本発明は物体の力学量を計測する装置に関する。
構造物の変形を測定するためには、金属箔の抵抗値がひずみによって変化することを利用した金属箔ひずみゲージが用いられる。また、特開平07-270109に見られるように、ひずみゲージを使用する際には温度補償のために同時にブリッジ回路が併用される。
従来のひずみ計測の際には、金属箔ひずみゲージやポリシリコン薄膜細線を用いた半導体ひずみゲージが用いられる。金属箔ひずみゲージや半導体ひずみゲージにおける薄膜はポリイミド等の樹脂膜上に形成されて用いられる。また、ひずみゲージと共にブリッジボックスが用いてホイートストンブリッジ回路を形成してひずみ測定が行われる。ホイートストンブリッジ回路は抵抗値の等しい四本の抵抗を用いて形成されており、温度補償回路の役目を果たす。この際、ひずみ計測を行うひずみゲージのみを被測定物に貼り付け、ブリッジボックス内の抵抗はひずみの影響を受けない場所に設置される。
しかしながら、ひずみ測定に金属箔ひずみゲージや半導体ひずみゲージを使用しようとすると、以下の特有な問題を生じる。
第一に、ひずみゲージに用いられる金属箔やポリシリコン薄膜と樹脂では線膨張係数が約一桁異なることから、ひずみ測定時に温度変動が生じた場合、薄膜と樹脂の界面に熱応力が生じ、はく離や破壊等、機械的強度の観点から信頼性の低下が問題となる。そこで、本特許の目的はひずみ検出部に金属箔やポリシリコンを用いた場合でも、薄膜と基板との間に大きな熱応力を生じさせにくく、精度の高い測定を可能とした力学量測定装置を提供することにある。
第二に、ひずみ検出部に多結晶材料を用いた場合、ひずみ検出部には結晶粒界が存在するため、ストレスマイグレーションや粒界腐食が生じ、強度が大きく低下する。このような粒界起因による強度低下を防ぐためには、ひずみ検出部に粒界を持たない単結晶材料を用いることが必要となる。ひずみ検出部を単結晶とするためには、例えば単結晶半導体基板の中に局所的に不純物原子を拡散させ、その領域を不純物拡散抵抗として用いる方法がある。半導体はひずみが加わると抵抗値が変化するピエゾ抵抗効果を有することから、不純物拡散抵抗をひずみ検出部とすることでひずみの計測を行うことができる。しかしながら、ひずみ検出部を単結晶不純物拡散層とすると、基板に薄膜を堆積させた場合とは異なり、抵抗形状に起因したひずみ測定方向の調整を行うことができないことから、測定部では多方向からのひずみに依存して抵抗値が変化が生じるため、目的とする特定方向のひずみのみを検出することができない。そこで、本特許の目的はひずみ検出部に半導体単結晶不純物拡散層を用いた場合であっても、特定方向のひずみを精度良く計測することを可能とする力学量測定装置を提供することにある。
第三に、ホイートストンブリッジ回路の温度補償性能を高めるためには、ホイートストンブリッジ回路を構成する抵抗がすべて等しい温度環境下に置かれることが必要となる。通常ひずみゲージを用いた測定においては、ホイートストンブリッジ回路として、ひずみ計測用のアクティブ抵抗であるひずみゲージとひずみに対して感度を持たないダミー抵抗によって構成されたブリッジボックスを用いて形成される。この場合、被測定物に直接貼られたひずみゲージとひずみが加わらないよう隔離された場所に設置されるブリッジボックスとでは、厳密には温度環境を等しくすることができない。また、ホイートストンブリッジ回路内では、配線自体が有する抵抗の値も影響することから、各抵抗を結ぶ配線の種類及び長さは可能な限り等しくする必要がある。しかし、被測定物に貼られたひずみゲージとブリッジボックスとを結ぶ配線と、ブリッジボックス内の抵抗を結ぶ配線の長さや抵抗値を等しくすることは困難である。このような理由から従来型の計測方法では、ホイートストンブリッジ回路が有する温度補償性能を最大限活用することができなかった。上記の問題は、被測定物に貼られるひずみ検出部自体にホイートストンブリッジ回路を設けることによって解決することができる。ホイートストンブリッジ回路を構成する抵抗を可能な限り近づけて設置し、抵抗間を結ぶ配線を短くしてやることでホイートストンブリッジ回路の温度補償効果を高めることができる。しかしながら、ひずみが加わるひずみ検出部にホイートストンブリッジ回路を集約した場合、回路を構成する抵抗すべてにひずみが加わり抵抗値が変動するためブリッジボックス内のダミー抵抗のような無ひずみ環境を作ることができず、ホイートストンブリッジ回路は正常な動作を行うことができない。そこで、本特許の目的はひずみが加わるひずみ検出部にホイートストンブリッジ回路を集約した場合であっても、ホイートストンブリッジ回路としての機能を正常に果たし、精度良くひずみ測定を行うことが可能である力学量測定装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、半導体単結晶基板の上に、p型不純物拡散層で形成されたホイートストンブリッジ回路と、このホイートストンブリッジ回路においてひずみ測定方向と垂直な方向の両側もしくは片側に形成されたスリットを設け、スリットの長手方向はひずみ測定方向と平行であり、ホイートストンブリッジ回路を、電流を流し抵抗値の変動を測定する方向が前記半導体単結晶基板の<110>方向と平行であるp型不純物拡散層と、前記不純物拡散層において電流を流した方向から前記半導体単結晶基板上にて90°回転させた方向に電流を流し抵抗値の変動を測定するp型不純物拡散層との組み合わせによって形成したものである。
また、半導体単結晶基板上に、n型不純物拡散層で形成されたホイートストンブリッジ回路と、このホイートストンブリッジ回路においてひずみ測定方向と垂直な方向の両側もしくは片側に形成されたスリットを設け、スリットの長手方向はひずみ測定方向と平行であり、ホイートストンブリッジ回路を、電流を流し抵抗値の変動を測定する方向が前記半導体単結晶基板の<100>方向と平行であるn型不純物拡散層と、前記不純物拡散層において電流を流した方向から前記半導体単結晶基板上にて90°回転させた方向に電流を流し抵抗値の変動を測定するn型不純物拡散層との組み合わせによって形成したものである。
また、半導体単結晶基板上に、p型不純物拡散層で形成されたホイートストンブリッジ回路と、このホイートストンブリッジ回路においてひずみ測定方向と垂直な方向の両側もしくは片側に形成されたスリットを設け、スリットの長手方向はひずみ測定方向と平行であり、ホイートストンブリッジ回路を、電流を流し抵抗値の変動を測定する方向が前記半導体単結晶基板の<110>方向と平行であるp型不純物拡散層と、電流を流し抵抗値の変動を測定する方向が前記半導体単結晶基板の<100>方向と平行であり抵抗値を半分とする中点がせん断ひずみ成分を排除するために前記半導体単結晶基板上にて90°折り曲げられているp型不純物拡散層との組み合わせによって構成したものである。
また、半導体単結晶基板上に、n型不純物拡散層で形成されたホイートストンブリッジ回路と、このホイートストンブリッジ回路においてひずみ測定方向と垂直な方向の両側もしくは片側に形成されたスリットを設け、スリットの長手方向はひずみ測定方向と平行であり、ホイートストンブリッジ回路を、電流を流し抵抗値の変動を測定する方向が前記半導体単結晶基板の<100>方向と平行であるn型不純物拡散層と、電流を流し抵抗値の変動を測定する方向が前記半導体単結晶基板の<110>方向と平行であり抵抗値を半分とする中点がせん断ひずみ成分を排除するために前記半導体単結晶基板上にて90°折り曲げられているn型不純物拡散層との組み合わせによって構成したものである。
半導体プロセスを用いて作製することができるので、他のCPU等のデジタル回路やメモリ回路、通信回路等と混載することが可能である。また、半導体製造設備を用いて高精度且つ低価格・大量供給を行うことができる。
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
図1には本発明の第一の実施例である力学量測定装置を示す。本実施例は、シリコン基板2上に少なくともひずみ検出部3を有しており、前記ひずみ検出部3はポリシリコン薄膜もしくは金属薄膜によって形成されていることを特徴としている。
本実施例においては、シリコン基板2と前記シリコン基板2上に形成された薄膜群を総称して力学量測定装置1と呼ぶ。
力学量測定装置1は図1に示すように、シリコン基板2においてひずみ検出部3等の薄膜群が設けられた面、すなわちデバイス形成面の裏面を接着面10とし、図2(a)に示すように前記接着面10を被測定物11接着してひずみ量の計測を行うことができる。もしくは図2(b)に示すように被測定物11に力学量測定装置全体もしくは部分的に埋め込んでも良い。または図2(c)に示すように力学量測定装置を樹脂フィルム20上に形成もしくは貼り付けや埋め込みを行い、前記樹脂フィルム20を被測定物11に貼り付けもしくは埋め込みを行って測定を行ってもよい。以下、本実施例においては力学量測定装置1を被測定物11に貼り付けた場合を例にして説明するが、力学量測定装置1を被測定物11に埋め込んだ場合や力学量測定装置1付きの樹脂フィルム20を被測定物11に貼り付けもしくは埋め込みを行った場合であっても同様の効果を有する。前記被測定物11に生じたひずみは、接着面10からシリコン基板2を介してひずみ検出部3に伝えられ、前記ひずみ検出部3は加わるひずみ量に比例した出力を生じる。
図3には本問題を解決することが可能となった、本実施例における力学量測定装置を示す。本実施例においては、ひずみ検出部3は金属薄膜6もしくはポリシリコン薄膜7を用いて細線状の抵抗を形成したものであり、ひずみが加わった際の抵抗値変化を計測することでひずみ量の検出を行う。
従来の技術では、ひずみの計測にはポリイミドなどの樹脂薄膜上に金属薄膜やポリシリコン薄膜を形成し、ひずみが加わった際の抵抗値変化からひずみ量を検出していた。しかしながら、金属薄膜とポリイミド、ポリシリコン薄膜とポリイミドとでは線膨張係数に大きな差があり、温度状態が変動しやすい環境下ではポリイミドと薄膜の間の界面にて大きな応力集中が生じるため、使用環境に依存して、もしくは長期間の使用において薄膜がはく離や破壊等を起し、信頼性が高い測定が達成されないという欠点を持っていた。
しかしながら本実施例においては、シリコン基板2の線膨張係数はポリイミドのそれと比べて、金属薄膜やポリシリコン薄膜の値に近いので、周囲環境の変化によって温度変動が生じた場合においても、シリコン基板2と金属薄膜6との界面、もしくはシリコン基板2とポリシリコン薄膜7との界面に生じる応力集中を低減することができ、前記界面近傍での機械的損傷の発生を抑制することができる。このため、本実施例においては温度変動の大きい環境下でも長期にわたり信頼性の高いひずみ測定が可能となる。
また、ポリイミドなどの樹脂薄膜上に金属薄膜やポリシリコン薄膜を形成した場合には、樹脂薄膜の熱伝導が悪いために温度が急変する場合に追従できないという問題があったが、本実施例においては熱伝導性の良いシリコン基板2を用いているために急激な温度変化があった場合でも精度の良い測定が可能となる。
また、ひずみ検出部3にポリシリコン薄膜7を用いた場合には、ポリシリコン薄膜は高抵抗化が可能であることから低消費電力化が可能となるという利点がある。また、ひずみ検出部3にポリシリコン薄膜7を用いた場合には、ひずみ測定感度が金属薄膜を用いた場合に比べて一桁程度高くなるという利点がある。
一方、ひずみ検出部3に金属薄膜を用いた場合には、温度変動が生じた場合において、抵抗値変動量が比較的小さいので広い温度範囲での高精度なひずみ測定が可能となるという利点がある。
さらに、本実施例ではシリコン基板2上へ金属薄膜やポリシリコン薄膜を成膜し、これをフォトリソグラフィ技術によって細線に加工するが、その場合において現在の半導体デバイス製造の精度をもってひずみ検出部3を加工することが可能となる。よって微小部のひずみを測定する目的のために、微小なひずみ検出部3を作製する際にも、ひずみ検出部3の信頼性や精度を保ったまま、ひずみ検出部3を微細化することが可能である。よって、微小部のひずみの測定を行う際にも高精度に測定できるという利点が生じる。
また、同様に半導体製造プロセスを用いて製造することから、半導体デバイスと同様に、安価且つ大量供給が可能となるという利点が生じる。
ひずみ測定を行う際には目的とするある特定方向のひずみ量の測定が必要とされる。薄膜抵抗にひずみが加わり抵抗値変動が起こる際には、薄膜抵抗から出力される抵抗値の変動量は抵抗内に生じるひずみ量の積分平均に比例する。このため、ひずみに対する感度を必要とする方向においては抵抗の長さを薄膜の厚さに対して長く、ひずみに対する感度を必要としない方向に対してはその方向の抵抗長さをひずみ測手方向の抵抗長さより短くすることで、ほぼ一方向にのみ感度を持たせることができる。発明者らが行った解析によると、シリコン基板上に薄膜抵抗を作製した際、前記薄膜抵抗の厚さに対して前記薄膜抵抗の長さを50倍以上とすることで前記シリコン基板とほぼ等しいひずみ量を前記抵抗内に均一に発生させることができる。このため、ひずみ測定精度を向上させるためには、抵抗の長手方向(長辺)の長さが抵抗の厚さに対して50倍以上になるようにすると、長手方向のひずみ感度が向上するという利点がある。また、抵抗の短辺長さ、すなわち幅を抵抗の厚さの10倍以下とすることによって、短辺方向の抵抗内のひずみ量の積分平均をシリコン基板に生じたひずみ量の半分以下にすることができるという利点がある。すなわち、ひずみに対して感度を必要とする方向の抵抗長さは抵抗厚さの50倍以上とし、ひずみに対して感度を必要としない方向の抵抗長さは抵抗厚さの10倍以下とすることが望ましい。
また、本実施例においてはシリコン基板2に限定して例を示したが、他の半導体基板であってもポリイミドに比べて金属薄膜やポリシリコンに対して線膨張係数の近いものであれば、同様の効果を有する。力学量測定装置1の基板にシリコン等の半導体基板を作製した場合、半導体製造プロセスを用いて前記基板内に電子回路を併設できるという利点を持っている。この場合にはひずみ検出部3の出力はパッド4を経由して力学量測定装置1外へ出力させる必要は無く、半導体基板内に増幅回路、アナログ−デジタル変換器、整流・検波回路、アンテナ回路等の回路を搭載させて、ひずみ検出部3の出力を増幅させた後やデジタル変換した後に力学量測定装置の外部へ出力を行う、もしくは無線通信形式で外部へ出力を行うことが可能となる。この場合には、ひずみ検出部3からの出力を力学量測定装置1内で増幅させたりデジタル変換させたりすることができるので、力学量測定装置1の外部へデータ出力する場合にも、外部ノイズが出力データに与える影響を最小限にすることができ、高精度なひずみ測定が可能となる。また、ひずみ検出部3からの出力を無線で外部に送信する場合には力学量測定装置1は外部との結線に使用する剥き出しの端子を必要としないため、パッド4等において腐食等が起こらず、信頼性の高い力学量測定装置を提供することができる。
さらに、シリコン基板2を被測定物11に張り付けてひずみ測定を行う場合、前記シリコン基板2の側面は自由表面となることから前記シリコン基板2と前記被測定物11の界面に平行な方向に対する拘束が弱くなる。つまり前記シリコン基板2の周辺部近傍領域では、被測定物に対するひずみの追従性が悪くなる。この問題を解決するためにはシリコン基板2を薄くして剛性を下げ、さらに前記シリコン基板2上においてひずみ検出部3の配置位置をシリコン基板の周辺部近傍領域を避けて配置する。発明者らが行った有限要素法解析によると、シリコン基板2の幅に対する厚さの比を1/10以下にすることで、前記シリコン基板2上中央領域においては比測定物11に発生したひずみに対して約半分以上のひずみを発生させることができる。シリコン基板2上平面内におけるひずみの分布は、前記シリコン基板2の基板側面端を基準として基板中心方向へ基板幅の1/5以下となる領域では基板表面に発生するひずみは急激に小さくなる。つまり、高感度のひずみ測定を行うためには図4に示すように、シリコン基板2の幅wに対する厚さtの比w/tを1/10以下にすることが望ましい。さらに、シリコン基板2の表面内において、基板端からw/5以上離れたひずみ検出部配置領域301にひずみ検出部3を配置することが望ましい。
本実施例によれば、従来技術である金属箔ひずみゲージや半導体ひずみゲージで問題となる薄膜と基板との界面での熱応力の発生を低減させ、ひずみ測定における信頼性の向上が可能となるという効果を有する。
以下、図5を用いて本発明における第二の実施例を説明する。図5には本発明の第二の実施例である力学量測定装置を示す。本実施例は、第一実施例と同様の構造を有しているが、基板がシリコン単結晶基板8であり、前記単結晶シリコン基板8の表面にn型不純物拡散層14で構成されたひずみ検出部3を有することを特徴とする。
ひずみ検出部では、ひずみ量を電気量に変換して計測を行う。多くの場合、ひずみ検出部には多結晶材料が用いられるが、多結晶材料にひずみが生じた場合にはストレスマイグレーションや粒界腐食が発生し、ひずみ測定素子の強度を著しく低下させる原因となる。この問題はひずみ測定素子に粒界を持たない単結晶を用いることで解決する。本実施例においては、力学量測定装置1内のひずみ検出部3は単結晶シリコン基板8に不純物原子を拡散させてn型不純物拡散層を形成したものであり、その抵抗値変化を計測することによってひずみ量を得る。単結晶シリコン基板8に作製された不純物拡散層は単結晶であることから粒界腐食に起因する強度低下を起こさず、また基板上に堆積させた薄膜でないことからはく離も起こらないという利点を有する。半導体単結晶に不純物拡散層を作製し、ひずみの変動に比例した抵抗値変化を計測した場合、不純物拡散層の抵抗値変化はその形状に関係なく不特定多数方位のひずみ成分の影響を受けることになる。このため、多軸のひずみが生じている被測定物に力学量測定装置1を設置した場合には特定方向のひずみ量を完全に正確に検出することができないという問題がある。尚、本実施例を含め以下の実施例では、不純物拡散層と共に不純物拡散抵抗という表記も併用する。すなわち特に表記の無い限り本実施例における不純物拡散層と不純物拡散抵抗は同一のものとして取り扱うこととする。
図5には、本問題を解決することが可能となった、力学量測定装置1を示す。本実施例では単結晶シリコン基板8を用いることにより粒界腐食等を防止でき、信頼性の向上が達成出来たが、その一方で、単結晶に特有の現象である強い結晶方位依存性を十分に考慮して使いこなす必要がある。本実施例における発明は、不純物拡散抵抗において電流を流して抵抗値変化を計測する方向と、シリコン単結晶の結晶方位との関係を考慮し、所望の特性を得られるようにしたものであり、以下では単結晶シリコン基板8における結晶面や結晶方位の指定を行うが、この表記にはミラー指数を用いる。ミラー指数表記においてはマイナス方向を指定する場合、数字の上にバーを付するが、本明細書中においては便宜上バーの付いた数字は“−”をつけて[−110]のように表記する。また特定の面や方向を表す場合には()と[]をそれぞれ用い、単結晶シリコン基板内において等価である面や方向を表す場合には{}と<>をそれぞれ用いて表記する。さらに、本明細書においては不純物拡散層の長手方向に電流を流し、電流の流れる方向の抵抗値の変動を計測する。以後、抵抗の長手方向という表記は電流を流し抵抗値変動を計測する方向を意味するものとする。本発明における効果は単結晶基板における結晶方位と、その上に作製された不純物拡散層における電流を流し抵抗値変化を測定する方向との関連によって得られるものであり、とくに不純物拡散層の長手方向と電流を流す方向が一致していない場合であっても同様の効果を得ることができる。
本実施例においては、図5に示すように力学量測定装置1は、単結晶シリコン基板8の上面である{001}面内に不純物原子を拡散してその長手方向がシリコン結晶の<110>方向と平行となるn型不純物拡散層14を有することを特徴とする。
ひずみを受けた半導体はピエゾ抵抗効果に起因して抵抗値が変化する。半導体単結晶のピエゾ抵抗効果はその結晶構造に依存した直交異方性を有しており、電流を流し抵抗値の変化を計測する方向と半導体単結晶の結晶方位の関係に関連して抵抗値変化は異なる性質を示す。図5に示すように単結晶シリコン基板8の{001}面上において、その長手方向が前記単結晶シリコン基板2の<110>方向に対して平行となるn型不純物拡散層14を配置すると、前記n型不純物拡散層14は抵抗長手方向の垂直ひずみに対して大きな感度を有し、単結晶シリコン基板8の上面内におけるその他の方向のひずみ成分に対する感度を少なくすることが可能となる。前記n型不純物拡散層14を有する力学量測定装置1を、被測定物に対してひずみ測定を目的とする方向と前記n型不純物拡散層の長手方向が平行となるように設置することによって、その方向の垂直ひずみを精度よく計測することができる。通常半導体製造に用いられるシリコンウエハは、その表面がシリコン結晶の{001}面となっていることから、ここでは{001}面を表面とするシリコンウエハを例として説明したが、シリコンウエハの表面が{110}面よりも{001}面に近い方位であれば同様の効果が得られる。尚、本実施例においてn型不純物拡散層14の長手方向を単結晶シリコン基板8の<110>方向と平行になるよう配置すると記述したが、これは理想状態であって、前記シリコン単結晶基板8の<100>方向よりも<110>方向に近い方向に平行になるよう配置すれば同様の効果を得ることができる。
さらに第一実施例の場合と同様に、より高感度のひずみ計測を行うためには、単結晶シリコン基板8の表面内において基板の端部から基板中心に向かって基板幅の1/5以上離れた領域にひずみ検出部3を設置すればよい。また、力学量測定装置内の単結晶シリコン基板8上にはひずみ検出部3だけでなく、増幅回路、アナログ−デジタル変換器、整流・検波回路、アンテナ回路等の電子回路を搭載したものであっても良い。
本実施例によれば、ひずみ検出部におけるストレスマイグレーションや粒界腐食の影響を取り除くことができ、高信頼性且つ長期に渡った計測を可能にすることができるという効果をもつ。また、ひずみ計測を行う際、単結晶半導体不純物拡散層の欠点となるひずみ計測を目的とする方位とは異なる方位のひずみの影響と低減させることができ、精度の高いひずみ測定が可能になるという効果を有する。
以下、本発明における第三の実施例を図6から図11を用いて説明する。図6には本発明の第三の実施例である力学量測定装置のひずみ検出部を示す。本実施例は、第一実施例と同様の構造を有しており、単結晶シリコン基板8上に設置されたひずみ検出部が金属薄膜もしくはポリシリコン薄膜とp型不純物拡散層によって構成されたホイートストンブリッジ回路を有することを特徴とする。
シリコン等の半導体材料を用いた抵抗の抵抗値変化は温度の影響を強く受けることが知られており、前記半導体材料をひずみ検出部3として用いた場合、ひずみが加わっていない状態でも温度変化に起因して抵抗値に変化が生じる。半導体のピエゾ抵抗効果に起因した抵抗値変化は微小であることから、通常その出力は後段において増幅回路を用いて増幅される。この際、増幅回路はセンサの出力中心値もしくは出力基準値が増幅範囲内に収められるよう設計されるが、ひずみ検出部3の出力基準値が温度変動によって変化すると、ひずみが加わっていない状態でも増幅回路増幅幅の限界を超えてしまい、ひずみ量の測定ができなくなる可能性がある。この問題を増幅回路側で回避するためには、ひずみ検出部3における出力中心値の温度変動分が増幅回路の増幅幅限界に収まるよう設計する必要がある。この場合、増幅回路の増幅率を大きくすることができず、精度の高いひずみ測定を行うことができない。つまり、ひずみ検出部3自体に温度変動が生じても出力中心値変動を生じない機構が必要とされる。
一般的な金属箔ひずみゲージの使い方においては、図7に示すホイートストンブリッジ回路101を構成して測定を行う。ホイートストンブリッジ回路101は抵抗値の等しい四本の抵抗で形成され、ひずみに対して感度を持つアクティブ抵抗12とひずみに対して感度を持たないダミー抵抗13によって構成される。ホイートストンブリッジ回路はブリッジ回路を構成する四本の抵抗を同じ温度環境下に配置することで温度補償の効果を有することから、その出力中心点は温度変動の影響を受けない。実際の使用においては、ホイートストンブリッジ回路のアクティブ抵抗である金属箔ひずみゲージはひずみを生じる被測定物に貼り付け、前記金属箔ひずみゲージ以外の抵抗はダミー抵抗として被測定物に貼りつけず離れた場所に隔離し無ひずみ状態を維持する必要がある。本実施例における力学量測定装置1は単結晶シリコン基板8内にホイートストンブリッジを有している。ホイートストンブリッジ回路のアクティブ抵抗とダミー抵抗を隔離して配置した場合にはそれぞれの抵抗の温度条件を等しくすることは困難となるが、同一基板上にアクティブ抵抗とダミー抵抗を配置した場合には、ホイートストンブリッジ回路を構成する抵抗が同じ環境下で近接して配置されることから温度環境条件を等しくすることができ、さらにはシリコンの熱伝導率が良いことからブリッジ回路の温度補償効果を高めることができる。また、ブリッジ回路内の各抵抗を結ぶ配線の距離を短くすることができるため、配線長の相違による余剰な抵抗値の変動を抑えることができる。さらに微小領域でブリッジ回路を構成することができるため外的なノイズの影響や光の照射による出力中心値の変動も低減することが可能となる。しかし、単結晶シリコン基板8内に薄膜抵抗や不純物拡散抵抗を用いてホイートストンブリッジ回路を形成しようとすると大きな問題を生じる。
本発明における力学量測定装置1は基板の裏面である接着面10を用いて被測定物11に貼り付け、前記被測定物11に生じたひずみは前記接着面10を介して基板に伝わる。しかし、同一基板上にホイートストンブリッジ回路を設置した場合、前記ブリッジ回路を構成するすべての抵抗にひずみが加わることから、ひずみに対して感度を持たないダミー抵抗を設けることができず、前記ホイートストンブリッジ回路は正常に動作しない。
図8及び図9には本問題を解決することが可能となった本実施例におけるひずみ検出部3を示す。本実施例においては、図6に示したひずみ検出部が力学量測定装置の単結晶シリコン基板上に存在し、前記ひずみ検出部は図8もしくは図9に示す構造のホイートストンブリッジ回路を有することを特徴とする。図8に示したホイートストンブリッジ回路においてひずみに対して感度を有するアクティブ抵抗は、金属薄膜6もしくはポリシリコン薄膜7であり、ひずみを測定する方向に対して前記薄膜の長手方向を平行に配置する。第一実施例で示したように、ひずみ測定を目的とする方向の前記金属薄膜6もしくは前記ポリシリコン薄膜7の長手方向の長さを薄膜厚さの50倍以上、ひずみ測定方向と垂直な方向の前記金属薄膜6もしくは前記ポリシリコン薄膜7の長さを薄膜厚さの10倍以下にすることで、前記金属薄膜6もしくは前記ポリシリコン薄膜7はその長手方向の垂直ひずみ成分にのみ感度を有するようになる。図9に示したホイートストンブリッジ回路において、ひずみに対して感度を有するアクティブ抵抗は、単結晶シリコン基板に不純物原子を拡散してその長手方向がシリコン結晶の<110>方向と平行となるn型不純物拡散層14とする。図8及び図9におけるホイートストンブリッジ回路101を構成するダミー抵抗には、その長手方向がシリコン単結晶の<100>方向と平行となるp型不純物拡散層を用いる。シリコン単結晶のピエゾ抵抗効果は結晶構造に依存した異方性を有しており、p型不純物拡散層において電流を流し抵抗値を計測する方向と単結晶シリコン基板の<100>方向を一致させることで、前記p型不純物拡散層の抵抗値変動はひずみの影響を殆ど受けなくなりダミー抵抗として用いることができる。ダミー抵抗であるp型不純物拡散層と、アクティブ抵抗であるポリシリコン薄膜や金属薄膜もしくはn型不純物拡散層との各抵抗値が等しくなるようにホイートストンブリッジ回路を構成することで、同一基板上でも動作可能なホイートストンブリッジ回路を形成することができる。また、金属薄膜6に関しては合金化を施し金属濃度を変化させることによって、またポリシリコン薄膜7やn型不純物拡散層14に関しては不純物原子の拡散濃度を変化させることによって、ダミー抵抗であるp型不純物拡散層15と温度に対する抵抗値の変化率を等しくなるようにする。これにより本構造を有するホイートストンブリッジ回路の温度補償効果を高めることができるという利点が生まれる。
なお、例として図8で示した本実施例のホイートストンブリッジ回路においては、アクティブ抵抗である金属薄膜6もしくはポリシリコン薄膜7は、主にその長手方向にひずみに対する感度を有することから単結晶シリコン基板8上においてどの方向が長手となっても構わない。また、本実施例においてp型不純物拡散層15の長手方向を単結晶シリコン基板8の<100>方向と平行になるよう配置すると記述したが、これは理想状態であって、前記単結晶シリコン基板8の<110>方向よりも<100>方向に近い方向に平行になるよう配置すれば同様の効果を得ることができる。
図10及び図11には本実施例におけるひずみ検出部3の抵抗配置と配線方法例を示す。図8及び図9では、ダミー抵抗三本のうち二本が平行であり、残りの一本は前記二本の抵抗に対して垂直となるよう配置されていたが、p型不純物拡散層をダミー抵抗として用いる場合には、その長手方向が<100>方向を向いていれば良いことから、図10および図11に示すようにすべてのダミー抵抗を平行に配置しても良い。この場合にはダミー抵抗の占有する面積を最小にすることができ、互いの抵抗が近接していることから、温度補償効果を高めることができる。また、図10においてアクティブ抵抗である金属薄膜6もしくはポリシリコン薄膜7は単結晶シリコン基板8の結晶方位の影響を受けないことから、図10示すようにダミー抵抗と平行に設置してもよく、この場合にはホイートストンブリッジ回路全体が占有する面積を最小にすることができ、各抵抗の間隔が密集していることから温度補償効果を高めることができる。この場合には、ひずみ測定方向は図8中に示したxyz座標におけるy方向となる。さらに図10では四本の抵抗を結ぶ配線の長さを等しくなるようにし、さらに抵抗を結ぶ配線の中点から外部への配線を引き出すことで、配線が有する抵抗がホイートストンブリッジ回路の出力オフセットに与える影響が出ないように配慮してある。また、本実施例においては、ホイートストンブリッジ回路における四本の抵抗のうち、一本をひずみに対して感度を持つアクティブ抵抗、残りの三本をダミー抵抗とする1アクティブ型としたが、二本の抵抗をアクティブ抵抗、残りの三本の抵抗をダミー抵抗とする2アクティブ型や三本の抵抗をアクティブ抵抗、残りの一本の抵抗をダミー抵抗とする3アクティブ型のホイートストンブリッジ回路であっても同様の効果を有する。
さらに第一実施例の場合と同様に、より高感度のひずみ計測を行うためには、単結晶シリコン基板8の表面内において基板の端部から基板中心に向かって基板幅の1/5以上離れた領域にひずみ検出部3を設置すればよい。また、力学量測定装置内の単結晶シリコン基板8上にはひずみ検出部3だけでなく、増幅回路、アナログ−デジタル変換器、整流・検波回路、アンテナ回路等の電子回路を搭載したものであっても良い。
以下、本発明における第四の実施例を図12から図22を用いて説明する。図12には本発明の第四の実施例である力学量測定装置を示す。本実施例は、第一実施例と同様の構造を有しており、力学量測定装置1内のシリコン基板2上において、ホイートストンブリッジを有するひずみ検出部3を搭載し、前記ひずみ検出部3の脇にスリットが存在していることを特徴とする。第三実施例において説明したように、同一基板上にホイートストンブリッジ回路を形成する際、前記ホイートストンブリッジ回路を構成する抵抗すべてがひずみの影響を受けることから、前記抵抗間でアクティブ抵抗とダミー抵抗の明確な区別を行うことができず、ホイートストンブリッジ回路は正常に動作しない。
図12には本問題を解決することが可能となった、本実施例における力学量測定装置1を示す。本実施例においては、図12に示すように力学量測定装置1のシリコン基板2上にホイートストンブリッジ回路を構成したひずみ検出部3が配置され、前記ひずみ検出部3の脇にスリット17を有することを特徴とする。第一実施例で示したように、シリコン基板内において、ひずみ検出部3が存在する面に対抗する面に接着面10を有する力学量測定装置では、前記力学量測定装置内の基板厚さと長さによって、前記ひずみ検出部3が存在する前シリコン記基板上面でのひずみ分布状態は大きく異なる。発明者らが行った解析によると、基板の厚さに対して基板の長さが10倍以下になると、基板上面に発生するひずみの積分平均値は被測定物に発生したひずみ量の半分以下になる。そこで、図13に示すようにシリコン基板2上のひずみ検出部3の脇にスリットを設ける。スリットの長手方向はひずみ測定を目的とする方向と平行になるようにし、スリットはひずみ検出部3においてひずみ測定を目的とする方向と垂直な方向側の両脇に設置する。これにより、ひずみ測定方向のひずみ成分は、シリコン基板2の厚さとひずみ測定を目的とする方向側の基板長さの関係によって決定され、またひずみ測定方向に対して垂直な方向からのひずみ成分に対する感度はひずみ検出部3の両脇に設けたスリット17の深さdとスリットの間隔wによって決定される。スリットの深さdに対するスリットの間隔wを10倍以下とすることで、ひずみ測定を目的としない方向の感度を半分以下に低減させることができる。よって、一軸方向に優先的に感度を持つ力学量測定装置1を作製する場合には、ひずみ検出部3の両側に設置するスリットの深さdは、スリットの間隔wの1/10以上とすることが望ましい。また、スリット長手方向の長さl2をひずみ検出部3のひずみ測定方向の長さl1よりも大きくすることが望ましい。これにより、スリットの効果をひずみ検出部3全体に与えることができ、前記ひずみ検出部3におけるひずみ感度の指向性を強めることから目的とするひずみ測定方向のひずみを精度良く検出することができる。
また、本明細書及び図においては、ひずみ検出部3及びスリット17の配置範囲を最小にするために、前記スリット17の長手方向がひずみ測定方向と平行になるよう配置してあるが、ひずみ測定方向と垂直に近い方向が長手となるスリット形状であっても同様の効果を有する。
基板上に二つのスリットを設けた場合、前記スリットの効果により、スリット間領域ではスリット間を結ぶ方向の垂直ひずみ量は小さくなる。図14に示すように、基板上に金属薄膜6もしくはポリシリコン薄膜7を用いて形成したホイートストンブリッジ回路をスリット17の間に配置し、前記ホイートストンブリッジ回路を構成する金属薄膜もしくはポリシリコン薄膜のうち少なくとも一つを長手方向がスリット間を結ぶ方向と一致するようにし、その他の金属薄膜もしくはポリシリコン薄膜はその長手方向がスリット間を結ぶ方向と垂直な方向と平行になるよう配置する。この場合、スリット間を結ぶ方向と長手方向が一致した金属薄膜もしくはポリシリコン薄膜はスリットの効果と薄膜自体の形状効果によりひずみに対する感度が著しく小さくなる。一方、基板面内において、その長手方向がスリット間を結ぶ直線と垂直になるよう配置した金属薄膜もしくはポリシリコン薄膜は薄膜の長手方向の垂直ひずみに対する感度のみを有する。つまりスリット間を結ぶ直線と平行に配置された薄膜と基板面内で垂直に配置された薄膜を用いてブリッジ回路を構成した場合、前記ブリッジ回路はスリット間を結ぶ直線と垂直な方向の垂直ひずみ成分のみに感度を有することになる。スリットを結ぶ直線と垂直な方向をひずみ測定方向とすることにより、精度良く特定方向の垂直ひずみを計測することができる。
前述のように、高強度且つ高信頼性のひずみを計測する際にはひずみ検出部に単結晶半導体の不純物拡散層で形成したホイートストンブリッジ回路を設けることが望ましいが、第二実施例で示したように、単結晶半導体の不純物拡散層をひずみ検出部3として用いた場合には、前記ひずみ検出部3は多方位からのひずみの影響を受ける。図11におけるシリコン基板2を単結晶シリコン基板とし、前記単結晶シリコン基板上に不純物拡散抵抗でホイートストンブリッジを形成したひずみ検出部3を設け、前記ひずみ検出部3の両脇にスリット17を設けた場合、スリットが対向する方向の垂直ひずみに対する感度を低減させることができるが、前記ひずみセンサ3が配置された単結晶シリコン基板表面に発生するせん断ひずみからの影響は若干受ける。このことから、前記ひずみ検出部3はせん断ひずみに対して感度を持たない構造とすることが望ましい。
そこで本問題を解決することが可能となった単結晶シリコン基板上の不純物拡散層の配置方法を図15から図22を用いて説明を行う。
前述のように、シリコン単結晶のピエゾ抵抗効果は異方性を有している。図15に示すように、単結晶シリコン基板の<110>方向とひずみ計測の基準となるxy座標を一致させ、p型不純物拡散層の長手方向を前記単結晶シリコン基板の<110>方向と平行になるよう配置し、前記p型不純物拡散層の長手方向に電流を流して抵抗値変化を計測した場合、前記p型不純物拡散層の抵抗値変動はxy平面上において発生するせん断ひずみ成分γxyの影響を受けなくなり、ホイートストンブリッジ回路101はx軸及びy軸に平行な方向の垂直ひずみ成分εxとεyにのみ感度を有するようになる。前記ホイートストンブリッジ回路101におけるx軸方向の両脇にスリット17を設けると、ひずみ検出部3のx軸方向の垂直ひずみに対する感度はスリット17によって低減されることから、前記ひずみ検出部3はy軸方向の垂直ひずみ成分εyにのみ感度を有することが可能となる。これにより、目的とする一つのひずみ測定方向における垂直ひずみ成分のみに感度を有する力学量測定装置を提供することができる。
図16にはn型不純物拡散層を用いてホイートストンブリッジ回路101を形成した場合の抵抗配置例を示す。前記ホイートストンブリッジ回路101は、その長手方向が単結晶シリコン基板の<100>方向と平行であるn型不純物拡散層によって構成されており、この場合も単結晶シリコン基板の<100>方向とひずみ計測の基準となるxy座標を一致させた場合、前記n型不純物拡散層の抵抗値変動はxy平面上でのせん断ひずみ成分γxyの影響を受けなくなり、ホイートストンブリッジ回路101はx軸及びy軸に平行な方向の垂直ひずみ成分εxとεyにのみ感度を有するようになる。n型不純物拡散層を用いた場合、n型不純物拡散層はp型不純物拡散層に比べて温度による抵抗値の変動が大きいことから、ブリッジ形成の際に各抵抗の抵抗値にばらつきが生じた場合には温度補償機能は若干低下するが、p型不純物拡散層に比べてひずみに対する感度が大きいという特徴を持っている。n型不純物拡散層の場合であっても、ホイートストンブリッジ回路101のx軸方向の両側にスリット17を設けることで、前記ホイートストンブリッジ回路101で構成されたひずみ検出部3は、目的とする特定の一軸方向の垂直ひずみ成分にのみ感度を持たせることが可能となる。
図17には図15と図16で示したホイートストンブリッジ回路の抵抗配置と抵抗間配線例を示す。図17において不純物拡散抵抗9がp型不純物拡散層の場合には、ブリッジ回路を構成する各抵抗は単結晶シリコン基板の<110>方向と平行であり、不純物拡散抵抗9がn型不純物拡散層の場合には、ブリッジ回路を構成する各抵抗は単結晶シリコン基板の<100>方向と平行である。図17においてはホイートストンブリッジ回路が占有する面積が最小になるように、また四本の抵抗を結ぶ配線の長さを等しくなるようにし、さらに抵抗を結ぶ配線の中点から外部への配線を引き出すことで、配線が有する抵抗がホイートストンブリッジ回路の出力オフセットに与える影響が出ないように配慮してある。
図18には、長手方向が単結晶シリコン基板の<110>方向と平行なp型不純物拡散層15aと、長手方向が単結晶シリコン基板の<100>方向と平行で且つその抵抗値が半分となる中点において90°折り曲げてあるp型不純物拡散層15bによって形成されたホイートストンブリッジ回路を示す。p型不純物拡散層15bは、その長手方向が単結晶シリコン基板の<100>方向と平行で且つその抵抗値が半分となる中点において90°折り曲げた形状を有しているが、前述のように、単結晶シリコン基板の<110>方向をxy軸と一致させ、前記単結晶シリコン基板上に長手方向つまり電流を流し抵抗値の変化を計測する方向が単結晶シリコン基板の<100>方向と一致するp型不純物拡散層を形成すると、前記p型不純物拡散層はεxとεyに対する感度を殆ど持たなくなる。また前記p型不純物拡散層の中点を90°折り曲げることで、折り曲げ点の両側の抵抗はγxyによる抵抗値変化を打ち消しあい、γxyに対する感度も持たなくなる。一方、p型不純物拡散層15aはその長手方向を単結晶シリコン基板の<110>方向と平行に配置することによってεxとεyにのみ感度を有するようになる。つまり、図18に示すp型不純物拡散層15aとp型不純物拡散層15bによって形成されたホイートストンブリッジ回路101は、εxとεyにのみ感度を持つひずみ測定部となり、例えば図18に示すように前記ホイートストンブリッジ回路のx軸方向の両側にスリット17を設けると、x軸方向の垂直ひずみに対する感度が低減され、ひずみ測定部である前記ホイートストンブリッジ回路101はy軸方向の垂直ひずみにのみ感度を有することになり、目的とするひずみ測定方向とy軸を一致させることにより、精度よくひずみ量を測定することができる。前記ホイートストンブリッジ回路は、ブリッジ内の抵抗すべてに長手方向が<110>方向と平行となるp型不純物拡散層を用いた場合に比べてひずみ量変化に対する出力は約1/2に低下するが、ブリッジ回路全体が占有する面積を小さくすることができるという特徴を持っている。
また、ひずみ検出部の両側にスリットを設けた場合、スリットが挟む領域内において、スリット対向方向の垂直ひずみ成分のひずみ量はスリット近傍が最も小さく、スリットから離れるにつれて大きくなる。前記ホイートストンブリッジ回路101においては、ひずみに対して感度を持たないp型不純物拡散層15bをダミー抵抗としていることから、前記p型不純物拡散層15bをスリット17が挟む領域の中央近傍領域に、x軸方向のひずみ感度の低減を必要とするp型不純物拡散層15aをスリット近傍領域に配置することでひずみ測定方向のひずみのみを精度良く計測することができる。
図19には長手方向が単結晶シリコン基板の<100>方向と平行なn型不純物拡散層14aと、長手方向が単結晶シリコン基板の<110>方向と平行で且つその抵抗値が半分となる中点で90°折り曲げてあるn型不純物拡散層14bによって形成されたホイートストンブリッジ回路を示す。前記ブリッジ回路においてもp型不純物拡散層を用いて形成したブリッジ回路の場合と同様に、ブリッジ回路全体としてはせん断ひずみ成分による出力を打ち消すことができる。n型不純物拡散層を用いてブリッジ回路を作製した場合は、p型不純物拡散層を用いた場合よりも温度補償効果は若干低下するが、ひずみに対して大きな感度を有するという効果を得ることができる。
図20には図18及び図19で示したホイートストンブリッジ回路についての抵抗配置と抵抗間配線の例を示す。図20ではホイートストンブリッジ回路が占有する面積が最小になるように、また、四本の抵抗を結ぶ配線の長さを等しくなるようにし、さらに抵抗を結ぶ配線の中点から外部への配線を引き出すことで、配線が有する抵抗がホイートストンブリッジ回路の出力オフセットに与える影響が出ないように配慮してある。また、90°の折曲げを行わずアクティブ抵抗となる抵抗についても、90°折り曲げた抵抗と抵抗値を等しくするために、90°折り曲げた抵抗と同じ本数となるよう抵抗の分割が行ってある。
図21には、長手方向が単結晶シリコン基板の<110>方向と平行なp型不純物拡散層15aと、長手方向が前記単結晶シリコン基板の<100>方向と平行であるp型不純物拡散層15bによって形成されたホイートストンブリッジ回路を示す。前記p型不純物拡散層15bは、中点を90°折り曲げた場合に比べるとせん断ひずみの影響により若干抵抗値変動が生じることになるが、不純物拡散層15bと同形状であることから、ホイートストンブリッジ回路101を構成する四本の抵抗の抵抗値を等しくすることが容易であり、ブリッジ回路の初期オフセット量を低減させることができるという特徴を持っている。図22には図21で示したホイートストンブリッジ回路における抵抗配置と抵抗間配線の例を示す。図22においては、ホイートストンブリッジ回路が占有する面積が最小になるように、また四本の抵抗を結ぶ配線の長さを等しくなるようにし、さらに抵抗を結ぶ配線の中点から外部への配線を引き出すことで、配線が有する抵抗がホイートストンブリッジ回路の出力オフセットに与える影響が出ないように配慮してある。
尚、本実施例においては、ホイートストンブリッジ回路における四本の抵抗のうち、対向する二本の抵抗をひずみに対して感度を持つアクティブ抵抗、残りの二本の抵抗をダミー抵抗とする2アクティブ型としたが一本の抵抗をアクティブ抵抗、残りの三本の抵抗をダミー抵抗とする1アクティブ型や三本の抵抗をアクティブ抵抗、残りの一本の抵抗をダミー抵抗とするホイートストンブリッジ回路であっても感度は若干低下するものの同様の効果を有する。また、スリット17はひずみ検出部3の両側に設置することが望ましいが、片側だけでも同様の効果を有する。スリットを片側だけに配置した場合には、ひずみ測定方向のひずみを優先的に測定するという効果は低減するが、ひずみ検出部3とスリット17を含めた全体が占有する面積を小さくすることができる。また、本実施例においては、機械的に加工を行ったスリットを用いて説明を行ったが、酸化するなどして基板と比べて低弾性率となる領域をひずみ検出部の両側もしくは片側に設けた場合であっても同様の効果を有する。
さらに第一実施例の場合と同様に、より高感度のひずみ計測を行うためには、単結晶シリコン基板8の表面内において基板の端部から基板中心に向かって基板幅の1/5以上離れた領域にひずみ検出部3を設置すればよい。また、力学量測定装置内の単結晶シリコン基板8上にはひずみ検出部3だけでなく、増幅回路、アナログ−デジタル変換器、整流・検波回路、アンテナ回路等の電子回路を搭載したものであっても良い。
以下、本発明における第五の実施例を図23から図34を用いて説明する。図23には本発明の第五の実施例である力学量測定装置を示す。本実施例は、第一実施例と同様の構造を有しており、力学量測定装置1内の単結晶シリコン基板8上において、p型不純物拡散層で形成されたホイートストンブリッジ回路を有するひずみ検出部とn型不純物拡散層で形成されたホイートストンブリッジ回路を有するひずみ検出部を同時に搭載することを特徴とする。第三実施例においてすでに説明したように、同一基板上にホイートストンブリッジ回路を形成する際、前記ホイートストンブリッジ回路を構成する抵抗すべてがひずみの影響を受けることから、前記ブリッジ回路内においてアクティブ抵抗とダミー抵抗の明確な区別を行うことができず、ホイートストンブリッジ回路は正常に動作しない。
図23には、本問題を回避することが可能となった、ホイートストンブリッジ回路101を有する力学量測定装置1を示す。本実施例における力学量測定装置は、シリコン基板8上に少なくともn型不純物拡散層でホイートストンブリッジ回路を形成したn型不純物拡散層ひずみ検出部201とp型不純物拡散層でホイートストンブリッジ回路を形成したp型不純物拡散層ひずみ検出部202を搭載していることを特徴としている。
シリコン基板の表面をシリコン結晶の{001}面とし、その面内に不純物拡散層を配置すると、前記不純物拡散抵抗の抵抗値変化はシリコン基板面内のひずみ成分から影響を受ける。第二実施例においても記述した通り、半導体単結晶のピエゾ抵抗効果はその結晶構造に依存した直交異方性を有しており、電流を流し抵抗値の変化を計測する方向と半導体単結晶の結晶方位の関係に関連して異なる抵抗値変化を示す。この性質を利用すると、不純物拡散抵抗の長手方向、つまり電流を流し抵抗値の変化を計測する方向をシリコン単結晶の<110>方向と平行にし、ひずみ成分を測定するために基準となるxy座標におけるx軸、y軸をシリコン単結晶の<110>方向と一致させた場合、n型不純物拡散層、p型不純物拡散層に限らず、せん断ひずみ成分γxyを無くすことができ、前記不純物拡散層はx軸とy軸方向の垂直ひずみ成分εx及びεyのみに感度を有するようになる。シリコン単結晶の<110>方向と長手方向が平行なn型不純物拡散層14を用いて形成したホイートストンブリッジ回路を図24に示す。図中のホイートストンブリッジ回路は単結晶シリコン基板上の{001}面内において、その長手方向が<110>方向と平行となるn型不純物拡散層二本と、前記不純物拡散層の長手方向と直交する方向の<110>方向と平行となるn型不純物拡散層二本によって構成されている。これらの組み合わせは、ある特定の<110>方向に平行なn型不純物拡散層一本と、それに直交する方向の<110>に平行なn型不純物拡散層三本であっても良いが、ホイートストンブリッジ回路は、四つの抵抗間での抵抗値の差によって出力を生じるため、<110>方向に平行なn型不純物拡散層を用いてブリッジ回路を形成する場合には、少なくとも一本のn型不純物拡散層の長手方向は他のn型不純物拡散層に対してシリコン単結晶基板上で90°回転させた<110>方向と平行に配置する必要がある。図24に示したホイートストンブリッジ回路を有するひずみ検出部を用いてひずみ測定を行った場合、被測定物内にある特定の一方向のひずみが優先的に発生している状況においては、図24中のx軸もしくはy軸を生じているひずみの方向と一致させて設置することで、その方向の垂直ひずみ成分の測定を行うことができる。しかし、多軸方向のひずみが生じている被測定物に前記力学量測定装置を取り付けた場合、前記力学量測定装置内のひずみ検出部は多軸方向からのひずみの影響を受け、特定方向のひずみ測定を実施することが出来ない。この問題を解決するために、図24に示したホイートストンブリッジ回路と図25に示す長手方向が<110>方向と平行であるp型不純物拡散層によって形成されたホイートストンブリッジ回路とを図23に示すように同一基板上に混載する。図25に示したホイートストンブリッジ回路は長手方向が<110>方向と平行となるp型不純物拡散層二本と、前記p型不純物拡散層の長手方向と直交する<110>方向と平行となるp型不純物拡散層二本によって構成されているが、これらの組み合わせは、ある特定の<110>方向に平行なp型不純物拡散層一本と、それに直交する方向の<110>に平行なp型不純物拡散層三本であっても良い。上記の構造をもつひずみ検出部を有する力学量測定装置において、単結晶シリコン基板の<110>方向とひずみ測定基準となるxy座標とを一致させると、前記力学量測定装置上に配置されたn型不純物拡散層ひずみ検出部201とp型不純物拡散層ひずみ検出部202は、二つの垂直ひずみ成分εx及びεyを変数とする出力Vn out/Vin=aεx+bεyとVp out/Vin=cεx+dεyを生じる。係数a、b、c、dはそれぞれ、ホイートストンブリッジ回路構造及び不純物拡散層の種類によって決定される特有の定数であり予め求めておくことができる。上記の二つの方程式を満たすεx及びεyを求めることで、単結晶シリコン基板{001}面内に発生する直交する二軸の垂直ひずみ成分を求めることができる。図26には長手方向が単結晶シリコン基板の<110>方向と平行な不純物拡散層を用いてホイートストンブリッジ回路を形成した際の配置及び配線方法の一例を示す。図中では、ホイートストンブリッジ内の各不純物拡散抵抗を結ぶ配線の長さを等しくし、前記配線の中点から外部へ接続する配線を引き出してあり、ひずみが加わっていない状態での出力をできるだけ0になるよう配慮してある。また、ブリッジ内の対向する二つの不純物拡散抵抗を接近させることにより、ブリッジ全体が占める面積が最小になるよう配置してある。
また、前記n型不純物拡散層ひずみ検出部201及び前記p型不純物拡散層ひずみ検出部202は、図27に示すように、単結晶シリコン基板8の<110>方向とxy軸を一致させ、長手方向が<110>方向と平行な不純物拡散抵抗と長手方向が<100>方向と平行であり抵抗値が半分となる点で90°折り曲げた不純物拡散抵抗との組み合わせであっても良い。この場合、ホイートストンブリッジ回路101はx軸とy軸に平行な方向の垂直ひずみ成分のみを有することになり、Vn out/Vin=aεx+bεy型の出力を生じることとなる。よって図27に示す形状を有するホイートストンブリッジ回路をひずみ測定部として用いた場合であっても、n型不純物拡散層によって形成されたブリッジ回路とp型不純物拡散層によって形成されたブリッジ回路を用いることにより、垂直ひずみ成分の分離を行うことができる。図28には長手方向が単結晶シリコン基板の<110>方向と平行な不純物拡散層とシリコン基板の<100>方向と平行な不純物拡散層を用いてホイートストンブリッジ回路を形成した際の配置及び配線方法の一例を示す。図中では、ホイートストンブリッジ内の各不純物拡散抵抗を結ぶ配線の長さを等しくし、前記配線の中点から外部へ接続する配線を引き出してあり、また、90°折り曲げの抵抗と折り曲げていない抵抗との抵抗本数を等しくすることで、ひずみが加わっていない状態での出力をできるだけ0になるよう配慮してある。この配置方法では、単結晶シリコン基板の<110>方向と平行な不純物拡散層のみで形成したブリッジ回路に比べて感度は約1/2に低下するが、前記ブリッジ回路全体が占有する面積を小さくすることができるという利点を持っている。また、長手方向が単結晶シリコン基板の<100>方向と平行であり90°折れ曲がった抵抗は、折れ曲がりの方向が図27に示すように同じ方向であっても良いし、図28に示すように逆方向であっても良い。図27に示す配置方向の場合には、L字型抵抗が占有する面積を最小にできるという利点を持っている。一方図28示す配置の場合には、ブリッジ全体の計上の対象性を良くすることができるため不純物原子を拡散する際の精度を高くすることができることから、ホイートストンブリッジ回路のオフセット量を小さくし、温度補償効果を高めることが可能となる。さらに、ブリッジ配置の対象性が良いことから、各不純物拡散抵抗を結ぶ配線の距離を等しくすることができるため、オフセット量が小さくなるという特徴を持っている。さらに、単結晶シリコン基板の<100>方向と平行な90°折り曲げ抵抗は、図27に示すように一本の抵抗として形成しても良いし、図28に示すように複数の抵抗からなるものであっても良い。
また、ブリッジ回路を構成する不純物拡散層がp型不純物拡散層である場合には、図29に示すように、単結晶シリコン基板の<110>方向とxy軸を一致させ、長手方向が<110>方向と平行な不純物拡散抵抗と長手方向が<100>方向と平行な不純物拡散抵抗との組み合わせであっても良い。この際、単結晶シリコン基板の<110>方向と平行な抵抗は90°の折り曲げは行わない。ブリッジを形成する不純物拡散層にp型不純物拡散層を用い、<100>方向と平行な抵抗に対して90°折曲げを行わない場合には、90°の折曲げを行った抵抗を用いた場合に比べると若干せん断ひずみ成分の影響が出力として現れるが、その量は非常に小さく、ブリッジ回路全体としては主にx軸とy軸に平行な垂直ひずみ成分にのみ感度を有することになる。この場合、90°の折曲げを行った抵抗に比べて抵抗値の調整が簡単になることから、ブリッジ回路内の四本の抵抗値を合わせ易くなり、ブリッジ回路出力のオフセット量を小さくすることができる。また、本実施例においてはp型不純物拡散層ひずみ検出部202は長手方向が<100>方向に平行な不純物拡散層二本と<110>方向に平行な不純物拡散層二本との構成で説明を行ったが、長手方向が<100>方向に平行な不純物拡散層三本と<110>方向に平行な不純物拡散層一本もしくは長手方向が<100>方向に平行な不純物拡散層一本と<110>方向に平行な不純物拡散層三本の組み合わせであっても同様の効果が得られる。図30には長手方向が単結晶シリコン基板の<110>方向と平行なp型不純物拡散層とシリコン基板の<100>方向と平行なp型不純物拡散層を用いてホイートストンブリッジ回路を形成した際の配置及び配線方法の一例を示す。図中では、ホイートストンブリッジ内の各不純物拡散抵抗を結ぶ配線の長さを等しくし、前記配線の中点から外部へ接続する配線を引き出してあり、ひずみが加わっていない状態での出力をできるだけ0になるよう配慮してある。この配置方法では、単結晶シリコン基板の<110>方向と平行な不純物拡散層のみで形成したブリッジ回路に比べて、前記ブリッジ回路全体が占有する面積を小さくすることができるという利点を持っている。
本実施例は、単結晶シリコン基板8上に少なくともp型不純物拡散抵抗を用いて形成されたホイートストンブリッジ回路とn型不純物拡散抵抗を用いて形成されたホイートストンブリッジ回路を搭載していることを特徴としているが、前述したそれぞれのブリッジ回路は同形状のものの組み合わせでなくても本実施例において示したいずれかの形状を用いた組み合わせであれば良い。尚、不純物拡散層長手方向の配置方向を単結晶シリコン基板8の<110>方向や<100>方向と平行になるよう配置すると記述したが、これは理想状態であって、前記シリコン単結晶基板8の<100>方向よりも<110>方向、もしくは<110>方向よりも<100>方向に近い方向に平行になるよう配置すれば同様の効果を得ることができる。また、図23に示したように二つのブリッジ回路は同一の単結晶シリコン基板上に配置されていても良いし、図31に示すように別基板上に配置されていても良い。
また、図32に示すように単結晶シリコン基板8の<110>方向とxy軸を一致させ、長手方向が単結晶シリコン基板8の<100>方向と平行になるn型不純物拡散層14を用いてホイートストンブリッジ回路101を形成すると、前記ホイートストンブリッジ回路101はせん断ひずみ成分γxyにのみ感度を持たせることができる。図33に示すようにn型不純物拡散層せん断ひずみ検出部203とn型不純物拡散層ひずみ検出部201及びp型不純物拡散層ひずみ検出部202を同一単結晶シリコン基板8上に配置した力学量測定装置1は、前記単結晶シリコン基板8の<110>方向をxy軸と一致させることで被測定物表面における3種類のひずみ成分を測定することが可能となる。同一基板上に配置することにより、三つのブリッジでの温度条件を等しくすることができるため、ひずみ感度の補正が容易になり、精度の高いひずみ測定を行うことができる。また、図32で示した力学量測定装置は、図33で示すように一つずつのブリッジ回路を有するチップ三つ、もしくは二つのブリッジ回路を有する一つのチップと一つのブリッジ回路を有するチップ一つの組み合わせであっても良い。チップを分離する場合には、図32の構造を有するホイートストンブリッジ回路をひずみ検出部とする力学量測定装置を用い、前記力学量測定装置における単結晶シリコン基板の<100>方向をxy軸と一致させることで、x軸とy軸方向の垂直ひずみ成分εx及びεyを高感度で検出することができる。前記力学量測定装置をεxとεyを測定する測定装置として用いると測定感度が向上する。
さらに第一実施例の場合と同様に、より高感度のひずみ計測を行うためには、単結晶シリコン基板8の表面内において基板の端部から基板中心に向かって基板幅の1/5以上離れた領域にひずみ検出部3を設置すればよい。また、力学量測定装置内の単結晶シリコン基板8上にはひずみ検出部3だけでなく、増幅回路、アナログ−デジタル変換器、整流・検波回路、アンテナ回路等の電子回路を搭載したものであっても良い。
実施例3、実施例4、実施例5によれば、温度変動が大きい環境下において力学量測定装置を動作させた場合であっても非常に高い温度補償効果を得ることができ、しかも特定方向のひずみ成分を精度良く測定することかできるという効果を持つ。同一基板上の微小領域にひずみ検出部を構成するホイートストンブリッジ回路を設置することによってホイートストンブリッジ回路を構成する抵抗間での温度差を小さくすることができるので、ブリッジ回路の温度補償効果が高まる。また、ブリッジを構成する抵抗が同一基板上に近接して設置されることから、抵抗を結ぶ配線自体が有する抵抗がブリッジ回路の出力に及ぼす影響と低減させることができる。さらにブリッジ回路を構成する抵抗がほぼ均等に形成され、またホイートストンブリッジ回路を構成するピエゾ抵抗が超小型に作成できるため、ひずみ検出部に流れる電流量を小さくしても外部からの影響によるノイズを発生しにくいという効果を奏する。
本発明における力学量測定装置の概要を示す図である。
本発明における力学量測定装置を用いた測定方法の概要を示す図である。
本発明の第一実施例における力学量測定装置のひずみ検出部を示す図である。
本発明の第一実施例におけるひずみ検出部配置領域を示す図である。
本発明の第二実施例における力学量測定装置のひずみ検出部を示す図である。
本発明の第三実施例における力学量測定装置のひずみ検出部を示す図である。
ホイートストンブリッジ回路の概要を示す図である。
本発明の第三実施例における力学量測定装置のひずみ検出部を示す図である。
本発明の第三実施例における力学量測定装置のひずみ検出部を示す図である。
本発明の第三実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の配置及び配線方法例を示す図である。
本発明の第三実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の配置及び配線方法例を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の構造を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の配置及び配線方法例を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の配置及び配線方法例を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第四実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の配置及び配線方法例を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置の概要を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の配置及び配線方法例を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の配置及び配線方法例を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の配置及び配線方法例を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置の概要を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置のひずみ検出部の詳細を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置の概要を示す図である。
本発明の第五実施例における力学量測定装置の概要を示す図である。
符号の説明
1...力学量測定装置
2...シリコン基板
3...ひずみ検出部
4...パッド
5...配線
6...金属薄膜
7...ポリシリコン薄膜
8...単結晶シリコン基板
9...不純物拡散層
10...接着面
11...被測定物
12...アクティブ抵抗
13...ダミー抵抗
14...n型不純物拡散層
15...p型不純物拡散層
15a...p型不純物拡散層
15b...p型不純物拡散層
17...スリット
18...ブリッジ配線
19...樹脂フィルム
21...ブリッジ抵抗
101...ホイートストンブリッジ回路
201...n型不純物拡散層ひずみ検出部
202...p型不純物拡散層ひずみ検出部
203...n型不純物拡散層せん断ひずみ検出部
301...ひずみ測定部配置領域