JP4605877B2 - フロックの粒径制御方法及び水処理方法 - Google Patents

フロックの粒径制御方法及び水処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フロックの粒径制御方法及び水処理方法に関し、詳しくは、嫌気性微生物によって脱窒処理を行う際に発生するフロックの粒径を制御し、処理水の固液分離を効率よく行えるようにした方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
水中に存在する硝酸性、亜硝酸性窒素を除去する方法として、嫌気性微生物である脱窒菌を利用した嫌気処理が広く行われている。脱窒菌は、溶存酸素が存在する好気状態では、分子状の酸素を用いて呼吸し、溶存酸素の存在しない嫌気状態では、分子状酸素の代わりに硝酸性窒素等の酸素を用いて呼吸する。したがって、脱窒菌が呼吸することにより、溶存酸素が消費されて嫌気状態になるとともに、硝酸性窒素が還元されて窒素ガスとなり、水中から窒素分が除去される。
【0003】
しかし、嫌気状態を長時間持続すると、微生物の微細フロック化が発生し、処理水の固液分離が困難になってくる。例えば、分離膜を用いて固液分離する場合は、微細フロックによる目詰まりが発生し易くなり、分離膜の洗浄を頻繁に行う必要があった。このため、例えば特開平−76870号公報に記載された懸濁液の分離方法では、微生物処理を行う懸濁液槽から抜出した懸濁液に対して、最初に遠心分離法等による濃縮分離工程でSS成分濃度を下げてから膜分離工程を行うことにより、分離膜の目詰まりを低減するようにしている。
【0004】
また、間欠曝気により嫌気処理と好気処理とを交互に行う水処理法の場合、例えば特開平11−347550号公報に記載された膜分離方法では、曝気装置を分離膜の下方に設置し、好気処理の際には曝気装置から空気を曝気し、嫌気処理の際には密閉された処理槽内の酸素をほとんど含まないガスを循環させて曝気装置から曝気することにより分離膜の曝気洗浄を行い、分離膜の目詰まりを解消するようにしている。
【0005】
いずれの場合も、嫌気状態における微生物の微細フロック化に対して、濃縮分離工程を行うことによって分離膜の負担を軽減したり、分離膜の曝気洗浄を継続的に行うことによって目詰まりを解消したりするものであり、微生物の微細フロック化そのものに対しての検討は全くなされていない。
【0006】
また、前者の方法では、遠心分離設備を別途必要とし、後者の方法では、処理槽内のガスを曝気装置に循環させるための配管やミストセパレータ等の設備を別途必要とするため、一般的な水処理装置への適用が困難であった。
【0007】
なお、後者のように、間欠曝気を行うことによって硝化と脱窒とを単一の処理槽で行う場合は、好気状態と嫌気状態とが交互に繰返され、嫌気状態となっている時間が短いため、嫌気状態で専ら脱窒処理を行う脱窒処理槽に比べて微生物の微細フロック化による影響は比較的少ない。
【0008】
そこで本発明は、微生物の微細フロック化自体を抑制し、微生物が形成するフロックの粒径を制御することにより、固液分離操作を効率よく行うことが可能となるフロックの粒径制御方法を提供するとともに、このフロックの粒径制御を利用して効果的な脱窒処理と膜分離処理とを簡単な装置構成で実施することができる水処理方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のフロックの粒径制御方法は、嫌気性微生物によって窒素を除去する脱窒処理槽内を曝気処理することにより、前記嫌気性微生物が形成するフロックの粒径を制御する方法において、あらかじめ求めた脱窒処理槽で生成するフロックの粒径と微生物混合水の酸化還元電位との関係に基づいて、曝気処理量を調節して、酸化還元電位を調整することによってフロックの粒径を制御することを特徴としている。
【0011】
また、本発明の水処理方法は、脱窒処理槽内で嫌気性処理を行って窒素を除去するとともに、該脱窒処理槽内を曝気処理することによって粒径を制御した嫌気性微生物のフロックを形成し、該フロックを含む処理水に対して膜分離処理を行うことにより、前記フロックを分離することを特徴とし、特に、前記膜分離処理を行った膜ろ過水を次工程に送出するとともに、濃縮水を前記脱窒処理槽に返送することを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のフロックの粒径制御方法を適用した水処理装置の一形態例を示す系統図である。この水処理装置は、脱窒処理槽(嫌気槽)11と、クロスフロー方式の膜分離装置12とを組合わせたものであって、脱窒処理槽11において嫌気状態下で嫌気性微生物による生物学的脱窒処理を行うとともに、膜分離装置12において嫌気性微生物のフロックを処理水から分離することにより、原水中に含まれる硝酸性窒素を除去して原水の脱窒処理を行うように形成されている。
【0014】
脱窒処理槽11には、微生物混合水を撹拌するための撹拌機13と、微生物混合水の酸化還元電位(ORP)を計測するための酸化還元電位計(ORP計)14と、微生物混合水中に酸素を供給するための曝気装置15とが設けられており、経路16から流入した原水と微生物とを混合して硝酸性窒素を生物学的に窒素に還元する処理を行う。
【0015】
膜分離装置12には、脱窒処理槽11から経路17に抜出した処理水を加圧するためのポンプ18と、固液分離処理(ろ過処理)した膜ろ過水を次工程に送出するための経路19と、濃縮水を脱窒処理槽11に返送するための経路20とが設けられおり、フロックを分離するろ過処理が行われるとともに、中空糸膜の膜内面に沿って流れる処理水により、膜面に付着したフロックを剥離してフロックの堆積を抑制するようにしている。
【0016】
このように形成された水処理装置において、脱窒処理槽11では、槽内の嫌気状態が長く持続することによって嫌気性微生物の微細フロックが発生するようになり、脱窒処理槽11で微細フロックが発生すると、膜分離装置12の中空糸膜に設けられている微細孔内に微細フロックが侵入し、該微細孔を閉塞してしまう。したがって、脱窒処理槽11で発生するフロックの粒径を、中空糸膜の微細孔より十分に大きくし、フロックが微細孔内に侵入できないようにすることにより、微細孔の閉塞を抑制することができ、膜面に付着したフロックを、中空糸膜内を流れる処理水によって剥離することが可能となる。
【0017】
微細フロックの発生は、嫌気状態で微生物が硝酸性窒素の酸素を取り込んで呼吸することにより、原形質の排出が少なくなることに起因している。すなわち、微生物に分子状酸素を適量与えて酸素呼吸させ、原形質の排出を促進することにより、原形質によって各微生物をまとめた状態の粒径の大きなフロックを形成することができる。
【0018】
一方、嫌気状態の判定は、微生物混合水の酸化還元電位を計測することによって知ることができる。例えば、通常の間歇曝気の場合、曝気中の好気状態では酸化還元電位が+100mV程度となり、曝気を停止した嫌気状態では酸化還元電位が−100mV程度となる。また、脱窒処理槽11で嫌気状態をそのまま持続させると、酸化還元電位が−300〜−400mVに達することも珍しくなく、このようなときに、前記微細フロックが発生し易くなる。
【0019】
酸化還元電位は、流入する原水の性状(硝酸性窒素含有量、有機物含有量等)や滞留時間、微生物の種類等の条件によって異なってくるが、あらかじめ脱窒処理槽11で生成するフロックの粒径と微生物混合水の酸化還元電位との関係を調べておくことにより、酸化還元電位を調整することによってフロックの粒径を制御することが可能となる。
【0020】
すなわち、脱窒処理槽11における脱窒処理を損なわない範囲で酸化還元電位を高く維持することにより、微生物の酸素呼吸による原形質の排出によって適度な粒径のフロックを形成することができる。脱窒処理を損なわない酸化還元電位は、通常は+100〜−100mVの範囲が適当であり、前記酸化還元電位計14によって微生物混合水の酸化還元電位を連続的に計測し、この計測値が、適度な粒径のフロックが形成される所定の酸化還元電位の範囲内になるように曝気処理を行うことにより、微細フロックの生成を抑制することができる。
【0021】
また、曝気処理は、微生物に酸素を供給できればよく、撹拌効果や膜洗浄効果は全く考慮しなくてよいため、脱窒処理槽11内の適宜な位置だけでなく、脱窒処理槽11内に流入する水が流れる経路16、経路17、経路20にも設けることが可能である。また、曝気用のガスは酸素を含んでいればよく、通常は空気を用いればよいが、酸素ガスを使用することもできる。
【0022】
さらに、曝気処理は、あらかじめ設定した最適粒径範囲のフロックが形成できるように行えばよく、例えば、微生物混合水の酸化還元電位に応じて曝気装置15の弁15aの開度を調節して連続的に曝気を行ったり、あるいは、計測値が所定の酸化還元電位以下になったら弁15aを開き、所定の酸化還元電位以上になったら弁15aを閉じるようにして間欠的に曝気を行ったりすることができ、あらかじめ設定した曝気条件に基づくシーケンス制御によって曝気時間や曝気量を調節することより、脱窒処理槽11の全体を均一な状態にすることができる。
【0023】
このようにして所定の曝気処理を行い、粒径を制御した嫌気性微生物のフロックを形成させることにより、該フロックを含む処理水のろ過処理を行う膜分離装置12における中空糸膜の目詰まり発生を抑制することができ、安定した膜分離を長時間にわたって継続することができる。
【0024】
さらに、通常の脱窒処理槽11に、酸化還元電位計14等の粒径計測手段と、曝気処理量を制御可能な曝気装置15とを設置するだけで実施が可能であるから、既存の脱窒処理設備への適用も容易であり、設備コストや運転コストも低廉である。
【0025】
なお、本形態例では、粒径計測手段として、酸化還元電位によってフロックの粒径を間接的に計測するようにしているが、パーティクルカウンターによって直接的に粒径を計測することもできる。また、微生物混合水の溶存酸素濃度(DO)を計測することによってもフロックの粒径を間接的に計測することが可能であり、この場合の最適な溶存酸素濃度は、0.5mg/l以下である。
【0026】
また、曝気装置15における曝気処理量を制御する曝気制御手段は、酸化還元電位計14等の粒径計測手段からの電気信号によって直接的に電磁弁を開閉してもよく、粒径計測手段からの電気信号をコンピューター等で処理して弁の開閉を制御することもでき、さらに、曝気用空気を供給するブロワーの運転を制御して曝気量を制御することも可能である。このとき、曝気処理に連動して撹拌機13による撹拌量を調整することもできる。
【0027】
また、膜分離手段である膜分離装置の形式も任意であり、クロスフロー方式に限らず、全量ろ過方式や併用方式を用いることもでき、内圧式ではなく、外圧式を用いることもできる。そして、フロックの分離は、膜分離に限らず、砂ろ過等の固液分離手段を採用した場合であっても、微細フロックによる閉塞を抑制した効率のよいろ過処理を行うことができる。
【0028】
加えて、微生物の呼吸に必要な有機炭素源を、原水中の有機炭素質でまかなえる場合と、不足分を外部から添加する場合とがあるが、後者の場合は、脱窒処理を十分に行わせるために理論量よりも若干多めに添加する必要があり、処理水のBODが上昇するおそれがあったが、適度な曝気を行うことにより、微生物によるBODの消費が発生し、BODの上昇も防止することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、脱窒処理槽での微細フロックの発生を抑制することができるので、フロックを分離するための固液分離を効率よく行うことができる。また、既存の脱窒処理設備にも簡単に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のフロックの粒径制御方法を適用した水処理装置の一形態例を示す系統図である。
【符号の説明】
11…脱窒処理槽、12…膜分離装置、13…撹拌機、14…酸化還元電位計、15…曝気装置、18…ポンプ

Claims (3)

  1. 嫌気性微生物によって窒素を除去する脱窒処理槽内を曝気処理することにより、前記嫌気性微生物が形成するフロックの粒径を制御する方法において、あらかじめ求めた脱窒処理槽で生成するフロックの粒径と微生物混合水の酸化還元電位との関係に基づいて、曝気処理量を調節して、酸化還元電位を調整することによってフロックの粒径を制御することを特徴とするフロックの粒径制御方法。
  2. 請求項1記載のフロックの粒径制御方法を適用した水処理方法であって、前記脱窒処理槽内で嫌気性処理を行って窒素を除去するとともに、該脱窒処理槽内を曝気処理することによって粒径を制御した嫌気性微生物のフロックを形成し、該フロックを含む処理水に対して膜分離処理を行うことにより、前記フロックを分離することを特徴とする水処理方法。
  3. 前記膜分離処理を行った膜ろ過水を次工程に送出するとともに、濃縮水を前記脱窒処理槽に返送することを特徴とする請求項2記載の水処理方法。
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