JP4607374B2 - 熱可塑性樹脂組成物、感熱性粘着剤及び感熱性粘着シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、所謂ディレードタックラベルに使用される熱可塑性樹脂組成物、感熱性粘着剤及び感熱性粘着シートに関し、更に詳しくは、常温では粘着性を有さず、加熱によって粘着性を発現する熱可塑性樹脂組成物、感熱性粘着剤及び感熱性粘着シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、瓶、ペットボトル等の容器に貼付するラベルとして、ラベル基材上に粘着剤を塗工すると同時に容器に貼付するグルーラベルや、ラベル基材上に粘着剤及び剥離紙を順次形成した粘着ラベル等が使用されている。
【0003】
しかし、グルーラベルは、粘着剤の粘度の管理や粘着剤を塗工する機械の清掃等の手間を要するため、最近ではあまり好まれないのが実状である。また、剥離紙を形成した粘着ラベルは、ラベルから剥がした大量の剥離紙がゴミとして発生するため、その処分に手間を要するとともに、資源の節減の観点からも好ましくない。
【0004】
このような問題を解決するラベルとして、ディレードタックラベルと称されるものが知られている。ディレードタックラベルは、常温では非粘着性であるが加熱によって粘着性を発現する感熱性粘着剤の層をラベル基材上に形成したものであり、剥離紙が不要で、しかも加熱するだけで容易に容器に貼付することができるという利点を有している。ディレードタックラベルは、通常、ガラス転移温度が0〜30℃程度のバインダー樹脂層に、固体可塑剤の粒子と必要に応じて粘着付与剤の粒子とを散在させ、加熱によって固体可塑剤を溶融し、これによってバインダー樹脂を可塑化して粘着性を発現させるものである。前記固体可塑剤としては、例えばジシクロヘキシルフタレートがよく知られている(特開昭61−9479号公報、特開平7−278521号公報、特開平7−145352号公報、特開平8−333565号公報など)。
【0005】
上述のようなディレードタックラベルは、最近ではエマルジョン型の感熱性粘着剤を基材の裏面に塗工した後、乾燥のための加熱工程を経て製造されることが多い。その場合の加熱温度は、粘着剤層の形成段階でジシクロヘキシルフタレートが溶融して粘着性が発現してしまわないように、45℃以下の低温であることが必要とされている。しかし、このような低温の加熱では加熱乾燥工程に時間を要するため、ディレードタックラベルの生産性が低下してしまうという問題点がある。また、ディレードタツクラベルでは上述のように剥離紙を使用していないため、重ねたまま、例えば夏場の高温下で長期間保存すると、ジシクロヘキシルフタレートによるバインダー樹脂の可塑化が徐々に起こり、ラベル同士が互いに付着する所謂ブロッキングが起こってしまう。そのため、このようなブロッキングを防止する保冷設備が必要となるという問題点がある。
【0006】
特開2000−103969号公報には、固体可塑剤として特定構造のリン化合物を含有する感熱性粘着剤が開示されている。この感熱性粘着剤によれば、接着性が高く、耐ブロッキング性も優れている。しかし、このリン化合物では、感熱性粘着剤を調製する際、水に分散させるのに比較的多量の分散剤を必要とするのでコスト的に不利である。また、接着性や耐ブロッキング性の点でも、必ずしも十分満足できるものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、基材上に塗工して感熱性粘着シートを製造する際、よリ高い温度で加熱乾燥を行うことができるとともに、接着性が極めて高く、しかも耐ブロッキング性に著しく優れる熱可塑性樹脂組成物及び感熱性粘着剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、固体可塑剤の分散に用いる分散剤を低減できる熱可塑性樹脂組成物及び感熱性粘着剤を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、生産性が高く、接着性に優れ、しかも長期間保存してもブロッキングが生じない感熱性粘着シートを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の固体可塑剤を用いると、接着性や耐ブロッキング性を大きく向上できるとともに、固体可塑剤の水分散液を調製する際の分散剤の使用量を低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記固体可塑剤として、下記式(1)
【化3】
(式中、R1〜R4はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、mは0〜3の整数を示す。R1とR2とA(m=1〜3のとき)、R3とR4とA(m=1〜3のとき)、R1とR3とR4(m=0のとき)は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表されるリン化合物と、下記式(2)
【化4】
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、nは1〜3の整数を示す。R1とR2とAは互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表されるリン化合物とを組み合わせて用いることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0010】
この熱可塑性樹脂組成物において、式(1)で表されるリン化合物と式(2)で表されるリン化合物との比率は、例えば、前者/後者(重量比)=70/30〜99.8/0.2である。また、式(1)で表されるリン化合物と式(2)で表されるリン化合物の総含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して10〜1000重量部程度である。前記熱可塑性樹脂組成物は、さらに粘着付与剤を含有していてもよい。前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは熱可塑性樹脂が水に分散した水性組成物である。
【0011】
本発明は、また、上記の熱可塑性樹脂組成物を含有する感熱性粘着剤を提供する。
本発明は、さらに、基材の少なくとも一方の面に上記の感熱性粘着剤で構成された粘着剤層が設けられている感熱性粘着シートを提供する。
本発明は、さらにまた、基材の少なくとも一方の面に上記の感熱性粘着剤を塗工して粘着剤層を設ける感熱性粘着シートの製造方法を提供する。この方法において、基材の少なくとも一方の面に、上記の水性の熱可塑性樹脂組成物を含む感熱性粘着剤を塗工し、乾燥して粘着剤層を設けることもできる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物はバインダー樹脂としての熱可塑性樹脂と固体可塑剤とを含有している。
【0013】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独又は共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ビニルピロリドン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸又はそのエステルを単量体として含むアクリル系重合体;酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニルを単量体として含む酢酸ビニル系重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、イソブチレン樹脂、イソブチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン樹脂、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの合成ゴム;天然ゴム;エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ビニルビロリドン−スチレン共重合体、塩素化プロピレン樹脂、ウレタン樹脂、エチルセルロースなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0014】
好ましい熱可塑性樹脂には、アクリル系重合体[例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単量体として含むアクリル系重合体]、酢酸ビニル系重合体、合成ゴム、天然ゴムなどが含まれる。また、前記アクリル系重合体の中でも、特に、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、アクリル酸C2-20アルキルエステル−メタクリル酸C1-4アルキルエステル共重合体)、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2-20アルキルエステル−メタクリル酸C1-4アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体)、アクリル酸エステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2-20アルキルエステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)等のアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸C2-20アルキルエステル)とメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸C1-4アルキルエステル)又はスチレンとをコモノマーとして含むアクリル系共重合体などが好ましい。
【0015】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、被着物の種類等を考慮し、粘着シートとした場合の接着性及び耐ブロッキング性を損なわない範囲で適宜選択でき、通常、−10〜70℃(例えば、0〜50℃)程度である。前記ガラス転移温度は、好ましくは−10〜25℃程度、さらに好ましくは−5〜20℃程度であり、特に好ましくは0〜15℃程度である。前記ガラス転移温度が−10℃未満の場合には耐ブロッキング性が低下しやすい。また、前記ガラス転移温度が高すぎると、接着性が低下しやすくなる。
【0016】
本発明の重要な特徴は、固体可塑剤として、前記式(1)で表されるリン化合物と、式(2)で表されるリン化合物とを組み合わせて用いる点にある。式(1)で表されるリン化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、式(2)で表されるリン化合物も単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
式(1)で表される化合物には、下記式(1a)、(1b)及び(1c)
【化5】
(式中、R1、R2、R3、R4、R1a、R3a、R4aはそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、pは1〜3の整数を示す。式(1a)におけるR1とR2とA、R3とR4とA、式(1b)におけるR1aとR3aとR4a、式(1c)におけるR1とR3とR4は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表される化合物が含まれる。
【0018】
前記式(1)、(1a)、(1b)、(1c)及び(2)中、R1〜R4、R1a、R3a、R4aにおける炭化水素基には、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び脂肪族炭化水素基が含まれる。これらの炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0019】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などのシクロアルケニル基;ノルボルニル、ビシクロ[4.3.0]ノニル、アダマンチル基などの橋かけ環炭化水素基などが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜12程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−へキセニル基などの炭素数2〜12程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜12程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0020】
前記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ基などのC1-4アルコキシ基;フェニルオキシ基などのアリールオキシ基;メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシカルボニル基;アセチル、ベンゾイル基などのアシル基;アセチルオキシ基などのアシルオキシ基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;カルボキシル基;オキソ基などが例示できる。
【0021】
前記芳香族炭化水素基の代表的な例として、フェニル基;2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル基などのハロゲン原子を有するフェニル基;2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2−エチルフェニル、4−t−ブチルフェニル基などC1-4アルキル基を有するフェニル基などが挙げられる。前記脂環式炭化水素基の代表的な例として、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへキセニル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、3−オキソ−1,5,5−トリメチルシクロヘキシル、6−オキソ−2,4,4−トリメチル−1−シクロへキセニル、1,7,7−トリメチルノルボルナン−2−イル基などが挙げられる。前記脂肪族炭化水素基の代表的な例として、ベンジル、2−メチルフェニルメチル、2−フェニルエチル基などのアリール基が結合したアルキル基(アラルキル基)などが挙げられる。
【0022】
前記式(1)、(1a)、(1b)、(1c)及び(2)中、R1〜R4、R1a、R3a、R4aにおける複素環式基には、2−フリル、モルホニル、テトラヒドロピラニル基などの酸素原子含有複素環式基;2−チエニル基などのイオウ原子含有複素環式基;1−ピロリル、2−ピリジル、ピペリジノ、2−キノリル基などの窒素原子含有複素環式基などが含まれる。これらの複素環式基は置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記炭化水素基において例示した置換基などが挙げられる。
【0023】
前記式(1)、(1a)及び(2)中、Aにおける2価の炭化水素基には、2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の脂肪族炭化水素基が含まれる。これらの炭化水素基は、酸素原子、イオウ原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基などの連結基を介して又は介することなく2以上結合していてもよく、また置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記R1〜R4等における炭化水素基が有していてもよい置換基として例示した基が挙げられる。
【0024】
2価の芳香族炭化水素基として、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、ビフェニレンなどが挙げられる。2価の脂環式炭化水素基として、シクロヘキシリデン、1,2−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレンなどのシクロアルキレン基;2−シクロヘキセン−1,4−ジイル基などのシクロアルケニレン基;アダマンタン−1,3−ジイル基などの2価の橋かけ環式基などが挙げられる。また、2価の脂肪族炭化水素基には、メチレン、エチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、テトラメチレン基などの炭素数1〜6程度のアルキレン基;プロペニレン基などの炭素数2〜6程度のアルケニレン基;プロピニレン基などの炭素数2〜6程度のアルキニレン基などが挙げられる。
【0025】
前記Aにおける2価の炭化水素基の代表的な例として、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,1−ジフェニルメタン−4′,4″−ジイル、1,1−ジフェニルエタン−4′,4″−ジイル、2,2−ジフェニルプロパン−4′,4″−ジイル、2,2−ジフェニルブタン−4′,4″−ジイル、4,4′−ビフェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,5,5−トリメチルシクロヘキサン−1,3−ジイル、6−オキソ−2,4,4−トリメチルシクロヘキサン−1,2−ジイル、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−、1,1−ジシクロヘキシルエタン−4′,4″−ジイル、2,2−ジシクロヘキシルプロパン−4′,4″−ジイル、2,2−ジシクロヘキシルブタン−4′,4″−ジイル、アダマンタン−1,3−ジイル、5,7−ジメチルアダマンタン−1,3−ジイル、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、テトラメチレン基などが例示できる。
【0026】
前記Aにおける2価の複素環式基には、多価の複素環式アルコール又はフェノール(例えば、イソソルバイド、イソマンナイド、スクロース、ラクトースなどの糖類)から2つのヒドロキシル基を除いた2価の基が含まれる。これらの炭化水素基は、酸素原子、イオウ原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基などの連結基を介して又は介することなく2以上結合していてもよく、また置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記R1〜R4等における炭化水素基が有していてもよい置換基として例示した基が挙げられる。また、前記2価の炭化水素基と2価の複素環式基とが、前記連結基を介して又は介することなく結合していてもよい。
【0027】
前記式(1a)において、R1〜R4の少なくとも1つ(特に、R1〜R4のすべて)が芳香族炭化水素基であるのが好ましい。また、好ましいAには、1,3−フェニレン基などの少なくとも2価の芳香族炭化水素基部を含む2価の炭化水素基、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基などの少なくとも2価の脂環式炭化水素基部を含む2価の炭化水素基が含まれる。pは1又は2、特に1であるのが好ましい。
【0028】
式(1a)で表されるリン化合物の具体例として、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールビス(ジフェニルホスフェート)(融点:97℃)、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点:95℃)などの二リン酸エステル類;R1〜R4がフェニル基、Aが−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基、k=1、p=2である化合物、R1〜R4が2,6−ジメチルフェニル基、Aが1,3−フェニレン基、k=1、p=2である化合物などの三リン酸エステル類などが挙げられる。
【0029】
前記式(1b)で表される好ましい化合物には、R1aとR3aとR4aが何れも芳香族炭化水素基又はアラルキル基である化合物、及びR1aとR3aとR4aのうち2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成した環状リン酸エステル類などが含まれる。
【0030】
式(1b)で表される化合物(リン酸エステル類)の具体例として、例えば、トリフェニルホスフェート、トリ(4−メチルフェニル)ホスフェート(融点:78℃)などのトリ(メチルフェニル)ホスフェート、トリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートなどのリン酸トリアリールエステル類、トリベンジルホスフェート(融点:65℃)などのリン酸トリアラルキルエステル類、下記式(3)
【化6】
で表される化合物(融点:95〜110℃)などの、リン原子を環の構成原子として含む環状リン酸エステル類などが挙げられる。
【0031】
式(1c)において、R1〜R4は、何れも芳香族炭化水素基又はアラルキル基であるのが好ましい。式(1c)で表される化合物(亜リン酸エステル類)の具体例として、例えば、トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト(融点:75℃)などの亜リン酸トリアリールエステルなどが挙げられる。
【0032】
前記式(2)において、R1及びR2の少なくとも1つ(特に、R1及びR2のすべて)が芳香族炭化水素基であるのが好ましい。また、好ましいAには、1,3−フェニレン基などの少なくとも2価の芳香族炭化水素基部を含む2価の炭化水素基、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基などの少なくとも2価の脂環式炭化水素基部を含む2価の炭化水素基が含まれる。nは1又は2、特に1であるのが好ましい。
【0033】
式(2)で表されるリン化合物の具体例として、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールモノ[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点:95℃)、R1及びR2がフェニル基、Aが−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基、k=1、n=2である化合物、R1及びR2が2,6−ジメチルフェニル基、Aが1,3−フェニレン基、k=1、n=2である化合物などのリン酸エステル類などが挙げられる。
【0034】
前記式(1)で表されるリン化合物の融点は、例えば50〜160℃程度であってもよいが、好ましくは55〜105℃、さらに好ましくは55〜100℃程度である。リン化合物の融点が低すぎると耐ブロッキング性が低下しやすく、逆に高すぎると溶融するのに時間がかかり、生産性が低下したり、基材が変質したりするおそれがある。
【0035】
上記式(1)及び(2)で表されるリン化合物は、周知乃至公知の方法により得ることができる。例えば、リン酸エステル類は、オキシ塩化リン、アリールジクロロホスフェートなどのジクロロリン酸モノエステル、又はジアリールクロロホスフェートなどのクロロリン酸ジエステルと目的化合物に対応するヒドロキシル基含有化合物(アルコール又はフェノール)とを、必要に応じてピリジンなどの塩基の存在下で反応させることにより得ることができる。なお、リン原子を環の構成原子として含む環状リン酸エステル類は、前記ヒドロキシル基含有化合物として、2価以上、好ましくは3価以上(例えば3又は4価)のヒドロキシル基含有化合物[例えば、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、ペンタエリスリトールなど]を用いることにより製造することができる。
【0036】
また、亜リン酸エステル類は、例えば、三塩化リンと目的化合物に対応するアルコール又はフェノールとを、必要に応じて塩基の存在下で反応させることにより製造できる。
【0037】
式(1)で表されるリン化合物と式(2)で表されるリン化合物の総含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば10〜1000重量部程度、好ましくは30〜500重量部程度である。前記リン化合物の含有量が10重量部より少ないと、加熱時に十分な粘着性が発現しない場合が生じ、また、1000重量部よリ多いと、凝集力が低下し十分な接着強度が発現しないことがある。
【0038】
式(1)で表されるリン化合物と式(2)で表されるリン化合物との比率は、特に制限はないが、例えば、前者/後者(重量比)=70/30〜99.8/0.2程度、好ましくは、前者/後者(重量比)=80/20〜99.5/0.5程度、さらに好ましくは、前者/後者(重量比)=90/10〜99/1程度である。
【0039】
本発明では、必要に応じて前記以外の他の固体可塑剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用してもよい。併用し得る他の固体可塑剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン(融点:80℃)、トリ(3−メチルフェニル)ホスフィン(融点:100℃)などのトリアリールホスフィン類等の前記以外のリン化合物;フタル酸ジフェニル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジ(3,5−ジメチルシクロヘキシル)、フタル酸ジ(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)、フタル酸ジ(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)、フタル酸ジメンチル、フタル酸ジボルニル、フタル酸ジヒドロアビエチル、フタル酸ジナフチル等のフタル酸エステル類;イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジベンジル、イソフタル酸ジジシクロヘキシル等のイソフタル酸エステル類;テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジジシクロヘキシル、テレフタル酸(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)等のテレフタル酸エステル類;安息香酸スクロース、二安息香酸エチレングリコール、三安息香酸トリメチロールエタン、三安息香酸グリセリド、四安息香酸ペンタエリスロット、八酢酸スクロース、クエン酸トリシクロヘキシル、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、尿素誘導体、塩化パラフィン等が挙げられる。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて粘着付与剤を含有していてもよい。使用し得る粘着付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)、キシレン樹脂等の樹脂類を挙げることができる。これらの粘着付与剤は、2種以上併用してもよい。
【0041】
粘着付与剤の含有量は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂とリン化合物との組合せに応じて適宜選択でき、通常、熱可塑性樹脂100重量部に対して10〜600重量部程度であり、20〜500重量部程度が好ましい。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記粘着付与剤の他に、特性を損なわない範囲で慣用の添加剤、例えば、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)、帯電防止剤、ブロッキング防止剤(無機粒子、有機粒子等)を添加してもよい。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、分散剤を用いて熱可塑性樹脂を水に分散させた水性組成物とすることもできる。用い得る分散剤は特に限定されるものではなく、従来よリ公知のアニオン系、ノニオン系分散剤等の何れをも使用することができる。アニオン系分散剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を挙げることができ、これらの中でもカルボン酸アンモニウム塩が好ましい。ノニオン系分散剤としては、ポリエチレングリコール型のもの、多価アルコール型のものなどを挙げることができる。
【0044】
前記水性組成物の調製法も、従来より公知の各種の方法を採用することができる。例えば、上記調製法として、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を予め混合した後に水に分散させる方法、熱可塑性樹脂エマルジョン又は粘着付与剤エマルジョンに固体可塑剤を分散させた後にこれらのエマルジョンを混合する方法、固体可塑剤を水に分散させておき、この分散液に熱可塑性樹脂エマルジョン及び粘着付与剤エマルジョンを混合する方法等が挙げられる。固体可塑剤を上記エマルジョン又は水に分散させる方法としては、溶融させた固体可塑剤を分散させる方法、固体可塑剤を微粉末にしながら分散させる方法及び微粉末にした固体可塑剤を分散させる方法等を例示することができる。
【0045】
水性組成物中の固体可塑剤の平均粒子径は、好ましくは0.5〜20μm程度であり、さらに好ましくは1〜15μm程度である。平均粒子径が0.5μmよリ小さいと耐ブロッキング性が低下したり、粉砕に時間を要して生産性が低下するおそれがある。平均粒子径が20μmを超えると塗工面がざらつき、ラベルの品質が低下するおそれがある。
【0046】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、感熱性粘着剤として使用することができ、基材の少なくとも一方の面に感熱性粘着剤の層を形成することにより、感熱性粘着シートが得られる。感熱性粘着剤の層は、感熱性粘着剤を有機溶剤に溶解させて塗工するか、加熱溶融して塗工することにより形成することができる。また、熱可塑性樹脂が水に分散している水性組成物は、これを基材の少なくとも一方の面に塗工して乾燥させることにより、感熱性粘着シートとすることができる。塗工方法としては、例えばロールコーター、エヤナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビアコーター、シルクスクリーンコーター等を用いた方法を挙げることができる。
【0047】
前記感熱性粘着剤の層を形成する基材としては、紙、塗工紙、プラスチックフィルム、木材、布、不織布、金属等を挙げることができる。プラスチックフィルムを構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、ポリアミド6/12等)、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、更にこれらの共重合体、ブレンド物、架橋物を用いてもよい。
【0048】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をよリ詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1
[固体可塑剤水分散液の調製]
固体可塑剤として、リン化合物の混合物[1,4−シクロヘキサンジメタノールビス(ジフェニルホスフェート)94重量%、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(ジフェニルホスフェート)2重量%、トリフェニルホスフェート2重量%、式(1a)において、R1〜R4がフェニル基、Aが−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基、k=1、p=2である化合物1重量%、式(2)において、R1及びR2がフェニル基、Aが−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基、k=1、n=2である化合物0.5重量%](融点92℃)100重量部、分散剤としてアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)10重量部及び水85重量部を混合し、ボールミルを用いて平均粒子径2.5μmになるまで粉砕することにより、固体可塑剤の水分散液を得た。なお、固体可塑剤の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−500)によリ測定し、メジアン径で記載した。
【0050】
[感熱性粘着剤の調製]
上記で調製した固体可塑剤の水分散液中に、熱可塑性樹脂としてのアクリル系重合体(2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−アクリル酸共重合体、ガラス転移温度Tg:5℃)の水系エマルジョン、粘着付与剤としてのテルペン樹脂の水系分散液及び水を加えて均一になるまで攪拌し、固形分濃度50重量%の感熱性粘着剤を得た。このときの配合比は、固体可塑剤100重量部に対して熱可塑性樹脂(アクリル系重合体)26重量部、粘着付与剤(テルペン樹脂)17重量部であった。
【0051】
[感熱性粘着シートの作製]
上記で調製した感熱性粘着剤を秤量84.9g/m2の片アート紙の原紙面(裏面)及び厚さ25μmの表面をコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、単に「PETフイルム」ともいう)に、バーコーターを用いて乾燥後の塗工量が15g/m2となるように塗工し、40℃で2分間乾燥させて感熱性粘着シートを得た。
【0052】
実施例2
[固体可塑剤水分散液の調製]
固体可塑剤として、リン化合物の混合物[商品名「PX−200」;大八化学(株)製;組成:レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]95.5重量%、レゾルシノールモノ[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]1.5重量%、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート1.0重量%、R1〜R4が2,6−ジメチルフェニル基、Aが1,3−フェニレン基、k=1、p=2である化合物1.0重量%、R1及びR2が2,6−ジメチルフェニル基、Aが1,3−フェニレン基、k=1、n=2である化合物0.8重量%;融点93℃]100重量部、分散剤としてアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)10重量部及び水90重量部を混合し、ボールミルを用いて平均粒子径2.6μmになるまで粉砕することにより、固体可塑剤の水分散液を得た。なお、固体可塑剤の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−500)によリ測定し、メジアン径で記載した。
【0053】
[感熱性粘着剤の調製]
上記で調製した固体可塑剤の水分散液中に、熱可塑性樹脂としてのアクリル系重合体(2−エチルヘキシルアクリレート−スチレン−アクリル酸共重合体、ガラス転移温度Tg:5℃)の水系エマルジョン、粘着付与剤としてのテルペン−フェノール樹脂の水系分散液及び水を加えて均一になるまで撹拝し、固形分濃度50重量%の感熱性粘着剤を得た。このときの配合比は、固体可塑剤100重量部に対して熱可塑性樹脂(アクリル系重合体)26重量部、粘着付与剤(テルペン−フェノール樹脂)17重量部であった。
【0054】
[感熱性粘着シートの作製]
上記で調製した感熱性粘着剤を秤量84.9g/m2の片アート紙の原紙面(裏面)及び厚さ25μmの表面をコロナ放電処理したPETフィルムに、バーコーターを用いて乾燥後の塗工量が15g/m2となるように塗工し、40℃で2分間乾燥させて感熱性粘着シートを得た。
【0055】
実施例3
[固体可塑剤水分散液の調製]
固体可塑剤として、リン化合物の混合物[1,4−シクロヘキサンジメタノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]94重量%、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]2重量%、トリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート2重量%、式(1a)において、R1〜R4が2,6−ジメチルフェニル基、Aが−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基、k=1、p=2である化合物1重量%、式(2)において、R1及びR2が2,6−ジメチルフェニル基、Aが−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基、k=1、n=2である化合物0.5重量%](融点92℃)100重量部、分散剤としてアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)8重量部及び水85重量部を混合し、ボールミルを用いて平均粒子径2.5μmになるまで粉砕することにより、固体可塑剤の水分散液を得た。なお、固体可塑剤の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−500)によリ測定し、メジアン径で記載した。
【0056】
[感熱性粘着剤の調製]
上記で調製した固体可塑剤の水分散液中に、熱可塑性樹脂としてのアクリル系重合体(2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−アクリル酸共重合体、ガラス転移温度Tg:5℃)の水系エマルジョン、粘着付与剤としてのテルペン樹脂の水系分散液及び水を加えて均一になるまで攪拌し、固形分濃度50重量%の感熱性粘着剤を得た。このときの配合比は、固体可塑剤100重量部に対して熱可塑性樹脂(アクリル系重合体)35重量部、粘着付与剤(テルペン樹脂)23重量部であった。
【0057】
[感熱性粘着シートの作製]
上記で調製した感熱性粘着剤を秤量84.9g/m2の片アート紙の原紙面(裏面)及び厚さ25μmの表面をコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、単に「PETフイルム」ともいう)に、バーコーターを用いて乾燥後の塗工量が15g/m2となるように塗工し、40℃で2分間乾燥させて感熱性粘着シートを得た。
【0058】
比較例1
[固体可塑剤水分散液の調製]
固体可塑剤として、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点95℃)100重量部、分散剤としてアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)15重量部、水80重量部を混合し、ボールミルを用いて平均粒子径2.2μmになるまで粉砕することにより、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]の水分散液を得た。
【0059】
[感熱性粘着剤の調製]
上記で調製したレゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]の水分散液中に、熱可塑性樹脂としてのアクリル系重合体(2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−アクリル酸共重合体、ガラス転移温度Tg:5℃)の水系エマルジョン、粘着付与剤としてのテルペン樹脂の水系分散液及び水を加えて均一になるまで撹拌し、固形分濃度50重量%の感熱性粘着剤を得た。このときの配合比は、固体可塑剤100重量部に対して熱可塑性樹脂(アクリル系重合体)35重量部、粘着付与剤(テルペン樹脂)23重量部であった。
【0060】
[感熱性粘着シートの作製]
上記で調製した感熱性粘着剤を秤量84.9g/m2の片アート紙の原紙面(裏面)及び厚さ25μmの表面をコロナ放電処理したPETフィルムに、バーコーターを用いて乾燥後の塗工量が15g/m2となるように塗工し、40℃で2分間乾燥させて感熱性粘着シートを得た。
【0061】
性能試験
(接着強度)
PETフィルムに塗工して得られた感熱性粘着シートを幅25mm、長さ125mmの大きさに切断して試験片とした。この試験片を140℃で30秒間加熱して粘着性を発現させ、ガラス板[岩城硝子(株)製、Micro S1ide G1ass 白緑磨)上に置き、ゴムロールで2kgの荷重をかけて1往復することにより貼付した。これを23℃、50%RHの雰囲気下に1日放置した後、引張リ試験機(オリエンテック社製、テンシロンUCT−5T)を使用して、引張り速度300mm/分、剥離角度180°で接着力を測定した。その結果を表1に示す。
(耐ブロッキング性)
片アート紙に塗工して得られた感熱性粘着シート4枚をアート紙の光沢面(表面)と感熱性粘着剤を塗工した面(裏面)とが接するように重ね、500gf/cm2(49kPa)の荷重をかけて55℃の雰囲気下に24時間放置した後、以下の基準で耐ブロッキング性の評価を行った。その結果を表1に示す。
5:剥離抵抗なく剥離した。
4:剥離時に若干音を発しながら剥離した。
3:剥離時に連続的に音を発しながら剥離した。
2:剥離時に紙の繊維が一部粘着層に残った。
1:ブロッキングによリ紙が破れた。
【0062】
【表1】
表1の結果から、実施例1、2、3の感熱性粘着シートは、比較例1の粘着シートに比較して、接着強度及び耐ブロッキング性に優れていることが分かる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、固体可塑剤として特定の2種のリン化合物を組み合わせて用いるので、これを用いて得られる感熱性粘着シートは、接着性が極めて高く、しかも耐ブロッキング性に著しく優れる。また、水に対する親和性が高いため、固体可塑剤の水分散液を調製する際に用いる分散剤の量を大幅に低減できる。そのため、コストを低減できるとともに、接着強度が向上する。さらに、熱可塑性樹脂組成物を水性組成物として基材に塗工して感熱性粘着シートを製造する場合、よリ高い温度で加熱乾燥を行うことができるので、該シートの生産性を向上させることができる。
Claims (9)
- 熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記固体可塑剤として、下記式(1)
で表されるリン化合物と、下記式(2)
で表されるリン化合物とを組み合わせて用いることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 式(1)で表されるリン化合物と式(2)で表されるリン化合物との比率が、前者/後者(重量比)=70/30〜99.8/0.2である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 式(1)で表されるリン化合物と式(2)で表されるリン化合物の総含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して10〜1000重量部である請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- さらに粘着付与剤を含有する請求項1〜3の何れかの項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が水に分散した水性組成物である請求項1〜4の何れかの項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜5の何れかの項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する感熱性粘着剤。
- 基材の少なくとも一方の面に請求項6記載の感熱性粘着剤で構成された粘着剤層が設けられている感熱性粘着シート。
- 基材の少なくとも一方の面に請求項6記載の感熱性粘着剤を塗工して粘着剤層を設ける感熱性粘着シートの製造方法。
- 基材の少なくとも一方の面に、請求項5記載の水性の熱可塑性樹脂組成物を含む感熱性粘着剤を塗工し、乾燥して粘着剤層を設ける請求項8記載の感熱性粘着シートの製造方法。
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