JP4620936B2 - インクジェット用ブラックインク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置 - Google Patents
インクジェット用ブラックインク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置 Download PDFInfo
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【発明の属する技術分野】
本発明はインク、特に記録信号に応じてオリフィスから吐出させて被記録材に記録を行う、インクジェット記録に好適に使用できるインクジェット用インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、カラー画像を容易に形成できる手段として、とりわけオフィスや個人使用において広く用いられるようになっている。近年では、インクジェット記録画像の高画質化が進み、銀塩写真に匹敵するほどの高画質な記録画像の実現が可能となっており、そのため、求められる性能としても色調再現性が優れていることや、光学濃度が高く、色調が鮮明な画像を与えるといった、記録画像に対する品位性能に加え、画像の長期保存性が挙げられるようになった。
【0003】
長期保存性とは、即ち、太陽光や各種照明光等による変褪色を起こさないこと(耐光性)や、大気中に微量に含まれる酸化性ガス(オゾン、NOx、SOx等)に対して変褪色を起こさない(耐ガス性)といった画像堅牢性である。
【0004】
この画像堅牢性は、従来は主として太陽光や各種照明光による褪色が問題視され、これらの褪色の問題は耐光性に優れた染料の選択によって解決が図られてきた。しかしながら、近年のインクジェット記録画像に対するより一層の高品位化の要求の流れの中で、大気中の酸化性ガスによって起こるインクジェット記録画像の褪色又は変色の抑制が解決されるべき大きな課題として掲げられるようになってきている。特に、銀塩写真調の、極めて高画質なインクジェット画像を得るときに多用される、基材上に顔料とバインダーとを含むインク受容層を有する被記録材に形成したインクジェット記録画像においては、酸化性ガスによる著しい変褪色が観察される場合があり、このような被記録材上においても酸化性ガスによる変褪色の生じにくいインクジェット記録画像が得られれば、高画質なインクジェット記録画像の耐久性をより一層改善できるものである。ここで、ブラックインクに関して、ブラックインクが与えるブラックの画像が耐ガス性に劣っていると、当該ブラックの画像は褪色するだけではなく、茶色に変色する傾向があり、フルカラー画像の品位低下の大きな原因となる。そのため、耐ガス性に優れたブラックの画像を与えるインクジェット用インクの獲得は、フルカラー画像の耐久性を改善する上で特に重要な技術課題であると言える。
【0005】
この技術課題に対しては、例えば、特許文献1及び特許文献2において色調及びオゾンガスに対する耐変色性の改良がなされているが、銀塩写真に匹敵するほどの高画質な記録画像を得ることができる近年のインクジェット記録方式においては、耐ガス性のより一層の改善が依然として必要であるとの認識を得ている。
【0006】
更に、色調に優れ、耐水性及び耐光性の向上を目的として色材構造を提案した技術が特許文献3及び特許文献4に挙げられている。これらの公報において提案されている色材の耐ガス性については、特許文献4の明細書中に、「酸化性の空気汚染物質への耐性」という記載が一文あるだけで具体的な記載はなされていないが、本発明者らが検討した結果、耐ガス性の効果としても前述の特許文献1及び特許文献2に記載の技術に比較して大きな効果が得られることがわかった。
【0007】
しかしながら、色調再現性や光学濃度を高めるために使用される、基材上に顔料とバインダーとを含むインク受容層を形成した被記録材において、より優れた画像を得るためには、更なる褪色前後での色調の変化を抑制と、色調の向上、特に高濃度領域のみならず、インクの打ち込み量が少ないハーフトーン領域においてもニュートラルに近いものであることが望まれる。
【0008】
【特許文献1】
特許第2919615号公報
【特許文献2】
特公平8−26263号公報
【特許文献3】
特許第3306945号公報
【特許文献4】
特表2002−535432公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、優れた耐ガス性を与えることができ、且つよりニュートラルに近い色調を有し、更には褪色前後の色調変化を抑えたインク、特にブラックインクを提供することを目的とする。更に本発明は、このブラックインクを使用したインクジェット記録方法、記録ユニット、インクカートリッジ、インクセット及びインクジェット記録装置を提供することを更なる目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した目的に鑑み検討を重ね、その過程において、下記一般式(I)の色材と各種色材との組み合わせ使用の評価を行った。その結果、これらの組み合わせの色材からなるインクを用いた画像が優れた耐ガス性を有し、更に褪色前後の色調に優れることを見出し本発明を為すに至った。
【0011】
即ち、本発明は、少なくとも水溶性有機溶剤、水、尿素、及び色材を含むインクジェット用ブラックインクにおいて、下記一般式(I)で表される染料と、C.I.ダイレクトイエロー86と、C.I.ダイレクトブルー199とを含み、かつ、一般式(I)で表される染料の含有量がインク全量に対して1.0〜15.0質量%であり、C.I.ダイレクトイエロー86及びC.I.ダイレクトブルー199の含有量が、各々前記一般式(I)で表される色材の1質量%以上15質量%以下であることを特徴とするインクジェット用ブラックインク(以下単に「インク」という)を提供する。
【0012】
(上記一般式(I)中のR1及びR2は、各々独立に、置換若しくは未置換の炭素数1乃至4のアルキル基を表し、少なくともR1及びR2のうち何れかは1つの水酸基を有する。R3は水素原子、又は置換若しくは未置換のフェニル基を表す。mは1又は2を表す。Mは対イオンであり、各々独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム或いは有機アンモニウムの何れかを表す。)
【0015】
又、本発明は、前記本発明のインクをインクジェット法で被記録材に向けて吐出させる工程を有することを特徴とするインクジェット記録方法を提供する。
【0016】
上記インクジェット記録方法においては、前記被記録材が、支持体上にインク受容層を備えているものであること;前記インク受容層が、アルミナ水和物を含有していること;前記アルミナ水和物が、下記一般式(III)で示されるものであること;
前記被記録材が、インク受容層と前記支持体との間に、多孔性の層を具備していること;及び前記多孔性の層が、バライタ層であることが好ましい。
【0017】
又、本発明は、前記本発明のインクを保持しているインク収納部を有していることを特徴とするインクカートリッジ;前記本発明のインクを収容しているインク収容部及び該インクを吐出するためのインクジェット記録ヘッドを有していることを特徴とする記録ユニット;及び前記本発明のインクと、該インクを吐出させるためのインクジェット記録ヘッドを有していることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0018】
本発明者らは上記一般式(I)で表される色材を含有するインクにおいて、前述のイエロー染料と、シアン染料との組み合わせによって、よりニュートラルに近い優れた色調を得られるだけでなく、ガスによる褪色後においても色調変化が抑えられることを見出した。即ち、これらの色材の組み合わせにおいては耐ガス性能に比較的劣るフタロシアニン骨格を有する染料を用いた場合においても、上記一般式(I)と前述のイエロー染料とを併用することにより褪色後の色調に対して十分効果が得られることを見出した。
【0019】
更に、本発明者らは上記一般式(I)で表される色材を含有するインクにおいて、前述のイエロー染料と、上記一般式(II)で表される色材とを含有するインクにおいて、よりガスによる褪色後の色調変化が抑えられ、より効果的であることが判明し本発明に至った。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。先ず、本発明のインクを構成する材料について説明する。
【0021】
(色材)
本発明のインクは、色材として、下記一般式(I)で表される第1の色材を有することを特徴とする。
(上記一般式(I)中のR1、R2、R3 、m及びMは前記と同意義を有する。)
【0022】
上記一般式(I)中のR1〜R3についてより具体的には、R1及びR2は、各々独立に、置換若しくは未置換の炭素数1〜4のアルキル基を表し、R1及びR2のうち、何れかは少なくとも1つの水酸基を有し、アルキル基の置換基としては、例えば、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシル基、アミノ基、或いはハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)等が挙げられる。
【0023】
R3としては、例えば、水素原子、又は置換若しくは未置換のフェニル基等が挙げられる。フェニル基の置換基としては、例えば、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、スルホン基、若しくはこれらの塩、カルボキシル基若しくはその塩等が挙げられる。
【0024】
又、上記一般式(I)中のカルボキシル基(−COOM)について詳述すると、Mが、水素原子、アルカリ金属(例えば、Li、Na等)、アンモニウム(NH4)、有機アンモニウム(N(R4)4)等であるもの、R4が、メチル基或いはエチル基等であるものが挙げられる。
【0025】
以下に、上記一般式(I)で示される第1の色材の具体例として例示化合物1〜3を示すが、この他に特表2002−535432公報に記載されている構造の化合物等が挙げられる。本発明で使用する色材は、これらに限定されるものではない。又、下記に挙げるような色材を同時に2種類以上用いてもよい。
【0026】
【0028】
本発明のインク中に含まれる上記一般式(I)で表される色材のインク中の含有量は、インク全量に対して1.0〜15.0質量%、特には3.0〜10.0質量%の範囲が好ましい。
【0029】
次に本発明で用いられる下記一般式(II)で表される色材について説明する。
上記一般式(II)中のCuPc、Q、x及びyは前記と同意義を有する。
【0030】
即ち、本発明のインクに用いることのできるシアン染料は、例えば下記表1の構造を有するフタロシアニン染料の何れか、若しくはそれらの混合物を含むものが挙げられる。x+y=2以下の構造のものは含んでいないか、或いは実質的に含んでいない。
【0031】
【0032】
更に、上記一般式(II)で表される色材は、x+y=3の成分よりx+y=4の成分をより多く含有する場合、耐ガス性の上で、特に良好になる。その比率は、上記一般式(II)で表される色材を波長254nmにおいて高速液体クロマトグラフィーによって各分子量での比率を算出することによって求められる。
【0033】
又、上記一般式(II)、C.I.ダイレクトイエロー132、C.I.ダイレクトイエロー86、C.I.ダイレクトイエロー173、C.I.アシッドイエロー23、C.I.ダイレクトブルー307、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.アシッドブルー9から選択されるイエロー染料とシアン染料との合計含有量は、上記一般式(I)で表される色材の含有量の1〜15質量%とすることが好ましい。
【0034】
(水溶性有機溶剤と水)
インクの水性媒体に含まれる水溶性有機溶剤として、脂肪族一価アルコール、多価アルコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶剤、含硫黄極性溶剤等を含有してもかまわない。又、色材である染料のインク中における溶解性が良好であり、安定したインク吐出のための粘度を有し、且つノズル先端における目詰まりを生じさせないために、インク中の水の含有量は30〜95質量%の範囲が好ましい。
【0035】
(添加剤)
又、本発明においては、インク中に必要に応じて、尿素又はエチレン尿素等の含窒素化合物、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤及び水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させてもよい。
以上の如き構成材料からなる本発明のインクの製造方法自体は従来公知の方法でよく、特に製造方法は限定されない。又、上記の本発明のインクはブラックインクであるが、カラー画像の形成に際しては、イエロー、マゼンタ、シアン、その他のカラーインクと組み合わせてインクセットとしても使用できる。
【0036】
(記録方法)
以上の如き本発明のインクを用いて記録を行うのに好適な記録方法及び装置としては、これらのインクが収容されるインク収容部を有する記録ヘッドの室内のインクに、記録信号に対応した熱エネルギーを与え、該エネルギーによりインク液滴を発生させる方法及び装置が挙げられる。
【0037】
図1〜図3に、その主要部である記録ヘッドの構成例を示した。ヘッド13は、インクを通す溝14を有するガラス、セラミックス、又はプラスチック板等と、感熱記録に用いられる発熱抵抗体を有する発熱ヘッド15(図ではヘッドが示されているが、これに限定されるものではない)とを接着して得られる。
【0038】
発熱ヘッド15は、酸化シリコン等で形成される保護膜16、アルミニウム電極17−1及び17−2、ニクロム等で形成される発熱抵抗体層18、蓄熱層19、アルミナ等の放熱性のよい基板20より成っている。
【0039】
インク21は、吐出オリフィス(微細孔)22まで満たされており、圧力Pによりメニスカス23を形成している。上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域(ヒータ)が急速に加熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が吐出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴となり、被記録材に向かって飛翔する。
【0040】
図3には、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0041】
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の1例を示した。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端は、ブレード保持部材によって保持されて、固定端となりカンチレバーの形態をなす。ブレード61は、記録ヘッドによる記録領域に隣接した位置に配設され、又、図4に示した例の場合は、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。
【0042】
62はキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配設され、記録ヘッドの移動方向と垂直な方向に移動して、吐出面と当接しキャッピングを行う構成を具える。更に、図4中の63は、ブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッドの移動経路中に突出した形態で保持される。
【0043】
上記ブレード61、キャップ62、インク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によってインク吐出口面の水分、塵やほこり等の除去が行われる。
【0044】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は、記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモータ68(不図示)によって駆動されるベルト69と接続している。これにより、キャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0045】
51は、被記録材を挿入するための給紙部、52は不図示のモータにより駆動される紙送りローラである。これらの構成によって記録ヘッドの吐出口面と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行するにつれて、排紙ローラ53を配した排紙部へ排紙される。
【0046】
上記構成において、記録ヘッド65が記録終了等でホームポジションに戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中へ突出するように移動する。
【0047】
記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても、記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上記した記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って、上記ワイピングが行われる。
【0048】
図5は、ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す断面図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にできる。44は廃インクを受容するインク吸収体である。
【0049】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上記の如きヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようにそれらが一体になったものも好適に用いられる。
【0050】
図6において、70は記録ユニットであって、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。72は記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図4で示す記録ヘッド65に代えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0051】
本発明に好適に使用できる記録装置及び記録ヘッドの他の具体例としては、例えばインク滴の吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の液体吐出ヘッドとしての液体吐出ヘッド、及び、この液体吐出ヘッドを用いる液体吐出装置が挙げられる。このような液体吐出ヘッド、この液体吐出ヘッドを用いる液体吐出装置並びに液体吐出方法の具体例としては、例えば特開2002−173625公報の図8〜22、並びに発明の詳細な説明の欄に記載されている当該図面の説明に記載されている。
又、本発明に好適に使用できる、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の記録ヘッドの他の実施態様としては、例えば、特許第2783647号公報に記載のように、所謂エッジシュータータイプが挙げられる。
【0052】
又、本発明に好適に使用できる、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の記録ヘッドの他の実施態様としては、例えば、特許第2783647号公報に記載のように、所謂エッジシュータータイプが挙げられる。
【0053】
(被記録材)
本発明のインクジェット記録方法に用い得る被記録材としては、インクを付着して記録を行う被記録材であれば何れのものでも使用することができる。本発明は、染料や顔料等の色材をインク受容層内の多孔質構造を形成する微粒子に吸着させて、少なくともこの吸着した微粒子から画像が形成される被記録材に適用され、インクジェット法を利用する場合に特に好適である。このようなインクジェット用の被記録材としては支持体上のインク受容層に形成された空隙によりインクを吸収するいわゆる吸収タイプであることが好ましい。吸収タイプのインク受容層は、微粒子を主体とし、必要に応じて、バインダーやその他の添加剤を含有する多孔質層として構成される。
【0054】
微粒子の例としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナ或はアルミナ水和物等の酸化アルミニウム、珪藻土、酸化チタン、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛等の無機顔料や尿素ホルマリン樹脂、エチレン樹脂、スチレン樹脂等の有機顔料が挙げられ、これらの1種以上が使用される。
【0055】
バインダーとして好適に使用されているものには水溶性高分子やラテックスを挙げることができる。例えば、ポリビニルアルコール又はその変性体、澱粉又はその変性体、ゼラチン又はその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸又はその共重合体、アクリル酸エステル共重合体等が使用され、必要に応じて2種以上を組み合せて用いることができる。その他、添加剤を使用することもでき、例えば、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が使用される。
【0056】
特に、本発明のインクジェット記録方法に好適に用い得る被記録材は、上述の微粒子として、平均粒子径が1μm以下の微粒子を主体として、インク受容層を形成したものが好ましい。上記の微粒子として、特に好ましいものは、例えば、シリカ又は酸化アルミニウム微粒子等が挙げられる。
【0057】
シリカ微粒子として好ましいものは、コロイダルシリカに代表されるシリカ微粒子である。コロイダルシリカ自体も市場より入手可能なものであるが、特に好ましいものとして、例えば、特許第2803134号、同2881847号公報に掲載されたものを挙げることができる。酸化アルミニウム微粒子として好ましいものとしては、アルミナ水和物微粒子を挙げることができる。このようなアルミナ系顔料の一つとして下記一般式(III)により表されるアルミナ水和物を好適なものとして挙げることができる。
【0058】
上記一般式(III)中のnは1、2又は3の整数の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。但し、mとnは同時には0にはならない。mH2Oは、多くの場合mH2O結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相をも表すものであるため、mは整数又は整数でない値を取ることもできる。又、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る。
【0059】
アルミナ水和物は一般的には、米国特許第4,242,271号明細書、米国特許第4,202,870号明細書に記載されているようなアルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解のような、又、特公昭57−44605号公報に記載されているアルミン酸ナトリウム等の水溶液に硫酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和を行う方法等の公知の方法で製造されたものを使用したものが好適である。
【0060】
【実施例】
次に実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。尚、特に指定のない限り、実施例及び比較例のインク成分は「質量部」を意味する。
<実施例1、2、参考例1〜3及び比較例1〜4>
表2及び3に示した各成分を混合し、十分攪拌して溶解後、0.20μmフィルターにて加圧濾過を行い、実施例1、2、参考例1〜3及び比較例1〜4のインクを夫々調製した。
【0061】
【0062】
【0063】
<インクの評価>
上記で得られた本発明の実施例1、2、参考例1〜3及び比較例1〜4のインク及びこれらのインクからなるインクセットの各々を記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置であるカラーインクジェットプリンターにそれぞれ搭載し、以下の(1)及び(2)について下記の方法及び基準に従って評価した。表4に、これらのインクを用いて得られた評価結果を示した。
【0064】
(1)色調
前記のプリンターに所定のインクを充填して、光沢紙(PR−101;キヤノン製)にインクの打ち込み量が100%のベタ画像と50%のハーフトーン画像を印字した。印字物を24時間自然乾燥させ、CIE L*a*b*をグレタグ スペクトリノ(Gretag Spectrolino)(商品名:グレタグ(Gretag)社製)で測定し、これらの測定値を下記の基準で評価した。
○:a*、b*の絶対値が10未満。
×:a*、b*の絶対値が10以上。
【0065】
(2)耐ガス性
前記のプリンターに所定のインクを充填して、光沢紙(PR−101;キヤノン製)に画像を印字した。その後、印字物を24時間自然乾燥させ、オゾンフェードメーターにて、槽内温度40℃、相対湿度55%、3ppmのオゾン雰囲気下の条件で、2時間印字物を投入した。試験前後の印字物の色調変化を目視にて評価した。
○:画像が試験前と比べ実用上劣化が認められない。
△:画像に多少変褪色がみられ、色調の変化がみられる。
×:画像に変褪色がみられ、色調の変化が大きい。
【0066】
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、優れた耐ガス性を与えることができ、且つよりニュートラルに近い色調を有し、更には褪色前後の色調変化を抑えたブラックインク、インクジェット記録方法、記録ユニット、インクカートリッジ及びインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インクジェット記録装置のヘッド部の縦断面図。
【図2】 インクジェット記録装置のヘッド部の横断面図。
【図3】 図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図。
【図4】 インクジェット記録装置の一例を示す斜視図。
【図5】 インクカートリッジの縦断面図。
【図6】 記録ユニットの斜視図。
【符号の説明】
13:ヘッド
14:インク溝
15:発熱ヘッド
16:保護膜
17−1、17−2:アルミニウム電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク滴
25:被記録材
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラ
53:排紙ローラ
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モータ
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
Claims (5)
- 少なくとも水溶性有機溶剤、水、尿素、及び色材を含むインクジェット用ブラックインクにおいて、下記一般式(I)で表される染料と、C.I.ダイレクトイエロー86と、C.I.ダイレクトブルー199とを含み、かつ、一般式(I)で表される染料の含有量がインク全量に対して1.0〜15.0質量%であり、C.I.ダイレクトイエロー86及びC.I.ダイレクトブルー199の含有量が、各々前記一般式(I)で表される色材の1質量%以上15質量%以下であることを特徴とするインクジェット用ブラックインク。
(上記一般式(I)中のR1及びR2は、各々独立に、置換若しくは未置換の炭素数1乃至4のアルキル基を表し、少なくともR1及びR2のうち何れかは1つの水酸基を有する。R3は水素原子、又は置換若しくは未置換のフェニル基を表す。mは1又は2を表す。Mは対イオンであり、各々独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム或いは有機アンモニウムの何れかを表す。) - 請求項1に記載のインクジェット用ブラックインクをインクジェット法で被記録材に向けて吐出させる工程を有することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項1に記載のインクジェット用ブラックインクを保持しているインク収納部を有していることを特徴とするインクカートリッジ。
- 請求項1に記載のインクジェット用ブラックインクを収容しているインク収容部、及び該インクを吐出するためのインクジェット記録ヘッドを有していることを特徴とする記録ユニット。
- 請求項1に記載のインクジェット用ブラックインクと、該インクを吐出させるためのインクジェット記録ヘッドを有していることを特徴とするインクジェット記録装置。
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