JP4609718B2 - 水素ロータリエンジンの燃料噴射装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術を含む従来技術では、このようなエンジン回転数に応じた水素の分布状態を得ることが難しい。
このように構成された本発明においては、水素インジェクタ及び水素噴射タイミング制御手段により、作動室に圧縮行程中に水素を直接噴射するので吸気充填効率を高めることが出来る。さらに、水素流出方向設定手段により、水素ロータリエンジンの低回転域では水素インジェクタからの水素が圧縮行程の作動室のリーディング領域に向かって流出するので、リーディング領域で水素ガスがリッチとなるような成層状態を作ることが出来る。従って、燃焼効率を高めることが出来、その結果、燃費を向上させることが出来る。さらに、水素流出方向設定手段により、高回転域では水素インジェクタからの水素が圧縮行程の作動室の中央領域に向かって流出するので、水素はその中央領域から両側の領域へと拡散し易く、吸入空気と水素ガスとのミキシングが促進される。その結果、過早着火のような異常燃焼を抑制することが出来る。
このように構成された本発明においては、第1インジェクタの水素の噴射方向が作動室のリーディング領域に向かう方向となり、第2インジェクタの水素の噴射方向が作動室の中央領域に向かう方向となるように、第1及び第2の水素インジェクタが異なる角度でロータリエンジンに取り付けられ、さらに、低回転域では第1水素インジェクタが作動し、高回転域では第2水素インジェクタが作動するので、簡易な構成で且つ取付角度の調整により、作動室内のリーディング領域或いは中央領域に向けて水素を確実に流出させることが出来る。
このように構成された本発明においては、水素流出方向設定手段は、水素ロータリエンジンの高回転域且つ高負荷域で第2水素インジェクタを作動させるので、過早着火のような異常燃焼が最も発生し易い高回転域且つ高負荷域において、吸入空気と水素とのミキシングを促進して異常燃焼を確実に抑制することが出来ると共に、第2水素インジェクタの容量が第1水素インジェクタの容量より大であるので、より多くの水素流量が必要な高回転域且つ高負荷域においても水素流量を確実に確保することが出来る。
このように構成された本発明においては、第1及び第2の水素インジェクタ及び水素噴射タイミング制御手段により、作動室に圧縮行程中に水素を直接噴射するので吸気充填効率を高めることが出来る。さらに、本発明においては、圧縮行程の作動室のリーディング領域に向けて水素を噴射する第1インジェクタ及び圧縮行程の作動室の中央領域に向けて水素を噴射する第2インジェクタを有し、水素インジェクタ切換手段により、低回転域では第1インジェクタを作動させ、高回転域では第2インジェクタを作動させる。従って、低回転域では水素が圧縮行程の作動室のリーディング領域に向けて噴射されてリーディング領域で水素ガスがリッチとなるような成層状態を作ることが出来ると共に、高回転域では水素が圧縮行程の作動室の中央領域に向けて噴射されて吸入空気と水素ガスとのミキシングを促進することが出来る。その結果、低回転域では燃焼効率を高めて燃費を向上させることが出来、高回転域では過早着火のような異常燃焼を抑制することが出来る。
このように構成された本発明においては、第1及び第2の水素インジェクタ及び水素噴射タイミング制御手段により、作動室に圧縮行程中に水素を直接噴射するので吸気充填効率を高めることが出来る。さらに、本発明においては、圧縮行程の作動室のリーディング領域に向けて水素を噴射する第1インジェクタ及び圧縮行程の作動室の中央領域に向けて水素を噴射する第2インジェクタを有し、水素インジェクタ切換手段により、低回転域では第1インジェクタを作動させ、高回転域では第1及び第2の両方のインジェクタを作動させる。従って、低回転域では水素が圧縮行程の作動室のリーディング領域に向けて噴射されて、リーディング領域で水素ガスがリッチとなるような成層状態を作ることが出来ると共に、高回転域では、水素が圧縮行程の作動室のリーディング領域及び中央領域の両方に向けて噴射されて吸入空気と水素ガスとのミキシングを促進することが出来る。その結果、低回転域では燃焼効率を高めて燃費を向上させることが出来、高回転域では過早着火のような異常燃焼を抑制することが出来る。
このように構成された本発明においては、水素インジェクタ切換手段は、水素ロータリエンジンの高回転域且つ高負荷域で第1及び第2の両方の水素インジェクタを作動させるので、過早着火のような異常燃焼が最も発生し易い高回転域且つ高負荷域において、吸入空気と水素とのミキシングを促進して異常燃焼を確実に抑制することが出来る。さらに、第1水素インジェクタの容量と第2水素インジェクタの容量とが同一であるので、部品の共通化によりコストを低減しつつ、上述したように、より多くの水素流量が必要な高回転域且つ高負荷域において第1及び第2のインジェクタの両方の水素インジェクタを作動させるので、水素流量を確実に確保することが出来る。
先ず、図1乃至図4により、本発明の実施形態による燃料噴射装置が適用された水素ロータリエンジンの構成を説明する。図1は、本実施形態による水素ロータリエンジンのエンジン本体部の概略構成を示す図であり、図2は、本実施形態による水素ロータリエンジンのエンジン本体部の断面構造の一部を示す断面図であり、図3は、図1に示すエンジン本体部及びそれに付随する装置を示す水素ロータリエンジンの全体構成を示す図であり、図4は、本実施形態による直噴式水素ガスインジェクタによる水素ガスの噴射方向及び噴射される領域を示す図である。
先ず、図1に示すように、本実施形態による水素ロータリエンジン1は、トロコイド状の内周面を有するロータハウジング2及びその両側にそれぞれ配置された平面状の内面を有するサイドハウジング4を備えている。図2に示すように、本実施形態の水素エンジン1は、いわゆる2ロータ式ロータリエンジンであり、3つのサイドハウジング4a、4b(インターミディエイトハウジング)、4cと、ロータハウジング2とにより構成されたそれぞれの空間内にロータ6が配置されている。
図1に示すように、ロータハウジング2には2つの点火プラグ14、15が取り付けられ、また、サイドハウジング4には、吸気ポート16及び排気ポート18が形成されている。吸気ポート16には、吸気通路20が接続されており、その吸気通路20を介して作動室10内に空気が導かれる。また、排気ポート18には、排気通路22が接続されており、その排気通路22を介して作動室12内の排気ガスが排出される。なお、このような構成は、図2に示す2つのロータ6に対して、ほぼ同じ構成となっている。
ロータ6は、この図1において時計回りに回転し、この図1に示す状態では、作動室10において圧縮行程が行われ、作動室11において膨張(爆発)工程が行われている。
これらの点火プラグ14、15及びプラグホール14a、15aの配置及び大きさは、これらのプラグホール14a、15aをロータ6のアペックスシール7が通過する際のガス吹き抜けが少なくなるように定められている。つまり、ロータ6の回転方向に対して後方側(トレーリング側)の点火プラグ14をアペックスシール7が通過する際には、圧縮行程となっている作動室10と、膨張行程となっている作動室11との圧力差が大きく、ガスが吹き抜けやすいので、点火プラグ14が燃焼室(作動室)から遠い位置に配置されると共にそのプラグホール14aの径がプラグホール15aより小さく形成されている。
一方、ロータ6の回転方向に対して前方側(リーディング側)の点火プラグ15をアペックスシール7が通過する際には、圧縮行程となっている作動室10と、膨張工程から排気行程に入っている隣の作動室との圧力差が小さいので、点火プラグ15は燃焼室(作動室)に近い位置に配置されると共にそのプラグホール15aの径が点火プラグ15の径と同等の大きさに形成されている。従って、この水素ロータリエンジン1では、リーディング側の点火プラグ15の方が、燃焼性が良好、即ち、着火後に燃焼が拡散し易くなっている。
本実施形態では、中央噴射インジェクタ40の容量が、L側噴射インジェクタ42の容量よりも大きいものとなっており、所定時間内により多くの水素ガスを噴射することが出来るものとなっている。これは、後述するように、中央噴射インジェクタ40を高回転域で使用するためである。
各水素ガスインジェクタ40、42は、それぞれ、ECU70に接続され、このECU70によって、各インジェクタの噴射の切換、噴射タイミング及び噴射量などが制御されるようになっている。
ECU70には、これらのセンサの出力信号、特に、エンジン回転数センサ72からのエンジン回転数Nに関する出力信号、及び、エアフローセンサ76からの吸入空気量Aに関する出力信号が入力されるようになっている。
図5は、本実施形態による各直噴式水素インジェクタの切換制御を示すフローチャートであり、図6は、本実施形態によるエンジン回転数及びエンジン負荷に基づいて各直噴式水素ガスインジェクタを切り換えるための制御マップを示す図である。なお、図5に示すフローチャートにおいて、「S」は各ステップを示す。
先ず、図5に示すように、S1においてエンジン回転数Nを示す出力信号及び吸入空気量Aを示す出力信号を各センサ72、74から読み込む。次に、S2において、S1で読み込んだ吸入空気量A及びエンジン回転数Nから、所定の空燃比(例えばλ=2)となるような燃料噴射量Q及びエンジン負荷Rを演算する。
このS3において、エンジン負荷Rが所定値(ラインTt)を超えると判定された場合は、S4に進み、S1で読み込んだエンジン回転数Nが所定値を超えているか否かを判定する。本実施形態では、所定値を4500rpmと設定している。本実施形態では、4500rpmを超えると高回転域、4500rpm以下であれば低回転域とする。なお、この所定値は、エンジンの排気量や特性によって異なる値に設定しても良い。
一方、S3において、エンジン負荷Rが所定値以下であると判定された場合、或いは、S4において、エンジン回転数Nが所定値(4500rpm)以下であると判定された場合は、S6に進み、L側噴射インジェクタ42により、上述したように圧縮行程の所定のタイミングで、S2で演算された燃料噴射量Qの水素を作動室10のリーディング側領域Lに向けて水素を噴射させる。
なお、図6に示す制御マップには、いくつかのスロットル開度についてエンジン負荷(発生トルク)の変化を合わせて示している。例えば、スロットル開度70%であり且つ高回転域(4500rpm〜)では、得られるエンジン負荷Rが所定値Ttを超えているため、中央噴射インジェクタ42による噴射を行わせるが、スロットル開度50%且つ高回転域では、得られるエンジン負荷Rが所定値Tt以下になるため、L側噴射インジェクタ40による噴射を行わせることが分かる。
これに対して本実施形態では、エンジン1の高負荷域且つ高回転域において、作動室10の中央側領域Cに向けて水素を噴射することにより、水素ガスが作動室10内に均一に分散するようにしている。即ち、作動室10の中央側に向けて噴射された水素は、ロータ6が回転するにつれ、その中央側領域Cから、前方のリーディング側領域L及び後方のトレーリング領域Tに拡散して、吸入空気と水素ガスとのミキシングが促進されるのである。その結果、過早着火のような異常燃焼を抑制することが出来る。
そして、本実施形態では、中央噴射インジェクタ40の容量を、L側噴射インジェクタ42の容量よりも大きくしているので、低回転域より水素噴射量の多い高回転域で水素ガスの噴射量を確実に得ることが出来、その結果、出力を確保することが出来る。
この第2実施形態による水素ロータリエンジンの構造は、図1乃至図3により上述した構造と基本的に同様である。以下、上述した実施形態(第1実施形態)と異なる点について説明する。
先ず、水素ロータリエンジン1の構造として、この第2実施形態では、図1に示す2つの水素ガスインジェクタ40、42を、互いの同じ容量のインジェクタとしている。本実施形態では、第1実施形態に比べ、中央噴射インジェクタ42の容量を下げ、中央噴射インジェクタ40の容量と同じ容量にして、部品(インジェクタ)の共通化を図っている。
一方、S13においてエンジン負荷Rが所定値以下であると判定され、或いは、S14においてエンジン回転数Nが所定値以下であると判定された場合には、S16に進み、上述したS6と同様に、L側噴射インジェクタ42により、S12で演算された燃料噴射量Qの水素を作動室10のリーディング側領域Lに向けて水素を噴射させる。
一方、高回転域、特に、高負荷且つ高回転域である場合には、両方のインジェクタ40、42により水素ガスを噴射している。この場合においては、作動室10の中央側領域C及びリーディング側領域Lの両方に向けて水素ガスが噴射されるので、ロータ6の回転に伴って水素ガスと吸入空気とのミキシングが促進され、特に、作動室10の中央側領域Cの水素ガスは、ロータ6の回転に伴ってトレーリング領域Tにも拡散されて吸入空気とのミキシングが促進される。これらの結果、異常燃焼(過早着火)の発生を抑制することが出来る。
さらに、水素ガスの噴射量が大きくなる高回転域、特に、高回転域且つ高負荷域において、2つのインジェクタ40、42の両方から水素ガスを噴射することにより水素ガスの噴射量を確実に得ることが出来る。そして、2つのインジェクタ40、42の共通化を図ることが出来るので、コストも削減される。
2 ロータハウジング
4 サイドハウジング
6 ロータ
10 圧縮行程の作動室
11 膨張行程の作動室
14 トレーリング側(T側)の点火プラグ
15 リーディング側(L側)の点火プラグ
16 吸気ポート
18 排気ポート
40 直噴式水素ガスインジェクタ(中央噴射インジェクタ)
42 直噴式水素ガスインジェクタ(L側噴射インジェクタ)
70 コントロールユニット
72 エンジン回転数センサ
74 エアフローセンサ
C 圧縮行程の作動室の中央側領域
L 圧縮行程の作動室のリーディング側領域
T 圧縮行程の作動室のトレーリング側領域
Claims (6)
- 水素ロータリエンジンの燃料噴射装置であって、
上記水素ロータリーエンジンの作動室を形成するロータハウジングに取り付けられ、上記水素ロータリエンジンの作動室に水素を直接噴射する水素インジェクタと、
この水素インジェクタが上記作動室内に圧縮行程中の所定のタイミングで水素を噴射するように噴射タイミングを制御する水素噴射タイミング制御手段と、
上記水素インジェクタからの水素が、上記水素ロータリエンジンの低回転域では圧縮行程の上記作動室のリーディング領域に向かって流出し、高回転域では圧縮行程の上記作動室の中央領域に向かって流出するように、水素の噴射方向を設定する水素流出方向設定手段と、
を有することを特徴とする水素ロータリエンジンの燃料噴射装置。 - 上記水素インジェクタは、少なくとも第1インジェクタ及び第2インジェクタを有し、 上記水素流出方向設定手段は、上記第1インジェクタの水素の噴射方向が上記作動室のリーディング領域に向かう方向となるように上記第1インジェクタを上記水素ロータリエンジンに取り付けると共に、上記第2インジェクタの水素の噴射方向が上記作動室の中央領域に向かう方向となるように上記第2インジェクタを上記第1水素インジェクタとは異なる角度で上記ロータリエンジンに取り付けることにより構成されており、
さらに、上記水素流出方向設定手段は、上記低回転域では上記第1水素インジェクタを作動させ、上記高回転域では上記第2水素インジェクタを作動させる請求項1に記載の水素ロータリエンジンの燃料噴射装置。 - 上記第2水素インジェクタの容量が上記第1水素インジェクタの容量より大であり、
上記水素流出方向設定手段は、上記水素ロータリエンジンの高回転域且つ高負荷域で上記第2水素インジェクタを作動させる請求項2に記載の水素ロータリエンジンの燃料噴射装置。 - 水素ロータリエンジンの燃料噴射装置であって、
上記水素ロータリーエンジンの作動室を形成するロータハウジングに取り付けられ、上記水素ロータリエンジンの作動室に水素を直接噴射すると共に圧縮行程の上記作動室のリーディング領域に向けて水素を噴射する第1水素インジェクタと、
上記水素ロータリーエンジンの作動室を形成するロータハウジングに取り付けられ、上記水素ロータリエンジンの作動室に水素を直接噴射すると共に圧縮行程の上記作動室の中央領域に向けて水素を噴射する第2水素インジェクタと、
これらの第1及び第2の水素インジェクタが上記作動室内に圧縮行程中の所定のタイミングで水素を噴射するように噴射タイミングを制御する水素噴射タイミング制御手段と、 上記水素ロータリエンジンの低回転域では上記第1水素インジェクタを作動させ、高回転域では上記第2水素インジェクタを作動させるようにインジェクタを切り換える水素インジェクタ切換手段と、
を有することを特徴とする水素ロータリエンジンの燃料噴射装置。 - 水素ロータリエンジンの燃料噴射装置であって、
上記水素ロータリーエンジンの作動室を形成するロータハウジングに取り付けられ、上記水素ロータリエンジンの作動室に水素を直接噴射すると共に圧縮行程の上記作動室のリーディング領域に向けて水素を噴射する第1水素インジェクタと、
上記水素ロータリーエンジンの作動室を形成するロータハウジングに取り付けられ、上記水素ロータリエンジンの作動室に水素を直接噴射すると共に圧縮行程の上記作動室の中央領域に向けて水素を噴射する第2水素インジェクタと、
これらの第1及び第2の水素インジェクタが上記作動室内に圧縮行程中の所定のタイミングで水素を噴射するように噴射タイミングを制御する水素噴射タイミング制御手段と、 上記水素ロータリエンジンの低回転域では上記第1水素インジェクタを作動させ、高回転域では上記第1及び第2の両方の水素インジェクタを作動させるようにインジェクタを切り換える水素インジェクタ切換手段と、
を有することを特徴とする水素ロータリエンジンの燃料噴射装置。 - 上記第1水素インジェクタの容量と第2水素インジェクタの容量とが同一であり、
上記水素インジェクタ切換手段は、上記水素ロータリエンジンの高回転域且つ高負荷域で上記第1及び第2の両方の水素インジェクタを作動させる請求項5に記載の水素ロータリエンジンの燃料噴射装置。
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