JP4605935B2 - 杭基礎構造物における杭頭接合方法及び接合構造 - Google Patents

杭基礎構造物における杭頭接合方法及び接合構造 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、杭基礎構造物の鉛直力を、支持杭と基礎底面地盤とにそれぞれ分担して支持させ、また、地震時の水平力に対しても支持杭と基礎底面地盤とをそれぞれ分担して抵抗させる杭頭接合方法及び杭頭接合構造の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、杭基礎構造物の場合は、同構造物の鉛直荷重及び水平荷重に対して、支持杭のみで抵抗させ支持すると考えて設計しているのが一般的である。しかし、実際には、図3に例示したように、構造物1の基礎底面には地盤2が存在し、地盤2も鉛直荷重に対する抵抗要素(抵抗力R)になっていることは事実である。したがって、地盤2の抵抗力Rを全く考慮することなく、構造物の鉛直荷重及び水平荷重に対して、支持杭3のみで抵抗させ支持する設計思想はまことに不経済であり、実状にも反する。図3中の符号3が支持杭で、その抵抗力をTで表している。
【0003】
一方、図4のように摩擦杭4を用いるパイルドラフト基礎の場合は、摩擦杭4による抵抗力tと基礎底面地盤2の抵抗力Rとで鉛直荷重Wに対して抵抗し沈下を抑制する構造なので、基礎底面地盤2の抵抗力Rは正当に評価され、設計思想に活かされていることがわかる。
【0004】
なお、先行技術として、特開平11−172693号公報に記載された「構造物基礎の不同沈下低減方法」の発明(以下、公知発明という)が注目される。この公知発明は、直接基礎(ベタ基礎)又は摩擦杭基礎の技術分野に分類されるもので、構造物の柱の直下へ、柱の軸力を負担する流体圧シリンダを設置し、各流体圧シリンダは共通の流体圧ラインで結んで流体圧を一定に保つように各シリンダ内の流体の出入りを自由にし、該構造物基礎の地盤に不同沈下を発生したときは、各流体圧シリンダのピストン部が伸張動作してセルフレベリング機能を発揮して構造物基礎の不同沈下量を最少限度に抑制する技術である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の杭基礎構造物のように、構造物の鉛直荷重及び水平荷重に対して、支持杭3のみで抵抗させ支持する設計思想は、地盤2が鉛直荷重に対する抵抗要素(抵抗力R)になっていることを考慮すれば、まことに不経済であり、実状にも反する。さりとて支持杭3は支持層地盤にまで到達していて沈下しないので、地盤の沈下に対し基礎底面が追随して沈下し確実に一定の条件下で地盤と常時接触させ得る手段を採用しない限り、地盤の前記抵抗は期待できない訳で、設計思想の単純な転換は無理である。
【0006】
その一つの対策として、支持杭の軸剛性を小さくすることも考えられるが、そうすると、地盤の不同沈下によって構造物が傾くおそれがあり、不都合である。
【0007】
上記パイルドラフト基礎(図4)の場合は、摩擦杭4による抵抗力tと基礎底面地盤2の抵抗力Rとで鉛直荷重Wに対して抵抗し沈下を抑制する構造ではあるが、本発明の杭基礎とは根本的に異なる技術思想のものであり、参照するに値しない。
【0008】
また、上記の公知発明は、ピストン・シリンダ型のアクチュエータを用いる点で一見本願発明と類似するようであるが、同公知発明は、直接基礎(ベタ基礎)又は摩擦杭基礎の技術分野に分類されるものであり、本発明の杭基礎とは基本理念を異にするほか、前述した地盤の沈下に追随して基礎底面が沈下し確実に一定の条件下で地盤と常時接触させる課題の解決手段には何ら参考とならない。
【0009】
本発明の目的は、杭基礎構造物において、鉛直力及び水平力に対する基礎底面地盤の抵抗力を設計思想に活かして、実状に沿って経済的な基礎設計を可能にすることである。更に云えば、支持杭が沈下しないにもかかわらず、基礎底面が地盤の沈下に追随して沈下し、常時地盤と確実に接触させ初期荷重を確保する機構を採用した杭頭接合方法及び接合構造を提供することである。
【0010】
本発明の究極の目的は、杭基礎構造物の鉛直力及び水平力に対して、支持杭と基礎底面地盤とが分担して(又は共同して)抵抗する構成とした杭頭接合方法及び接合構造を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するための手段として、請求項に記載した発明に係る杭基礎構造物における杭頭接合方法は、
杭基礎構造物における支持杭の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータを設置し、構造物の基礎底面地盤一定大きさの初期荷重を負担させた状態で前記アクチュエータと接合して支持させると共に、平面的に見て対をなす配置とした支持杭の前記アクチュエータのピストンにより、地盤の沈下に追随して構造物の基礎底面を、回転することなく沈下可能に接合し支持させたことを特徴とする。
【0013】
請求項に記載した発明に係る杭基礎構造物における杭頭接合方法は、
杭基礎構造物における支持杭の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータを設置し、構造物の基礎底面地盤一定大きさの初期荷重を負担させた状態で前記アクチュエータと接合して支持させると共に、平面的に見て対をなす配置とした支持杭の前記アクチュエータのピストンにより、地盤の沈下に追随して構造物の基礎底面を、回転することなく沈下可能にピン結合状態に接合し支持させたことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載した発明に係る杭基礎構造物における杭頭接合方法は、
杭基礎構造物における支持杭の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータを設置し、構造物の基礎底面地盤一定大きさの初期荷重を負担させた状態で前記アクチュエータ接合し支持させると共に、平面的に見て対をなす配置とした支持杭前記アクチュエータ同士のピストン上室とピストン下室を相互に連通させ、地盤の沈下に追随して前記ピストンの位置を変位させて、構造物の基礎底面を、回転することなく沈下可能に接合し支持させたことを特徴とする。
【0015】
請求項に記載した発明に係る杭基礎構造物における杭頭接合構造は、
杭基礎構造物における支持杭の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータが設置され、構造物の基礎底面地盤一定大きさの初期荷重を負担させた状態で前記アクチュエータ接合し支持されていること、
面的に見て対をなす配置とした支持杭前記アクチュエータ同士のピストン上室とピストン下室とが連通され閉鎖系を構成していること、
地盤の沈下に追随して前記ピストンの位置を変位させ、構造物の基礎底面を、回転することなく沈下可能としたことを特徴とする。
【0016】
請求項に記載した発明は、請求項に記載した杭基礎構造物における杭頭接合構造において、
面的に見て対をなす配置とした支持杭前記アクチュエータ同士のピストン上室とピストン下室とが2本のパイプでクロス状態に連通され閉鎖系を構成していることを特徴とする。
【0017】
請求項に記載した発明は、請求項に記載した杭基礎構造物における杭頭接合構造において、
杭基礎構造物における支持杭の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータが設置され、構造物の基礎底面地盤一定大きさの初期荷重を負担させた状態で前記アクチュエータ接合し支持されていること、
前記アクチュエータのピストンロッドとの接合部分がピン結合状態に接合されていることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施形態】
以下に、添付の図1と図2を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1と図2はそれぞれ、支持杭3…によって構造物1を支持する杭基礎構造物において、支持杭3の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータ5を設置し、構造物1の基礎底面地盤2一定大きさの初期荷重R(抵抗)を負担させた状態で、前記アクチュエータ5接合し支持させている。つまり、構造物1の鉛直荷重Wは、支持杭3のみでなく、地盤2にも初期荷重Rを分担支持させているのである。
【0020】
そして、構造物1の重心を平面的に見て対称な配置で対をなす関係の支持杭3、3における前記アクチュエータ5、5同士のピストン上室5aとピストン下室5bとがパイプ6で連通され閉鎖系を構成している。
【0021】
特に図1の実施形態は、前記配置のアクチュエータ5、5同士のピストン上室5aとピストン下室5bとが2本のパイプ6と6’でクロス状態に連通され、それぞれのパイプ6、6’の途中に開閉弁7、7’を設置し、常時は開閉弁7を閉じて閉鎖系を構成していることを特徴とする。この場合にアクチュエータ5の各ピストン室に使用される作動流体は、液体(油)又は気体(空気)のいずれでも良い。
【0022】
一方、図2の実施形態においては、前記配置のアクチュエータ5、5同士のピストン上室5aとピストン下室5bとが1本のパイプ6で片側だけ連通され、閉鎖系を構成していることを特徴とする。この場合にアクチュエータ5の各ピストン室に使用される作動流体は、パイプ6で連通されたピストン上室5a’とピストン下室5b’は液体(油)又は気体(空気)のいずれでも良いが、他側のピストン上室5aとピストン下室5bは圧縮性の気体(空気)であることを要す。
【0023】
なお、図1及び図2の実施形態に共通する構成として、各アクチュエータ5のシリンダ外径は、図示したように中立位置にあるピストン5cの上下において大小に異なる。その理由は、ピストン上室におけるピストン5cの受圧面積がピストンロッド5dの外径分だけ小さくなることを、シリンダ外径によって補償する考えによる。
【0024】
図1及び図2の実施形態において、請求項1〜に記載した発明に係る杭頭接合方法の実施例を、以下に説明する。
【0025】
先ず図1の実施形態は、構造物1の建築施工の途中までは、構造物重量の全部を基礎底面地盤2の抵抗Rで支持させることにより、一定大きさまでの初期鉛直荷重Rを自由に地盤2に負担させることができる。目標とする大きさの初期荷重Rに達した段階で、2本のパイプ6、6’の開閉弁7、7’を全閉とし動作流体を閉鎖系の中に閉じ込めることにより、以後の上載荷重Qは、支持杭3の抵抗Pで支持することになる。ピストン5cの上下面に作用する全圧力は等しく釣り合いを保つ。つまり、構造物1の鉛直荷重Wのうち、地盤2の摩擦抵抗Rを差し引いた残りの荷重Qが支持杭3へ負担することになる。
【0026】
図1の実施形態の場合、地盤2の沈下に対しては、一旦開閉弁7と7’を開いて、卓越する鉛直荷重Wで構造物1の基礎底面を沈下させる操作(メンテナンス)を行い、基礎底面を地盤2へ一定の初期荷重Rで接触させる。その際、各アクチュエータ5のピストン5cの上下に作用する作動流体の圧力は均等なので、不同沈下する心配はない(回転しない)
【0027】
つまり、支持杭3の杭頭と構造物1の基礎底面とは、地盤2に一定大きさの初期荷重Rを負担させた状態で、地盤2の沈下に追随して構造物1の基礎底面を上下方向にのみ、回転することなく沈下させることが可能である。構造物1の基礎底面が地盤2へ一定大きさの初期荷重Rを負担させているかぎり、その初期荷重Rに起因する摩擦力Uが、地震等の水平力に対する抵抗として働くことに多くの説明を要しないであろう。
【0028】
図2の実施形態も、ほぼ同様な思想原理に立脚しているが、本実施形態の場合には、図中右側のピストン下室5bに圧縮性の気体を圧入し、パイプ6で連通したピストン上室5a’とピストン下室5b’には非圧縮性の液体又は圧縮性気体のいずれかを圧入している。そのため地盤2が沈下して初期荷重Rが低下すると、必然的に支持杭3の抵抗力Pが増大するので、その差分だけ、図2中の右側のピストン下室5bの空気が圧縮されピストン5cが下方へ変位する。と同時に、パイプ6で連通されたピストン上室5a’とピストン下室5b’の関係では、図2中の左側のピストン下室5b’から相当量の作動流体が他方のピストン上室5a’の方へ移動して均衡を保つことになり、結局は左右のピストンの位置は自動的に同一レベルを保つ結果となる(セルフレベリング機能)。したがって、やはり支持杭3の杭頭と構造物1の基礎底面とは、地盤2に一定大きさの初期荷重Rを負担させた状態で、地盤2の沈下に追随して構造物1の基礎底面は上下方向にのみ、回転することなく(不同沈下を発生することなく)沈下可能である。かくして構造物1の基礎底面が、地盤2へ一定大きさの初期荷重Rを負担させているので、その初期荷重Rに起因する摩擦力Uが、地震等の水平力に対する抵抗として働くことになる。
【0029】
図1及び図2の実施形態においては、いうなれば、支持杭3と構造物1の基礎底面とが、ピストン・シリンダ型のアクチュエータ5における、支持杭3の外径に比して遙かに細径のピストンロッドで接合され支持されているので、これは地盤の沈下に追随して構造物1の基礎底面を上下方向にのみ、回転することなく沈下可能に接合しているだけでなく、低剛性で実質的にピン結合に近い状態に接合し支持させたことになる。したがって、地震時などの水平力の作用に対して、杭頭部に過大な応力が発生することは防止される。
【0030】
【発明の効果】
請求項1〜に記載した発明に係る杭基礎構造物における杭頭接合方法、及び請求項に記載した発明に係る杭基礎構造物における杭頭接合構造よれば、以下に説明する効果を奏する。
1 構造物の鉛直荷重に対して支持杭及び基礎底面地盤が分担して抵抗する。必然的に地震時の水平力に対しても、支持杭及び基礎底面地盤とが分担して抵抗する。従って、基礎底面地盤の抵抗を考慮に入れた経済設計ができる。
2 地盤が不同沈下しても、構造物はセルフレベリング機能を発揮しつつ基礎底面と地盤とは一定の荷重条件で接触した状態を保ち、上記の経済設計を実効あらしめる。
3 支持杭の杭頭がピン結合に近い状態で構造物の基礎底面と接合されるので、杭頭に過大な応力が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の杭基礎構造物の杭頭接合構造の実施形態を示した主要部の概念図である。
【図2】本発明の杭基礎構造物の杭頭接合構造の異なる実施形態を示した主要部の概念図である。
【図3】従来の杭基礎構造物の杭頭接合部分を示した立面図である。
【図4】従来のパイルドラフト基礎を示した立面図である。
【符号の説明】
1 構造物
2 地盤
3 支持杭
5 アクチュエータ
6、6’ パイプ

Claims (6)

  1. 杭基礎構造物における支持杭の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータを設置し、構造物の基礎底面地盤一定大きさの初期荷重を負担させた状態で前記アクチュエータと接合して支持させると共に、平面的に見て対をなす配置とした支持杭の前記アクチュエータのピストンにより、地盤の沈下に追随して構造物の基礎底面を、回転することなく沈下可能に接合し支持させたことを特徴とする、杭基礎構造物における杭頭接合方法。
  2. 杭基礎構造物における支持杭の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータを設置し、構造物の基礎底面地盤一定大きさの初期荷重を負担させた状態で前記アクチュエータと接合して支持させると共に、平面的に見て対をなす配置とした支持杭の前記アクチュエータのピストンにより、地盤の沈下に追随して構造物の基礎底面を、回転することなく沈下可能にピン結合状態に接合し支持させたことを特徴とする、杭基礎構造物における杭頭接合方法。
  3. 杭基礎構造物における支持杭の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータを設置し、構造物の基礎底面地盤一定大きさの初期荷重を負担させた状態で前記アクチュエータ接合し支持させると共に、平面的に見て対をなす配置とした支持杭前記アクチュエータ同士のピストン上室とピストン下室を相互に連通させ、地盤の沈下に追随して前記ピストンの位置を変位させて、構造物の基礎底面を、回転することなく沈下可能に接合し支持させたことを特徴とする、杭基礎構造物における杭頭接合方法。
  4. 杭基礎構造物における支持杭の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータが設置され、構造物の基礎底面地盤一定大きさの初期荷重を負担させた状態で前記アクチュエータ接合し支持されていること、
    面的に見て対をなす配置とした支持杭前記アクチュエータ同士のピストン上室とピストン下室とが連通され閉鎖系を構成していること、
    地盤の沈下に追随して前記ピストンの位置を変位させ、構造物の基礎底面を、回転することなく沈下可能としたことを特徴とする、杭基礎構造物における杭頭接合構造。
  5. 面的に見て対をなす配置とした支持杭前記アクチュエータ同士のピストン上室とピストン下室とが2本のパイプでクロス状態に連通され閉鎖系を構成していることを特徴とする、請求項に記載した杭基礎構造物における杭頭接合構造。
  6. 杭基礎構造物における支持杭の杭頭にピストン・シリンダ型のアクチュエータが設置され、構造物の基礎底面地盤一定大きさの初期荷重を負担させた状態で前記アクチュエータ接合し支持されていること、
    前記アクチュエータのピストンロッドとの接合部分がピン結合状態に接合されていることを特徴とする、請求項に記載した杭基礎構造物における杭頭接合構造。
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