実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。まず、図1から図9を用いて、固定子10および巻線コイルの検査の対象となるコア片の構成について説明する。
図1はこの発明の実施の形態1における巻線検査方法を行うコア片を用いた固定子の構成を示す斜視図である。
図2は図1に示した固定子の平面図である。
図3は図1に示した固定子のコア片の構成を示す斜視図である。
図4は図3に示したコア片の巻線コイルを設置する前の構成を示す斜視図である。
図5は図4に示したコア片の構成を示す分解斜視図である。
図6は図1に示したコア片が連結されたコア部の構成を示す上面図である。
図7は図6に示したT−T線の断面を示す断面図である。
図8は図4に示したコア片が連結されたコア部を直線状に配置した状態を示す斜視図である。
図9は図8に示したコア部のコア片に巻線の巻回を行う際の状態を示した斜視図である。
図において、固定子10は、巻線コイル(以下、コイルと略して示す)1、コア部2、および絶縁部3で構成される。コア部2は、コイル1が巻回された9個のコア片20が環状に連結されて構成される。本実施の形態1においては、9個のコア片20が連結するコア部2の例を示した。これに限られることはなく、回転電機の特性上必要となる任意の個数のコア片20にて固定子10を構成できる。
本実施の形態1では巻線前後のコア片20の画像から、コア片20の形状およびコイル1の形状を計測し、巻線の不良を検査するものである。よって、コア片20の巻線前と巻線後との構成を交えて説明する。本実施の形態1においては、コア片20は、図8に示すように、巻線を施す前のコア片20を前コア片201と称す。また、図9に示すように、巻線を施した後のコア片20を後コア片202と区別して称す。また、後述する図18に示すように、巻線の巻回終了直前のコア片20を最終ターンコア片203と区別して称す。但し、巻線の前後の区別が不要な場合には、単にコア片20として示す場合もある。
コア片20は、磁性板材である電磁鋼板4を軸方向Zに積層してなる積層型コアである。積層する軸方向Zの上下二方向から絶縁部3としての第一絶縁部301および第二絶縁部302を挿入し、前コア片201が形成される。絶縁部3はコア部2とコイル1とを電気的に絶縁するものである。絶縁部3における、コイル1の端末線を結線するための形状および前コア片201に巻回するために端末線を係止するための形状などはここでの図示を省略している。
コア片20は図3に示したように、単独にて形成される場合に限られるものではない。例えば、図6および図7に示すように、コア片20同士を、連結部5を介して連結したコア部2を用いることも可能である。
本実施の形態1ではコア片20の画像を用いて形状を計測する。よって、図6を用いてコア片20の各部位の名称をあらかじめ定義しておく。コア片20は、周方向Xに伸びるヨーク部7と、ヨーク部7から径方向Yの内側に突出するティース部6とを備えている。巻線は絶縁部3を介してティース部6に施される。このように、ヨーク部7は、ティース部6の径方向Yの外側に形成される。ここでは、ティース部6の径方向Yの内側を反ヨーク部8として、ヨーク部7と区別して定義する。
ヨーク部7の周方向Xの両端には連結部5がそれぞれ設けられている。連結部5は、凸部51と凹部52とにて構成される。凸部51および凹部52は、コア片20のヨーク部7の周方向Xの端部にそれぞれ形成される。そして、隣接するコア片20のヨーク部7の周方向Xの端部において、積層される電磁鋼板4同士を互い違いに重ね合わせる。隣接するコア片20は、この重ね合わせ部分の、凸部51、凹部52をカシメ止めする。これにより、隣接するコア片20を屈曲可能に連結する連結部5を構成する。尚、連結部5はこの構成に限られることはなく、隣接するコア片20同士を屈曲可能に連結する構成であれば他の構成でもよい。
図1におけるコア部2を形成するために、図9における連結されたコア片20の両端に位置する2個のコア片20間のみを溶接すればよい。また、巻線を施す工程においては、図9に示すように巻線を施すコア片20に隣接するコア片20を屈曲させて行う。
次に、図10を用いて、巻線装置14の構成について説明する。図10はこの発明の実施の形態1における巻線装置14の構成を示す図である。図において、巻線装置14は、コイル1を形成するためのマグネットワイヤ9を貯線するドラム11と、テンショナ12と、フライヤ13と、巻線検査装置140と、巻線制御部15とを備える。巻線検査装置140はカメラ141および画像処理部142を備える。
図10は巻線装置14の巻線を施す位置に、前コア片201が設置され固定された状態を示す。巻線制御部15は、ドラム11、テンショナ12およびフライヤ13を制御するものである。尚、これらの箇所に対する配線の図示は省略している。フライヤ13は、前コア片201を中心に矢印Rの方向に旋回する。そして、前コア片201に絶縁部3を介してティース部6に巻線しコイル1を形成する。コイル1は高密度で巻回して形成される。
よって、フライヤ13は、矢印Rの方向に1回転する毎に、ヨーク部7および反ヨーク部8に対向する矢印Qの方向に、マグネットワイヤ9の線径分に相当する距離分を、断続的もしくは連続に移動しながら巻回する。カメラ141は、コア片20およびコイル1の位置および形状を撮影するために用いる。カメラ141は、その視野に通常位置に設置されたコア片20の全体が映る位置に固定される。
図10においてカメラ141の位置は、巻線を施すコア片20のヨーク部7、反ヨーク部8、ティース部6が映るように配慮されていればよく、コア片20のヨーク部7に対して厳密な垂直方向でなくてもよい。また、カメラ141の位置は、図3における、第一絶縁部301もしくは第二絶縁部302の両方から撮影する場合、または、いずれか1方向から撮影する場合などが考えられる。また、カメラ141の画質の明暗の調整については、画像処理を行うために十分な照度があればよい。よって、本実施の形態1では照明の種類や要否を限定しないため記載を省略する。
画像処理部142は、カメラ141の画像を処理するものである。尚、画像処理部142と巻線制御部15と間の配線は、例えば巻線制御部15がフライヤ13を駆動して巻回を開始するタイミング等を制御しており、画像処理部142がこのタイミング等の情報を収集して検査に利用することが可能なことを意味している。よって、必ずしも画像処理部142と巻線制御部15と間の配線が必要とは限らない。
次に、図11から図17を用いて、コア片20におけるコイル1の整列性の良品と、不良コイル16の整列性の不良品との例を説明する。図11はこの発明の実施の形態1におけるコイル1の整列性の良品を説明するため後コア片202の構成を示す上面図である。図12は図11に示した良品の後コア片202の構成を示す側面図である。図13はこの発明の実施の形態1におけるコイル1の整列性の良品と対比するための不良コイル16の整列性の不良品を説明するための後コア片202の構成を示す上面図である。図14は図13に示した不良品の後コア片202の構成を示す側面図である。
図15から図17は周方向Xに隣接するコア片におけるコイルの例を説明するための図である。図15は巻線を巻回する前の状態を示す図である。図16は巻線を巻回した後のコイル1の整列性の良品を示した図である、図17は巻線を巻回した後の不良コイル16の整列性の不良品を示した図である。
図11において、後コア片202のティース部6に巻回されたコイル1の1周をターンと定義する。そして、コイル1の隣り合うターン同士の密着度合いを整列性として定義する。よって、整列性が良好という意味は、図11および図12に示すようにコイル1のターン同士が隙間なく密着することである。
これに対し、不良という意味は、図13および図14に示すように、不良コイル16のターン同士が密着しておらずまたは重なり合い、ターン同士に隙間または重なり合う箇所が多く発生することである。図13および図14は、整列性が不良となる不良コイル16の一例である。巻線の整列性の不良の例は多岐に亘るが、本実施の形態1においては、検査する対象において発生する頻度が高い不良コイル16を例に説明する。
このように形成された不良コイル16は、整列性が劣る、いわゆる巻乱れと呼ばれる状態である。このように、巻乱れが発生すると不良コイル16に膨らみが発生する。そして、この不良コイル16の膨らみが、図1のようにコア片20を環状に配列する際に、隣り合うコイル1同士で干渉し、コイル1が押し潰される。
その結果、コイル1を構成するマグネットワイヤ9の絶縁被覆が損傷してショートとの相関が高い不良となる。また、図13および図14に示すように、巻乱れが生じた状態の不良コイル16は、この一部のターンが絶縁部3から外れてコア部2と接触する状態としてのショート部17が発生する可能性がある。尚、図14にて示した、反ヨーク部8に生じたショート部17はこの位置に限定されるものではなく、不良コイル16がヨーク部7と接触しても同様の不良が生じる。
次に、図15から図17を用いて、周方向Xに隣接した2個の前コア片201に巻線を連続して巻回し、コイル1を形成する場合の良、不良コイル16について説明する。尚、図15から図17においては、ヨーク部7の絶縁部3に巻線を係止するためのピン21を示している。また、図15から図17においては、便宜上、紙面上右側のコア片20から巻線を巻き始め、紙面上左側のコア片20を巻線の巻き終わりとして説明する。尚、ここでは説明の都合上、周方向Xに隣接するコア片20は2個の例を示したが、これに限られるものではなく、2個より多い、例えば図8に示したような9個など、複数個が周方向Xに隣接して形成される場合が考えられる。
図15に示すように、周方向Xに隣接した2個の前コア片201の一方、ここでは紙面上右側の前コア片201のピン21に巻線の巻始部19を絡げて係止する。そして、ティース部6の左側面181および右側面182に沿うように巻線を巻回して、図16に示すようにコイル1を形成した後コア片202が形成される。この際、コイル1の整列性の観点からヨーク部側側面23に巻線が当接して巻回される。
次に、周方向Xの隣接する紙面上左側の前コア片201に連続して巻線を巻回するために、紙面上右側の後コア片202から巻線の巻終部24を紙面上左側の前コア片201に渡るための渡り部25が形成される。そして、紙面上左側の前コア片201の巻始部19となり、上記に示した場合と同様にコイル1が形成される。そして、後コア片202の巻終部24は最終端となり、ピン21に絡げて係止される。尚、図示はしないものの、この巻終部24が後工程で環状に配置されるコア片20の巻線の端末と結線される。
尚、ここでは最初に巻線したコア片20のコイル1の巻回方向と、連続して巻線されるコア片20のコイル1の巻回方向が同一方向の例を示したが、これに限られることはなく、コア片20や絶縁部3に対する渡り部25および巻始部19の位置に応じて左右どちらの方向でも設定できる。
図16において、コイル1の整列性が良好な良品例を説明したが、図17において、整列性が損なわれる不良コイル16の例について説明する。不良コイル16となると、ヨーク部7と接触するショート部17が生じる可能性がある。具体的には、図17に示すように、後コア片202の巻終部24がヨーク部7と接触してショート部17が生じる。一般的に、巻始部19では、それ以降の巻線が集積されるため緩みが生じにくいのに対し、巻終部24では、巻線が最外周に位置するため、隣接する後コア片202へと続く渡り部25、もしくは、ピン21へ絡げる渡り部25が緩み易い。
よって、整列性が劣る巻乱れが発生した不良コイル16の様に膨らんだ部分にて最終ターン部としての巻終部24が位置すると、巻線完了時の最終ターン部の姿勢が不安定となるため巻回したコイルから外れ易くなる。結果、図17に示すように、最終ターン部としてここでは巻終部24がヨーク部7と接触するショート部17が生じる可能性がある。このように、単一もしくは複数個隣接するコア片の巻線においてコイルの整列性や巻乱れが最終ターン部240の位置や緩み易さへ与える影響は大きく、本発明においても巻線後のコイルの整列性を定量化すると共に最終ターン部としての巻終部24の位置を用いて巻線完了後に後工程で発生する不良を予測することを目的の一つとしている。
次に、本実施の形態1における、巻線検査装置140における巻線検査方法について図18から図25を用いて説明する。本実施の形態1においては、画像処理によって巻線の整列性を定量化することで巻線不良の検査を行うものである。ここでは、巻線が完了する直前の最終ターン部240の位置と、巻線が完了したコイル1の輪郭の定量化を行い巻乱れ等の巻線不良を検査し、先の図16および図17にて示した、例えば最終ターン部240の緩みに起因するヨーク部7と最終ターン部240との地絡発生の可能性、すなわちショート部17が生じる可能性を判定するものである。
図18から図23は巻線検査方法の各工程および閾値の設定方法を説明するための説明図である。図18はこの発明の実施の形態1におけるコア片20の最終ターン部240の輪郭としてのコイル形状のエッジを抽出する最終ターン抽出工程を説明するための説明図である。図18(A)は、カメラ141の視野26に映った最終ターンコア片203の形状から最終ターン部240を抽出するにあたり、最終ターンコア片203の部位を説明する説明図である。図18(B)は、図18(A)に示したように得られた、最終ターンコア片203の最終ターン部240の位置を抽出する工程を説明する説明図である。
図19はこの発明の実施の形態1におけるコア片20の輪郭としてのコイル形状のエッジを抽出する後抽出工程を説明するための説明図である。図19(A)は、カメラ141の視野に映った後コア片202の輪郭から検査を行うにあたり、抽出する輪郭の部位を説明する説明図である。図19(B)は、図19(A)に示したように得られた、後コア片202の輪郭からコイル形状のエッジを抽出する工程を説明する説明図である。
図20は、図18にて得られたコイル1の最終ターン部240の位置および図19にて得られたコイル1の輪郭の解析結果を示した図である。図21は図20にて得られたコイル1の輪郭として、整列性が良好で巻線の不良が発生しなかった最良のロットのコイルの最良輪郭321と、巻線不良が生じたロットであって、不良とはならなかった良品のコイルの良輪郭322との2種類の実データを元に、コイルの整列性をコイル面積として定量化し解析する演算条件を説明するための説明図である。
図22および図23は図21にて得られた解析結果を用いて閾値を定め不良を判定する工程を説明する説明図である。図22は図18にて得られたコイル1の最終ターン部240の位置の内、径方向位置であるY位置としてヨーク部側からの距離を縦軸とし、図19にて得られたコイル1の輪郭から定量化した図20で説明したコイル面積Sを横軸とした解析結果である。図23は図22の解析結果を用いて不良の閾値判定の設定を説明する説明図である。図24および図25はこの発明の実施の形態1における巻線検査方法のフローチャートを示す図である。
以下、図24および図25に基づいて実施の形態1の巻線検査方法の処理工程を説明する。まず、図10に示したように、巻線装置14に巻線が巻回される位置に前コア片201が設置され、当該巻線の巻回が開始される直前からカメラ141を用いて動画の撮影を開始し、巻線が終了するまでの動画を撮影する(図24のステップST1)。尚、動画とは、AVI(Audio Video Interleave)やMPEG(Motion Picture Experts Group)など一般の動画ファイル形式を有するもので、静止画の集合体である。
次に、動画ファイルから、例えば図18で示した最終ターン部240を抽出するための特定の静止画、すなわち、巻回終了直前の最終ターンコア片203の最終ターン画像を取得する(図24のステップST2)。この静止画の取得は、例えば、図10に示す巻線制御部15がフライヤ13を駆動して巻回を開始するタイミングから実施することが可能である。そして、画像処理部142がこの情報を利用して巻回を開始するタイミングと動画の撮影を開始するタイミングとを同期する。よって、動画を構成する静止画の順番により、当該静止画の抽出は、容易に特定することが可能である。尚、画像を取得する工程は、以下の工程においても同様に行うことができる。
次に、取得した最終ターンコア片203の最終ターン画像の二値化処理を行う(図24のステップST3)。この二値化処理は、一般に公知な処理方法にて行うことができるため説明は省略する。但し、取得された画像の明暗や撮影対象の色彩を考慮して二値化するための処理条件が必要である。例えば、絶縁部3が白色、コア片20が金属の光沢を有する銀色、コイル1を形成するマグネットワイヤ9が銅線で光沢を有する茶色の場合には、RGB値のそれぞれの閾値で二値化の処理を行う。
尚、二値化処理は、画像のノイズに対するフィルタ処理もあわせて行うことが可能である。また、二値化処理は、取得した画像の全域に渡り実施する必要はない。以下の工程においても同様に、取得した画像において使用する範囲のみ行えばよいため、この説明は適宜省略する。
次に、最終ターンコア片203の最終ターン部240の位置を抽出する(図24のステップST4)。次に、最終ターンコア片203の最終ターン部240の位置を定量化する(図24のステップST5)。これらステップST5の最終ターン定量化工程までの工程について、図18を用いて説明する。尚、図18および図19は、図16に示したピン21やピン21に絡げられたコイル端末から遡ってコイル輪郭上の最終ターン位置を特定することも可能であるが、前述したように最終ターン部240と他のターン部とが同色のため、二値化による明確な区別が難しい場合を想定し、ここではピン21やピン21に絡げられたコイル端末は用いずに、以下に説明する最終ターン部240の位置の定量化方法を適用する。
まず、図18(A)に示すように、カメラ141で撮影した視野26には、最終ターンが巻回された状態の最終ターンコア片203が映っており、最終ターン部240の位置を抽出するための分析左窓271および分析右窓272をそれぞれ設置する。この分析左窓271および分析右窓272は、それぞれの対角の2点(X1,Y1)および(X2,Y2)、(X3,Y3)および(X4,Y4)があらかじめ設定される。
例えば、図18(A)は、分析左窓271および分析右窓272に、コア片20のヨーク部側側面23と反ヨーク部側側面22とを含む。また、いずれかの分析左窓271、分析右窓272、ここでは分析左窓271に最終ターン部240を含む。そして、図18(A)に最終ターンコア片203を示すコイルの最終ターン左輪郭291および最終ターン右輪郭292は、図18(B)のように二値化された最終ターン左輪郭291および最終ターン右輪郭292の輪郭線として分析左窓271および分析右窓272にそれぞれ映る。そして、図18(B)に示すように、コア片20の基準を反ヨーク部側側面22の両端となるL1およびR1の中点C1と、ヨーク部側側面23の両端となるL2およびR2の中点である基準点C2とのそれぞれの座標を割り出す。
これによって、コア片20の中点C1および基準点C2を通る中心線28(CL)と、中心線28上のコア片20の基準点C2を得る。但し、必ずしも反ヨーク部側側面22やヨーク部側側面23上の定点を抽出する必要はなく、コア片20の中心線28と、中心線28上の定点を得られれば他の部分でも同様に行うことができる。図18(A)に示すコイルの輪郭と最終ターン部240は、図18(B)のように二値化された輪郭線が分析左窓271に映り、最終ターン部240と分析左窓271との交点であるK点(X5,Y5)を得ることができる。すなわち、最終ターン部240の輪郭から最終ターン部240の径方向位置であるK点のY位置(Y5)の値を得て、最終ターン部240の位置の定量化ができる。
次に、図25のステップST6から最終工程であるステップST10までを説明する。そして、撮影された動画から、巻線完了後のコイル1の形状を抽出し得る、巻線後の後コア片202の後画像を取得する(図25のステップST6)。次に、後コア片202の後画像から、コイル1の輪郭を抽出するために2値化処理を行う(図25のステップST7)。尚、後取得工程(図25のステップST6)は最終ターン取得工程と、後二値化工程(図25のステップST7)は最終ターン二値化工程と同様の処理を行うので説明を省略する。
次に、後抽出工程(図25のステップST8)では後画像で抽出したコイル輪郭の二値化処理を行う。そして、後定量化工程(図25のステップST9)では、コイル面積Sを算出し定量化を行う。そして、判定工程(図25のステップST10)では、最終ターン定量化工程にて定量化した最終ターン部240の径方向位置であるY位置と、後定量化工程にて定量化したコイル面積Sとからコイルの巻線不良の判定を行う。
以上、ステップST6からステップST10までを、図19から図23を用いて説明する。図19(A)は図18であらかじめ得た基準点C2(X6,Y6)を用いて、視野26中に(X7,Y7)および(X8,Y8)が設定された後分析窓303を設置する。そして、図19(A)の巻線完了後を示すコイルの左輪郭311および右輪郭312は、図19(B)のように二値化された左輪郭311および右輪郭312の輪郭線として後分析窓303に映る。そして、巻線完了後の後分析窓303における、ヨーク部側側面23と左輪郭311との交点をM点とし、反ヨーク部側側面22と左輪郭313との交点をP点とする。
以下、ターン位置と輪郭との座標原点は当該基準点C2として説明する。また、後分析窓303のY方向の正負は視野26のY方向と一致し、視野26の紙面上方向を正と定義する。一方、X方向の正負は中心線28を挟んで対称とし、これ以降の説明では当該正負に合わせて説明する。
図20はコイル輪郭を集約して示したものであり、実施の形態1において定量化されたデータである。また、図19(B)で抽出し定量化した左輪郭311を例に示す。図20のXA軸は図19(B)のX軸と、YA軸は図19(B)のY軸と同じ方向である。左輪郭311は図19および図20で同一である。K点は図18で抽出した最終ターン部240と分析左窓271との交点である。
次に、図18にて定量化した最終ターン部240の径方向位置としてのY位置(Y9)と、コイル輪郭から定量化したコイル面積Sとのデータを用いて判定を行う。但し、図20に示すように、コイル面積Sを算出ための基準点C2からのYA軸方向の距離Lは、K点を通る垂線のYA軸方向の距離L1と一致するとは限らない。
ここで、コイル面積Sを算出するための手順を、図21を用いて説明する。図21において、不良発生のない正常な最良輪郭321は、図20にて得られたコイル1の輪郭と同様であり、整列性が良好で巻線の不良が発生しなかったロットのコイルの輪郭の例を示す。また、不良発生のあった良輪郭322は、巻線不良が生じたロットではあるが不良とはならなかった良品のコイルの輪郭の例を示す。いずれの輪郭の表示も、各ロットのコア片20の5個(n=5)の平均値にて示したものである。
コイルの整列性をコイル面積Sとして定量化して解析するためには、コイル輪郭の全てのコイル面積を算出することも考えられる。しかしながら、効率化および高精度化を考えると、図21における距離Lを設定する必要がある。具体的には、図21の最良輪郭321および良輪郭322を比較すると、当然ながら巻線不良が発生したロットの良輪郭322は、そのもの自身が不良品ではないにもかかわらず、良品の最良輪郭321とは異なる様相であることが判る。さらに、前述の良輪郭322は正常品の最良輪郭321と比べて特定の範囲で、許容範囲ではあるものの巻乱れによるコイルの膨れが発生する傾向が確かめられた。
このように、巻乱れ、すなわちコイルの膨らみはコイル面積Sの大きさが大きくなることにより判定可能である。このため、コイルの輪郭の全てのコイル面積Sを用いることも可能であるが、最良輪郭321と良輪郭322との差が最も大きくなる距離L、すなわち所定箇所のコイル面積Sを算出し定量化することで、判定を効率化および高精度化できるのは明らかである。以上の結果を踏まえ、図22には実データを用いて、先に示した距離Lにおけるコイル面積Sと、先に定量化した最終ターン部240のY位置とをプロットした。縦軸を最終ターン部240のY位置とし、横軸をコイル面積Sとする。
図22および後述する図23における最良輪郭群331および良輪郭群332は、図21と同じ種別のデータである。また、不良輪郭333の度数は”1”で、実際に巻線不良となった発生率が1/24000のデータを用いて説明する。図23では閾値を用いた判定方法を、図22と同じデータを用いて説明する。図22に示すように、不良品が発生した良輪郭群332は最良輪郭群331と比較すると、最終ターン部240のY位置がヨーク部側により、また、コイル面積Sが増加する傾向がある。さらに、不良輪郭333においてはその傾向が最も顕著であることが判る。
そこで、図22のプロットの基準を良品データとし、良品データの最終ターン部240のY位置およびコイル面積Sの平均と分散とを用いて基準化し、基準化した2軸の交点を中心に45°回転し、一次変換したプロットを図23に示す。すなわち、良品データの最終ターン部240のY位置とコイル面積Sとの各々の平均値Y(ave)、S(ave)および分散σy、σsとして、全てのプロットを下記式(1)にて変換した。
ここでは、上記式(1)に示すように、良品データの平均値を、図23に示すように、Z1軸とZ2軸とが直交する原点(0、0)を中心として、θ=45°回転する計算を行う。尚、基準化と軸の回転角度とについては一般的な計算に則り、他の計算方法を用いても定量化が可能であればよい。以上の定量化を用いて図23のプロットを得ることで、不良品の判定を一つの値で行うことができる。ここでは”Z1≒6”を閾値34として用いて判定が可能である。すなわち、Z1が6より大きければ不良と判定し、6より小さければ良と判定する。
上記のように行われた実施の形態1の巻線検査方法および巻線検査装置によれば、巻線後直前の最終ターンコア片の最終ターン部の輪郭および後コア片のコイルの輪郭から巻線不良の判定を行うことができる。よって、巻線後のコア片を環状に配列し溶接等で固着してコア部を形成する前に、巻線不良を検出できる。よって、コイルの不良が検出された場合には、この時点で、不良とされたコア片を取り除く、コイルの巻直し、もしくは、コイルの修正を行うなどの対応が可能となる。これらにより、生産性を向上できる。このため、省エネルギーとなり、歩留まりが向上する。
さらに、巻線不良の判定に、コア片の最終ターン部の径方向位置および巻線コイルの面積を用いることにより、巻線(マグネットワイヤ)の線径や巻線のターンのパターン設計など巻線の整列性、また、照明等画像取得の外的環境により影響の受けにくいコイル面積を判定に使用するため、より一層精度よく良否の判定を行うことができる。さらに、抽出工程にて、解析窓を大きく逸脱しコア片が解析できない場合には、コア片の脱落や、マグネットワイヤの断線によりコイルや最終ターンが形成されていない等の現象を不良として判定を行うことができる。よって、巻線検査の精度が向上し、早期に巻線不良を検出でき、後工程への不良流出を防止できる。
尚、上記実施の形態1においては、2次元の映像にて処理する例を示したが、これに限られることはなく、3次元の映像にて処理して、上記実施の形態1と同様に判断することも可能である。また、このことは以下の実施の形態においても同様である。
また、上記実施の形態1においては、コア片の最終ターン部の径方向位置および巻線コイルの面積を用いて巻線不良の判定を行う例を示したが、これに限られることはなく、巻線後直前の最終ターンコア片の最終ターン部の輪郭および後コア片のコイルの輪郭から他の特定部分を用いて巻線不良の判定を行うことも可能である。
実施の形態2.
上記実施の形態1においては、最終ターン部240の輪郭から最終ターン部240の径方向位置であるY位置を算出し、コイルの輪郭からコイル面積Sを算出してコイルの良否を判定する例を示したが、これに限られることはなく、本実施の形態2においては、最終ターン部240の輪郭とコイルの輪郭とから最終ターン部240の径方向位置であるY位置および周方向位置であるX位置を算出してコイルの良否を判定する場合について説明する。
図26および図27は上記実施の形態1と同様に図21にて得られた解析結果を用いて閾値を定め不良を判定する工程を説明するための説明図である。図26は図18にて得られたコイル1の最終ターン部240の径方向位置としてヨーク部側からの距離をY位置として縦軸とし、最終ターン部240の周方向位置としてコア片20の中心線28からの距離をX位置として横軸に示した解析結果である。図27は図23と同様の演算方法を用いて不良の閾値判定する工程を説明するための説明図である。尚、図26は図22と同じデータを用いて行っている。
次に、実施の形態2の巻線検査方法について説明する。まず、上記実施の形態1にて示した場合と同様に、図18から最終ターン部240のY位置を算出する。次に、図19および図20の左輪郭311から、最終ターン部240のY位置に対応する周方向位置としてのX位置を抽出する。具体的には、左輪郭311と最終ターン部240のY位置との交点である(X9、Y5)から、X位置(X9)を抽出し、コア片20の中心線28を基準とする最終ターン部240のX位置を定量化できる。
そして、図26および後述する図27における最良輪郭群331および良輪郭群332および不良輪郭333は、上記実施の形態1と同様に図21と同じ種別のデータである。図27では閾値を用いた判定方法を、図26と同じデータを用いて説明する。図26に示すように、不良品が発生した良輪郭群332は最良輪郭群331と比較すると、最終ターン部240のY位置がヨーク部側により、また、最終ターン部240のX位置が基準点C2から離反する傾向にある。さらに、不良輪郭333においてはその傾向が最も顕著であることが判る。
そこで、図26のプロットの基準を良品データとし、良品データの最終ターン部240のY位置およびX位置の平均と分散とを用いて基準化し、基準化した2軸の交点を中心に45°回転し一次変換したプロットを図27に示す。すなわち、良品データの最終ターン部240のY位置とX位置との各々の平均値Y(ave)、X(ave)および分散σy、σxとして、全てのプロットを下記式(2)にて変換した。
ここでは、上記式(2)に示すように、良品データの平均値を、図27に示すように、Z1軸とZ2軸とが直交する原点(0、0)を中心として、θ=45°回転する計算を行う。尚、基準化と軸の回転角度とについては一般的な計算に則り、他の計算方法を用いても定量化が可能であればよい。以上の定量化を用いて図27のプロットを得ることで、不良品の判定を一つの値で行うことができる。ここでは”Z1≒4”を閾値34として用いて判定が可能である。すなわち、Z1が4より大きければ不良と判定し、4より小さければ良と判定する。
上記のように行われた実施の形態2における巻線検査方法によれば、最終ターン部の径方向位置および周方向位置を用いて判定を行うので、精度としては上記実施の形態1より劣るものの、判定を行うための処理が少なく、高速にて判断を行うことができる。また、低コストとなる。
実施の形態3.
この発明における実施の形態3においては、上記各実施の形態で説明した巻線検査方法を実施するための巻線検査装置140に関するものである。尚、実施の形態3においては、上記実施の形態1において説明した固定子10を参照して説明する。図28はこの発明の実施の形態3における巻線検査装置140の構成を示す図である。図において、巻線検査装置140は、カメラ141と、画像処理部142とを備えている。
画像処理部142は、取込部35、取得部36、二値化処理部37、最終ターン抽出部38、最終ターン定量化部39、後抽出部44、後定量化部45、判定部48、および制御部49を備える。
制御部49はカメラ141と画像処理部142とを制御する。制御部49は図示しない表示装置、キーボード、マウス等との間の信号処理を行う。画像処理部142はCPU、メモリ、ディスク、入出力部、および周辺機器部にて構成し、巻線検査方法の各処理工程をソフトウエアで処理できる。尚、制御部49を巻線装置14の一部として利用することも可能である。その場合、巻線制御部15と制御部43とは完全に同期して、検査員が判定結果を基に巻線装置14の操作を行うことなく自動生産と巻線の自動検査とが実施できる。
取込部35は、カメラ141を用いて前コア片201が巻線を施す位置に設置された直後(巻回直前)から、巻線を終了するまでの動画を撮影する。取得部36は、得られた動画ファイルから、最終ターンコア片203および後コア片202の必要となる画像の取得を行う。二値化処理部37は、取得された最終ターンコア片203および後コア片202の画像の明暗や撮影対象である絶縁部、コア部、コイルの色彩を考慮して二値化の処理を行う。
最終ターン抽出部38は、最終ターンコア片203の最終ターン部240を含む最終ターンコア片203の輪郭の抽出などを行う。最終ターン定量化部39は、最終ターンコア片203の輪郭から、最終ターン部240の径方向位置を定量化する。
後抽出部40は、後コア片202のコイル1の整列性を検査するためコイル1の輪郭の抽出を行う。後定量化部45は、得られた後コア片202のコイル1の輪郭を、コア片20のコイル面積Sまたは最終ターン部240の周方向位置を定量化する。またこれ以外に、この時点で、巻乱れおよびショート不良に代表される巻線不良を診断することも可能である。
判定部48は、最終ターン定量化部39の最終ターンコア片203の画像を定量化した結果と、後定量化部45の後コア片202の画像を定量化した結果を用いてコア片20のコイル1の良否判定を行う。制御部49は、巻線検査の結果、すなわち判定部48の判定結果とその値、さらに巻線済みのコア片20であっても巻線装置14内で付与したコア片20を特定し得る情報を、表示装置に表示して巻線装置14を扱う操作員含み検査に関わる人員に提示する。また、巻線前において不良の可能性を検出した場合は、巻線装置14へ接続した入出力装置を介して警告信号を発信し、これを受けた巻線装置14を自動停止できる。
上記のように構成された実施の形態3の巻線検査装置は、上記各実施の形態の巻線検査方法を実施することが可能となり、上記各実施の形態と同様の効果を奏することできる。さらに、巻線装置を巻線検査の結果に応じて適宜処理したり、操作員に対して巻線検査の結果を提供できる。
よって、コア片を環状に配置する前に巻線不良を検出し、巻線装置および操作員が不良のコア片に対して対応できる。よって、さらに生産性の向上、省エネルギー、歩留まりの向上が可能となる。
尚、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。