JP4613278B2 - 一括投入硬貨の分離装置、及び硬貨取扱装置 - Google Patents
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特開平8−221638号公報には、投入口からバラで一括投入した複数の硬貨を分離通路を落下させる過程で、ガイド壁面とコンベアベルトとの間の狭いスペースを通過させることによって1枚ずつに分離するようにした硬貨処理装置が開示されている。
しかし、この従来例にあっては、コンベアベルトと送りローラを分離通路に沿って直列に配置しているため、トータルの搬送経路が増大して大型化を招く原因となるばかりでなく、高さ方向寸法も増大する。
また、特開2001−155212公報には、入金皿に一括投入された複数の硬貨を上面のベルト面で受けて硬貨を寝かせた状態で斜め上向きに搬送する搬送ベルトと、スイングアームにより支持されたリバースローラとの協働によって、ベルト面上の硬貨を1枚ずつに分離する硬貨処理装置が開示されている。
しかし、この従来例は開口径の大きい投入口を設けるタイプであり、且つ複数の硬貨の重量を上方へ搬送するだけの駆動力も必要となるため、硬貨取扱装置本体の構造、レイアウトによっては、このような硬貨処理装置を採用できないことも多々ある。更に、硬貨投入のときから、投入硬貨の確定までに要する時間を短くすることが要求される場合、搬送ベルトの駆動速度を上げるにも限界が生じてくる。また、搬送ベルト上の重なった硬貨をリバースローラによって分離する構成は、分離精度の信頼性が今ひとつ低いという問題もある。
このようなところから、本出願人は、重ねた状態で縦穴から一括縦投入された複数枚(最大3枚)の硬貨を縦姿勢のまま搬送経路に沿って転動させる過程で、徐々に狭くなる搬送経路と分離用のゴムローラを利用して1枚ずつに分離する分離装置を開発したが、重なった状態で転動する径の異なる複数の硬貨を1枚ずつに分離することは容易でなく、硬貨詰まりが発生して運用に支障が生じることがあった。特に、ゴムローラのバランス設定如何では、硬貨が停留を起こし詰まりを発生させるきっかけになる。仮にゴムローラを偏心構造としても完全な対策とはなり得なかった。例えば、搬送経路手前側を硬貨2枚厚以上のガイド幅にすると共に、奥側は2枚厚より狭いガイド幅にして分離効率を高める場合、複数の硬貨の位置関係等によってはゴムローラによる分離がうまく行かず、狭い部分に於いて停滞、詰まりが発生し易かった。更に、外径が異なる硬貨を重ねると、2枚の大径硬貨の内側に小径硬貨がはまりこむサンドイッチ現象が発生し、この状態にある複数の硬貨に対して分離力を作用させても分離ができず、停留、詰まりが発生していた。
請求項2の発明は、請求項1において、前記第2の側壁には、前記分離ベルトの上流側反転部よりも上流位置から前記送りローラの直前位置まで、ガイド溝内を転動する硬貨側面と第2の側壁との接触抵抗を低減するための退避領域が形成されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2において、前記退避領域が前記第2の側壁面から退避する幅は、最小厚硬貨の厚さの1/2以下に設定されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1、2又は3において、前記分離ベルトの上流側反転部と第2の側壁との間の間隔は、最大厚硬貨2枚分以上であって最小厚硬貨3枚分未満に設定されていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1、2、3、又は4において、前記底板と前記第1の側壁と前記分離ベルト機構は第1のユニットを構成し、前記第2の側壁及び送りローラは第2のユニットを構成し、第1のユニットが第2のユニットに対して開閉自在に構成されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の一括投入硬貨の分離装置を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、底板上に第2の側壁に沿って設けたガイド溝と、第2の側壁に設けた退避領域との協働によって、他の硬貨が第1の硬貨に競合してガイド溝内に嵌合することを防止できるので、硬貨詰まりの発生率が大幅に低減する。
請求項3の発明は、退避領域の退避幅を必要最小限に設定しているので、第1の硬貨が第2の側壁側に過剰に傾倒したり、他の硬貨の入り込む余地を残すことがなくなり、硬貨詰まりの発生を大幅に低減できる。
請求項4の発明では、分離ベルトの上流側反転部と第2の側壁との間の間隔は、最大厚硬貨2枚分に設定されているので、硬貨投入口から3枚以上の硬貨が一括縦投入されてきたとしても、分離ベルトの分離走行面と第2の側壁(送りローラ)との間で形成される分離の為の搬送スペース内には硬貨2枚のみが進入できる状態となっている。従って、最終的な1枚への分離効率を更に高めることができる。
請求項5の発明では、底板と第1の側壁と分離ベルト機構から成る第1のユニットと、第2の側壁及び送りローラから成る第2のユニットを、互いに開閉自在に構成しているので、硬貨詰まり時の処理が容易となる。
請求項6の発明によれば、本発明の一括投入硬貨の分離装置をあらゆる硬貨取扱装置に適用することができる。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る一括投入硬貨の分離装置の内部構成を示す断面図、及びその右斜め側面図である。
この分離装置1は、矢印方向から重ねて一括縦投入される2枚以上の硬貨を受け入れる硬貨投入口2と、硬貨投入口2から一括縦投入された複数の硬貨を起立姿勢のまま搬送する過程で1枚ずつに分離する硬貨分離機構3と、を備えている。硬貨分離機構3によって1枚ずつに分離された硬貨Cは矢印方向に排出されて図示しない硬貨識別装置に供給される。
なお、ここでいう分離とは、硬貨同士の面方向での重なり(対向面同士の接触)を解消して一列に整列させることを指している。従って、搬送方向に整列された状態で硬貨の外周面同士が相互に接触していても、分離は完成する。
硬貨分離機構3は、下流へ向かうほど下向き傾斜することにより硬貨を起立姿勢で支持して下流へ移動させる底板11、及び底板11の幅方向両側端縁から夫々起立した第1及び第2の側壁21、22を備えた搬送経路10と、第1の側壁21に形成された開口から分離走行面31aを搬送経路10内に露出させるように所定の距離に亘って配置された無端状の分離ベルト31、及び分離ベルト31を張設して駆動する回転体32a、32bを備えたベルト機構30と、第2の側壁22に形成された開口から外周面の一部を搬送経路10内に露出させて分離された1枚の硬貨を下流側へ前進させる方向に回転すると共に、分離ベルト31の下流側反転部Lと対向する位置において分離ベルト31の分離走行面31aとの間に最大厚の硬貨1枚分の硬貨通過幅Aを形成する送りローラ40と、を備えている。
分離ベルト31は、2つの回転体32a、32bによってエンドレスに張設されて、硬貨を上流側に戻す逆送方向に回転駆動される。更に、搬送経路10内に位置する分離走行面31aは、下流へ向かうほど分離走行面の搬送経路内への突出量が漸増して硬貨通過幅を漸減させるように傾斜配置されている。つまり、下流側の回転体32bは、上流側(硬貨投入口側)の回転体32aの位置よりも搬送経路内側に偏位しており、下流側の回転体32bが形成する下流側の反転部L(ベルト面)と送りローラ40との間で形成される硬貨通過幅Aが最大厚の硬貨1枚分が通過できる幅(例えば、500円硬貨の厚さ1.8mmに対して1.9〜2.3mm)となるように設定している。この実施形態では、上流側の回転体32aが形成する上流側の反転部U(ベルト面)と第2の側壁22との間に形成される硬貨通過幅Bは最大厚の硬貨2枚分が通過でき且つ、最小厚の硬貨3枚は入らない幅(3.8〜4.2mm)となるように設定している。因みに図2(a)の最上流部における両側壁21、22間の間隔Cは硬貨3枚以上の間隔、例えば5.8mm程度である。
図3(b)にはガイド溝12の構成が示されており、その幅Dは1.9〜2.3mm、深さEは2.0〜5.0mm程度である。ガイド溝12は、分離対象となる硬貨1枚分を嵌合させ得る幅と、自立させ得る程度の深さを有する。
更に、第2の側壁22には、分離ベルト31の上流側反転部Uよりも上流側の位置から送りローラ40の直前位置まで、ガイド溝12内を転動する硬貨側面と第2の側壁22との接触抵抗を低減するための退避領域22aが形成されている。退避領域22aが第2の側壁面から退避する幅は、例えば最小厚硬貨の厚さの1/2に設定されている。このため、ガイド溝12内に嵌合して下流側へ転動しようとする硬貨の片側面が第2の側壁22と直接接触する面積が減少して接触抵抗を減少させてスムーズに移動させることが可能となる。
なお、退避領域22aの幅(退避量)を硬貨の1枚分の厚さに近い厚さに設定した場合には、ガイド溝12内に嵌合して送りローラ40へ向けて移動してくる硬貨の更に第2の側壁22側に他の硬貨が入り込む余地が残されるので、下流側反転部Lの硬貨1枚分のスペース内に2枚の硬貨が入り込もうとして詰まりが発生する。これに対して本発明では、退避領域22aの幅を最小厚の硬貨の1/2程度、或いはそれ以下にしているので、ガイド溝12内に嵌合して移動してくる硬貨の更に第2の側壁側に他の硬貨が入り込むスペースがなくなり、硬貨詰まりが防止される。
なお、退避領域22aは、ガイド溝12の全長に亘って平行に形成されている訳ではなく、分離ベルト31の上流側反転部Uよりも上流側の位置から始まっている。換言すれば、退避領域22aは、上流側反転部から始端している訳ではなく、少し上流側から始端している。
第1の硬貨C1から離脱した後の第2の硬貨C2は、幅が下流に向かうほど漸減する搬送経路を移動する過程で第2の側壁22寄りの底面に位置するガイド溝12内に落ち込み、先行する第1の硬貨と同じ経路を経て識別装置側へ落下してゆく。
第3の硬貨C3は第2の硬貨に続いて第2の側壁22と分離走行面31aとの間のテーパー状に漸減する搬送スペース内に入り込み、第2の硬貨と同様の挙動を経て搬送経路から排出されてゆく。
このようなスムーズな分離機能は例えば2枚の硬貨が重ねて投入された場合にも同様に発揮される。
また、硬貨1枚が投入された場合には、当該硬貨が第2の側壁22と分離走行面31aとの間の狭い搬送スペース内に進入した当初に、該硬貨下部がガイド溝12内に落ち込まない状態で底板11上を下流に進行したとしても、徐々に狭くなる搬送スペース内を進行する過程で、送りローラ40の手前側において必ずガイド溝12内に落ち込むのでスムーズに排出される。
このように第2の側壁側に位置する硬貨がいち早くガイド溝12内に入り込むパターンであれば、上記の如くスムーズな分離と排出が行われる。
これに対して、本発明では退避領域22aは、上流側反転部Uよりも最小径の硬貨1枚分よりも短い距離だけ上流側から始端しているに過ぎず、退避領域22aの始端部よりも更に上流側の壁面はフラット(非凹所状)なので、上記の如く第1の硬貨が退避領域を利用して第2の側壁側に傾倒したり、退避領域に乗り上げながら上流側反転部Uに入り込んでくる余地がなくなる。従って、第2の硬貨がガイド溝12内に先に落ち込もうとする競合状態が出現する余地がなくなる。従って、第2の側壁22側に位置する第1の硬貨を常に先行したガイド溝12内に落ち込ませることが可能となる。
なお、退避領域22aの始端部を上流側反転部Uの頂点と合致する位置、或いはそれよりも下流側に設けると、硬貨の搬送スペース内への入り込みが悪化することが判っている。
なお、底板11と第1の側壁21と分離ベルト機構30が構成する第1のユニット51に対して、第2の側壁22及び送りローラ40が構成する第2のユニット52を、開閉軸53を中心として互いに開閉自在に構成することにより、搬送経路内に詰まった硬貨の処理を容易にすることができる。
また、本発明の分離装置は、自動入出金機、自動販売機、自動両替機等の硬貨やメダルを取り扱う硬貨取扱装置一般に適用することができる。
Claims (6)
- 一括縦投入される2枚以上の硬貨を受け入れる硬貨投入口と、硬貨投入口から一括縦投入された複数の硬貨を起立姿勢のまま搬送する過程で1枚ずつに分離する硬貨分離機構と、を備えた硬貨分離装置において、
前記硬貨分離機構は、
下向き勾配を与えることにより硬貨を起立姿勢で支持して下流へ移動させる底板、及び該底板の両側端縁から夫々起立した第1及び第2の側壁を備えた搬送経路と、
第1の側壁に沿って配設され、分離走行面に接する硬貨を上流へ戻すように逆送すると共に下流へ向かうほど該分離走行面の搬送経路内への突出量が漸増して硬貨通過幅を漸減させるように傾斜配置された無端状の分離ベルト、及び該分離ベルトを張設して駆動する回転体を備えたベルト機構と、
第2の側壁に沿って配置され、硬貨を前進させる方向に回転すると共に、前記分離ベルトの下流側反転部と対向する位置において分離ベルトの分離走行面との間に硬貨1枚分の硬貨通過幅を形成する送りローラと、を備え、
前記底板上には前記第2の側壁に沿って、1枚の硬貨を嵌合させ且つ起立姿勢で下流へガイドする深さ及び幅を有したガイド溝が、底板の適所から前記送りローラと分離ベルトとの対向位置まで延長形成されたことを特徴とする一括投入硬貨の分離装置。 - 前記第2の側壁には、前記分離ベルトの上流側反転部よりも上流位置から前記送りローラの直前位置まで、ガイド溝内を転動する硬貨側面と第2の側壁との接触抵抗を低減するための退避領域が形成されていることを特徴とする請求項1記載の一括投入硬貨の分離装置。
- 前記退避領域が前記第2の側壁面から退避する幅は、最小厚硬貨の厚さの1/2以下に設定されていることを特徴とする請求項2記載の一括投入硬貨の分離装置。
- 前記分離ベルトの上流側反転部と第2の側壁との間の間隔は、最大厚硬貨2枚分以上であって、最小厚硬貨3枚分未満に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の一括投入硬貨の分離装置。
- 前記底板と前記第1の側壁と前記分離ベルト機構は第1のユニットを構成し、
前記第2の側壁及び送りローラは第2のユニットを構成し、第1のユニットが第2のユニットに対して開閉自在に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の一括投入硬貨の分離装置。 - 請求項1乃至4の何れか一項に記載の一括投入硬貨の分離装置を備えたことを特徴とする硬貨取扱装置。
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