JP4617606B2 - 動圧軸受モータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸受の中心部付近に滞留する可能性のある気泡を容易に排除可能なスラスト動圧軸受を備えた動圧軸受モータに関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスク等の記録ディスクを駆動するスピンドルモータ等のモータにおいて、ロータに作用する軸線方向の荷重を支持する軸受手段として、ロータの回転時に、軸線方向に対向する2つの平面間に保持するオイル等の流体に動圧を発生させ、これを荷重支持圧とするスラスト動圧軸受が利用されている。
【0003】
この従来のスラスト動圧軸受において動圧を発生するために形成される動圧発生溝は、ロータの回転時にオイルに対して半径方向内方に作用する動圧を誘起する、いわゆるポンプインタイプのスパイラル溝である。このスパイラル溝によって、軸受の中心部付近に動圧が極大となる圧力ピークが現れ、半径方向外方に向かうにしたがい圧力は低下する。動圧軸受では、この圧力ピーク部分でロータに作用する荷重を支持している。
【0004】
スパイラル溝は、一対のスパイラル溝を組み合わせて形成されるヘリングボーン溝に比べて動圧形成の効率が良く、またスラスト動圧軸受自体を小径化することが可能であるため回転時の周速を小にすることができ、軸受損失を低減することが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えばスパイラル溝が形成される部分に気泡が存在していた場合は、気泡は圧力勾配に従って高い方から低い方へと移動することから、圧力の低い半径方向外方へと移動することとなり、軸受の半径方向外方部分に軸受外部へ連通する連通孔を配設しておけば気泡を軸受外部へ排出することが可能であるが、圧力分布は軸対称に形成されるので中心近傍での圧力勾配は僅かであり、中心部近傍に存在していた気泡は排除されにくい現象がある。
【0006】
このように軸受の中心部付近に気泡が滞留すると、気泡はオイルよりも熱膨張係数が大であるため、軸受外部環境の温度や気圧の変動で体積が増大し、オイルが軸受外部に流出する。また、低圧環境下でも気泡が膨張して同様の現象となる。オイルの流出によって、軸受ではオイル保持量の低下による軸受剛性の低下及びオイルの早期の枯渇による耐久性並びに信頼性の低下等の問題が発生する。
【0007】
本発明は、ポンプインタイプのスパイラル溝によって動圧を発生するスラスト動圧軸受において、簡易な構成で軸受の中心部に滞留しやすい気泡を軸受外部に排除することで安定した軸支持力を得ることが可能であるとともに、オイル内に混入した気泡が容易に排除されることで、耐久性並びに信頼性に優れた動圧軸受モータを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の動圧軸受モータは、シャフトと、前記シャフトの下端部から半径方向外方に突出する円板状のスラストプレートと、上面が該スラストプレートの下面と対向するカウンタプレートと、略円筒状で、貫通孔内に前記シャフトが挿通され、さらに、下面が前記スラストプレートの上面と対向するスリーブと、前記シャフトの外周と前記スリーブの内周面との間隙、前記スラストプレートの上面と前記スリーブの下面との間隙、および、前記スラストプレートの下面と前記カウンタプレートの上面との間隙に保持されるオイルと、前記スラストプレートと前記カウンタプレートとの間に動圧を誘起する動圧発生溝を有するスラスト動圧軸受と、を備えた動圧軸受モータであって、前記動圧発生溝列は、円周方向に並列状に配設され且つ、半径方向内方に向かって圧力が高くなるよう作用する動圧が発生するポンプインタイプのスパイラル溝列とし、前記スラスト動圧軸受には、前記動圧発生溝列を分断するように、径方向に伸びる動圧発生溝が形成されない領域が設けられることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
この構成において、動圧軸受部に周方向に形成される動圧溝列の一部に動圧溝を形成しない領域を設けることで、軸受部で発生する動圧の圧力分布に高低が生じる。オイル内に混入した気泡は、圧力の高い方から低い方へ移動することから、動圧溝が形成される領域に比べて圧力の低い、動圧溝が形成されない領域を通じて軸受部から排出されることとなる。
【0010】
このように、オイル内に混入る気泡を確実且つ容易に排除することが可能となることで、ポンプインタイプのスパイラル溝による軸受中心部方向へのオイルの移動が円滑に行われ、安定した軸支持力を得ることができるとともに、気泡に起因するオイルの流出も阻止されることから、軸受としての信頼性及び耐久性を向上することができる。
【0011】
尚、スパイラル溝は、形成する動圧発生溝の形状に対して比較的に加工の自由度の大きい電解加工によって形成可能である。
【0012】
また、前記動圧溝が形成されない領域は、周方向等間隔に複数形成する(請求項2)ことで、動圧溝が形成される領域も周方向等間隔に位置することとなり、動圧の高い領域も周方向等間隔に位置することとなるので、軸支持の安定性を欠くことはない。すなわち、軸受部から気泡の排出が可能で且つ安定したモータの回転を得ることが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。尚、図1は、本発明に係る動圧軸受モータをハードディスク等の記録ディスクを駆動するスピンドルモータに適用した場合の実施形態を示す断面図であり、図2は、図1に示すスピンドルモータの下部スラスト軸受部に形成されるスパイラル溝を示すカウンタプレートの平面図、更に図3は、図1に示すスピンドルモータにおけるのスラストプレートまわりの構成を拡大して示す部分拡大断面図である。
【0014】
図1において、シャフト2とこのシャフト2の下端部の外周面から半径方向外方に同軸状に突出する円板状のスラストプレート4とが一体的に形成されている。シャフト2の上端部は、シャフト2の外径が上方に向かって漸次縮小するテーパ状の傾斜面を有する第1の環状溝2aが形成されている。シャフト2の外周面の軸線方向中間部にはシャフト2の軸線方向中央部方向に向かって傾斜する一対の傾斜面を有する第2の環状溝2bが形成されている。シャフト2のスラストプレート4側の端部とは反対側の端部は、カップ状のロータハブ6に取付けられる。ロータハブ6の内周面にはロータマグネット8が装着される。
【0015】
シャフト2は、固定の円筒状スリーブ10内に設けられた貫通孔内に挿通されている。貫通孔の一方の端部には、スラストプレート4と協働して後に詳述する上部スラスト軸受部を構成する段部が設けられている。また、スリーブ10の貫通孔の段部が形成される側の開口は、スラストプレート4の下面と協働して後に詳述する下部スラスト軸受部を構成するカウンタプレート12によって閉塞される。スリーブ10の貫通孔の上方側開口は、シャフト2の第1の環状溝2aの傾斜面との間に規定されるテーパ状シールS1において外気に開放されている。また、スリーブ10の外周部はブラケット16に設けられた環状の円筒壁16a内に装着される。円筒壁16aの外周部にはステータ18が取付けられ、ロータマグネット8と半径方向に対向する。
【0016】
スリーブ10の貫通孔の内周面は、シャフト2の外周面に形成された第2の環状溝2bと半径方向に対向して、スリーブ10の貫通孔の内周面とシャフト2の外周面との間の半径方向の微小間隙が拡大する間隙拡大部20が規定されている。スリーブ10には、間隙拡大部20を軸受外部に開放するために半径方向に延設される第1の通気孔10aが設けられている。間隙拡大部20には、第1の通気10aを通じて取り込まれた空気が保持されている。
【0017】
間隙拡大部20の軸線方向上下部には、シャフト2の外周面とスリーブ10の貫通孔の内周面との間にオイルが保持されて、それぞれ上部ラジアル軸受部22と下部ラジアル軸受部24とが構成されている。スリーブ10の貫通孔の内周面のシャフト2の外周面との間に上部ラジアル軸受部22を規定する部分には、スリーブ10の内周面に、動圧発生溝として中心位置(溝の曲折部分の位置)が上部ラジアル軸受部22の軸線方向中間位置に位置するよう形成される軸線方向に対称な形状のヘリングボーン溝22aが設けられており、モータの回転時には、このヘリングボーン溝22aによって上部ラジアル軸受部22に保持されたオイルにヘリングボーン溝22aの両端側(軸線方向上下部側)から溝の曲折部分に向かって作用する動圧が発生する。つまり、上部ラジアル軸受部22では、軸線方向中間位置において圧力ピークが発生し、両端部において最も圧力が低くなるよう構成されている。
【0018】
また、スリーブ10の貫通孔の内周面のシャフト2の外周面との間に下部ラジアル軸受部24を規定する部分には、スリーブ10の内周面に、動圧発生溝として中心位置(溝の曲折部分の位置)が下部ラジアル軸受部24の下方に偏倚して位置するよう形成される軸線方向に非対称な形状のヘリングボーン溝24aが設けられており、モータの回転時には、ヘリングボーン溝24aによって下部ラジアル軸受部24に保持されたオイルにヘリングボーン溝24aの両端側(上下部側)から溝の曲折部分に向かって作用する動圧が発生する。つまり、下部ラジアル軸受部24では、軸線方向下端部近傍において圧力ピークが発生し、上端部において最も圧力が低くなるよう構成されている。
【0019】
上部ラジアル軸受部22の上側には第1のテーパ状シールS1が位置しており、スリーブ10の貫通孔の内周面とシャフト2の外周面との間の間隙の半径方向寸法が軸線方向上方に向かうにつれて漸次拡大する。また、上部ラジアル軸受部22の下側と下部ラジアル軸受部24の上側との間には、シャフト2の外周面に一対の傾斜面を有する第2の環状溝2bが位置しており、第2の環状溝2bの一対の傾斜面とスリーブ10の貫通孔の内周面との間に規定される間隙拡大部20は、スリーブ10の貫通孔の内周面の第1の通気孔10aの開口部から軸線方向上下方向に向かって間隙寸法が漸次縮小し、それぞれ第2のテーパ状シールS2と第3のテーパ状シールS3とが規定される。これら第1、第2及び第3のテーパ状シール部S1,S2及びS3において、上部及び下部ラジアル軸受部22,24に保持されるオイルの内部圧力と外気圧とがバランスして気液界面が形成される。
【0020】
上部ラジアル軸受部22に保持されるオイルが長期間にわたる使用によって減少した場合には、第1のテーパ状シールS1側のオイルと空気との気液界面と第2のテーパ状シールS2側のオイルと空気との気液界面とに作用する空気の表面張力による圧力が等しくなるよう作用し、これら気液界面がそれぞれ上部ラジアル軸受部22側へ移動する。従って、第1及び第2のテーパ状シールS1,S2に保持されていたオイルが、上部ラジアル軸受部22に補充される。
【0021】
スラストプレート4の上面とこれと軸線方向に対向するスリーブ10の段部の下面との間には、下部ラジアル軸受部に連続してオイルが保持されると共に、スリーブ10の段部の下面に動圧発生溝としてポンプイン型のスパイラル溝26aが形成されて上部スラスト軸受部26が構成される。
【0022】
また、スラストプレート4の下面とこれと軸線方向に対向するカウンタプレート12の上面との間にはオイルが保持されると共に、カウンタプレート12の上面には、動圧発生溝として、上部スラスト軸受部26と同様にポンプイン型のスパイラル溝28aが形成されて下部スラスト軸受部28が構成される。
【0023】
モータの回転時には、スパイラル溝26a,28aによって、上部及び下部スラスト軸受部26及び28に保持されたオイルに半径方向内方に向かって圧力が高くなるよう作用する動圧が発生する。
【0024】
上部スラスト軸受部26に保持されるオイルには、モータの回転時にスパイラル溝26aによって半径方向内方に作用する動圧が発生するが、スラストプレート4の回転中心側にはシャフト2が位置するため、スパイラル溝26aによるオイルに対する半径方向内方への作用は、このシャフト2によって阻止される。しかしながら、上部スラスト軸受部26に隣接する下部ラジアル軸受部24には、軸線方向下端部近傍において圧力ピークが発生するよう軸線方向にアンバランスなヘリングボーン溝24aが形成されていると共に、下部ラジアル軸受部24と上部スラスト軸受部26との間には連続してオイルが保持されていることから、これら下部ラジアル軸受部24と上部スラスト軸受部26との境界部近傍において、オイルに作用する動圧の圧力ピークが発生する。従って、下部ラジアル軸受部24と上部スラスト軸受部26とは、協働してロータハブ6とともに回転するシャフト2並びにスラストプレート4を支持するために必要な動圧を発生する。
【0025】
また、下部スラスト軸受部28においては、スパイラル溝28aによるオイルに対する半径方向内方への作用によってシャフト2の軸芯近傍においてオイルに作用する動圧の圧力ピークが発生し、スパイラル溝28aを円周方向に形成される動圧発生溝列とした場合、その分布形状は概ね軸心に関して対称である。しかしながら、動圧の圧力ピークが軸心に対して略対称となると、下部スラスト軸受部28の中心部付近に滞留する気泡は、圧力の低い軸受の外周側に移動することができず、滞留し続けることとなる。このため、下部スラスト軸受部28には、図2に示すように、スパイラル溝28aからなる動圧発生溝列内に動圧発生溝が形成されない領域28bが形成されている。
【0026】
これら領域28bにおいては、回転シャフト部12の回転時といえども動圧が誘起されない。つまりこの領域28bが位置する側からは、オイルを半径方向内方に積極的に押圧する作用が生じないので、下部スラスト軸受部28の動圧の分布形状は軸心に関して非対称となる。
【0027】
これにより、下部スラスト軸受部28での周方向の動圧のバランスが崩れ、部分的に高圧となる領域が発生することで、例えば回転シャフト部12の静止時に軸受の中心部付近のオイル中に気泡が存在していた場合、この気泡は、スパイラル溝28aによって形成される高圧な領域側から、これよりも低圧な動圧発生溝が形成されない領域28b側へと送られ、さらに低圧なスラストプレート12bの外周部分へと順次移送されることとなり、下部スラスト軸受部28から排除される。
【0028】
この場合、動圧発生溝が形成されない領域28bを円周方向等間隔に配置することで、回転シャフト部12を軸支持する動圧の高圧となる領域も円周方向等間隔にあらわれることとなるので、下部スラスト軸受部28中に低圧となる領域28bを形成しても回転シャフト部12の軸支持が不安定になることはない。
【0029】
スラストプレート4の外周面には、図3に図示するとおり、上部スラスト軸受部26を構成するスラストプレート4の上面側からスラストプレート4の厚み方向中央部に向かってスリーブ10に設けられた段部の内周面との間に規定される半径方向の間隙の間隙寸法が拡大するテーパ状の傾斜面と下部スラスト軸受部28を構成するスラストプレート4の下面側からスラストプレート4の厚み方向中央部に向かってスリーブ10に設けられた段部の内周面との間に規定される半径方向の間隙の間隙寸法が拡大するテーパ状の傾斜面とから構成される断面形状が略V字状の第3の環状溝4aが設けられている。これら第3の環状溝4aを規定する一対の傾斜面は、それぞれスラストプレート4の上面及び下面側からスラストプレート4の厚み方向の略中央部に向かって実質的に同一の傾斜角をもって傾斜している。
【0030】
スリーブ10には、スリーブ10の段部の内周面及びスリーブ10の外周面に開口するよう半径方向に延設される複数の第2の通気孔10bが設けられており、各第2の通気孔10bは、ブラケット16に設けられた環状の円筒壁16aの内周面に全周にわたって形成された環状凹溝16a1によって連結されている。また、この環状凹溝16a1に連続するようにスリーブ10の外周面の一部には軸線方向の切欠き10b1が設けられており、これら切欠き10b1、環状凹溝16a1及び第2の通気孔10bを通じて、第3の環状溝4aとスリーブ10に設けられた段部の内周面との間に規定される一対のテーパ状の空間内に外気が取り入れられ保持されている。上部スラスト軸受部26及び下部スラスト軸受部28に保持されるオイルと外気との気液界面は、この第3の環状溝4aとスリーブ10の段部の内周面との間に規定される一対のテーパ状の空間において形成される。すなわち、第3の環状溝4aとスリーブ10の段部の内周面との間に規定される一対のテーパ状の空間は、それぞれ第4のテーパ状シールS4及び第5のテーパ状シールS5とを規定する。
【0031】
上記のようにスラストプレート4の外周面に設けられた第3の環状溝4aは、実質的に同一の傾斜角を有する一対の傾斜面から構成されるので、第4及び第5のテーパ状シールS4,S5も実質的に同一のテーパ角及びシール長(シール機能を発揮する領域の寸法)を有している。また、上部スラスト軸受部26に連続してオイルが保持される下部ラジアル軸受部24に保持されるオイルの端部である、第3のテーパ状シールS3は、第4並びに第5のテーパ状シールS4,S5内に保持されるオイルとオイルの内部圧力が等しくなるようバランス可能な形状を有する。従って、スラストプレート4の外周部に保持されるオイルは、スラストプレート4の厚み方向略中央部を介して実質的に均等となるよう分離されており、そのため下部ラジアル軸受部22、上部スラスト軸受部26並びに下部スラスト軸受部28に保持されるオイルのバッファオイルとして機能するオイルの量にアンバランスが生じることはない。
【0032】
次に、各軸受部からの気泡排出について説明する。上部ラジアル軸受部22には、ヘリングボーン溝22a軸線方向略中央部に、上部ラジアル軸受部22において動圧の圧力ピークが発生する曲折部が設けられており、そのためモータの回転時には、上部ラジアル軸受部22に保持されるオイル内に混入した気泡は、最も圧力の高い軸受の軸線方向略中央部から圧力の低い軸受の軸線方向両端部側へと順次移動し、第1及び第2のテーパ状シールS1,S2内に形成される気液界面から外気に開放される。
【0033】
また、下部ラジアル軸受部24とこれに連続してオイルが保持される上部スラスト軸受部26との間は、下部ラジアル軸受部24に形成された軸線方向にアンバランスなヘリングボーン溝24aと上部スラスト軸受部26に形成されたポンプイン型のスパイラル溝26aの作用によって、両軸受部の境界部近傍において圧力ピークが発生し、半径方向間隙拡大部18及び呼吸孔34側に向かうにつれて圧力が低下することから、下部ラジアル軸受部24及び上部スラスト軸受部26に保持されるオイル内に混入した気泡は、最も圧力の高いこれら軸受部の境界部近傍から圧力の低い第3及び第4のテーパ状シール部S3,S4内に形成される気液界面を通じて外気に開放される。
【0034】
更に、下部スラスト軸受部28においては、軸受部の略中央部付近で動圧の圧力ピークが発生するものの、その分布は軸心に対して非対称となる。このため、上述したとおり、軸受中心部付近に滞留する気泡も圧力の低い領域26bを通じて軸受の外周部側へと移動し、その後最も低圧な第4のテーパ状シール部S4に形成される気液界面を通じて外気に開放される。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0036】
例えば、図2において、下部スラスト軸受部28における動圧発生溝が形成されない領域28bを4箇所形成しているが、領域28bは、発生する動圧が必要以上に低下しない範囲で周方向等間隔に形成することが可能な数であればよい。
【0037】
また、上部及び下部ラジアル軸受部22,24に形成されるヘリングボーン溝22a,24a並びに上部及び下部スラスト軸受部26,28に形成されるスパイラル溝26a,28aについては、電解加工によって形成することで、所望の形状の溝パターンを容易に得ることができるが、これ以外にもボール転造やコイニング等の加工方法によっても形成可能である。
【0038】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の動圧軸受モータでは、排除が困難な軸受中心部に存在する気泡を確実に排除することが可能となり、安定した軸支持力を得ることができるとともに、気泡に起因するオイルの流出も阻止されることから、軸受としての信頼性及び耐久性を向上することができる。
【0039】
本発明の請求項2に記載の動圧軸受モータでは、軸支持の安定性を欠くことなく、軸受部から気泡を排出することができ、また安定したモータの回転を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の動圧軸受モータをスピンドルモータとして適用した場合の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のスピンドルモータの下部スラスト軸受部に形成されるスパイラル溝を示すカウンタプレートの平面図である。
【図3】図1に示すスピンドルモータのスラストプレートまわりの構成を拡大して示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
4 スラストプレート
12 カウンタプレート
26、28 スラスト軸受部
26a、28a スパイラル溝
28b 動圧溝が形成されない領域

Claims (2)

  1. シャフトと、
    前記シャフトの下端部から半径方向外方に突出する円板状のスラストプレートと、
    上面が該スラストプレートの下面と対向するカウンタプレートと、
    略円筒状で、貫通孔内に前記シャフトが挿通され、さらに、下面が前記スラストプレートの上面と対向するスリーブと、
    前記シャフトの外周と前記スリーブの内周面との間隙、前記スラストプレートの上面と前記スリーブの下面との間隙、および、前記スラストプレートの下面と前記カウンタプレートの上面との間隙に保持されるオイルと、
    前記スラストプレートと前記カウンタプレートとの間に動圧を誘起する動圧発生溝を有するスラスト動圧軸受と、を備えた動圧軸受モータであって、
    前記動圧発生溝列は、円周方向に並列状に配設され且つ、半径方向内方に向かって圧力が高くなるよう作用する動圧が発生するポンプインタイプのスパイラル溝列とし、
    前記スラスト動圧軸受には、前記動圧発生溝列を分断するように、径方向に伸びる動圧発生溝が形成されない領域が設けられることを特徴とする動圧軸受モータ。
  2. 前記動圧発生溝が形成されない領域は、円周方向等間隔に複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の動圧軸受モータ。
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