JP4620808B2 - 突然変異上皮成長因子受容体を標的とする試薬および方法 - Google Patents

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Description

序論
本発明は、米国国立衛生研究所後援の研究中に得られた。米国政府は本発明の当然の権利を有することができる。
発明の背景
いずれの癌療法の成功も、腫瘍性細胞を正常細胞から区別するその能力に基いている。最新の化学療法または放射線療法計画は、腫瘍細胞の示差的成長速度に基いている。実際に、このような療法は、いくつかの癌を治療する場合に大いに成功してきたが、多数の他の癌に対して、現行の治療は、現実には一時しのぎであるかまたは長期間には効果がない。脳腫瘍療法の進歩は、60才を越えると生存曲線が顕著に変化しなかったように、特に不十分であった。患者の免疫系の採集などの生物学的に基礎付けられた理学療法または分子生物学における最近の研究に基いた治療法を用いて若干の進歩が成されてきた。しかしながら、癌細胞に対するこれらの治療法の特異性は不十分である。生物学に基いた療法の研究の多くは、腫瘍特異的変化を明確にすることに集中してきた。
腫瘍を破壊するのに患者自身の免疫系を利用する考えは、おそらく、用いられている最も古い生物学的に基礎付けられた癌療法である。この方法の成功は、体液性および細胞性応答両方を引き出すであろう適当な抗原の同定に基いている。免疫系は、以前に遭遇したことがない抗原を最も効率よく認識するので(ヘルストロム(Hellstrom),I.およびヘルストロムK.E.,Annals of New York Acad Sci 1993,690,24-33)、理想的には、免疫感作は、厳密に腫瘍細胞上で発現される腫瘍特異的抗原を用いるべきである。このような抗原の同定は困難であったが、しかしながら、近年、突然変異したまたは転位した遺伝子を単離することが進歩してきた。p53、Rbおよびras遺伝子などのこれまでに特性決定された変化のほとんど全部が、細胞内タンパク質に影響を与える。最近のデータは、細胞内分子がなお、細胞溶解性Tリンパ球によって認識されうることを示しているが、しかしながら、腫瘍死滅の相対効率は知られていない。
グリオーム異種移植を用いる研究は、しかしながら、増幅された上皮成長因子(EGF)受容体遺伝子から発現されたタンパク質が、細胞表面上にあることを示した(ハンフリー(Humphrey)ら、Cancer Research 1988,48,2231-2238)。EGF受容体遺伝子は、グリア芽細胞腫多形腫瘍の40%で増幅されることが示された(リバーマン(Libermann)ら、Nature 1985,313(5998),144-7;ウォン(Wong)ら、Proc Natl Acad Sci USA 1987 84(19),6899-903)。この受容体は、乳房、皮膚および膀胱の腫瘍を含めた種々の腫瘍に関係していた(ハリス(Harris),A.L.Recent Results in Cancer Research 1989,113,70-77)。これらの研究の大部分において、増加した量の受容体メッセージ、タンパク質またはEGF結合が見られた。更に、EGF受容体遺伝子の増幅を伴う腫瘍において、その遺伝子は、しばしば、欠失および/または転位が行われていることが示された(リバーマンら、Nature 1985,313(5998),144-7;ウォンら、Proc Natl Acad Sci USA 1987 84(19),6899-903)。
正常なEGF受容体に対応するcDNA配列は、ウリッヒ(Ullrich)らによってNature 1984 309,418-425で報告された。ウォンら、Proc Natl Acad Sci USA 1992,89,2965-2969、およびフォーゲルスタイン(Vogelstein)およびビグナー(Bigner)(PCT/US90/04489)は、5種類の悪性グリオームにおいて、遺伝子変化がこの遺伝子の転位または欠失に関係したことを特徴付けた。彼等は、突然変異EGF受容体タンパク質が、構造的に変化した受容体を生じる3種類の遺伝子欠失および/または転位を示す細胞中に存在することを見出した。確認された欠失の第一クラスは、貫膜ドメインに近い細胞質外ドメイン中にギャップを生じる。欠失の第二クラスは、EGF受容体の細胞質外ドメインの遠位部分の脱離を引き起こす。第三クラスは、実質的に貫膜部分および細胞質内ドメインだけを残すEGF受容体の外部ドメインの大部分の欠失を特徴とする。これらの突然変異体クラスのそれぞれに対応するタンパク質をコードしているDNA配列は開示された。フォーゲルスタインおよびビグナーは、これらのDNA配列が、形質転換またはトランスフェクションによって宿主細胞中に導入され且つ種々の宿主/ベクター組み合わせを用いて発現されうることを示唆している。lacシステム、trpシステム、tacシステム、trcシステム、λファージの主要オペレーターおよびプロモーター部分、fdコートタンパク質の調節部分、酵母の解糖プロモーター、酵母酸性ホスファターゼのプロモーター、酵母a接合因子のプロモーター、およびポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルスまたはサルウイルスに由来するプロモーター、並びに原核性または真核性細胞およびそれらの組み合わせのそれらのウイルスの遺伝子の発現を調節することが知られている他の配列を含めた多数の有用な発現ベクターが開示される。更に開示されるのは、本発明において有用な発現宿主の例であり、それらには、真核性および原核性宿主、例えば、大腸菌(E.coli)SG−936、大腸菌HB101、大腸菌W3110、大腸菌X1776、大腸菌X2282、大腸菌DHIおよび大腸菌MRC1を含めた大腸菌、シュードモナス属(Pseudomonas)、枯草菌(Bacillus subtilis)を含めたバチルス属(Bacillus)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、酵母および他の真菌の菌株、組織培養中のCOS細胞およびCHO細胞などの動物細胞、およびヒト細胞並びに植物細胞が含まれる。フォーゲルスタインおよびビグナーは、DNA配列によって形質転換された原核性または真核性宿主のペプチド生産物を、抗体の産生において用いることができることを示唆している。
EGF受容体中のヌクレオチド275−1075からのインフレーム欠失(フォーゲルスタインおよびビグナーによってクラスIまたはタイプIと称されたが、以下、III型と称する)は、自然のままのEGF受容体中の遠位ポリペプチド配列であったものの融合接合部において局所アミノ酸配列を生じることが実証された。(ハンフリーら、Proc Natl Acad Sci USA 1990 87,4207-4211)。その接合部の範囲にわたる14アミノ酸ペプチドは、化学的に合成され、スカシガイのヘモシアニンに対して結合され、そしてウサギにおいて免疫原として用いられた。引出された抗体は、ELISAにおいて融合ペプチドと特異的に反応した。抗融合抗体が精製され、そしてグリオーム欠失突然変異体を選択的に結合することを示した。この抗ペプチド抗体は、腫瘍造影および免疫療法のための理想的な候補として示唆された。
発明の概要
本発明の目的は、III型突然変異EGF受容体を過剰発現することができる細胞系を提供することである。これらの細胞系を生産する方法もまた提供する。
本発明のもう一つの目的は、腫瘍形成を阻害するワクチンを提供することである。該ワクチンは、突然変異ヒトEGF受容体中に存在する融合接合部に対して、この突然変異体に対する免疫応答が引出されるように充分に類似性を有するペプチドを含む。このワクチンを投与することによって天然に存在する突然変異EGF受容体を有する腫瘍の形成を阻害する方法もまた提供する。
本発明のもう一つの目的は、既存の腫瘍の後退を引き起こすためのワクチンであって、突然変異ヒトEGF受容体中に存在する融合接合部に対して、この突然変異体に対する免疫応答が引出されるように充分に類似性を有するペプチドを含む上記ワクチンを提供することである。このワクチンの投与は、天然に存在する突然変異EGF受容体を有する既存の腫瘍の後退を引き起こす方法を提供する。
本発明のもう一つの目的は、III型突然変異EGF受容体を過剰発現する細胞系に対して生じた抗体またはこれらの細胞系によって発現されたペプチド若しくはタンパク質を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、突然変異EGF受容体の発現を減少させる、突然変異EGF受容体を標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供することである。
【図面の簡単な説明】
図1は、正常およびIII型突然変異EGF受容体のDNAおよびペプチドを提供する。上部配列は、ウリッヒら、Nature 1984 309,418-425(配列番号:4および配列番号:5)によるヌクレオチド配列および対応するアミノ酸翻訳を示す。下部配列は、III型EGF受容体中において結果として得られた欠失および対応するアミノ酸配列(配列番号:6)を示す。
発明の詳細な説明
III型突然変異EGF受容体は、EGF受容体cDNA中のヌクレオチド275−1075間の欠失である。この欠失は、通常は遠位配列であったものの融合を引き起こして、この融合接合部で新規ペプチド配列の生成を引き起こす突然変異したcDNA配列を生じる(図1)。それは、グリア芽細胞腫瘍の17%および肺の小細胞癌の25%に存在すると報告されているように、ヒト腫瘍中の最も頻繁に天然に存在する突然変異EGF受容体である。この受容体はまた、乳癌の67%に存在することが判った。突然変異受容体に対して特異的な単クローン性抗体(mAb)を用いて、この受容体は、乳癌、非小細胞肺癌およびグリオームのサブセットに特異的な腫瘍であることが今回確証された。受容体は、末梢、中枢神経系およびリンパ系の要素を含めた、検査されたいずれの正常組織においても発現されなかった。この受容体は、卵巣腫瘍でも見られなかった。
典型的に、哺乳動物発現ベクターによる細胞系のトランスフェクションは、安定である極めて高レベルのタンパク質発現を引き起こす。従来、この突然変異受容体を発現させることを試みた研究者が遭遇した異例の問題は、タンパク質発現レベルが極めて低く、そして更に、連続培養によって不安定であるということである。本発明において、III型突然変異EGF受容体を過剰発現する一連の細胞系を発育させた。これらの細胞系の独特の性状は、それらが、極めて多量の突然変異受容体を発現することである。他の研究者は、本発明の細胞系によって発現される量よりも約20倍少ない量の突然変異受容体を得ている。更に、これらの他の細胞系から得られた突然変異受容体の発現は極めて安定していない。対照的に、本発明の細胞系は、突然変異受容体の安定な発現を有する。本発明の細胞系によって発現された受容体は、更に別の成長因子の不存在において活性である。更に、これらの細胞系は、マウスにおいて極めて攻撃的腫瘍を生じることが判った。
本発明のおいて更に提供されるのは、突然変異III型EGF受容体を過剰発現する細胞系を製造する方法である。この突然変異体に関する他の実験は、誘導されたクローン中に低量の突然変異受容体しか存在しなかったことによって制限されてきた。したがって、この方法の重要な局面は、一次グリア腫瘍中で見出されるのと同様の量の受容体を発現するクローンを生じることである。これらの細胞系を生じるために、突然変異III型EGF受容体を包含するクローンを同定する。全長EGF受容体のプラスミド構築物を、モロニーネズミ白血病ウイルス長末端反復(LTR)プロモーターを用いて転写を誘導するpLTR2などの哺乳動物発現ベクター中にクローン化する。本発明において有用な他の哺乳動物発現ベクターとしては、限定されるわけではないが、pCMV、pLSX、pSV40およびpMMTVがある。突然変異EGF受容体cDNAは、ヌクレオチド275〜1075の欠失を有するヒトグリア腫瘍細胞から得られる。突然変異体は、これらのグリア腫瘍がある患者の約17%から単離されうる。本発明において有用な具体的な腫瘍細胞系の例としては、限定されるわけではないが、ヒトGBM腫瘍D270、D317およびD256がある。次に、突然変異III型EGF受容体のcDNAを、ファージベクター中にクローン化する。本発明において用いることができるファージベクターの例としては、限定されるわけではないが、λ−ZapII、λ−gt10、λ−gt11、λ−ExLox、λ−UniZApまたはλ−GEMがある。次に、ヌクレオチド1〜274かまたはヌクレオチド1076〜5532の配列を含有するEGF受容体のcDNAフラグメントを用いて、突然変異体を同定する。いったん同定されたら、変化を包含するcDNAフラグメントを、正常なEGF受容体cDNAの残りの部分に融合して、突然変異EGF受容体を発現する以外は自然のままの正常なEGF受容体を発現する構築物と一致するクローンを生じる。例えば、そのクローンの融合接合部を含有する251bpのSstI−DraIフラグメントを、プラスミドpCO12からの2.9kbのDraI−XhoIフラグメントに対して連結する。好ましい実施態様において、次に、NIH−3T3細胞をこの発現プラスミドによって同時トランスフェクションする。用いることができる他の細胞系としては、限定されるわけではないが、BALB/3T3、RAT1、RAT2およびROVGE11がある。用いられた発現プラスミドが、275−1075欠失突然変異EGF受容体を含むpLTR HC2であることは好ましい。細胞は、更に、選択マーカーによってトランスフェクションされる。本発明において有用な選択マーカーの例としては、限定されるわけではないが、ネオマイシン耐性、ハイグロマイシン耐性、ミコフェノール酸耐性およびピューロマイシン耐性がある。好ましい実施態様において、この選択マーカーは、pKOneoなどのネオマイシン耐性の遺伝子をコードする発現プラスミドである。高濃度のタンパク質が発現されることを確実にするために、少なくとも20:1の発現プラスミド対選択マーカー比率を用いることが好ましい。平板培養された細胞を、当業者に周知のリン酸カルシウム法を用いてトランスフェクションする。トランスフェクション後、細胞をトリプシン処理し、そして適当な選択培地中に分配する。「適当な選択培地」とは、選択マーカーを発現する細胞だけを支持することができる培地を意味する。例えば、選択マーカーが、pKOneoなどのネオマイシン耐性の遺伝子をコードする発現プラスミドである好ましい実施態様において、その培地はG418硫酸塩を含む必要がある。次に、耐性クローンを選択し、そして溶解産物を、発現された受容体の量を確かめるスクリーニング用に調製する。次に、高レベルの受容体発現を示すものをサブクローン化して、細胞集団が純粋であることを確証する。
この方法を用いて、pKOneoプラスミドと、全長ヒトEGF受容体をコードしているpLTR CO12かまたはヒトGBM腫瘍からの突然変異III型EGF受容体をコードしているpLTR HC2とを用いるリン酸カルシウム沈降によってNIH−3T3線維芽細胞を同時トランスフェクションした。G418選択後、クローンのヒトEGF受容体の発現について細胞溶解産物のウェスタンブロッティングによって評価した。A431ヒト類上皮癌細胞によって発現されるのと同様のレベルまで受容体を過剰発現する細胞を同定した。以下、CO12 20c2と称される自然のままのヒトEGF受容体を過剰発現する細胞系を同定した。突然変異EGF受容体を過剰発現する細胞系もまた同定した。これらの細胞系の例としては、限定されるわけではないが、HC2 20d2、HC2 20d1、HC2 20d4、NM#3 HC2 20d2/c、HC2/NS1およびそれらの誘導体がある。
突然変異EGF受容体を過剰発現する細胞系は、EGFの不存在下の軟質寒天中で成長した。EGFの添加は、コロニー形成を促進しなかった。対照的に、HC2 20c1などのはるかに低濃度の突然変異EGF受容体を生じたクローンは、加えられたEGFがなければごく僅かしか成長せず、そしてコロニー形成はEGFによって促進されたが、このクローンは、突然変異EGF受容体を過剰発現するクローンよりもはるかに低いクローニング効率を示した。
突然変異EGF受容体を過剰発現する細胞系は、更に、内因性受容体活性化を示すことが判った。トランスフェクタント細胞を、ヒトEGF受容体に特異的な抗体を用いるイムノブロット法によって最初に分析した場合、種々のクローンによって生じた受容体の量はかなり異なり、更に多量の受容体を生じるいくつかのクローンが存在した。(EGFによって処理されなかった細胞から調製された)同じ溶解産物の、ヒトEGF受容体の活性型に特異的な単クローン性抗体を用いるイムノブロット分析は、溶解産物のいくつかが活性EGF受容体を含んでいたことを示した。しかしながら、活性化は、実質的な量のEGF受容体を含んでいた溶解産物においてのみ検出することができた。HC2 20d2溶解産物は、EGFによって処理されたA431細胞と同様の量の活性EGF受容体を示した。
免疫細胞化学は、EGF受容体に対する抗体を用いてこれらの細胞系について行われた。HC2 20d2クローンは、CO12 20c2よりも強く染色し且つ形質転換された細胞系の形態を有する。HC2 20d2よりはるかに少ない突然変異タンパク質を発現するHC2 20c1は、この抗体によって極めて弱く染色し、そして正常3T3細胞の形態とよく似た形態を有する。活性ヒトEGF受容体の抗体によって染色された場合、EGFによって処理されなかった培養中の多数のHC2 20d2細胞は明確に反応したが、CO12 20c2細胞は極めて少数しか抗体によって染色されなかった。HC2 20c1クローンのほとんどの細胞は、抗活性ヒトEGF受容体に対する反応を示さず、反応を示したものも弱い反応であった。正常ヒトEGF受容体を発現するCO12 20c2クローンのEGF(20ng/ml)による5分間程度の処理は、抗活性EGF受容体抗体による細胞染色の強度および数の増加を引き起こした。1時間以内に、CO12 20c2の培養中のほぼ全部の細胞が活性EGF受容体に対して陽性であって、そして細胞は形態学的に変化した。対照的に、本発明の細胞系は、EGFの添加を伴うことなく抗活性抗体によって染色した。
突然変異EGF受容体の多くは細胞内であると考えられる。トリトンX−100による処理を用いないホルマリン固定細胞の免疫細胞化学染色は、種々のトランスフェクタントクローンの比較的弱い表面染色を引き起こした。しかしながら、トリトンX−100処理後に染色された標本の知見は、クローンHC2 20d2中において特に顕著な暗色の、明らかに細胞内の突然変異EGF受容体の蓄積を示した。EGF受容体の活性型に対する抗体による染色はまた、このクローンの多数の細胞中で活性受容体の核周囲「キャップ」を示した。正常または突然変異EGF受容体を発現するトランスフェクタントクローン中のEGF受容体の位置を定量的に比較するために、細胞を固定し、トリトンX−100による処理を用いてまたは用いることなくEGF受容体のEGF結合ドメインに対する抗体と一緒にインキュベートし、そして125I−二次抗体によって標識した。可溶化された放射能の測定は、A431ヒト類上皮癌細胞中の約70%と比較して、EGF受容体の52〜60%が、トランスフェクタントクローン中の細胞の表面上にあることを示した。この分析は、更に、HC2 20d2およびCO12 20c2クローンが、A431細胞と同程度のEGF受容体密度を有することを実証した。A431およびCO12 20c2クローンは、同様の量の125I−EGFを結合した。対照的に、HC2 20d2細胞は、ウェスタンブロッティングおよび免疫細胞化学に基いて最高濃度のEGF受容体を発現したが、この検定において125I−EGFをほとんど結合することができなかった。
シグナル伝達は、突然変異EGF受容体を過剰発現するクローン中で変化することが判った。ホスホチロシンを含有する細胞性タンパク質のウェスタンブロッティングによる分析は、HC2 20d2クローン中の突然変異EGF受容体の内因的活性化について更に別の根拠を提供した。EGF受容体は、血清不含培地中において48時間後でさえもこれらの細胞中でリン酸化されるが、CO12 20c2またはA431細胞中のこれらの条件下においては、極めて少量のホスホチロシンしか検出できない。更に、細胞溶解の前のEGFとのインキュベーションは、CO12 20c2およびA431細胞両方において、EGF受容体並びに他の多数のタンパク質のリン酸化の急速な増加を引き起こすが、HC2 20d2中のチロシンリンタンパク質の変化はほとんどまたは全く見られない。更に、CO12 20c2と比較して、HC2 20d2中のチロシン−リン酸化タンパク質の全組み合わせの差は顕著である。具体的に、HC2 20d2細胞中でリン酸化されるタンパク質は、EGFに刺激されたCO12 20c2細胞中にも存在するが、後者よりも前者に存在するバンドがより少なく見える。EGF受容体自体の他に、両クローン中に存在する主要なリンタンパク質は、見掛けの分子量約55〜66kDa、33〜37kDaおよび22〜26kDaの三つの主要バンド中にある。これらの同様のタンパク質は、更に、EGFに刺激されたA431細胞中でチロシン−リン酸化される。リン酸化パターンのこの違いは、突然変異EGF受容体による長期間刺激のためだけではない。なぜなら、EGFの添加による正常EGF受容体による同様の刺激は、A431細胞でもCO12 20c2細胞でも同様のパターンを生じないからである。III型突然変異EGF受容体に特異的なアフィニティーカラムを用いると、HC2 20d2溶解産物全体において見られた約35および55〜66kDaチロシン−リン酸化バンド中のタンパク質は、EGF刺激の不存在下でもこれらの受容体と結合することが示され、これらのタンパク質はEGF受容体からのシグナル伝達に関与していることおよびこれらの細胞系はこれらのタンパク質を精製するための優れた源であることが示唆された。
低濃度の突然変異受容体を発現する細胞系は、高レベルのEGF受容体活性を持たないし、マウス中に注射された場合にそれらは腫瘍を形成しないであろう。それらの独特の性状ゆえに、本発明のクローンおよびこれらのクローンを含有する細胞系は、多数の種々の用途において有用である。具体的に、これらの細胞系またはマウスにおいてこれらの細胞系から形成された腫瘍は、EGFの添加を用いることなくEGF受容体を阻害する化合物を評価するのに用いることができる。他の細胞系は、この種の実験を行うのにEGFの添加を必要とし、この種の実験を一層不経済にし且つ不都合にさせる。したがって、本発明の細胞系は、EGF受容体に対して潜在的に作用する化合物をスクリーニングするための経費的に有効で且つ好都合な手段を提供する。培養中の細胞は、試験化合物によって処理した後、形質転換された表現型の復帰の形態学的根拠か、減少した細胞成長か、処理された細胞のホスホチロシン含量の減少かまたは突然変異受容体のキナーゼ活性の減少について検定することができる。更に、マウスにおいてこれらの細胞系によって形成された腫瘍は、腫瘍ワクチン、単クローン性抗体、または突然変異受容体に対して向けられたアンチセンス化合物を評価するのに有用なモデルを提供する。この細胞系の注射によって腫瘍を有するマウスは、この腫瘍に対する免疫応答に関与した物質を生産し且つ評価する場合に有用である。そのマウスは、試験物質によって処理された後に、本発明の細胞系を注射されて、その物質が腫瘍形成を妨げるかまたは腫瘍増殖を遅延させるかどうかを調べることができる。或いは、マウスに、最初に本発明の細胞系を注射した後、試験物質によって処理して、この物質が腫瘍寸法の後退または生存の延長を引き起こすかどうか調べることができる。受容体はこれらの細胞系において絶えず活性であるので、それらはまた、この受容体の生化学的経路および腫瘍の発生に関与したタンパク質および/または遺伝子を研究するのに用いることができる。本発明の細胞系はまた、EGF受容体のシグナル伝達経路および腫瘍形成に関与しているタンパク質並びに対応するcDNAクローンの同定において、および供給源として用いることができる。これらの細胞系から生産されたチロシンリン酸化タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができる。次に、これらのタンパク質の配列を、タンパク質ミクロシークエンシング技術によって決定して、核酸情報を得る。この情報を用いて、cDNAクローンを得る。腫瘍形成に関与したcDNAクローンは、親細胞からのcDNAを用いて本発明の細胞に由来するcDNAから消去する消去cDNAハイブリダイゼーション法によって得られる。本発明において更に提供されるのは、突然変異ヒトEGF受容体中に存在する融合接合部からのペプチド配列を含むワクチンである。本発明のワクチン中のペプチドは、III型突然変異EGF受容体に対して免疫応答を引き起こすように、正常EGF受容体の二つのかつての遠位部分からの配列の部分と十分に類似性を有しているべきである。好ましい実施態様において、このペプチドは、少なくとも、リシンの後にグリシンである、正常EGF受容体アミノ酸配列の5位のアミノ酸に近位の且つを含むアミノ酸配列、およびアスパラギンである正常EGF受容体の274位のアミノ酸に遠位の且つを含むアミノ酸配列を含む(ウリッヒら、Nature 1984 309,418-425)。更に好ましい実施態様において、このワクチンは、ペプチド配列LEEKKGNYVVTDHC(配列番号:1)を含む。本開示について当業者によって理解されるように、免疫応答を引き出すことができる、長さまたは配列の修飾を含む同様のペプチドもまた、本発明において用いることができる。ワクチン中のペプチドは、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンなどの担体に対して結合していることが好ましい。本発明のワクチンは、アジュバントを含むこともできる。ワクチン中において有用なアジュバントは当業者に周知であり、したがって、適当なアジュバントの選択は、本開示について当業者が常套手段によって行うことができる。有用なアジュバントの例としては、限定されるわけではないが、完全および不完全フロイント、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、リゾレシチンなどの界面活性剤、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチドおよびオイルエマルジョンがある。
従来の研究者は、ペプチド配列に基く多数のワクチンが、腫瘍の形成を妨げるのに極めて不十分であり且つこのようなペプチドワクチンはいずれも、既存腫瘍の後退を引き起こすことができないということを見出した。対照的に、本発明のペプチドワクチンによる免疫感作は、ここで、腫瘍の形成に対して防御することが見出された。マウスを、完全フロイントアジュバント中のペプチドワクチンかまたは対照ワクチンによって免疫感作した後、不完全アジュバントで2週間後に免疫感作した。更に2週間後、被験動物に107個のNM#3 HC2 20d2/c細胞を注射した。ペプチドワクチンを与えられた16匹のマウスの内4匹は腫瘍を生じ、そしてこれらのマウスの内2匹の腫瘍は、屠殺が必要とされる寸法まで進行した。対照的に、対照ワクチンを与えられた15匹のマウスの内13匹は腫瘍を生じ、そして9匹の腫瘍が、屠殺が必要とされる寸法まで進行した。したがって、本発明のペプチドワクチンによる予めのワクチン注射は、腫瘍形成の全発生率を有意の減少させ、そして更に、最終腫瘍寸法に影響を与えた。ペプチドワクチンを与えられた被験動物の内数匹は、107個のHC2 20d2/c細胞を6か月間〜1年後に再度試験投与された。腫瘍形成は見られなかった。
ペプチドワクチンは、定着腫瘍の拒絶を促すことが判った。60匹のマウスに、107個のNM#3 HC2 20d2/c細胞を皮下(s.c.)注射した。4日後、半数のマウスに、完全フロイントアジュバント中の本発明のペプチドワクチンを注射した。他の半数には、担体および完全フロイントアジュバントだけを与えた。腫瘍は、両方の組において漸進的に約2週間増殖したが、ペプチドワクチンをワクチン注射されたマウスは、ワクチン注射の時点以後、対照と比較して増大した腫瘍拒絶を示した。ワクチン注射は、更に、ペプチドワクチンを与えられた被験動物がより小さい腫瘍容積を有したように、最終腫瘍寸法に影響を与えた。対照ワクチン注射群では被験動物13匹が屠殺を必要とし、ペプチドワクチン注射群では8匹が屠殺された。しかしながら、ペプチドワクチンを与えられた群からの被験動物5匹は、最初の腫瘍の完全な後退を示したが、約40〜50日後に二次腫瘍を生じた。これらの再発性腫瘍のEGFR III型突然変異体の発現について、ウェスタンブロット分析によって調べた。二次腫瘍の一つだけが、EGFR III型突然変異体発現の何等かの証拠を示した。比較において、屠殺された対照ワクチン注射マウスからの5個の腫瘍のEGFR III型突然変異体の発現についても調べたが;これらの腫瘍の一つだけがこのタンパク質を発現することができなかった。これらの結果は、ペプチドワクチンを与えられたマウスの免疫系が、突然変異受容体を発現する細胞を全て根絶させるのに成功したことおよびその後の腫瘍は最初の腫瘍塊中の変異細胞から生じたことを示している。
CTL検定は、本発明のペプチドワクチンによって免疫感作された被験動物から単離されたリンパ球が、CO12細胞でもNIH 3T3細胞でもなくHC2細胞の特異的溶解を示したということを示し、突然変異受容体に対して特異的に向けられたCTL活性が存在したことが実証された。対照ワクチン注射マウスからのリンパ球は、これらの標的細胞のいずれの特異的溶解も示さなかった。
本発明の細胞系は、抗体を生じさせる免疫原として用いることができる。これらの細胞の注射は、ペプチド単独によって引き出されたよりも高い親和性を有する抗体を生じた突然変異受容体に特異的である抗体反応を引き出した。接合部の範囲にわたる合成14アミノ酸ペプチドによる免疫感作は、マウスおよびマカクにおいて抗EGFR III型活性を引き出さなかった(ウィクストランド(Wikstrand)ら、J.Neuroimmunol.1993,46,165-174)。しかしながら、自然のままの細胞表面の成分としてかまたは本発明の細胞系からのミクロソーム標品のEGFR III型分子による免疫感作によって、高親和性ネズミ抗EGFR III型単クローン性抗体の生産が達成された。当該技術分野において知られている様々な方法を、これらの抗体の生産に用いることができる。このような抗体としては、限定されるわけではないが、多クローン性、単クローン性、キメラ、1本鎖、FabフラグメントおよびFab発現ライブラリーがある。一つの実施態様において、細胞をアジュバントと混合し、そして限定されるわけではないが、ウサギ、マウス、ラット、ヤギおよびウマを含めた種々の宿主動物中に注射することができる。
特異的免疫活性が可能であるこれらの細胞系から生産されたペプチド、タンパク質またはそれらのフラグメントは、本発明において抗体を生じさせるのに用いることができる。これらのペプチド、タンパク質またはそれらのフラグメントは、免疫原担体と結合することができる。アジュバントは、ペプチドまたはタンパク質と結合して投与されて、宿主動物の免疫応答を増加させることができる。
本発明において用いることができるアジュバントとしては、限定されるわけではないが、完全および不完全フロイント、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、リゾレシチンなどの界面活性剤、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチドおよびオイルエマルジョンがある。
本発明の細胞系または細胞系によって発現されたペプチド若しくはタンパク質に対して生じた単クローン性抗体は、培養中の連続的継代細胞系による抗体の生産に備えるいずれの技術を用いても製造することができる。例えば、単クローン性抗体L8A4、Y10およびH10は、HC2 20d2細胞および合成14アミノ酸ペプチドか;HC2 20d2細胞、HC2 20d2ミクロソーム膜および合成14アミノ酸ペプチドか;またはHC2 20d2ミクロソーム膜および合成14アミノ酸ペプチドそれぞれの組み合わせによってBalb/cマウスを免疫感作することによって製造された。このような技術は当業者に周知であり、限定されるわけではないが、コーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)、Nature 1975,256,495-497によって最初に記載されたハイブリドーマ技術、コスボア(Kosbor)ら、Immunology Today 1983,4,72によって記載されたヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびコール(Cole)ら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,77-96頁によって記載されたEBV−ハイブリドーマ技術がある。
次に、細胞系またはこれらの細胞系によって発現されたペプチド若しくはタンパク質に対して生じた抗体を用いて、生物学的試料中の同様のペフチドの存在および細胞下分布についてスクリーニングすることができる。単クローン性抗体L8A4およびY10を用いて、グリオームにおけるEGFR III型発現の発生率は、最初に計画されたより一層高いことが実証された。更に、EGFR III型は、乳癌および非小細胞肺癌では容易に検出できなかった。この突然変異受容体はまた、卵巣腫瘍で同定された。
更に、本発明の単クローン性抗体は治療法として用いることができる。グリア腫瘍に対して、放射性核種かまたは毒素に結合したEGF受容体に対する抗体を用いて腫瘍細胞を死滅させるいくつかの臨床的試みがあった(ブラディ(Brady)ら、Intl J.Rad.Onc,Biol,Phys.1992,22(1),225-30;マスイ(Masui)ら、Cancer Research 1989,49(13),3482-8;メンデルゾーン(Mendelsohn),J.,Sem Can Biol 1990,1(5),339-44;メンデルゾーン,J.,J.Steroid Biochem & Mol Biol 1990,37(6),889-92;サワムラ(Sawamura),Yおよびデトリボレト(DeTribolet),N.,J.Neurosurgical Sci 1990,34(3-4),265-78)。この方法は、グリア腫瘍が極めて高濃度のタンパク質を発現するという事実を利用している、しかしながら、脳以外にも、同様の量のタンパク質を発現するいくつかの臓器、特に、肝臓がある。したがって、これらの抗体による特異性は依然として課題のままである。しかしながら、本発明においては、突然変異体エピトープに対して抗体を生じさせることによって、特異性を与え且つ全身毒性を減少させる。
単クローン性抗体L8A4、H10およびY10のインターナリゼーションの速度および程度を調べた。3種類の単クローン性抗体全部が、HC 20d2細胞によってインターナリゼーションされた。単クローン性抗体が細胞に入る速度および百分率は、L8A4およびY10についてH10と比較して僅かに異なる。mAb H10は僅かしか細胞表面から失われず、そして細胞培養上澄みに関係した計数のより小さい百分率がTCA可溶性であり、インターナリゼーションおよび分解の前に、自然のままのH10の部分が細胞から解離することが示された。in vivo生体分布実験は、これらmAbの二つ、すなわち、L8A4およびH10が、ヌードマウスにおいて定着したEGFR発現性腫瘍異種移植片に特異的に局在することを示した。したがって、本発明の細胞系に対して生じた抗体は、癌の治療において有用な化学療法薬に対して有効なデリバリー物質として役立ちうると考えられる。
突然変異III型EGF受容体を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドもまた、本発明において提供する。好ましい実施態様において、該アンチセンスオリゴヌクレオチドは、正常EGF受容体cDNAのかつての遠位部分であったものからの配列を含む。これは、ウリッヒら、Nature 1984 309,418-425によって定義されたように、ヌクレオチド1076に遠位の且つを含むアンチセンスヌクレオチド配列に結合した、ヌクレオチド274に近位の且つを含むアンチセンスヌクレオチド配列を包含すると考えられる。好ましい実施態様において、これは、配列5’-CATAATTACCTTTCTTTT-3’(配列番号:2)を含むと考えられる。本開示について当業者に理解されるように、長さの変更または変化を含む同様の配列もまた、本発明において用いることができるが、本質的に特徴的であるのは、その配列が5’TACCTT 3’を含む必要があるということである。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、突然変異受容体をダウンレギュレートすることが判った。ウイルス複製を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、種々のウイルスおよび内因性転写物両方の発現を選択的にノックアウトするための手段として多くの研究者によって用いられてきた。アンチセンス研究および方法がこれらのオリゴヌクレオチドをいかにより有効にさせるかについての理解はかなり進んできた。DNAかまたはRNAから製造されたアンチセンス物質は広く用いられている。アンチセンスDNAは、典型的なオリゴマーが14〜21ヌクレオチド長さである場合にオリゴデオキシヌクレオチドを用いる。有効な阻害は、1〜50μMで見られた。アンチセンスRNA配列を発現するための哺乳動物発現ベクターの使用は、アンチセンス転写物が一定して且つ内因的に生産されるので、分解または急速クリアランスが重要である場合に用いることもできる。基本的線維芽細胞成長因子受容体に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、モリソン(Morrison)によって用いられて、ヒトグリオーム細胞系SNB−19の成長を特異的に阻害した(モリソン,J.Biol Chem 1991,266(2),728-34)。50μM濃度のアンチセンスプライマーは、80%の成長阻害を引き起こした。EGF受容体に対するアンチセンスRNAは、二つの異なる実験室で首尾よく用いられて、偏平上皮細胞系NAおよびKBの成長を阻害した(モロニ(Moroni)ら、J.Biol Chem 1992,267,2714-2723;ヤマダ(Yamada)ら、Exp Cell Res 1989,184,90-98)。どちらのグループも、これらの細胞の成長性の低下に相関したタンパク質の量の減少を実証することができた。更に、IGF−I遺伝子に対するアンチセンスRNAは、タンパク質の量を減少させただけでなく、既存の腫瘍の免疫原性も増大させたことが示された(トロジャン(Trojan)ら、Science 1993,259,94-97)。
本発明において、突然変異受容体を標的としたオリゴヌクレオチドを、標準的なB−シアノエチルホスホルアミダイト化学によって合成し且つエタノール沈降によって精製した。当業者にとって常套の他の合成法を用いることもできる。例えば、配列5’-CATAATTACCTTTCTTTT-3’(配列番号:2)を有するアンチセンスオリゴマーを合成した。配列5’-AAAAGAAAGGTAATTATG-3’(配列番号:3)を有するセンスオリゴマーも合成した。突然変異EGF受容体を過剰発現する本発明の細胞を、2.5μM、10μMまたは40μMのセンスかまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドによって処理した。新鮮なオリゴマーを全4日間毎日加えた。次に、細胞を溶解させ、SDS−PAGEで実験を行い、そしてニトロセルロースに移した。ブロットを突然変異受容体に対する抗体と一緒にインキュベートした。アンチセンスによって処理された細胞において、突然変異受容体の優先的ダウンレギュレーションが存在することが見出され、それは40μM用量で極めて顕著である。したがって、これらのアンチセンス物質を用いて、この突然変異受容体の発現を減少させることができる。
以下の非制限的実施例は、さらに本発明を説明するために提供される。
実施例
実施例1:発現ベクターの構築
完全に配列決定された全長EGF受容体cDNAを、突然変異受容体の生成の基準として用いた。正常ヒトEGF受容体cDNAを含むプラスミド構築物pCO12は、NCIから得られており、ウリッヒら、Nature 1984 309,418-425によって決定されたcDNAの配列に該当する。EGF受容体cDNAは、モロニーネズミ白血病ウイルス長末端反復(LTR)プロモーターを用いて転写を駆動する哺乳動物発現ベクターpLTR−2中にクローン化された。この構築物をpLTR2−CO12と称した。III型EGF受容体突然変異体を発現する構築物を誘導するために、III型EGF受容体cDNAの一部分を、この特定の突然変異体を過剰発現するヒトグリア芽細胞腫瘍D270から作成されたcDNAライブラリーからクローン化した。異常な融合接合部を包含する251bpのSstI−DraIフラグメントを、pCO12からの2.9bpのDraI−XhoIフラグメントに対して連結させた。pLTR2−HC2と称されるこの構築物は、突然変異EGF受容体を発現すると考えられるが、他の点では正常EGF受容体を発現する構築物と一致した。
実施例2:高濃度の突然変異EGF受容体を発現する細胞系のトランスフェクションおよび誘導
NIH−3T3細胞はATCCから得られた。NIH−3T3細胞系は、10%ウシ胎児血清を含むDMEM中で維持された。NIH−3T3細胞を、細胞1×106個/100mm皿で平板培養した。培地を翌日交換し、そして3時間後に、標準的なリン酸カルシウムトランスフェクション法の変法を用いて細胞をトランスフェクションした。細胞は、pKOneo(2μg)を加えたpLTR CO12か、pLTR−HC2かまたはpLTR2ベクター単独によって、10:1および20:1の比率で同時トランスフェクションされた。培地を翌日交換し、そして2日後に、各プレート中の細胞をトリプシン処理し、そしてG418硫酸塩350μg/mlを含有する10%ウシ胎児血清培地(完全培地)(ギブコ(Gibco)/BRL,ゲイサーズバーグ,MD)中に1:5に分配した。2週間以内に、個々のG418耐性コロニーが現れた。これらを採取し、そして最初に25cm2フラスコ中に、続いて75cm2フラスコ中に増殖させた。十分な細胞が得られた時点で、サブクローンを、最初に、以下に記載のようにタンパク質濃度についてウェスタンブロット法によって分析した。タンパク質量のスクリーニングは、まず第一に、所望のレベルのタンパク質発現と共にサブクローンを得る最も有効な方法であり且つ高レベルの発現と共にクローンを供給するのに決定的であった。全部で32のCO12および34のHC2クローンをウェスタンブロッティング法によって評価した。適当なクローンが見つけられた時点で、それらを増殖させた後、サザンブロット法によって分析して、ゲノム組込みを実証した。4種類のHC2クローンが、検出可能な量の突然変異EGF受容体を生じた。細胞系が高い均一レベルの発現を有したことを確かめるために、それぞれの細胞系を、実施例4で記載のように軟寒天中に播種した。
実施例3:ヒトEGF受容体およびチロシン−リン酸化タンパク質のウェスタンブロッティングおよび免疫検出
細胞を、1mMオルトバナジン酸ナトリウム含有、pH7.25のPBS/TDS緩衝液(10mM二塩基性リン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、1%トリトンX−100、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、0.2%アジ化ナトリウムおよび0.004%フッ化ナトリウム)中で溶解させた。タンパク質濃度は、ブラドフォード色素結合法(バイオラド(BioRad),ヘラクレス,CA)によって測定された。溶解産物を、6%SDSおよび10%β−メルカプトエタノールを含有する等容量の2×試料緩衝液と混合し、3分間沸騰させ、そして7.5%SDS−PAGEゲル上において不連続緩衝液系中3.5%ポリアクリルアミドスタッカーによって電気泳動した。タンパク質を半乾燥転移装置によってニトロセルロース膜に転移させ、そしてその膜をブロトー(blotto)/TTBS中で遮断した。膜を、ブロトー/TTBS中において一次抗体と一緒に2時間インキュベートした。ヒトEGF受容体の細胞内エピトープに対する抗体(クローンZ025)またはヒトEGF受容体の活性型(クローンZ026)は、ザイムド・イムノケミカルズ(Zymed Immunochemicals)(サン・フランシスコ,CA)製であり且つ0.5μg/mlの濃度で用いられ;ホスホチロシンに対する抗体(クローン4G10)はアプステート・バイオテクノロジー・インコーポレーテッド(Upstate Biotechnology Inc.)(レーク・プラシッド,NY)製であり且つ1μg/mlの濃度で用いられた。TTBSによる洗浄後、ブロットを、0.3μCi/mlの125I−ヒツジ抗マウスIgF(ab′)2(アマーシャム(Amersham),アーリントン・ハイツ,IL)と一緒に1時間インキュベートし、そして−80℃で1〜3日間露出させた。
実施例4:高濃度の突然変異EGF受容体を発現する細胞系のHC2 20d2系列を誘導する細胞系の軟寒天クローニング
軟寒天培養物を、低ゲル化温度アガロース(VII型、シグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Co.),セント・ルイス,MO)を用いて製造した。10%ウシ胎児血清完全培地および0.6%アガロースを含有する基層を分配し(2ml/35mm皿)、そして室温でゲル化させた。やや密集した培養物から細胞をトリプシン処理し、そしてEGF 20ng/ml含有または不含の、0.3%アガロース含有完全培地1ml中において細胞5,000個/皿で平板培養した。培養物は、7日目および14日目に再度栄養補給され、そして21日目に計数された。直径60μmより大きいコロニーを計数した。
細胞系の選択後、免疫細胞化学分析は、ある与えられた細胞系において発現レベルが細胞毎にかなり変化しうることを示した。したがって、一様に高濃度の突然変異受容体を発現した系列を得ようと努力して、数種類の細胞系を更にサブクローン化した。細胞を記載のように軟寒天中に平板培養し、そしてEGFの不存在下で形成されたより大きいコロニーを採取し且つ単層培養で増殖させた。次に、細胞の突然変異受容体発現について、ウェスタンブロッティングおよび免疫化学両方によって分析した。この結果、種々の濃度の突然変異EGF受容体を発現した数種類のサブクローンがこの方法によって選択された。HC2 20d2/bおよびHC2 20d2/cと称されるサブクローンは、同様の極めて高い濃度の突然変異EGF受容体を発現し、それらはいくつかのヒトグリア芽細胞腫瘍で見られたのと同等であった。これらの新規な細胞系を増殖させ、そして凍結原液を低次継代で調製した。これは、実質的な発現は10回の1:100継代によって維持されるが、突然変異受容体の発現レベルはin vitroで徐々に下降するので不可欠であったからである。
実施例5:無胸腺マウスにおける腫瘍形成
HC2 20d2/c細胞の腫瘍形成について、6週令ヌード(BALB/c nu/nu雌)マウスで試験した。PBS 0.25ml中細胞1×106個を、6匹のマウスの後側腹部にs.c.注射した。マウスを週に2回(biweekly)触診し且つ2か月間観察した。大部分の被験動物において、腫瘍は1週間以内に検出することができ、そして急速に増殖する腫瘍の結果として、被験動物は全て2か月までに屠殺されなければならなかった。腫瘍は全て、高濃度の突然変異EGF受容体を発現し続け、そしてG418耐性細胞系は、切り取られた腫瘍から容易に確立された。NM#3 HC2 20d2/cと称される1種類のこのような細胞系を、引き続きの腫瘍形成実験全てに用いた。
実施例6:NIH−スイスマウスにおける腫瘍形成
HC2 20d2/cが無胸腺マウスにおいて腫瘍形成性であったことを確認した後、正常な免疫機能を有する同系マウスにおけるそれらの腫瘍形成を研究した。NIH−スイスマウスに、上記のように細胞104個、105個、106個または107個;被験動物2匹/用量で注射した。細胞106個かまたは107個を与えられた被験動物は1週間以内に腫瘍を発生し、そしてこれらは、この実験の被験動物4匹の内3匹において後退する前に数週間増殖し続けた。107個投与動物の内1匹の腫瘍は、その被験動物を屠殺することが必要になるまで増殖し続けた。G418耐性細胞系は、この腫瘍から確立され、そしてHC2/NS1と称されるこれらの細胞は、高濃度の突然変異ヒトEGF受容体を発現し続けた。
実施例7:ペプチドワクチン
突然変異ヒトEGF受容体中に存在する融合接合部の新規配列を包含するペプチド(LEEKKGNYVVTDHC(配列番号:1))を、標準的な方法によって合成し;ヘテロ二官能性試薬マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いて、カルボキシ末端システイン残基を包含させて、担体スカシガイのヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)に対するペプチドの結合を促進させた。これらの結合体を「KLH−LEEK」および「BSA−LEEK」と称し;前者を全てのワクチ注射用に、そして後者を血清抗体の滴定に用いた。最初のワクチン注射に対して、マウス(雌NIH−スイス)に、PBS中100μg/mlの等部の完全フロイントアジュバントおよびKLH−LEEKのエマルジョンを0.1ml s.c.で注射した。引き続きの注射には、不完全フロイントアジュバントを用いた。
実施例8:細胞障害性Tリンパ球検定
屠殺された被験動物の脾臓を取出し、PBSによって洗浄し、そして標準的な方法によって破壊した。洗浄後、細胞を、10%FBS、5.5×10-5M β−メルカプトエタノール、0.1mMイーグルMEM非必須アミノ酸(NEAA)、ペニシリン100単位/ml、ストレプトマイシン100μg/mlおよびカナマイシン100μg/mlと、2μg/mlのコンカナバリンAかまたはLEEK−ペプチドとを含有するRPMI 1640中で平板培養した。脾臓細胞は、細胞障害性Tリンパ球(CTL)検定で用いる前に、5%CO2を含む給湿インキュベーター中において37℃で3〜4日間インキュベートした。検定は、当該技術分野において周知の標準法によって、または下記の変法によって行われた。すなわち、標的細胞(特異的な標的としてNM#3 HC2 20d2/c;正常ヒトEGF受容体を過剰発現するNIH−3T3トランスフェクタントクローンCO12 20c2/bを非特異的対照標的として用いた)を、24ウェルファルコン(Falcon)組織培養プレート中において細胞200,000個/16mmウェルで平板培養し、そして使用前に3日間インキュベートした。標的細胞を、100μCi/細胞1×107個の51Crによってin situで1時間標識し、3回洗浄し、そしてそのエフェクター細胞を様々な比率で三重反復試験ウェルに対して加えた。プレートを4〜5時間インキュベートし、そしてアリコートをγカウンターで定量して、特異的溶解の程度を測定した。
実施例9:突然変異受容体に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド
用いられたアンチセンスオリゴマーの配列は、5’-CATAATTACCTTTCTTTT-3’(配列番号:2)であった。用いられたセンスオリゴマーの配列は、5’-AAAAGAAAGGTAATTATG-3’(配列番号:3)であった。オリゴヌクレオチドを、標準的なB−シアノエチルホスホルアミダイト化学によって合成し且つエタノール沈降によって精製した。
HC2 20d2/c細胞1×105個を35mm2ウェル中に播種し、そして24時間後に、細胞を、2.5μM、10μMまたは40μMのセンスかまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドによって処理した。新鮮なオリゴマーを全4日間毎日加えた。次に、細胞を溶解させ、SDS−PAGEで実験を行い、そしてニトロセルロースに移した。次に、ブロットを突然変異受容体に対する抗体と一緒にインキュベートした。これは、アンチセンスによって処理された細胞において、突然変異受容体の優先的ダウンレギュレーションが存在することを示し、それは40μM用量で極めて顕著である。
実施例10:突然変異受容体に対する単クローン性抗体の製造および特性決定
融合接合部の予測されたアミノ酸配列に対応する14アミノ酸ペプチドPep3を合成し、精製し、そしてアナスペク・インコーポレーテッド(Anaspec Inc.)(サン・ホセ,CA)によるスカシガイのヘモシアニンに対して共役させた。無関係の構造の10アミノ酸ペフチドPep1は、負の対照として役立った。
細胞系HC2 20d2は、実施例2で記載のようにNIH 3T3細胞のトランスフェクションによって得られた。
ミクロソーム膜部分を調製するために、HC2 20d2細胞またはA431無胸腺マウス異種移植片10グラムを、0.3Mスクロースおよび1mMフッ化フェニルメチルスルホニル含有の20mMトリス緩衝液、pH7.4中において4℃でホモジナイズした。ホモジネートを15,000×gで20分間回転させた。次に、上澄みを150,000×gで30分間回転させた。得られたペレットを、超遠心分離によって上澄みがタンパク質不含になるまで洗浄した。最終ペレットを、ホモジナイズされた組織のグラム当たり1mlの115mMリン酸緩衝液中に再懸濁させ且つ−135℃で貯蔵した。
下記の表で詳述されるように、4種類の組み合わせ免疫感作プロトコルは、下記の免疫原、すなわち、完全フロイントアジュバント(ディフコ(Difco),デトロイト,MI)、不完全フロイントアジュバントを含むダルベッコのリン酸緩衝溶液(DPBS)中、またはDPBS単独中の1:1エマルジョンのスカシガイのヘモシアニンに結合したPep3;コラゲナーゼ非凝集D−270MG異種移植片細胞(D−270MG−X);0.02%EDTA−DPBSによって採集された培養HC2 20d2細胞;およびHC2 20d2異種移植片細胞のミクロソーム膜標品を用いた。免疫感作開始時に8〜15週令のBALB/c雌マウスを用いた。概して、Pep3および受容体標的に対して5000を越える逆50%終点力価が、融合前に必要とされた。
Figure 0004620808
融合は、ウィクストランドら、J.Neuroimmunol.1982,3,4362によって記載の標準法にしたがって、P3X63/Ag8,653の非免疫グロブリン分泌性カーニー(Kearney)変異型を用いて行われた。上澄みは、Pep3およびD−270MG−XまたはHC2 20d2に関して陽性について並びにトランスフェクションされなかったNIH 3T3細胞およびA431(正常EGFR)に対する反応性の欠如についてスクリーニングされた。プロトコル4で誘導されたハイブリッドは、陽性のHC2 20d2抽出物標品および特異性を決定するA431抽出物標品に関して最初にスクリーニングされた。
平板培養されたペプチドに対する抗体力価は、ELISAおよびラジオイムノアッセイによって測定された。捕捉試薬としてヒツジ抗EGFR細胞内ドメイン抗血清(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies),グランド・アイランド,NY)、抗原抽出物、予期される抗EGFR III型上澄み、およびヒツジ抗マウスIgG Fcを逐次的に用いる捕捉ELISA検定を用いて、プロトコル4ハイブリドーマをスクリーニングした。ラジオイムノアッセイは、EGFR III型を発現する細胞系に対する反応性を確認するのに用いられた。修飾スキャッチャード分析は、ヨードジェン(Iodogen)に触媒されヨウ素化されたmAbの結合親和性を測定するのに用いられ、HC2 20d2およびNIH 3T3細胞に対して10μg/mlの連続希釈された放射性標識抗体によって開始された。データは、平衡結合データ分析プログラム(Equilibrium Binding Data Analysis Program)(バイオメディカル・コンピューティング・テクノロジー・インフォメーション・センター(Biomedical Computing Technology Information Center),ナッシュビル,TN)を用いて分析された。手順の最後の回収された細胞の確認は、細胞当たりのEGFR III型部位の数の計算を可能にした。ヨウ素化抗EGFR III型mAbは、更に、競合的結合検定によって分析された。すなわち、ヨウ素化mAbそれぞれ50ngを、イソタイプ対照中のアセトン固定されたHC2 20d2細胞と100倍過剰(50μg/ml)まで反応させた。37℃で2時間インキュベートされた後、プレートを洗浄し、そしてウェル当たりの結合した125I計数を測定した。
実施例11:正常および腫瘍性ヒト組織の免疫組織化学的およびRT−PCR分折
精製mAbを、アセトン固定されたHC2 20d2、NIH 3T3およびA431単層に対して、または無胸腺ラットにおいて継代されたD−256MGおよびD−245MGグリオーム異種移植片のアセトン固定された凍結切片に対してスクリーニングした。mAb L8A4およびY10は、免疫組織化学に最適の試薬であったことが確認された。それらは、Pep3アフィニティー精製ウサギ抗血清mAb 528およびmAb 3B4(全ヒト組織正対照)から成る抗体パネル中に包含された。mAb 528は、それが、野生型EGFRおよびEGFR III型両方の細胞外ドメインに共通のエピトープと反応するので、免疫組織化学的分析のために包含された。免疫組織化学的分析は、ハンフリーら、Cancer Res.1988,48,2231-2238によって記載された手順にしたがって、ラブテク(Labtec)スライド上で平板培養された正常または腫瘍組織の、アセトン固定された(−70℃、30秒間)、5〜8μm組織切片で行われた。試験された組織には、乳癌11例、グリオーム31例および35種類の正常組織試料のパネルが含まれる。
RNAは、11例の乳癌試料の内10例の切片から単離され、そしてそのEGFR III型発現についてRT−PCRを用いて分析された。RNAは、チョムツィンスキ(Chomczynski),P.およびサッチ(Sacchi),N.,Anal Biochem.1987,162,156-159によって記載のグアニジウムイソチオソアネート−酸フェノール方法を用いて、それぞれ試料の2×20μm切片から精製された。全RNA3マイクログラムを、ランダム六量体プライマー(ギブコ−BRL,ゲイサーズバーグ,MD)100ngおよびRNアシン(プロメガ(Promega),マディソン,WI)と混合し;その溶液を68℃で10分間加熱した後、氷上に置いた。ジチオトレイトール(0.1M)、dNTP(それぞれ10mM)、Superscript逆転写酵素(ギブコ−BRL)、5×Superscript緩衝液および水を加え、そしてその混合物を37℃で15分間に続いて43℃で60分間加熱した。cDNA合成反応は、98℃で加熱することによって終結し、そして混合物を−80℃で貯蔵した。PCRは、Taq DNAポリメラーゼ(プロメガ)2.5単位;1.5mM Mg+2、0.6μM EGFR正プライマーおよび0.6μM EGFR逆プライマーを含有するTaq緩衝液;および200μMデオキシヌクレオチド三リン酸を含有する全反応混合物容量75μl中においてcDNA 2μlを用いて行われた。ホットスタート(hot start)技法を用いた。40サイクルの増幅を行い[95℃80秒間、54℃1分間、および72℃2分間]、そして最終伸長は10分間行われた。鋳型を欠いた負の対照は、反応と一緒に実験された。生成物は、100bpマーカー(ギブコ−BRL)を寸法標準として用いるトリアセテート−EDTA緩衝液(0.02Mトリス−アセテート−0.001M EDTA)中2.0%アガロースゲル上の電気泳動に続く臭化エチジウム染色によって分析された。野生型EGFRおよびまたは変異型のPCRのためのプライマーは、正5’-GGGGAATTCGCGATGCGACCCTCCGGG-3’(配列番号:7)および逆5’-GGGAAGCTTTCCGTTACACACTTTGCG-3’(配列番号:8)であった。それぞれのプライマー中の18塩基は、ヒトEGFRのヌクレオチト配列に対して相補的であった。それぞれのプライマーは、更に、その5′末端に人工的に導入された成分部位を含んで、配列分析のためのpBluescriptベクター(ストラタジーン(Stratagene),ラ・ホヤ,CA)中への得られたPCR生成物のクローニングを容易にした。これらのプライマーを用いた場合、予想される正常およびEGFR III型生成物の寸法は、それぞれ1037bpおよび236bpである。EGFR III型mRNAのPCR増幅に対応する生成物は、免疫組織化学的にL8A4mAbと反応性であった3例の乳癌組織の3例で見られた。更に、EGFR III型に該当するバンドは、mAb L8A4との免疫組織化学的反応性が実証されなかった更に5例の乳癌で検出された。
実施例12:mAbインターナリゼーションのラジオアッセイ
放射性標識された抗EGFR III型mAbを、HC2 20d2細胞と一緒に抗体過剰(2.5μg/細胞106個、分析用フローサイトメトリーによって測定される)において4℃で1時間インキュベートした。非結合mAbを、冷1%BSA/PBSによって洗浄することによって除去し、そして細胞密度を、10%FCS含有Zinc Option培地中において細胞2×106個/mlに再調整した。細胞を試料500μl中に分別し、そしてそして培養温度を37℃に調整した。試料を下記の手順によって0時間、1時間、2時間、4時間、8時間および20時間処理した。すなわち、細胞をペレットにし、そして培養物上澄みを除去し且つ計数用に貯蔵した。Zinc Option(pH2.0)による600μlで2回の酸洗浄は、4℃で15分間のインキュベーションを間にはさんで行った。細胞をペレットにし、そして酸洗浄を組み合わせ且つ細胞ペレットおよび細胞培養物上澄みを用いてγカウンターで計数した。最初の細胞培養物上澄みの計数は、12.5%トリクロロ酢酸中の溶解度についても検定された。
実施例13:生体分布研究
対標識免疫局在化実験は、皮下HC2 20d2異種移植片を有するマウスにおいて行われた。7日令異種移植片(寸法約150〜250mm3)を有する無胸腺マウスを、腫瘍容積(式、L×W2×1/2を用いて計算され、LおよびWは、ノギスによって測定される腫瘍の最長軸および横断径を表す)によってランダム化した。トリアミンセロビオース(TCB)を用いて125Iによって標識され、不適当な特異性を有する131I−標識イソタイプ対合対照mAb P3X63Ag8の等量とそれぞれ対にされたL8A4またはH10 2.5μgを尾静脈注射によってマウスに注射した。マウス5匹の群を、mAb注射後4時間、12時間、24時間、48時間、72時間、120時間および168時間に屠殺した。血液試料は、下大動脈の横断によって得られた。次に、完全に解剖を行い、そして腫瘍の他に、脾臓、肝、肺、心臓、甲状腺、胃、小腸・大腸、膀胱、骨、皮膚、筋肉および脳を含めた組織を摘出した。血液を含めた組織全てを、風袋を差引いたバイアル中で秤量し、そして125Iおよび131I活性について2チャンネルγカウンターを用いて検定した。データは、131Iおよび125Iシグナルのオーバーラップに対して並びに放射能の壊変に対して補正された。注射用量%/グラム(組織)の値は、注射用量標準を用いて得られた。
取込まれたmAb組織の特異性は、組織中のP3X63Ag8のcpm/グラムで割ったL8A4またはH10のcpm/グラムとして表され、血中の同様のcpm比に対して規格化された局在化指数を計算することによって決定された。最大の腫瘍局在化指数(L8A4,3.1±0.5;H10,3.0+0.9)は、両方の単クローン性抗体について2〜7日目に現れ且つその間中比較的一定している。正常組織の局在化指数は、両方のmAbについて実験の間中1.0〜1.5であった。脾臓および肝の値は僅かながら高い方であったが、mAb L8A4に対して7日目に2.0未満であった。
仮定に基いた125I−標識mAbの500μCi注射後の腫瘍異種移植片および正常組織に対する推定放射線量を決定した。それぞれの組織の注射用量%/グラム(組織)はμCi/グラムに変換され、そして7日間の実験にわたって組織中に蓄積された全活性は、台形積分を用いてμCi/グラム曲線下面積を計算することによって決定された。次に、μCi−時間/グラム値に、131Iの粒子線の平衡吸収線量定数を乗じた。
配列表
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Figure 0004620808
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(A)長さ:18
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
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(iv)アンチセンス:No
(xi)配列:SEQ ID NO:3:
Figure 0004620808
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(A)長さ:8
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Figure 0004620808

Claims (9)

  1. 配列番号1を含むペプチドの、対象において突然変異III型EGF受容体を生じる腫瘍に対する細胞障害性T細胞応答を引き出すための医薬の製造のための使用。
  2. ペプチドが配列番号1からなる、請求項1に記載の使用。
  3. 医薬が、突然変異III型EGF受容体を生じる腫瘍の形成または成長を阻害するためのものである、請求項1または2に記載の使用。
  4. 医薬が、突然変異III型EGF受容体を生じる腫瘍の後退を誘導するためのものである、請求項1または2に記載の使用。
  5. ペプチドが担体に結合している、請求項1−4のいずれか1項に記載の使用。
  6. 担体がスカシガイのヘモシアニン(KLH)である、請求項5に記載の使用。
  7. 突然変異III型EGF受容体を生じる腫瘍が、グリオーム、あるいは乳癌、非小細胞肺癌、または卵巣腫瘍である、請求項1−6のいずれか1項に記載の使用。
  8. ペプチドが配列番号1の配列を含み、ペプチドがスカシガイのヘモシアニンに結合している、請求項1−7のいずれか1項に記載の使用。
  9. 対象がヒトである、請求項1−8のいずれか1項に記載の使用。
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