JP4621938B2 - 多孔質金属体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質金属体の製造方法に関するものである。詳しくは、一方向性形態を有する多孔質金属体の固有の大きな表面積又、一様に制御されたポア及びポリシティによる応用分野である。応用指向は、広いのであるが、現在、ヒートシンク、静圧軸受、フィルター、自動車・航空機部材及び各種工作機械等に開発が進められている。
【0002】
【従来の技術】
従来の一方向性を有する多孔質金属体の製造方法においては、水素ガス、窒素ガス及び酸素ガス等の加圧下において気泡の生成並び気泡の形成を可能とする製造方法であった。
【特許文献1】
特開平10−88254号公報
【特許文献2】
特開平2000−104130号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水素ガスの加圧下における作製に対して、水分を用いるか或は、不活性ガスの加圧下において水分を用いて金属原料を多孔質化することが可能である。したがって、従来の技術に対して比較的安全で、経済的である斬新な手法による製作方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決する手段として、図2の(a)、(b)及び(c)に示すように、鋳型の内側に水分を含むアルミナ混合物を塗布し、次に、溶解した金属原料を鋳込み、更に、溶融金属原料が冷却部により冷却凝固を始めて、一方向の気孔を形成する。前記の気孔形成は、アルミナ混合物に含まれた水分が溶融金属原料中に溶け込み、水素と酸素に分解する。分解した前記水素が溶解度ギヤップにより気泡となって、気孔を形成する。以上の関係は、図3、図4の(a)及び(b)によって明らかであり、有効な手段である。
【0005】
更にポアの形態、気孔径及び気孔率を制御するためにアルゴンガスの圧力と、水分量を調節して、図5の(a)〜(d)のような多種多様な構造に多孔質化が可能である。
【0006】
【発明の実施形態】
本発明は、加熱して、溶解した金属原料を鋳型内で冷却凝固させて、固体に変態させる過程において、鋳型の内側に塗布したアルミナ混合物に含まれる水分が水素と酸素に解離し、前記金属原料の固相内に析出するという性質を利用して、多孔質金属体を製作するものである。
【0007】
図1に示す本発明は、加熱手段である誘導加熱コイル7、るつぼ5及びストッパーロッド8等を有する加熱室1とその下部に冷却、凝固手段の鋳型3及び冷却部4を有する凝固室2を装着して、竪型に構成された密閉容器100であり、好ましい実施形態を示している。密閉容器100の構造は、金属原料200を所定の温度で溶融し、更にアルゴンガスの雰囲気下で所定の凝固温度と所定の凝固圧力を用いて、冷却凝固させるために、加熱室1及び凝固室2は、内部の気密性を保つようになっている。鋳型3は、溶融した金属原料200を流し込むところの内側にアルミナ粉末、珪酸ナトリウム溶液及び水等を所定の割合で混ぜたアルミナ混合物6を塗布している。
【0008】
るつぼ5内の金属原料200が誘導加熱コイル7によって溶融すると、密閉容器100内にガス注入パイプ9からアルゴンガスが注入され、所定の圧力下に保たれる。更に金属原料200が所定の溶融温度に達した時、スットパーロッド8が上昇して、導入ファンネル11を開き、溶融した金属原料200が下部の凝固室2に設けられた鋳型3に流れ込む。
【0009】
凝固室2の内部は、アルゴンガスによる所定の凝固圧力下に保たれ、冷却部4は冷却水流入パイプ12及び冷却水流出パイプ13を用いて、冷却水により冷却される。したがって、鋳型3に導入された金属原料200は底部の冷却面に接触した面から急速に凝固を始め、この凝固方向に対して平行にポアが成長する。凝固時における気孔の形成は、鋳型3の内側に塗布したアルミナ混合物6に含まれる水分が溶融金属原料200の中に溶け込み、水素と酸素に分解する。この凝固時において、前記水素が溶融金属と固体金属の溶解度差により気泡として析出し、一方向性の気孔に成長する。又、前記酸素が凝固時に種々の酸化物を形成し、これらが不均一核生成サイトとなると考えられる。
図2は、水分利用による気孔形成のモデルを示す。尚、雰囲気ガスであるアルゴンガスは、不活性ガスであるため、気泡の核生成には直接的には関係はないが、成長する気孔の気孔率や気孔径等を制御することに関係する。
(a)は、鋳型3の内側にアルミナ混合物6を塗布し、溶融金属原料200は、未だ鋳込まれていない状態を示しており、アルミナ混合物6は、アルミナ粉末、珪酸ナトリウム及び水の溶液を乾燥したものである。
(b)は、鋳型3に鋳込まれた状態を示しており、溶融金属原料200の凝固が始まろうとする時点であるが、含有する水分が溶融金属原料200中に溶け込み、水素と酸素に分解する。この時、中に含まれる酸化物も溶け込む可能性がある。
(c)は、溶融金属原料200の凝固が行われて、気孔が形成され、気孔形態が成長を続けている状態を示しており、分解した水素が溶解度ギャップにより気泡となって、気孔形成される。この時、金属中の酸化物、アルミナ及び珪酸ナトリウム等が不均一核生成サイトになると考えられる。
尚、冷却部を特定しなければ、球状のランダム分布の気孔が分散した多孔質金属体を作製することができる。
【実施例】
以下図5、図6、に示す本発明の実施例について説明する。多孔質金属体の気孔の方向、気孔径、気孔率の形成は、アルミナ混合物6に含まれる水分の量、溶融温度、冷却凝固の速度、不活性ガスの圧力等のパラメーターを制御して、決定することが出来る。
【0010】
図5は、不活性ガスとしてアルゴンを用い、0.3MPaの加圧下において作製した純ニッケルの多孔質金属体の縦断面を示す写真である。純ニッケルは、純度99.9%の電解ニッケルを使用し、アルゴンは、純度99.999%を用い、溶融温度1873Kで鋳込む。溶融金属原料に溶解した水分は、円筒形に加工したモリブデン薄板を用い、その内側にアルミナ粉末、珪酸ナトリウム溶液及び水を8:2:5の割合のアルミナ混合物6塗布して、その重量変化を測定した。
(a)は、上記の条件下で作製したニッケル多孔質体を放電加工機で縦中央を切断した実施例で、アルミナ混合物6中の水分量が0.0596gのものである。
(b)は、同じくニッケル多孔質体の実施例で、アルミナ混合物6中の水分量が0.0876gのものである。
(c)は、同じくニッケル多孔質体の実施例で、アルミナ混合物6の中の水分量が0.107gのものである。
(d)は、同じくニッケル多孔質体の実施例で、アルミナ混合物6中の水分量が0.1201gのものである。
[図6]は、上記の[図5]の(c)の実施例を冷却面から4.5mmの位置を放電加工機で切断した横断面と縦断面の部分であり、気孔率は44.7%及び平均気孔径は105μmである。
【0011】
本発明は、以上に述べた実施の形態及び実施例によって限定されるものではなく、製造方法並びに気孔生成の形態の細部において様々な態様が可能である。
【0012】
【発明の効果】
本発明は、利用する水分中の水素と酸素が凝固時に解離し、その酸素が不均一核生成のサイトとなって、溶融金属原料中の気泡の核生成を促進し、一方その水素は、気泡に生成し、気孔に成長して、微細な多孔質金属体を形成するという点が特徴である。したがって、水素のガス圧力下で行われる従来の方法と比較して、低い雰囲気圧で高い気孔率を維持したまま、より微細な形態の多孔質金属体を得ることができる。尚、利用する水分量が増加するに従って、気孔率、気孔径ともに増大する傾向を示すこと、又、アルゴン雰囲気圧が0.3MPaでは気孔形態は繊維状になり、それ以上の圧力では、圧力が増大するに従って、気孔の生成及び成長が抑制される傾向を示すこと等から考えて、この製造方法は、十分な大きさの圧力に対応する密閉容器、水分発生及び調節システム、温度並びに圧力の制御システムがあれば、比較的安全で、しかも経済的な多孔質金属体の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法のための装置として加熱室1及び凝固室2を内部に装着した密閉容器100を例示した概略図である。
【図2】本発明の方法の水分利用によるポア形成のモデル図である。
(a)は、冷却部4の上に装着したモリブデン薄板製の鋳型3で、内部にアルミナ混合物が塗布され、鋳込み前の状態を示す。
(b)は、溶融金属原料200を鋳込んだ状態を示す。
(c)は、鋳込んだ溶融金属原料200が冷却凝固する状態を示す。
【図3】純ニッケルを金属原料200に用いて、作製した図5(a)〜(d)の多孔質金属体の気孔率の変化をアルミナ混合物6中の水分量と冷却部4の底面からの距離との関係を表わすグラフである。
【図4】 (a)は、純ニッケルを金属原料200に用いて、作製した図5(a)〜(d)の多孔質金属体のポア径の変化をアルミナ混合物6中の水分量と冷却部4の底面からの距離との関係を表わすグラフである。
(b)は、純ニッケルを金属原料200に用いて、作製した図5(a)〜(d)の多孔質金属体のポア数密度の変化をアルミナ混合物6中の水分量と冷却部4の底面からの距離との関係を表わすグラフである。
【図5】本発明の方法でアルゴン0.3MPaの加圧下において作製した純ニッケルの多孔質金属体の縦断面を表わす写真である。
(a)は、アルミナ混合物6中の水分量が0.0596gのものである。
(b)は、アルミナ混合物6中の水分量が0.0876gのものである。
(c)は、アルミナ混合物6中の水分量が0.1070gのものである。
(d)は、アルミナ混合物6中の水分量が0.1201gのものである。
【図6】 [図5]の(c)の拡大写真で、冷却部4の底面から4.5mmの部分である。
気孔率:44.7%及び平均気孔径:105μmである。
(a)は、縦断面の写真である。
(b)は、横断面である。
【符号の説明】
1 加熱室
2 凝固室
3 鋳型
4 冷却部
5 るつぼ
6 アルミナ混合物
7 誘導加熱コイル
8 ストッパーロッド
9 ガス注入パイプ
10 ガス排出パイプ
11 導入ファンネル
12 冷却水流入パイプ
13 冷却水流出パイプ
100 密閉容器
200 金属原料

Claims (4)

  1. 下記の工程を備えた多孔質金属体の製造方法:
    (1)密閉容器100の加熱室1内において、金属原料200をるつぼ5及び誘導加熱コイル7によって溶融させる工程;
    (2)前記密閉容器100内の凝固室2において特定の位置に冷却部を有す鋳型を用いて、前記鋳型3内の特定の位置側面に水分を含むアルミナ粉末及び珪酸ナトリウムのアルミナ混合物6を塗布し、次に前記溶融金属原料を鋳込んで、凝固させることにより、多孔質金属体を形成させる工程。
  2. 鋳型3の側面に塗布したアルミナ混合物6に含まれる水分が溶融金属との解離反応によって水素を生成しやすい金属原料200として鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルト、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、チタン、タングステン、モリブデン、ベリリウム、ウラン及びこれらの金属の少なくとも1種を含む合金から成る群れから選ばれる請求項1に記載の多孔質金属体の製造方法。
  3. 上記密閉容器100内において圧力が0.01MPa〜10MPaの範囲内にある不活性ガスを用いて、金属原料200を加熱室1内のるつぼ5及び誘導加熱コイル7によって溶融し、凝固室2の底部に装着した冷却部4の上部にアルミナ混合物6塗布した鋳型3を設置して、底部から冷却凝固させることにより多孔質金属体を形成させる請求項1ないし2に記載の多孔質金属体の製造方法。
  4. 上記工程(1)及び工程(2)において使用される不活性ガスの圧力条件が0.01MPa〜10MPaの範囲内にある請求項3に記載の多孔質金属体の製造方法。
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