先ず、本発明を実施するための最良の形態である実施形態1の光ディスク製造装置200について図1〜図6を用いて説明する。図1は光ディスク製造装置200の全体を示し、図2、図3は光ディスク製造装置200の一部分を示し、図4−1、図4−2は光ディスクの製造工程を説明するための図、図5はマスク部材とマスク移動機構とを説明するための図、図6は硬化光照射装置とシャッタ部材とを説明するための図である。
[実施形態1]
この光ディスク製造装置200は、一点鎖線で分けられる二つの機構部200Aと機構部200Bとからなる。信号層が1層の光ディスクを製造するときには、機構部200Aのみを動作させ、機構部200Bは動作させない。そして、信号層が2層の光ディスクを製造するときには、二つの機構部200Aと機構部200Bとを動作させる。先ずは、信号層が1層の光ディスクの一例として、高密度記録対応の光ディスクを製造するときの機構部200Aについて説明する。
図1において、射出成形機1は、図示しない射出成形金型に所望の記録溝を有するスタンパが取り付けられており、図4−1(A)に示すような信号層a1を有するディスク基板Dを射出成形する。ディスク基板Dは、厚みが1.1mm、直径が120mm、中心孔径が15mmのポリカーボネイト樹脂円板からなるが、これに限られるものではない。信号層a1は、情報信号が凹凸のピットとして形成されたものであり、説明を分かり易くするために、ディスク基板Dの厚みに比べて、凹凸のピットを大幅に拡大して示している。ディスク基板Dは、ディスク基板取り出し機構3によって、射出成形機1の近傍に設置されている冷却機構5に移載され、回転冷却される。
冷却機構5については本件出願人が既に提案(例えば、特開2002−358695号公報)しているので詳細に図示しないが、ディスク基板Dが射出成形機1から天地に対してほぼ垂直に取り出されるので、冷却機構5はディスク基板Dを垂直方向に保持しながら高速回転冷却を行う。射出成形機1から取り出されたばかりのディスク基板Dは未だ柔らかいので、冷却機構5が数千回転以上、好ましくは3000rpm以上の回転数で高速回転させることによって、大きな遠心力をディスク基板Dに与えながら高速で冷却することができ、反りの小さなディスク基板Dを得ることができる。冷却機構5は、射出成形機1の性能と有効な冷却時間との兼ね合いで、図示しないが、3台の回転冷却装置を備えており、3台の回転冷却装置はディスク基板取り出し機構3に対して等距離に配置される。射出成形機1からのディスク基板Dは、ディスク基板取り出し機構3によって順番に3台の回転冷却装置に移載される。
回転冷却装置はそれぞれ所定時間回転すると、停止し、移載機構7は回転冷却装置からディスク基板Dを鉛直方向に保持したまま順にエージング機構9に移載する。エージング機構9は、一般的な構造のものであり、複数のディスク基板Dをほぼ一定間隔で鉛直に保持しながら一定速度で前進し、ディスク基板Dをほぼ室温まで冷却する。エージング機構9の終端で、ディスク基板Dは順に間欠回転機構11に引き渡され、間欠回転機構11の回転に伴い、次のポジションにある表裏反転機構13まで搬送される。表裏反転機構13は、ディスク基板Dに形成された信号層a1を上面又は下面に反転するためのものであり、射出成形機1から取り出されたディスク基板Dの信号層a1の存在する面を上面又は下面どちらの向きにして後述する成膜装置19に供給するかで、選択的に動作する。この例では、表裏反転機構13によって180度反転され、信号層a1が上を向くように水平状態にされる。そして、ディスク基板Dは更に間欠回転機構11が回転するのに伴い、その次のポジションにある第1の移載機構15によって第1の搬送機構の搬送ライン17に移載される。
図1及び図2において、第1の搬送機構の搬送ライン17は、図面の上下方向に長いエンドレス(無端)状のものであり、丸印で示される複数のディスク載置部17aを備え、そのディスク載置部17aに移載されたディスク基板Dは、搬送ライン17が間欠的に動作するのに伴い、スパッタリング装置のような成膜装置19によって、図4−1(B)に示すように信号層a1に反射膜b1が形成される。反射膜b1はアルミニウム又は銀などからなる1μm以下の厚さを有する薄膜である。反射膜b1の形成されたディスクをDaとする。搬送ライン17に沿ってディスク蓄積部20が備えられ、ディスク蓄積部20はディスク積載用回転テーブル21と移載機構23とスペーサ供給機構25とからなる。これら機構は装置が正常に動作しているときには使用されないが、トラブルなどが生じて後述する後段の機構が停止した場合に次のように動作して、ディスクDaをディスク積載用回転テーブル21に蓄える。
ディスク積載用回転テーブル21は、複数枚のディスクDaを積載する積載部21Aを複数、例えば4箇所有し、スペーサ供給機構25はディスクDaが積載されるときにディスクDa間の隙間を確保するための不図示のスペーサを1個ずつ供給する。移載機構23は、図2に示すように、一方の移載アーム23Aで第1の搬送機構の搬送ライン17からディスクDaを1枚ずつディスク積載用回転テーブル21に移載して積載し、その上に、他方の移載アーム23Bでスペーサ供給機構25から取り出した不図示のスペーサを1個ずつ与える。また、トラブルが回復すると、トラブル回復信号を受けて、移載機構23は、ディスクDaが搬送ライン17上を搬送されて来ない内に、移載アーム23Aでディスク積載用回転テーブル21から搬送ライン17のディスク載置部17aへディスクDaを1枚ずつ自動的に移載する働きも行う。したがって、ディスクDaを無駄にすることなく、有効に使用することができる。なお、移載アーム23Bについては後述する。
次にディスクDaは、鎖線で示すように、移載機構27によって、搬送ライン17の第1の移載ポジションXから第2の搬送機構の第1の搬送ラインとなる搬送ライン29に移載され、搬送ライン29によって順次間欠的に搬送される。載置台29aについては図6(A)、(B)によって後で説明するが、搬送ライン29の上にはほぼ一定間隔で載置台29aが備えられ、それら載置台に順次ディスクDaが載置される。第2の搬送機構の搬送ライン29に沿って先ず、ほぼ100μmの厚みのカバー層となる光透過膜を形成する光透過膜形成部31が備えられている。光透過膜形成部31は、同時移載機構33とディスク基板Daに液状物質を供給する液体供給機構35と高速回転処理を行って前記液状物質をディスクDaに展延する回転処理装置37と移載機構39とキャップ蓄積機構41とキャップ洗浄機構42とを一組とする機構を、複数、例えば3組備える。これら3組の機構は同一であり、同時に動作する。これら組数については3組に限定されるものではなく、1組以上備えれば、生産は可能である。
3台の同時移載機構33は、それぞれ図示しない一対の180度方向の違う移載アームを備え、その一方の移載アームで搬送ライン29の載置台29a上のディスクDaを吸着保持すると同時に、回転処理装置37内で回転処理の行われたディスクDaを他方の移載アームによって吸着保持し、しかる後に180°水平方向に旋回して、搬送ライン29の載置台29a上のディスクDaを回転処理装置37内に載置すると同時に、それぞれの回転処理装置37内の3枚のディスクDaを搬送ライン29の載置台29a上に載置する。つまり、3台の同時移載機構33は、搬送ライン29が搬送動作を3回行う毎にディスクDaの前記移載動作を行うので、回転処理装置37における回転処理時間を1台の回転処理装置37の場合に比べてほぼ3倍長く採ることができる。
キャップ蓄積機構41は、詳細は図示しないが、間欠的に回転するテーブル上に複数のキャップ部材Caを保持している。移載機構39は、搬送ライン29の載置台29a上のディスクDaが回転処理装置37内に移載されると、キャップ蓄積機構41からキャップ部材Caの頂部を吸着保持、あるいは把持して、ディスクDaの不図示の中央孔を覆うように載置する。キャップ部材Caは、ディスクDaの中央孔とその中央孔に挿入される回転処理装置37における不図示のセンターピンを覆うような特定の構造になっている。通常、ディスク基板Dは、中央孔が直径15mmで、記録領域の内径が43〜46mmであるので、キャップ部材Caの外径は18〜23mm程度である。しかし、これに限定されるものではない。
キャップ部材CaがディスクDaに被せられると、液体供給機構35はキャップ部材Caの中心点又は中心点近傍に前記液状物質を供給する。この液状物質は、透明な材料、例えばアクリル樹脂であり、スピンコート方法によってほぼ100μmの厚みをもつ光透過膜を形成できるよう、粘度の調整されたものである。キャップ部材Caの中心点に前記液状物質が供給されるときには、液状物質は点状に与えられるが、キャップ部材Caの中心点の近傍に前記液状物質が供給されるときには、液状物質は中心点を囲む円環状に供給される。その円環の内径はできるだけ小さいことが望まれる。前記液状物質がキャップ部材Ca上に供給されると、回転処理装置37は高速回転を行って、遠心力により前記液状物質をディスクDa上に展延する。ディスクDa上にカバー層となる光透過膜c1の形成されたディスクDbを図4−1(C)に示す。
光透過膜形成部31においてカバー層となる光透過膜c1を形成する前記工程は、光透過膜が例えばほぼ100μmの厚みであることから、液状物質の供給と高速回転による液状物質の展延は2回以上行ってもよい。例えば、液状物質の供給と高速回転による液状物質の展延とを2回に分けて行うことによって、ほぼ100μmの厚みに等しい膜厚の均一な光透過膜c1を精確に、かつ短時間で形成することができる。2度の回転処理を行う場合、前記液状物質は粘度を含めて同一のものが用いられるが、必ずしもこれに限ることは無く、1度目に塗布される前記液状物質の粘度は低く、2度目に塗布される前記液状物質の粘度を高くしても良い。回転処理装置37が回転を停止し、光透過膜c1の展延が終了すると、移載機構39が動作して、回転処理装置37からキャップ部材Caをキャップ蓄積機構41に戻す。この戻されたキャップ部材Caには前記液状物質が塗布されているので、戻されたキャップ部材Caは洗浄ポジションでキャップ洗浄機構42によって洗浄され、前記液状物質が除去される。この洗浄工程は、洗浄液のシャワー、又は洗浄液への浸漬など種々の方法で行われ、前記液状物質は硬化光が照射されていないので、液状の状態にあるために容易に除去される。このような工程が他の二組の機構によっても同時に行われ、これら三組の機構によりそれぞれ光透過膜c1の形成されたディスクDbが搬送ライン29の載置台29a上に移載される。このとき、光透過膜c1はまだ硬化されていない。
前にも述べたが、特に高密度記録対応の光ディスクにあっては、光透過膜c1の平坦性がレーザ光による情報信号の書き込み、又は再生に大きな影響を与える。したがって、光透過膜c1はどの箇所も均一の厚みであることが大切である。しかしながら、スピンコート方法によってほぼ100μmの均一な厚みの光透過膜c1を形成するのは極めて難しく、光透過膜c1の外周部がそれよりも内側の部分に比べて厚くなってしまうことが分かった。この有効な対応策として、次に下記のような硬化光の照射による1次硬化工程を行う。
この1次硬化工程では、主としてディスクDbの光透過膜c1の外周部を除く、他の部分に硬化光を照射して半硬化又は硬化状態にしてその部分の膜厚を固定化し、光透過膜c1の外周部は未硬化の状態のままにしばらく放置しておくことにより、重力又は重力と遠心力によって、その外周部も薄くなって、光透過膜c1の全面で膜厚が均一化されるところに特徴がある。この硬化光照射工程は、互いに同一構造の同時移載機構43と45、互いに同一構造の回転処理装置47と49、互いに同一構造のマスク移動機構51と53、共通のフラッシュランプ装置のような硬化光照射機構55とによって行われる。同時移載機構43と45とは同時に動作する。同時移載機構43、45は搬送ライン29上のディスクDbを回転処理装置47、49に移載すると同時に、回転処理装置47、49で紫外線のような硬化光が照射されたディスクDbを搬送ライン29の載置台29a上に移載する。したがって、同時移載機構43、45は搬送ライン29の間欠的な搬送動作に同期して一回おきに移載動作を行い、回転処理装置47、49の回転処理時間は搬送ライン29の間欠的な2回の搬送動作に要する時間を採ることができる。
同時移載機構43、45がディスクDbを回転処理装置47、49に移載すると、マスク移動機構51、53が動作して、図4−1(D)に示されるようなマスク部材Maを水平方向にスライドさせ、マスク部材Maは回転処理装置47、49に載置されているディスク基板D2の上面から僅か上方に離れて停止させられる。マスク部材Maは、紫外線のような硬化光を実質的に透過しない樹脂材料又は無機材料、あるいは金属材料からなる。マスク部材Maの下の光透過膜c1に硬化光をできるだけ侵入させないために、マスク部材MaとディスクDbの上面との間の間隔は僅かであり、したがって、回転処理装置47、49が回転処理動作を行う前に、マスク部材Maを所定位置に設定させるのが好ましい。回転処理装置47、49が回転処理動作を行っているときにマスク部材Maを所定位置まで搬送すると、気流の乱れが生じ、光透過膜c1の平坦性に悪影響を与えるからである。
ここで、直径が120mmがディスク基板Dで行った種々の実験結果から、マスク部材Maの内径をwとし、ディスク基板Dの外径をWとするとき、内径wはディスク基板Dの外径Wの90%以上であって、ディスク基板Dの外径Wよりも小さい範囲(W>w≧0.9W)にあらねばならないことが分かった。マスク部材Maの内径wがディスク基板Dの外径Wの90%よりも小さい場合には、最外周領域の少し内側の平坦な部分まで半硬化又は硬化されないので、その領域が薄くなることがあり、光透過膜c1の平坦性に悪影響を及ぼす。また、マスク部材Maの外径がディスク基板Dの外径W以下である場合には、1次硬化工程において、ディスク基板Dの外周端面に硬化光が直接又は間接的に照射されて、その外周端面の光透過膜c1形成用の材料が半硬化又は硬化し、1次硬化工程の効果が半減され、光透過膜c1の平坦化が十分に行えなくなる。なお、ディスク基板Dの直径が120mmよりも小さいディスク、あるいは大きなディスクであっても、マスク部材Maの内径wは範囲(W>w≧0.9W)にあれば同様な効果が得られる。
図5(A)、(B)を利用して、マスク移動機構51、53及びマスク部材Maについて詳細を説明する。マスク移動機構51、53は双方とも同一構造であるので、マスク移動機構51についてのみ説明する。マスク移動機構51は、図示しない固定の構造物に固定されるベース部51A、上下動部51B、旋回駆動部51C、回転・上下動可能部51D、マスク支持部51Eなどからなる。上下動部51Bは、空気の吸入、排出により上下動するシリンダロッド51Baを有する空気シリンダ51Bbなどからなり、シリンダロッド51Baはベース部51Aの穴部を通して上方に延びている。シリンダロッド51Baの上部はフローティングジョイント51Bcを介して回転・上下動可能部51Dに結合されている。更に、上下動部51Bは、ベース部51Aに取り付けられて、マスク部材Maの下限を決定するストッパ部材51Bdと、マスク部材Maがストッパ部材51Bdに当接するときの衝撃と振動とを吸収するダンパ兼ストッパ部材Beとを有し、これらストッパ部材51Bdとダンパ兼ストッパ部材Beはマスク部材Maを偏りなく安定かつ水平に下限位置に停止することを可能にしている。
旋回駆動部51Cは、主に回転型テーブル51Caと、これを設定角度だけ両方向に回転させることができる回転駆動機構51Cb、回転型テーブル51Caに結合されてその回転に伴って回転する円盤状のギヤ51Ccとからなる。ギヤ51Ccの歯は、回転・上下動可能部51Dのギヤ51Daの歯に結合されており、ギヤ51Daの軸はラジアルベアリングと直線駆動ベアリング(不図示)とを組み合わせた構造を持つ回転・上下動可能機構51Dbに結合されている。回転・上下動可能機構51Dbはマスク支持部51Eの軸部分51Eaに結合されている。マスク支持部51Eは、主に軸部分51Ea、マスク部材Maの紙面表裏方向の角度と紙面左右方向の角度を調整し得るゴニオメータのような角度調整機構51Eb、マイクロメータのような上下微調整機構51Ecなどからなり、マスク部材Maは上下微調整機構51Ecに結合され支持されている。
次に、マスク移動機構51の動作について説明する。マスク部材Maが原点位置P1にあるときには、上下動部51Bのシリンダロッド51Baは上方向に前進している状態にある。光透過膜c1の形成されたディスクDbが搬送ライン29から回転処理装置47に移載されると、マスク移動機構51の旋回駆動部51Cが動作を開始し、その回転駆動機構51Cbは回転型テーブル51Caを所定回転角度だけ回転させる。これに伴い、円盤状のギヤ51Ccが回転し、これに歯合している回転・上下動可能部51Dのギヤ51Daが回転し、回転・上下動可能機構51Dbが所定角度回転することによってマスク支持部51Eが回転し、それに支承されているマスク部材Maが所定角度旋回して、図5(B)の破線で示すように、マスク部材Maは原点位置P1から回転処理装置47上のマスキング位置P2まで旋回する。次に、上下動部51Bのシリンダロッド51Baは設定量だけ下方向に後退する。この際、予め角度調整機構51Ebによって、マスク部材MaがディスクDbと高精度で並行となるようにマスク部材Maの角度調整が行われ、さらに上下微調整機構51EcがディスクDbの上面に接触せず、しかも至近距離に位置する高さに調整されている。したがって、マスク部材Maがマスキング位置P2にあるときには、マスク部材Maの中心とディスクDbの中心とがほぼ一致し、マスク部材MaがディスクDbの上面からわずかな位置に並行している。
そして図1に示す硬化光照射機構55からの紫外線のような硬化光がマスク部材Maの内径wに囲まれる空部Tを通してディスクDbの光透過膜c1に照射されると、先ず、上下動部51Bのシリンダロッド51Baが上方向に前進することによって、回転・上下動可能部51D、マスク支持部51Eなどが上昇することにより、マスク部材Maも上昇する。これとほぼ同時に、旋回駆動部51Cが動作してそのギヤ51Cc、回転・上下動可能部51Dのギヤ51Daを回転させ、マスク支持部51Eを回転させてマスク部材Maを所定角度旋回させる。その後すぐに同時移載機構43が回転処理装置47のディスクDbを搬送ライン29上に戻す。そして、マスク部材Maは図5(B)に示す原点位置P1に戻って、次のサイクルの動作に備える。マスク移動機構部53は、マスク移動機構51と全く同様に動作するので説明を省略する。
他方では、回転処理装置47と49とから同一の位置にある共通の硬化光照射機構55は、同時移載機構43、45が搬送ライン29上のディスク基板Dbを回転処理装置47、49に移載すると、先ず回転処理装置47の上方の設定位置まで移動する。したがって、回転処理装置47は、マスク部材Maが所定位置に設定されると、直ぐに回転動作を行うが、この回転動作は光透過膜c1の膜厚を微調整することと、光透過膜c1への硬化光を均一に照射するものであるので、光透過膜形成部31における回転処理装置37の回転速度よりも低い回転速度で回転を行い、その回転処理の最終段階又はその直後において、フラッシュランプ装置のような硬化光照射装置55が硬化光を短時間、例えば、200ms程度均一に照射する。この硬化光の照射によって、マスク部材Maで遮光された以外の部分の光透過膜c1は硬化又は半硬化される。しかし、マスク部材Maで遮光された光透過膜c1の外周部は半硬化もされずに柔らかい状態のままにある。なお、この硬化光の照射は、光透過膜c1を展延するための前記回転処理の途中で行われてもよい。
硬化光照射装置55は、紫外線のような硬化光の照射を終了すると、原位置を通って回転処理装置49へ向かい、回転処理装置49の上方の設定位置に停止すると同時に、又はその直前に、回転処理装置49が回転動作を開始し、その回転処理の最終段階又はその直後において、硬化光照射装置55が硬化光を短時間均一に照射する。しかる後、硬化光照射装置55は原位置に戻ると共に、マスク移動機構51、53はそれぞれのマスク部材Maを回転処理装置47、49から外れている原位置まで移動させ、次の周期の動作に備える。光透過膜c1の外周部だけが柔らかい状態で搬送ライン29の載置台29a上に戻されたディスクDbは、次の2次硬化工程で光透過膜c1の全面が硬化される。前記1次硬化工程から2次硬化工程の行われるまでの時間は、光透過膜c1の柔らかい外周部が重力によって厚みが低減されて平坦化される時間長であり、搬送時間の長さで調整している。なお、硬化光照射装置55の照射時間は、回転処理に要する時間に比べて大幅に短い時間、例えば数百ms以下(例えば、200ms程度)の時間であるので、回転処理装置47、49に対して1台の硬化光照射装置55で対応することができ、経済的に有利である。また、装置の発熱によるディスクの品質への悪影響を小さくできる。なお、回転処理装置47、49において硬化光を照射した後もディスクDbを回転した場合には、マスク部材Maによって遮光された光透過膜c1の柔らかい外周部だけが遠心力を受けて更に展延され、薄くなるので、その回転時間、回転速度を調節することによってより一層平坦化が促進され、高品質の光ディスクを得ることができる。
この2次硬化工程では、図4−1(E)に示すようにディスクDbの上側から硬化光を照射するため、図6に示すように、搬送ライン29の硬化ポジションの上方にフラッシュランプ装置のような硬化光照射装置57が設けられている。硬化光照射装置57は、概略図6(B)に示すように、遮光カバーとなる外殻郭部57A、外殻郭部57A内に設けられたフラッシュランプのような硬化光ランプ57B、外殻郭部57Aの上部に設けられてその内部の温度があまり上昇しないよう排気するファンのような排気部57C、外殻郭部57Aの内壁から内側方向に延びて硬化光ランプ57Bを支持するランプ支持部57D、硬化光ランプ57Bからの光をディスクDbの円周部に反射してその円周に付着している光透過膜c1の未硬化部分を硬化させる反射板部57Eからなる。また、外殻郭部57Aの下面には遮光性を良くするための遮光シール57Fも設けられている。その他に、硬化光照射装置57の外殻郭部57Aと協働して硬化光が漏洩しないように密閉空間を形成するシャッタ部材58が備えられている。シャッタ部材58については特に詳しく説明しないが、搬送ライン29の進行方向に対して直角方向に進退可能な2枚の遮光板58a、58bからなり、搬送ライン29の載置台29aの円柱状軸部29bに当接する部分は半円状の切欠部となっており、また、前記2枚の遮光板58aと58bとが当接するときには、互いが接触しあう部分で上下に重なり合うように、一方は上側が切欠されて薄くなっており、他方の遮光板は下側が切欠されて薄くなっている。
硬化光照射装置57は、搬送ライン29の間欠的な搬送動作に同期して上下動できるようになっており、搬送ライン29が間欠的に止まると、図6(A)、(B)に示すように、硬化光照射装置57は設定位置まで下降する。このとき、搬送ライン29の載置台29a上に位置し、搬送の妨げにならないように間隔をもって位置しているシャッタ部材58の遮光板58a、58bがそれぞれ搬送ライン29の進行方向に対して直角方向(矢印方向)に移動して、遮光板58a、58bの対向部分は重なり合う。そして、外殻郭部57Aの下端の遮光シール57Fがャッタ部材58の上面に当接し、密閉空間が形成される。この密閉空間内にディスク受台29aとディスクDbは存在する。この状態で、硬化光ランプ57Bが発光する。硬化光ランプ57Bからの紫外線はディスクDbの平面状の光透過膜c1に直接照射され、また、その円周部に形成されている光透過膜には反射板部57Eにより反射された紫外線が照射されるので、すべての光透過膜が硬化されて光透過膜となる。このとき、排気部57Cは密閉空間内の空気を排気している。
硬化光ランプ57Bからの紫外線の照射が終了すると、硬化光照射装置57とシャッタ部材58とはほぼ同時に動作を開始し、硬化光照射装置57は上方に移動し、シャッタ部材58は搬送ライン29の搬送方向に直角で、反対方向に移動する。硬化光照射装置57とシャッタ部材58とが元の位置に戻ると、搬送ライン29は再び搬送を開始する。そして、硬化光照射装置57、シャッタ部材58は次のサイクルの動作に備える。ここで図6(C)の左図からも分かるように、シャッタ部材58の2枚の遮光板58a、58bは載置台29aに接触しない程度の間隔で向き合っていればよい。シャッタ部材58によって紫外線が搬送ライン29に照射されないため、搬送ライン29の温度上昇を防ぐことができる。
搬送ライン29の終端部には、ディスク蓄積部20と同様なディスク蓄積部59が備えられていると同時に、第2の搬送機構の第2の搬送ラインとなる搬送ライン61の開始端と移載機構63とが備えられている。ディスク蓄積部59は、ディスク積載用回転テーブル59Aとスペーサ蓄積機構59bとからなり、ディスク積載用回転テーブル59Aは複数枚、例えば200枚のディスクDbを積載する積載部を4箇所有し、スペーサ蓄積機構59BはディスクDbが積載されるときにディスクDb間の隙間を確保するための不図示のスペーサを多数蓄積している。ディスク積載用回転テーブル59Aとスペーサ蓄積機構59Bとは、前述のディスク積載用回転テーブル21とスペーサ蓄積機構23と同様なものであるので、説明を省く。ディスク蓄積部59は、製造ラインの後段でトラブルが生じたときに、第1の搬送機構の搬送ライン17及び第2の搬送機構の搬送ライン29上の仕掛かり中のディスクを無駄にすることがないように蓄積したり、製造途中のディスクのサンプルを抽出するためのものである。したがって、通常の動作時には、移載機構63は、搬送ライン29の終端部のディスクDbをすべて第2の搬送機構の搬送ライン61に移載する。なお、移載機構63は故障発生信号を受けるときに自動的に搬送ライン29のディスクDbをディスク蓄積部59に移載し、また、故障回復信号を受けるときにディスク蓄積部59からディスクDbを搬送ライン61に移載する。さらに、不図示のサンプル採取用ボタンを押すことによって、予め決められた枚数のディスクDbをサンプルとして、ディスク蓄積部59に移載することができる。
第2の搬送機構の搬送ライン61に移載されたディスクDbは、先ず、搬送ライン61上においてハードコート用の液状物質が液状物質供給機構65によって供給される。液状物質供給機構65は液状物質を吐出しながらほぼ1回転するノズル部65Aを有し、第3の搬送ライン61上を順次搬送されてくるディスクDbの内周側の所定位置にドーナッツ状に液状物質を供給する。この液状物質は前記光透過膜用の液状物質に比べて低粘度であり、耐擦傷性に優れた特性を呈するハードコート層を形成するのに適した材料が用いられる。ディスクDbにドーナッツ状に供給された液状物質は、回転処理部67において展延され、図4−2(F)で示すような、例えば1〜4μm程度の厚みのハードコート層eが形成される。ディスクDbにハードコート層eの形成されたディスクをDcという。回転処理部67は、同一構成の3台の同時移載機構69と3台の高速回転処理を行う回転処理装置71とからなり、3台の同時移載機構69は同時に動作して搬送ライン61上のディスクDbを対応する回転処理装置71に移載すると同時に、回転処理が終了したディスクDcを搬送ライン61上に移載する。液状物質供給機構65は、搬送ライン61の近傍に配置され、ノズル部65Aが搬送ライン61上に待機しているために、処理時間を短縮することができる。
次の工程で、図4−2(G)で示すように、ハードコート層eは硬化光照射装置73の上方からの紫外線のような硬化光により硬化される。硬化光照射装置73は硬化光照射装置57と同様な構成のものであるので、説明を省略するが、搬送ライン61の上方だけに設けられている。ディスクDcは、二つの移載アーム75aと75bとを有する移載機構75の移載アーム75aによって、搬送ライン61からターンテーブル機構77に移載される。ターンテーブル機構77は、ディスクDcを載置する箇所を90°間隔で4ポジション有し、90°ずつ間欠的に回転する。表裏反転機構79が、搬送ライン61からディスクDcを受け取るポジションの次のポジション近傍に配置されており、ディスクDcを表裏反転する。その表裏反転によって、ディスク基板Dの裏面が上になり、次のポジションでスパッタリング装置のような成膜装置81によって、図4−2(H)に示すように、ディスク基板Dの裏面上に吸水防止用膜fが形成される。この吸水防止用膜fは、ディスク基板Dそのものの材質が吸水することによって、反ってしまうのを防止する目的と、金属反射膜の腐食を防止する目的とがある。ディスクDcに吸水防止用膜fの形成されたディスクをDdという。
ディスクDdがターンテーブル機構77の最初のポジションに戻ると、移載機構75の他方の移載アーム75bがそのディスクDdを中継台83に載置する。このとき、移載機構75の移載アーム75aが搬送ライン61からディスクDcをターンテーブル機構77に移載する動作と、移載機構75の移載アーム75bがターンテーブル機構77からディスクをDdを中継台83に移載する動作とは同時に行われる。中継台83に載置されているディスクDdは移載機構85の移載アーム85aによって検査部87に移載されると共に、検査部87で検査されたディスクDdは、移載機構85の移載アーム85bによって別の中継台89に移載される。検査部87では、下方向から検査光を照射して、あるいはCCDカメラなどを利用して予め決められた検査項目に従ってディスクの検査を行う。検査結果に従って、移載機構91の一方の移載アームは良品を良品用積載機構93へ、また不良品は不良品用積載機構95へ移載され、順次積載される。
移載機構91のこの選別動作は、検査部87での検査結果による良品と不良品とを示す信号を受けて、自動的に行われる。良品用積載機構93は一般的な構造のものであって、詳細については図示しないが、ターンテーブルとその上に配置され、順次多数枚ディスクを積載できる複数のスタックポールなどからなる光ディスク積載部とからなる。なお、移載機構91の他方の移載アームは、スペーサ蓄積部96からスペーサを良品用積載機構93のディスクの上に1個宛て移載する。スペーサは積載されるディスク間の間隙を確保し、光ディスク同士が密着するのを防ぐ役割を果たす。なお、図示していないが、良品の光ディスクには必要に応じてレーベル印刷が施され、信号層が1層の高密度記録対応の光ディスクが完成する。
[実施形態2]
前述したように、この光ディスク製造装置200は、一点鎖線で分けられる二つの機構部200Aと機構部200Bとからなり、信号層が2層の高密度記録対応の光ディスクを製造するときには、二つの機構部200Aと機構部200Bとを動作させる。先ず、信号層が2層の高密度記録対応の光ディスクの製造が、信号層が1層である高密度記録対応の光ディスクの前述の製造と大きく異なる概略について先ず説明すると、(1)成膜装置19によって、図4−1(B)に示したようにディスク基板Dの第1の信号層a1に反射膜b1が形成されたディスクDaは、第1の搬送機構の搬送ライン17から第2の搬送機構の搬送ライン29に移載されず、二つの機構部200Aと機構部200Bとの間の搬送を行う同時移載機構97によって、機構部200Bの第3の搬送機構の搬送ライン137に移載される。また、(2)機構部200Bにおいて前記ディスクDaに第2の信号層a2が転写された光透過膜を有するディスクが、同時移載機構97によって搬送ライン137から機構部200Aの搬送ライン17に移載される。(3)成膜装置19は、第2の信号層a2に半透明の反射膜を形成、つまり、第1の反射膜だけでなく、半透明の第2の反射膜をも形成する。(4)半透明の第2の反射膜の形成されたディスクが搬送ライン17から搬送ライン29に移載され、前述したような工程でカバー層となる光透過膜などが形成される。
機構部200Bにおいて、射出成形機101は、図示しない射出成形金型に所望の記録溝を有するスタンパが取り付けられており、図7−1(A)に示すような第2の信号層a2を有する転写用ディスク基板Tを射出成形する。転写用ディスク基板Tは、直径が120mm、中心孔径が15mmの樹脂円板からなるが、これに限られるものではない。第2の信号層a2は、情報信号が凹凸のピットとして形成されたものであり、説明を分かり易くするために、転写用ディスク基板Tの厚みに比べて、凹凸のピットを大幅に拡大して示している。転写用ディスク基板Tは、ディスク取り出し機構103によって、射出成形機101の近傍に設置されている冷却機構105に移載され、回転冷却される。
ディスク取り出し機構103、冷却機構105については、前述したディスク基板取り出し機構3、冷却機構5と同様なものであり、動作も同様であるので説明を省略する。各冷却機構105の回転冷却装置はそれぞれ所定時間回転すると、停止し、移載機構107は転写用ディスク基板Tを縦方向に保持したまま順にエージング機構109に移載する。移載機構107及びエージング機構109は、前述した移載機構7及びエージング機構9とほぼ同様な構造であって、動作も同様であるので、説明を省略する。エージング機構109でほぼ室温まで冷却された転写用ディスク基板Tは、エージング機構109の終端で、順に間欠回転機構111に引き渡され、間欠回転機構111の回転に伴い、次のポジションで、表裏反転機構113によって180度反転され、第2の信号層a2が上を向くように水平状態にされる。前述のように、表裏反転機構113は、反転の必要な場合のみ動作させればよい。そして、転写用ディスク基板Tは更に間欠回転機構111が回転するのに伴い、その次のポジションで、移載機構115によって転写用搬送機構の搬送ライン117に移載される。
転写用搬送機構の搬送ライン117に沿って、光透過膜形成部31と同様な構成であって同様に動作して、転写用の光透過膜c2を転写用ディスク基板Tに形成する光透過膜形成部119が備えられている。光透過膜形成部119は、同時移載機構121と転写用ディスク基板Tに液状物質を供給する液体供給機構123と、高速回転処理を行って前記液状物質を転写用ディスク基板Tに展延する回転処理装置125と、移載機構127とキャップ蓄積機構129とキャップ洗浄機構131とを一組とする機構を3組備える。これら3組の機構は同一であり、同時に動作する。3台の同時移載機構121は、同時移載機構33と同様なものであって、搬送ライン117上の転写用ディスク基板Tをそれぞれ回転処理装置125内に載置すると同時に、それぞれの回転処理装置125内の3枚の転写用ディスク基板Tを搬送ライン117上に載置する。3台の同時移載機構121は、搬送ライン117が搬送動作を3回行う毎に転写用ディスク基板Tの移載動作を行うので、回転処理装置125における回転処理時間を1台の回転処理装置125の場合に比べて3倍長く採ることができる。
キャップ蓄積機構129は、キャップ蓄積機構41と同様なものであるので、詳しく述べないが、間欠的に回転するテーブル上に複数のキャップ部材Caを保持している。転写用ディスク基板Tが回転処理装置125内に移載される度に、移載機構127は、キャップ蓄積機構129からキャップ部材Caを転写用ディスク基板Tの不図示の中央孔を覆うように載置する。キャップ部材Caは、転写用ディスク基板Tの中央孔とその中央孔に挿入されている回転処理装置125の不図示のセンターピンを覆うような特定の構造になっている。前述したように、ディスク基板Dは、中央孔が直径15mmで、記録領域の内径が43〜46mmであり、ディスク基板Dに適した転写用の光透過膜c2を転写用ディスク基板Tに形成しなければならない。したがって、キャップ部材Caの外径は18〜23mm程度であり、しかしこれに限定されるものではない。
キャップ部材Caが転写用ディスク基板Tに被せられると、液体供給機構123がキャップCaの中心点又は中心点近傍に前記液状物質を供給する。この液状物質は、透明な材料、例えばアクリル樹脂であり、スピンコート方法によって数十μmの厚みをもつ光透過膜を形成できるよう、粘度の調整されたものである。キャップ部材Caの中心点に前記液状物質が供給されるときには、液状物質は点状に与えられるが、キャップ部材Caの中心点の近傍に前記液状物質が供給されるときには、液状物質は中心を囲む円環状に供給される。前記液状物質がキャップ部材Ca上に供給されると、回転処理装置125は高速回転を行って、遠心力により前記液状物質を転写用ディスク基板T上に展延する。光透過膜c2の形成された転写用ディスク基板Tを図7−1(B)に示す。光透過膜c2の形成された転写用ディスク基板Tを転写用ディスクTaという。転写用ディスクTaは、同時移載機構121によって転写用搬送機構の搬送ライン117に移載される。光透過膜c2の形成は実施形態1で説明した光透過膜c1の形成と同様に行うことができるので、これ以上の説明は省略する。また、キャップ洗浄機構131によるキャップCaの洗浄についても前述と同様にできるので、説明を省略する。この時点では、光透過膜c2はまだ硬化されていない。搬送ライン117に移載された転写用ディスクTaは移載機構133によってターンテーブル機構135に移載される。
他方では、成膜装置19によって図4−1(B)に示したディスク基板Dの第1の信号層a1に反射膜b1が形成されたディスクDaは、図3でも示すように、搬送ライン17から搬送ライン29に移載されずに、同時移載機構97によって搬送ライン17の第2の移載ポジションYから機構部200Bの搬送ライン137の移載ポジションZに移載される。搬送ライン137のポジションZに移載されたディスクDaは、次のポジションで液状物質供給機構139によって液状物質が順次供給される。液状物質供給機構139は液状物質を吐出しながらほぼ1回転するノズル部139Aを有し、搬送ライン137上を順次搬送されてくるディスクDaの内周側の所定位置に円環状に液状物質を供給する。この液状物質は、透明で接着性に優れた樹脂材料、代表的には接着剤である。
液状物質の供給されたディスクDaは、回転処理部141で高速回転処理され、図7−1(C)に示すように、反射膜b1上に液状物質が展延されて薄い接着層dを形成する。ディスクDaに接着層dの形成されたディスクをDeとする。回転処理部141は、同一構成の3台の同時移載機構143と一般的なスピンナのような3台の回転処理装置145とからなる。同時移載機構143は、搬送ライン137上のディスクDaを同時にそれぞれの回転処理装置145に移載すると同時に、それぞれの回転処理装置145で回転処理されたディスクを搬送ライン137上に移載する。ディスクDeの反射膜b1上に形成された接着層dは硬化処理がなされないまま、移載機構147の一方の移載アーム147Aにより吸着保持されてターンテーブル機構135に移載される。ターンテーブル機構135は時計回りに間欠的に回転する。なお、3台の同時移載機構143の移載動作は、搬送ライン137の間欠的な3回の搬送動作毎に行われ、その間、各回転処理装置145は回転処理動作を行っている。
ターンテーブル機構135は、90°間隔で四つの載置台135Aを有する。載置台135Aは石英のような透明な耐熱性の光透過材料からなり、ディスクDeは四つの載置台135Aの内の向き合う二つに載置される。ディスクDeが載置されていない空の二つの載置台135Aに前述の転写用ディスクTaが搬送ライン117から移載される。図8(A)に示すように、各載置台135Aの上面には、その中心部にセンタリング部Pが設けられ、またその外周部に前述したようなマスク部材Maが設けられている。センタリング部Pは小円板部Paとピン部Pbとからなる。ディスクDe、転写用ディスクTaの外周部分はマスク部材Maによって支承され、また内周部分が小円板部Paによって支承される。センタリング部Pは載置台135Aと同一の材料からなるのが好ましい。
ターンテーブル機構135の間欠的な回転に伴い、転写用ディスクTaが搬送ライン137から移載されるポジションの次のポジションにおいて、図7−1(D)、図7−1(E)に示すように、その下側に設けられている硬化光照射装置149から紫外線のような硬化光が、図8(B)に示すようなマスク部材Ma(W>w≧0.9W)により遮光されないディスクDeの接着層dと転写用ディスクTaの光透過膜c2の面域に交互に照射される1次硬化工程が行われる。この1次硬化工程は載置台135Aを通して行われる。なお、Wはディスク基板Dの外径、wはマスク部材Maの内径をそれぞれ示す。硬化光が照射されたディスクDeの接着層d、転写用ディスクTaの光透過膜c2は半硬化又は硬化され、マスク部材Maで遮光された外周部分は硬化されないまま次のポジションに搬送される。前記次のポジションで、移載機構151がディスクDeを、その接着層dの形成されていない内周部を吸着保持して表裏反転機構153の載置台153Aへ、また、転写用ディスクTaを、光透過膜c2の形成されていない内周部を吸着保持して載置台155へ交互に順次移載する。なお、硬化光をターンテーブル機構135の下側から照射せずに、上側から照射してもかまわない。この場合には、マスク部材MaをディスクDeの接着層d、転写用ディスクTaの光透過膜c2に接触しないように、これらから若干距離を隔てて上方に設置すればよい。
表裏反転機構153の載置台153A上のディスクDeは、上面と下面とが反転されて載置台153Bに載置される。この反転操作によって、ディスクDe上に形成されている接着層dが下側になる。前述したように、その接着層dは少なくとも外周部が硬化していないので、載置台153A、載置台153BはディスクDeにおける接着層dの形成されていない内周部分を支承する大きさのものが好ましい。表裏反転機構153の反転動作は、載置台153AがディスクDeを吸着保持した状態で180度反転動作を行って、ディスクDeを反転させて載置台153Bに載置する構造、あるいは載置されている位置でディスクDeの外周端を把持して180度回転して反転する構造など、本件出願人が既に提案している構造のものを採用することができる(例えば、特開平5−277427号公報又は特開平8−131928号公報)。
移載機構157が載置台155に載置されている転写用ディスクTaの光透過膜c2の形成されていない内周部を吸着保持して、最初に転写用ディスクTaをターンテーブル機構159のポジションaに移載する。次に、移載機構157は載置台153B上のディスクDeを転写用ディスクTaの上に移載する。ターンテーブル機構159は複数の移載ポジションを備えており、図示しないが、それら移載ポジションにはディスクDeを転写用ディスクTaからある小さな間隔を隔てて保持するために、ディスクDeと転写用ディス基板Tの中心孔に挿入される保持部材が備えられている。この保持部材によって転写用ディスクTaの光透過膜とディスクDeの接着層とはある小さな距離を隔てた状態で真空貼り合せ機構161へ搬送される。
真空貼り合せ機構161は、二つのポジションbとcとが収まるようになっており、ディスク基板の外形サイズよりも少し大きい図示しない二つの円筒チャンバをポジションbとc上にそれぞれ有している。二つの円筒チャンバは、ターンテーブル機構159が間欠的に回転動作を行うときにはポジションbとcとの上方に待機しており、ターンテーブル機構159が停止すると、二つのチャンバが降下して、ターンテーブル機構159との小さな密閉空間を作り、図示していない真空ポンプ装置が動作して、その二つの密閉空間を真空にする。ターンテーブル機構159のポジションaで、ある一定の間隔で対向した状態に保たれた転写用ディスクTaとディスクDeとが2組形成され、それらがポジションbとcとに搬送されると、図示しない二つのチャンバが下降して二つのポジションbとcとが真空雰囲気になり、転写用ディスクTaにディスクDeが重ね合わされ、加圧力がかけられるようになっている。このようにして、転写用ディスクTaの光透過膜c2とディスクDeの接着層dとの間に気泡の存在しない2枚のディスクの貼り合せが行われる。なお、必ずしも真空中で貼り合せを行う必要はなく、本件出願人が既に提案(例えば、特開平9−63127号公報)しているように、接着膜c1を光透過転写層d1に軽く接触させた状態で、相対的に回転差を持って回転させながら貼り合わせるような方法でもよい。この場合には、接着膜c1は1次硬化を行わない方が望ましい。また、別の貼り合せ方法でもよい。
図7−2(F)に示すように、転写用ディスクTaとディスクDeとを貼り合せてなるディスクDfは、ターンテーブル機構159のポジションdにおいて移載機構163によってターンテーブル機構165に移載される。ターンテーブル機構165はターンテーブル機構135と同様な構造のものであるので、説明を省略する。ターンテーブル機構165の丸印で示す透明な材料からなる載置台165Aに載置されているディスクDfは、図7−2(G)に示すように、硬化光照射装置167によって上方から紫外線のような硬化光が照射され、2次硬化が行われる。この2次硬化工程では、上方からの硬化光が接着層dと光透過膜c2との全面に照射されることによって、接着層dと光透過膜c2との未硬化部分が完全に硬化される。
2次硬化工程の行われたディスクDfは、図3の破線矢印で示すように、移載機構147の移載アーム147Bによって、搬送ライン137に移載される。このディスクDfをターンテーブル機構165から搬送ライン137に移載する動作と、前述した搬送ライン137からターンテーブル機構135にディスクDeを移載する動作とは、移載機構147の移載アーム147Bと移載アーム147Aとによって同時に行われる。搬送ライン137によって搬送されるディスクDfは、図7−2(H)に示すように、表裏反転機構169によって表裏が反転され、転写用ディスク基板Tが上側、ディスク基板Dが下側になる。そして、図7−2(I)に示すように、次に剥離機構171によって転写用ディスク基板Tが光透過膜c2から剥離され、光透過膜c2には第2の信号層a2が転写される。剥離機構171は、2台の同時移載機構173と175、剥離機構177と179、転写用ディスク除去機構181と183とから概略構成される。
剥離機構177、179は、同時移載機構173、175それぞれからディスクDfが移載されると、次のポジションで剥離動作を行う。この剥離は、例えば、ディスクDfの中央孔側から機械的な力を転写用ディスク基板Tと転写用の光透過膜c2との間に加えて、それらの間を部分的に剥離して開き、その間に圧搾空気を与えることにより、光透過膜c2に悪影響を与えることなく確実かつ容易に剥離を行うことができる。なお、剥離機構171については前述の剥離機構に限定されるものではない。そして、剥離された転写用ディスク基板Tは次のポジションで転写用ディスク除去機構181、183によってそれぞれ除去される。転写用ディスク基板Tが除去され、転写用の光透過膜c2の転写されたディスクDfをディスクDgという。ディスクDgは、図3の破線矢印で示すように、同時移載機構173、175によって搬送ライン137に移載される。このとき、搬送ライン137からディスクDfが剥離装置177、179に同時に移載されるのは勿論である。
次に、図3の破線矢印で示すように、同時移載機構97によって、ディスクDgは搬送ライン137のポジションZから搬送ライン17のポジションYのディスク載置部17a上に移載される。ここで、ディスク載置部17aは丸印で示されているように一定間隔で複数設けられており、ディスクDgは1個おきでディスク載置部17aに載置される。ディスクDgが載置されていないディスク載置部17aには、射出成形されたディスク基板Dが移載機構15によって移載される。したがって、ディスク基板Dも1個おきでディスク載置部17aに載置される。信号層が1層の光ディスクの製造に比べて、信号層が2層の光ディスクの製造の場合には、搬送ライン17の搬送速度を2倍にすることで、第1の信号層が形成されたディスク基板と第2の信号層が形成されたディスクDgとを交互にディスク載置部17a上に載置して搬送することができる。
成膜装置19は、交互に、図4−1(B)で示したディスク基板Dの第1の信号層a1に反射膜b1を形成すると共に、図7−3(J)で示すように、ディスクDgにおける第2の信号層a2を有する光透過膜c2上にAu、Ag、Si、Ai、Ag合金などからなる半透明の第2の反射膜b2を成膜する。第2の反射膜b2が形成されたディスクDgをディスクDhという。したがって、成膜装置19以降の搬送ライン17では、ディスク基板Dの第1の信号層a1に反射膜b1の形成されたディスクDaとディスクDhとが交互に順に搬送される。ディスク蓄積部20は、前述したように、トラブルなどが発生したときにディスクDaとディスクDhとを、移載機構23の移載アーム23Aによってディスク積載用回転テーブル21の積載部21Aに積載する。また、トラブルなどが回復したときには、ディスクDaとディスクDhとが交互にディスク積載用回転テーブル21の積載部21Aから搬送ライン17に移載される。
そして、搬送ライン17の移載ポジションXで、図3の破線矢印で示すように、移載機構27によってディスクDhのみが搬送ライン29に移載される。ディスクDaは搬送ライン17をそのまま搬送される。次に、図7−3(K)に示すように、光透過膜形成部31によって半透明の第2の反射膜b2の上にカバー層となる光透過膜c1が形成される。光透過膜形成部31及び光透過膜c1の形成方法については、既に詳述したので説明を省略するが、光透過膜c1は信号層が1層のときに比べて薄く、光透過膜c1とc2との和の厚みがほぼ100μmになる厚みである。次に、図7−3(L)に示すように、光透過膜c1の1次硬化工程が行われる。更に、硬化光照射装置57によって光透過膜c1の2次硬化工程が行われる。光透過膜c1の形成されたディスクをディスクDiという。このディスクDiの光透過膜c1の上に、前述と同様にしてハードコート層が形成され、その後に検査され、良品か、あるいは不良品か反転されて、分別される。光透過膜形成部31以降の各機構、及び動作については既に詳しく述べてあり、光透過膜c1が第2の反射膜b2上に形成される点を除いて、前述と同じであるので、説明を省略する。このようにして、高密度記録対応の信号層が2層の光ディスクを製造することができる。
なお、以上述べた実施形態において、冷却機構、光透過膜形成部、硬化光照射装置、接着層を形成するための回転処理部、貼り合せ機構、剥離機構など個々の機構や装置については別のものを用いても勿論よい。また、ディスク蓄積部20、59、1次硬化を行う硬化光照射装置、吸水防止膜形成機構などについては、必ずしも必要でなく、必要に応じて別の構造のものを用いても構わない。