JP3910744B2 - 熱可塑性樹脂組成物、感熱性粘着シート及び感熱性粘着シートの製造方法 - Google Patents
熱可塑性樹脂組成物、感熱性粘着シート及び感熱性粘着シートの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、所謂ディレイドタックラベルに使用される熱可塑性樹脂組成物、感熱性粘着剤、感熱性粘着シート及びその製造方法に関し、更に詳しくは、常温では粘着性を有さず、加熱によって粘着性を発現する熱可塑性樹脂組成物、感熱性粘着剤、感熱性粘着シート及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、瓶、ペットボトル等の容器に貼付するラベルとして、ラベル基材上に粘着剤を塗工すると同時に容器に貼付するグルーラベルや、ラベル基材上に粘着剤及び剥離紙を順次形成した粘着ラベル等が使用されている。
【0003】
しかし、グルーラベルは、粘着剤の粘度の管理や粘着剤を塗工する機械の清掃等の手間を要するため、最近ではあまり好まれないのが実状である。また、剥離紙を形成した粘着ラベルは、ラベルから剥がした大量の剥離紙がゴミとして発生するため、その処分に手間を要するとともに、資源の節減の観点からも好ましくない。
【0004】
このような問題を解決するラベルとして、ディレイドタックラベルと称されるものが知られている。ディレイドタックラベルは、常温では非粘着性であるが加熱によって粘着性を発現する感熱性粘着剤の層をラベル基材上に形成したものであり、剥離紙が不要で、しかも加熱するだけで容易に容器に貼付することができるという利点を有している。ディレイドタックラベルは、通常、ガラス転移温度が0〜30℃程度のバインダー樹脂層に、固体可塑剤の粒子と必要に応じて粘着付与剤の粒子とを散在させ、加熱によって固体可塑剤を溶融し、これによってバインダー樹脂を可塑化して粘着性を発現させるものである。前記固体可塑剤としては、例えばジシクロヘキシルフタレートがよく知られている(特開昭61−9479号公報、特開平7−278521号公報、特開平7−145352号公報、特開平8−333565号公報など)。
【0005】
上述のようなディレイドタックラベルは、最近ではエマルジョン型の感熱性粘着剤を基材の裏面に塗工した後、乾燥のための加熱工程を経て製造されることが多い。その場合の加熱温度は、粘着剤層の形成段階でジシクロヘキシルフタレートが溶融して粘着性が発現してしまわないように、45℃以下の低温であることが必要とされている。しかし、このような低温の加熱では加熱乾燥工程に時間を要するため、ディレイドタックラベルの生産性が低下してしまうという問題点がある。また、ディレイドタツクラベルでは上述のように剥離紙を使用していないため、重ねたまま、例えば夏場の高温下で長期間保存すると、ジシクロヘキシルフタレートによるバインダー樹脂の可塑化が徐々に起こり、ラベル同士が互いに付着する所謂ブロッキングが起こってしまう。そのため、このようなブロッキングを防止する保冷設備が必要となるという問題点がある。また、従来のディレイドタックラベルでは、接着強度及び透明性が短期間のうちに消失するという問題も有している。
【0006】
特開平8−325535号公報には、耐ブロッキング性を向上させるため、固体可塑剤として、平均粒子径が4μm以下のフタル酸ジシクロヘキシルと、融点が70℃以上であり平均粒子径が4〜10μmであるN−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミドなどの固体可塑剤とを併用した感熱性粘着シートが開示されている。また、特開平9−67551号公報には、耐ブロッキング性を高めるため、固体可塑剤として25℃で固体のベンゼンジカルボン酸エステルを2種以上用いることが提案されている。さらに、特開平9−169870号公報には、従来の感熱性ディレイドタック型粘着性熱可塑性樹脂組成物の耐ブロッキング性と接着性とのバランスを改良するため、トリベンジルトリメリテートなどの結晶化遅延剤が開示されている。しかし、これらの固体可塑剤や結晶化遅延剤を用いても、耐ブロッキング性や、接着強度及び透明性の持続性の点で必ずしも十分満足できる結果は得られない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、基材上に塗工して感熱性粘着シートを製造する際、よリ高い温度で加熱乾燥を行うことができるとともに、高い接着性及び透明性を長期間持続でき、しかも耐ブロッキング性に優れる熱可塑性樹脂組成物及び感熱性粘着剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、生産性が高く、接着性と透明性及びこれらの持続性に優れ、しかも長期間保存してもブロッキングが生じない感熱性粘着シートとその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の固体可塑剤を2種以上併用すると、熱可塑性樹脂の可塑化が起こり始める温度を高めることができ、ラベル貼付を行う温度では十分に粘着性が発現されるだけでなく、高い接着性と透明性を長期間保持できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記固体可塑剤が、(i)(A)(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を構成する炭素原子のうち隣接する炭素原子以外の2つの炭素原子間にアルキレン基が結合して橋を形成している橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物と、(ii)(ii-1)前記式 (1a) で表されるリン化合物、(ii-2)ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、及びこれらのアルキル置換体、並びにこれらのエーテル体又はエステル体から選択される少なくとも一つの化合物であるジオキシベンゼン誘導体及び(ii-3)ジシクロヘキシルフタレートから選択された少なくとも1種の化合物とで構成されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明は、また、上記の熱可塑性樹脂組成物を含有する感熱性粘着剤を提供する。
本発明は、さらに、基材の少なくとも一方の面に上記の感熱性粘着剤で構成された粘着剤層が設けられている感熱性粘着シートを提供する。
本発明は、さらにまた、基材の少なくとも一方の面に上記の感熱性粘着剤を塗工して粘着剤層を設ける感熱性粘着シートの製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物はバインダー樹脂としての熱可塑性樹脂と固体可塑剤とを含有している。
【0012】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独又は共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ビニルピロリドン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸又はそのエステルを単量体として含むアクリル系重合体;酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニルを単量体として含む酢酸ビニル系重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、イソブチレン樹脂、イソブチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン樹脂、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの合成ゴム;天然ゴム;エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ビニルビロリドン−スチレン共重合体、塩素化プロピレン樹脂、ウレタン樹脂、エチルセルロースなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0013】
好ましい熱可塑性樹脂には、アクリル系重合体[例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単量体として含むアクリル系共重合体]、酢酸ビニル系重合体、合成ゴム、天然ゴムなどが含まれる。前記アクリル系重合体の中でも、特に、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、アクリル酸C2-10アルキルエステル−メタクリル酸C1-4アルキルエステル共重合体)、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2-10アルキルエステル−メタクリル酸C1-4アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体)、アクリル酸エステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2-10アルキルエステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)等のアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸C2-10アルキルエステル)とメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸C1-4アルキルエステル)又はスチレンとをコモノマーとして含むアクリル系共重合体などが好ましい。
【0014】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、被着物の種類等を考慮し、粘着シートとした場合の接着性及び耐ブロッキング性を損なわない範囲で適宜選択でき、通常、−10〜70℃程度である。前記ガラス転移温度が−10℃未満の場合には耐ブロッキング性が低下しやすい。また、前記ガラス転移温度が高すぎると、接着性が低下しやすくなる。
【0015】
本発明において、固体可塑剤は、(i)(A)(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を構成する炭素原子のうち隣接する炭素原子以外の2つの炭素原子間にアルキレン基が結合して橋を形成している橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物と、(ii)(ii-1)前記式 (1a) で表されるリン化合物、(ii-2)ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、及びこれらのアルキル置換体、並びにこれらのエーテル体又はエステル体から選択される少なくとも一つの化合物であるジオキシベンゼン誘導体及び(ii-3)ジシクロヘキシルフタレートから選択された少なくとも1種の化合物とで構成されている。
【0016】
前記アルコール(A1)において、シクロヘキサン環又はシクロヘキセン環の置換基であるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などが挙げられる。好ましいアルキル基には、メチル、イソプロピル、t−ブチル基などの炭素数1〜6(特に、炭素数1〜4)程度のアルキル基が含まれる。
【0017】
前記(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコールとしては、例えば、下記式(I)〜(VII)で表される置換シクロヘキサノール、(VIII)〜(X)で表される置換シクロヘキセノール、(XI)〜(XII)で表されるカルボニル基を有する置換シクロヘキサノール、(XIII)で表されるカルボニル基を有する置換シクロヘキセノールなどが挙げられる。また、( A2 )6員炭素環を構成する炭素原子のうち隣接する炭素原子以外の2つの炭素原子間にアルキレン基が結合して橋を形成している橋かけ環を有するアルコールとしては、例えば、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVIII)で表されるノルボルナン環を有するアルコール、(XVII)、(XIX)で表されるノルボルネン環を有するアルコール、(XX)、(XXI)で表されるアダマンタン環を有するアルコールなどが挙げられる。
【0018】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
これらのアルコールの中でも、式(I)〜(VII)で表されるアルコールなどの(A11)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサノール、式(XVI)、(XVIII)などで表されるノルボルナン環を有するアルコールなどの(A21)ヒドロキシル基又はヒドロキシメチル基が結合した6員飽和炭素環を構成する炭素原子のうち隣接する炭素原子以外の2つの炭素原子間にアルキレン基が結合して橋を形成している橋かけ環を有するアルコールを有するアルコールが好ましい。特に、前記式(I)で表される3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールが、粘着性の発現温度及び耐ブロッキング性の観点から好ましい。
【0019】
前記(B)多塩基酸には、多価カルボン酸、多価スルホン酸、多価ホスホン酸などが含まれる。多価カルボン酸としては、下記式
【化11】
【化12】
で表される酸無水物(無水フタル酸、無水ピロメリット酸、シクロヘキセン−4,5−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸)に対応する多価カルボン酸(フタル酸、ピロメリット酸、シクロヘキセン−4,5−ジカルボン酸、トリメリット酸)や、下記式
【化13】
で表される多価カルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸)などが例示できる。上記式中、ベンゼン環には、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル基などのアルキル基(例えば、C1-4アルキル基);フェニル、ナフチル基などのアリール基;メトキシ、エトキシ基などのアルコキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基);フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子などの置換基が置換していてもよい。
【0020】
前記(A)アルコールと(B)多塩基酸とから得られる多エステル化合物(i)のなかでも、可塑化が起こり始める温度及び加熱時の粘着性の性能の観点から、式(I)で表される3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールと無水フタル酸との反応により得られる下記式
【化14】
で表されるビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレートが特に好ましい。
【0021】
なお、上記3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールには、ヒドロキシル基と5位のメチル基との立体的な位置関係により、シス体とトランス体の2つの幾何異性体が存在するが、本発明では、何れの異性体から得られる多エステル化合物も用いることができる。また、これらの異性体の混合物から得られる多エステル化合物を使用することもできる。
【0022】
前記多エステル化合物(i)は、(A)アルコールと(B)多塩基酸又はその反応性誘導体(例えば、酸無水物、酸ハライド、活性エステルなど)から、公知乃至慣用のエステル化法に従って製造することができる。例えば、(A)アルコールと(B)多塩基酸とを、プロトン酸触媒の存在下、例えば、トルエンなどの溶媒中で反応させ、副生する水を除去することにより上記多エステル化合物(i)を得ることができる。
【0023】
多エステル化合物(i)の融点は、好ましくは70〜160℃程度である。多エステル化合物の融点が70℃より低いと耐ブロッキング性が低下しやすく、また160℃を超えると、溶融するのに時間がかかり、生産性が低下したり、基材が変質したりするおそれがある。多エステル化合物(i)は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0024】
前記リン化合物(ii-1)には、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、ホスフィン類などが含まれる。
【0025】
好ましいリン化合物には、融点55〜100℃のリン化合物が含まれる。融点55〜100℃のリン化合物の中でも、下記式(1)又は(2)
【化15】
(式中、R1〜R7はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、mは0〜3の整数を示す。R1とR2とA(m=1〜3のとき)、R3とR4とA(m=1〜3のとき)、R1とR3とR4(m=0のとき)、R5とR6とR7は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表される化合物が特に好ましい。
【0026】
前記式(1)で表される化合物には、下記式(1a)、(1b)及び(1c)
【化16】
(式中、R1、R2、R3、R4、R1a、R3a、R4a、R5、R6、R7はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、nは1〜3の整数を示す。但し、R1a、R3a及びR4aは同時にフェニル基又は4−t−ブチルフェニル基ではない。式(1a)におけるR1とR2とA、R3とR4とA、式(1b)におけるR1aとR3aとR4a、式(1c)におけるR1とR3とR4は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表される化合物が含まれる。本発明におけるリン化合物としては、前記式( 1a )で表される化合物であって、式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 のうち少なくとも1つが芳香族炭化水素基である化合物が用いられる。
【0027】
前記R1〜R7、R1a、R3a、R4aにおける炭化水素基には、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び脂肪族炭化水素基が含まれる。これらの炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0028】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などのシクロアルケニル基;ノルボルニル、ビシクロ[4.3.0]ノニル、アダマンチル基などの橋かけ環炭化水素基などが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜12程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−へキセニル基などの炭素数2〜12程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜12程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0029】
前記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ基などのC1-4アルコキシ基;フェニルオキシ基などのアリールオキシ基;メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシカルボニル基;アセチル、ベンゾイル基などのアシル基;アセチルオキシ基などのアシルオキシ基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;カルボキシル基;オキソ基などが例示できる。
【0030】
前記芳香族炭化水素基の代表的な例として、フェニル基;2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル基などのハロゲン原子を有するフェニル基;2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2−エチルフェニル、4−t−ブチルフェニル基などC1-4アルキル基を有するフェニル基などが挙げられる。前記脂環式炭化水素基の代表的な例として、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへキセニル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、3−オキソ−1,5,5−トリメチルシクロヘキシル、6−オキソ−2,4,4−トリメチル−1−シクロへキセニル、1,7,7−トリメチルノルボルナン−2−イル基などが挙げられる。前記脂肪族炭化水素基の代表的な例として、ベンジル、2−メチルフェニルメチル、2−フェニルエチル基などのアリール基が結合したアルキル基(アラルキル基)などが挙げられる。
【0031】
前記R1〜R7、R1a、R3a、R4aにおける複素環式基には、2−フリル、モルホニル、テトラヒドロピラニル基などの酸素原子含有複素環式基;2−チエニル基などのイオウ原子含有複素環式基;1−ピロリル、2−ピリジル、ピペリジノ、2−キノリル基などの窒素原子含有複素環式基などが含まれる。これらの複素環式基は置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記炭化水素基において例示した置換基などが挙げられる。
【0032】
前記Aにおける2価の炭化水素基には、2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の脂肪族炭化水素基が含まれる。これらの炭化水素基は、酸素原子、イオウ原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基などの連結基を介して又は介することなく2以上結合していてもよく、また置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記R1〜R7等における炭化水素基が有していてもよい置換基として例示した基が挙げられる。
【0033】
2価の芳香族炭化水素基として、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、ビフェニレンなどが挙げられる。2価の脂環式炭化水素基として、シクロヘキシリデン、1,2−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレンなどのシクロアルキレン基;2−シクロヘキセン−1,4−ジイル基などのシクロアルケニレン基;アダマンタン−1,3−ジイル基などの2価の橋かけ環式基などが挙げられる。また、2価の脂肪族炭化水素基には、メチレン、エチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、テトラメチレン基などの炭素数1〜6程度のアルキレン基;プロペニレン基などの炭素数2〜6程度のアルケニレン基;プロピニレン基などの炭素数2〜6程度のアルキニレン基などが挙げられる。
【0034】
前記Aにおける2価の炭化水素基の代表的な例として、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,1−ジフェニルエタン−4′,4″−ジイル、2,2−ジフェニルプロパン−4′,4″−ジイル、2,2−ジフェニルブタン−4′,4″−ジイル、4,4′−ビフェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,5,5−トリメチルシクロヘキサン−1,3−ジイル、6−オキソ−2,4,4−トリメチルシクロヘキサン−1,2−ジイル、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−、1,1−ジシクロヘキシルエタン−4′,4″−ジイル、2,2−ジシクロヘキシルプロパン−4′,4″−ジイル、2,2−ジシクロヘキシルブタン−4′,4″−ジイル、アダマンタン−1,3−ジイル、5,7−ジメチルアダマンタン−1,3−ジイル、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、テトラメチレン基などが例示できる。
【0035】
前記Aにおける2価の複素環式基には、多価の複素環式アルコール又はフェノール(例えば、イソソルバイド、イソマンナイド、スクロース、ラクトースなどの糖類)から2つのヒドロキシル基を除いた2価の基が含まれる。これらの炭化水素基は、酸素原子、イオウ原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基などの連結基を介して又は介することなく2以上結合していてもよく、また置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記R1〜R7等における炭化水素基が有していてもよい置換基として例示した基が挙げられる。また、前記2価の炭化水素基と2価の複素環式基とが、前記連結基を介して又は介することなく結合していてもよい。
【0036】
前記式(1a)において、R1〜R4の少なくとも1つ(特に、R1〜R4のすべて)が芳香族炭化水素基である。また、好ましいAには、1,3−フェニレン基などの少なくとも2価の芳香族炭化水素基部を含む2価の炭化水素基、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基などの少なくとも2価の脂環式炭化水素基部を含む2価の炭化水素基が含まれる。nは1又は2、特に1であるのが好ましい。
【0037】
式(1a)で表されるリン化合物の具体例として、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールビス(ジフェニルホスフェート)(融点:97℃)、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点:95℃)などの二リン酸エステル類などが挙げられる。
【0038】
前記式(1b)で表される好ましい化合物には、R1aとR3aとR4aが何れも芳香族炭化水素基又はアラルキル基である化合物、及びR1aとR3aとR4aのうち2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成した環状リン酸エステル類などが含まれる。
【0039】
式(1b)で表される化合物(リン酸エステル類)の具体例として、例えば、トリ(4−メチルフェニル)ホスフェート(融点:78℃)などのトリ(メチルフェニル)ホスフェートなどのリン酸トリアリールエステル類、トリベンジルホスフェート(融点:65℃)などのリン酸トリアラルキルエステル類、下記式(3)
【化17】
で表される化合物(融点:95〜110℃)などの、リン原子を環の構成原子として含む環状リン酸エステル類などが挙げられる。
【0040】
式(1c)において、R1〜R4は、何れも芳香族炭化水素基又はアラルキル基であるのが好ましい。
【0041】
式(1c)で表される化合物(亜リン酸エステル類)の具体例として、例えば、トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト(融点:75℃)などの亜リン酸トリアリールエステルなどが挙げられる。
【0042】
前記式(2)において、R5〜R7は好ましくは芳香族炭化水素基である。式(2)で表される化合物の具体例として、例えば、トリフェニルホスフィン(融点:80℃)、トリ(3−メチルフェニル)ホスフィン(融点:100℃)などのトリアリールホスフィン類が挙げられる。
【0043】
上記リン化合物は、周知乃至公知の方法により得ることができる。例えば、リン酸エステル類は、オキシ塩化リン、アリールジクロロホスフェートなどのジクロロリン酸モノエステル、又はジアリールクロロホスフェートなどのクロロリン酸ジエステルと目的化合物に対応するヒドロキシル基含有化合物(アルコール又はフェノール)とを、必要に応じてピリジンなどの塩基の存在下で反応させることにより得ることができる。なお、リン原子を環の構成原子として含む環状リン酸エステル類は、前記ヒドロキシル基含有化合物として、2価以上、好ましくは3価以上(例えば3又は4価)のヒドロキシル基含有化合物[例えば、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、ペンタエリスリトールなど]を用いることにより製造することができる。
【0044】
また、亜リン酸エステル類は、例えば、三塩化リンと目的化合物に対応するアルコール又はフェノールとを、必要に応じて塩基の存在下で反応させることにより製造できる。さらに、ホスフィン類(トリフェニルホスフィンなど)は、例えば、三塩化リンと目的化合物に対応するグリニヤール試薬(フェニルマグネシウムブロミドなど)との反応により得ることができる。
【0045】
なお、前記式(1a)、(1b)、(1c)又は(2)で表されるリン化合物については、融点は必ずしも55〜100℃の範囲でなくてもよく、例えば50〜160℃程度、好ましくは55〜105℃程度であってもよい。融点が低すぎると耐ブロッキング性が低下しやすく、逆に高すぎると溶融するのに時間がかかり、生産性が低下したり、基材が変質したりするおそれがある。リン化合物(ii-1)には、例えば、リン酸トリフェニル、リン酸トリ(p−t−ブチルフェニル)なども含まれる。リン化合物(ii-1)は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0046】
前記ジオキシベンゼン誘導体(ii-2)には、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール及びこれらの誘導体が用いられる。前記誘導体としては、ベンゼン環がメチル基などの1〜4個のアルキル基で置換されたアルキル置換体、2つのヒドロキシル基のうち少なくとも1つのヒドロキシル基がエーテル化されたモノ又はジエーテル体(例えば、メチルエーテルなどのモノ又はジアルキルエーテル体、フェニルエーテルなどのモノ又はジアリールエーテル体など)、2つのヒドロキシル基のうち少なくとも1つのヒドロキシル基がエステル化されたモノ又はジエステル体(例えば、酢酸エステルなどの脂肪族カルボン酸モノ又はジエステル体、安息香酸エステルなどの芳香族カルボン酸モノ又はジエステル体など)などが挙げられる。前記エーテル体、エステル体において、ベンゼン環はメチル基等のアルキル基などの置換基で置換されていてもよい。
【0047】
好ましいジオキシベンゼン誘導体には、(C)(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノール、又は(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと、(D)有機一塩基酸とのジエステル化合物が含まれる。
【0048】
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基などが挙げられる。なかでも、メチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基が好ましい。ハイドロキノン又はレゾルシノールにおけるベンゼン環上のアルキル基の置換数は0、又は1〜4(好ましくは1〜3、さらに好ましくは2又は3)である。また、カテコールのベンゼン環上のアルキル基の置換数は1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは2又は3である。アルキル基の置換数が複数であるとき、該アルキル基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
前記(C)成分において、ベンゼン環にはアルキル基以外の置換基が結合していてもよい。このような置換基として、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ基などのアルコキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基);フェノキシ基などのアリールオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基などのアシル基;カルボキシル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;シアノ基;ニトロ基などが挙げられる。また、前記ベンゼン環には、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、テトラヒドロフラン環などの3〜8員程度の芳香族性又は非芳香族性の炭素環又は複素環が縮合していてもよい。
【0050】
前記(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノールとしては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、2,6−ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、レゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、2,5−ジメチルレゾルシノール、4,6−ジメチルレゾルシノール、2,4,6−トリメチルレゾルシノールなどが例示できる。また、(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールとしては、例えば、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、トリメチルカテコールなどが挙げられる。
【0051】
前記(D)有機一塩基酸には、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式の一塩基酸(カルボン酸、スルホン酸など)が含まれる。これらのなかでも、脂肪族、脂環式又は芳香族モノカルボン酸が好ましい。
【0052】
前記脂肪族モノカルボン酸として、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸などの炭素数1〜6程度の脂肪族モノカルボン酸(好ましくは炭素数1〜4程度の脂肪族モノカルボン酸、特に酢酸)などが例示できる。また、脂環式モノカルボン酸として、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの3〜8員程度のシクロアルカンカルボン酸などが挙げられる。芳香族カルボン酸には、例えば、安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸などの、芳香環にアルキル基(炭素数1〜4程度のアルキル基など)、アルコキシ基(炭素数1〜4程度のアルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素原子など)などの置換基を1又は2以上有していてもよい芳香族カルボン酸などが含まれる。
【0053】
前記ジエステル化合物の代表的な化合物として、ハイドロキノンジアセテート(融点:123℃)、トリメチルハイドロキノンジアセテート(融点:109℃)、3,4,5−トリメチルカテコールジアセテート(融点:120℃)などが例示される。
【0054】
上記ジエステル化合物は、例えば、前記(C)成分と前記(D)有機一塩基酸又はその反応性誘導体(例えば、酸ハライド、活性エステル、酸無水物など)とを、必要に応じて酸触媒又は塩基の存在下、公知のエステル化法に準じて反応させることにより得ることができる。
【0055】
また、3,4,5−トリメチルカテコールと有機一塩基酸とのジエステル化合物は、酸触媒の存在下、2,6,6−トリメチルシクロヘキセ−2−エン−1,4−ジオン(ケトイソホロン)と前記有機一塩基酸に対応するアシル化剤(酸無水物、アシルハライド、エノールエステル類など)とを反応させることにより得ることができる。
【0056】
この方法において、酸触媒としては、プロトン酸、ルイス酸の何れも使用できる。プロトン酸として、超強酸(SbF5、SbF5−HF、SbF5−FSO3H、SbF5−CF3SO3Hなど)、硫酸、塩酸、リン酸、フッ化ホウ素酸、p−トルエンスルホン酸、クロロ酢酸、ピクリン酸、ヘテロポリ酸等の有機酸及び無機酸が挙げられる。また、ルイス酸として、例えば、BF3、BF3O(C2H5)2、AlCl3、FeCl3などが例示できる。これらの触媒の使用量は、例えば、ケトイソホロンに対して、0.001〜20モル%、好ましくは0.01〜15モル%程度である。
【0057】
また、前記酸触媒として、固体酸触媒を用いることもできる。固体酸触媒には、強酸性イオン交換樹脂[例えば、アンバーリスト15(オルガノ社製)などのスチレンジビニルベンゼンスルホン酸系イオン交換樹脂など];超強酸性樹脂[例えば、ナフィオンNR50(アルドリッチ社製)などのフッ素化スルホン酸樹脂など];ゼオライト、シリカ−アルミナなどのアルミノシリケート又は無機酸化物(複合酸化物を含む);担体(例えば、グラファイト、金属硫酸塩、金属塩化物、活性炭、イオン交換樹脂、ゼオライト、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、チタニア−ジルコニア、カオリンなど、特に多孔質担体)に前記のプロトン酸又はルイス酸を担持した固体酸触媒などが含まれる。固体酸触媒の使用量は、例えば、ケトイソホロンに対して、0.1〜1000重量%、好ましくは5〜100重量%程度である。
【0058】
前記アシル化剤の使用量は、例えば、ケトイソホロン1モルに対して、2モル以上、好ましくは3〜10モル程度である。アシル化剤を溶媒として用いてもよい。
【0059】
ケトイソホロンとアシル化剤との反応は、無溶媒下で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。前記溶媒としては、ヘキサン、オクタン、オクテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。
【0060】
ケトイソホロンとアシル化剤とを反応させる際の反応温度は、例えば0〜150℃、好ましくは10〜100℃程度である。生成したジエステル化合物は、例えば、濾過、濃縮、抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの慣用の分離精製手段に付すことにより分離精製できる。
【0061】
なお、こうして得られた3,4,5−トリメチルカテコールと有機一塩基酸とのジエステル化合物を、酸、例えば前記プロトン酸や固体酸触媒の存在下、水と反応させることにより、3,4,5−トリメチルカテコールを得ることができる。この場合、水は、通常、ジエステル化合物に対して過剰量用いられる。この加水分解反応における反応温度は、例えば40〜100℃程度である。生成した3,4,5−トリメチルカテコールは、例えば前記の分離精製手段により単離できる。
【0062】
ジオキシベンゼン誘導体(ii-2)には、例えば、カテコール、カテコールジアセテート、カテコールジベンゾエート、カテコールモノフェニルエーテル、カテコールジフェニルエーテルなども含まれる。
【0063】
ジオキシベンゼン誘導体(ii-2)の融点は、例えば50〜160℃程度であってもよいが、好ましくは90〜130℃程度である。ジオキシベンゼン誘導体(ii-2)の融点が低すぎると耐ブロッキング性が低下しやすく、逆に高すぎると溶融するのに時間がかかり、生産性が低下したり、基材が変質したりするおそれがある。ジオキシベンゼン誘導体(ii-2)は、1種又は2種以上混合して使用できる。
【0064】
本発明では、固体可塑剤を構成する成分(ii)として、前記(ii-1)リン化合物、(ii-2)ジオキシベンゼン誘導体及び(ii-3)ジシクロヘキシルフタレートの化合物のうち、少なくとも(ii-1)リン化合物又は(ii-2)ジオキシベンゼン誘導体を用いるのが好ましい。
【0065】
本発明において、前記(i)多エステル化合物と、(ii)(ii-1)リン化合物、(ii-2)ジオキシベンゼン誘導体及び(ii-3)ジシクロヘキシルフタレートから選択された少なくとも1種の化合物との割合は、特に限定されないが、例えば、化合物(i)/化合物(ii)(重量比)=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10、特に20/80〜80/20(例えば30/70〜70/30)程度である。
【0066】
本発明において、固体可塑剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば30〜1000重量部、好ましくは100〜1000重量部、さらに好ましくは150〜900重量部、特に200〜800程度である。固体可塑剤の含有量が30重量部より少ないと、加熱時に十分な粘着性が発現しない場合が生じ、また、1000重量部よリ多いと、凝集力が低下し十分な接着強度が発現しないことがある。
【0067】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記のように特定の固体可塑剤を複数含有しているので、粘着性を発現する温度が高く、ラベルの貼付温度では溶融して容易に可塑化されるだけでなく、固体可塑剤の再結晶化が遅延され、高い透明性及び接着性が長期に亘って持続する。
【0068】
本発明では、必要に応じて上記以外の固体可塑剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用してもよい。併用し得る他の固体可塑剤としては、例えば、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジナフチル等のフタル酸エステル類;イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジベンジル、イソフタル酸ジジシクロヘキシル等のイソフタル酸エステル類;テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジジシクロヘキシル等のテレフタル酸エステル類;安息香酸スクロース、二安息香酸エチレングリコール、三安息香酸トリメチロールエタン、三安息香酸グリセリド、四安息香酸ペンタエリスロット、八酢酸スクロース、クエン酸トリシクロヘキシル、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、尿素誘導体、塩化パラフィン等が挙げられる。
【0069】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて粘着付与剤を含有していてもよい。使用し得る粘着付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)、キシレン樹脂等の樹脂類を挙げることができる。これらの粘着付与剤は、2種以上併用してもよい。
【0070】
粘着付与剤の含有量は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂と前記固体可塑剤との組合せに応じて適宜選択でき、通常、熱可塑性樹脂100重量部に対して10〜600重量部程度であり、20〜500重量部程度が好ましい。
【0071】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記粘着付与剤の他に、特性を損なわない範囲で慣用の添加剤、例えば、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)、帯電防止剤、ブロッキング防止剤(無機粒子、有機粒子等)を添加してもよい。
【0072】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、分散剤を用いて熱可塑性樹脂を水に分散させた水性組成物とすることもできる。用い得る分散剤は特に限定されるものではなく、従来よリ公知のアニオン系、ノニオン系分散剤等の何れをも使用することができる。アニオン系分散剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を挙げることができ、これらの中でもカルボン酸アンモニウム塩が好ましい。ノニオン系分散剤としては、ポリエチレングリコール型のもの、多価アルコール型のものなどを挙げることができる。
【0073】
前記水性組成物の調製法も、従来より公知の各種の方法を採用することができる。例えば、上記調製法として、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を予め混合した後に水に分散させる方法、熱可塑性樹脂エマルジョン又は粘着付与剤エマルジョンに固体可塑剤を分散させた後にこれらのエマルジョンを混合する方法、固体可塑剤を水に分散させておき、この分散液に熱可塑性樹脂エマルジョン及び粘着付与剤エマルジョンを混合する方法等が挙げられる。固体可塑剤を上記エマルジョン又は水に分散させる方法としては、溶融させた固体可塑剤を分散させる方法、固体可塑剤を微粉末にしながら分散させる方法及び微粉末にした固体可塑剤を分散させる方法等を例示することができる。
【0074】
なお、熱可塑性樹脂エマルジョンは、乳化重合により調製してもよく、また、乳化重合以外の方法により重合体を得た後、必要に応じて添加剤を用いることによりエマルジョン化して調製してもよい。例えば、水溶性の有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコールなどのアルコールなど)の存在下で重合した重合体を含む有機溶液に添加剤(例えば、乳化剤、pH調整剤、酸など)を添加した後、水を添加してエマルジョン化し、その後、有機溶剤を除去することにより熱可塑性樹脂エマルジョンを調製することができる。
【0075】
水性組成物中の固体可塑剤の平均粒子径は、好ましくは0.5〜20μm程度であり、さらに好ましくは1〜15μm程度である。平均粒子径が0.5μmよリ小さいと耐ブロッキング性が低下したり、粉砕に時間を要して生産性が低下するおそれがある。平均粒子径が20μmを超えると塗工面がざらつき、ラベルの品質が低下するおそれがある。
【0076】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、感熱性粘着剤として使用することができ、基材の少なくとも一方の面に感熱性粘着剤の層(粘着剤層)を形成することにより、感熱性粘着シートが得られる。感熱性粘着剤の層は、感熱性粘着剤を有機溶剤に溶解させて塗工するか、加熱溶融して塗工することにより形成することができる。また、熱可塑性樹脂が水に分散している水性組成物は、これを基材の少なくとも一方の面に塗工して乾燥させることにより、感熱性粘着シートとすることができる。塗工方法としては、例えばロールコーター、エヤナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビアコーター、シルクスクリーンコーター等を用いた方法を挙げることができる。
【0077】
前記感熱性粘着剤の層を形成する基材としては、紙、塗工紙、プラスチックフィルム、木材、布、不織布、金属等を挙げることができる。プラスチックフィルムを構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、ポリアミド6/12等)、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、更にこれらの共重合体、ブレンド物、架橋物を用いてもよい。
【0078】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をよリ詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、固体可塑剤の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA−500)によリ測定し、メジアン径で記載した。
【0079】
調製例1
(固体可塑剤水分散液1の調製)
固体可塑剤としてビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート(融点:93℃)100重量部、分散剤としてアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)15重量部及び水80重量部を混合し、ボールミルを用いて平均粒子径が2.2μmになるまで粉砕することにより、ビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレートの水分散液(固体可塑剤水分散液1)を得た。
【0080】
調製例2
(固体可塑剤水分散液2の調製)
固体可塑剤としてレゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点:95℃)100重量部、分散剤としてアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)15重量部及び水80重量部を混合し、ボールミルを用いて平均粒子径が2.6μmになるまで粉砕することにより、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]の水分散液(固体可塑剤水分散液2)を得た。
【0081】
調製例3
(固体可塑剤水分散液3の調製)
固体可塑剤としてトリメチルハイドロキノンジアセテート(融点:109℃)100重量部、分散剤としてアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)15重量部及び水80重量部を混合し、ボールミルを用いて平均粒子径が2.2μmになるまで粉砕することにより、トリメチルハイドロキノンジアセテートの水分散液(固体可塑剤水分散液3)を得た。
【0082】
調製例4
(固体可塑剤水分散液4の調製)
固体可塑剤としてジシクロヘキシルフタレート(融点:65℃)100重量部、分散剤としてアニオン系界面活性剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)15重量部及び水80重量部を混合し、ボールミルを用いて平均粒子径が2.2μmになるまで粉砕することにより、ジシクロヘキシルフタレートの水分散液(固体可塑剤水分散液4)を得た。
【0083】
実施例1
(感熱性粘着剤の調製)
上記で調製した固体可塑剤水分散液1と2とを、固形分重量比で、ビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート:レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]=50:50となるように配合した固体可塑剤水分散液中に、熱可塑性樹脂としてのアクリル系重合体(2−エチルヘキシルアクリレート−スチレン−アクリル酸共重合体、ガラス転移温度Tg:25℃)の水系エマルジョン、粘着付与剤としてのテルペン樹脂の水系分散液及び水を加えて均一になるまで攪拌し、固形分濃度47重量%の感熱性粘着剤を得た。このときの配合比は、固体可塑剤100重量部に対して熱可塑性樹脂(アクリル系重合体)17重量部、粘着付与剤(テルペン樹脂)26重量部であった。
(感熱性粘着シートの作製)
上記で調製した感熱性粘着剤を秤量84.9g/m2の片アート紙の原紙面(裏面)及び厚さ25μmの表面をコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、単に「PETフイルム」ともいう)に、バーコーターを用いて乾燥後の塗工量が12g/m2となるように塗工し、40℃で2分間乾燥させて感熱性粘着シートを得た。
【0084】
実施例2
(感熱性粘着剤の調製)
上記で調製した固体可塑剤水分散液1〜3を、固形分重量比で、ビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート:レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]:トリメチルハイドロキノンジアセテート=35:35:30となるように配合した固体可塑剤水分散液中に、熱可塑性樹脂としてのアクリル系重合体(2−エチルヘキシルアクリレート−スチレン−アクリル酸共重合体、ガラス転移温度Tg:25℃)の水系エマルジョン、粘着付与剤としてのテルペン樹脂の水系分散液及び水を加えて均一になるまで攪拌し、固形分濃度50重量%の感熱性粘着剤を得た。このときの配合比は、固体可塑剤100重量部に対して熱可塑性樹脂(アクリル系重合体)17重量部、粘着付与剤(テルペン樹脂)26重量部であった。
(感熱性粘着シートの作製)
上記で調製した感熱性粘着剤を秤量84.9g/m2の片アート紙の原紙面(裏面)及び厚さ25μmの表面をコロナ放電処理したPETフィルムに、バーコーターを用いて乾燥後の塗工量が12g/m2となるように塗工し、40℃で2分間乾燥させて感熱性粘着シートを得た。
【0085】
実施例3
(感熱性粘着剤の調製)
上記で調製した固体可塑剤水分散液1〜4を、固形分重量比で、ビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート:レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]:トリメチルハイドロキノンジアセテート:ジシクロヘキシルフタレート=30:30:30:10となるように配合した固体可塑剤水分散液中に、熱可塑性樹脂としてのアクリル系重合体(2−エチルヘキシルアクリレート−スチレン−アクリル酸共重合体、ガラス転移温度Tg:25℃)の水系エマルジョン、粘着付与剤としてのテルペン樹脂の水系分散液及び水を加えて均一になるまで攪拌し、固形分濃度45重量%の感熱性粘着剤を得た。このときの配合比は、固体可塑剤100重量部に対して熱可塑性樹脂(アクリル系重合体)17重量部、粘着付与剤(テルペン樹脂)26重量部であった。
(感熱性粘着シートの作製)
上記で調製した感熱性粘着剤を秤量84.9g/m2の片アート紙の原紙面(裏面)及び厚さ25μmの表面をコロナ放電処理したPETフイルムに、バーコーターを用いて乾燥後の塗工量が12g/m2となるように塗工し、40℃で2分間乾燥させて感熱性粘着シートを得た。
【0086】
比較例1
(感熱性粘着剤の調製)
上記で調製したジシクロヘキシルフタレートの水分散液(固体可塑剤水分散液4)中に、熱可塑性樹脂としてのアクリル系重合体(2−エチルヘキシルアクリレート−スチレン−アクリル酸共重合体、ガラス転移温度Tg:25℃)の水系エマルジョン、粘着付与剤としてのテルペン樹脂の水系分散液及び水を加えて均一になるまで攪拌し、固形分濃度50重量%の感熱性粘着剤を得た。このときの配合比は、固体可塑剤(ジシクロヘキシルフタレート)100重量部に対して熱可塑性樹脂(アクリル系重合体)17重量部、粘着付与剤(テルペン樹脂)26重量部であった。
(感熱性粘着シートの作製)
上記で調製した感熱性粘着剤を秤量84.9g/m2の片アート紙の原紙面(裏面)及び厚さ25μmの表面をコロナ放電処理したPETフィルムに、バーコーターを用いて乾燥後の塗工量が12g/m2となるように塗工し、40℃で2分間乾燥させて感熱性粘着シートを得た。
【0087】
性能試験
(接着強度、透明性)
PETフィルムに塗工して得られた感熱性粘着シートを幅25mm、長さ125mmの大きさに切断して試験片とした。この試験片を140℃で30秒間加熱して粘着性を発現させ、ガラス板[岩城硝子(株)製、Micro S1ide G1ass 白緑磨)上に置き、ゴムロールで2kgの荷重をかけて1往復することにより貼付した。これを23℃、50%RHの雰囲気下に放置し、1日後、1ヶ月後、3ヶ月後に接着強度試験を行った。接着強度試験は、引張リ試験機(オリエンテック社製、テンシロンUCT−5T)を使用して、引張り速度300mm/分、剥離角度180°で接着力を測定した。また透明性を目視で確認した。その結果を表1に示す。
【0088】
(耐ブロッキング性)
片アート紙に塗工して得られた感熱性粘着シート4枚をアート紙の光沢面(表面)と感熱性粘着剤を塗工した面(裏面)とが接するように重ね、500gf/cm2の荷重をかけて40℃の雰囲気下に24時間放置した後、以下の基準で耐ブロッキング性の評価を行った。その結果を表1に示す。
5:剥離抵抗なく剥離した。
4:剥離時に若干音を発しながら剥離した。
3:剥離時に連続的に音を発しながら剥離した。
2:剥離時に紙の繊維が一部粘着層に残った。
1:ブロッキングによリ紙が破れた。
【0089】
【表1】
表1の結果から、比較例1の感熱性粘着シートは1ヶ月後に固体可塑剤が再結晶化して不透明になり、接着強度が0になってしまうのに対して、実施例1〜3の感熱性粘着シートは、3ヶ月後でも高い透明性、接着強度を維持しており、また、耐ブロッキング性に優れていることが分かる。
【0090】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特定の固体可塑剤を2種以上組み合わせて用いるので、粘着性を発現する温度が高いだけでなく、固体可塑剤の再結晶化が遅延し、優れた透明性及び接着強度が長期間持続する。そのため、これを用いて得られる感熱性粘着シートは、より高い温度で加熱乾燥できると共に、長期間保存してもブロッキングが生じず、しかも長期に亘って、高い透明性及び接着強度を維持できる。
Claims (10)
- 熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、前記固体可塑剤が、(i)(A)(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を構成する炭素原子のうち隣接する炭素原子以外の2つの炭素原子間にアルキレン基が結合して橋を形成している橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物と、(ii)(ii-1)下記式 (1a)
で表されるリン化合物、(ii-2)ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、及びこれらのアルキル置換体、これらのエーテル体、並びにエステル体からなる誘導体から選択される少なくとも一つの化合物であるジオキシベンゼン誘導体及び(ii-3)ジシクロヘキシルフタレートから選択された少なくとも1種の化合物とで構成されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 多エステル化合物(i)が、(A11)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサノール又は(A21)ヒドロキシル基又はヒドロキシメチル基が結合した6員飽和炭素環を構成する炭素原子のうち隣接する炭素原子以外の2つの炭素原子間にアルキレン基が結合して橋を形成している橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- リン化合物(ii-1)の融点が55〜100℃である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ジオキシベンゼン誘導体(ii-2)が、(C)(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノール、又は(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと、(D)有機一塩基酸とのジエステル化合物である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 固体可塑剤の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対して30〜1000重量部である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- さらに粘着付与剤を含有する請求項1〜5の何れかの項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が水に分散した水性組成物である請求項1〜6の何れかの項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜7の何れかの項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する感熱性粘着剤。
- 基材の少なくとも一方の面に請求項8記載の感熱性粘着剤で構成された粘着剤層が設けられている感熱性粘着シート。
- 基材の少なくとも一方の面に請求項8記載の感熱性粘着剤を塗工して粘着剤層を設ける感熱性粘着シートの製造方法。
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