JP4616972B2 - 眼底検査装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼底上の血管を検査する眼底検査装置、特に血管の位置を算出しその信号を用いて測定光束を対象となる血管上に保持し、その血管内を流れる血流速度を測定する眼底検査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば眼底血流計は、被検眼の眼底の被測定血管に波長λのレーザービームを照射し、その散乱反射光を光検出器により受光し、血流からの散乱反射光であるドップラシフトした成分と静止している血管壁からの散乱反射光との干渉信号として検出し、周波数解析して血流速度を求める装置であり、以下に述べる原理によって血流速度が求められる。
【0003】
この血流速度の最大速度Vmaxは装置により以下の式より求めることができる。
Vmax={λ/(n・α)・||△fmax1 |−|△fmax2 ||/cosβ…(1)
【0004】
ここで、2つの受光器で受光した受光信号から算出された周波数の最大シフトを△fmax1 、△fmax2 、レーザー光の波長をλ、測定部位の屈折率をn、眼内での2つの受光光軸のなす角度をα、眼内で2つの受光光軸がつくる平面と血流の速度ベクトルとのなす角度をβとしている。
【0005】
このように2方向から計測を行うことにより、測定光の入射方向の寄与が相殺され、眼底上の任意の部位の血流を計測することができる。また、2つの受光光軸がつくる平面と眼底との交線と、血流の速度ベクトルとのなす角βを一致させることによりβ=0°となり、真の最大血流速度を測定することができるようになっている。
【0006】
このレーザービームを利用して、眼底部血管の特定部位の血管形状や血流速度を測定する眼底血流計においては、測定処理時間内は測定部位に対して測定光ビームが正確に当たっている必要があるが、実際には被検眼の固視微動等があるために、測定部位に測定光ビームを正確に当て続けることは困難である。従って、血管位置を検出し、固視微動に対応して実時間で測定光ビームの照射位置を測定部位上に移動させるトラッキング手段を有する装置が、特開昭63−288133号公報、特表平6−503733号公報に開示されている。
【0007】
これらの眼科装置では、トラッキング光束の眼底での反射光束を受光する受光手段として、一次元CCDを用い血管像信号の波形処理を行い、トラッキング基準位置と血管像の位置信号の偏移量を算出してトラッキングを行っている。これらはトラッキング系の照明用光源による以下トラッキング光と、測定光は瞳共役位置のミラーを経て眼底上に照射される方式を採用し、トラッキング光の眼底での反射光束を受光する受光手段として、一次元CCDを用いて血管像信号の波形処理を行い、トラッキング基準位置と血管像の位置の偏移量を算出してトラッキングを行っている。
【0008】
更に、血管像の特徴点を捉え、位置信号が本数の認識や血管系の算出方法が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述の従来例においては、血管の周辺組織に反射率の変化がある場合に、血管の抽出はより困難になる。例えば、周辺組織が滑らかな傾斜を持っていたり、波を打っているような場合に血管の位置を正しく判断することは困難となる。
【0010】
例えば、コントラストの強い太い血管の脇にある細い血管を測定対象に選択すると、映像信号は確実に2本の血管の存在を確認できない場合がある。この場合に、例えば血管認識の結果を利用して血管の位置を算出し、その血管を自動的にトラッキングする血管トラッキング機構を有する眼科装置では、血管を正しく認識できず、トラッキングが安定しないという欠点がある。
【0011】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、トラッキングにより血管を追従し、正しく血管を判別し得る眼底検査装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る眼底検査装置は、ターゲットとなる眼底血管を含む領域を照明する照明手段と、前記領域の一次元像を撮像して映像信号を出力する撮像手段と、該撮像手段の電気的出力信号を処理して前記ターゲットとなる血管を判別する判別手段とを有する眼底検査装置において、前記判別手段は、撮像信号の輝度の比較的高い周辺部を検出するために設けたピークホールド手段と、該ピークホールド手段の出力と前記撮像信号との差分信号を作る差分手段と、前記撮像信号の極大点及び極小点を算出し、これらの極大点及び極小点の振幅情報を算出する振幅算出手段とを有し、該振幅算出手段の出力を用いて前記ピークホールド手段のリセツトを行うことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明を眼底血流計に適用した実施の形態の構成図であり、白色光を発するタングステンランプ等から成る観察用光源1から、被検眼Eと対向する対物レンズ2に至る照明光路上には、ほぼ被検眼Eの眼底と光学的に共役な位置に配され光路に沿って移動自在な固視標表示用素子である透過型液晶板3、リレーレンズ4、孔あきミラー5、黄色域の波長光を透過し他の光束を殆ど反射するバンドパスミラー6が順次に配列されている。孔あきミラー5の背後には眼底観察光学系が構成されており、光路に沿って移動自在な結像レンズ7、接眼レンズ8が順次に配列され、検者眼eに至っている。
【0014】
バンドパスミラー6の反射方向の光路上には、イメージローテータ9、紙面に垂直な回転軸を有し両面研磨されたガルバノメトリックミラー10が配置され、ガルバノメトリックミラー10の下側反射面10aの反射方向には光路に沿って移動自在なリレーレンズ11が配置され、上側反射面10bの反射方向にはレンズ12、光路に沿って移動自在なフォーカスユニット13が配置されている。なお、ガルバノメトリックミラー10は回転軸の下方に切欠部を有しており、またレンズ12の前側焦点面は被検眼Eの瞳孔Epと共役関係にあり、この焦点面にガルバノメトリックミラー10が配置されている。
【0015】
ガルバノメトリックミラー10の後方には、レンズ14及び凹面ミラー15が配され、ガルバノメトリックミラー10の下側反射面10aで反射されずに切欠部を通過する光束を、ガルバノメトリックミラー10の上側反射面10bに導くリレー光学系が構成されている。なお、ガルバノメトリックミラー10は被検眼瞳の共役な位置に配されており、凹面ミラー15とレンズ14は光軸上に同心に配置されかつ共動して、ガルバノメトリックミラー10を−1倍で結像するリレー系の機能が与えられている。
【0016】
フォーカスユニット13においては、レンズ12と同一光路上にダイクロイックミラー16が配列され、ダイクロイックミラー16の反射方向の光路上には、矩形の絞りを有するマスク板17、ミラー18が配置され、ダイクロイックミラー16の透過方向の光路上にはレンズ19が配置されており、このフォーカスユニット13は一体的に移動ができるようになっている。
【0017】
また、レンズ19の入射方向の光路上には、コリメートされたコヒーレントな例えば赤色光を発するレーザーダイオードなどの測定用光源20が配置されており、ミラー18の入射方向の光路上には、高輝度の他の光源と異なる例えば緑色光を発するヘリウムネオンレーザーなどのトラッキング用光源21が配置されている。
【0018】
ガルバノメトリックミラー10の下側反射面10aの反射方向の光路上には、リレーレンズ11、ダイクロイックミラー22、拡大レンズ23、イメージインテンシファイヤ24、一次元CCD25が順次に配列され、血管検出系が構成されている。
【0019】
また、ダイクロイックミラー22の反射方向には、フォトマルチプライヤ26、27が配置され、測定用受光光学系が構成されている。なお、図示の都合上、全ての光路を同一平面上に示したが、ダイクロイックミラー22の反射方向などは紙面に直交している。
【0020】
更に、装置全体を制御するためのシステム制御部28が設けられ、このシステム制御部28には検者が操作する入力手段29、測定結果を表示する表示手段30、フォトマルチプライヤ26、27の出力、イメージインテンシファイヤ24及び一次元CCD25の出力がそれぞれ接続されており、システム制御部28の出力は透過型液晶板3、ガルバノメトリックミラー10を制御するガルバノメトリックミラー制御回路31に接続されている。
【0021】
また、透過型液晶板3、結像レンズ7、フォーカスユニット13及びリレーレンズ11は図示しないフォーカシングノブを操作することにより、被検眼Eの眼底Eaと透過型液晶板3、検者眼eの眼底、マスク板17及びイメージインテンシファイヤ24の受光面とが常に光学的に共役になるように、共に連動して光軸方向に移動するようになっている。
【0022】
図2はシステム制御部28内のブロック回路構成図であり、血管判別部41が設けられている。一次元CCD25の出力はサンプルホールド回路42を経て増幅器43に接続されている。増幅器43の出力はA/D変換器44、血管判別部41のローパスフィルタ回路45に接続されている。
【0023】
A/D変換器44の出力は測定条件決定部46に接続され、この測定条件決定部46はイメージインテンシファイヤ24を制御するイメージインテンシファイヤ制御回路47、フォトマルチプライヤ26、27を制御するフォトマルチプライヤ制御回路48、入力手段29からの入力をA/D変換するA/D変換器49に接続されている。
【0024】
一方、ローパスフィルタ回路45の出力はピークホールド回路50、加算回路51、血管認識回路52、血管径算出部53に接続されている。そして、血管認識回路52のリセット出力はピークホールド回路50に接続され、ピークホールド回路50の出力は加算回路51に接続されている。
【0025】
加算回路51の出力は不要信号レベル除去回路54、微分回路55を介してゼロクロス比較部56に接続され、ゼロクロス比較部56の出力は血管径算出部53、ガルバノメトリックミラー制御回路31に出力する血管位置算出部57、血管近接判定部58に接続され、血管近接判定部58の出力は血管径算出部53、血管位置算出部57に接続されている。また、不要信号レベル除去回路54の一方の出力は血管近接判定部58に接続されている。
【0026】
一次元CCD25の出力信号はサンプルホールド回路42に入力されてサンプルホールドされた後に、増幅器43に入力され適当なゲインで増幅される。増幅器43の出力信号はローパスフィルタ回路45に入力され、不要な高周波成分をカットするノイズ除去処理が行われ、更に血管像だけを抽出するためにピークホールド回路50でピークホールドが行われる。
【0027】
その後に、ピークホールド回路50の出力信号とローパスフィルタ回路45の出力信号は、差分手段である加算回路51で減算処理等が行われた後に、更に不要信号レベル除去回路54で血管部分の特徴点抽出に不要な部分をカットするバックグラウンド処理とローパスフィルタ処理が行われる。ここで、ピークホールド回路50にはローパスフィルタ回路45の出力を用いて血管を識別し、血管の終了を認識した際に、血管認識回路52のタイミングパルスによるリセット出力によりピークホールド回路50をリセットする。
【0028】
更に、不要信号レベル除去回路54の出力信号は微分回路55に入力されて微分処理を行った後に、ゼロクロス比較部56に入力され、その出力は血管近接判定部58に入力される。血管近接判定部58は血管の候補の間隔をみて、中央部に反射のある1本の太い血管として処理するか、近接した複数本の血管として処理するかを判断し、血管位置算出部57にその判断を出力する。血管位置算出部57はその判断を基にゼロクロス比較部56の出力を処理して、血管位置信号をガルバノメトリックミラー制御回路31に対して出力する。これにより、血管を自動追尾するトラッキング制御系が形成される。
【0029】
また、増幅器43の出力はA/D変換器44を介して、測定条件決定部46に入力されるが、この一次元CCD25の出力と同様に、フォトマルチプライヤ26、27の出力も同様にA/D変換器44を介して測定条件決定部46に入力されている。測定条件決定部46はそれらを基に測定条件を決定して、イメージインテンシファイヤ制御回路47、フォトマルチプライヤ制御回路48にそのゲインコントロール信号を出力する。また、その一方でローパスフィルタ回路45の出力は血管径算出部53にも入力される。血管径の算出には特徴抽出のために変形された信号よりも、より血管の形状を反映している信号が必要なためである。
【0030】
検査に際しては、観察用光源1から発した白色光は、透過型液晶板3を背後から照明し、リレーレンズ4を通って孔あきミラー5で反射され、黄色域の波長光のみがバンドパスミラー6を透過し、対物レンズ2を通り被検眼Eの瞳孔Ep上で眼底照明光光束像Iとして一旦結像した後に、眼底Eaをほぼ一様に照明する。このとき、透過型液晶板3には図示しない固視標Fが表示されており、照明光により被検眼Eの眼底Eaに投影され、視標像F’として被検眼Eに呈示される。
【0031】
図3は検者eが被検眼Eの眼底Eaを観察した眼底像Ea’を示している。眼底Eaからの反射光は同じ光路を戻り、瞳孔Ep上から眼底観察光束として取り出され、孔あきミラー5の中心の開口部、結像レンズ7を通り、検者眼eにより接眼レンズ8を介して眼底像Ea’が観察可能となる。この眼底像Ea’を観察しながら接眼レンズ8より装置のアライメントを行う。
【0032】
測定用光源20を発したコリメートされた測定光は、レンズ19を通過し、ダイクロイックミラー16を透過する。一方、トラッキング用光源21から発したトラッキング光は、ミラー18で反射された後にマスク板17で所望の形状に整形された後に、ダイクロイックミラー16に反射されて上述の測定光と重畳される。
【0033】
このとき、測定光はレンズ19によりマスク板17の開口部中心と共役な位置にスポット状に結像されている。更に、測定光とトラッキング照射光はレンズ12を通り、ガルバノメトリックミラー10の上側反射面10bで反射され、レンズ14を一旦通った後に、凹面ミラー15により反射され再びレンズ14を通りガルバノメトリックミラー10の方に戻される。
【0034】
ガルバノメトリックミラー10の上側反射面10bで反射された光束は、ガルバノメトリックミラー10の切欠部に戻され、ガルバノメトリックミラー10で反射されることなくイメージローテータ9に向かう。イメージローテータ9を経て、バンドパスミラー6により対物レンズ2へ偏向された両光束は、対物レンズ2を介して被検眼Eの眼底Eaに照射される。
【0035】
このように、測定光とトラッキング照射光は、ガルバノメトリックミラー10の上側反射面10bで反射されて、再び戻されるよう対物レンズ2の光軸から偏心した状態でガルバノメトリックミラー10に入射が行われ、眼底Eaの所定の領域に照射される。
【0036】
眼底Eaからの測定光とトラッキング照射光の散乱反射光は再び対物レンズ2で集光され、バンドパスミラー6で殆どの光束が反射されてイメージローテータ9を通り、ガルバノメトリックミラー10の下側反射面10aで反射され、リレーレンズ11を通り、ダイクロイックミラー22において測定光とトラッキング光とが分離される。
【0037】
トラッキング光はダイクロイックミラー22を透過し、拡大レンズ23により眼底観察光学系による眼底像Ea’よりも拡大され、イメージインテンシファイヤ24の光電面に結像する。血管像Ev’はイメージインテンシファイヤ24で増幅された後に一次元CCD25により撮像される。そして、システム制御部28によって、一次元CCD25で撮像された血管像Ev’から血管像の位置ずれ量に相当する信号を作り、ガルバノメトリックミラー制御回路31に出力する。そして、ガルバノメトリックミラー制御回路31がこの移動量を補償するようにガルバノメトリックミラー10を駆動することにより、被測定部の血管Evのトラッキングが行える。
【0038】
また、測定光はダイクロイックミラー22により反射され、フォトマルチプライヤ26、27に受光される。フォトマルチプライヤ26、27の出力はそれぞれシステム制御部28に入力され、この受光信号は従来例と同様に周波数解析されて眼底血管の血流速度が求められる。
【0039】
一方、眼底Eaからの測定光とトラッキング照射光の散乱反射光は再び対物レンズ2で集光され、バンドパスミラー6を透過した一部の光束は観察用光源1から発した光束の被検眼Eの眼底Eaからの反射散乱光と同様の光路をたどって検者眼eに達し、観察眼底像Ea’と共にトラッキング指標像T、測定光像Sとして検者が観察できるようになっている。
【0040】
検者は図示しない操作桿を操作して、被検眼Eの光軸と対物レンズ2の光軸が一致するように位置合わせを行う。次に、眼底像Ea’を観察しながら前述のフォーカスノブを操作して被検眼Eの眼底Eaにフォーカスを合わせる。すると、前述したように透過型液晶板3の固視標Fと眼底Eaが光学的に共役になり、被検眼Eに呈示され、被検者が固視標F’を固視すると、検者は図3に示すような眼底像Ea’を観察できる。そして、検者は第1の被測定部位が観察視野の略中央付近にくるように、入力手段29を操作して固視標Fを動かし、被検眼Eを誘導する。
【0041】
次に入力手段29を操作して、トラッキング光を眼底Eaに照射し、更にトラッキング指標像Tが第1の被測定血管に垂直になるように、図示しないローテータ操作ノブを操作し、第1の被測定血管上に測定光が照射されるようにガルバノメトリックミラー10の角度を制御する。トラッキング光で照射された血管Evは、前述のように血管像Ev’としてイメージインテンシファイヤ24の光電面に結像し、増幅された後に一次元CCD25上に撮像され血管像信号として出力される。
【0042】
ここで、検者は測定部位を決定した後に、再び入力手段29を操作してトラッキングの開始を入力するが、一次元CCD25の出力信号はサンプルピークホールド回路50でサンプルホールドされた後に増幅器43に入力され、適当なゲインで増幅される。
【0043】
図4(a)、(g)は増幅器43の出力信号波形を示す。(a)〜(n)は1本の太い血管がトラッキングビームに照射された場合、(g)〜(p)は2本の血管がトラッキングビームに照射された場合を示している。それ以降の信号処理結果の(a)に対応するものを(b)〜(n)、(g)に対応するものを(h)〜(p)に示す。
【0044】
増幅器43の出力信号はローパスフィルタ回路45によって、不要な高周波成分をカットするノイズ除去処理が行われ、図4(b)、(h)に示すような波形を出力する。更に、血管像だけを抽出するためにピークホールド回路50でピークホールドを行い、ピークホールド回路50の出力信号Phとローパスフィルタ回路45の出力信号Lpを加算回路51で演算処理を行った結果が(c)、(i)である。
【0045】
ピークホールド回路50は血管の始まりと考えられるピーク値をホールドした後に、血管認識回路52からのリセット出力パルスが入力するまでピーク値のホールドを続ける。血管認識回路52は血管中心候補と見倣せるローパスフィルタ回路45の出力Lpの十分に小さな極小点を検出した後に、順次に検出される極大点の内、先の極小点との振幅の差が所定値を超えた極大点を1本の血管の終了と見倣して、ピークホールド回路50に対してリセット出力パルスを発生する。図4において、Phが垂直に立ち下がっているタイミングが、このリセットのタイミングである。
【0046】
ピークホールド回路50の出力Phは、その後に加算回路51においてローパスフィルタ回路45の出力Lpとの差がとられ、図4(c)、(i)に示す信号が作られる。加算回路51の出力信号は不要信号レベル除去回路54に入力され、先ず信号の最大振幅が算出される。この信号の振幅情報を基に不要信号を削除するレベルを決定し、オフセット回路を用いて血管部分の特徴点の抽出に不要な背景部分を飽和させて削除した後に、再びローパスフィルタがかけられ、図4(d)、(j)に示すような信号となる。
【0047】
本実施の形態においては、破線で示すレベルThのように、振幅の約1/3のレベルでオフセット量を決定し、オフセットをかけて不要な背景部分を飽和させ削除するように設定してあり、このオフセットレベルは振幅の1/3で固定としているが、信号の振幅等に応じて可変としてもよい。
【0048】
更に、不要信号レベル除去回路54の出力信号は微分回路55で微分処理を行い、図4(e)、(k)に示すような波形を出力し、ゼロクロス比較部56に入力される。ゼロクロス比較部56はゼロクロスポイントのうち、立ち上がり部を抽出した二値信号(f)、(l)を血管近接判定部58に出力する。血管近接判定部58は入力された信号を基に、中央に反射の存在する1本の太い血管か、近接した2本の血管かの判定を行う。
【0049】
これは、図4(a)のようにコントラストの強い太い血管を測定対象に選んだ場合に、その血管の中心には血管壁の正反射が観測され、映像信号はあたかも2本の血管が存在するように観測される場合への対処である。このような場合には、単純に二値信号ゼロクロスポイントを血管位置信号として扱うと、図4(f)に示すように、2本の血管が抽出されてしまう。
【0050】
そこで、血管位置信号として取り扱うべき極小点のゼロクロスポイント間の距離Wを計測し、所定の幅W1と比較する。即ち、図4(m)に示すように、ゼロクロスポイント間の距離Wが幅W1以内であれば1本の血管と認識し、その判断を血管位置算出部57に出力する。血管位置算出部57はこれを受け、トラッキング基準となる原点Oと(f)の立ち上がりの平均との時間差を計数し、血管位置ずれを示す値Xを作り出す。
【0051】
このとき、(l)に示すように極小点のゼロクロスポイント間の距離Wが幅W1以上であれば、血管近接判定部58は2本の血管と認識し、これを受けた血管位置算出部57は、トラッキング基準の原点Oに近い方の極小点との時間差を計数し、血管位置ずれを示す値Xを出力する。
【0052】
基本的には、血管位置算出部57はトラッキング基準位置Oに対して、最も近い血管位置信号の偏差量Xを算出し、ガルバノメトリックミラー制御回路31により、この偏差量Xに基づいてガルバノメトリックミラー10が駆動される。このようなプロセスにより、一次元CCD25上の血管像Ev’の受像位置は、トラッキング基準位置上になるように制御されることとなる。
【0053】
ビームスポット状の測定光は、眼底Ea上においてトラッキング光の一次元基準位置に相当する中央位置に重畳して照射されているので、トラッキングシステムにより測定血管Evを正確に捉えることが可能になる。
【0054】
血管認識回路52の効果を図5を用いて更に説明すると、図5(a)〜(h)は測定すべき細い動脈の左側に隣接して静脈が存在する場合の信号処理の一例で、かつ(a)は眼底Eaの照度むら又は吸収率分布によって、右にゆくほど反射が低くなる部位を対象とした場合である。また、(a’)〜(d’)には参考のため、血管認識回路52が存在しない場合に行われると予想される信号処理を併記している。
【0055】
なお、(a)と(a’)は同一の波形である。(b)において、前述のようにピークホールド回路50の出力Phは初めの極大値P0でピークホールドされ、そのレベルを超えるH0で再びサンプルを開始するという、通常のピークホールド動作による出力に加えて、血管認識回路52により極小値B1を検出した後に、所定の振幅以上の高さの極大値P2が検出されるとリセットがかけられ、再びサンプル状態となる。
【0056】
実際には、このときのサンプルの開始は極大値であるので、その極大値がホールドされることになる。この動作は極小値B2を検知後のP4の時点でも行われ、その結果、加算回路51の出力として(c)に示すように、P1−B1−P2、P2−P3、P3−B2−P4という3本の血管候補が得られることになる。
【0057】
このうち、P2−P3は不要信号レベル除去回路54の働きによって候補から外され、結果として(d)に示すように2本の血管V1、V2が検出されることになる。このとき、血管V1、V2の振幅は十分に大きく、照明の変動や眼球運動による反射率の変化、イメージインテンシファイヤ24の揺らぎなどのノイズが発生しても、常に2本の血管が認識でき、かつターゲットである血管V1に正しくトラッキングがかかる。なお、(e)〜(h)については、図4(k)〜(p)の場合と同様である。
【0058】
これに対し、血管認識回路52のない(b’)では、ピークホールド回路50の出力Phは初めの極大値P0でピークホールドされ、そのレベルを超えるH0で再びサンプルを開始するという、通常のピークホールド動作のみによって作られることになるので、最大極大値P1でホールドがかかったままとなる。
【0059】
その結果、不要信号レベル除去回路54の働きによって得られる血管V1’、V2’の振幅は、(d’)に示すようにB1の極小値の値に強く作用されることとなり、血管V1’の振幅は非常に小さな不安定なものとなる。
【0060】
ここで照明の変動や、眼球運動による反射率の変化、イメージインテンシファイヤ24の揺らぎなどのノイズが発生すると、血管V1’が不要信号レベル除去回路54によりノイズと判断され、除去されてしまうことが発生する。これはターゲットである血管V1’をトラッキングが見失うことであり、そのような場合は血管V2にトラッキングがかかることになる。検者から見ると、これはトラッキングの最中にビームが隣の静脈に飛び移ったかのように見える。即ち、ターゲットとすべき血管にトラッキングがかからず、その血管の血流計測が行えないということになる。
【0061】
なお、本実施の形態では、血管認識回路52がリセット信号を発生する極小点認識後の次の極大点とのレベル差及び所定の幅W1を固定した値としているが、検者が眼底像Ea’を観察し、測定する血管に応じてそれぞれの値を入力手段29に入力し、手動で設定してもよい。
【0062】
以上の説明は、特にその血管トラッキングシステムに応用した眼底血流計の実施の形態としたが、血管特定に関する本発明の構成、効果は血管径の計測においても効果を有する。先に述べた血管認識回路52のリセット信号を用いて求められた血管波形信号である図5(c)は、血管のプロファイルを忠実には表現していない。しかしながら、その本数を認識するために有用であることは先に述べた通りである。また、5図(f)に示すゼロクロス信号の立ち上がりは、血管位置信号を示すので、それを基にターゲットとなる血管径を算出することにより、より正しい血管径を求めることが可能となる。
【0063】
ローパスフィルタ回路45、ゼロクロス比較部56、血管位置算出部57の出力信号は血管径算出部53に入力され、それぞれ血管径算出のための元信号、血管像の特徴点の極大値、極小値の判別、血管の本数情報として用いられ、血管径算出部53はこれらの情報を基に血管径の算出を行うことが可能となる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る眼底検査装置は、コントラストの異なる2本の血管が並走した部位であっても、血管像信号のコントラストの大小の拘わらず最適なレベルの血管像信号を得ることができるため、血管本数を誤認することなく正しく2本と認識することが可能となる。
【0065】
また、血管のコントラストの弱い血管をターゲットに設定しても正確なトラッキング、血管径計測が可能になり、結果的に正確かつ容易に眼底血流速度、眼底血流量を求めることか可能となる。
【0066】
更に、血管中心に血管壁の正反射が観測され、映像信号はあたかも2本の血管が存在するように観測される場合と、2本の血管が隣接しているような場所を測定する場合とを明確に区別することができる。
【0067】
また、アルゴリズムは比較的簡素なハードウエアで構成することが可能であるため、特に血管トラッキングのように高速な処理が求められる装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態の構成図である。
【図2】 システム制御部のブロック回路構成図である。
【図3】 観察眼底像の説明図である。
【図4】 血管像信号処理波形の説明図である。
【図5】 血管認識回路の効果の説明図である。
【符号の説明】
1 観察用光源
3 透過型液晶板
9 イメージローテータ
10 ガルバノメトリックミラー
13 フォーカスユニット
20 測定用光源
21 トラッキング用光源
24 イメージインテンシファイヤ
25 一次元CCD
26、27 フォトマルチプライヤ
28 システム制御部
29 入力手段
30 表示手段
42 サンプルホールド回路
50 ピークホールド回路
51 加算回路
52 血管認識回路
53 血管径算出部
54 不要信号レベル除去回路
55 微分回路
56 ゼロクロス比較部
57 血管位置算出部
58 血管近接判定

Claims (15)

  1. 眼底血管を含む領域を照明する照明手段と、
    前記照明手段により照明した前記領域を撮像する撮像手段と、
    前記撮像手段の出力信号のうち前記血管の候補を取得する取得手段と、
    前記血管の候補の信号レベルに基づいてオフセット処理を行う処理手段と、
    を有することを特徴とする眼底検査装置。
  2. 前記血管の候補が、略極小値に対して所定値以上の略極大値を有する複数の箇所であり、
    前記処理手段が、前記複数の箇所の信号レベルに基づいてオフセット処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の眼底検査装置。
  3. 前記処理手段が、前記撮像手段の出力に基づく信号と前記取得手段の取得結果に基づく信号との差分をとる差分手段を有し、
    前記血管の候補の信号レベルが、前記差分手段の出力信号であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の眼底検査装置。
  4. 前記取得手段の取得結果に基づく信号が、略極大値で且つ略最大値を有する箇所でサンプルホールドした後、略極小値に対して所定値以上の略極大値を有する箇所でリセットして得た信号であることを特徴とする請求項3に記載の眼底検査装置。
  5. 前記処理手段が、
    前記撮像手段の出力信号を増幅する前記増幅手段と、
    前記増幅手段の出力信号からノイズを除去する除去手段と、を有し、
    前記撮像手段の出力に基づく信号が、前記除去手段の出力信号であることを特徴とする請求項3あるいは4に記載の眼底検査装置。
  6. 前記処理手段の出力信号に前記血管候補が複数存在する場合に、該血管の候補の間隔と所定値とを比較する比較手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の眼底検査装置。
  7. 前記処理手段の出力信号を微分処理する微分手段と、
    前記微分手段の出力信号のゼロクロスポイントのうち立ち上がり位置を利用して、前記眼底血管の位置情報を算出する血管位置算出手段と、
    を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の眼底検査装置。
  8. 前記血管位置算出手段の出力結果を利用して、前記立ち上がり位置における前記眼底血管の径情報を算出する血管径算出手段を有することを特徴とする請求項に記載の眼科検査装置。
  9. 前記眼底対象血管に測定光束を投影する投影光学系と、前記測定光束による血管からの反射光を受光する受光光学系と、該受光光学系に設けた受光手段の出力から対象血管に関する情報を計測する計測手段とを有し、前記投影光学系は光束偏向手段を有し、該光束偏向手段は前記血管位置算出手段の出力により前記測定光束を対象血管上に保持するよう制御する制御手段を有することを特徴とする請求項7あるいは8に記載の眼底検査装置。
  10. 前記計測手段が、前記受光手段の出力信号を周波数解析することにより前記対象血管の血流速度を計測することを特徴とする請求項9に記載の眼底検査装置。
  11. 眼底の血管を含む領域を照明する照明手段と、
    前記照明手段により照明した前記領域を撮像する撮像手段と、
    前記撮像手段の出力信号のうち略極大値で且つ略最大値を有する箇所を検出する第1の検出手段と、
    前記第1の検出手段による検出後に、前記撮像手段の出力信号のうち略極小値に対して所定値以上の略極大値を有する箇所を検出する第2の検出手段と、
    前記撮像手段の出力に基づく信号と前記第1及び第2の検出手段の検出結果に基づく信号との差分をとる差分手段と、
    を有することを特徴とする眼底検査装置。
  12. 前記第1及び第2の検出手段の検出結果に基づく信号が、略極大値で且つ略最大値を有する箇所でサンプルホールドした後、略極小値に対して所定値以上の略極大値を有する箇所でリセットして得た信号であることを特徴とする請求項11に記載の眼底検査装置。
  13. 眼底の血管を含む領域を撮像する撮像手段と、
    前記撮像手段の出力信号のうち前記血管の候補を取得する取得手段と、
    前記血管の候補の信号レベルに基づいて前記撮像手段の出力信号レベルを調整する調整手段と、
    を有することを特徴とする眼底検査装置。
  14. 前記調整手段が、前記撮像手段の出力信号と、該撮像手段の出力信号のうち略極大値で且つ略最大値を有する箇所でサンプルホールドした後に略極小値に対して所定値以上の略極大値を有する箇所でリセットして得た信号との差分をとる差分手段を有し、該差分をとることにより前記調整を行うことを特徴とする請求項13に記載の眼底検査装置。
  15. 前記差分手段の出力信号あるいは前記調整手段の出力信号をオフセット処理するオフセット処理手段を有することを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の眼底検査装置。
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