JP4620210B2 - 巻線機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は巻線機に関し、詳しくは、画像を利用してコイルの巻き乱れを検出する巻線機に関する。
【0002】
【従来の技術】
巻線機に於ける重要テーマの一つとして、巻き乱れの問題がある。この問題に関しては、巻き乱れ自体が起きないようにする対処法、或いは巻き乱れを早期に検出することで、巻き直し等の修正措置をするという対処法などが考えられる。
このうち、巻き乱れ自体が起きないようにする対処法としては、各種ガイドを使用してワイヤー(線材)を正しい位置へ強制的に誘導したり、巻線(巻回)の進行に合せワイヤー1本分の隙間を保ちつつ巻枠を移動させて行くことなどが考えられる。
【0003】
しかし、ワイヤーには微妙な太さのバラつきがある。このためワイヤーを正しい位置へ強制的に誘導するとは言っても、目標とすべき位置そのもの、例えば30回巻回した後の正しい巻き付け位置、或いは1層目と2層目とでワイヤー半分だけずれる巻き付け位置といったものを正確に決定するのは難しく、それには、かなりの経験と勘とを必要とする。
また、巻線が進むに従って巻き枠を広げていくという手法についても、直接には1層目についてのみ有効であって、2層目以後は、層が重なるにつれ効果が薄くなる。
【0004】
そこで、もう一方の対処法、即ち巻き乱れ自体を早期に検出し、巻き直し等の是正措置をするという対処法が考えられる。この対処法に依る場合、従来、例えば図14,図15に示すように、ボビン12に巻回されていくワイヤー23に検知針15を係合し、その角度(動き)を角度センサー13等で検出するなどしていた(なお、図14,図15の他の符号については、本発明の実施の形態例でも同じ符号を使用している。必要ならそちらを参照されたし。)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この手法も、検知針26の先端部分での移動量を根元側の角度センサー13等の回転角で検出するという構成にしている為、角度センサー13に高い分解能が要求される。これは、技術的、コスト的に一つの課題になっていた。この傾向は、ワイヤーが細くなるにつれ、一層強くなる。
また、巻線中、ワイヤーはかなり振動する。このため、角度センサー13の感度を上げたら上げたで、今度はワイヤー23のブレによる影響が出て来るものであり、これを如何にして消し去るかが新たな課題となる。更に、ワイヤー23は細くなるに従って腰がなくなって、その動きが検知しにくくなるものであり、且つ切れ易くもなる。これらも、技術的に一つの課題となっている。
【0006】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、巻き乱れを早期且つ的確に検出でき、以て、巻き乱れが発生した位置までの巻き戻し、そこからの再巻回といった是正措置を自動的に実行することを可能とするための巻線機を実現することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため本願発明では、トラバース制御手段及び記憶手段を有し、前記トラバース制御手段は、少なくとも1層目の巻回に於てそのときのワイヤー巻き付け位置の移動に追随するようにワイヤーガイドをトラバースさせ、前記記憶手段は、前記追随してトラバースしたときのワイヤーガイドの動きについてのデーターを記憶し、前記トラバース制御手段は、前記記憶の対象にした巻回層より後の層の巻回に於て、前記記憶されたデーターに従ってワイヤーガイドをトラバースさせる巻線機であって、前記巻回されて行くコイルに係る像を各時点で撮像する撮像手段と、該撮像されたコイルに係る像に基いて各時点のワイヤー巻回位置を特定する巻回位置特定手段と、該特定された各ワイヤー巻回位置の相互関係から巻き乱れを検出する巻き乱れ検出手段をも備える。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図示実施の形態例に基いて説明する。なお、この実施の形態例は、本願出願人が先に出願した特願平11-224474の中の最初の実施の形態例を土台にしたものである。内容が重複するが、この出願に係る部分をも含めて説明をする。
【0010】
実施の形態例の巻線機10の要部を図1,図2に示す。図において、11はスピンドルモーターで、ボビン12を回転させる。スピンドルモーターの種類としては、スピードの可変が出来るインバーターモーター等が良いと思われる。16はロータリーエンコーダーで、スピンドルモーター11に連結されており、その回転角度を検出する。
17はトラバースモーターで、ボールネジ18を回転させ、トラバースガイド19を横移動させる。21はポテンショメータで、トラバースガイド19の位置を検出する。
【0011】
トラバースガイド19の上にはワイヤーガイド22が配置されており、ここからボビン12に向かってワイヤー23が繰り出される。トラバースガイド19の上には、更にワイヤーセンサー24も配置されていて、その検知針の先端27は二又(Vの字)に分割されている。これが、ワイヤーガイド22から巻き付け位置WPに向かう途中のワイヤー23に係合され、その繰出し角(振り角)θを検出する。なお、これら構成部品を支承するフレーム等は図示を略す。
【0012】
71はCCD撮像素子等で構成されるカメラであり(図にはCMRと表記)、ボビン12の1回転ごとに、ボビン12とそれに巻回されていくコイル25の像とを撮像する。このカメラ71が請求項にいう撮像手段に当たる。また、請求項にいう「コイルに係る像」とは、「巻き乱れを監視すべきコイルの像を含んでいる像」という意味で、ほかに周辺の像を含んでいても構わないものであり、ここではコイル25及びボビン12の像が含まれている。
【0013】
カメラ71は、図1のように、コイル25を間にして、ワイヤー供給側(ワイヤーガイド22側)とは反対側に配置されるのが好ましい。カメラ71の位置は、勿論これに限定されるものではないが、この配置にすれば、供給されるワイヤー23が、カメラ71に写りにくくなる。
即ち、通常、コイル25巻回中に供給されるワイヤー23は、かなりのスピードで移動する。このため激しく震動している。この状態をカメラ71で写し、その映像信号をDSP(Digital Signal Processer)等で処理したとすると、振動しているワイヤー23が、ノイズ成分となって、信号処理に支障をきたす畏れがある。そのため、供給されるワイヤー23が写りにくい図1の位置が、カメラ71の配置位置として最良と思われる。
【0014】
この実施の形態例10の制御回路の構成を図4に示す。既に図1或いは図2に図示したものについては同一の符号を付し、説明を略す。図に於て、CPUは半導体集積回路からなる中央処理装置で、リードオンリメモリROMに格納されたプログラムに従い、ランダムアクセスメモリRAMを使用して、後述の各処理を実行する。この中央処理装置CPUが請求項にいう各手段として機能する。なお、これらCPU等の略号は良く知られている。従って、以後は適宜この略号のみで記述する。このあと説明するものについても同様とする。
【0015】
71は前述したカメラであり、コイルに係る像を撮像する(図にはCMRと表記)。K/Bはキーボード、DISPはディスプレイであり、ユーザーインターフェースとして使用される。I/Oは入出力ポートで、CPUから各ドライバDRV1,2への制御信号の伝達、ロータリーエンコーダー16からCPUへの検出信号の伝達等を行なう。なお、DRV1はスピンドルモーター11のドライバ、DRV2はブレーキ28のドライバである。ブレーキ28は、スピンドルモーター11のハウジング内に収容されており、CPUからの命令に従ってスピンドル軸38にブレーキを掛ける。
【0016】
A/Dはアナログデジタル変換器で、ポテンショメータ21のアナログ出力をデジタル化してCPUに供給する。D/Aはデジタルアナログ変換器で、CPUからのデジタル出力をアナログ化して、第2アナログスイッチ31の入力端子Aに供給する。なお、同アナログスイッチ31の入力端子Bには、アース電位が供給されている。また、出力端子Xは、これら入力端子A,Bの何れかに接続される。
【0017】
32は、センサーアンプで、受光素子34の出力を増幅し、第1アナログスイッチ29の入力端子Bに供給する。第1アナログスイッチ29の入力端子Aにはポテンショメータ21の出力が供給されており、出力端子Xは、これらA,Bの入力端子の何れかと接続される。
36はモーターアンプで、同相側入力(+)に第1アナログスイッチ29の端子Xの出力が、反転側入力(−)に第2アナログスイッチ31の端子Xの出力が夫々供給されていて、その差分に従ってトラバースモーター17を駆動する。
【0018】
ワイヤー23の角度検出に使用するワイヤーセンサー24には、エリアセンサー、レーザー光線を使用したセンサー、高分解能のロータリーエンコーダー、ポテンショメータ、実公昭45−24657公報に記載の方法等、色々な物の利用が考えられる。
ここでは、それらの中で、一番低コストな方法と思われる、発光素子33、受光素子34から成るフォト・インタラプタを使用する。
【0019】
図1,図2に示すように、二又の先端27がワイヤー23を跨いでいる検知針26は、その反対の端37が、フォト・インタラプタで実現されているワイヤーセンサー24のシャッターとして働く。
ワイヤー23の左右の動きに応じて、例えばワイヤー23が、図3(A)のように右に動くと、このシャッター37(検知針26の反対の端)は閉じる方向に動いて、受光素子34に入る光量を減少させる。ワイヤー23が図3(C)のように左に動くと、シャッター37は開く方向に動いて、受光素子34に入る光量を増加させる。なお、図3の各図のハッチングは、図2A−A線でワイヤーセンサー24を破断していることを示す。
【0020】
この出力は、図4のセンサーアンプ32で増幅される。その出力は、第1アナログスイッチ29を介してモーターアンプ36に供給される。ここで、1層目と2層目の巻線のときは、第1アナログスイッチ29及び第2アナログスイッチ31が図4に示すように接続される(各出力端子Xが入力端子B側に接続)。
このとき、第2アナログスイッチ31の入力端子Bには、接地電位(0ボルト)が入力されている。この為、モーターアンプ36は、センサーアンプ32の出力が零になる迄トラバースモーター17を駆動する。
【0021】
具体的には、受光素子34への光量が減少すれば、トラバースガイド19を右の方に動かすようにトラバースモーター17を回転させ、光量が増加すれば、トラバースガイド19を左の方に動かすようにトラバースモーター17を回転させる。
なお、図3(B)の位置が、この、センサーアンプ32の出力が零になる位置であり、第1層、第2層巻回のとき、この状態、即ち振り角θがほぼ0に近い状態に保たれて巻線が進行する。
【0022】
これはいわば、ならい巻を電気的に行っているような物で、通常のならい巻では、条件が整わずに、巻く事が出来なかったコイル仕様に対しても、ならい巻による巻線を行う事が出来る。
なお、ここに言うならい巻とは、図5に示すように、第1層の中間CPまで巻線した時に、ボビン12の幅に対して充分の距離までトラバースガイド19(ワイヤーガイド22)を遠ざけて、そこでトラバースの動きを停止させておき、その後の巻線を、ワイヤー23の自然な動きに任せる、と言う巻線方法のことを言う。
【0023】
ならい巻には、いくつかの条件が必要であるが、要は、図5に示すように、ワイヤーガイド22をボビン12に正対させ、ワイヤーガイド22の中心からボビン12の中間点に向かって延伸したときの直線CLに対して、ワイヤー23が作る振り角“θ”が、或る範囲に保たれてさえいれば、ワイヤー23はボビン12の1回転前に巻かれたワイヤー23に密着しながら整列に並ぶという特性を利用したものである。
【0024】
尤も、上述のように、ワイヤーの動きを検出して、トラバースを制御する方法は、特公昭37−566公報、実公昭45−24657公報、実公昭45−32173公報等で公知である。
しかし先の出願に係る発明の要点はここにあるのではない。元々、ならい巻方式は、巻線が一列だけのコイル、又は、層が2〜3層の、巻数の少ないコイルに対して有効とされる手段であって、多層の巻数の多いコイルでは、巻線の途中で、ワイヤーの動きが乱れ、ガラ巻になる確率が非常に高い。
一方で、単純な電気的ならい巻方式を採ると、ワイヤーの動きに追従して、トラバースガイドが動かされる為、一度ワイヤーが乱れると、それを、更に悪化させ、更に乱れる方向に動かしてしまい、収拾が付かなくなってしまう畏れがある。
【0025】
そこで先の出願に係る発明では、例えば図1のポテンショメータ21によって、トラバースガイド19の絶対位置を読み取り、例えば巻線が一往復する迄(第2層の巻き終りの時点迄)は、ワイヤーセンサー24による電気的なならい巻を行い、その間のトラバースガイド19の動き、例えば絶対位置の変化を、図4のポテンショメータ21と、A/Dコンバーターとで読み取り、これをRAMに格納しておく。
【0026】
そして、3層目以後は、このRAMに貯えられた、例えば2層目までのトラバースガイド19の動きを表わすデーター通りにトラバースガイド19を動かす、いわば途中からの強制的なトラバース方式への切り替えを行なう。こうすると、従来のならい巻きで起こりがちであった、巻き乱れの更なる悪化を食い止めることが可能になる。
即ち、先の出願に係る発明は、このような、ならい巻方式と、トラバースガイド19による通常の強制的な送り方法の、それぞれの利点を活かすことを目論んだものである。
【0027】
なお、ポテンショメータ21で直接的に読取っているのはトラバースガイド19の位置であるが、本来求めているのは、その上に配置されたワイヤーガイド22の位置である。従って、以後はその場面に応じこのワイヤーガイド22の位置を以て説明をする。
【0028】
巻線の順を追って、具体的に説明する。まずスピンドル軸38に、ボビン12を固定し、ワイヤー23をワイヤーガイド22と、検知針の先端27に引っかけ、ボビン12の巻き始め位置まで持ってくる。
この時、各アナログスイッチ29,31の入力は、図4に示されるように、端子B側に接続されるものであり、トラバースガイド19は、前述のワイヤーセンサー24及び、各アンプ32,36の働きにより、ワイヤー23の動きに追従し、ワイヤーガイド22は巻き始めの位置まで自動的に移動する。
【0029】
次に図示していないが、スタートスイッチを押下する。スピンドル軸38が回転し、巻線がスタートする。
するとトラバースガイド19は、ワイヤーセンサー24等の作用で、ワイヤー23の動きに追従し、ワイヤーガイド22から繰出されたワイヤー23はボビン12の1回転前のものに密着しながら、その実際の太さに合致したピッチで巻回されていく。
【0030】
一方、トラバースガイド19には、図1のようにポテンショメータ21が接続されている。又、スピンドル軸38には、ロータリーエンコーダー16が接続され、例えば、スピンドル軸38の1/10回転毎に(勿論1/10回転でなくとも良い)、CPUに対してトリガー信号を与える。CPUはこのトリガー信号に応動して、ポテンショメータ21のアナログ出力をA/D変換し、トラバースガイド19の絶対位置信号として、RAMに貯える。
こうして巻線が進行し、ワイヤー23がボビン12の反対の端まで来ると、ボビンのフランジ14が邪魔をして、それ以上進む事が出来ず、ワイヤー23は自然に折り返る様になる。トラバースモーター17も、今迄の回転とは逆回転し始め、2層目の巻線に移行する。
【0031】
そして、2層目の巻線が完了し、同じように3層目への折り返しを確認すると、CPUはそれまでの、ポテンショメータ21からのデーターの取り込みを止め、各アナログスイッチ29,31を入力端子A側に切り替える。
そして、今までRAMに貯めて置いた、トラバースガイド19の絶対位置データーを、今度は、ロータリーエンコーダー16で検出されるスピンドル軸38の回転に合わせ、D/Aコンバータに送る。
【0032】
モーターアンプ36は、各アナログスイッチ29,31が切り替わった為、それまでのワイヤーセンサー24の信号に追従するのに代え、このD/Aコンバーターの信号に追従する。これで、2層目までの巻線パターンで、3層目以後のトラバースが実行される。
こうする事により、ワイヤーガイド22は、それまでの正しい巻線パターン通りに動く。従って、ワイヤー23が勝手な方向に動き出し、巻き乱れが発生しそうになるのを防止出来る。又、仮に巻き乱れが発生しても、後述するように、それは直ちに検知され、巻き戻しと巻き直しとが行なわれる。
こうして、予定された総巻数までの巻線が完了したら、スピンドル軸38を停止し、次の巻線に備える。
【0033】
なお、判りにくいといけないので、先の動作説明では触れなかったが、VRは、振り角θを調整するためのボリュームである。ここで、図5に示した直線CLを、基準方位(θ=0゜)として、ここから時計回り方向を振り角θの正の方向とすると、前記ボリュームVRの抵抗値を小→大へと変化させたとき、振り角θは、負→0→正(11時方向→12時方向→1時方向)へと変化する。
【0034】
上記実施の形態例10では、この振り角θを出来るだけ0に近づけた。それは、振り角θがあまり大きいと、図5に示した状態とは反対の、巻き付け位置WPが左側へ移動していく巻回の際に、ワイヤーガイド22の方が、巻き付け位置WPより先に左へ進んでしまって、ワイヤー23の密着性が悪くなるかも知れないからである。
尤も、実際には、制御の遅れがある。従って、振り角θが0に近ければ、現実には、巻き付けが図5の左方向に進んで行く場合でも、ワイヤーガイド22は、このワイヤー巻き付け位置WPと一緒か、僅かに遅れてトラバースする。
【0035】
この点、徹底したいなら、図6に示すように、センサーアンプ32の前段に切替スイッチ41を置いて、入力の極性を切り替えるようにすると良い。接極子42は、巻き付け位置WPが右側へ移動するとき、図4に示したように上側へ接続し、巻き付け位置WPが左側へ移動するとき、下側へ接続する。
こうすると、右移動、左移動、何れでも、ワイヤーガイド22は、ボビン12への巻き付け位置WPに遅れてトラバースする。
この図6のようにしたときは、VRの抵抗値はある程度大きめに、即ち、振り角θが、或る程度の大きさになるようにすると良い。
【0036】
以上説明したようなワイヤー巻回の過程に於て、本願発明に係る巻き乱れの監視が実行される。
【0037】
即ち、先ず、前記ワイヤー巻回開始の時点で、ボビン12の初期状態が撮像される。この撮像は、前記ワイヤー巻回の準備が整ったところで作業者が前記スタートスイッチを押下する、例えば、スピンドル軸38にワイヤー23の端を何回か巻き付けて固定し、ボビン12にワイヤー23を1回巻き付けたところで、作業者が前記スタートスイッチを押下するのに応動して実行される。
【0038】
スタートボタンが押下されると、CPUは先ずカメラ71に撮像を命令する。例えば、図7(A)のように巻回準備がされており、カメラ71の視野72が同図(B)の一点鎖線で示される範囲であったとしたら、ここで、同図(C)の如き輪郭の画像が撮像される。この画像はRAMに格納される。なお、実際は、同図(C)の画像は、同図(A)(B)のようなボビン12の形状やワイヤー23が描かれたものになるが、同図(C)では、ハッチングを以て示す。図8,図9等のハッチングも同様の趣旨である。
【0039】
ボビン12の初期状態についての撮像が終了したら、CPUは、スピンドルモーター11へ回転を指示する。これが回転しワイヤー巻回が始まると、そのときのワイヤー23の動きをワイヤーセンサー24が検知し、トラバースモーター17が回転して、トラバースガイド19が、巻き付け位置WPの移動に追随していく。
【0040】
このとき、ボビン12の回転角度はロータリーエンコーダー16で検出される。ここで前述のように、1/10回転毎に、ロータリーエンコーダー16がトリガーパルスを発生するとしたら、CPUは、このトリガーパルスを10個計数する都度、即ちボビン12が1回転する都度カメラ71に撮像を指示する。
例えば、図8(A)の如くワイヤー23が巻回されていたとして、カメラ71の視野72が同図(B)の一点鎖線の範囲であったとしたら、撮像されたコイルに係る画像は、同図(C)の如くになる。
【0041】
この図8(C)の画像から、巻回開始の際の画像成分、即ち図7(C)の画像の成分を減算する。これにより、図9に示すようなコイル部分のみの画像が得られる。CPUは、この画像について包絡線を求める。包絡線は公知の手法で求められる(例えば、シーキュー出版(CQ出版)株式会社発行の月刊誌「トランジスタ技術」1992年8月号第331頁〜第344頁に記載の吉川光男氏の記事「最新画像処理システムの基礎と応用」参照)。
得られた包絡線は図10のようになる。なお、この図10は図9より拡大して描いている。他の図に関しても適宜拡大縮小を行なう。
【0042】
次に、図10の包絡線を基に、CPUは、そのときワイヤーが巻回された位置を求める。この場合、先ず、図10に例示されたような夫々の壁73〜75を検出する。即ち、これら壁73〜75の部分では、最初はワイヤー23の丸みがあり、やがて垂直になる。これらの部分で、この壁73〜75を構成する各ドットを順に辿ってみたとき、ワイヤー23の丸みがある部分では、その各ドットのX座標が、左或いは右に少しづつずれて行く。また、包絡線が垂直になった部分では、各ドットのX座標は変化しない。この性質に着目し、これら夫々の壁73〜75を検出する。
【0043】
そして、ここでは、この包絡線が垂直になったところ、すなわち、包絡線を構成するドットのX座標が変化しなくなったところの最初のドット、ここでは、図10に丸で囲って示す各ドット76〜78を以て、その壁を代表するドットとし、それらの座標(x,y)を以て、各壁73〜75を代表する座標とする。
【0044】
なお、垂直の壁は、このときワイヤーが巻回された部分74だけでなく、それ以前にワイヤーが巻回された部分73,75にも存在している。即ち、図8には途中までワイヤーが巻回された状態を示したので、読者を混乱させたかも知れないが、符号73〜75が付されている壁を始めとする夫々の壁の検出は、前記スタートボタンが押下されたあと、ワイヤー巻回の最初から、ボビン12の1回転ごとに実行されている。CPUは、夫々の壁を検出した都度、そのときの全ての壁の位置を記憶する。
【0045】
そして、ボビン12の1回転毎に検出した全ての壁の位置を、この記憶している各壁の位置と比較する。この照合で位置が一致したら、それは、そのとき新たに検出された壁ではなく、以前から存在していた壁である。このような壁を除外すれば、このとき新たに形成された壁だけが残ることになる。これが、そのときのボビン12の1回転によって新たにワイヤーが巻回された位置を表している。
【0046】
次いで、この新たに検出された壁(新たなワイヤー巻回位置)と、ボビン12の1回転前に検出された壁(ボビン12の1回転前のワイヤー巻回位置)との間の、座標の差分を求める。ここで、種々の巻回例を図11に示す。同図(A)はボビン12の1回転前に於ける巻回位置74を示し、同図(B)は、その隣に次のワイヤー23が正しく巻回され、言わば正しい壁79が形成された例、同図(C)はワイヤー23が乗り上げてしまって、言わば間違った壁80が形成されてしまった例、同図(D)はワイヤー23が飛んでしまって、これも間違った壁81が形成されてしまった例を示している。
【0047】
この例示から理解されるように、これら(B)〜(D)の各巻回状態の正常、異常は、ボビン12の1回転前の巻回位置74と、今回の巻回位置79〜81、即ち、前回と今回という二つの壁の位置関係で判断でき、それは、これらの間の座標の差分で判断出来る。
即ち、正常な巻線なら、新たな巻き付け位置はすぐ隣に移動するから、X方向の差分はワイヤー1本分であり、Y方向については差分が無い。これ以外は、原則として巻き乱れである。CPUは、このような座標の差分の性質に基いて、ボビン12の1回転毎に、巻き乱れの有無を検出する。
【0048】
但し、ボビン12の幅一杯までワイヤーが巻回されているときは、次のワイヤー23がその斜め上に巻かれる。この場合は正常な巻線でも座標の差分にY成分が出て来る。しかし、この場合は、その1回転前の巻回位置がボビン12の内側の左一杯または右一杯に寄っている。従って、座標の差分にY成分が出た場合は、その前の巻回位置のX座標を調べ、それがボビン12内側の左一杯又は右一杯の位置を示すものであれば正常、そうでなければ巻き乱れと判断する。
【0049】
なお、ボビン12内側の左一杯又は右一杯の位置を示すX座標は、ボビン12の形状(寸法)から物理的に特定出来る。従って、その値を事前に入力しておくか、ボビン12の種類が変る都度入力すれば良い。また、ディスプレイ(DISP)を備えているので、図7(C)の如きボビン12の画像をこのディスプレイに表示し、カーソルをボビン12内側の左一杯又は右一杯の位置に持っていってマウスボタンをクリックすることで、CPUがこれらのX座標を取り込んでRAMに保持する、というように構成しても良い。
【0050】
以上の如くしてCPUは、ボビン12の1回転毎に巻き乱れの有無を検出する。そして若し巻き乱れが発生したら、ブレーキ28を作動させ、スピンドルモーター11を止める。この場合、ブレーキ28を掛けてから停止するまでに、ボビン12は何回か回転する。CPUは、ブレーキ28を作動させたら、ロータリーエンコーダー16が出力するトリガーパルスを計数し、停止するまでのボビン12の回転数及び回転角を記憶する。
そしてボビン12が停止したら、不図示ワイヤードラムを逆回転させてワイヤー23を巻き戻しながら、スピンドルモーター11を上記記憶されている回転数及び回転角の分だけ逆回転させる。
【0051】
なお、この実施の形態例10では、ボビン12の1回転に1回の割合で巻き乱れの検出を行なっている。このため、実際に巻き乱れが始まった位置は、検出した位置より最大で1回転前の可能性がある。また、巻き直し始める位置は、巻き乱れが起こった位置より少し前からで構わない。
そこで、上記巻き戻しをするに当たっては、1回転未満の回転角度は捨象し、例えばブレーキ28を掛けてから止まる迄のボビン12の回転数を記憶し、それに更に2,3回転加えた値を巻き戻しの回転数とすれば良い。
【0052】
こうしてボビン12を逆回転させ、ワイヤーを巻き戻したら、そこから改めて巻線を再開する。これで、巻き乱れが生じてもそれは自動的に解消され、ワイヤー23は、最初から最後まで完全に整列巻きされる。
【0053】
ボビン12の巻き付け位置WPの検出手法は、上記に限らない。例えば、図12に示すような手順でも新たな巻き付け位置WPの検出が出来る。即ち、図12に於て、(A)は1回転前に撮像した画像、(B)はそれからボビン12が1回転されたとき撮像された画像を表す(画像は、正しくはボビン12やコイル25などが描かれたものであるが、これらの図では輪郭で示す。)。ここで同図(B)の画像と、1回転前の同図(A)の画像との差分を求めると、同図(C)の如き差分の画像82が得られる。この差分の画像82は、今回のボビン12の1回転で増加した分、即ち、このとき新たに巻回されたワイヤー23を表している。
【0054】
次いで、この差分の画像82を代表する位置を求める。代表位置はどこでも構わないが、ここでは、この差分の画像82を構成する数十個のドットの集合の重心の位置Gとする。CPUは、ボビン12が1回転される都度これらの処理を実行する。そして、各回毎の重心位置Gを、そのときの新たなワイヤー巻回位置として記憶する。なお、ここにも述べたように、差分の画像82は、そのときのワイヤーの太さ、画像の分解能に応じて数十個のドットで構成される。これを図の上にもドットで示すのは難しいので、輪郭で示している。図13の各差分の画像についても同様とする。
【0055】
このようにして各回の巻回位置が求められ記憶されれば、これを基に、先に、図11を引用して説明したのと同じ手順で、巻き乱れが検出できる。図13に改めて各種のワイヤー巻回例を示し、これを基に説明をすると、同図(B)は、同図(A)を拡大して示したもので、正常な巻線が行なわれ、隣に新たな差分の画像83が出現した例、同図(C),(D)も同図(B)と同じ拡大率で示したもので、同図(C)はワイヤー23が乗り上げてしまって、そこに差分の画像84が出現した例、同図(D)はワイヤー23が飛んでしまって、そこに差分の画像85が出現してしまった例を示している。
【0056】
即ち、ここでも、正常な巻線なら、新たな巻き付け位置(差分の画像83)はすぐ隣に移動するから、これらの代表位置(重心G)の間のX方向の差分はワイヤー1本分、Y方向については原則として差分が無い。CPUは、このような座標の差分の性質に基いて、図11を引用して説明した検出方法のときと同様、ボビン12の1回転毎に、巻き乱れの有無を検出する。
【0057】
なお、ボビン12の幅一杯までワイヤー23が巻回されているときは、次のワイヤー23がその斜め上に巻かれ、座標の差分にY成分が出て来ること、これも正常であることは、先の検出手法のときと同じである。これについても、正常か巻き乱れかを、先の検出手法のときと同じ手順で判断する。
更に、巻き乱れと判定されたときの巻き戻し、再巻回についても、先の検出手法のときと同様である。冗長になるので説明を略す。
【0058】
なお、以上の説明では、巻き乱れを検出したあと、巻き戻し、まき直しを行なうこととした。通常は、これが最適な実施形態と思われるが、ワイヤーによっては、例えば熱風で加熱しながら巻回されるものもある。このようなものは巻回後相互に接着してしまう。この種のものは巻き戻しが困難なので巻き戻しまき直しはせず、巻き乱れを早期且つ的確に検出するものとして本願各発明を実施する。
【0059】
また、実施の形態例では、ボビン12の1回転毎に巻き乱れの検出を実行した。本願各発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ボビン12の2回転毎にその検出を行なっても良く、逆に、ボビン12の半回転毎にその検出を行なっても良い。
【0060】
【発明の効果】
【0061】
【0062】
【0063】
以上説明したように、本願発明では、先の出願に係る巻線機に於て、巻回されて行くコイルに係る像を各時点に於て撮像し、該撮像されたコイルに係る像に基いて各時点のワイヤー巻回位置を特定し、該特定された各ワイヤー巻回位置の相互関係から巻き乱れを検出するという構成を採った。
の先の出願に係る巻線機は、ワイヤーの供給角度を検出する、ワイヤーセンサーと、ワイヤーの動きに対し、若干の遅れを持って自動追従する、トラバース機構とを備え、巻き始めの1〜2層の巻線を、トラバース位置を記憶しながら、ならい巻し、以後の巻線をそれまで記憶したデーターに基づき、強制トラバース方式で巻線するというものであった。
【0064】
しかし、この先の出願に係る巻線機では、ならい巻から、強制トラバース方式に切換以後の巻線に付いては、仮に巻乱れが生じ、通称ガラ巻のコイルとなっても、それを検出する手段は持っていなかった。それゆえ、先の出願の明細書にも書いた通り、通称ガラ巻のコイルを、従来の巻線機に比べ、ローコストで巻回できる巻線機として提案したものであった。
本願発明では、これに巻き乱れを検出する機能を追加した。これにより、常時、巻線状態を監視し、巻乱れが生じた場合などに、巻戻し等の制御を加える事が出来るようになる。従って、ローコストでありながら、整列巻線もする事が出来る巻線機が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態例10の要部を示す正面図。
【図2】 本発明の実施の形態例10の要部を示す右側面図。
【図3】 ワイヤーセンサー24へのシャッター37(検知針26の後端)の掛かり具合を示す平面図で、(A),(C)が位置ずれを生じている状態、(B)が位置適正である状態を示す。なお、各図のハッチングは、図2A−A線でワイヤーセンサー24を破断したことを示す。
【図4】 実施の形態例10の回路構成を示すブロック図。
【図5】 ワイヤーが巻付けられている位置WPとワイヤーガイド22との位置関係を示す平面図。
【図6】 センサーアンプ32の前段に切替スイッチ41を置いた変形例を示す回路図。
【図7】 ボビン12と撮像された画像との関係を示す説明図で、(A)は背面から見たボビン12を示し、(B)はこれにカメラの視野72を重ねた画像を示し、(C)は撮像された画像を示す。
【図8】 途中までワイヤーが巻回されたボビン12と撮像された画像の関係を示す説明図で、(A)はワイヤーが巻回されたボビン12を背面から見て示し、(B)はワイヤーが巻回されたボビン12を背面から見たものにカメラの視野72を重ねた画像を示し、(C)は撮像された画像を示す。
【図9】 図8(C)の画像から図7(C)の画像の成分を減算して得られた差分の画像を示す図。
【図10】 図9を拡大し、夫々の壁とそれらを代表するドットとを示す図。
【図11】 壁を以て表わされるワイヤー巻き付け位置の推移を説明するための図で、(A)はボビン12の1回転前の巻き付け位置を示し、(B)は整列して巻線が行なわれた場合のボビン12の1回転前の巻き付け位置から今回の巻き付け位置への推移を示し、(C)は重ねて巻線がされてしまったときの同様の推移を示し、(D)は一つ飛んで巻線がされてしまったときの同様の推移を示す。
【図12】 差分の画像から、そのときのワイヤー巻回位置を検出する手順を説明する為の図で、(A)は1回転前に撮像した画像を示し、(B)はそれからボビン12が1回転されたときに撮像された画像を示し、(C)は(A)と(B)との間の差分の画像を示す。
【図13】 画像の差分を以て表わされるワイヤー巻き付け位置の推移を説明するための図で、(A)は整列して巻線が行なわれたときのボビン12の1回転前の巻き付け位置から今回の巻き付け位置への巻き付け位置の推移を示し、(B)は(A)の要部を拡大して示し、(C)は重ねて巻線がされてしまったときの同様の巻き付け位置の推移を同じく拡大して示し、(D)は一つ飛んで巻線がされてしまったときの同様の巻き付け位置の推移を同じく拡大して示す。
【図14】 従来の巻き乱れ検出のための構成の例を示す平面図。
【図15】 従来の巻き乱れ検出のための構成の例を示す右側面図。
【符号の説明】
CP…第1層の中間 CL…基準線
G…重心 VR…ボリューム
WP…現在の巻き付け位置 θ…振り角
10…実施の形態例の巻線機 11…スピンドルモーター
12…ボビン 13…角度センサー
14…フランジ 16…ロータリーエンコーダー
17…トラバースモーター 18…ボールネジ
19…トラバースガイド 21…ポテンショメーター
22…ワイヤーガイド 23…ワイヤー
24…ワイヤーセンサー 25…コイル
26…検知針 27…検知針の先端
28…ブレーキ 29…第1アナログスイッチ
31…第2アナログスイッチ 32…センサーアンプ
33…発光素子 34…受光素子
36…モーターアンプ 37…シャッター
38…スピンドル軸 41…切替スイッチ
42…接極子 71…カメラ
72…視野 73〜75…壁
76〜78…壁を代表するドット 79…正しい巻線のときの壁
80…乗り上げたときの壁 81…飛んだときの壁
82…差分の画像
83…正しい巻線のときの次の差分の画像
84…乗り上がったときの次の差分の画像
85…飛んだときの次の差分の画像

Claims (1)

  1. トラバース制御手段及び記憶手段を有し、
    前記トラバース制御手段は、少なくとも1層目の巻回に於てそのときのワイヤー巻き付け位置の移動に追随するようにワイヤーガイドをトラバースさせ、
    前記記憶手段は、前記追随してトラバースしたときのワイヤーガイドの動きについてのデーターを記憶し、
    前記トラバース制御手段は、前記記憶の対象にした巻回層より後の層の巻回に於て、前記記憶されたデーターに従ってワイヤーガイドをトラバースさせる巻線機であって、
    前記巻回されて行くコイルに係る像を各時点で撮像する撮像手段と、
    該撮像されたコイルに係る像に基いて各時点のワイヤー巻回位置を特定する巻回位置特定手段と、
    該特定された各ワイヤー巻回位置の相互関係から巻き乱れを検出する巻き乱れ検出手段をも備えたことを特徴とする巻線機。
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