JP4614485B2 - 誘電体共振器 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波、ミリ波等の高周波領域において、高いQ値を有する誘電体磁器組成物に関するものであり、例えば、マイクロ波やミリ波などの高周波領域において使用される種々の共振器用材料やMIC(Monolithic IC)用誘電体基板材料、誘電体導波路用材料や積層型セラミックコンデンサ−等に用いることができる誘電体磁器組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
誘電体磁器は、マイクロ波やミリ波等の高周波領域において、誘電体共振器、MIC用誘電体基板や導波路等に広く利用されている。そこに要求される特性として(1)誘電体中では波長が1/εr1/2に短縮されるので、小型化の要求に対して比誘電率が大きい事、(2)高周波での誘電損失が小さい事、すなわち高Q値であること、(3)共振周波数の温度に対する変化が小さいこと、即ち、比誘電率の温度依存性が小さく且つ安定であること、以上の3つの特性が主として挙げられる。
【0003】
従来、この種の誘電体磁器としては、例えば、Ba(Mg1/3Ta2/3)O3系材料(特公昭59−23048号)、Ba(Zn1/3Ta2/3)O3系材料(特公昭59−48484号)、Ba(Zn1/3Nb2/3)O3系材料(特公昭53−35453号)、Ba(Mg1/3Nb2/3)O3系材料(特開昭53−35345)などの酸化物磁器材料が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】
しかしながら、最近では使用する周波数領域がさらに高く成ってきており、これに対応してさらに高いQ値を持つ材料が要求されている。これから見て、従来の誘電体磁器組成物は、無負荷Qが小さかったり、比誘電率が小さい為、共振器にしたときの形状が大きくなり、また、温度係数が大きかったりして、マイクロ波周波数帯で使用するには、いずれかに難点があり、実際の使用においては不都合が多い。また、これらの材料は、焼成温度が高く、焼成コストがかかり、さらに、材料自体も、Ta、Nbを含む為高価であることから、コストが高く、市場に出回り難いと言った問題があった。
【0005】
本発明は、上記の欠点に鑑み案出されたもので、比誘電率が大きく、高Q値で、比誘電率の温度依存性が小さく且つ安定であり、さらに安価な材料での誘電体磁器組成物を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、誘電体磁気組成物と、一対の入出力端子と、を有し、前記入出力端子間に高周波信号を印可して、前記誘電体磁気組成物を所望の周波数で共振させる誘電体共振器であって、前記誘電体磁気組成物は、1GHz換算のQ値が74000以上であり、金属元素として少なくともLa、Al、Sr及びTiを含有し、これらの金属元素のモル比による組成式をaLa2O3・bAl2O3・cSrO・dTiO2と表したとき、前記a、b、c、及びdが
0.0954≦a≦0.1596
0.0954≦b≦0.1596
0.3903≦c≦0.5516
0.2129≦d≦0.3546
0.8181≦b/a≦1.2222
0.4285≦d/c≦0.7500
(ただし、a+b+c+d=1)を満足する主成分100重量部に対して、Ba(Cu1/2W1/2)O3を主結晶相とする化合物を0.0001〜3.0重量部含有することを特徴とする誘電体共振器を提供する。
【0009】
本発明は、上記構成により、比誘電率εrが大きく、高Q値であり、共振周波数の温度係数τfの絶対値が小さく、且つ、εr、Q、τfの値を安定に制御でき、さらに、Ta、Nb等の高価な元素を含む材料を使う事無く、安価な誘電体磁器組成物及び誘電体共振器となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の誘電体共振器は、金属元素として少なくともLa、Al、Sr及びTiを含有する複合酸化物を主成分組成物とする高周波用誘電体磁器組成物を備えている。
この誘電磁気組成物では、かかる主成分組成物における前記金属元素のモル比による組成式をaLa2O3・bAl2O3・cSrO・dTiO2と表したとき、前記a、b、c、dが
0.0954≦a≦0.1596
0.0954≦b≦0.1596
0.3903≦c≦0.5516
0.2129≦d≦0.3546
0.8181≦b/a≦1.2222
0.4285≦d/c<0.7500
(ただし、a+b+c+d=1)であることが重要である。
これらのa、b、c、dを上記の範囲に限定した理由は以下の通りである。
【0011】
即ち、0.0954≦a≦0.1596としたのは、a<0.0954の場合は、共振周波数の温度係数τfが正に大きくなり、共振周波数の温度係数τfの絶対値が30を大きく越えてしまうからであり、a>0.1596の場合は、τfが負に大きくなり、その絶対値が30を越えてしまうからである。特に0.1211≦a≦0.1369の範囲が好ましい。
【0012】
また、0.0954≦b≦0.1596としたのは、b<0.0954の場合は、共振周波数の温度係数τfが正に大きくなり、τfの絶対値が30を大きく越え、b>0.1596の場合は、共振周波数τfが負に大きくなり、τfの絶対値が30を越えてしまうからである。bは、特に0.1211≦b≦0.1369の範囲が好ましい。
【0013】
さらに、0.3903≦c≦0.5516としたのは、C<0.3903の場合は、共振周波数の温度係数τfが負に大きくなり、τfの絶対値が30を大きく越えてしまうからである。C>0.5516の場合には、共振周波数の温度係数τfが正に大きくなり、その絶対値が30を越えてしまうからである。特に、0.4284≦C≦0.4698の範囲が好ましい。
【0014】
また、0.2129≦d≦0.3546としたのは、d<0.2129の場合は、共振周波数の温度係数τfが負に大きくなり、その絶対値が30を越えてしまうからであり、d>0.3546の場合は、共振周波数の温度係数τfが正に大きくなり、その絶対値が30を越えてしまうからである。特に、0.2759≦d≦0.3107が好ましい。
【0015】
さらに、0.8181≦b/a≦1.2222としたのは、b/a<0.8181の場合や、b/a>1.2222の場合には、Qfが大きく低下し、40000より低下するからである。特に、0.9602≦b/a≦1.1744が好ましい。
【0016】
また、0.4285≦d/c<0.7500としたのは、d/c<0.4285の場合は、比誘電率εrが小さくなり、d/c≧0.7500の場合には、τfが正に大きくなり、その絶対値が30を越えてしまうからである。特に0.6129≦d/c≦0.6949が好ましい。
【0017】
さらに、0.8181≦b/a≦1.2222であり、かつ0.4285≦d/c<0.7500としたのは、この範囲においてτfを0付近で調整できる。
【0018】
また、本発明は、上記主成分100重量部に対して、Ba(Cu1/2W1/2)O3を主結晶相とする化合物を0.0001〜3.0重量部含有させることによって、εrやτfを変化させずにQ値のみを向上させることができるのである。また、Ba(Cu1/2W1/2)O3を主結晶相とする化合物の含有量を0.0001〜3.0重量部としたのは、3.0重量部以上を越えるとQ値が極端に小さくなり、0.0001重量部より少ないとQfが低下するからである。さらに、上述した効果を奏する為には、Ba(Cu1/2W1/2)O3を主結晶相とする化合物の量を0.1〜1.0重量部とすることが望ましい。
【0019】
なお、Ba(Cu1/2W1/2)O3を主結晶相とする化合物の化学量論比は、定比組成だけではなく不定比組成であっても良い。例えば出発原料としてはBa(Cu0.45W0.51)O2.98、Ba(Cu0.55W0.48)O2.99、Ba1.03(Cu0.51W0.49)O3.01、Ba0.98(Cu0.48W0.52)O3.02が挙げられる。また、本発明の誘電体磁器組成物におけるBa(Cu1/2W1/2)O3の存在はX線回折法等により確認することができる。
【0020】
本発明の誘電体共振器が備える誘電体磁器組成物は、例えば、以下のようにして作製される。出発原料として、高純度の酸化ランタン、酸化アルミニウム、炭酸ストロンチウム、酸化チタンの各粉末を用いて、所望の割合となるように秤量後、純水を加え、混合原料の平均粒径が2.0μm以下となるまで10〜30時間、ジルコニアボール等を使用したミルにより湿式混合・粉砕を行う。この混合物を乾燥後、1000〜1300℃で2〜10時間仮焼し、さらに5重量%のバインダーを加えてから造粒し、得られた粉末を所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、押し出し成形等により任意の形状に成形後、1500〜1700℃の温度で1〜10時間大気中において焼成することにより得られる。
【0021】
本発明の誘電体共振器が備える誘電体磁器組成物では、La、Al、Sr、Tiの出発原料としては、酸化物以外に炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、水酸化物等のように、酸化性雰囲気での熱処理によって酸化物を生成し得る化合物を用いても良い。
【0022】
本発明においては、磁器中に不可避不純物として、Ca、Zr、Si、Ba等が混入する場合があるが、これらは、各々、または全部で、酸化物換算で0.1重量%程度混入しても特性上問題ない。
【0023】
本発明の誘電体共振器として、図1のTEモード型誘電体共振器の概略図を示した。図1の共振器は、金属ケ−ス1の両側に入力端子2及び出力端子3を形成し、これらの端子2、3の間に上記したような組成からなる誘電体磁器4を配置して構成される。このように、TEモ−ド型の誘電体共振器は、入力端子2からマイクロ波が入力され、マイクロ波は誘電体磁器4と自由空間との境界の反射によって誘電体磁器4内に閉じこめられ、特定の周波数で共振を起こす。
【0024】
この信号が出力端子3と電磁界結合し、出力される。また、図示しないが、本発明の誘電体磁器組成物TEMモ−ドを用いた同軸形共振器やストリップ線路共振器、TMモ−ドの誘電体磁器共振器、その他の共振器に適用しても良いことは勿論である。
【0025】
【実施例】
出発原料として高純度の酸化ランタン(La2O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酸化チタン(TiO2)の各粉末を用いて、それらを表1および表2となるように秤量後、純水を加え、混合原料の平均粒径が2.0μm以下となるまで、ミルにより約20時間湿式混合、粉砕を行った。
【0026】
この混合物を乾燥後、1200℃で2時間仮焼した。この仮焼粉100重量部に対し、Ba(Cu1/2W1/2)O3を表1、2、3および4に示す量を添加後、純水を加え、混合原料の平均粒径が2.0μm以下となるまで、ミルにより約20時間湿式混合粉砕を行った。粉砕後のスラリーを乾燥後、さらに約5重量%のバインダーを加えてから造粒し、得られた粉末を約1ton/cm2の圧力で円板状に成形し、1500〜1700℃の温度で2時間大気中において焼成した。
【0027】
得られた磁器の円板部を平面研磨し、アセトン中で超音波洗浄し、150℃で1時間乾燥した後、円柱共振器法により測定周波数3.5〜4.5GHzで比誘電率εr、Q値、共振周波数の温度係数τfを測定した。Q値は、マイクロ波誘電体において一般に成立するQ値×測定周波数f=一定の関係から1GHzでのQ値に換算した。
【0028】
共振周波数の温度係数τfは、−40〜85℃の範囲で測定した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
表1、2、3および4から明らかなように、本発明の範囲外の誘電体では比誘電率又はQ値が低いか、あるいはτfの絶対値が30を超えていた。
【0034】
これらに対し、本発明の範囲内の誘電体は、Q値が70000以上、τfが±30(ppm/℃)以内の優れた誘電特性が得られることがわかった。
【0035】
さらに実験した結果、Ba(Cu1/2W1/2)O3の代わりにBa(Cu0.45W0.51)O2.98、Ba(Cu0.55W0.48)O2.99、Ba1.03(Cu0.51W0.49)O3.01、Ba0.98(Cu0.48W0.52)O3.02など化学量論比が不定比組成の化合物を添加しても上記実施例と同様に、本発明により得られた誘電体はQ値が70000以上、τfが±30(ppm/℃)以内の優れた誘電特性が得られた。
【0036】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、金属元素として少なくともLa、Al、Sr、Tiを含有し、これらの金属元素のモル比による組成式をaLa2O3・bAl2O3・cSrO・dTiO2と表した時、前記a、b、c、dが、
0.0954≦a≦0.1596
0.0954≦b≦0.1596
0.3903≦c≦0.5516
0.2129≦d≦0.3546
0.8181≦b/a≦1.2222
かつ0.4285≦d/c<0.7500
(ただし a+b+c+d=1)
と表される組成範囲内に調整し、この主成分にBa(Cu1/2W1/2)O3を主結晶相とする化合物を添加することで、高周波領域において比誘電率εrが30付近で高いQ値を有するとともに、共振周波数の温度係数τfを0付近に、安定して制御することができる。
【0037】
また、Ta、Nb等を構成元素とする従来の誘電体磁器組成物より安価な材料を提供することができる。
【0038】
さらに、Ta、Nbで構成されている既存材は、高温で、長時間焼成温度を保持しなければ、結晶の規則化が起こらない為、焼成コストがかかっていたが、本発明の材料であれば、焼成温度の保持時間も2〜10時間ですみ、焼成コストが大幅に削減できる。
【0039】
これにより、本発明の誘電体磁器組成物は、例えば、自動車電話、コードレステレホン、パーソナル無線機、衛星放送受信機等の装置において、マイクロ波やミリ波領域において使用される共振器用材料やMIC用誘電体基板材料、誘電体導波線路、誘電体アンテナ、その他の各種電子部品等に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘電体共振器を示す説明図である。
【符号の説明】
1.金属ケ−ス
2.入力端子
3.出力端子
4.誘電体磁器
Claims (1)
- 誘電体磁気組成物と、一対の入出力端子と、を有し、前記入出力端子間に高周波信号を印可して、前記誘電体磁気組成物を所望の周波数で共振させる誘電体共振器であって、
前記誘電体磁気組成物は、1GHz換算のQ値が74000以上であり、
金属元素として少なくともLa、Al、Sr及びTiを含有し、これらの金属元素のモル比による組成式をaLa2O3・bAl2O3・cSrO・dTiO2と表したとき、前記a、b、c、及びdが
0.0954≦a≦0.1596
0.0954≦b≦0.1596
0.3903≦c≦0.5516
0.2129≦d≦0.3546
0.8181≦b/a≦1.2222
0.4285≦d/c≦0.7500
(ただし、a+b+c+d=1)を満足する主成分100重量部に対して、Ba(Cu1/2W1/2)O3を主結晶相とする化合物を0.0001〜3.0重量部含有することを特徴とする誘電体共振器。
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