JP4614595B2 - セラミックス原料及びセラミックスコンデンサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス原料と当該セラミックス原料を用いて製造されたセラミックスコンデンサに関し、特にチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムを主成分とするセラミックス原料と当該セラミックス原料を用いて製造されたセラミックスコンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、特開昭63−126117号のように内部電極に卑金属を用い、コンデンサ用セラミックス原料にチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムを用いた積層セラミックスコンデンサが商品化されている。
【0003】
このチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム(以下、CSTZと略称する)からなるセラミックス原料は、例えば次のようにして作製される。炭酸ストロンチウム(SrCO)、炭酸カルシウム(CaCO)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)を湿式混合し、これを乾燥させた後、仮焼することでCSTZからなる仮焼原料を得る。この仮焼原料に、例えばSi−Li系焼結助剤やMnOを添加してコンデンサ用セラミックス原料とする。さらに、このセラミックス原料を用いてコンデンサを作製する場合には、バインダー、可塑剤等を添加してボールミルで粉砕混合してこれらの添加物をコンデンサ用セラミックス原料に分散させた後にスラリーを作製する。ついで、そのスラリーからセラミックスグリーンシートを成形し、セラミックスグリーンシートを積層すると共にその内部にNiペースト等で内部電極を印刷しておき、これを本焼成することで積層セラミックスコンデンサを作製している。
【0004】
しかし、このような製造方法ではCSTZからなる仮焼原料の粉末粒径が大きいため、CSTZの焼結性が低く、焼結密度の向上に限界がある。それに伴って焼成品において内部欠陥が増大する、また耐湿負荷寿命が短くなるといった問題が生じる。
【0005】
この場合、CSTZの焼結性を高めるためには、本焼成の最高温度をより高温にし、最高温度保持時間をより長くしてCSTZを緻密にする方法がある。しかし、チタニアの高温負荷寿命が短いため、CSTZ中に未反応のチタニアが残存しているとCSTZの高温負荷寿命が短くなる。従来方法ではCSTZ中にチタニアが残存し易いので、焼成において最高温度の高温化や最高温度保持時間の長時間化によって内部電極の連続性が低下し、積層セラミックスコンデンサの場合には静電容量が低下するという問題がある。
【0006】
別な従来方法としては、特開平5−217426号のように中間原料(仮焼原料)であるチタン酸カルシウム(CaTiO3)と、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)と、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)又はジルコン酸ストロンチウム(SrZrO3)とを混合してコンデンサ用セラミックス原料とする場合もある。
【0007】
しかし、仮焼原料としてチタン酸ストロンチウム又はジルコン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウムを用いる方法では、仮焼原料としてCSTZを用いる従来方法よりも更に高温かつ長時間の焼成における最高温度条件が必要である。この場合もチタン酸カルシウムの高温負荷寿命が短いため、本焼成等を経て作製されたCSTZ中に未反応のチタン酸カルシウムが残存しているとCSTZの高温負荷寿命が短くなる。第2の従来方法でも、CSTZ中にチタン酸カルシウムが残存し易いので、焼成の最高温度を高温長時間保持することが必要となり、内部電極の連続性が低下して、積層セラミックスコンデンサの場合には静電容量が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、セラミックス焼成品の焼結密度を高め、かつ高温負荷特性を高めることができるセラミックス原料と当該セラミックス原料を用いて製造されたセラミックスコンデンサを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請項1に記載のセラミックス原料は、チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムまたはチタン酸ジルコン酸カルシウムを得るためのセラミックス原料であって、Ti/(Ti+Zr)の原子比が、本焼成後のTi/(Ti+Zr)の原子比よりも大きなチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムからなる第1の仮焼原料と、ジルコン酸カルシウムからなる第2の仮焼原料とを混合してなり、前記第1の仮焼原料であるチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムにおけるTi/(Ti+Zr)の原子比が、0.9以下であり、前記第2の仮焼原料であるジルコン酸カルシウムの比表面積が7.0m /g以上であり、前記第1の仮焼原料の粒径が前記第2の仮焼原料の粒径よりも大きいものである。
【0010】
請求項1に記載のセラミックス原料にあっては、チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムからなる第1の仮焼原料とジルコン酸カルシウムからなる第2の仮焼原料とを混合するが、第2の仮焼原料であるジルコン酸カルシウムとして比表面積が7.0m /g以上の微細粉末を用いると共に第1の仮焼原料として第2の仮焼原料よりも粒径の大きいものを用いることでジルコン酸カルシウムの粒子が第1の仮焼原料の粒子の隙間に入り込んで隙間を埋め、第1の仮焼原料と第2の仮焼原料との接触面積を大きくして反応性を高め、このセラミックス原料を用いたセラミックス焼成品の焼結性を高めることができる。これによって、セラミックス焼成品の耐衝撃性と耐湿性を高めることができる。これに対し、第2の仮焼原料であるジルコン酸カルシウムの比表面積が7.0m /gより小さいと、高温負荷寿命が短くなり、セラミックスの焼結成、結晶性が低下する。しかも、請求項1に記載のセラミックス原料にあっては、Ti/(Ti+Zr)の原子比が本焼成後のTi/(Ti+Zr)の原子比よりも大きなチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムからなる第1の仮焼原料を用いており、このチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムにおけるTi/(Ti+Zr)の原子比が0.9以下となっているので、未反応のチタニアのような高温負荷寿命を短くする成分が残存しにくくなる。この結果、このセラミックス原料を用いた焼成品の高温負荷寿命が長くなり、かつ焼結性が高くなるので、焼成における最高温度状態が低温、短時間で可能になり、内部電極の連続性を確保し所望の静電容量を得ることができる。これに対し、第1の仮焼原料であるチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムにおけるTi/(Ti+Zr)の原子比が0.9よりも大きいと、セラミックス原料中におけるTiの偏りが大きくなるために、却ってセラミックス焼成品の高温負荷寿命が低下する。
【0011】
請求項2に記載のセラミックス原料は、チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムを得るためのセラミックス原料であって、Ti/(Ti+Zr)の原子比が、本焼成後のTi/(Ti+Zr)の原子比よりも大きなチタン酸ジルコン酸カルシウムからなる第1の仮焼原料と、ジルコン酸カルシウムからなる第2の仮焼原料と、チタン酸ストロンチウム又はジルコン酸ストロンチウムのうち少なくとも一方からなる第3の仮焼原料とを混合してなり、前記第1の仮焼原料であるチタン酸ジルコン酸カルシウムにおけるTi/(Ti+Zr)の原子比が、0.9以下であり、前記第2の仮焼原料であるジルコン酸カルシウムの比表面積が7.0m /g以上であり、前記第1及び第3の仮焼原料の粒径が前記第2の仮焼原料の粒径よりも大きいものである。
【0012】
請求項2に記載のセラミックス原料は、第1の仮焼原料としてSrを含まないチタン酸ジルコン酸カルシウムを用い、第3の仮焼原料によってSrを加えるようにしたものである。このセラミックス原料にあっても、チタン酸ジルコン酸カルシウムからなる第1の仮焼原料とジルコン酸カルシウムからなる第2の仮焼原料とチタン酸ストロンチウム又はジルコン酸ストロンチウムのうち少なくとも一方からなる第3の仮焼原料とを混合し、第2の仮焼原料であるジルコン酸カルシウムとして比表面積が7.0m /g以上の微細粉末を用いると共に第1及び第3の仮焼原料として第2の仮焼原料よりも粒径の大きいものを用いているので、ジルコン酸カルシウムの粒子が第1の仮焼原料及び第3の仮焼原料の粒子の隙間に入り込んで隙間を埋め、第1の仮焼原料及び第3の仮焼原料と第2の仮焼原料との接触面積を大きくして反応性を高め、セラミックス原料を用いたセラミックス焼成品の焼結性を高めることができる。これによって、セラミックス焼成品の耐衝撃性と耐湿性を高めることができる。これに対し、第2の仮焼原料であるジルコン酸カルシウムの比表面積が7.0m /gより小さいと、高温負荷寿命が短くなり、セラミックスの焼結成、結晶性が低下する。しかも、請求項2に記載のセラミックス原料にあっても、Ti/(Ti+Zr)の原子比が本焼成後のTi/(Ti+Zr)の原子比よりも大きなチタン酸ジルコン酸カルシウムからなる第1の仮焼原料を用いており、このチタン酸ジルコン酸カルシウムにおけるTi/(Ti+Zr)の原子比が0.9以下となっているので、未反応のチタニアのような高温負荷寿命を短くする成分が残存しにくくなる。この結果、このセラミックス原料を用いた焼成品の高温負荷寿命が長くなり、かつ焼結性が高いので焼成における最高温度状態が低温、短時間で可能になり、内部電極の連続性を確保でき、所望の静電容量を得ることができる。これに対し、第1の仮焼原料であるチタン酸ジルコン酸カルシウムにおけるTi/(Ti+Zr)の原子比が0.9よりも大きいと、セラミックス原料中におけるTiの偏りが大きくなるために、却ってセラミックス焼成品の高温負荷寿命が低下する。
【0015】
請求項に記載のセラミックスコンデンサは、請求項1又は2に記載のセラミックス原料にSi−Li系焼結助剤とMnOを添加したコンデンサ用セラミックス原料を用いて成形された未焼成品を焼成することにより製造されたものである。このセラミックスコンデンサによれば、焼結性が良好となるので、耐衝撃性と耐湿性に優れ、また高温負荷特性が良好となる。セラミックスの焼結性が高いので焼成における最高温度状態を低温、短時間の条件とすることで、内部電極の連続性を確保でき、所望の静電容量を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるセラミックス原料は、焼成してチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムの焼成品を得るためのセラミックス原料である。
【0017】
チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムを得る場合には、Ti/(Ti+Zr)の原子比が目的とする原子比よりも大きなチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムからなる第1の仮焼原料と、ジルコン酸カルシウムからなる第2の仮焼原料とを混合してもよい。あるいは、第1の仮焼原料に後からストロンチウム(第3の仮焼原料の成分)を加えるようにしてもよく、その場合には、Ti/(Ti+Zr)の原子比が目的とする原子比よりも大きなチタン酸ジルコン酸カルシウムからなる第1の仮焼原料と、ジルコン酸カルシウムからなる第2の仮焼原料と、チタン酸ストロンチウム又はジルコン酸ストロンチウムのうち少なくとも一方からなる第3の仮焼原料とを混合してもよい。
【0018】
また、チタン酸ジルコン酸カルシウムを得る場合には、Ti/(Ti+Zr)の原子比が目的とする原子比よりも大きなチタン酸ジルコン酸カルシウムからなる第1の仮焼原料と、ジルコン酸カルシウムからなる第2の仮焼原料とを混合する。
【0019】
ここで、チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムとは、化学式で表せば、
(Ca1-XSrX)m(Zr1-YTiY)O3
ただし、 0<X<0.6
0<Y<0.6
0.85<m<1.30
となるものである。また、チタン酸ジルコン酸カルシウムとは、化学式で表せば、
Cam(Zr1-YTiY)O3
ただし、 0<Y<0.6
0.85<m<1.30
となるものである。
【0020】
第1の仮焼原料となるチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムは、例えば炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、チタニア、ジルコニアから作製される。また、第1の仮焼原料となるチタン酸ジルコン酸カルシウムは、例えば炭酸カルシウム、チタニア、ジルコニアから作製される。第2の仮焼原料となるジルコン酸カルシウムは、例えば炭酸カルシウムとジルコニアから作製される。第3の仮焼原料となるチタン酸ストロンチウムは、例えば炭酸ストロンチウムとチタニアから作製される。また、第3の仮焼原料となるジルコン酸ストロンチウムは、例えば炭酸ストロンチウムとジルコニアから作製される。
【0021】
ただし、本発明のセラミックス原料は、これらの仮焼原料を主成分とするものであればよく、必要に応じて各種焼結助剤やバインダ、可塑剤等を混合されていてもよい。
【0022】
本発明のセラミックス原料によれば、第2の仮焼原料としてジルコン酸カルシウムを用いているので、第2の仮焼原料を微粒子化することができ、第1の仮焼原料(及び第3の仮焼原料)と第2の仮焼原料とを混合したとき、第2の仮焼原料の粒子が第1の仮焼原料の粒子(及び第3の仮焼原料の粒子)間の空間に入り込み、各仮焼原料の粒子どうしの接触面積と充填率が増大する。この結果、焼成されたセラミックス焼成品の焼結性が良好となり、焼結密度の高い焼成品が得られた。この焼結密度は第2の仮焼原料の比表面積が大きい(すなわち、粒子径が小さい)ほど高くなる。特に、高温負荷試験及び耐湿負荷試験を行った結果では、第2の仮焼原料の比表面積が7.0m/gより小さい場合には不良品が発生したが、第2の仮焼原料の比表面積が7.0m/g以上では、不良品は発生しなかった。
【0023】
しかも、本発明のセラミックス原料によれば、第1の仮焼原料は、Ti/(Ti+Zr)の原子比が目的とする原子比よりも大きなチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムからなるので、第1の仮焼原料を作製(仮焼)する際、Tiの合成度(反応度合い)が高くなり、高温負荷寿命の短いチタニアが第1の仮焼原料や焼成品に残りにくくなり、焼成品の高温負荷特性が良好となる。一方、Ti/(Ti+Zr)の原子比の値が1に近づくと、却って焼成品の高温負荷特性が劣化した。これは、第1の仮焼原料中であまりにTi過多となり、セラミックス原料中でTiの偏在が大きくなるためであると推測される。特に、高温負荷試験の結果では、第1の仮焼原料におけるTi/(Ti+Zr)の原子比が0.9よりも小さい場合には、焼成品には不良は発生しなかったが、Ti/(Ti+Zr)の原子比が0.9より大きい場合には、焼成品に不良が発生した。
【0024】
このように本発明のセラミックス原料によれば、焼結密度が高く、かつ高温負荷特性の高いセラミックス焼成品を得ることができる。よって、耐衝撃性と耐湿性と高温負荷特性に優れたセラミックス焼成品を製造することができる。セラミックス焼成品としては、セラミックス電子部品、特に積層セラミックスコンデンサを挙げることができ、耐衝撃性と耐湿性に優れ、内部電極切れによって、静電容量の低下が起こりにくくなる。
【0025】
以下、本発明の具体的な実施例によって説明する。
【0026】
(実施例1)
炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、チタニア及びジルコニアを湿式混合し、乾燥後仮焼し、仮焼後粉砕することで、原子比が目的のTi/(Ti+Zr)原子比より大きい(=0.5)仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム(第1の仮焼原料)を作製した。
次に、炭酸カルシウムとジルコニアを湿式混合し、乾燥後仮焼し、仮焼物を粉砕して仮焼原料ジルコン酸カルシウム(第2の仮焼原料)を作製した。但し、仮焼後の粉砕条件を変化させることにより、表1に示す比表面積をもった5種類の仮焼原料ジルコン酸カルシウムを作製した。
第1及び第2の仮焼原料を混合することで、仮焼原料ジルコン酸カルシウムと仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムからなるセラミックス原料のサンプル1〜5を作製した。仮焼原料の混合比は、このセラミックス原料を焼成した焼成品において、それぞれの原子比が、(Ca+Sr)/(Zr+Ti)=1.00,Ti/(Ti+Zr)=0.40,Ca/(Ca+Sr)=0.99となるようにした。
また従来例として、炭酸ストロチウム、炭酸カルシウム、チタニア、ジルコニアを湿式混合し、乾燥後仮焼し、仮焼物を粉砕することで仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムからなるサンプル6を作製した。このサンプル6においても仮焼原料を焼成したセラミックスにおいて原子比が(Ca+Sr)/(Zr+Ti)=1.00,Ti/(Ti+Zr)=0.40,Ca/(Ca+Sr)=0.99となるようにした。
さらに、サンプル1〜6のセラミックス原料に、それぞれSi−Li系焼結助剤とMnOを添加した。
【0027】
サンプル1〜6のセラミックス原料を用い、次に記載する作製過程によって、積層セラミックスコンデンサを作製した。サンプル1〜6のセラミックス原料にそれぞれ、バインダー、可塑剤を添加してボールミルで粉砕混合してこれらの添加物をコンデンサ用セラミックス原料に分散させた後にスラリーを作製し、そのスラリーを脱泡後、ロールコーターにてセラミックスグリーンシートに成形した。セラミックスグリーンシートは焼き上げた際に、厚さ4.0μmになるようにした。セラミックスグリーンシートにニッケル内部電極ペーストを印刷し、セラミックスグリーンシートを所望の形状に打ち抜き、打ち抜いたセラミックスグリーンシートを複数枚積層させた。積層体をプレスして圧着させた後、チップサイズが縦横3.2mm×1.6mmになるようにカットした。次に、1250℃の条件下で2時間焼成を行い、その後湿式バレル研磨によってコンデンサチップの角を取り、コンデンサチップの端面から内部電極を露出させた。更に銅外部電極ペーストをコンデンサチップに塗布、焼成することによって外部電極を形成して、サンプル1〜6の積層セラミックスコンデンサの作製を行った。
また、焼結密度計算の為には、電極を印刷しないシートのみで積層体を作製した試験用サンプル1〜6を用いた。
【0028】
次に、上記サンプル1〜6を用いて、焼結密度、構造欠陥、高温負荷試験、耐湿負荷試験の4項目について評価を行った。
焼結密度は、前記焼結密度計算用のサンプル1〜6(電極を有しないもの)を用いて、その重量と体積を計測して重量/体積を計算した。
構造欠陥については、サンプル1〜6のセラミックスコンデンサをそれぞれ100個研磨し、各研磨面における内部故障の有無を調べて評価した。
高温負荷試験については、試験用のサンプル1〜6を周囲温度150℃、印加電圧200Vの条件下に1000時間おき、その後故障率を試験し評価した。
耐湿負荷試験については、試験用のサンプル1〜6を周囲温度70℃、湿度95%RH、印加電圧50Vの条件下で1000時間おき、その後、故障率を試験し評価した。
【0029】
前記の試験結果を、表1に記載する。
【0030】
【表1】
Figure 0004614595
【0031】
まず、焼結密度についてであるが、従来法で作製したサンプル6は焼結密度が仮焼原料ジルコン酸カルシウムの比表面積の小さいサンプル4、5と同程度であり、比表面積の大きいサンプル1、2と比べると焼結密度が低い。特に、サンプル1〜5からわかるように、後添加する仮焼原料ジルコン酸カルシウムの比表面積が大きくなるにつれ、焼結密度の値が大きくなっている。これは、混合する仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムと仮焼原料ジルコン酸カルシウムの比表面積の違い、すなわち仮焼原料の粉末粒径の違いが原因である。仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムに比べ粉末粒径の小さな仮焼原料ジルコン酸カルシウムが仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムの粉末の隙間に入り焼結性を高めているものと推測される。それゆえに、仮焼原料ジルコン酸カルシウムの比表面積が大きくなるにつれて焼結密度の値が大きくなっている。
次に、構造欠陥の試験については、低焼結密度のサンプル3〜5において欠陥がみられた。この欠陥は低焼結性のためバレル研磨の衝撃で内部破壊が発生したためである。
次に、高温負荷試験については、低焼結密度のサンプル3〜5において初期故障が多く見られた。特に、焼結密度が4.28g/cm以下のサンプル4、5おいては、従来法のサンプル6で見られた故障率2%と同じ故障率が結果として得られたが、焼結密度4.33g/cm以上のサンプル1、2においては、故障は発見されなかった。これは、焼結密度向上に伴う内部欠陥の減少によるものである。
次に、耐湿負荷試験については、低焼結密度のサンプル3〜5において初期故障が多く見られた。特に、焼結密度が4.28g/cm以下のサンプル4、5においては、従来法のサンプル6で見られた故障率2%と同じ故障率が結果として得られたが、焼結密度4.33g/cm以上のサンプル1、2においては、故障が発見されなかった。これは、焼結密度の向上に伴う内部欠陥の減少が耐湿性の向上につながったものである。
【0032】
(実施例2)
仮焼原料ジルコン酸ストロンチウム(第3の仮焼原料)と仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウム(第1の仮焼原料)及び比表面積が8.0m/gの仮焼原料ジルコン酸カルシウム(第2の仮焼原料)を混合したセラミックス原料を作製した。ここで、チタン酸ジルコン酸カルシウムとしてはTi/(Ti+Zr)の原子比が、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95および1.00のものを用いて、ジルコン酸ストロンチウムやジルコン酸カルシウムと混合したものをそれぞれサンプル1、7〜12とした。ここで仮焼原料ジルコン酸カルシウムは炭酸カルシウムとジルコニアから、仮焼原料ジルコン酸ストロンチウムは炭酸ストロンチウムとジルコニアから、仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムは炭酸カルシウムとチタニア及びジルコニアからそれぞれ湿式混合、乾燥、仮焼、粉砕の過程を経て作製した。
【0033】
上記セラミックス原料は、本焼成後のセラミックスの原子比がそれぞれTi/(Ti+Zr)=0.4、Sr/(Ca+Sr)=0.01となるように混合した。このセラミックス原料にSi−Li系焼結助剤とMnOを添加した。
【0034】
この後は、実施例1と同じ工程でシート厚4.0μm、縦横3.2mm×1.6mmの試験用の積層セラミックスコンデンサを作製した。また、実施例1と同様に内部電極ペーストを印刷しない焼結密度計算用のサンプル1、7〜12も作製した。
【0035】
次に、サンプル1、7〜12を用いて、高温負荷試験と焼結密度の2項目について評価を行った。
高温負荷試験については、試験用のサンプル1、7〜12を周囲温度150℃、印加電圧200Vの条件下で1000時間おき、その後、故障率を試験し評価した。
焼結密度は前記焼結密度計算用のサンプル1、7〜12(電極を有しないもの)を用いてその重量と体積を計測して重量/体積を計算した。
【0036】
前記の試験結果を、表2に記載する。
【0037】
【表2】
Figure 0004614595
【0038】
まず、焼結密度については、仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムにおけるTi/(Ti+Zr)の原子比にかかわらず焼結密度の低下は認められなかった。これは、粉末粒径の小さい仮焼原料ジルコン酸カルシウムの後添加の効果であると考えられる。
次に、高温負荷試験については、比較例のサンプル12は3%の故障率であった。しかし、本発明の製造方法によって作製されたサンプル1、7〜11においては、仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムの原子比Ti/(Ti+Zr)が0.95のサンプル11では故障率が1%となり、更に仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムの原子比Ti/(Ti+Zr)が0.90以下のサンプル1、7〜10では故障が確認されなかった。
サンプル11、12においては、仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムのTi/(Ti+Zr)の原子比が大きくなりすぎたためTi過多となり、セラミックス原料中でのTiの偏在が大きくなるためと推測される。これに対しサンプル1、7〜10においては、仮焼原料チタン酸ジルコン酸カルシウムにおけるTiの含有率が適度なため、仮焼の段階でTiの残存度が低くなり、その結果焼成品におけるTiの残存が少なくなり、高温負荷寿命が向上したと推測される。
【0039】
【発明の効果】
請求項1におけるセラミックス原料を用いることで、セラミックス焼成品の焼結性が高くなり、それゆえ耐衝撃性と耐湿性が高くなる。更に、チタニアのような高温負荷寿命を短くする成分が残存しにくくなっており、このセラミックス原料を用いた焼成品であるセラミックスコンデンサの高温負荷寿命が長くなる。
【0040】
請求項2におけるセラミックス原料を用いると焼結性を高め、この原料を用いて作製したセラミックス焼成品の耐衝撃性及び耐湿性が向上する。更に、チタニアのような高温負荷寿命を短くする成分が残存しにくくなっており、このセラミックス原料を用いた焼成品であるセラミックスコンデンサの高温負荷寿命は長くなる。
【0043】
請求項に記載のセラミックスコンデンサは、焼結性が良好で、耐衝撃性と耐湿性に優れ、又高温負荷特性も良好となり、内部電極の連続性低下による静電容量低下が起こりにくくなる。

Claims (3)

  1. チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムまたはチタン酸ジルコン酸カルシウムを得るためのセラミックス原料であって、
    Ti/(Ti+Zr)の原子比が、本焼成後のTi/(Ti+Zr)の原子比よりも大きなチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムからなる第1の仮焼原料と、ジルコン酸カルシウムからなる第2の仮焼原料とを混合してなり、
    前記第1の仮焼原料であるチタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウム又はチタン酸ジルコン酸カルシウムにおけるTi/(Ti+Zr)の原子比が、0.9以下であり、
    前記第2の仮焼原料であるジルコン酸カルシウムの比表面積が7.0m /g以上であり、
    前記第1の仮焼原料の粒径が前記第2の仮焼原料の粒径よりも大きいことを特徴とするセラミックス原料。
  2. チタン酸ジルコン酸カルシウムストロンチウムを得るためのセラミックス原料であって、
    Ti/(Ti+Zr)の原子比が、本焼成後のTi/(Ti+Zr)の原子比よりも大きなチタン酸ジルコン酸カルシウムからなる第1の仮焼原料と、ジルコン酸カルシウムからなる第2の仮焼原料と、チタン酸ストロンチウム又はジルコン酸ストロンチウムのうち少なくとも一方からなる第3の仮焼原料とを混合してなり、
    前記第1の仮焼原料であるチタン酸ジルコン酸カルシウムにおけるTi/(Ti+Zr)の原子比が、0.9以下であり、
    前記第2の仮焼原料であるジルコン酸カルシウムの比表面積が7.0m /g以上であり、
    前記第1及び第3の仮焼原料の粒径が前記第2の仮焼原料の粒径よりも大きいことを特徴とするセラミックス原料。
  3. 請求項1又は2に記載のセラミックス原料にSi−Li系焼結助剤とMnOを添加したコンデンサ用セラミックス原料を用いて成形された未焼成品を焼成することにより製造されたセラミックスコンデンサ。
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