(実施例2)
水90部に下記に示す例示色素No.(II−15)10部を撹拌溶解させて異方性色素膜用色素組成物を得た。
Figure 0004622434
バーコータ(テスター産業社製「No.2」)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、この異方性色素膜用色素組成物をポリイミド配向膜が形成されたガラス製基板に塗布して自然乾燥することにより異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の分子積層周期、積層長、分子積層軸の配向度と二色比を調べ、結果を表1に示した。
表1より、本実施例の異方性色素膜は、二色比発現に適した分子配列を持ち、高い二色比を示すことが確認された。
(実施例3)
水92部に下記に示す例示色素No.(I−1)8部を撹拌溶解させて異方性色素膜用色素組成物を得た。
Figure 0004622434
ギャップ10μmのアプリケーター(井元製作所社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、この異方性色素膜用色素組成物をポリイミド配向膜が形成されたガラス製基板に塗布して自然乾燥することにより異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の分子積層周期、積層長、分子積層軸の配向度と二色比を調べ、結果を表1に示した。
表1より、本実施例の異方性色素膜は、二色比発現に適した分子配列を持ち、高い二色比を示すことが確認された。
(実施例4)
水80部に前記例示色素No.(I−31)12部を撹拌溶解させた後、グリセリン8部を加えて異方性色素膜用色素組成物を得た。
ギャップ10μmのアプリケーター(井元製作所社製)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、この異方性色素膜用色素組成物をポリイミド配向膜が形成されたガラス製基板に塗布して自然乾燥することにより異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の分子積層周期、積層長、分子積層軸の配向度と二色比を調べ、結果を表1に示した。
表1より、本実施例の異方性色素膜は、二色比発現に適した分子配列を持ち、高い二色比を示すことが確認された。
(実施例5)
水76部に下記に示す前記例示色素No.(II−3)15部を撹拌溶解させた後、グリセリン9部を加えて異方性色素膜用色素組成物を得た。
Figure 0004622434
バーコータ(テスター産業社製「No.2」)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、この異方性色素膜用色素組成物をポリイミド配向膜が形成されたガラス製基板に塗布して自然乾燥することにより異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の分子積層周期、積層長、分子積層軸の配向度と二色比を調べ、結果を表1に示した。
表1より、本実施例の異方性色素膜は、二色比発現に適した分子配列を持ち、高い二色比を示すことが確認された。
(実施例6)
水85部に前記例示色素No.(II−3)15部を撹拌溶解させて異方性色素膜用色素組成物を得た。
バーコータ(テスター産業社製「No.2」)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、この異方性色素膜用色素組成物をポリイミド配向膜が形成されたガラス製基板に塗布して自然乾燥することにより異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の分子積層周期、積層長、分子積層軸の配向度と二色比を調べ、結果を表1に示した。
表1より、本実施例の異方性色素膜は、二色比発現に適した分子配列を持ち、高い二色比を示すことが確認された。
(比較例1)
水94部に下記構造式の色素を6部加え、撹拌溶解後濾過して、異方性色素膜用色素組成物を得た。
Figure 0004622434
スライドガラス(松浪硝子工業製「スライドグラス白縁磨フロストNo.1」)にこの異方性色素用色素組成物をバーコータ(コーティングテスター工業(株)製「No.2」)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の分子積層周期、積層長、分子積層軸の配向度と二色比を調べ、結果を表1に示した。
表1より、この比較例の異方性色素膜は、積層長が105Å未満であり、二色比発現に適した配列分子数が十分でないために、二色比が低いと推測される。
Figure 0004622434
[2]一般式(2)で表されるアゾ色素の合成(合成例1)
(合成例1)
以下の(A)〜(E)の方法に従って、下記の色素No.(I−31)の色素を合成した。
Figure 0004622434
(A)4−アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)と2−メトキシ−5−メチルアニリンとから常法[例えば、細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日、技報堂発行)第396頁第409頁参照]に従って、ジアゾ化、カップリング工程を経てモノアゾ化合物を製造した。
(B)工程(A)で得られたモノアゾ化合物を同様に、常法によりジアゾ化し、2−メトキシ−5−メチルアニリンとカップリング反応を行い、ジスアゾ化合物を製造した。
(C)別に、6−アミノ−1−ナフトール−3−スルホン酸(J酸)を水にpH6として溶かし、0〜5℃に冷却した。このものに塩化シアヌルを加え、温度0〜5℃を保持して、2時間反応を行い、反応を完結させた。次いで、室温にて、3−アミノベンゼンスルホン酸(メタニル酸)水溶液を加えて、pH6〜7で数時間縮合反応を行った。
(D)工程(B)で得られたジスアゾ化合物を同様に常法によりジアゾ化し、工程(C)で得られた化合物とカップリング反応を行って、トリスアゾ化合物を製造した。反応終了後、3−アミノ−1,2−プロパンジオールを添加し、60℃に昇温し、25重量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH9〜9.5とし、反応を完結させた。
(E)冷却後、塩化ナトリウムで塩析することにより目的の色素No.(I−31)を得た。
[3]異方性色素膜の作製(実施例7〜17、比較例2〜7)
(実施例7)
水100部に、No.(I−1)の色素を10部、ノニオン系界面活性剤エマルゲン109P(花王社製)を0.2部加え、5重量%水酸化リチウム水溶液でpHを8.0に中和後、撹拌溶解し、次いで濾過して色素水溶液(異方性色素膜形成用組成物)を得た。この色素水溶液をスライドガラス上に滴下し、偏光顕微鏡下において、乾燥濃縮過程を観察したところ、初期は等方性溶液であったが、乾燥濃縮によりリオトロピック液晶状態をとることが確認された。
一方、ガラス基板上にシルク印刷法によりポリイミドの配向膜が形成された基板(ポリイミド膜厚 約800Å)を、予め布でラビング処理を施したものを用意しておき、これに前記色素水溶液をバーコーター(テスター産業社製 No.3)で塗布した後、室温下で乾燥することにより異方性色素膜を得た。
この色素膜の吸収軸および偏光軸方向の透過率特性を図6に示す。得られた異方性色素膜の極大吸収波長(λmax)は555nm、二色比は12であった。
Figure 0004622434
(実施例8)
水100部に、前記No.(I−1)の色素を5部加え、5重量%水酸化リチウム水溶液でpHを8.0に中和後、撹拌溶解し、次いで濾過して色素水溶液を得た。さらに、この色素水溶液96部に硼酸を4部加えて染色液を得た。
別に、水90部に平均重合度1750のポリビニルアルコール10部を加えて、水浴中で撹拌溶解後、厚さ1mmに展開、乾燥することによりポリビニルアルコール(PVA)フィルムを得た。
このPVAフィルムを染色液に浸漬後、3倍に引き伸ばして異方性色素膜を得た。この色素膜の三刺激値は表2に示す通りであり、偏光度は79.9%であった。
(実施例9)
水100部に、前記No.(I−1)の色素を5部、ノニオン系界面活性剤エマルゲン109P(花王社製)を0.2部加え、5重量%水酸化リチウム水溶液でpHを8.0に中和後、撹拌溶解し、次いで濾過して色素水溶液を得た。
実施例7と同様な方法により準備されたガラス基板に、この色素水溶液をスピンコーターで塗布した後、室温下で乾燥することにより異方性色素膜を得た。得られた色素膜の二色比は20であった。
(実施例10)
水100部に、下記に示すNo.(I−25)の色素を25部、ノニオン系界面活性剤エマルゲン109P(花王社製)を0.2部加え、5重量%水酸化リチウム水溶液でpHを8.0に中和後、撹拌溶解し、次いで濾過して色素水溶液を得た。この色素水溶液は実施例7と同様な方法により、偏光顕微鏡下で観察したところリオトロピック液晶状態であることが確認された。
Figure 0004622434
さらに、実施例7と同様な方法により準備されたガラス基板に、この色素水溶液をブレードコート法で塗布した後、室温下で乾燥することにより異方性色素膜を得た。
この色素膜の吸収軸および偏光軸方向の透過率特性を図7に示す。得られた色素膜の極大吸収波長(λmax)は570nm、二色比は15であった。
(実施例11)
実施例8において、使用した色素を、前記No.(I−25)の色素に変えた以外は、同様な方法により色素水溶液を調製し、PVAフィルムを染色して色素膜を得た。
得られた色素膜の三刺激値は表2に示す通りであり、偏光度は64%であった。
Figure 0004622434
(実施例12)
水95部に下記に示す色素No.(II−1)のナトリウム塩を5部、ノニオン系界面活性剤エマルゲン109P(花王(株)社製)を0.2部加え、撹拌溶解後濾過して色素水溶液(異方性色素膜用色素組成物)を得た。
Figure 0004622434
一方、基材としてガラス基板上にスピンコート法によりポリイミドの配向膜が形成されたガラス製基板(75mm×25mm、厚さ1.1mm、ポリイミド膜厚約800Åのポリイミド配向膜をあらかじめ布でラビング処理を施したもの)を用意しておき、これに前記色素水溶液をスピンコーター(押鐘社製 SC−200)で塗布(1000rpm5秒後、2500rpm15秒)した後、自然乾燥することによりラビング方向に色素が配向した異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜における色素膜面内の吸収軸方向に振動面を有する偏光に対する透過光(Tz)の色度xy(CIE1964 XYZ表色系、D65標準光源下)および色素膜面内の偏光軸方向に振動面を有する偏光に対する透過光(Ty)の色度xy(CIE1964 XYZ表色系、D65標準光源下)、極大吸収波長(λmax)とその二色比(D)は表3に示す。
得られた異方性色素膜は偏光膜として充分機能し得る高い二色比(光吸収異方性)を有していた。
(実施例13)
実施例12において、使用した色素を下記に示す色素No.(II−9)のナトリウム塩に変えた以外は、同様に異方性色素膜用色素組成物を作成し、同様の基板に同様の条件で塗布する事により異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の色度xy(XYZ表色系)、極大吸収波長(λmax)、二色比(D)を表3に示す。得られた異方性色素膜は偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有する異方性色素膜であった。
Figure 0004622434
(実施例14)
水90部に下記に示す色素No.(II−2)のナトリウム塩10部を加え、撹拌溶解後濾過して異方性色素膜用色素組成物を得た。このものを実施例12で用いた基板にNo.3のバーコータ−(テスター産業社製)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の色度xy(XYZ表色系)、極大吸収波長(λmax)、二色比(D)を表3に示す。得られた異方性色素膜は偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有する異方性色素膜であった。
Figure 0004622434
(実施例15)
水90部に下記に示す色素No.(II−3)のナトリウム塩を10部加え、撹拌溶解後濾過して異方性色素膜用色素組成物を得た。このものを実施例12で用いた基板にギャップ10μmのアプリケーター(井元製作所社製)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の色度xy(XYZ表色系)、極大吸収波長(λmax)、二色比(D)を表3に示す。得られた異方性色素膜は偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有する異方性色素膜であった。
Figure 0004622434
(実施例16)
水91部に下記に示す色素No.(II−4)のナトリウム塩を9部加え、撹拌溶解後濾過して異方性色素膜用色素組成物を得た。実施例15と同様の条件で塗布する事により異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の色度xy(XYZ表色系)、極大吸収波長(λmax)、二色比(D)を表3に示す。得られた異方性色素膜は偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有する異方性色素膜であった。
Figure 0004622434
(実施例17)
水93部に色素No.(II−6)のナトリウム塩を7部加え、撹拌溶解後濾過して異方性色素膜用色素組成物を得た。実施例15と同様の条件で塗布する事により異方性色素膜を得た。
得られた異方性色素膜の色度xy(XYZ表色系)、極大吸収波長(λmax)、二色比(D)を表3に示す。得られた異方性色素膜は偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有する異方性色素膜であった。
Figure 0004622434
Figure 0004622434
(比較例2)
実施例8において前記(I−1)の色素の代わりに、下記構造式の色素を用いた以外は、同様な方法により色素水溶液および色素膜を作製した。
Figure 0004622434
この色素膜の吸収軸および偏光軸方向の透過率特性を図8に示す。得られた色素膜の極大吸収波長(λmax)は585nm、二色比は3であった。
(比較例3)
実施例12において前記No.(II−1)の色素の代わりに、No.(II−1)の置換基Gがアゾ基に対してパラ位にある色素(III−1)のナトリウム塩を使用した以外は同様にして色素膜用色素組成物を作成し、同様の基板に同様の条件で塗布を行い色素膜を得た。
得られた色素膜について、実施例12と同様にして各種試験を行った。結果を表4に示す。得られた色素膜の二色比(吸収異方性)は2以下であり、充分な異方性を示さなかった。
Figure 0004622434
(比較例4)
実施例12において前記No.(II−1)の色素の代わりに、No.(II−1)の置換基Gがオルト位にある下記の(III−2)の色素を使用した以外は同様にして色素膜用色素組成物を作成し、同様の基板に同様の条件で塗布を行い色素膜を得た。
得られた色素膜について、実施例12と同様にして各種試験を行った。結果を表4に示す。得られた色素膜の二色比(吸収異方性)は2以下であり、充分な異方性を示さなかった。
Figure 0004622434
(比較例5)
水95部に下記に示すNo.(III−3)の色素5部を加え、撹拌溶解後濾過して色素膜用色素組成物を得た。このものを実施例12で用いた基板にNo.3のバーコータ−(テスター産業社製)で塗布した後、自然乾燥することにより異方性色素膜を得た。
得られた色素膜について、実施例12と同様にして各種試験を行った。結果を表4に示す。得られた色素膜の二色比(吸収異方性)は2以下であり、充分な異方性を示さなかった。
Figure 0004622434
(比較例6)
実施例12において前記No.(II−1)の色素の代わりに、下記に示す色素(III−4)を使用した以外は同様にして色素膜用色素組成物を作成し、同様の基板に同様の条件で塗布を行い色素膜を得た。
得られた色素膜について、実施例12と同様にして各種試験を行った。結果を表4に示す。得られた色素膜の二色比(吸収異方性)は2以下であり、充分な異方性を示さなかった。
Figure 0004622434
(比較例7)
実施例12において前記No.(II−1)の色素の代わりに、下記に示す色素(III−5)のナトリウム塩を使用した以外は同様にして色素膜用色素組成物を作成し、同様の基板に同様の条件で塗布を行い色素膜を得た。
得られた色素膜について、実施例12と同様にして各種試験を行った。結果を表4に示す。得られた色素膜の二色比(吸収異方性)は2以下であり、充分な異方性を示さなかった。
Figure 0004622434
Figure 0004622434
[4]刺激純度(実施例18,19)
(実施例18)
水99.9部に前記色素No.(II−1)のナトリウム塩を0.1部加え、攪拌溶解後濾過して色素水溶液を得た。この水溶液を光路長0.1mmの石英製角セル(キュベット)に注入した。このキュベットに注入した色素水溶液および実施例12で得られた異方性色素膜の可視光透過率を各々分光光度計で測定し、CIE1964 XYZ表色系、D65標準光源下での色度xyを算出した。
さらに、色度図よりD65標準光源の色度座標Nと求めた色素水溶液の色度座標C1および異方性色素膜の色度座標C2を各々直線で結び、その延長のスペクトル軌跡との交点に対応する波長を主波長とし、各点の比率から色素水溶液の刺激純度(pe1)および異方性色素膜の刺激純度(pe2)を算出した。色素水溶液の刺激純度および異方性色素膜の刺激純度を表5に示す。
本実施例の色素(色素水溶液)の刺激純度は12%以下であった。また、この色素を用いて作成された異方性色素膜の刺激純度もまた12%以下であり、低彩度無彩色の異方性色素膜として有用であった。
(実施例19)
実施例13から実施例17に用いた色素および実施例13から実施例17で得られた異方性色素膜の刺激純度を実施例18と同様な方法により測定、算出した。各々の色素の水溶液の刺激純度および異方性色素膜の刺激純度を表5に示す。
本実施例の色素(色素水溶液)の刺激純度は12%以下であった。また、この色素を用いて作成された異方性色素膜の刺激純度もまた12%以下であり、低彩度無彩色の異方性色素膜として有用であった。
Figure 0004622434
分子積層軸に対して色素分子面が垂直から傾いた分子配列を有する異方性色素膜を示す模式図である。 分子積層軸に対して色素分子面が垂直な分子配列を有する異方性色素膜を示す模式図である。 (a)図は分子積層軸の配向度が低い状態の異方性色素膜を示す模式図であり、(b)図は分子積層軸の配向度が高い状態の異方性色素膜を示す模式図である。 実施例1で形成した異方性色素膜のX線回折プロファイルを示すチャートである。 実施例1で形成した異方性色素膜のインプレーンロッキングプロファイルを示すチャートである。 実施例7にて得られた異方性色素膜の、吸収軸方向および偏光軸方向の光透過率を表すグラフである。 実施例10にて得られた異方性色素膜の、吸収軸方向および偏光軸方向の光透過率を表すグラフである。 比較例2にて得られた異方性色素膜の、吸収軸方向および偏光軸方向の光透過率を表すグラフである。

Claims (9)

  1. 遊離酸の形が下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるアゾ色素を含有し、分子積層に由来した周期が3.445Å以下であり、その積層長が105Å以上であることを特徴とする異方性色素膜。
    Figure 0004622434
    (式中、A 、B 、C およびD は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い芳香族炭化水素環を表し、
    Ar は水素原子、または任意の置換基を表し、
    およびY はそれぞれ独立に、ハロゲン原子以外の任意の置換基を表す。
    kは1または2を表し、mは1または2を表す。なお、kが2の場合、1分子中に含まれる複数のB は、同一であっても異なっていても良い。)
    Figure 0004622434
    (式中、D およびE は、置換基を有していても良いフェニレン基、または置換基を有していても良いナフチレン基を表し、
    はカルボキシ基、スルホ基、またはリン酸基を表し、
    はハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数1〜3のアルコキシ基、カルボキシル基、或いはスルホ基を表し、
    およびQ はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜4のアルキル基、或いは置換基を有していても良いフェニル基を表し、
    pは0または1を表し、tは1または2を表す。)
  2. 分子積層軸の配向度が85%以上である、請求項1に記載の異方性色素膜。
  3. 膜厚が30μm以下である、請求項1または2に記載の異方性色素膜。
  4. 基材上に形成された異方性色素膜である、請求項1ないし3のいずれかに記載の異方性色素膜。
  5. 湿式成膜法で形成された異方性色素膜である、請求項4に記載の異方性色素膜。
  6. 基材がガラスまたは樹脂フィルムである、請求項4または5に記載の異方性色素膜。
  7. 更に保護層が形成される、請求項1ないし6のいずれかに記載の異方性色素膜。
  8. 遊離酸の形が前記一般式(1)で表されるアゾ色素が、遊離酸の形が下記一般式(1−a)で表されるアゾ色素である、請求項1ないし7のいずれかに記載の異方性色素膜。
    Figure 0004622434
    (式中、Aは、置換基を有していても良いフェニル基、または置換基を有していても良いナフチル基を表し、
    およびCはそれぞれ独立に、置換基を有していても良いフェニレン基、または置換基を有していても良いナフチレン基を表し、
    Arは水素原子、または置換基を有していても良い炭素数1〜5のアルキル基を表し、
    およびYはそれぞれ独立に、−NR基、−OR基、または−SR基を表す。
    但し、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していても良い炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数2〜18のアルケニル基、置換基を有していても良い炭素数3〜15の炭化水素環基、または置換基を有していても良い5または6員環の、単環または2〜3縮合環からなる複素環基を表すか、あるいはRとRとが互いに結合し、窒素原子を含む5または6員環を形成する。RおよびRが結合してなる環は、置換基を有していても良い。
    kは1または2を表し、mは1または2を表す。なお、kが2の場合、1分子中に含まれる複数のBは、同一であっても異なっていても良い。)
  9. 請求項1ないしのいずれかに記載の異方性色素膜を用いた、偏光素子。
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