JP4607330B2 - ガンの新規処置 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明の分野
本発明は、腫瘍の病巣に対する攻撃を開始するためにガンに苦しむ哺乳類又はヒトの免疫系を誘導することによって、哺乳類(ヒトを含む)の原発性、転移性及び残留性のガンの処置のための薬剤に関する。特に、本発明はワクチンアジュバント及び/又は他の補助因子を用いる又は用いない、全細胞、その誘導体及び一部の使用に関する。更に具体的には、この開示は処置計画の基礎を形成する全細胞並びにその誘導体及び一部の特定の組み合わせの使用を記載する。
【0002】
本発明の背景
ガン細胞が、それらの正常な非ガン性対応物と比較して、定性的及び定量的、空間的及び時間的に多くの変異を含み、そして腫瘍細胞の増殖及び伝播の間のある時点で、これらの一部が宿主の免疫系によって異常として認識されることができることは当業界で知られている。このことは、宿主の免疫系の力を利用し、そしてガン細胞への攻撃を指示する免疫療法を開発する世界中の多くの研究努力を導き、それによって少なくとも生命を脅かさないレベルまでその様な異常な細胞を排除してきた(Maraveyas, A. & Dalgleish, A. G. 1977 Active immunotherapy for solid tumours in vaccine design in The Role of Cytokine Networks, Ed. Gregoriadis et al., Plenum Press, New York, pages 129-145; Morton, D. L. and Ravindranath, M. H. 1996 Current concepts concerning melanoma vaccines in Tumor Immunology - Immunotherapy and Cancer Vaccines, ed. Dalgleish, A. G. and Browning, M., Cambridge University Press, pages 241-268に概説されている。更なる詳細はこれらの出版物の他の紙面を参照のこと)。
【0003】
ガンの免疫療法を追求する多くの試みがなされてきており、そしてこれらは以下の5つの範疇に分類されうる:
【0004】
非特異的免疫療法
免疫系を非特異的に刺激する試みは、William Coleyの一世紀以上前の草分け的な実験に遡る(Coley, W. B., 1894 Treatment of inoperable malignant tumours with toxins of erisipelas and the Bacillus prodigosus. Trans. Am. Surg. Assoc. 12: 183)。限定されるいくつかの場合において成功するが(例えば、泌尿器の膀胱ガンの処置のためのBCG、メラノーマ及び腎臓ガンの処置のためのIL−2)、非特異的な免疫調節が、多くのガンを処置するのに十分であることを証明しない様であることは広く認識されている。非特異的な免疫刺激剤は免疫応答性の一般的な増強される状態を導きうるが、それらは標的化能力及び、更に免疫監視をくぐり、阻止し、そしてくつがえす多くの機構及び可塑性を有するであろう腫瘍の病巣を扱うための巧妙さを欠く。
【0005】
抗体及びモノクローナル抗体
抗体、及び特にモノクローナル抗体の形態の受動免疫療法は、抗ガン剤としての、多くの研究及び開発の対象であった。最初、その素晴らしい特異性のために魔法の弾丸と呼ばれたモノクローナル抗体は、抗体自身に対する免疫応答(それによりそれらの活性が排除される)及び血管を通過して病巣に近づくことのできない抗体の能力を含むいくつかの理由のため、ガンの免疫療法の分野におけるそれらの期待を果たすのに失敗した。最近、3つの生成物がヒトへの使用のための医薬として登録され、すなわちPanorex(Glaxo−Wellcome)、Rituxan(IDEC/Genetech/Hoffman la Roche)及びHerceptin(Genetech/Hoffman la Roche)のことであり、研究及び開発のための50以上の他の計画が進行している。抗体は、(免疫学的感覚において)ガン抗原を模倣している様な抗イディオタイプ抗体を用いる能動免疫療法にも利用されうる。概念は洗練されているが、抗体に基づいた試みの利用は最終的に、哺乳類又はヒトの対象者のガン細胞のサブセットが変異し、そして特定の抗体によって認識される抗原を失い、そしてそれによって、もはや抗体で処置が不可能なガン細胞の集団の増殖を導きうるという、「免疫学的逸脱」の現象によって制限されうることを証明しうる。
【0006】
サブユニットワクチン
感染症及び他の分野のためのワクチンの実験を頼りに、多くの研究者が、排他的に又は選択的にガン細胞と関連している抗原、すなわち腫瘍特異的抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)を同定し、そして特異的な能動免疫療法の基礎として前記の抗原又はその画分を使用しようと努めてきた。
【0007】
TAA又はTSAの範疇に分類されるタンパク質又はそれから誘導したペプチドを同定するために、多くの方法が存在する。例えば、ディファレンシャルディスプレイ技術を利用することが可能であり、これによってRNAの発現が、病巣で排他的又は選択的に発現するRNAを同定するために、腫瘍組織と隣接している正常な組織との間で比較される。前記RNAの配列決定は、その特異的な組織でその特異的な時期に発現する複数のTAA及びTSAを同定したが、その中には、TAA又はTSAの同定が、病巣における抗原のプロファイルの十分な反映を長時間提供できない、いずれかの与えられた時期の病巣の「片鱗」のみを表すという試みの潜在的な欠陥がある。同様に、細胞障害性Tリンパ球(CTL)のクローニング及び腫瘍組織由来のcDNAの発現クローニングは、多くのTAA及びTSAの同定を、特にメラノーマにおいてもたらした。前記の試みは、TAA又はTSAの1つだけの同定が、臨床的に関連している抗原のプロファイルの適当な表現を提供できないという、ディファレンシャルディスプレイ技術と同一の固有の欠点を有する。
【0008】
50以上のその様なワクチンの試みは、広範なガンの処置において発達しているが、ヒトの医薬生成物としての市販の認可を受けたものはまだない。上文の抗体に基づいた試みに記載したものに類似の方法において、サブユニットワクチンは、免疫学的逸脱の現象によっても制限されうる。
【0009】
遺伝子治療
ヒトの対象者における多くの遺伝子治療の試験が、ガンの処置の領域内でされてきており、これらの多くが患者の免疫応答を引き起こしそして/あるいは増幅する様に検討されてきた。商業的な開発における特に注目すべきものは、Vical Incによって開発されたヒト腫瘍の範囲のためのアロベクチン−7及びロイベクチン、Calydon Incによって開発された前立腺ガンの処置のためのCN706、並びにStressGen Incの、メラノーマ及び肺ガンのためのストレスタンパク質の遺伝子治療である。現在、企業及び大学の連合によって進められている、これら及び他の多くの「免疫−遺伝子治療」が最終的に成功したのかと証明するのは尚早であるが、これらの試みのうち、商業的な利用が10年以上先であろうことは広く受け入れられている。
【0010】
細胞を基にしたワクチン
腫瘍は:潜在的な標的タンパク質の発現のダウンレギュレーション;潜在的な標的タンパク質の変異;受容体及び他のタンパク質の表面発現のダウンレギュレーション;MHCクラスI及びIIの発現のダウンレギュレーション、それによるTAA又はTSAペプチドの直接的な提示の不可能;アネルギーを導くT細胞の不完全な刺激を導く共刺激分子のダウンレギュレーション;免疫系に対するおとりとして働く、選択的な、代表的でない膜部分の分断;免疫系をアネルギー化する選択的な膜部分の分断;阻害分子の分泌;T細胞の死滅の誘導;及び多くの他の方法を含む、様々な方法において、免疫系を中和する注目すべき能力を有する。明らかなことは、身体の中の免疫学的異種性及び可塑性が、異種性を同様に組み入れる免疫療法の計画によって、ある程度適合されなければならないであろうことである。全ガン細胞、又はその粗製誘導体の、ガンの免疫療法としての使用は、ウイルス性疾患に対するワクチンとしての、全部の不活性化又は弱毒化ウイルスの使用と類似して考察されうる。潜在的な利点は:
(a)全細胞が、上述した病巣のものに適合する十分な異種性の抗原のプロファイルを提供する幅広い抗原を含み;
(b)多価であり(すなわち複数の抗原を含み)、免疫学的逸脱の危険性が低下しており(これらの抗原の全てを「欠いている」ガン細胞の確率が操作される);そして
(c)細胞を基にしたワクチンが、それ自身まだ同定されていないTSA及びTAAを含む;これは、現在まだ同定されていない抗原が知られている比較的少ないTSA/TAAよりも臨床的に関連していない様であるならば可能である、ことである。
【0011】
細胞を基にしたワクチンは、2つの範疇に分けられる。最初に、自己組織由来の細胞を基にしたものは、患者からの生検の摘出、in vitroでの腫瘍細胞の培養、トランスフェクション及び/又は他の手段による細胞の修飾、細胞複製不能にするための照射及び、続いて同一の患者に細胞を戻すためにワクチンとして注射することを含む。この試みは、過去十年にわたってかなりの注目を受けたが、この個々の目的に合わせた治療が、複数の理由から本質的に実行不能であることが次第に明らかとなってきた。この試みは時間がかかり(しばしば、ワクチンの臨床的な投与量の製造のためのリードタイムが、患者の期待寿命を超える)、高価であり、そして「注文の」生成物として、標準化した生成物を指定することができない(生成物ではなく、方法のみが標準化され、そして、それ故に最適化され、そして質が調節されうる)。更に、自己組織由来のワクチンを調製するために使用した腫瘍の生検は、ある増殖特性、それを独特なものにする周囲の組織との相互作用及び関係を有するだろう。このことは、免疫療法のための自己の細胞の使用に対する潜在的に重大な欠点を暗示しており:最初の細胞を提供する生検は、ちょうどその時点で、その環境における腫瘍の免疫学的な片鱗を提示し、そしてこれは疾患の進行全体に及んで与えられうる、維持される活性を有するワクチンのために、長時間に及ぶ免疫学的提示として不適当であると思われる。
【0012】
細胞を基にしたワクチンの第2の型及び本発明の目的は、患者にとって遺伝的に(そしてそれ故に免疫学的に)不適合な同種細胞の使用を記載する。同種細胞は自己細胞と同一な多価の利点にする恩恵を受ける。更に、同種細胞のワクチンがin vitroで無期限に培養されうる不死化細胞系に基くことがある場合、次の様に、この試みは自己組織を用いる試みのリードタイム及び費用上の不利を被らない。同様に、同種間の試みは、疾患の段階の観点から見た個体の疾患のプロファイル、病巣の位置及び他の治療に対する潜在的な抵抗性に適合しうる細胞型の組み合わせを使用する機会を提供する。
【0013】
細胞を基にしたガンワクチンの利用の、多くの刊公された報告が存在している(例えば、Dranoff, G. et al. WO93/06867; Gansbacher, P. WO94/18995; Jaffee, E. M. et al. WO97/24132; Mitchell, M. S. WO90/03183; Morton, D. M. et al. WO91/06866を参照のこと)。これらの研究は、GM−CSF,IL−2、インターフェロン又は他の免疫学的に活性な分子を産生するための細胞のトランスフェクション及び「自殺」遺伝子の使用に対する、免疫療法の抗原としてガン細胞を用いる基本的な方法に由来する変形の範囲を包含する。集団は、患者のハプロタイプに対してHLA適合又は部分的に適合する同種細胞系及び更にメラノーマの領域の患者のハプロタイプに対して不適合な同種細胞系及び更にGM−CSFでトランスフェクションした不適合な同種の前立腺細胞系を使用した。
【0014】
本発明の説明
本明細書で開示する本発明は、ヒトの前立腺ガンの処置のための同種間の免疫療法剤としての使用を意図した細胞系の特異的な組み合わせを含んで成る生成物に関する。本明細書に記載の免疫療法の異種性は標的前立腺ガンの抗原性プロファイルに適合し、そして疾患の様々な段階で発現する多くの潜在的なTAA及びTSAで受容者を免疫化する。本細胞系は次の特徴を有する適当な細胞系から選択される:細胞が不死化され、元の前立腺又は転移性の前立腺が大規模な細胞培養において良好な増殖を示し、そして構成細胞系の質の調節及び再現性のある製造を許容することがよく特徴づけられている。
【0015】
本明細書に開示されている本発明は更に、上述した細胞系の組み合わせを含んで成る生成物に関し、前記細胞系は、意図される患者の集団と最大のハプロタイプの不適合を許容する様に選択され、それによって最大の同種間の可能性及び続く、前記生成物に対する免疫応答を保証する。
【0016】
説明される本発明は、原発性又は転移性の前立腺ガンの生検材料から、当業界で知られている方法を用いて調製し(Rhim, J. S. and Kung, H-F., 1997 Critical Reviews in Oncogenesis 8(4): 305-328において概説され、そして引用されている)、そして/あるいは表1に列記したA群(原発性の前立腺ガンの病巣に由来する細胞系)及びB群(転移性の前立腺ガンの病巣に由来する細胞系)から選択した3つの異なる細胞系の組み合わせを含んで成るワクチンを開示する。
【0017】
1つの態様において、細胞系の組み合わせは原発性の前立腺ガンの病巣に由来する3つの異なる細胞系から成る。
【0018】
別の態様において、前記の組み合わせは、原発性の前立腺ガンの病巣に由来する2つの異なる細胞系及び転移性の前立腺ガンの病巣に由来する1つの細胞系から成る。
【0019】
別の態様において、前記の組み合わせは、転移性の前立腺ガンの病巣に由来する2つの異なる細胞系と組み合わせた原発性の前立腺ガンの病巣に由来する1つの細胞系から成る。
【0020】
更なる態様において、前記の組み合わせは、転移性の前立腺ガンの病巣に由来する3つの異なる細胞系から成る。
【0021】
前記細胞は、それらが複製不可能となることを保証する、50〜300Gyのガンマ線照射を用いて致死的に照射される。
【0022】
免疫療法剤として有用であるべき前記細胞系及び上述した組み合わせは、輸送及び貯蔵を許容するために凍結されねばならず、故に本発明の更なる観点は、凍結保護溶液で調製される上述した細胞のいずれかの組み合わせにある。適当な凍結保護溶液は、限定しないが10〜30%v/v水性グリセロール溶液、5〜20%v/vジメチルスルホキシド又は5〜20%w/vヒト血清アルブミンを含むことがあり、これらを単一の凍結保護剤として又は組み合わせて、そのいずれかで使用することもある。
【表1】
Figure 0004607330
【0023】
本発明の更なる態様は、非特異的な免疫賦活剤、例えばBCG又はM.バッカエ(Vacce)、破傷風毒素、ジフテリア毒素、百日咳菌、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン4、インターロイキン7、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント又は当業界で知られている他の非特異的な薬剤と組み合わせた細胞系の使用にある。一般的な免疫賦活剤が一般的に増強されている免疫状態を作り出し、一方、細胞系の組み合わせが、それらのハプロタイプの不適合を介して免疫の増強に加わり、そしてそれらの特異的な起源の異種性の結果として過剰なTAA及びTSAに対する免疫応答を標的にすることが利点である。
【0024】
本発明は次の例、及び図に関して記述される。
【0025】
例1
細胞の増殖、照射、調製及び保存
原発性の前立腺組織に由来する不死化した細胞系、すなわちNIH1542−CP3TXは、液体窒素貯蔵からの回収後、25μg/mlウシ下垂体抽出物、5ng/mlの上皮増殖因子、2mM L−グルタミン、10mM HEPES緩衝液及び5%ウシ胎児血清(FCS)を添加したKSFM培地(以降、「修飾KSFM」と称する)中での回転びん培養で増殖した。T175静置フラスコでの培養後、1700cm2 の増殖表面積を有する回転びん中に、回転びん当たり2〜5×107 で播種した。
【0026】
2つの転移由来の細胞系、すなわちLnCap及びDU145も使用し、これらは共にATCC起源である。LnCapは、容器当たり1〜10×106 細胞での播種後に、10%FCS及び2mM L−グルタミンを添加したRPMI培地中で、大きな表面積の静置フラスコでほぼコンフルコントになるまで増殖した。Du−145は、静置フラスコにおいて冷凍貯蔵物から増大させ、そして次に850cm2 の回転びん中に、びん当たり1〜20×107 細胞で播種し、そして10%FCS及び2mM L−グルタミンを含むDMEM培地でコンフルコントになるまで増殖した。
【0027】
全ての細胞系が、1倍の標準的な濃度のトリプシンを用いて採集された。DMEM中での広範囲の洗浄の後、前記細胞を10〜40×106 細胞/mlの濃度で再懸濁され、そしてCo60源を用いて50〜300Gyで照射された。照射後、前記細胞は10%DMSO,8%ヒト血清アルブミン/リン酸緩衝塩溶液から成る凍結保護溶液中で調製し、そして1分当たり1℃の割合で冷却することによって15〜50×106 細胞/mlの細胞濃度で凍結し、そして次に使用が必要とされるまで液体窒素の冷凍器に移した。
【0028】
ワクチン接種
前立腺ガンの患者は、30ng/mlの血清PSAレベルでのホルモン治療に対する抵抗性に基づいて選択される。倫理的な許可及びMCA〔イギリスの薬剤管理機関(UK Medicine Control Agency)〕の認可は、15人の患者においてこの試験を行うために請求され、そして得られた。
【0029】
ワクチン接種計画は次の通りである:
【表2】
Figure 0004607330
【0030】
前記細胞は37℃の水溶中でおだやかに暖められ、そして患者への注射の前に放線菌のアジュバントと混合された。注射は、流入領域リンパ節のくぼみに、4つの注射部位で皮内から行った。投与間の最小の間隔は2週間であり、そして投与の多くは4週の間隔で与えられた。最初の投与の前に、そしてそのいくつか後の投与の前に、患者は上文のワクチン接種計画に列記した3つの細胞系及びPNT2(ECACCに起源を有する不死化した正常な表皮細胞系)に対する遅延型過敏(DTH)について試験された(全ての試験がアジュバント無しで0.8×106 個の細胞を含む)。
【0031】
免疫学的応答の解析
(a)T細胞の増殖応答
ワクチン接種がワクチン接種した細胞系に由来する抗原を認識したT細胞集団の特異的な増大をもたらしたかどうかを決定するために、我々は前立腺細胞系の溶解液による賦活化の後、T細胞上での増殖アッセイを行った。全細胞はクリニックを訪れる各人から抽出し、そして後述するBrdU(ブロモデオキシウリジン)に基づいた増殖アッセイにおいて使用した。
【0032】
患者のBrdU増殖法
【表3】
Figure 0004607330
【0033】
方法
1)1mlの血液を9mlのRPMI+2mM L−gln+PS+50μM 2−Meで希釈する。血清を加えない。37℃で一晩放置する。
2)次の朝、450μlの希釈血液を48穴プレートに分割し、そして50μlの賦活溶解液を加える。前記溶解液は、腫瘍細胞(2×106 細胞等価物/ml)を液体窒素中で3回凍結融解し、そして続いて必要になるまで凍結してアリコートを保存することによって作製した。
3)37℃で5日間細胞を培養する。
4)5日目の晩に、30μg/mlのBrdUを50μl加える。
5)100μlの各試料を96穴丸底プレートに分割する。
6)プレートを遠心し、そして上清を除く。
7)室温で5分間、100μlのPharmalyseを用いて赤血球を溶解する。
8)50μlのCytofixで2回洗浄する。
9)遠心し、そして上清を軽くはじいて除去する。
10)100μlのPerm洗浄液で、室温で10分間透過処理をする。
11)Perm洗浄液で体積を合わせる補正希釈時の抗体を含んで成る、30μlの抗体混合物を加える。
12)暗がりにおいて室温で30分間インキュベートする。
13)1回洗浄し、そして100μlの2%パラホルムアルデヒド中で再懸濁する。
14)これを解析の準備ができたクラスターチューブ中の400μlのFACSフローに加える。
15)3000回のCD3の事象を保有する、FACSスキャンで解析する。
【表4】
Figure 0004607330
【表5】
Figure 0004607330
【表6】
Figure 0004607330
【0034】
増殖アッセイの結果は図1に示され、ここでCD4又はCD8のいずれかにポジティブなT細胞の増殖指数は様々な細胞の溶解液に対して示され、前記の増殖指数は溶解液無しのコントロールによるT細胞の増殖の割合で割ることで導かれる。
【0035】
患者番号202及び205の結果を示す。4つの細胞溶解液、すなわちNIH1542,LnCap,DU−145及びPNT−2(不死化した正常な前立腺の表皮細胞系)の結果を与える。結局、処置した患者のうち50%がNIH1542−CP3TX,LnCap及びDU−145に対して多少、そしてPNT−2に対してもいくつかの場合において特異的な増殖を増している。
【0036】
(b)患者の血清を利用するウエスタンブロット
標準化した細胞溶解液は、ウエスタンブロット解析のための変性SDS DAGEゲル上に同様のタンパク量を添加することを可能にするために、いくつかの前立腺細胞系について調製された。各ブロットは、分子量マーカー、並びにNIH1542,LnCap,Du−145及びPNT−2の細胞溶解液由来の等量のタンパク質が添加された。このブロットは、続いてワクチン接種前及びワクチン接種の16週後(4〜6回の投与)の患者の血清でプローブした。
【0037】
方法
a)試料の調製(前立腺の腫瘍系)
・細胞のペレットをPBS中で3回洗浄する。
・1×107 細胞/ml溶解緩衝液で再懸濁する。
・液体窒素/水溶中での素速い凍結融解に5サイクル通す。
・細胞片を除去するために5分間1500rpm で遠心する。
・膜混入物を除去するために30分間20,000rpm で超遠心する。
・200μlに分割し、そして−80℃で保存する。
【0038】
b)ゲル電気泳動
・溶解液をLaemelliの試料緩衝液と1:1で混合し、そして5分間煮沸する。
・4〜20%のグラジエンドゲルの穴に20μgの試料を添加する。
・Bjerrum及びSchafer−Nielsonのトランスファー緩衝液(SDSを含む)中で、200Vで35分間ゲルを流す。
【0039】
c)ウエスタントランスファー
・トランスファー緩衝液中で15分間、ゲル、ニトロセルロース膜及びブロッティングペーパーを平衡化する。
・セミドライの電気泳動トランスファーセルの陽極上のゲル−ニトロセルロースサンドイッチを並べる:2枚のブロッティングペーパー、ニトロセルロース膜、ゲル、2枚のブロッティングペーパー。
・陰極をかけ、そして25Vで90分間流す。
【0040】
d)タンパク質の免疫学的検出
・4℃で一晩、PBS/0.05% Tween20中の5%Marvelでニトロセルロース膜をブロッキングする。
・PBS/0.05% Tween20中で膜を2回すすぎ、続いて室温で20分間及び2×5分間、振盪プラットホーム上で洗浄する。
・振盪プラットホーム上で室温で120分間、明らかにした患者の血漿の1:20希釈液中で膜をインキュベートする。
・5分の最終洗浄を加えて、上文の様に洗浄する。
・振盪プラットホーム上で室温で90分間、ビオチン抗ヒトIgG又はIgMの1:250希釈液中で膜をインキュベートする。
・5分の最終洗浄を加えて、上文の様に洗浄する。
・振盪プラットホーム上で室温で60分間、ストレプトアビジン−西洋クサビペルオキシダーゼ結合体の1:1000希釈液中で膜をインキュベートする。
・上文の様に洗浄する。
・発色させるために、5分間ジアミノベンジジンペルオキシダーゼ基質中で膜をインキュベートし、膜を水ですすぐことで反応を停止させる。
【0041】
抗IgG2次抗体でプローブした、患者201及び203についてのウエスタンブロットの結果を図2に示す。この図は、4つの細胞溶解液を用いた各患者について基準線及び16週の時点を各ブロット上で示す。
【0042】
全体的に、少なくとも4〜6回の投与を受けた患者の50%以上が、ワクチン接種前に存在しているバンド及び/又は前記血清によって認識される、広範囲にわたる数のバンドの強度の増大を示した。
【0043】
特に注目すべきものは、ワクチン接種法(DTH試験以外)の一部を形成しなかったPNT2溶解液に対する、患者201及び203由来の血清の反応性であるが、それにもかかわらず両方の患者の血清においてNIH1542,LnCap及びDU145と共通の抗原を共有する様である。
【0044】
(c)抗体の力価の決定
抗体の力価は、標準化した細胞系でELISAプレートをコーティングし、そして前記の細胞系でワクチン接種した患者由来の血清に対する希釈研究を行うことで決定した。
【0045】
抗溶解液IgGを用いるELISAの方法
1.次の希釈を用いて、50μl/穴 溶解液(10μg/ml)でプレートをコートする。
【表7】
Figure 0004607330
2.カバーをし、そして4℃で一晩インキュベートする。
3.2回PBS−Tweenで洗浄する。乾燥させるためにペーパータオル上でプレートをたたく。
4.PBS/10%FCSでブロックする(100μl/穴)。
5.カバーし、そして室温で1時間(最低)インキュベートする。
6.PBS−Tweenで2回洗浄する。
7.100μlのPBS−10%FCSを列2〜8に加える。
8.200μlの血漿試料(PBS−10%FCS中で1/100希釈、すなわち10μlの血漿を990μlのPBS−10%FCSに加えたもの)を列1に加え、そしてプレートの下方向への100μlの連続希釈を行う。一番下の穴から過剰な100μlを除く。カバーし、そして冷蔵庫で一晩インキュベートする。
9.ビオチン化した抗体(Pharminger;IgG 34162D)を最終濃度1mg/mlに希釈する(すなわち20ml/10ml)。
10.カバーし、そして室温で45分間インキュベートする。
11.上文の様に6回洗浄する。
12.ストレプトアビジン−HRP(Pharminger,13047E O;1:1000希釈)に希釈する(すなわち10ml−>10ml)。
13.穴当たり100mlを加える。
14.室温で30分間インキュベートする。
15.8回洗浄する
16.穴当たり100ml基質を加える。室温で10〜80分展開する。
17.100mlの1M H2SO4を加えることで発色反応を停止する。
18.405nmでODを読み取る。
【0046】
結果(図3)は、少なくとも4〜6回の投与によるワクチン接種の後、患者が細胞系の溶解液に対する抗体の力価の増大を示すことがあることを示す。
【0047】
(d)PSAレベルの評価
前記ワクチンを受けた患者のPSAレベルは、試験開始時及びワクチン接種を通して、慣習的に使用されている臨床用キットを用いて記録した。患者201及び208のPSAは図4に示され、そしてこの患者の群において通常、しばしば指数関数的に上昇し続けるPSA値の落ち込み又は安定化を表す。患者201の結果は、骨の痛みを軽減するための放射線治療によっていくらか混乱するが、PSA値は放射線治療前に有意に落ち込んだ。
【0048】
例2
本発明は更に初期の前立腺ガンの患者に使用されることがあり、そしてこの免疫療法は異なる経路で投与されることもある。例えば、次のプロトコールが使用されうる:
【0049】
細胞は、例1に記載の方法に従い増殖され、照射され、調製され、そして保存される。前立腺ガン患者は、根治的な前立腺切除の前に選択され、そして3つの照射された細胞系の組み合わせ(8×106 細胞/系)を用いて、手術前に2週間隔で3回ワクチン接種される。約半分の患者が流入領域リンパ節のくぼみに皮内からワクチン接種され(少なくとも最初の投与時に放射菌のアジュバントと混合した細胞系);残りの患者は、少なくとも最初の投与時に遠位での皮内放射菌アジュバント投与と一緒に、前立腺内に注射される。手術によって摘出した前立腺の生検試料は、前立腺細胞の死及び浸潤している免疫細胞の存在について試験される。更に、T細胞の機能、ウエスタンブロット解析及び抗体の力価は、例1の方法に従い決定される。血清PSAはこれらの患者において、時間を空けて測定される。
【0050】
このプロトコールに従い、免疫学的応答が検出されうる。更に、前立腺細胞の死は外科的な生検において検出されうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は患者番号202及び203のT細胞増殖データを示す。
【図2】 図2は患者番号201及び203由来の血清のウエスタンブロット解析を示す。
【図3】 図3は患者番号201由来の血清の抗体の力価を示す。
【図3(続き)】 図3(続き)は患者番号201由来の血清の抗体の力価を示す。
【図4】 図4は患者201及び208のPSAデータを示す。

Claims (21)

  1. 3つのヒト前立腺腫瘍細胞系を含んで成る前立腺ガンの処置のための同種免疫療法剤であって、このうちの1つの細胞系が原発腫瘍に由来し、そして他の2つの細胞系が転移組織に由来する免疫療法剤。
  2. 3つのヒト前立腺腫瘍細胞系の混合物を含んで成る前立腺ガンの処置のための同種免疫療法剤であって、このうちの1つの細胞系が原発腫瘍に由来し、そして他の2つの細胞系が2つの異なる転移組織に由来する免疫療法剤。
  3. 3つのヒト前立腺細胞系の混合物を含んで成る前立腺ガンの処置のための同種免疫療法剤であって、このうちの2つの細胞系が1又は2つの原発腫瘍に由来し、そして他の細胞系が転移組織に由来する免疫療法剤。
  4. 前記腫瘍細胞系が転移に由来し、且つLnCap,DU145又はPC3から選択される、請求項1に記載の免疫療法剤。
  5. 前記の腫瘍細胞系が50〜300Gyで照射された、請求項1に記載の免疫療法剤。
  6. 前記の腫瘍細胞系が100〜150Gyで照射された、請求項1に記載の免疫療法剤。
  7. BCG又はM.バッカエ(Vaccae)、破傷風毒素、ジフテリア毒素、百日咳菌、インターロイキン2、インターロイキン12、インターロイキン4、インターロイキン7、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント又は他の非特異的免疫賦活剤から選択されるワクチンアジュバントと組み合わせた、請求項1に記載の免疫療法剤を含んで成る免疫原性組成物。
  8. 放線菌調製物であるワクチンアジュバントと組み合わせた、請求項1に記載の免疫療法剤を含んで成る免疫原性組成物。
  9. 前記細胞が、10〜30%v/vの水性グリセロール溶液、5〜20%v/vジメチルスルホキシド及び5〜20%w/vのヒト血清アルブミンから成る群から選択される少なくとも1つのものを含む凍結保護溶液で調製される、請求項1に記載の免疫療法剤又は組成物。
  10. 前記細胞が、5〜20%v/vジメチルスルホキシド及び5〜20%w/vのヒト血清アルブミンを組み合わせて含む、凍結保護溶液で調製される、請求項1に記載の免疫療法剤又は組成物。
  11. 免疫T細胞の活性化により患者の免疫応答を誘導することが可能である、請求項1に記載の免疫療法剤。
  12. 抗体産生の誘導により患者の免疫応答を誘導することが可能である、請求項1に記載の免疫療法剤。
  13. 前立腺ガンの患者の血清前立腺特異抗原のレベルの増加速度の低下又は当該レベルの減少を誘導することが可能である、請求項1に記載の免疫療法剤。
  14. 皮内投与することが可能である、請求項1に記載の免疫療法剤。
  15. 前立腺内に投与することが可能である、請求項1に記載の免疫療法剤。
  16. 請求項1に記載の免疫療法剤並びに補形薬、アジュバント及び担体から成る群から選択される生理学的に許容される物質を含んで成る、前立腺ガンの処置のための同種免疫療法ワクチン組成物。
  17. 有効量の、請求項1に記載の免疫療法剤を含んで成る前立腺ガンの予防又は処置のための医薬組成物。
  18. 3つの異なるヒト前立腺腫瘍細胞系を含んで成る前立腺ガンの処置のための同種免疫療法剤であって、このうちの1つの細胞系が原発性前立腺腫瘍に由来し、そして他の2つの細胞系が転移性前立腺組織に由来する免疫療法剤。
  19. 前記細胞系がハプロタイプの不適合を最大化するように選択される、請求項18に記載の免疫療法剤。
  20. 3つの異なるヒト前立腺腫瘍細胞系を含んで成る前立腺ガンの処置のための同種免疫療法剤であって、このうちの1つの細胞系が転移性前立腺組織に由来し、そして他の2つの細胞系が原発性前立腺腫瘍に由来する免疫療法剤。
  21. 前記細胞系がハプロタイプの不適合を最大化するように選択される、請求項20に記載の免疫療法剤。
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