JP4606049B2 - 水膨張性シール材およびシール材を用いたプレキャストコンクリート - Google Patents

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本発明は、トンネル用のセグメント、水路用ボックスカルバートなどのプレキャストコンクリートに使用され、内部または外部からの水の侵入、浸出を完全に防止するシール材およびこのシール材を用いたプレキャストコンクリートに関するものであり、さらに詳しくは該シール材は水を吸収して膨張する膨張性ゴムを用いたものであり、水で膨張したときの対面応力が低い水膨張シール材、およびこのシール材を用いたプレキャストコンクリートに関する。
水膨張性シール材は加硫ゴムの中に吸水性ポリマーなどの吸水性物質を添加した組成から成る。水膨張性シール材と水が接触すると加硫ゴムの中の吸水性物質が吸水し、水膨張性シール材自体が体積膨張する。このメカニズムにより例えば、該シール材をトンネルを構成するセグメント間のシール材として使用した場合、トンネルの外周部などから侵入してくる水をトンネル内に止水することができる。このとき、吸水して体積膨張した水膨張性シール材は、隣接するセグメント面に対する対面応力がトンネル外部の地下水圧よりも大きい状態になることで、高い止水効果が発揮される。このような技術は既に周知になっており,例えば特許文献1などに開示されている。
特開平2003−239694号公報
水膨張性シール材は吸水すると膨張し、乾燥状態のそれよりも数倍膨張するように設計されており、隣接するプレキャストコンクリートに対して大きな対面応力が発生する。しかし、この対面応力が異常に高くなってコンクリートの材料強度を超えるとプレキャストコンクリートにクラックや亀裂を発生させてしまい、この破損部分から水が浸透し、新たな漏水の原因となる。
そこで、このクラックや亀裂を回避するために吸水性物質の添加量を減量して水膨張性シール材の体積膨張率を3倍以下に制限することが行われている。しかし、この手法により体積膨張率を制限すると、体積膨張の速度が遅くなり、セグメント間に水が侵入しても止水が発現されるまでに長い時間を要してしまい、その間は漏水してしまい、止水シール材としての性能が低下してしまう。
別の手法として、軟質性ゴムやスポンジゴムで水膨張性シール材を構成して対面応力を低くする手法もある。このようようなスポンジゴムの水膨張シールの技術は特許文献2、特許文献3などに開示されている。しかし、軟質性ゴムやスポンジゴムは強靱性が低いので、施工工事におけるプレキャストコンクリートの接合時のずり応力で裂けたり、切れたりするなどの欠点がある。なお、スポンジゴムについては、ガスを発生させる発泡剤を添加して製造する技術が特許文献4に、マイクロカプセルを利用した技術が特許文献5などに開示されている。
特開平5−271451号公報 特公昭62−29421号公報 特開平6−25380号公報 特開2000−256493号公報
このため、水で膨張したときに発生する対面応力は低く、シール材自体の強靱性は高く、水と接触した場合は速やかに膨張する水膨張性シール材およびそれを用いたプレキャストコンクリートが望まれていたが、未だそれらを満たすものはなかった。
上記の課題を解決するために本発明は、未加硫ゴム、水吸収性物質、熱膨張性マイクロカプセルからなる組成物を加熱により加硫(架橋)して内部に独立気泡を形成したことを特徴とする水膨張性シール材を提供するものである。
また、前記水膨張性シール材が吸水して膨張したときの体積膨張率は1.1〜3.0の範囲であるとさらに好ましい。
また、第2の発明は、未加硫ゴム、水吸収性物質、熱膨張性マイクロカプセルからなる組成物を加熱により加硫(架橋)して内部に独立気泡を形成した水膨張性シール材をコンクリート製セグメントの側面全周に固定したことを特徴とするプレキャストコンクリートである。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の水膨張性シール材は水と接触すると体積膨張するシール材である。本発明の水膨張性シール材は主成分がゴムであり、その中に吸水性成分と熱膨張性マイクロカプセルを添加したものである。
主成分のゴム成分はEPDM、クロロプレンゴム、天然ゴム、ウレタンエラストマー、ブチルゴムなどの土木用止水材に使用される天然ゴムであれば特に制限されない。これらゴムには加硫剤(架橋剤)、補強充填剤が含有され、所望により老化防止剤、着色剤等が添加される。ゴム成分はシール材製造前では未加硫(未架橋)の状態でその他成分と混練される。
本発明に使用される水吸収性物質は水に対して自重の20倍以上の吸水倍率を持つ物質である。具体的にはポリウレタン樹脂、部分ケン化ポリ酢酸ビニル樹脂、部分ホルマール化ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
水吸水性物質の添加量は使用する種類にもよるが、ゴム成分100重量部に対して10から80重量部である。10重量部より少ないとシール材が水と接触してから水膨張が開始されるまでの時間が長くかかり、80重量部より多いと膨張倍率が大きくなりすぎ、プレキャストコンクリートにクラックが生じる。
本発明で使用される熱膨張性マイクロカプセルは熱により膨張する微小中空体であり、プラスチックを殻とする微小中空体である。これはマイクロバルーンと呼ばれることもある。熱膨張性マイクロカプセルはポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、エポキシ樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルホルマール、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル−セルロースアセテートブチレートコポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、塩化ビニルデン−アクリロニトリルコポリマーなどの弾性を有する素材を界面重合反応などの化学的処理、複合コアセルベーシヨン法、pHコントロール法などの物理化学的処理、スプレードライ法などの機械的処理によってマイクロカプセル化することによって得られ、これにさらにブタン、イソブタンなどの揮発性物質を加圧封入して熱膨張性を付与したものである。よって、熱膨張性マイクロカプセルは内部に熱膨張素材を、プラスチックを殻としたマイクロカプセルとなり、このましい大きさは直径1〜30μmのものがよい。
この熱膨張性マイクロカプセルは80℃〜200℃で膨張するものが好ましく、また、膨張倍率は10〜100倍が好ましい。10倍未満であれば十分な本発明のシール材の発泡倍率が低くなり、100倍を超えると本発明のシール材の強度が弱くなり、どちらの場合も水膨張時に対面応力を緩和する効果が著しく劣る。このような熱膨張性マイクロカプセルはエクスパンセル(日本フェライト社製)、マイクロスフェア(松本油脂製薬社製)などが市販されており、容易に入手することが可能である。
熱膨張性マイクロカプセルは加熱時にプラスチック殻が軟化して同時に内部の揮発性物質が体積増加を行う。よって、この熱膨張性マイクロカプセルを未加硫ゴム中に分散し、ゴム成分を加硫(架橋)させると熱膨張性マイクロカプセルは膨張し、ゴム成分を発泡させ、気泡(セル)を形成する。同時またはそれにやや遅れて加硫(架橋)反応が進行し、発泡状態のゴムが形成される。熱膨張性マイクロカプセルは微小な粉体でありゴム成分に均一に分散されている。また、それ自身が膨張するものであり非常に均一な独立気泡を形成する。また、熱可塑性マイクロカプセルの殻も弾性体なのでシール材の弾性特性を損なうことがない。
一方、従来の独立気泡発泡体を成型する方法としてアゾカーボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロペンタメチレンテトラミン、p一トルエンスルホニルヒドラジドなどの有機発泡剤、または重曹、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの無機発泡剤を、未加硫ゴムに混錬しておき加硫時の熱を利用して発泡させて製造する方法が一般的である。しかし、従来の発泡剤による発泡はシール材として使用すると柔軟性は発現するが、強靱性が損なわれてしまうのである。
熱膨張性マイクロカプセルの添加量は使用する熱膨張性マイクロカプセルの発泡倍率にもよるが、ゴム成分100重量部に対し0.5〜5重量部である。0.5未満であれば、ゴムが独立気泡で発泡状態とならず、水膨張持に接面応力を緩和することができない。また、5重量部より多いと発泡倍率が大きくなりすぎ、シール材の強靱さが損なわれる。
本発明の水膨張シール材は、吸水して膨張したときの体積膨張率が1.1〜3.0の範囲内でなければならない。ここで、体積膨張率とは(水膨張性シール材を水中に浸漬し、それ以上体積が膨張しないまで十分に浸漬したときの体積値)/(水と接触していない乾燥状態の体積値)である。体積膨張率が3.0より大きいと、体積膨張による内部応力で熱膨張したマイクロカプセルが破裂して独立気泡が消滅するので好ましくない。また、体積膨張率が1.1未満では水が浸透するので止水効果が期待できない。
また、本発明の水膨張シール材は、吸水して体積膨張する前のシール材全体積に対して独立気泡の体積が5〜50%の範囲内であることが好ましい。独立気泡の体積が5%以下であると対面応力を低下させることができず、50%以上ではシール材の強靭性の損なわれる。
本発明の水膨張性シール材には前述した組成であるが故に、水により膨張した時の体積膨張倍率が1.1〜3.0であって接面応力変化率が1.0〜2.0である。通常の水膨張シール材の体積膨張率は約4であり、接面応力変化率は約3である。また低体積膨張タイプの特殊な水膨張性シール材でも体積膨張率は2前後と低くても接面応力変改率は約2.5と高いままである。
ここで、接面応力変化率とは、乾燥状態のシール材を厚みをaとすると厚み方向に0.6aとなる寸法まで圧縮(40%圧縮)したときの反発力と、シール材を水に浸漬しそれ以上体積が増加しないまで充分に浸漬したときの膨張時のシール材を寸法0.6aとなる寸法まで圧縮した時の反発力を測定し、(膨張時の反発力)/(乾燥状態の反発力)である。0.6=1−0.4である。
さらに本発明は、前述の水膨張性シール材を側面または全周に固定したプレキャストコンクリートが製造可能である。水膨張シール材は独立気泡を含むスポンジ状であっても、ゴム本来の強靭性は損なわれていないので、シールド工法におけるセグメントの組み立てにおけるずり応力に対して側面全周に固定した水膨張シール材が裂けたり、切れたりするなどの損傷がおきにくいという利点がある。
本発明の水膨張性シール材は優れた水膨張性により水と接触したときの膨張する速度が速く、強靱性に優れるため、保存時にシール材が他の部材と擦れあったりまたは、施工時にプレキャストコンクリート同士の接合によるずり応力などにより裂けたり切れたりということがない。さらに、水と接触し水膨張性シール材が膨張したときに対面応力を緩和することができ必要以上にプレキャストコンクリートへ応力がかからず、クラックや亀裂が生じることがない。そのため、トンネルのセグメントなどのプレキャストコンクリート間の止水に効果を発揮するものである。
表1に記載のとおり組成物を配合し、シール材金型で加硫成形をした。得られた水膨張性シール材を40%圧縮したときの接面応力を測定し、25℃の水に浸漬した。浸漬後の体積と接面応力を測定し、体積膨張変化率と接面応力変化率を計算した。また、水膨張性シール材をコンクリート板に接着したものを作成し、別のコンクリート板をシール材が20%圧縮し、その状態でシール材の長手方向に20cmコンクリート板を移動させた。シール材が破壊されたり、コンクリート板から剥がれたものは×とした。
本発明はトンネルのセグメントや水路用ボックスカルバートなどのプレキャスコンクリートの止水用途に適用される。

Claims (4)

  1. 天然ゴムおよびクロロプレンゴムからなる未加硫ゴム、水吸収性物質および熱膨張性マイクロカプセルを含む組成物を、加熱により加硫して内部に独立気泡を形成したことを特徴とする、接面応力変化率が1.0〜2.0のプレキャストコンクリート用水膨張性シール材。
  2. 前記水膨張性シール材が吸水して膨張したときの体積膨張率が1.1〜3.0の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート用水膨張性シール材。
  3. 吸水して膨張する前の前記水膨張性シール剤において、全体積に対する独立気泡の体積が5〜50%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のプレキャストコンクリート用水膨張シール材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の水膨張シール材をコンクリート製セグメントの側面全周に固定したことを特徴とするプレキャストコンクリート。
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