JP6733906B2 - 入浴介護装置 - Google Patents
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Description
すなわち、枢支軸を中心に下部背凭れ部を座部前方に向って回動すると同時に座部も下部背凭れ部に対して同じ角度を持った状態で回動し、座部前端側が回動に伴って上方に持ち上げられる。したがって、座部に着座した人は、腰の部分が安定した姿勢を保ちながら、足先側が上方にスムーズに持ち上げられる。
以下、本発明の第1実施形態に係る入浴介護装置について、図1〜図9を参照しつつ説明する。図1は浴室に配置された第1実施形態に係る入浴介護装置の斜視図である。図2は、図1の入浴介護装置の椅子を示す斜視図である。図3は、図1の入浴介護装置の平面図である。図4は、図1の入浴介護装置の側面図である。図5は、図1の入浴介護装置の椅子の足載置ユニットを入浴姿勢位置にする途中の状態を示す椅子の部分の側面図である。図6は、図1の入浴介護装置の椅子の足載置ユニットを入浴姿勢位置にした状態を示す椅子の側面図である。図7は、図1の入浴介護装置の昇降椅子ユニットの椅子を入浴姿勢にして、浴槽側にスライドした状態を、昇降椅子ユニットの背面側から見た斜視図である。図8は、図7の昇降椅子ユニットの断面図である。図9は、椅子を浴槽内に下降させた状態をあらわす一部切欠斜視図である。以下では、図1のほか、各図に示す方向を基準に説明を行うこととする。但し、この向きによって、本発明が限定されるものではない。
図1に示すように、昇降椅子ユニット1は、被介護者Mが着座する椅子3aと、椅子3aを上下方向に昇降させる昇降装置3bとを備えている。
(1−1)椅子3a
図2に示すように、椅子3aは、背凭れ部4、座部5、フットサポート6a、一対のアームレスト7、及び支持アーム駆動機構8を備えている。
図1及び図2に示すように、背凭れ部4は、上部背凭れ部41と、その下方に配置される下部背凭れ部42と、上部背凭れ部41及び下部背凭れ部42を回転自在に連結する回転軸43と、を備えており、下部背凭れ部42には後述する座部5が一体的に連結されている。上部背凭れ部41は上下方向に延びる平面状に形成されており、主に被介護者Mの背中の上部を支持する。なお、上部背凭れ部41は、上部から下部に向かうにつれて、後ろから前にかけて傾斜していてもよい。この上部背凭れ部41には、図2及び図4等に示すように、その背面(後面)に椅子支持部材44が取り付けられている。椅子支持部材44は、昇降装置3bと接続され、昇降装置3bにより上下方向に移動する。これに伴い上部背凭れ部41を含む椅子3a全体が上下方向に移動する。これについては後述する。
上記のように、座部5は下部背凭れ部42の下端側に連続し、下部背凭れ部42と一体的に形成されている。座部5は、平面状に形成され、下部背凭れ部42に対して屈曲するように前後方向に延びており、主に被介護者Mの臀部を支持する。座部5は下部背凭れ部42に連続しているため、下部背凭れ部42とともに回動する。また、上部背凭れ部41と下部背凭れ部42とが分離しつつも、上部背凭れ部41、下部背凭れ部42及び座部5が全体として連続的な面を形成することで、被介護者Mの背中から臀部が安定的に支持される。
フットサポート6aは、座部5の下方に配置されている。フットサポート6aは、被介護者Mの両足を載置可能な左右一対の平板状の足載置部62と、足載置部62を支持する支持アーム61と、ベルト支持バー63と、を備えている。
アームレスト7は、椅子の左右にそれぞれ設けられるものであり、腕を載置可能に延びるアームレスト本体71と、このアームレスト本体71の基端部に一体的に設けられた本体枢支部72と、を備えている。アームレスト本体71は、被介護者Mが両腕を載置可能な幅及び長さを有している。そして、本体枢支部72は、上述した椅子3の回転軸43の両端部に回動可能に取り付けられている。また、本体枢支部72からアームレスト本体71の先端に亘っては、内部に空洞が形成されており、この空洞にベルト82が挿入される。空洞内でベルト(線状材)82がスムーズにスライドするように、例えばベルト82の本体枢支部72への挿入開始部分及びベルト82のアームレスト本体71からの送出部分(アームレスト本体の先端部)には、ガイドローラ(図示せず)が内部に設けられている。
次に、支持アーム機構について説明する。この支持アーム機構8は、上述したベルト支持バー63を上下させるものである。図2に示すように、この支持アーム駆動機構8は、ハンガー部81と、ハンガー部昇降モータ(図示せず)と、左右一対のベルト82とを備えている。ハンガー部81は、上部背凭れ部41の背面に配置され、左右方向に延びる板状の部材であり、上述した左右のアームレスト本体71間の幅に対応して、上部背凭れ部41の左右方向からはみ出ている。そして、ハンガー部81の左右の両端部には、それぞれ、帯状のベルト82が連結されている。これらベルト82は、それぞれ、ハンガー部81の左右の両端部から、左右の本体枢支部72及びアームレスト本体71の内部の空洞に挿入される。そして、アームレスト本体71の先端から引き出されたベルト82は、ベルト支持バー63の両端部にそれぞれ接続される。ベルト82は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル繊維等の樹脂あるいは繊維強化樹脂製テープ、ゴムベルト、皮製ベルト、金属ベルト等が挙げられる。
次に、昇降装置について説明する。図1等に示すように、昇降装置3bは、椅子3aを上下方向に昇降させるものであり、板状に形成され上下に延びるケーシング(装置本体)31と、このケーシング31を上下方向に貫通する台形ネジ33と、ケーシング31の前面に配置される一対のガイド軸35とを備えている。ケーシング31は、上部背凭れ部41の背面に対応して上下方向に延びており、内部に各種部材を収容可能な内部空間を有している。ケーシング31内に収容される各種部材としては、上述した台形ネジ33の他、図示していない、椅子昇降用モータ、ハンガー部昇降用モータ、バッテリー、制御機器などが挙げられる。各種モータは、例えばリモートコントローラ及び各種スイッチ等の操作により駆動可能である。
次に、レールユニット2について説明する。図1、図3等に示すように、レールユニット2は、浴槽9に固定される固定レール部2aと、この固定レール部2aにスライド可能に支持されるスライド支持部2bとを備えている。以下、各部材について詳細に説明する。
固定レール部2aは、レール部本体21と、このレール部本体の両端部にそれぞれ連結された一対のレール支持アーム25と、を備えている。図1に示すように、レール部本体21は、左右方向に延び、浴槽9の後側の上枠91上に位置するように、昇降椅子ユニット1の背面の浴室壁面Wに取り付けられている。また、図4及び図8に示すように、このレール部本体21は、一組のレールから構成されており、一組のレールが互いに間隔を空けて配置されている。そして、これらレールの間にスライド支持部2bがスライド可能に配置されている。また、レール部本体21の互いに対向する両レールの内壁には、多数のスライドローラ21aが互いに対面するように、左右方向に概ね等ピッチで取り付けられている。スライドローラ21aは、スライド支持部2bの移動に応じてその取り付け位置で回転し、スライド支持部2bの固定レール部2aに対するスライドを容易にする。
スライド支持部2bは、左右方向に延びるスライド支持本体22と、このスライド支持本体22に固定される可動レール部22aと、スライド支持本体22を支持する支持脚部23と、を備えている。スライド支持本体22は、図1、図4及び図8に示すように、ケーシング31の下部に取り付けられ、上述したように固定レール部2aの対向するレール間に配置されている。スライド支持本体22の外側面は、レール部本体21の両レールに対向しており、この外側面には、上述した可動レール部22aが設けられている。この可動レール部22aは、レール部本体21のスライドローラ21aとスライド可能に噛み合って、ケーシング31を左右方向に移動可能に支持する。これにより、ケーシング31に固定された昇降椅子ユニット1もまた、スライド支持部2bによって左右方向に移動可能に支持されている。よって、昇降椅子ユニット1は、洗場床面WF側と、浴槽9側との間を左右方向に移動可能である。また、昇降椅子ユニット1は、洗場床面WF側及び浴槽9側それぞれにおいて、ロックピンなどのロック手段により固定されていてもよい。
次に、上述の入浴介護装置Aの使用態様について、図1〜図9を用いて説明する。
(4−1)
入浴介護装置Aは、背凭れ部4が上部背凭れ部41及び下部背凭れ部42を備えており、上部背凭れ部41及び下部背凭れ部42は昇降装置3bによって、背凭れ部4全体として一体にケーシング31に沿って上下方向に移動する。しかし、上部背凭れ部41は、上下方向にのみ移動し、前後方向には回動せず固定されている。一方、下部背凭れ部42は、ケーシング31に沿って上下方向に移動するだけでなく、上部背凭れ部41下端の回転軸43周りに回動する。これにより、上部背凭れ部41から下部背凭れ部42に至る上面が上下方向に延びる第1状態(図4等)から、上部背凭れ部41と下部背凭れ部42とが屈曲した第2状態へと移行する(図6等)。
上記実施形態の入浴介護装置Aでは、被介護者Mを入浴姿勢にする場合に、背凭れ部4のうち、下部背凭れ部42及び座部5が、上部背凭れ部41に対して折れ曲がり、座部5の前端部が前方に移動する。このとき、上部背凭れ部41は前方に動かないため、着座している被介護者Mが、前方に行き過ぎることがない。つまり、上部背凭れ部41及び下部背凭れ部42の両方が前方に寝るように突出する場合に比べて、座部5及び足載置部62の位置が前方に大きく突出するのを抑制できる。そのため、長手方向の寸法が短い浴槽9においても、足載置部62に載せた被介護者Mの足先が浴槽9の先端の内壁に当たるのを抑制できる。
上記実施形態では、ハンガー部昇降モータの駆動によって、下部背凭れ部42及び座部5を上部背凭れ部41に対して回動させつつ、さらに足載置部62を上下方向に回動させている。よって、下部背凭れ部42及び座部5の回動手段と、足載置部62の回動手段とを別々に設ける必要が無く、コストダウンを図ることができる。
ハンガー部昇降モータの駆動によってベルト支持バー63がベルト82により引き上げられ、支持アーム61が下部背凭れ部42の背面に当たる。これにより、下部背凭れ部42及び座部5に対してベルト支持バー63が位置決めされ、座部5に対する足載置部62の位置が固定される。よって、椅子3aに着座した被介護者Mは、安定した状態で少し寝たような入浴姿勢を維持しつつ入浴できる。
アームレスト7の位置として、使用位置と退避位置とを選択できる。被介護者Mを椅子3aに載せる場合には、アームレスト本体71を退避位置することができる。これにより、椅子3aの座部5の側方に障害物がなくなり、座部5の側方から被介護者Mを乗せやすくなる。例えば、車椅子などを座部5に横付けした場合に、被介護者Mの車椅子から椅子3aの座部5への移動を容易かつ安全に行え、被介護者M及び介護者の負担を軽減できる。
ベルト82は、アームレスト本体71の内部を通って背凭れ部4の背面側に導かれており、ベルト82の露出面積が少ない。よって、多数の部材が露出して煩雑に見える場合に比べて見栄えがよい。また、ベルト82が、椅子3aに着座した被介護者Mに触れて怪我をするのを抑制でき、安全性に優れている。
図10に示すように、椅子3aが、下部背凭れ部42、座部5、フットサポート6a、及びアームレスト7を、上部背凭れ部41に近づけるように上側にコンパクトに畳み込むことができる。よって、介護を必要としない人が入浴する場合、椅子3aが入浴の邪魔にならない。したがって、介護の必要な人以外の人も居住する一般家庭での使い勝手にも優れている。
上記実施形態の入浴介護装置Aでは、昇降装置3bによって、椅子3aに着座した被介護者Mの上下が可能である。よって、吊り上げリフト等の昇降機構を浴槽9及びその近傍等に設ける必要がない。したがって、天井の高さが低い等の浴室BRの広さが狭い一般家庭及び小さな介護施設等でも、既存の浴室BRを利用して入浴の介護ができる。
次に、第2実施形態に係る入浴介護装置Bの構成について図11〜図13を用いて説明する。図11は、本発明の第2実施形態に係る入浴介護装置の椅子の斜視図である。図12は、図11の椅子の足載置ユニットの背面図である。図13は、図11の椅子の足載置ユニットの下部アームを上方にスライドさせる前の状態を側面側から見た図である。第2実施形態に係る入浴介護装置Bでは、基本的に、椅子3c及び牽引ワイヤ83に関連する構造のみが第1実施形態と相違している。したがって、以下では、主として、第1実施形態と相違する構成について説明し、第1実施形態と同じ構成については同一符号を付して詳しい説明を省略する。
図11〜図13に示すように、本実施形態に係るフットサポート6bは、上部アーム65と、下部アーム64と、足載置部62とを備えている。図12に示すように、上部アーム65は、左右方向に延びる板状に形成されている。上部アーム65は、下部背凭れ部42の背面において回動可能に取り付けられている。また、上部アーム65の左右の両端部には、上下方向に延びる筒状のスライド孔65aが形成されている。
次に、入浴介護装置Bの使用態様について、図11〜図13に加えて、さらに図14〜図16を用いて説明する。図14は、図11の椅子の足載置ユニットの下部アームを上方にスライドさせた状態を側面から見た図である。図15は、図11の椅子の足載置ユニットを座部に当たるまで回動させた状態を側面側から見た図である。図16は、図11の椅子の入浴姿勢を側面側から見た図である。
上記入浴介護装置Bの椅子3cでは、フットサポート6bが上部アーム65と、下部アーム64、足載置部62とにより構成されている。特に、牽引ワイヤ83が巻き取られると、下部アーム64のスライドバー64bが上部アーム65のスライド孔65aに沿ってスライドする。これに応じて、足載置部62は、スライドバー64bがスライド孔65aの延びる方向と概ね平行に上昇する。これは、スライドバー64bがスライド孔65aに沿って上昇することで、足載置部62が、座部5の前方への移動するのが規制されるからである。これにより、図16の入浴姿勢において、足載置部62を座部5の先端に近い位置に配置できる。その結果、入浴姿勢時の椅子3cの前後方向の長さを十分に小さくでき、長手方向の寸法が短い浴槽9においても椅子3cを利用できる。
次に、第3実施形態に係る入浴介護装置Cの構成について図17及び図18を用いて説明する。図17は、本発明の第3実施形態に係る入浴介護装置Cの動作を概略的に説明する平面図であって、同図(a)は椅子を浴槽に面するように上部に配置した状態、同図(b)は椅子を浴槽内に下降させた状態をあらわしている。図18は、図17の入浴介護装置Cの動作を概略的に説明する側面図であって、同図(a)は椅子を浴槽に面するように上部に配置した状態、同図(b)は椅子を浴槽内に下降させた状態を表している。第1実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付しており、以下では、主として第1実施形態の入浴介護装置Aと異なる部分について説明する。
図17及び図18に示すように、本実施形態に係る入浴介護装置Cの椅子3dは、上記第1実施形態の椅子3aと同様の背凭れ部4と、座部5とを備えている。つまり、背凭れ部4は、上部背凭れ部41と、下部背凭れ部42と、回転軸43とを備えている。しかし、第1実施形態と異なり、本実施形態の入浴介護装置Cは、下部背凭れ部42を前方に付勢するバネ(図示省略)と、このバネの付勢を規制するバネロック手段(図示省略)とを備えている。そして、バネの付勢を規制するバネロック手段が解除されると、下部背凭れ部42と座部5とに上向きの力が加わり、下部背凭れ部42は、回転軸43を中心として上部背凭れ部41に対して上方に回動し、これに伴い座部5も上方に回動する。
次に、上述の入浴介護装置Cの使用態様について、再び図17及び図18を用いて説明する。まず、椅子3dを図17(a)及び図18(a)に示すように、被介護者Mが着座しやすい位置に配置し、被介護者Mを椅子3dに着座させる。このとき、下部背凭れ部42はバネロック手段によって前方への付勢が規制されている。
上記入浴介護装置Cでは、これまでの実施形態と同様に、下部背凭れ部42及び座部5を上部背凭れ部41に対して回動するが、この機構がバネ及びバネロック手段という簡素な構成であり、部品点数を抑えて入浴介護装置Cを低コスト化できる。なお、バネなどの付勢手段に代えて、電動モータなどの動力を用いて下部背凭れ部42を回動させるようにしてもよい。例えば、下部背凭れ部42の背面に電動モータなどの動力手段を設け、動力手段を動作させて下部背凭れ部42及び座部5を移動させてもよい。
次に、第4実施形態に係る入浴介護装置Dの構成について図19及び図20を用いて説明する。図19は、本発明の第4実施形態に係る入浴介護装置の動作を概略的に説明する平面図であって、同図(a)は椅子を被介護者Mが着座可能な位置に配置した状態、同図(b)は椅子を浴槽に面するように上部に配置した状態、同図(c)は椅子を浴槽内に下降させた状態をあらわしている。図20は、図19の入浴介護装置の動作を概略的に説明する側面図であって、同図(a)は椅子を被介護者Mが着座可能な位置に配置した状態、同図(b)は椅子を浴槽に面するように上部に配置した状態、同図(c)は椅子を浴槽内に下降させた状態をあらわしている。第1実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付しており、以下では、主として第1実施形態の入浴介護装置Aと異なる部分について説明する。
図19及び図20に示すように、本実施形態に係る入浴介護装置Dでは、椅子3eが、椅子本体36と、昇降装置取り付け部37と、これらを接続するヒンジ38とを備えている。そして、椅子本体36は、背凭れ部4及び座部5を備えている。背凭れ部4は、上記各実施形態と同様に、上部背凭れ部41と、下部背凭れ部42と、回転軸43とを備えている。上部背凭れ部41は、ヒンジ38を介して昇降装置取り付け部37に取り付けられており、水平方向に回動可能である。すなわち、椅子3eの水平方向の向きを変えることができる。また、ヒンジ38を介した上部背凭れ部41の回動は、回動ロック手段(図示せず)によって固定可能である。
次に、上述の入浴介護装置Dの使用態様について、再び図19及び図20を用いて説明する。まず、回動ロック手段を解除し、ヒンジ38を介して上部背凭れ部41を昇降装置取り付け部37に対して回動させ、図19(a)及び図20(a)に示すように、椅子3eを浴槽9の外側、つまり洗場床面WF(右側)に向くように椅子本体36を配置する。このとき、上部背凭れ部41及び下部背凭れ部42の概ね同一平面に並ぶ第1状態に位置づけられ、下部背凭れ部42はバネロック手段によって座部5側への付勢が規制されている。この状態で、浴室まで車椅子等で運ばれてきた被介護者Mを介護者が椅子本体36に着座させる。
上記入浴介護装置Dでは、下部背凭れ部42及び座部5の移動のための機構がバネ及びロック手段という簡素な構成であり、部品点数を抑えて低コスト化できる。また、椅子3eは洗場床面WF側に面するように回動できるため、車椅子などから被介護者Mを容易に移動させることができる。なお、バネなどの付勢手段に代えて、電動モータなどの動力を用いて上向き成分を含む力を加えて下部背凭れ部42を回動させるようにしてもよいし、椅子本体36の回動も電動モータなどの動力を用いて行うようにしてもよい。
以下に、本実施形態5に係る入浴介護装置Eの構成について図21を用いて説明する。図21は、本発明の本実施形態5に係る入浴介護装置の側面図であり、同図(a)は入浴介護装置において椅子が浴槽の底部に接触している場合の側面図であり、同図(b)は、(a)の状態から椅子がケーシングに対してさらに傾斜している場合の側面図である。図22はケーシングと椅子の結合状態を示す断面図である。第1実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付しており、以下では、主として第1実施形態の入浴介護装置Aと異なる部分について説明する。なお、図21では、フットサポート及びアームレストは省略している。
第5実施形態に係る入浴介護装置Eの椅子3fは、上記各実施形態と同様に、背凭れ部4と座部5とを備えている。背凭れ部4は、上部背凭れ部41と、下部背凭れ部42と、上部背凭れ部41及び下部背凭れ部42を回転可能に連結する回転軸43と、を備えている。また、座部5は、下部背凭れ部42の下部に一体的に設けられている。
上記入浴介護装置Eでは、座部5が浴槽9の底面9aを滑ることで、下部背凭れ部42及び座部5は、回転軸43を中心に上方に回動する。よって、回転軸43という簡素な構成で下部背凭れ部42及び座部5の大部分の上面を、浴槽9の底面9aに平行な水平方向に沿う方向に近づけることができる。また、座部5の下面が浴槽9の底面9aに接触した位置から、さらに椅子3fを下降させることができるため、被介護者Mの体の全部又は大部分を浴槽9内のお湯に十分に浸けることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
上記実施形態では、背凭れ部4は、上部背凭れ部41及び下部背凭れ部42の2つの部材から構成されている。しかし、背凭れ部4は一体的に形成されていてもよい。
上記実施形態では、昇降椅子ユニット1がレールユニット2と一体か分離可能かについては言及していない。しかし、昇降椅子ユニット1は、レールユニット2から切り離し可能であってもよい。例えば、固定レール部2aとスライド支持部2bとが切り離し可能であり、昇降椅子ユニット1はスライド支持部2bに固定されている。これにより、スライド支持部2bに支持された昇降椅子ユニット1を固定レール部2aから分離し、例えば被介護者Mが寝ているベッドまで移動可能である。また、昇降椅子ユニット1に設けられている昇降装置3bにより、椅子3aとベッドとを各被介護者Mが移動可能な高さに調整できるので、ベッドには別途の昇降機構が不要である。
また、上記実施形態では、昇降装置3bの椅子昇降用モータを正逆回転させて椅子3aを昇降させるようにしているがこれに限定されない。例えば、クラッチの切り替えでピニオンギアを正逆回転させるようにしても構わない。その他、例えば手動又は自動の油圧ジャッキを用いて椅子を昇降させるようにしても構わない。
上記実施形態では、アームレスト7を回転軸43を中心にして回動することで、使用位置と退避位置とを選択できるようになっている。しかし、アームレスト本体71を上下方向に平行にスライドさせることで、使用位置と退避位置とを選択可能であってもよい。
上記実施形態では、下部背凭れ部42及び座部5が一体に形成され、下部背凭れ部42の上面と座部5の上面とのなす角度が常に一定であるがこれに限定されない。例えば、下部背凭れ部42と座部5との成す角度は、この装置を使用する被介護者Mの障害の程度及び体型などに応じて調整できてもよい。
<6−6>
上記実施形態では、背凭れ部4を上部背凭れ部41及び下部背凭れ部42の2つの部材から構成している。しかし、下部背凭れ部42が複数に分割された部材から構成され、各分割された部材どうしが順次的に各回転軸を介して連結されていてもよい。これにより、各分割された部材ごとにその上面の交差角度を異ならせることができ、下部背凭れ部42の上面を全体として湾曲した形状とできる。
上記実施形態では、昇降椅子ユニット1を水平方向にスライドさせて、昇降椅子ユニット1を洗場床面WFから浴槽9側に移動させている。しかし、吊下げ装置で椅子3aを吊下げ、洗場床面WFから浴槽9側に移動させてもよい。さらには、アームで吊り下げた椅子3aを浴槽9の外から浴槽9内に下降してもよい。
上記実施形態では、スライド支持部2bは、可動レール部22aが固定レール部2aに沿って移動し、ケーシング31及び椅子3a等含む昇降椅子ユニット1が移動する際に洗場床面WFを回転移動する車輪24を含む。しかし、可動レール部22aが固定レール部2aに沿ってスライドすることで、昇降椅子ユニット1が移動可能であればよく、車輪24は必須ではない。
<6−9>
上記実施形態では、下部背凭れ部42を回動させるためのハンガー部昇降モータと、昇降装置3bを駆動して椅子3aを上下させる椅子昇降用モータとは別々に設けられている。しかし、ハンガー部昇降モータ及び椅子昇降用モータを一体の駆動モータとしてもよい。つまり、駆動モータが複数の機構によって共有される。これにより、各機構それぞれに駆動部を設ける場合に比べて、駆動部のために入浴介護装置に設けるスペースを削減でき、またコストも削減できる。
第5実施形態では、浴槽の底面から反力、つまり座部が下方から受ける力によって下部背凭れ部42が上部背凭れ部41に対して回動するように構成されているが、後方から受ける力によって回動するようにしてもよい。例えば、浴槽9内に段などの突部を設け、椅子の下降に伴って、下部背凭れ部42が突部によって後方から押圧されることで、回動するように構成してもよい。
(実施例)
図25は、第1実施形態の入浴介護装置Aを、長手方向寸法が1200mm(実質1197mm)の浴槽9にセットしたときの入浴状態を表している。
まず、本発明の入浴介護装置Aの椅子3aに被介護者Mを着座させる。その後、回転軸43を通る上部背凭れ部41の上面と、回転軸43を通る下部背凭れ部42の上面との角度が約22度になるように、下部背凭れ部42を回転軸43を中心として回動して座部5の前方側に移動させる。次に、椅子3aを浴槽9内に下降させて被介護者Mを浴槽9内に浸ける。このとき、椅子3aに着座した被介護者Mの腰骨近傍の背骨と大腿骨とのなす折畳角は約78度であった。また、浴槽9の底から被介護者Mの乳頭までの高さが約437mmであった。
図26の比較例の入浴介護装置Xでは、背凭れ部4xが上部背凭れ部と下部背凭れ部とに分かれていない。背凭れ部4xの上端が、椅子3xの上端の回転軸47によって背凭れ部4xの背面の部材に回動可能に取り付けられている。よって、比較例の図26では、椅子3xの背凭れ部4x及び座部5の全体が、回転軸47を中心として回動して前方に傾く。図26に示すように、この入浴介護装置Xでは、回転軸47を中心として背凭れ部4xが回動前後の角度が約5度となるように椅子3xを、回転軸47を中心に回動させる。この状態で、椅子3xを下降させて被介護者Mを浴槽9内に浸ける。このとき、椅子3xに着座した被介護者Mの腰骨近傍の背骨と大腿骨とのなす折畳角が約66度であった。また、浴槽9の底から被介護者Mの乳頭までの高さが約500mmであった。
2 :レールユニット
2a :固定レール部
2b :スライド支持部
3a、3c〜3g:椅子
3b :昇降装置(昇降機構)
3x :椅子
4 :背凭れ部
5 :座部
6a :足載置ユニット
6b :足載置ユニット
7 :腕載置ユニット
8 :足用駆動機構(足用駆動部)
9 :浴槽
21 :レール部本体
21a :スライドローラ
22 :スライド支持本体
22a :可動レール部
31 :ケーシング(装置本体)
33 :台形ネジ
41 :上部背凭れ部
42 :下部背凭れ部
43 :回転軸(回動機構)
44 :椅子支持部材
45 :傾斜軸
46 :回動補助部材
47 :回転軸
48 :背面突出部
51 :ローラ支持部
52 :ローラ
60 :足用回転軸
61 :足用支持部
62 :足載置部
63 :ベルト支持バー
64 :下部アーム(第1アーム)
65 :上部アーム(第2アーム)
81 :ハンガー部
82 :ベルト
83 :牽引ワイヤ
A〜F :入浴介護装置
BR :浴室
M :被介護者
W :浴室壁面
WF :洗場床面
X :入浴介護装置
θ :角度
Claims (8)
- 利用者の浴槽での入浴を補助するための入浴介護装置であって、
前記浴槽に取り付けられる装置本体と、
前記装置本体に設けられた昇降機構と、
前記昇降機構により、前記装置本体に対して上下動し、浴槽内に配置可能な椅子と、
前記利用者が足を載置するための足載置部と、
前記足載置部を前記椅子に対して支持する支持アームと、
を備え、
前記椅子は、背凭れ部と、当該背凭れ部の下端部に連結された座部とを備え、
前記椅子において、少なくとも前記座部を含む部分は、前記座部の下方もしくは後方からの力を受けると、前記装置本体に対して傾斜可能に構成されており、
前記支持アームは、前記足載置部を前記座部に近接させる入浴姿勢位置と、前記足載置部を前記入浴姿勢位置よりも前記座部から離れた椅座位姿勢位置とに、選択的に配置可能に構成され、
前記足載置部が前記入浴姿勢位置と前記椅座位姿勢位置の間を移動するように、前記支持アームを駆動させる駆動機構をさらに備え、
前記駆動機構は、前記支持アームに連結される線状材を備え、
前記線状材を引っ張ることで、前記足載置部を前記椅座位姿勢位置から前記入浴姿勢位置に変位させるように構成されている、入浴介護装置。 - 前記背凭れ部は、上部背凭れ部と、前記上部背凭れ部の下方に回動可能に連結された下部背凭れ部と、を備え、
前記下部背凭れ部は、前記上部背凭れ部に対し、前記座部とともに、前記装置本体に対して傾斜可能に構成されている、請求項1に記載の入浴介護装置。 - 前記椅子が前記浴槽の底面と接触している状態から、当該椅子が前記昇降機構により下降されると、前記浴槽の底面から受ける力により、少なくとも前記座部を含む部分が、前記浴槽の底面に沿って滑り、前記装置本体から離れるように傾斜する、請求項1または2に記載の入浴介護装置。
- 前記椅子は、前記座部の下面側に前記浴槽の底面と接触可能なローラをさらに有している、請求項3に記載の入浴介護装置。
- 前記下部背凭れ部及び前記座部は、前記上部背凭れ部に重なるように回動可能である、請求項2に記載の入浴介護装置。
- 前記足載置部が前記入浴姿勢位置にある状態から、前記線状材をさらに引っ張ることで、少なくとも前記座部を含む部分が、前記装置本体に対して傾斜可能に構成されている、請求項1から5のいずれかに記載の入浴介護装置。
- 前記椅子は、前記座部の幅方向の両側に配置されたアームレストをさらに備え、
前記線状材は、前記アームレストに沿って配置されている、請求項1から6のいずれかに記載の入浴介護装置。 - 前記装置本体を支持するレールユニットをさらに有し、
前記レールユニットは、
前記浴槽の框に支持される固定レール部と、
前記装置本体を前記椅子とともに支持し、前記固定レール部に沿ってスライドすることで、前記椅子が前記浴槽内を臨む入浴位置と、前記浴槽外の移乗位置とを選択可能なスライド支持部を有し、
前記スライド支持部は、
前記固定レール部にスライド自在なスライド支持部本体と、
前記スライド支持部本体を、前記浴槽に隣接する洗い場床面上に支持する支持脚部と、
前記支持脚部の下端に取り付けられ、前記スライド支持部本体のスライドに伴い、前記洗い場床面上を転動する車輪と、
を備えている、請求項1から7のいずれかに記載の入浴介護装置。
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