JP4610035B2 - ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。さらに詳しくは、本発明は、ゴム成分として、水酸化アルミニウムなどの補強用充填材との相互作用を高めた変性ジエン系重合体を用いてなる良好なウエット性能を保持すると共に、耐摩耗性を向上させたゴム組成物、及びこのゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム用補強充填材としては、カーボンブラックが多用されている。これは、カーボンブラックが他の充填材に比べて、高い補強性と優れた耐摩耗性を付与しうるからである。
一方、近年の省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車の燃料消費節約を目的として、タイヤ用ゴムの低発熱化、すなわち低転がり抵抗を図る場合、カーボンブラックの充填量減量、あるいは大粒径のカーボンブラックの使用が考えられるが、いずれの場合も、補強性、耐摩耗性、湿潤路面でのグリップ性が低下するのを免れないことが知られている。
他方、低発熱性と、補強性、耐摩耗性、湿潤路面でのグリップ性を両立させる充填材として、含水ケイ酸(湿式シリカ)が知られており、例えば特開平3−252431号公報、特開平6−248116号公報、特開平7−70369号公報、特開平7−188466号公報、特開平7−196850号公報、特開平8−225684号公報、特開平8−245838号公報、特開平8−337687号公報など、数多くの特許が出願されている。
【0003】
しかしながら、この含水ケイ酸は、同程度の比表面積を有するカーボンブラックと比較して、それが配合されたゴム組成物の貯蔵弾性率が小さく、そのためドライ路面での運動性能が劣るという欠点を有している。
上記貯蔵弾性率を高める方法として、含水ケイ酸の充填量の増量、含水ケイ酸の比表面積の増大などが知られているが、いずれの場合も、含水ケイ酸の特徴である低発熱性を低下させるという問題を有している。
また、湿潤路面でのグリップ性を向上させる手段として、ゴムのガラス転移温度(Tg)、すなわち、0℃におけるtanδを高くすることが知られている。しかしながら、ゴムのTgを高くすると低温性能が低下するとともに、転がり抵抗が高くなる、すなわち低燃費性が悪化するという問題が生じる。
【0004】
これらの問題を解決するために、これまで様々な技術、例えば(1)特殊なシリカと練り工夫で湿潤路面でのグリップ性を向上させたタイヤトレッド用ゴム組成物(ヨーロッパ特許第501227号明細書)、(2)加工性、耐摩耗性を低下させることなく、かつ低発熱性を保持し、ウエットスキッド性能を向上させたタイヤトレッド用ゴム組成物(特開平7−149950号公報)、(3)低温域及び高温域のウエット路面又はセミウエット路面におけるグリップ性及び作業性を向上させたタイヤトレッド用ゴム組成物(特開平8−59893号公報)、(4)耐摩耗性を損なわずに、低温域及び高温域のウエット路面及びセミウエット路面におけるグリップ性を向上させたタイヤトレッド用ゴム組成物(特開平8−59894号公報)などが開示されている。
しかしながら、上記(1)のゴム組成物においては、作業性(加工性)に問題があり、(2)のゴム組成物は、耐摩耗性が充分とはいえない。また、(3)及び(4)のゴム組成物においては、補強用充填材の配合量が多すぎるという問題がある。
【0005】
一方、ゴム用補強充填材として、水酸化アルミニウムが知られている。この水酸化アルミニウムを配合したゴム組成物をタイヤトレッドに用いてなるタイヤは、湿潤路面でのグリップ性などのウエット性能が良好で、かつ低燃費性を有するものの、耐摩耗性に劣るという欠点を有している。したがって、耐摩耗性を向上させるために、高価なシランカップリング剤などが併用されてきた。この場合、コスト高になるのを免れない。
ところで、発熱性の低いゴム組成物を得るために、これまで、ゴム組成物に使用する充填材の分散性を高める技術開発が数多くなされてきた。その中でも特に、有機リチウム化合物を用いたアニオン重合で得られるジエン系重合体の重合活性末端を充填材と相互作用を持つ官能基にて修飾する方法が、最も一般的になりつつある。
例えば、補強用充填材としてシリカを用い、かつアニオン重合で得られたジエン系重合体の重合活性末端を、アルコキシル基を有するケイ素化合物で修飾してなるゴム材料を用いたゴム組成物(特公平6−57767号公報、特開平7−233216号公報、特開平9−87426号公報)などが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、補強用充填材として水酸化アルミニウム粉体を配合した系において、シランカップリング剤を用いなくても、ウエット性能を保持し得ると共に耐摩耗性を向上させたゴム組成物及びこのゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ゴム成分として、水酸化アルミニウムに対して相互作用を高めた特定の変性ジエン系重合体を含むものを用いてなるゴム組成物により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、(A)末端にヒドロカルビルオキシシラン基をもつジエン系重合体少なくとも20重量%を含むゴム成分と、その100重量部当たり、補強用充填材として、少なくとも(B)水酸化アルミニウム粉体3〜60重量部を含むことを特徴とするゴム組成物、好ましくは補強用充填材として、さらに(C)カーボンブラック及び/又はシリカ粉体5〜85重量部を含むゴム組成物を提供するものである。
また、本発明は、前記ゴム組成物をトレッドゴムとして用いたことを特徴とする空気入りタイヤをも提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のゴム組成物においては、(A)成分として、変性ジエン系重合体を含むものが用いられる。この変性ジエン系重合体は、ジエン系重合体の末端にヒドロカルビルオキシシラン基をもつものであり、該末端にヒドロカルビルオキシシラン基を導入する方法としては特に制限はなく、様々な方法を用いることができる。
例えば、重合活性末端を有するジエン系重合体の該重合活性末端に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させることにより、末端にヒドロカルビルオキシシラン基を導入することができる。
この変性ジエン系重合体の原料として用いられる重合活性末端を有するジエン系重合体は、例えば有機リチウム化合物を重合開始剤とし、共役ジエン化合物単独又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物をアニオン重合させることにより、製造することができる。
上記共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン;イソプレン;1,3−ペンタジエン;2,3−ジメチルブタジエン;2−フェニル−1,3−ブタジエン;1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、1,3−ブタジエンが特に好ましい。
【0009】
また、これらの共役ジエン化合物との共重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン;α−メチルスチレン;1−ビニルナフタレン;3−ビニルトルエン;エチルビニルベンゼン;ジビニルベンゼン;4−シクロヘキシルスチレン;2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、スチレンが特に好ましい。
さらに、単量体として共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、それぞれ1,3−ブタジエン及びスチレンの使用が、単量体の入手の容易さなどの実用性の面、及びアニオン重合特性がリビング性などの点で優れることなどから、特に好適である。
重合開始剤の有機リチウム化合物としては、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、一方の末端に水素原子を有し、かつ他方の末端が重合活性末端である共役ジエン系重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、一方の末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性末端である共役ジエン系重合体が得られる。
この重合活性末端を有するジエン系重合体の該重合活性末端に反応させるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば一般式(I)
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R1 及びR2 は、それぞれ炭素数1〜18の一価の炭化水素基、A1 は炭素数1〜20の二価の炭化水素基、R3 及びR4 は、それぞれ無置換若しくは置換アミノ基及び/又はエーテル基を有していてもよい炭素数1〜18の一価の炭化水素基、nは1〜3の整数を示し、R1 Oが複数ある場合、各R1 Oはたがいに同一でも異なっていてもよく、R2 が複数ある場合、各R2 はたがいに同一でも異なっていてもよい。また、R3 及びR4 はたがいに同一でも異なっていてもよく、さらにたがいに結合して、R3 及びR4 が結合する窒素原子と共に、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよい。)
で表される化合物、一般式(II)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R5 及びR6 は、それぞれ炭素数1〜18の一価の炭化水素基、A2 は炭素数1〜20の二価の炭化水素基、R7 及びR8 は、それぞれ水素原子、又は無置換若しくは置換アミノ基及び/又はエーテル基を有していてもよい炭素数1〜18の一価の炭化水素基、mは1〜3の整数を示し、R5 Oが複数ある場合、各R5 Oはたがいに同一でも異なっていてもよく、R6 が複数ある場合、各R6 はたがいに同一でも異なっていてもよい。また、R7 およびR8 はたがいに同一でも異なっていてもよく、さらにたがいに結合して環構造を形成していてもよい。)
で表される化合物、又は一般式(III)
R9 a Si(OR10)b X(4-a-b) …(III)
(式中、R9 はエポキシ基若しくは不飽和アシロキシ基を有する置換基、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基、R10は炭素数1〜18の一価の炭化水素基、aは1〜3の整数、bは1〜3の整数、a+bは2〜4の整数を示し、R9 が複数ある場合、各R9 はたがいに同一でも異なっていてもよく、R10Oが複数ある場合、各R10Oはたがいに同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物などを挙げることができる。
【0014】
前記一般式(I)で表される化合物の例としては3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリエトキシ)シラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリエトキシ)シラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリメトキシ)シラン、3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリメトキシ)シラン、3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシラン、1−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール、3−〔10−(トリエトキシシリル)デシル〕−4−オキサゾリンなどが挙げられる。これらの中で、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、1−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール及び1−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾールを好ましく挙げることができる。特に1−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾールが、充填材の分散効果及び補強効果の点で好適である。
【0015】
また、一般式(II)で表される化合物の例としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物などが好ましく挙げられるが、これらの中で特に、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンが好適である。
【0016】
一方、一般式(III)で表される化合物の例としては、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン、トリス(γ−グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ−メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ−メタクリロキシプロピル)メトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル−トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−エチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジメチルフェノキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−ジエチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−メチルジイソプロペンオキシシラン等を挙げることができる。これらの中で、充填材の分散効果及び補強効果などの点から、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好適である。
【0017】
前記ヒドロカルビルオキシシラン化合物(以下、末端変性剤と称すことがある。)を用いて、ジエン系重合体の重合活性末端に反応させる際、該末端変性剤の使用量は、ジエン系重合体の製造に使用される有機リチウム化合物1モルに対し、通常0.25〜3.0モルであり、好ましくは0.5〜1.5モルである。0.25モルより少ない量ではヒドロカルビルオキシ基がカップリング反応に消費されて好ましくない。また3モルを超えるような量においては過剰の末端変性剤が無駄になるとともに、末端変性剤に含まれる不純物により、重合活性末端が失活して実質的な変性効率が低下して好ましくない。
【0018】
また、この際の反応温度は、ジエン系重合体の重合温度をそのまま用いることができる。具体的には30〜100℃が好ましい範囲として挙げられる。30℃未満では重合体の粘度が上昇しすぎる傾向があり、100℃を超えると、重合活性末端が失活し易くなるので好ましくない。
このようにして、ジエン系重合体の末端にヒドロカルビルオキシシラン基が導入され、このヒドロカルビルオキシ基と水酸化アルミニウムの水酸基が反応することで、充填材の分散性が向上すると共に、補強性が向上する。したがって、水酸化アルミニウム粉体と該変性ジエン系重合体を組合わせることにより、シランカップリング剤を用いなくても、ウエット性能を低下させることなく、耐摩耗性を向上させることができる。
【0019】
また、補強用充填材としてシリカ粉体を用いた場合でも、表面官能基のシラノール基と変性ジエン系重合体末端のヒドロカルビルオキシ基とが同様に反応するので、上記と同じような効果を奏する。
本発明のゴム組成物においては、(A)成分のゴム成分として、前記変性ジエン系重合体を少なくとも20重量%含むことが必要である。この量が20重量%未満では所望の物性を有するゴム組成物が得られず、本発明の目的が達せられない。ゴム成分中の該変性ジエン系重合体の好ましい含有量は35重量%以上であり、特に40〜100重量%が好適である。
この変性ジエン系重合体は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この変性ジエン系重合体と併用されるゴム成分としては、天然ゴム及びジエン系合成ゴムが挙げられ、ジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。また、その一部が多官能型変性剤、例えば四塩化スズのような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでもよい。
【0020】
本発明のゴム組成物においては、(B)成分として水酸化アルミニウム粉体が用いられる。
この水酸化アルミニウム粉体としては、一次粒子平均径DI が0.35μm以下で、二次粒子平均径DL が0.8μm以下であり、かつDL /DI 比が1.7以下のものが好ましく用いられる。
ここで、二次粒子平均径DL は、超音波分散をした後にレーザー回折式粒度分析計で測定した平均径であり、一次粒子平均径DI は、BET比表面積から次式DI =6/{(BET比表面積)×(真比重)}によって算出される径である。(なお、上記BET比表面積は、110℃で30分間乾燥後、JIS R1626に準拠し、窒素吸着一点法にて測定した値である。)
【0021】
この水酸化アルミニウム粉体の二次粒子平均径DL が0.8μmを超えたり、一次粒子平均径DI が0.35μmを超えると、補強効果が充分に発揮されず、耐摩耗性に劣る上、湿潤路面でのグリップ性(ウエット性能)が低下するおそれが生じる。また、粒子径が小さすぎると、粒子同士の凝集が強くなり、二次粒子径/一次粒子径の比(DL /DI )が1.7を超え、ゴムへの良好な分散が困難となり、所望の性能を有するゴム組成物が得られない場合がある。耐摩耗性、ウエット性能及び低燃費性のバランスなどの面から、この水酸化アルミニウム粉体の二次粒子平均径DL は0.5μm以下がより好ましく、一次粒子平均径DI は0.30μm以下がより好適である。またDL /DI は1.5以下がより好ましい。
本発明においては、この(B)成分の水酸化アルミニウム粉体は、一種用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は(A)成分100重量部当たり、3〜60重量部の範囲である。この含有量が3重量部未満では充分な湿潤路面でのグリップが得られず、本発明の目的が達せられない。また、60重量部を超えると耐摩耗性が損なわれる上、ゴム組成物に要求される他の物性が低下するおそれがある。耐摩耗性、ウエット性能及び低燃費性などを考慮すると、この(B)成分の好ましい含有量は、5〜40重量部の範囲である。
【0022】
本発明のゴム組成物においては、所望により、(C)成分として、カーボンブラック及び/又はシリカ粉体を配合することができる。ここで、カーボンブラックとしては、製造方法によりチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びサーマルブラックなどがあるが、いずれのものも使用することができる。また、このカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(BET)が90m2 /g以上であり、かつジブチルフタレート吸油量(DBP)が100ミリリットル/100g以上のもが好適である。
このBET値が90m2 /g未満では充分な耐摩耗性が得られにくく、BET値があまり大きすぎると低燃費性が悪化する原因となる。耐摩耗性及び低燃費性を考慮すると、このBET値のより好ましい範囲は、90〜300m2 /gである。なお、該BET値はASTM D3037−88に準拠して測定した値である。さらに、DBP値が100ミリリットル/100g未満では充分な耐摩耗性が得られにくく、また、このDBP値があまり大きすぎると低燃費性が悪化する原因となる。耐摩耗性及び低燃費性を考慮すると、このDBP値のより好ましい範囲は、50〜200ミリリットル/100gである。なお、該DBP値は、JIS K6221−1982(A法)に準拠して測定した値である。
【0023】
一方、シリカ粉体としては特に制限はなく、従来ゴム補強用として慣用されているもの、例えば乾式法シリカ、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などの中から適宜選択して用いることができるが、湿式法シリカが好適である。このシリカ粉体は、耐摩耗性及び低燃費性などを考慮すると、窒素吸着比表面積(BET)が200〜300m2 /gで、かつセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(CTAB)が170〜270m2 /gの範囲にあるものが好適である。なお、該BET値は、300℃で1時間乾燥後、ASTM D4820−93に準拠して測定した値であり、CTAB値はASTM D3765−92に準拠して測定した値である。
【0024】
本発明においては、この所望により用いられる(C)成分として、前記カーボンブラックのみを用いてもよいし、またシリカ粉体のみを用いてもよく、あるいは、カーボンブラックとシリカ粉体を併用してもよい。この(C)成分の含有量は、耐摩耗性、ウエット性能及び低燃費性のバランスなどの面から、(A)成分100重量部当たり、5〜85重量部の範囲が好ましく、特に30〜70重量部の範囲が好ましい。
本発明のゴム組成物においては、該(C)成分として、少なくともシリカ粉体を用いる場合には、その効果をさらに向上させるために、所望により、(D)成分として、カップリング剤を含有させることができる。このカップリング剤としては特に制限はなく、従来公知の様々なカップリング剤の中から任意のものを選択して用いることができるが、これらの中で特にシラン系カップリング剤が好ましい。
【0025】
ここで、シラン系カップリング剤の例としては、一般式(RO)3 Si−Sm −Si(OR)3 またはX1 Si(OR)3 (但し、RはORが加水分解可能になるような基(例えばメチル基、エチル基等)であり、X1 は有機物と反応する官能基(例えばメルカプトアルキル基、アミノアルキル基、ビニル基、エポキシ基、グリシドキシアルキル基、ベンゾチアゾリル基、N,N−ジメチルカルバモイル基等)であり、mは0<m≦9を満たす整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィドなどが挙げられる。
【0026】
本発明においては、この所望により用いられる(D)成分のカップリング剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は、前記(C)成分のシリカ粉体に対して、通常1〜20重量%の範囲で選ばれる。この含有量が1重量%未満ではカップリング剤を含有させた効果が充分に発揮されないおそれがあり、一方、20重量%を超えるとその量の割りには効果の向上がみられず、むしろ経済的に不利となる。配合効果及び経済性などを考慮すると、この(D)成分のカップリング剤の好ましい含有量は、2〜15重量%の範囲である。
本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、他の充填材、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。
【0027】
本発明のゴム組成物は、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練することによって得られ、成形加工後、加硫を行い、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部分等のタイヤ用途を始め、防振ゴム、ベルト、ホースその他の工業品等の用途にも用いることができるが、特にタイヤトレッド用ゴムとして好適に使用される。
本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させた本発明のゴム組成物が未加硫の段階でトレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中の加熱加圧して、タイヤが得られる。
このようにして得られた本発明の空気入りタイヤは、ウエット性能を保持すると共に、耐摩耗性も良好である。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、加硫ゴムの物性は、下記の方法に従って測定した。
(1)ウエットスキッド性能(湿潤路面でのグリップ性)
東洋精機(株)製、スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅0.1%、周波数52Hz、測定温度0℃の条件で測定した際のtanδの値を、比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど、良好である。
(2)耐摩耗性
ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温でスリップ率25%の条件で試験を行い、摩耗量の逆数を、比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど、良好である。
【0029】
製造例1
乾燥し、窒素置換された800ミリリットルの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン300g、1,3−ブタジエン40g、スチレン10g、ジテトラヒドロフリルプロパン0.16ミリモルを注入し、これにn−ブチルリチウム(BuLi)0.55ミリモルを加えた後、50℃で2時間重合を行った。重合系は重合開始から終了まで、全く沈殿は見られず均一に透明であった。重合転化率はほぼ100%であった。
この重合系にさらに末端変性剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.55ミリモルを加えた後にさらに30分間変性反応を行った。この後、重合系にさらに2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5ミリリットルを加えて反応の停止を行ない、さらに常法に従い乾燥することにより変性SBRを得た。
この変性SBRの重量平均分子量は25.5×104 、ガラス転移点は−39℃、ムーニー粘度〔ML1+4 /100℃〕は30であった。
実施例1及び比較例1〜3
第1表に示すゴム組成物を調製したのち、150℃、30分間の条件で加硫処理し、得られた加硫ゴムの物性を測定した。結果を第1表に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
(注)
1)SBR1500:ジェイエスアール(株)製、スチレンブタジエンゴム
2)カーボンブラック:東海カーボン(株)製、商品名「シーストKH」、BET値93m2 /g、DB値119ミリリットル/100g
3)水酸化アルミニウム粉体:DL 0.37μm、DI 0.30μm、DL /DI 1.23
4)シランカップリング剤:デグサ社製Si69、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
5)加硫促進剤DPG:ジフェニルグアニジン
6)老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン
【0032】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物は、補強用充填材として水酸化アルミニウム粉体を用いると共に、ゴム成分として水酸化アルミニウムとの相互作用を高めた変性ジエン系重合体を用いたものであって、良好なウエット性能及び耐摩耗性を有する上、シランカップリング剤の配合量を低減又は無くすことができるので、コスト的にも有利であり、特にタイヤトレッド用ゴムとして好適に用いられる。
Claims (6)
- (A)下記一般式(III)
R9 a Si(OR10)b X(4-a-b) …(III)
(式中、R9 はエポキシ基若しくは不飽和アシロキシ基を有する置換基、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基、R10は炭素数1〜18の一価の炭化水素基、aは1〜3の整数、bは1〜3の整数、a+bは2〜4の整数を示し、R9 が複数ある場合、各R9 はたがいに同一でも異なっていてもよく、R10Oが複数ある場合、各R10Oはたがいに同一でも異なっていてもよい。)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物の中から選ばれる一種の化合物をジエン系重合体の重合活性末端に反応させた、末端にヒドロカルビルオキシシラン基をもつジエン系重合体少なくとも20重量%を含むゴム成分と、その100重量部当たり、補強用充填材として、少なくとも(B)水酸化アルミニウム粉体3〜60重量部を含むことを特徴とするゴム組成物。 - 補強用充填材として、(C)カーボンブラック及び/又はシリカ粉体5〜85重量部を含む請求項1記載のゴム組成物。
- 重合活性末端を有する前記ジエン系重合体が、有機リチウム化合物を重合開始剤とし、共役ジエン化合物単独又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を重合させて得られたものである請求項1又は2に記載のゴム組成物。
- (B)成分の水酸化アルミニウム粉体が、一次粒子平均径DI が0.35μm以下で、二次粒子平均径DL が0.8μm以下であり、かつDL /DI 比が1.7以下のものである請求項1ないし3のいずれかに記載のゴム組成物。
[ここで、二次粒子平均径DL は、超音波分散をした後にレーザー回折式粒度分析計で測定した平均径であり、一次粒子平均径DI は、BET比表面積から次式DI =6/{(BET比表面積)×(真比重)}によって算出される径である。(なお、上記BET比表面積は、110℃で30分間乾燥後、JIS R1626に準拠し、窒素吸着一点法にて測定した値である。) ] - (C)成分のカーボンブラックが、窒素吸着比表面積(BET)が90m2 /g以上で、かつジブチルフタレート吸油量(DBP)が100ミリリットル/100g以上のものである請求項2ないし4のいずれかに記載のゴム組成物。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドゴムとして用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
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