JP4612940B2 - 入浴介護補助装置 - Google Patents

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政樹 堀
和夫 山崎
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Description

【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は入浴介護補助装置に関し、特に、入浴者を水平移動及び昇降させて浴槽内へ入浴させる入浴介護補助装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、入浴者を浴槽内と浴槽上方間で昇降させるための機構として、台形ねじ機構を用い且つ手動ハンドルを回すことにより座席を昇降させるもの、昇降機構の駆動力源として水圧シリンダを用いたもの、或いは昇降機構の駆動力源として電動モータを用いた入浴介護補助装置が市販されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、昇降機構として台形ねじ機構を用いた場合、入浴者の体重が全て台形ねじ機構に加わることにより、特に、入浴者の体重が重い場合には、上記操作ハンドルを回転させるのに必要な操作力が大きくなったり、入浴者を昇降させるために必要な操作ハンドル回転数が多くなったりするため、介護者にかかる負担が大きいという問題がある。
【0004】
また、昇降機構の駆動力源として水圧シリンダを用いた場合、コストが高くなり、装置が複雑化するという問題点がある。
【0005】
同様に、昇降機構の駆動力源として電動モータを用いた場合、コストが高くなり、又高湿で水がかかる雰囲気で電化製品を用いることとなり、安全面や耐久面で支障が生じるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、低コストで操作し易く、耐久性の高い入浴介護補助装置を提供することである。また、本発明のさらなる目的は、入浴時に、入浴者の上下の揺れ及び左右の揺れが防止され、装置(機械)が作動しても入浴者(被介護者)の心理的動揺が惹起がされず、いわゆる“やさしい介護”を提供することができると共に、介護者の労力負担が小さくされる入浴介護補助装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による入浴介護補助装置は、第1の視点において、洗い場と浴槽(12)の間を水平方向に延在する横行ガイドレール(7)と、前記横行ガイドレールに水平方向に移動可能に係合された本体(1)と、前記本体に固定され鉛直方向に延在する昇降用レール(50)と、前記昇降用レールに鉛直方向に移動可能に係合された昇降台座(4)と、前記昇降台座に係合される座席(10)と、一側が前記昇降台座に連結され該昇降台座を吊り下げるロッド(3)と、前記ロッドの他側にその一側が連結されて揺動自在なアーム(2)と、前記アームの他側に支持されたばね座(31a)と、前記ばね座と前記本体との間に介装され、前記座席に着座した入浴者の体重を支えるよう作用するモーメントを前記アーム及び前記ロッドを介して及ぼすばね(27)と、前記座席は、前記座席の上端部に設けられ、前記昇降台座に枢支される枢支部(63)と、前記座席の背後に取り付けられ、入浴時には浴槽壁面上を摺動するローラ(68)と、を備える。
この装置によれば、入浴時、入浴者が着座している座席は、昇降台座に対する枢支部を回動中心として、そのローラが浴槽壁面上を摺動することにより案内されながら、入浴者前方に向かって回動していく。この装置によれば、入浴者は楽な姿勢で、座席が比較的高い位置では半身浴、十分に低い位置では全身浴(肩まで湯中に浸かった状態)の両方をすることができる。特に、全身浴をする場合には、座席が所定角度が傾斜するため、入浴者は背後に向かって傾斜してかつ脚を曲げた楽な姿勢で入浴をすることができる。
本発明による入浴介護補助装置は、第2の視点において、前記座席の下部に着座した入浴者の脚部を支えるステップ(73)が枢支され、前記ステップは基本的に水平方向に延在した位置及び垂下した位置を選択的にとる。
また、本発明による入浴介護補助装置は、好ましくは、本体(1)に固定され鉛直方向に延在する昇降用レール(50)と、昇降用レールに鉛直方向に移動可能に係合された昇降台座(4)と、昇降台座に係合される座席(10)と、一側が昇降台座に連結され他側が本体に軸支されて、昇降台座と本体間を連結し本体に軸支されかつ昇降台座を吊り下げるロッド(3)と、リンク部材の本体側部分にその一側が連結されてロッドの枢軸の回転に伴って揺動するアーム(2)と、アームの他側に支持されたばね座(31a)と、ばね座と本体との間に介装され、座席に着座した入浴者の体重を支えるよう作用するモーメントをアームを介してリンク部材の本体に対する枢軸に及ぼすばね(27)と、アームの他側に取り付けられると共に、本体に対して昇降可能かつ水平面で回転不能に係合され、アームの揺動に伴って昇降するトラニオン(38)と、本体に回転可能かつ鉛直方向に移動不能に支持されたスクリューねじ(34)と、トラニオン上に直接又は間接的に設けられスクリューねじに螺合されためねじ部材(35,37)と、スクリューねじを回転させ、これによって、スクリューねじ上でめねじ部材及びトラニオンを昇降させてアームを揺動させ、ばねを伸縮させ、リンク部材を揺動させて昇降台座を昇降させる操作ハンドル(5)と、を有する。
なお、上記解決手段において、()内に付記した図面参照符号は、発明の理解を助けて明確化を図るためのものであり、図示の解釈に限定することを意図するものではない。
【0008】
この装置の動作を説明する。操作ハンドルの操作によって、スクリューねじが回転されると、めねじ部材が本体に対して回り止めされているトラニオンに支持されているため、めねじ部材はスクリューねじ上をトラニオンと共に昇降する。
このトラニオンの昇降に伴って、アームが揺動し、アームに連結されているばねが伸縮して、リンク部材の本体に対する枢軸に作用するモーメントが可変される。この結果、リンク部材に吊り下げられた昇降台座、移送座席及び入浴者等の重さに見合ったばね力が常に発生され、介護者は小さな操作力で昇降操作(スクリューねじを回転させるための操作)ができる。さらに、入浴者が湯中に浸漬されて浮力が発生し、リンク部材に加わる負荷が急に小さくなった際も、スクリューねじ機構によって、リンク部材の揺動が抑止されている。この結果、入浴者が昇降台座に結合された移送座席ごと浮き上がることが防止される。また、入浴者の移動中及び入浴中を含め、入浴者の上下の揺れ及び左右の揺れが小さくされ、快適な入浴が実現される。
【0009】
すなわち、本発明の装置によれば、ばね機構によってスクリューねじ機構に加わる負荷が負担されてスクリューねじ機構へ過負荷が加わることが防止されると共に介護者の労力負担が軽減され、かつ、負荷変動によるばね機構の伸縮がスクリューねじ機構によって抑制され、入浴者の上下の揺れさらに左右の揺れも抑制される。なお、入浴者の左右の揺れは、昇降用レールによっても、すなわち、座席がレール昇降することによっても抑制されている。これによって、装置(機械)が作動しても入浴者(被介護者)の心理的動揺が惹起がされず、いわゆる“やさしい介護”が提供される。また、本発明による入浴介護補助装置は、半身浴か全身浴かに応じて、座席の傾斜角度を可変に制御するよう構成することができるため、半身浴の場合も全身浴の場合も、入浴者は楽な姿勢で快適に入浴をすることができる。
【0010】
本発明のその他の視点及び特徴は、各請求項に記載のとおりであり、その引用をもってその重複記載を省略する。よって、各請求項の各特徴は、ここに記載されているものとみなされる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0012】
本発明による入浴介護補助装置はその好ましい実施の形態において、リンク部材は、昇降台座にその一端が連結された第1のリンク(図1の3)と、第1のリンクの他端にその一端が連結された第2のリンク(図1の2)と、第2のリンクの他端に固定されると共に本体に軸支されたシャフト(図1の25)と、その一端がシャフトに固定されその他端にアームの一端が連結された第3のリンク(図9の26)と、を含む。
【0013】
本発明による入浴介護補助装置はその好ましい実施の形態において、さらに、座席を着脱可能に支持し、入浴者が着座した座席を洗い場まで搬送する車椅子を有し、座席は水平方向に延在するパイプ部(枢支部)を備え、昇降台座はパイプ部と嵌合するフックと、昇降台座に枢支され一端が握り部であり他端がフックに嵌合したパイプ部を制止するレバーと、レバーの他端をフックに向かって付勢するロックばねと、備え、パイプ部がフックに嵌合された状態で、車椅子と昇降台座の間で入浴者が着座した座席が受け渡される。
【0014】
本発明による入浴介護補助装置はその好ましい実施の形態において、座席の下部に着座した入浴者の脚部を支えるステップが枢支され、ステップは基本的に水平方向に延在した位置及び垂下した位置を選択的にとる。
【0015】
本発明による入浴介護補助装置はその好ましい実施の形態において、座席の上端部に設けられ、昇降台座に枢支される枢支部と、座席の背後に取り付けられたローラとを有する。そして、入浴時、入浴者が着座している座席は、昇降台座に対する枢支部を回動中心として、そのローラが浴槽壁面上を摺動することにより案内されながら、入浴者前方に向かって回動していく。この形態によれば、入浴者は楽な姿勢で、座席が比較的高い位置では半身浴、十分に低い位置では全身浴(肩まで湯中に浸かった状態)の両方をすることができる。特に、全身浴をする場合には、座席が所定角度が傾斜するため、入浴者は背後に向かって傾斜してかつ脚を曲げた楽な姿勢で入浴をすることができる。
【0016】
本発明による入浴介護補助装置において、その本体は、入浴者が載置された座席と共に洗い場と浴槽の間を水平方向に移動される、この本体の水平方向の移動形態としては、横行移動(直線的な移動)、回転移動などの場合があり、浴室の構造及び広さ等に応じて適宜選択される。例えば、本体を横行移動させる場合には、浴室に横行レールを架設し、一方、本体を回転移動させる場合には、浴室にポストを架設し、このポストの外周面に本体を回動自在に嵌合支持する。
【0017】
本発明による入浴介護補助装置はその好ましい実施の形態において、操作により、洗い場と浴槽の間を水平方向に移動される本体(図9の1)と、前記本体に固定され鉛直方向に延在する昇降用レール(図1の50)と、前記昇降用レールに鉛直方向に移動可能に係合された昇降台座(図1の4)と、前記昇降台座に係合される座席(図1の10)と、一側が前記昇降台座に連結され他側が前記本体に軸支されて、該昇降台座を吊り下げるリンク部材(図1の2,3)と、前記リンク部材の他側にその一側が連結され、該リンク部材の前記本体に対する枢軸の回転に伴って揺動するアーム(図10の28)と、前記アームの他側に支持されたばね座(図10の31a)と、前記ばね座と前記本体(図10の31a)との間に介装され、前記座席に着座した入浴者の体重を支えるよう作用するモーメントを前記アームを介して前記リンク部材の前記本体に対する枢軸に及ぼすばね(図10の27)と、前記アームの他側に取り付けられると共に、前記本体に対して昇降可能かつ水平面で回転不能に係合され、前記アームの揺動に伴って昇降するトラニオンと(図9の38)、前記本体に回転可能かつ鉛直方向に移動不能に支持されたスクリューねじ(図9の34)と、前記トラニオン上に設けられ前記スクリューねじに螺合されたねじ部材(図9の35,37)と、前記スクリューねじを回転させ、これによって、該スクリューねじ上で前記ねじ部材及び前記トラニオンを昇降させて前記アームを揺動させ、前記ばねを伸縮させ、前記リンク部材を揺動させて前記昇降台座を昇降させる操作ハンドル(図9の5)と、を有する。
【0018】
本発明による入浴介護補助装置はその好ましい実施の形態において、操作により、洗い場と浴槽の間を水平方向に移動される本体(図9の1)と、前記本体に固定され鉛直方向に延在する昇降用レール(図1の50)と、前記昇降用レールに鉛直方向に移動可能に係合された昇降台座(図1の4)と、前記昇降台座に係合される座席(図1の10)と、前記昇降台座を昇降させるための操作部材(図9の5)と、一側が前記昇降台座に連結され他側が前記本体に軸支されて、該昇降台座を吊り下げるリンク機構(図1の2,3,図10の28)と、前記本体に収容されて該本体(図10の31a)と前記リンク機構の間にばね力を作用し、その変位に伴って前記昇降台座が昇降されるばね(図10の27)を備え、前記座席に着座した入浴者の体重を支えるよう作用する力を該リンク機構を介して該昇降台座に及ぼすばね機構(図10の27,31b)と、前記本体に収容され、該本体に前記操作部材の操作によって回転するよう支持されたスクリューねじ(図9の34)と、前記本体に収容され該スクリューねじに回転不能に螺合されると共に前記リンク機構に連結されたねじ部材(図9の35,37)と、を備え、前記操作部材が操作されない間は該リンク機構及び前記ばねの変位並びに前記昇降台座の昇降を制止し、該操作部材が操作されたときには該操作に応じて前記ばね及び前記リンク機構を変位させて前記昇降台座を昇降させるスクリューねじ機構(図10の17a,図9の31b,34,36,37,38)と、を有する。
【0019】
【実施例】
以上説明した本発明の好ましい実施の形態をさらに明確化するために、以下図面を参照して、本発明の一実施例を説明する。
【0020】
[全体構造]
まず、この入浴介護補助装置の全体構造を説明する。図1は本発明の一実施例に係る入浴介護補助装置の正面図、図2は図1の側面図、及び図3は図1の上面図である。
【0021】
図1〜図3を参照すると、浴室において、洗い場と浴槽12間に左右の柱8,8が架設され、左右の柱8,8に上下の横行ガイドレール7,7が固定されている。上下横行ガイドレール7,7には、本体1が水平方向に滑動可能に係合している。本体1の一側には、補助力(揚力)発生機構を収容するボックス部15、他側には昇降用レール50,50が固定されたプレート部16が配置されている。昇降用レール50,50には、昇降台座4が昇降可能に係合している。昇降台座4には背もたれ及び肘掛65,65等を備えた移送座席10が着脱可能に係合される。本体1と昇降台座4は、シャフト25、アーム2及びロッド3によって連結されている。詳細には、アーム2の一端にはシャフト25が固定され、シャフト25の両端が本体1に軸支され、ロッド3の一端はアーム2の他端に枢支され、ロッド3の他端は昇降台座4の上部に枢支されている。
【0022】
アーム2は、本体1下部に取り付けられた昇降用ハンドル5を回転操作に伴って揺動し、これによって昇降台座4は滑車51,51,51,51を介して昇降用レール50,50上を昇降する。また、本体1には横行用ハンドル6が固定されている。横行用ハンドル6を図1中左右方向に押したり引いたりすることにより、本体1が昇降用レール50,50と共に横行ガイドレール7,7上を水平方向に滑動する。
【0023】
[昇降台座と移送座席]
次に、主として昇降台座と移送座席の着脱部について説明する。図4は図1の一部拡大図、図5は図4の側面図、及び図6は図5を反対側から見て一部拡大した側面図である。
【0024】
図4及び図5を参照すると、昇降台座4の上部には、移送座席10の上部パイプ63が着脱可能に係合するフック54が固定されている。移送座席10を台座4側に移送して支持させる場合には、移送座席10の上部パイプ(昇降台座4に対する枢支部)63がフック54の下になるよう昇降台座4を下降させ、パイプ63を昇降台座4に当てた状態で昇降台座4を上昇させることにより、フック54に引っ掛かる状態となる。また、昇降台座4には、ロックハンドル55の中間部が枢支され、その枢着点近傍にはロックばね57の一端が固定されている。ロックハンドル55の一端は握り部であり、その他端にはロックばね57の付勢力が常時作用している。
【0025】
ロックハンドル55は、ロックばね57によって図6中反時計方向に回動するよう常時付勢されている。この結果、上部パイプ63をフック54に係合させる際には、ロックハンドル55は上部パイプ63によって付勢されて図6中時計方向に回動し、該係合完了後はロックばね57の付勢力によって同図中反時計方向に回動する。この結果、ロックハンドル55他端に形成された折曲部とフック54の間に上部パイプ63が挟持され、移送座席10が昇降台座4側に嵌合かつロックされる。
【0026】
[本体]
次に、本体について説明する。図7は図1の一部拡大図、図8は図7のVIII−VIII断面図、図9は図7に示した本体内部の構造を示す側面図、図10は図9のX−X断面図である。
【0027】
図7〜図10を参照すると、本体1のボックス部15には、アーム2の他端に固定されたシャフト25が軸支されている。ボックス部15内において、シャフト25の両端には、一対のレバー26,26の一端が固定されている。一対のレバー26,26の他端には、一側に弧状部を備えた一対のばね軸アーム28,28の一端がそれぞれ枢支されている。一対のばね軸アーム28,28の他端間には、トラニオン38が固定されている。
【0028】
ボックス部15の下部には、一対のブラケット17,17が固定されている。
一対のブラケット17,17の中央部には、鉛直方向に延在する長穴17a,17aがそれぞれ形成されている。一対の長穴17a,17aには、トラニオン38が嵌合して鉛直方向に沿って昇降可能に案内される。
【0029】
ボックス部15には、鉛直方向に延在するスクリューねじ34が内蔵されている。スクリューねじ34の両端は、ボックス部15の上下面に回転可能かつ軸方向に制止されて軸支されている。スクリューねじ34の中間部には、ばね調整ねじ35(めねじ部材)が螺合されている。
【0030】
ボックス部15の上部には、ばね座31aが固定されている。スクリューねじ34上、ばね調整ねじ35の下方には、調整ナット36が位置調整可能に螺合され、調整ナット36の上面にはばね座31bが支持されている。ばね座31aとばね座31bの間には、ばね27が圧縮介装されている。
【0031】
ばね調整ねじ35の下端にはフランジナット37(めねじ部材)が固定されている。フランジナット37は、トラニオン38の中央部に固定されている。かくして、ばね調整ねじ35が、フランジナット37、トラニオン38、ボックス部15に固定されたブラケット17の長穴17aによって、回り止めされている。このため、スクリューねじ34の回転方向に応じて、ばね調整ねじ35、フランジナット37、及びトラニオン38は昇降する。
【0032】
スクリューねじ34の下端にはねじ歯車(大)41が水平面で一体回転するよう固定されている。ねじ歯車(大)41には、ねじ歯車(小)42が鉛直面で回転するよう噛合している。ねじ歯車(小)42からねじ歯車(大)41には回転運動の角度が変換されて伝達される。ねじ歯車(小)42の回転軸には昇降用ハンドル5が取り付けられている。
【0033】
[車椅子と昇降台座]
次に、主として昇降台座と移送座席の着脱部について説明する。図11は図1に示した移送座席を浴室に搬送するための車椅子を説明するための側面図である。図12(A)は図11に示した車椅子の平面図、図12(B)は図12(A)の側面図、図13は図12(A)の正面図である。
【0034】
[車椅子]
図11〜図13を参照すると、車椅子9は、左右のフレーム9a,9bと、左右フレーム9a,9bの前後部にそれぞれ形成されたブラケット11a,11a,11b,11bと、ブラケット11a,11a又はブラケット11b,11b内に嵌装される手押しハンドル11と、を有する。左右フレーム9a,9bの上部は、車椅子9の中央方向上方へ向かって斜めに延在している。左右のフレーム9a,9bの内側には、左右のガイドプレート61a,61bがそれぞれ固定されている。
【0035】
[移送座席]
図1〜図4及び図11を参照すると、移送座席10の上部には、上述した上部パイプ63が固定されている。また、移送座席10には、ヘッドレスト、当てプレート64、背当て、肘掛65,65及び座部が取り付けられている。当てプレート64は、移送座席10が昇降台座4に係合された際に、昇降台座4と当接して移送座席10を所定角度に傾斜させる。
【0036】
図14(A)は図11のA−A断面図、図14(B)は図11のB−B断面図、及び図14(C)は図12(B)の一部底面図である。図11及び図14(A)〜図14(C)を参照すると、移送座席10において、座部は移送座席10の左右両側において正面−背後方向に延在する左右フレーム10a,10b上に支持されている。移送座席10において、左右フレーム10a,10bの外側には、正面−背後方向に延在する一対のストッパピース69a,69bがそれぞれ固定されている。一対のストッパピース69a,69bは、座部前方側に鉛直面をそれぞれ有する。これらの鉛直面は、左右のガイドプレート61a,61bの手押しハンドル11側の先端面と当接して、移送座席10の手押しハンドル11側への離脱が制止される。
【0037】
さらに、移送座席10の背部において左右両側には、一対のローラ68,68が軸支されている。一対のローラ68,68は、移送座席10を昇降する際に、浴室の壁又は浴槽12上を摺接して、浴室の壁及び浴槽12(図1参照)と移送座席10との干渉を防止する。
【0038】
車椅子9のフレーム部9aの先端側下部には、固定レバー62の中間部が枢着されている。固定レバー62の一端は握り部であり、固定レバー62の他端は移送座席10のフレーム10a基端側下部に形成された溝に解除可能に嵌合している。
【0039】
図15は図11の一部拡大図、図16は図15の一部拡大図である。図11、図15及び図16を参照すると、移送座席10の座部パイプ先端には、互いに連通する丸穴71と長穴72が形成されている。移送座席10の座部パイプ先端には、入浴者の脚を支えるためのステップ73の一端が丸穴71及び長穴72に選択的に嵌合される。ステップ73の主軸方向(延在方向)に対して、ステップ73の枢軸部の主軸方向は角度α分傾斜している。移送座席10が車椅子9の側に係合している場合には、ステップ73は丸孔71に嵌合して垂下される。一方、移送座席10が昇降台座4の側に係合している場合には、ステップ73は長穴72に嵌合されて水平方向より角度α分下方に傾斜して延在する。
【0040】
次に、以上説明した入浴介護補助装置の動作を順に説明する。図17(A)及び図17(B)は図1に示した装置の動作図であって、(A)は車椅子を昇降台座に係合する直前の状態を示す側面図、(B)は同係合直後の状態を示す側面図である。
【0041】
(1) 図17(A)を参照して、まず、介護者は、入浴者が着座した移送座席10を支持している車椅子9を、洗い場上に位置する昇降台座4(図3参照)と対向する位置まで搬送する。
【0042】
(2) 図17(A)を参照して、介護者は、昇降用ハンドル5(図3参照)を回転操作して、昇降台座4を昇降させ、昇降台座4上のフック54が、車椅子9に支持されている移送座席10の上部パイプ63と嵌合可能に位置させる。
【0043】
(3) 図12(B)及び図13(C)を参照して、介護者は、車椅子9に取り付けられた固定レバー62を回動操作して、車椅子9と移送座席10のロックを解除する。
【0044】
(4) 図17(A)を参照して、介護者は、車椅子を昇降台座4に向かって前進させ、上部パイプ63をフック54上に位置させる。
【0045】
(5) 図17(B)を参照して、介護者は、昇降用ハンドル5(図3参照)を回転操作して、昇降台座4を上昇させ、フック54と上部パイプ63を嵌合させる。このとき、入浴者及び移送座席10の自重によって、ロックハンドル55が回動され、フック54内に上部パイプ63が完全に嵌合すると、ロックハンドル55は反対方向に復帰かつ回動され、上部パイプ63がフック54内から外れることを防止する。かくして、車椅子9から昇降台座4へ、移送座席10及びそれに着座した入浴者の受け渡しが完了する。
【0046】
(6) 図16を参照して、介護者は、垂下していたステップ73を前方へ引き出し、入浴者の脚部を伸ばさせる。
【0047】
(7) 介護者は、車椅子9を退避させた後、昇降用ハンドル5を回転操作して、昇降台座4に結合された移送座席10を上昇させる。この昇降用ハンドル5の所定方向への回転操作に伴って、トラニオン38と共にばね軸アーム28が上昇かつ揺動され、ばね27が圧縮され、ばね27がシャフト25を図10中時計方向に回転させるよう作用するモーメントが大きくなり、このモーメントと、アーム2の先端に加わる大きな負荷がシャフト25を図10中反時計方向に回転させるよう作用するモーメントとの釣り合いが達成される。これによって、介護者は小さな操作力で昇降用ハンドル5を回わすことができる。
【0048】
(8) 図1を参照して、移送座席10が十分に上昇すると、介護者は横行ハンドル6を図1中左方へ押し、本体1ごと入浴者を浴槽12上に水平方向へ移動させる。
【0049】
(9) 図1及び図2を参照して、介護者は、昇降用ハンドル5を回転操作して、昇降台座4に結合された移送座席10を浴槽12内へ下降させる。このとき、移送座席10の座部背後に取り付けられた一対のローラ68,68が浴槽12壁面(曲面)と摺動して、移送座席10と浴槽12の干渉が防止されるよう移送座席10を下方に向かってガイドする。これによって、移送座席10は、昇降台座4のフックに係合された上部パイプ63を枢支軸(点)として、移送座席10に着座した入浴者前方に向かって回動していく。最後に、移送座席10は、図2中仮想線で示す状態に至る。このとき、入浴者は背後に向かって所定角度傾斜しかつ脚をやや曲げた楽な姿勢で全身浴をすることができる。なお、半身浴をする場合には、全身浴をする場合に比べて、移送座席10の鉛直方向に対する傾斜角度は小さくなる。つまり、この装置によれば、半身浴及び全身浴のいずれの場合でも、入浴者を楽な姿勢で入浴させることができる。
【0050】
また、入浴者及び移送座席10を浴槽12の湯中に浸漬したことにより、これらには浮力が作用する。しかし、スクリューねじ34等を含むねじ機構によって、アーム2に作用する負荷の変動によるばね軸アーム28の揺動が抑止されているため、入浴者が昇降台座4に結合された移送座席10ごと浮き上がることが防止される。
【0051】
(10) 入浴終了後、介護者は以上の工程を逆に行い、入浴者を車椅子9(図17(A)参照)に戻す。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、低コストで操作し易く、耐久性の高い入浴介護補助装置が提供される。さらに、本発明によれば、入浴時に、入浴者の上下の揺れ及び左右の揺れが防止され、装置(機械)が作動しても入浴者(被介護者)の心理的動揺が惹起がされず、いわゆる“やさしい介護”を提供することができると共に、介護者の労力負担が小さくされる入浴介護補助装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る入浴介護補助装置の正面図である。
【図2】図2は図1の側面図である。
【図3】図3は図1の上面図である。
【図4】図4は図1の一部拡大図である。
【図5】図5は図4の側面図である。
【図6】図6は図5を反対側から見て一部拡大した側面図である
【図7】図1の一部拡大図である。
【図8】図7のVIII−VIII断面図である。
【図9】図9は図7に示した本体内部の構造を示す側面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】図1に示した移送座席を浴室に搬送するための車椅子を説明するための側面図である。
【図12】(A)は図11に示した車椅子の平面図、(B)は(A)の側面図である。
【図13】図12(A)の正面図である。
【図14】(A)は図11のA−A断面図、(B)は図11のB−B断面図、及び(C)は図12(B)の一部底面図である。
【図15】図11の一部拡大図である。
【図16】図15の一部拡大図である。
【図17】(A)及び(B)は図1に示した装置の動作図であって、(A)は車椅子を昇降台座に係合する直前の状態を示す側面図、(B)は同係合直後の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 入浴介護装置の本体(補助力発生部)
2 アーム(リンク部材)
3 ロッド(リンク部材)
4 昇降台座
5 昇降用ハンドル
6 横行用ハンドル
7,7 上下横行ガイドレール
8,8 左右柱
9 車椅子
9a,9b 左右フレーム
10 移送座席
10a,10b 左右フレーム
11 手押しハンドル
11a,11b ブラケット
12 浴槽
15 ボックス部(本体a)
16 プレート部(本体b)
17.17 一対のブラケット
25 シャフト(リンク部材)
26 レバー(リンク部材)
27 ばね
28 ばね軸アーム
31a,31b ばね座
34 スクリューねじ
35 ばね調整ねじ
36 調整ナット
37 フランジナット(めねじ部材)
38 トラニオン
41 ねじ歯車(大)(大ヘリカルギヤ)
42 ねじ歯車(小)(小ヘリカルギヤ)
43 シャフト
45 ハンドル
50,50 昇降用レール
51 滑車
54 フック
55 ロックハンドル
57 ロックばね
61a,61b 左右ガイドプレート
62 固定レバー
63 上部パイプ
64 当てプレート
65,65 肘掛
68,68 一対のローラ
69a,69b 左右ストッパピース
71 丸穴
72 長穴
73 ステップ

Claims (2)

  1. 洗い場と浴槽の間を水平方向に延在する横行ガイドレールと、
    前記横行ガイドレールに水平方向に移動可能に係合された本体と、
    前記本体に固定され鉛直方向に延在する昇降用レールと、
    前記昇降用レールに鉛直方向に移動可能に係合された昇降台座と、
    前記昇降台座に係合される座席と、
    一側が前記昇降台座に連結され該昇降台座を吊り下げるロッドと、
    前記ロッドの他側にその一側が連結されて揺動自在なアームと、
    前記アームの他側に支持されたばね座と、
    前記ばね座と前記本体との間に介装され、前記座席に着座した入浴者の体重を支えるよう作用するモーメントを前記アーム及び前記ロッドを介して及ぼすばねと、
    前記座席は、前記座席の上端部に設けられ、前記昇降台座に枢支される枢支部と、前記座席の背後に取り付けられ、入浴時には浴槽壁面上を摺動するローラと、を備える、ことを特徴とする入浴介護補助装置。
  2. 前記座席の下部に着座した入浴者の脚部を支えるステップが枢支され、
    前記ステップは基本的に水平方向に延在した位置及び垂下した位置を選択的にとることを特徴とする請求項1記載の入浴介護補助装置。
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