JP4612967B2 - 車輌用エンジンの潤滑装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、潤滑用オイルをエンジンの潤滑個所に圧送するメインポンプと、クランク室から潤滑用オイルを汲み出して移送するスカベンジポンプを備えた車輌用エンジンの潤滑装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
潤滑オイル圧送用のメインポンプと、潤滑オイル移送用のスカベンジポンプを備えた車輌用エンジンの潤滑装置において、スカベンジポンプは、クランク室内の潤滑オイルを汲み上げてトランスミッション室等に移送することにより、クランク室内のオイルレベルを所定高さ以下(略0近く)に保つ役目を果たしている。クランク室底部に溜まる潤滑オイルは気泡が多く含まれている状態であるため、これを汲み上げるスカベンジポンプの容量は、従来、メインポンプの1.5倍程度となっている。
【0003】
潤滑オイル圧送用のメインポンプは、たとえばトランスミッション室底部に溜まっている潤滑オイルを、ストレーナ等を介して吸い込み、一定の圧力に加圧して、クランク軸周り及びシリンダヘッドの各潤滑個所に潤滑オイルを圧送すると共に、トランスミッション室内の潤滑個所にも潤滑オイルを圧送する役目を果たしている。
【0004】
メインポンプは、上記のように略全潤滑個所に潤滑オイルを圧送する役目を担っているため、全潤滑必要量を賄える能力が必要となっている。特にクランク軸内に形成されたオイル通路を介してクランクピンとコンロッドとの嵌合部に潤滑オイルを圧送する場合には、遠心力に抗する油圧を発生させる必要があり、そのためトランスミッション室へのオイル通路に絞りを設ける等して上記油圧を低下させない工夫がなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
(1)メインポンプのみでエンジンの全潤滑個所に潤滑オイルを供給する構成では、クランク軸周りへ圧送するための油圧を保ちながら、トランスミッションにも充分な油量を供給できるようにしなければならず、大型のメインポンプが必要となり、駆動力も大きくなるため、パワーロスも大きくなる。
【0006】
(2)しかも、メインポンプの大型化に対応してスカベンジポンプも大型化せざるを得なくなり、エンジンの大型化が避けられない。
【0007】
(3)スカベンジポンプによりクランク室底部から汲み上げられる潤滑オイルは、前述のように気泡が多く含まれているが、この潤滑オイルを直接トランスミッション室に戻しているので、メインポンプは気泡の多く含まれた潤滑オイルを吸い込んで、各潤滑個所に圧送することになり、摺動面のキャビテーション腐蝕や摩耗の発生の原因になる可能性がある。
【0008】
【発明の目的】
メインポンプの負担を減じてパワーロスを小さくすると共に、メインポンプ及びスカベンジポンプの小型化並びにエンジンの小型化を図ることである。また、トランスミッション室に戻される潤滑オイル内の気泡を分離することにより、メインポンプによる潤滑性能を向上させることも目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本願請求項1記載の発明は、トランスミッション室の下部に貯留された潤滑オイルを汲み上げ、クランクケース内の潤滑用メイン油路を経てエンジンの各潤滑個所に圧送するメインポンプと、クランク室から潤滑オイルを汲み出して移送するスカベンジポンプを備えた車輌用エンジンの潤滑装置において、前記クランク室と前記トランスミッション室とを隔壁により仕切り前記トランスミッション室の端壁により前記トランスミッション室から仕切られたオイル貯留室を形成し、前記スカベンジポンプの吐出部を前記オイル貯留室に連通し、トランスミッション軸の軸芯に形成されたトランスミッション潤滑用のオイル通路を前記オイル貯留室に開口し、前記オイル貯留室の潤滑用オイルを、前記トランスミッション軸のオイル通路を介してトランスミッションの潤滑個所に供給するようにしている、ことを特徴としている。
【0010】
これにより、メインポンプの負担が軽減され、パワーロスを小さくできると共にメインポンプを小型化でき、これに伴ってスカベンジポンプも小型化でき、エンジン全体の小型化を達成できる。また、オイル貯留室に一旦貯留された潤滑オイルは、トランスミッション軸の回転による遠心力でトランスミッション軸周りの潤滑個所に供給されるので、スカベンジポンプで吐出される潤滑オイルをトランスミッションの強制潤滑に利用しながらも、スカベンジポンプ自体はオイル圧送用とする必要性はなく、これによってもパワーロスを防ぐことができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車輌用エンジンの潤滑装置において、トランスミッション室の軸芯方向の一方側にクラッチを配置し、他側にオイル貯留室を配置したことを特徴としている。
【0012】
これにより、トランスミッション室周りの空スペースを有効に利用でき、エンジンのコンパクト化を達成することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の車輌用エンジンの潤滑装置において、オイル貯留室内に、クラッチレリーズ操作用のロッドを支持するボス部を配置してあることを特徴としている。
【0014】
これにより、オイル貯留室内の潤滑オイルにより上記ロッドとボス部との嵌合部を直接潤滑でき、円滑なロッド摺動を確保することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに一つに記載の車輌用エンジンの潤滑装置において、前記オイル貯留室には出口孔を形成し、前記スカベンジポンプから吐出されて一旦オイル貯留室に貯留された潤滑オイルを、前記出口孔を介してトランスミッション室に戻すようにしている。
【0016】
これにより、気泡を含むクランク室内の潤滑オイルは、オイル貯留室で一旦貯留されることにより気液分離され、気泡の少ない状態でトランスミッション室に戻され、メインポンプで吸い込まれて各潤滑個所に供給されることになり、メインポンプによる潤滑性能が向上し、摺動面のキャビテーション腐蝕や摩耗の発生を防ぐことができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに一つに記載の車輌用エンジンの潤滑装置において、オイル貯留室とトランスミッション室の間に1個または複数個の中間オイル室を形成し、オイル貯留室の潤滑オイルを、出口孔及び中間オイル室を介してトランスミッション室に戻すようにしており、これにより、複数段階で気液分離が行なわれ、気液分離効果が一層向上する。
【0018】
【発明の実施の形態1】
[トランスミッションの構造]
図1は本願発明を適用した自動二輪車用エンジンのトランスミッション室の水平断面図(図2のI-I断面図)であり、クランクケース1の後部にトランスミッション室3が一体に形成されており、該トランスミッション室3と前側のクランク室2の間は隔壁5により仕切られている。
【0019】
トランスミッション室3には入力側及び出力側のトランスミッション軸7,8が前後に間隔を置いて平行に配置されており、各トランスミッション軸7,8の外周には、変速ギヤ群G1、G2の各変速ギヤが、回転自在に嵌合しあるいはスプライン嵌合しており、シフトアームの操作により摺動式変速ギヤ10,11,12を軸方向に摺動することにより、変速ギヤ間のドグクラッチ機構を断続し、所望の変速段位に切り換えることができるようになっている。
【0020】
トランスミッション室3の軸芯方向の一端壁、たとえば図1の左端壁15には第1、第2のクラッチカバー16,17が順次固着されることによりクラッチ室18が形成されており、該クラッチ室18内に多板摩擦式クラッチ19が配置されている。トランスミッション室3の右端壁20には第1、第2カバー21,22が順次固着されている。トランスミッション室3の右端壁20と第1カバー21及び一部の第2カバー22の間には、トランスミッション室3から仕切られた中間オイル室3aが形成され、第1カバー21と第2カバー22の間には、中間オイル室3aから仕切られたオイル貯留室25が形成されている。
【0021】
入力側トランスミッション軸7の左端部は、トランスミッション室3の左端壁15に軸受26を介して回転自在に支持されると共にクラッチ室18に延び出し、前記クラッチ19が取り付けられている。入力ギヤ27は図示しないエンジン側の出力ギヤに噛み合っており、また、スタータに連動連結する始動用のアイドルギヤ28aにワンウエイクラッチ28を介して連結している。入力側トランスミッション軸7の右端部は、トランスミッション室3の右端壁20に軸受29を介して回転自在に支持されると共に中間オイル室3aを通過し、第1カバー21の支持孔にシール31を介して嵌合しており、右端面が前記オイル貯留室25に臨んでいる。
【0022】
出力側トランスミッション軸8の左端部はトランスミッション室3の左端壁15に軸受30を介して回転自在に支持されており、出力側トランスミッション軸8の右端部は、トランスミッション室3の右端壁20に軸受33を介して回転自在に支持されると共に中間オイル室3aを通過し、第1カバー21の支持孔にシール32を介して嵌合しており、右端面が前記オイル貯留室25に臨んでいる。
また、中間オイル室3a内には出力ギヤ35が固着されている。
【0023】
[クラッチの構造]
クラッチ19は、周知の多板摩擦式クラッチであり、入力ギヤ27に結合されたクラッチケース40と、入力側トランスミッション軸7に固着されたハブ41と、該ハブ41とクラッチケース40の間に配置された多数のクラッチプレート及び摩擦板からなる摩擦板仕組44と、クラッチばね45により右方に付勢されて上記摩擦板仕組44を挟圧するプレッシャプレート46等から構成されており、プレッシャプレート46にはレリーズロッド47が係合し、該レリーズロッド47には左方突出状にプル突起48が形成され、該プル突起48を図示しない操作アクチュエータで左方に引くことにより、プレッシャプレート46を左方に移動し、クラッチ19をレリーズするようになっている。
【0024】
[潤滑装置の構造]
図1において、入力側トランスミッション軸7の軸芯には軸芯方向に貫通するオイル通路51が形成され、オイル通路51の右端は前記オイル貯留室25に開口し、オイル通路51の左端は前記レリーズロッド47が摺動自在に嵌合することにより閉塞され、オイル通路51の途中には、前記変速ギヤ群G1を構成する各変速ギヤ、軸受29及び入力ギヤ27の嵌合部分にそれぞれ連通する径方向の油孔52が形成されている。
【0025】
出力側トランスミッション軸8の軸芯にも軸芯方向に貫通するオイル通路53が形成されており、オイル通路53の右端は前記オイル貯留室25に開口し、左端部は栓54により閉塞されている。オイル通路53の途中には、前記変速ギヤ群G2を構成する各変速ギヤの嵌合部分にそれぞれ連通する径方向の油孔55が形成されている。
【0026】
図2は図1のII-II断面図であり、入力側トランスミッション軸7はオイル貯留室25の上下方向中間部よりやや下寄りに位置し、出力側トランスミッション軸8は入力側トランスミッション軸7よりも上方に位置しており、オイル貯留室25の上端部には第1カバー21を軸芯方向に貫通する出口孔(オーバーフロー孔)57が形成され、出口孔57の下端は出力側トランスミッション軸8のオイル通路53の上端より高く位置している。
【0027】
オイル貯留室25の底壁には管継手ボルト58により潤滑オイルパイプ60の一端部が接続しており、該潤滑オイルパイプ60は前下方へ延び、クランクケース1の前記隔壁5内に形成されたオイル通路61の右端出口に接続している。該オイル通路61は軸芯方向と平行に左方へ延び、仮想線で示すスカベンジポンプ64の吐出部に連通している。スカベンジポンプ64は、たとえば図1において、トランスミッション室3の左端壁15の前端部近傍位置(矢印X1付近)に配置されている。
【0028】
図3は図2のIII-III断面図であり、前記第1カバー21に形成された出口孔57は中間オイル室3aに連通しており、中間オイル室3aの下部は、トランスミッション室3の右端壁20に形成された連通孔59を介してトランスミッション室3に連通している。
【0029】
図4は、図1のIV-IV断面拡大部分図(図5のIV-IV断面)に相当し、スカベンジポンプ64の縦断面を示している。この図4において、スカベンジポンプ64としてはトロコイド型オイルポンプが用いられており、前記隔壁55と一体に形成されたケーシング65と、該ケーシング65内に回転自在に嵌合すると共に円弧形内歯を有する外部ロータ66と、該外部ロータ66に偏芯状態で内接する内部ロータ67と、内部ロータ67に固着されたポンプ軸68等から構成されている。吸入路69は下方へ延び、クランク室2の底壁に形成されたオイル排出部71に連通し、吐出部70は前述のように隔壁5内のオイル通路61に連通している。オイル排出部71には椀状のフィルター73が配置され、またオイル排出部71の先端開口にはドレンプラグ75が着脱可能に嵌着されている。
【0030】
図5は図4のV-V断面図であり、潤滑オイル圧送用のメインポンプ80は、スカベンジポンプ64と同様にトロコイド型オイルポンプが用いられており、外部ロータ81及び内部ロータ82と、前記スカベンジポンプ64と共用のポンプ軸68及びケーシング65等から構成されている。両ポンプ64,80は同一軸芯上に並んで配置され、共用のポンプ軸68にはチェーンスプロケット84が固着され、チェーン85を介してバランサ軸等の駆動側回転軸に連動連結している。
【0031】
メインポンプ80とスカベンジポンプ64は、外部ロータ81,66並びに内部ロータ82,67はそれぞれ同一径のものを利用しているが、軸方向幅はスカベンジポンプ64が広く形成されている。たとえばメインポンプ80に対してスカベンジポンプ64の軸方向幅を1.4倍程度に設定しており、これにより吐出能力も1.4倍程度になっている。
【0032】
メインポンプ80の吸入路86はトランスミッション室3の底部にストレーナ等を介して連通し、吐出部(図示せず)はクランクケース内の潤滑用メイン油路に連通している。該潤滑用メイン油路は途中で複数の油路にに分岐し、トランスミッション室内を除くエンジンの各潤滑個所に至っている。たとえば、クランク軸内に形成されたオイル通路を介してクランクピンとコンロッド大端部の嵌合部分やジャーナルの嵌合部分に至ると共に、シリンダ及びシリンダヘッドのオイル通路を介して吸、排気弁作動機構等に至っている。
【0033】
【作用】
図5のメインポンプ80により、トランスミッション室3の潤滑オイルを、ストレーナ等を介して吸い込み、吐出部より所定の圧力で潤滑用メイン油路に吐出する。吐出された潤滑オイルの一部はクランク軸内のオイル通路を通り、クランクピンとコンロッド大端部との嵌合部や、ジャーナルの嵌合部等、クランク軸周りの各潤滑個所に圧送され、それらを潤滑し、潤滑後、クランク室2の底部に戻る。別の一部はシリンダヘッドの各潤滑個所に圧送され、吸排気弁作動機構等を潤滑した後、クランク室2の底部に戻る。
【0034】
クランク室2に戻された潤滑オイルは、図4のフィルター73、オイル排出部71及び吸入路69を介してスカベンジポンプ64により汲み出され、これによるクランク室2内のオイルレベルは略0近くに保たれる。
【0035】
スカベンジポンプ64に吸い込まれた潤滑オイルは、吐出部70から図1の隔壁5内のオイル通路61を右方に移送され、右端出口から潤滑オイルパイプ60を介してオイル貯留室25に供給され、オイル貯留室25内に一旦貯留される。
【0036】
図2において、オイル貯留室25内に貯留された潤滑オイルの一部は、各トランスミッション軸7,8のオイル通路51,53内に流入し、トランスミッション軸7,8の回転による遠心力によって図1の各油孔52,55内を径方向の外方に送られ、トランスミッション軸7,8周りの各潤滑個所に供給される。すなわち、摺動式変速ギヤ10,11,12の内周摺動部(スプライン嵌合部)、その他の変速ギヤの内周軸受メタル部、軸受29、入力ギヤ27の内周部及びワンウエイクラッチ28等に供給され、それらを潤滑する。潤滑後はトランスミッション室3の底部に戻る。
【0037】
図2のオイル貯留室25に溜まる潤滑オイルは、該オイル貯留室25で気液分離がなされ、レベルL1以上になると、図3のように出口孔57から中間オイル室3aにオーバーフローする。これによりオイル貯留室25内の圧力増加を防止する。
【0038】
出口孔57から中間オイル室3a内にオーバーフローした潤滑オイルは、該中間オイル室3aでも気液分離され、トランスミッション室3の右端壁20の連通孔59を通り、トランスミッション室3に戻される。
【0039】
【発明の実施の形態2】
図6はトランスミッション室3の右側にクラッチ操作用のピストン式アクチュエータ90を配置したエンジンに適用した例であり、クラッチ19のレリーズ構造及び該レリーズ構造に関連する構造以外は、図1の構造と同じであり、同じ部品及び部分には同じ符号を付してある。
【0040】
まず、クラッチ19のレリーズ構造を簡単に説明する。トランスミッション室3の右方に配置されている第2カバー22にアクチュエータケース91を一体に形成し、該アクチュエータケース91にシリンダ92を嵌着し、該シリンダ92内に左右方向移動可能にピストン93を嵌合し、該ピストン93にボールを介してレリーズ操作用のプッシュロッド95を係合してある。プッシュロッド95は左方に延び、第2ケース22及びオイル貯留室25を貫通して入力側トランスミッション軸7のオイル通路51内に挿入され、オイル通路51との間に環状スペースを残した状態で左方へ延び、レリーズロッド47の右端面に当接している。
【0041】
シリンダ92内に圧入される油圧によりピストン93を左方に移動すると、プッシュロッド95及びレリーズロッド47を介してプレッシャプレート46を左方に移動し、クラッチ19をレリーズする。
【0042】
かかるレリーズ操作機構を備えたエンジンにおいて、プッシュロッド95は第2カバー22のロッド挿通孔にシール96を介して嵌合しており、第1カバー21にはオイル貯留室25内に突出する脚部97を介してボス部98が一体に形成され、該ボス部98にプッシュロッド95が軸方向摺動自在に嵌合支持されている。
【0043】
脚部97には図7に示すように周方向に間隔をおいて複数の切り溝99が形成されており、これらの切り溝99を介してオイル貯留室25から入力側トランスミッション軸7のオイル通路51に潤滑オイルが流入するようになっている。
【0044】
プッシュロッド95の右端部分はオイル貯留室25内のボス部98に支持されているので、プッシュロッド95とボス部98の嵌合部はオイル貯留室25内の潤滑オイルにより直接潤滑され、プッシュロッド95の摺動を円滑に保つことができる。
【0045】
【その他の実施の形態】
(1)本願発明は自動二輪車用のエンジンに限定されるものではなく、不整地走行四輪車等のエンジンに適用することも可能である。
【0046】
(2)請求項1記載の発明では、オイル貯留室をたとえばクラッチ配置側に配置することも可能である。
【0047】
(3)潤滑オイルをトランスミッション室以外の各潤滑個所に圧送するメインポンプとして、前記トロコイド型オイルポンプ以外に、各種ギヤポンプを使用することも可能であり、ギヤポンプ以外のオイルポンプを利用することも可能である。また、クランク室内の潤滑オイルをオイル貯留室に移送するスカベンジポンプも、前記トロコイド型オイルポンプ以外に、各種ギヤポンプを使用することも可能であり、ギヤポンプ以外のオイルポンプを利用することも可能である。
【0048】
(4)図3等のような中間オイル室3aが形成されていないエンジンに本願発明を適用することも可能である。また、中間オイル室を複数形成することも可能である。
【0049】
【発明の効果】
(1)エンジン内の各潤滑個所に潤滑オイルを圧送するメインポンプと、潤滑オイル移送用のスカベンジポンプを備えた車輌用エンジンの潤滑装置において、スカベンジポンプの吐出オイルを、直接トランスミッション室に戻さずに、一旦オイル貯留室に溜め、該オイル貯留室からトランスミッション室の潤滑に利用するようにしているので、メインポンプの負担が軽減され、パワーロスを小さくできると共にメインポンプを小型化でき、これに伴ってスカベンジポンプも小型化でき、エンジン全体の小型化を達成できる。
【0050】
(2)オイル貯留室に一旦貯留された潤滑オイルは、トランスミッション軸の回転による遠心力でトランスミッション軸周りの潤滑個所に供給されるので、スカベンジポンプで吐出される潤滑オイルをトランスミッションの潤滑に利用しながらも、スカベンジポンプ自体はオイル圧送用とする必要性はなく、これによってもパワーロスを防ぐことができる。
【0051】
(3)請求項2記載の発明のように、オイル貯留室を、トランスミッション室に対してクラッチ配置側と反対側に配置することにより、トランスミッション室周りの空スペースを有効に利用でき、エンジンのコンパクト化を達成することができる。
【0052】
(4)請求項3記載の発明のように、オイル貯留室内に上記クラッチのレリーズ操作用のロッド(プッシュロッド95)を支持するボス部98を配置してあると、オイル貯留室25内の潤滑オイルにより上記ロッド95とボス部98との嵌合部を直接潤滑でき、円滑なロッド摺動を確保することができる。
【0053】
(5)請求項4記載の発明のように、潤滑オイルをエンジンの潤滑個所に圧送するメインポンプと、クランク室から潤滑オイルを汲み出して移送するスカベンジポンプを備えた車輌用エンジンの潤滑装置において、クランク室とトランスミッション室とを隔壁により仕切ると共に、上記スカベンジポンプの吐出部に連通するオイル貯留室を形成し、オイル貯留室には出口孔を形成し、スカベンジポンプから吐出されて一旦オイル貯留室に貯留された潤滑オイルを、出口孔を介してトランスミッション室に戻すようにしているので、気泡を多く含んでいるクランク室内の潤滑オイルは、オイル貯留室で一旦貯留されることにより気液分離される。したがって、気泡の少ない状態でトランスミッション室に戻され、メインポンプで吸い込まれて各潤滑個所に供給されることになり、メインポンプによる潤滑性能が向上し、摺動面のキャビテーション腐蝕や摩耗の発生を防ぐことができる。
【0054】
請求項5記載の発明のように、オイル貯留室とトランスミッション室の間に1個または複数個の中間オイル室を形成し、オイル貯留室からオーバーフローされる潤滑オイルを、上記中間オイル室を介してトランスミッション室に戻すようにしていると、複数段階で気液分離が行なわれ、気液分離効果が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明に係る潤滑装置を備えた自動二輪車用エンジンのトランスミッション室の水平断面図(図2のI-I断面図)である。
【図2】 図1のII-II断面図である。
【図3】 図2のIII-III断面図である。
【図4】 図1のIV-IV断面に相当するスカベンジポンプの縦断面図である。
【図5】 図4のV-V断面図である。
【図6】 本願発明の別の実施の形態を示す自動二輪車用エンジンのトランスミッション室の水平断面図(図7のVI-VI断面図)である。
【図7】 図6のVII-VII断面図である。
【符号の説明】
1 クランクケース
2 クランク室
3 トランスミッション室
3a 中間オイル室
5 隔壁
7,8 トランスミッション軸
19 多板摩擦式クラッチ
25 オイル貯留室
47 レリーズロッド
51,53 オイル通路
52,55 油孔
57 出口孔
59 連通孔
64 スカベンジポンプ
69 吸入路
70 吐出部
71 オイル排出部
80 メインポンプ

Claims (5)

  1. トランスミッション室の下部に貯留された潤滑オイルを汲み上げ、クランクケース内の潤滑用メイン油路を経てエンジンの各潤滑個所に圧送するメインポンプと、クランク室から潤滑オイルを汲み出して移送するスカベンジポンプを備えた車輌用エンジンの潤滑装置において、
    前記クランク室と前記トランスミッション室とを隔壁により仕切り
    前記トランスミッション室の端壁により前記トランスミッション室から仕切られたオイル貯留室を形成し、
    前記スカベンジポンプの吐出部を前記オイル貯留室に連通し、
    トランスミッション軸の軸芯に形成されたトランスミッション潤滑用のオイル通路を前記オイル貯留室に開口し、前記オイル貯留室の潤滑用オイルを、前記トランスミッション軸のオイル通路を介してトランスミッションの潤滑個所に供給するようにしている、ことを特徴とする車輌用エンジンの潤滑装置。
  2. 前記トランスミッション室の軸芯方向の一方側にクラッチを配置し、他側に前記オイル貯留室を配置したことを特徴とする請求項1記載の車輌用エンジンの潤滑装置。
  3. 前記オイル貯留室内に、クラッチレリーズ操作用のロッドを支持するボス部を配置してあることを特徴とする請求項2記載の車両用エンジンの潤滑装置。
  4. 前記オイル貯留室には出口孔を形成し、
    前記スカベンジポンプから吐出されて一旦オイル貯留室に貯留された潤滑オイルを、前記出口孔を介してトランスミッション室に戻すようにしていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに一つに記載の車輌用エンジンの潤滑装置。
  5. 前記オイル貯留室と前記トランスミッション室の間に1個または複数個の中間オイル室を形成し、前記オイル貯留室の潤滑オイルを、前記出口孔及び前記中間オイル室を介してトランスミッション室に戻すようにしていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の車輌用エンジンの潤滑装置。
JP2001192813A 2001-06-26 2001-06-26 車輌用エンジンの潤滑装置 Expired - Fee Related JP4612967B2 (ja)

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