本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その課題は、キャリッジと排出従動ローラホルダとの衝突を回避できる記録装置及び液体噴射装置を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明の第1の態様に係る記録装置の発明は、被記録媒体の記録面に向けてインクを噴射する記録ヘッドを搭載し、主走査方向に延在したキャリッジガイド軸に沿って移動することにより記録領域と非記録領域とを往復可能なキャリッジと、前記キャリッジの下流側近傍であり、かつ、記録領域に配設され、被記録媒体の非記録面に接触する排出駆動ローラと、歯付きローラから構成され、被記録媒体の記録面に接触可能な排出従動ローラとを有する、記録の行われた被記録媒体を搬送する排出ローラと、記録領域に配設され、前記排出従動ローラを保持し、当該排出従動ローラが前記排出駆動ローラに接触した接触状態と前記排出駆動ローラから退避した退避状態とをとり得るように変位可能に構成された排出従動ローラホルダと、前記排出従動ローラホルダに対して前記キャリッジを変位可能とするキャリッジ変位手段と、を有する記録装置であって、前記キャリッジが退避状態へ変位する当該排出従動ローラホルダと干渉しない非干渉位置にあるときのみ、前記排出従動ローラホルダの退避状態への変位を可能とする規制手段を備えていることを特徴とする。
この特徴によれば、キャリッジが退避状態へ変位する排出従動ローラホルダと干渉しない非干渉位置にあるときのみ、該排出従動ローラホルダの退避状態への変位を可能とする規制手段を備えているので、キャリッジと排出従動ローラホルダとの衝突を確実に回避することができる。
従って、キャリッジの移動が排出従動ローラホルダによって妨げられたり、キャリッジに搭載された記録ヘッドに歯付きローラからなる排出従動ローラが接触して当該記録ヘッドを破損させたりするなどの不具合を生じることがない。
また、本発明の第2の態様に係る記録装置の発明は、前記第1の態様において、前記キャリッジの非干渉位置は、非記録領域であることを特徴とする。
この特徴によれば、非記録領域には排出従動ローラ及びこの排出従動ローラを保持した排出従動ローラホルダともに設けられていないので、キャリッジが非記録領域にある場合には、たとえ排出従動ローラホルダが退避状態となったとしても、キャリッジとこれらとの接触を確実に回避することが可能である。
また、本発明の第3の態様に係る記録装置の発明は、前記第1の態様において、前記キャリッジの非干渉位置は、当該キャリッジのホームポジションであることを特徴とする。
この特徴によれば、キャリッジのホームポジションには排出従動ローラ及びこの排出従動ローラを保持した排出従動ローラホルダともに設けられていないので、キャリッジがホームポジションにある場合には、たとえ排出従動ローラホルダが退避状態となったとしても、キャリッジとこれらとの接触を確実に回避することが可能である。
また、本発明の第4の態様に係る記録装置の発明は、被記録媒体の記録面に向けてインクを噴射する記録ヘッドを搭載し、主走査方向に延在したキャリッジガイド軸に沿って移動することにより記録領域と非記録領域とを往復可能なキャリッジと、前記キャリッジの下流側近傍であり、かつ、記録領域に配設され、被記録媒体の非記録面に接触する排出駆動ローラと、歯付きローラから構成され、被記録媒体の記録面に接触可能な排出従動ローラとを有する、記録の行われた被記録媒体を搬送する排出ローラと、記録領域に配設され、前記排出従動ローラを保持し、当該排出従動ローラが前記排出駆動ローラに接触した接触状態と前記排出駆動ローラから退避した退避状態とをとり得るように変位可能に構成された排出従動ローラホルダと、前記排出従動ローラホルダに対して前記キャリッジを変位可能とするキャリッジ変位手段と、を有する記録装置であって、前記排出従動ローラホルダを接触状態に保持するロック状態と、退避状態への変位を可能とするアンロック状態とを切換可能に構成されたロック手段を備えており、記録実行状態に対応した第1信号により前記ロック手段をロック状態とし、記録非実行状態に対応した第2信号によりアンロック状態とするように構成されていることを特徴とする。
この特徴によれば、記録実行状態においては、排出従動ローラホルダはロック手段によって接触状態に保持されているので、キャリッジと排出従動ローラホルダとの衝突を確実に回避することができる。
すなわち、記録実行状態であるか否かを信号で区別することが可能であるため記録実行中である場合(すなわち、第1信号が生成されている状態)には、ロック手段をロック状態とすることで、排出従動ローラフレームを接触状態で維持し、退避状態への変位を確実に規制することができる。これにより、キャリッジと排出従動ローラホルダとの接触を回避できる。
また、本発明の第5の態様に係る記録装置の発明は、被記録媒体の搬送経路最上流側に配設され、被記録媒体を下流側へと給送する被記録媒体給送装置と、前記被記録媒体給送装置の下流側に配設され、略水平姿勢にある被記録媒体の記録面に向けてインクを噴射する記録ヘッドを搭載し、主走査方向に延在したキャリッジガイド軸に沿って移動することにより記録領域と非記録領域とを往復可能なキャリッジと、前記キャリッジの記録ヘッドに対置して配設され、被記録媒体の非記録面を支持するプラテンと、前記キャリッジガイド軸を変位させることにより、前記記録ヘッドと前記プラテンとの距離であるプラテンギャップを調整するプラテンギャップ調整手段と、前記キャリッジの下流側近傍であり、かつ、記録領域に配設され、被記録媒体の非記録面に接触する排出駆動ローラと、歯付きローラから構成され、被記録媒体の記録面に接触可能な排出従動ローラを有する、記録の行われた被記録媒体を搬送する排出ローラと、前記排出従動ローラを保持し、前記排出従動ローラが前記排出駆動ローラに接触した接触状態と前記排出駆動ローラから退避した退避状態とをとり得るよう変位可能に構成された排出従動ローラホルダと、前記排出ローラの下流側に配設されており、略水平な被記録媒体載置面から所定の被記録媒体を、略水平姿勢を保持したまま前記記録ヘッド下にセット可能とする第1ポジションと、前記被記録媒体給送装置によって給送された被記録媒体を受ける、前記第1ポジションより低く位置する第2ポジションと、をとり得るように変位可能に構成された被記録媒体載置部と、を有する記録装置であって、前記被記録媒体載置部が第1ポジションにある場合には前記排出従動ローラホルダを退避状態とし、前記被記録媒体載置部が第2ポジションにある場合には前記排出従動ローラホルダを接触状態とする第1リンク機構が構成されており、前記第1リンク機構を規制することによって、前記キャリッジが、退避状態へ変位する前記排出従動ローラホルダと干渉しない非干渉位置にあるときのみ、前記被記録媒体載置部の第1ポジションへの変位を可能とする規制手段を備えていることを特徴とする。
この特徴によれば、キャリッジが、退避状態へ変位する排出従動ローラホルダと干渉しない非干渉位置(例えば、ホームポジション、またはフラッシングポジションなど)にあるときのみ、該被記録媒体載置部の第1ポジションへの変位が可能となるように規制されているので、キャリッジと排出従動ローラホルダとの衝突を確実に回避することができる。
すなわち、被記録媒体載置部を第1ポジションへ変位させれば、これに連動して排出従動ローラホルダが退避状態へ変位するため、キャリッジが非干渉位置にある場合のみ、被記録媒体載置部の第1ポジションへの変位を可能とすることで、キャリッジと排出従動ローラホルダとの衝突を確実に回避できる。
従って、キャリッジの移動が排出従動ローラホルダによって妨げられたり、キャリッジに搭載された記録ヘッドに歯付きローラからなる排出従動ローラが接触して当該記録ヘッドを破損させたりするなどの不具合を生じることがない。
また、本発明の第6の態様に係る記録装置の発明は、被記録媒体の搬送経路最上流側に配設され、被記録媒体を下流側へと給送する被記録媒体給送装置と、前記被記録媒体給送装置の下流側に配設され、略水平姿勢にある被記録媒体の記録面に向けてインクを噴射する記録ヘッドを搭載し、主走査方向に延在したキャリッジガイド軸に沿って移動することにより記録領域と非記録領域とを往復可能なキャリッジと、前記キャリッジの記録ヘッドに対置して配設され、被記録媒体の非記録面を支持するプラテンと、前記キャリッジガイド軸を変位させることにより、前記記録ヘッドと前記プラテンとの距離であるプラテンギャップを調整するプラテンギャップ調整手段と、前記キャリッジの下流側近傍であり、かつ、記録領域に配設され、被記録媒体の非記録面に接触する排出駆動ローラと、歯付きローラから構成され、被記録媒体の記録面に接触可能な排出従動ローラを有する、記録の行われた被記録媒体を搬送する排出ローラと、前記排出従動ローラを保持し、前記排出従動ローラが前記排出駆動ローラに接触した接触状態と前記排出駆動ローラから退避した退避状態とをとり得るよう変位可能に構成された排出従動ローラホルダと、前記排出ローラの下流側に配設されており、略水平な被記録媒体載置面から所定の被記録媒体を、略水平姿勢を保持したまま前記記録ヘッド下にセット可能とする第1ポジションと、前記被記録媒体給送装置によって給送された被記録媒体を受ける、前記第1ポジションより低く位置する第2ポジションと、をとり得るように変位可能に構成された被記録媒体載置部と、を備えた記録装置であって、前記被記録媒体載置部が第1ポジションにある場合には前記排出従動ローラホルダを退避状態とし、前記被記録媒体載置部が第2ポジションにある場合には前記排出従動ローラホルダを接触状態とする第1リンク機構が構成されており、前記第1リンク機構を規制することによって、前記プラテンギャップ調整手段により調整されたプラテンギャップが、該キャリッジと退避状態へ変位する前記排出従動ローラホルダとが干渉しない大きさであるときのみ、前記被記録媒体載置部の第1ポジションへの変位を可能とする規制手段を備えていることを特徴とする。
この特徴によれば、プラテンギャップが、キャリッジと退避状態へ変位する排出従動ローラホルダとが干渉しない大きさである場合のみ、被記録媒体載置部の第1ポジションへの変位ができるように構成されているので、キャリッジと排出従動ローラホルダとの衝突を確実に回避することができる。
すなわち、被記録媒体載置部を第1ポジションへ変位させれば、これに連動して排出従動ローラホルダが退避状態へ変位するため、プラテンギャップが退避状態となる排出従動ローラと干渉しない大きさである場合のみ、被記録媒体載置部の第1ポジションへの変位を可能とすることで、キャリッジと排出従動ローラホルダとの衝突を確実に回避できる。
従って、キャリッジの移動が排出従動ローラホルダによって妨げられたり、キャリッジに搭載された記録ヘッドに歯付きローラからなる排出従動ローラが接触して当該記録ヘッドを破損させたりするなどの不具合を生じることがない。
また、本発明の第7の態様に係る記録装置の発明は、被記録媒体の搬送経路最上流側に配設され、被記録媒体を下流側へと給送する被記録媒体給送装置と、前記被記録媒体給送装置の下流側に配設され、略水平姿勢にある被記録媒体の記録面に向けてインクを噴射する記録ヘッドを搭載し、主走査方向に延在したキャリッジガイド軸に沿って移動することにより記録領域と非記録領域とを往復可能なキャリッジと、前記キャリッジのホームポジションに配設され、前記記録ヘッドのノズル形成面に押しつけられた当接状態と前記記録ヘッドのノズル形成面から離間した離間状態とをとり得るように変位可能に構成されたキャップ部材と、前記記録ヘッドに対置して配設され、被記録媒体の非記録面を支持するプラテンと、前記キャリッジガイド軸を変位させることにより、前記記録ヘッドと前記プラテンとの距離であるプラテンギャップを調整するプラテンギャップ調整手段と、前記キャリッジの下流側近傍であり、かつ、記録領域に配設され、被記録媒体の非記録面に接触する排出駆動ローラと、歯付きローラから構成され、被記録媒体の記録面に接触可能な排出従動ローラを有する、記録の行われた被記録媒体を搬送する排出ローラと、前記排出従動ローラを保持し、前記排出従動ローラが前記排出駆動ローラに接触した接触状態と前記排出駆動ローラから退避した退避状態とをとり得るよう変位可能に構成された排出従動ローラホルダと、前記排出ローラの下流側に配設されており、略水平な被記録媒体載置面から所定の被記録媒体を、略水平姿勢を保持したまま前記記録ヘッド下にセット可能とする第1ポジションと、前記被記録媒体給送装置によって給送された被記録媒体を受ける、前記第1ポジションより低く位置する第2ポジションと、をとり得るように変位可能に構成された被記録媒体載置部と、を備えた記録装置であって、前記被記録媒体載置部が第1ポジションにある場合には前記排出従動ローラホルダを退避状態とし、前記被記録媒体載置部が第2ポジションにある場合には前記排出従動ローラホルダを接触状態とする第1リンク機構が構成されており、前記第1リンク機構を規制することによって、前記キャップ部材が当接状態であるときのみ、前記被記録媒体載置部の第1ポジションへの変位を可能とする規制手段を備えていることを特徴とする。
この特徴によれば、キャップ部材がキャリッジに搭載された記録ヘッドのノズル形成面に押しつけられた当接状態である場合(すなわち、キャリッジがホームポジションにある場合)のみ、被記録媒体載置部の第1ポジションへの変位が可能となるように規制されているので、キャリッジと排出従動ローラホルダとの衝突を確実に回避することができる。
従って、キャリッジの移動が排出従動ローラホルダによって妨げられたり、キャリッジに搭載された記録ヘッドに歯付きローラからなる排出従動ローラが接触して当該記録ヘッドを破損させたりするなどの不具合を生じることがない。
また、本発明の第8の態様に係る記録装置の発明は、前記第7の態様において、さらに、前記被記録媒体載置部の変位を検出する検出手段を備えており、前記被記録媒体載置部が第1ポジションへ変位しようとした場合に、前記プラテンギャップ調整手段は、プラテンギャップを当該被記録媒体載置部が第1ポジションにおいてセットされる所定の被記録媒体に対応したものに調整するように構成されていることを特徴とする。
この特徴によれば、被記録媒体載置部が第1ポジションへ変位しようとしたことを検出手段によって検出し、この検出手段からの信号に基づいて被記録媒体載置部が第1ポジションである場合にセットされる所定の被記録媒体に対応したプラテンギャップが調整されることにより、当該所定の被記録媒体とキャリッジとの接触を確実に回避できるとともに、当該所定の被記録媒体の記録面と記録ヘッドとの距離が的確に調整されることにより、良好な記録品質が得られる。
また、被記録媒体載置部が第1ポジションへ変位することにより連動して排出従動ローラホルダが退避状態となるので、当該所定の被記録媒体と排出従動ローラホルダとの接触を回避させて、当該所定の被記録媒体を確実にセットすることが可能である。また、排出従動ローラホルダが退避状態となっても、プラテンギャップが当該所定の被記録媒体に対応したものに調整されているので、キャリッジと退避状態にある排出従動ローラホルダとの接触を確実に回避できる。
すなわち、ユーザーは被記録媒体載置部を第1ポジションとすることにより、この第1ポジションにおいて使用される所定の被記録媒体を容易にセットすることができ、操作性が良い。
また、本発明の第9の態様に係る記録装置の発明は、被記録媒体の搬送経路最上流側に配設され、被記録媒体を下流側へと給送する被記録媒体給送装置と、前記被記録媒体給送装置の下流側に配設され、略水平姿勢にある被記録媒体の記録面に向けてインクを噴射する記録ヘッドを搭載し、主走査方向に延在したキャリッジガイド軸に沿って移動することにより記録領域と非記録領域とを往復可能なキャリッジと、非記録領域に配設され、前記記録ヘッドを清掃するクリーニング装置と、前記記録ヘッドに対置して配設され、被記録媒体の非記録面を支持するプラテンと、前記キャリッジガイド軸を変位させることにより、前記記録ヘッドと前記プラテンとの距離であるプラテンギャップを調整するプラテンギャップ調整手段と、前記キャリッジの下流側近傍であり、かつ、記録領域に配設され、被記録媒体の非記録面に接触する排出駆動ローラと、歯付きローラから構成され、被記録媒体の記録面に接触可能な排出従動ローラを有する、記録の行われた被記録媒体を搬送する排出ローラと、前記排出従動ローラを保持し、前記排出従動ローラが前記排出駆動ローラに接触した接触状態と前記排出駆動ローラから退避した退避状態とをとり得るよう変位可能に構成された排出従動ローラホルダと、を有する記録装置であって、前記クリーニング装置による清掃動作は、前記プラテンギャップ調整手段により調整されたプラテンギャップが、該キャリッジと退避状態へ変位する前記排出従動ローラホルダとが干渉しない大きさである場合に行われるように構成されていることを特徴とする。
この特徴によれば、クリーニング装置による記録ヘッド清掃動作中においても、キャリッジと排出従動ローラホルダとの接触を確実に回避することができる。
すなわち、記録ヘッドの清掃動作では、例えば、当該記録ヘッドのノズル形成面を払拭するために、固定されたワイピング部材に対して記録ヘッドを主走査方向に移動させることがある。この記録ヘッドの移動動作によってキャリッジと排出従動ローラホルダとが接触する虞がある。しかし、本発明においては、清掃動作はキャリッジと排出従動ローラホルダとの接触を回避できる充分なプラテンギャップが調整されている場合に行われるので、上記不具合を生じることがない。
また、本発明の第10の態様に係る記録装置の発明は、前記第1の態様において、前記規制手段は、排出従動ローラホルダの退避状態への変位を規制し、接触状態への変位を非規制とするように構成されていることを特徴とする。
この特徴によれば、排出従動ローラホルダの接触状態への変位は規制がされない非規制であるので、例えば、予期せぬ不具合によりキャリッジと排出従動ローラホルダとが接触してしまった場合に、排出従動ローラホルダを接触状態とすることにより、これらの接触を直ちに解除させることができる。
また、本発明の第11の態様に係る液体噴射装置の発明は、被噴射媒体の噴射面に向けてインクを噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、主走査方向に延在したキャリッジガイド軸に沿って移動することにより噴射領域と非噴射領域とを往復可能なキャリッジと、前記キャリッジの下流側近傍であり、かつ、噴射領域に配設され、被噴射媒体の液体非付着面に接触する排出駆動ローラと、歯付きローラから構成され、被噴射媒体の液体付着面に接触可能な排出従動ローラとを有する、液体の付着した被噴射媒体を搬送する排出ローラと、噴射領域に配設され、前記排出従動ローラを保持し、当該排出従動ローラが前記排出駆動ローラに接触した接触状態と前記排出駆動ローラから退避した退避状態とをとり得るように変位可能に構成された排出従動ローラホルダと、前記排出従動ローラホルダに対して前記キャリッジを変位可能とするキャリッジ変位手段と、を有する液体噴射装置であって、前記キャリッジが退避状態へ変位する当該排出従動ローラホルダと干渉しない非干渉位置にあるときのみ、前記排出従動ローラホルダの退避状態への変位を可能とする規制手段を備えていることを特徴とする。
以下、図面に基づいて本発明に係る「記録装置」または「液体噴射装置」の一実施形態について、該記録装置または該液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置について説明する。
<インクジェット式記録装置の全体構成>
まず、図1から図3を参照しつつ、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の全体構成について説明する。ここで、図1は本実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略斜視図であって、外観カバーを外して内部構成を示したものであり、図2はインクジェット式記録装置の概略側断面図であって、第1の搬送経路を使用して被記録媒体の一例である記録用紙に記録を行う状態を示したものであり、図3はインクジェット式記録装置の概略側断面図であって、第2の搬送経路を使用して被記録媒体の一例である剛性記録媒体に記録を行う状態を示したものである。
なお、ここでは後述する「被記録媒体給送装置」としての給送装置2を使用して給送可能な剛性の低い(すなわち、柔軟な)被記録媒体(例えば、普通紙、ハガキ、封筒、写真用専用紙など)を「記録用紙P」とし、当該給送装置2を使用した給送が不可能な剛性の高い(すなわち、剛直な)被記録媒体(例えば、CDR等がセットされたCDRトレイ、厚紙ボード紙など)を「剛性記録媒体G」と示す。なお、記録用紙Pまたは剛性記録媒体Gの別を要しないとき、またはこれらを合わせたものを「被記録媒体」と示すことがある。
インクジェット式記録装置100は、装置後方に給送装置2が設けられ、図2に示す如く、この給送装置2から記録用紙Pを1枚ずつ給送して記録を行い、装置前方の「被記録媒体載置部」としてのスタッカ50に排出させる、記録用紙Pを一方方向に搬送させる第1の搬送経路(丸付き数字1)と、この第1の搬送経路(丸付き数字1)とは別に、図3に示す如く、剛性記録媒体Gを装置前方のスタッカ50から略水平姿勢で給送して記録を行い、再び装置前方のスタッカ50に排出させる、剛性記録媒体Gを直線状に往復搬送させる第2の搬送経路(丸付き数字2)を有している。
まず、第1の搬送経路(丸付き数字1)を使用した搬送動作に沿って説明する。
給送装置2は、インクジェット式記録装置100の後方側に配設され、ホッパ16と側面視D型の給紙ローラ14を備えている。ホッパ16は、記録用紙Pを複数枚、傾斜姿勢で保持できるようになっており、図示しない揺動支点を中心として揺動することにより、給紙ローラ14に圧接および離間動作できるように構成されている。給紙ローラ14は、回動軸14aを中心として回動可能に構成され、また、その表面が高摩擦材によって構成されており、接触した記録用紙Pを確実に給送できるようになっている。そして、ホッパ16の圧接動作によって最上位の記録用紙Pが給紙ローラ14に接触し、この接触状態で給紙ローラ14を回動(図2において時計回り方向)させることにより、この最上位の記録用紙Pを下流側に向けて給送できるようになっている。
給送装置2の下流の下方にはガイド板15が略水平に配設され、給送装置2から給送された記録用紙Pをガイドして下流側へと案内する。すなわち、記録用紙Pはガイド板15によって湾曲しながら給送され、略水平姿勢となって記録部へと送られる。
ガイド板15の下流側には、略水平姿勢となった記録用紙Pに記録を行う記録部が構成されている。すなわち、記録部においては略水平な搬送経路が構成されており、記録用紙Pを略水平姿勢としたまま記録を行うようになっている。
記録部には、キャリッジ10と、プラテン28が設けられている。キャリッジ10は、記録用紙Pの記録面に「液体」としてのインクを噴射して記録を行う記録ヘッド13を搭載し、主走査方向に延在するキャリッジガイド軸12に支持され、このキャリッジガイド軸12に沿って移動することにより記録領域と非記録領域とを往復可能に構成されている。プラテン28は、記録ヘッド13に対置され、記録用紙Pの被記録面を支持するように構成されている。
キャリッジ10は、イエロー、ダークイエロー、マゼンダ、ライトマゼンダ、シアン、ライトシアン、ブラック等のインクを収容したインクカートリッジ11を各色ごとに着脱自在にセットできるように構成されており、フルカラー印刷を実行可能に構成されている。また、キャリッジ10には、キャリッジガイド軸12に沿って往復移動させるための駆動手段として、キャリッジガイド軸12と平行に配設され、図示しない駆動源によって駆動する無端ベルトから構成されたタイミングベルト9の一部が取り付けられている(図1参照)。
キャリッジ10の記録ヘッド13には、所定量のインクを噴射するノズルが複数形成されており、インクカートリッジ11から供給されたインクを記録用紙Pに向けて噴射できるようになっている。
また、記録ヘッド13のノズル形成面は略水平姿勢である記録用紙Pと平行になるよう略水平に設けられ、また、プラテン28の被記録媒体載置面も略水平となるように構成されている。
キャリッジ10は、被記録媒体に対応させて「キャリッジ変位手段」または「プラテンギャップ調整手段」としてのプラテンギャップ調整手段70によりプラテン28に対して変位するように構成されており、これにより記録ヘッド13のノズル形成面とプラテン28との距離(いわゆる、プラテンギャップ。以下、「PG」と示すことがある。)を調整できるようになっている。
本実施形態に係るインクジェット式記録装置100においては、以下の4段階のプラテンギャップが調整できるように構成されている。
PG++:被記録媒体がCDR、厚紙ボード紙などである場合に設定される、PGが最大であるプラテンギャップ。
PG+:被記録媒体が封筒、ハガキなど比較的厚みのある場合に設定される、PGが前記PG++より小なるプラテンギャップ。
PGノーマル:被記録媒体が普通紙などである場合に設定される、PGが前記PG+より小なるプラテンギャップ。
PG−:被記録媒体が写真用紙などの専用紙である場合に設定される、PGが最小であるプラテンギャップ。
なお、本実施形態における各段階でのPG値は、PG++で4.5mm、PG+で2.1mm、PGノーマルで1.45mm、PG−で1.2mmとなるように設定されている。そして、第1の搬送経路(丸付き数字1)を使用した場合には、PG+、PGノーマルまたはPG−から記録用紙Pに対応したプラテンギャップが調整され、後述する第2の搬送経路(丸付き数字2)を使用した場合には、PG++のプラテンギャップが調整される。
ここで、プラテンギャップ調整手段70について、図12に沿って概説する。プラテンギャップ調整手段70は、キャリッジ10を支持するキャリッジガイド軸12を回動させるPG調整歯車71と、両サイドのサイドメインフレーム80に形成されたPG調整カムフォロア72と、PG調整カムフォロア72に接触しながらキャリッジガイド軸12に連動して回動する、キャリッジガイド軸12の両端部に設けられたPG調整カム73を備えている。
そして、PG調整カム73を駆動源(図示せず)によって回動させることにより、キャリッジガイド軸12と、PG調整カム73とPG調整カムフォロア72との接触位置75との距離Lに対応させてキャリッジガイド軸12を装置上下方向(図12において紙面上下方向)に変位させ、プラテンギャップを調整している。すなわち、PG調整カム73の表面位置に対応してプラテンギャップが調整されるようになっている。なお、キャリッジガイド軸12は、サイドメインフレーム80に形成された軸受孔80aにガイドされており、プラテンギャップに応じて装置上下方向に移動可能であるとともに、装置前後方向(図12において紙面左右方向)への移動が規制されるようになっている。
キャリッジ10は、非使用状態では、図1に示すホームポジションに位置するように制御されている。このホームポジションには、記録ヘッド13のインク噴射特性を維持させるインク噴射特性維持装置を構成するキャップ部材61(後述する)が配設されている(図1では示されていない)。そして、キャリッジ10がホームポジションにある状態においてキャップ部材61が記録ヘッド13のノズル形成面に押しつけられることにより当該記録ヘッド13のノズル形成面を封止してインクの乾燥を防止できるようになっている。すなわち、キャップ部材61は後述するキャップ変位機構60によって、記録ヘッド13に押しつけられた封止状態と、記録ヘッド13から離間した離間状態とをとり得るように構成されている。
また、インク噴射特性維持装置はキャップ部材61が封止状態である場合に負圧を記録ヘッド13に作用させる負圧発生手段(図示せず)を備えており、ノズル目詰まりや気泡混入を解消できるようになっている。さらに、キャップ部材61とプラテン28との間には、記録ヘッド13のノズル形成面を払拭するクリーニング手段(図示せず)を備えており、記録ヘッド13を払拭して清掃できるようになっている。なお、このクリーニング手段によるクリーニング動作は、プラテンギャップがPG++である場合に行われるようになっている。これにより、クリーニング動作中において、後述する排出従動ローラホルダ35とキャリッジ10との衝突を回避している。
記録ヘッド13とプラテン28との対置位置の上流側には、記録の行われていない記録用紙Pを搬送する搬送ローラ19が配設されている。この搬送ローラ19は、図示しない駆動源によって回転駆動する、記録用紙Pの非記録面に接触する搬送駆動ローラ19aと、この搬送駆動ローラ19aに対置され、記録用紙Pの記録面に接触して従動回転する搬送従動ローラ19bを有している。搬送駆動ローラ19aは主走査方向に延在した棒状のローラから構成されており、一方、搬送従動ローラ19bは、主走査方向に短いローラから構成され、同方向に所定の間隔をおいて複数個配設されている。
搬送従動ローラ19bは、搬送従動ローラホルダ18の下流側において自由回転可能に軸支されている。この搬送従動ローラホルダ18は、ホルダ揺動支点18aを中心として揺動可能に構成されているとともに、付勢手段(図示せず)によって搬送従動ローラ19bを搬送駆動ローラ19aに向けて回動付勢されている。これにより、記録用紙Pを確実に挟持し、記録用紙Pを副走査方向に精密送りできるようになっている。
ホルダ回動支点18aを介した搬送従動ローラ19bの反対側の搬送従動ローラホルダ18上方には、カム部材26が配設されている。このカム部材26はカム回動軸26aを中心として回動可能に構成されており、搬送従動ローラホルダ18のカムフォロア部18bに上方から接触することにより、ホルダ揺動支点18aを中心として搬送従動ローラホルダ18を付勢力に抗して揺動させる。これにより、搬送従動ローラ19bを搬送駆動ローラ19aから離間させることができる(図3参照)。なお、このカム部材26の回動動作は、図示しない装置制御部によって制御されている。
また、記録ヘッド13とプラテン28との対置位置の下流側には、記録の行われた記録用紙Pを搬送する排出部が構成されており、これにより記録用紙Pがスタッカ50上に排出される。
この排出部には、駆動ローラと従動ローラとでセットとなった排出ローラが2セット設けられている。より具体的には、記録ヘッド13とプラテン28との対置位置の下流側近傍に配設された、第1排出駆動ローラ21aと第1排出従動ローラ21bとから構成された第1排出ローラ21と、この第1排出ローラ21より下流側に配設された、第2排出駆動ローラ22aと第2排出従動ローラ22bとから構成された第2排出ローラ22とを有している。
第1排出駆動ローラ21aと第2排出駆動ローラ22aとは、図示しない駆動源により同期して回動するように構成されており、記録の行われた記録用紙Pの非記録面に接触して当該記録用紙Pを搬送してスタッカ50上に排出する。一方、第1排出従動ローラ21b及び第2排出従動ローラ22bは、歯付きローラから構成されており、排出従動ローラホルダ35に自由回動可能に保持され、記録の行われた記録用紙Pの記録面に接触して従動回転可能に構成されている。
第1排出従動ローラ21b及び第2排出従動ローラ22bを保持した排出従動ローラホルダ35は、両排出従動ローラ(21b、22b)が両排出駆動ローラ(21a、22a)に接触した接触状態(図2参照)と、両排出従動ローラ(21b、22b)が両排出駆動ローラ(21a、22a)から退避した退避状態(図3参照)とをとり得るように構成されている。
次に、第2の搬送経路(丸付き数字2)を使用した搬送動作に沿って説明する。
第2の搬送経路(丸付き数字2)は、剛性記録媒体Gを装置前方から搬送し、記録を行った後再び装置前方に排出させる直線状の搬送経路である。この第2の搬送経路(丸付き数字2)を使用する場合には、まず、スタッカ50を第1ポジションとし、記録部までつながる直線状の搬送経路を形成させる。
ここで、スタッカ50のとり得るポジションについて説明する。スタッカ50は、図3に示す如く被記録媒体載置面50aを略水平姿勢とし、第2の搬送経路(丸付き数字2)を使用して剛性記録媒体Gに記録を行う場合に選択される第1ポジションと、図2に示す如く被記録媒体載置面50aを傾斜姿勢とし、第1の搬送経路(丸付き数字1)を使用して記録用紙Pに記録を行う場合に選択される第2ポジションとをとり得るように構成されている。
また、スタッカ50のポジションを変位させることにより、後述する第1リンク機構を介して排出従動ローラホルダ35の状態を変位できるようになっている。すなわち、スタッカ50が第1ポジションである場合には排出従動ローラホルダ35が退避状態となり、第2ポジションである場合には接触状態となるものである。
このような構成により、スタッカ50を第1ポジションとすることにより、図3に示す如く、記録部につながる直線状の搬送経路が形成され、剛性記録媒体Gを略水平姿勢としたまま給送できるようになっている。
また、スタッカ50を第1ポジションとすることにより排出従動ローラホルダ35が変位して、両排出従動ローラ(21b、22b)が両排出駆動ローラ(21a、22a)から離間し、剛性記録媒体Gと接触しない高さ位置まで持ち上げられた退避状態となる。このように排出従動ローラホルダ35が変位して退避状態をとることにより、両排出従動ローラ(21b、22b)と、両排出駆動ローラ(21a、22a)との間に隙間が設けられ、この隙間に剛性記録媒体Gをセットすることできる。従って、セットされる剛性記録媒体Gと、第1排出従動ローラ21b、第2排出従動ローラ22bとの接触を確実に回避できるようになっている。また、スタッカ50の第1ポジションへの変位を検出する検出手段を備えており、これにより装置制御部を介してカム部材26、プラテンギャップ調整手段70を駆動できるようになっている。
また、カム部材26が回動制御されて搬送従動ローラホルダ18を揺動させ、搬送従動ローラ19bを搬送駆動ローラ19aから離間させる。このように搬送従動ローラ19bが搬送駆動ローラ19aから離間することにより、搬送従動ローラ19bと搬送駆動ローラ19aとの間に隙間が設けられ、この隙間に剛性記録媒体Gをセットできるようになっている。
また、プラテンギャップ調整手段70により、プラテンギャップがPG++に調整されるようになっている。これにより、剛性記録媒体Gまたは排出従動ローラホルダ35とキャリッジ10との接触が確実に回避される。さらに、剛性記録媒体Gの記録面と記録ヘッド13との距離が的確に調整され、高精度の記録を実行できるようになっている。
そして、所定の操作により搬送従動ローラ19bが剛性記録媒体Gの記録面に接触して搬送ローラ19で当該剛性記録媒体Gを挟持し、記録開始位置への頭出し動作が行われ、記録を実行することができる。
<リンク機構の構成>
次に、第1リンク機構、及び「規制手段」としての第2リンク機構について図面に沿って説明する。
ここで、図4から図10は、第1リンク機構及び第2リンク機構の説明に供する図面である。より詳細には、図4はスタッカ50が第2ポジションにあり、かつ、キャップ部材61が離間状態を示す斜視図であり、図5は図4と同状態を示す側面図であり、図6はスタッカ50が第2ポジションにあり、かつ、キャップ部材61が当接状態を示す斜視図であり、図7は図6と同状態を示す側面図であり、図8はスタッカ50が第1ポジションに変位した状態を示す斜視図であり、図9及び図10は図8と同状態を示す側面図である。図11は、図4と異なる角度から視た斜視図である。
第1リンク機構30は、スタッカ50のポジションに対応させて排出従動ローラホルダ35の状態を変位させるものである。すなわち、スタッカ50が第1ポジションである場合には排出従動ローラホルダ35を退避状態とし、第2ポジションである場合には接触状態とするものである。
第2リンク機構40は、キャップ部材61の状態に対応させて第1リンク機構30を規制するものである。すなわち、キャップ部材61が記録ヘッド13のノズル形成面に押しつけられた当接状態である場合にのみ、スタッカ50の第1ポジションへの変位(すなわち、排出従動ローラホルダ35の退避状態への変位)が可能となるように、第1リンク機構30を規制するものである。
第1リンク機構30は、スタッカ50から横突した突軸51と、この突軸51を軸支する軸受孔31aが形成された第1リンク第1部材31と、この第1リンク第1部材31に揺動可能に取り付けられた第1リンク第2部材32と、この第1リンク第2部材32の揺動中心となり、主走査方向に延在する断面D形状の第1リンク回動軸33と、この第1リンク回動軸33に連動して揺動する第1リンク第4部材34を備えている。
第1排出従動ローラ21b及び第2排出従動ローラ22bを保持した排出従動ローラホルダ35は、第1リンク第4部材34に設けられた軸受孔に揺動軸35aが軸支されることにより取り付けられている。
スタッカ50に設けられた突軸51は、サイドフレーム91に装置上下方向(鉛直方向)に形成された軸受溝91aに軸支され、この軸受孔91aにガイドされながらスタッカ50に連動して装置上下方向に移動できるようになっている。
第2リンク機構40は、揺動支点41aを中心として揺動することにより突軸51の移動経路上に進出してこれを規制可能な第2リンク第1部材41と、この第2リンク第1部材41に形成された軸受孔41cに軸支される連結軸42cを有し、揺動支点42aを中心として揺動可能な第2リンク第2部材42と、キャップ変位機構60を構成するキャップ変位回動軸64に取り付けられ、キャップ部材61の状態に連動して回動する第2リンクカム部材66を備えている。第1リンク第1部材41には、突軸51をロックすることでスタッカ50の第1ポジションへの変位を規制する(すなわち、スタッカ50を第2ポジションに保持する)ロック部41bが設けられている。第2リンク第2部材42は、付勢手段(図示せず)によって回動付勢されており、接触部42bを第2リンクカム部材66に押しつけることができるようになっている。
ここで、キャップ部材61を当接状態と離間状態とに変位させるキャップ変位機構60について、図4及び図6を参照して説明する。キャップ変位機構60は、記録ヘッド13に押しつけられるキャップ部材61を保持するキャップホルダ62と、駆動源(図示せず)によって回転駆動するキャップ変位回動軸64に取り付けられ、キャップホルダ62の底部に接触するキャップ変位カム部材63a、63bを備えている。キャップ部材61は全方向に僅かに揺動できるように保持されており、これにより的確に記録ヘッド13を封止できるようになっている。
そして、キャップ変位カム部材63a、63bが回動することにより、キャップホルダ62を介してキャップ部材61を上下方向に移動させ、当接状態と離間状態をとり得るように構成している。
また、突軸51の移動経路上には、図11に示す如く、「検出手段」としてスイッチセンサー93が配設されている。このスイッチセンサー93は、スタッカ50が第1ポジションである場合(すなわち、排出従動ローラホルダ35が退避状態である場合)にはOFF状態となり、スタッカ50が第2ポジションである場合(すなわち、排出従動ローラホルダ35が接触状態である場合。図11に示す状態。)にはON状態となるように構成されている。これにより、スタッカ50のポジション(すなわち、排出従動ローラホルダ35の状態)の変位を検出できるようになっている。
次に、スタッカ50を第2ポジションから第1ポジションに変位させる際の動作について図面に沿って説明する。
まず、上述した第1の搬送経路(丸付き数字1)を使用して搬送された記録用紙Pに対して記録を実行可能な状態では、図4及び図5に示す如く、スタッカ50は、記録が行われて排出される記録用紙Pを受けるべく第2ポジションをとっている。従って、排出従動ローラホルダ35は、第1リンク機構30によって接触状態をとっている。また、キャップ部材61は、記録ヘッド13から離れた離間状態をとっており、記録動作可能状態である。
従って、第2リンク機構40で第1リンク機構30を規制することによって、排出従動ローラホルダ35の退避状態への変位が規制されている。すなわち、第2リンク第2部材42が揺動付勢(図5において反時計方向)されることにより、キャップ部材61が離間状態である場合にとり得る第2リンクカム部材66の低部66aに第2リンク第2部材42の接触部42bが付勢されて押しつけられる。これにより、第2リンク第1部材41が突軸51の移動経路上に進出するように回動付勢(図5において時計方向)され、ロック部41bによって突軸51の移動を規制している。従って、第2ポジションをとるスタッカ50を第1ポジションに変位させようとしても突軸51が第2リンク第1部材41のロック部41bによって規制されるようになっている。
そして、キャリッジ10がホームポジションに位置し、キャップ部材61が記録ヘッド13のノズル形成面に押しつけられた当接状態をとることにより、図6及び図7に示す如く、スタッカ50の第1ポジションへの変位が可能となる。すなわち、キャリッジ10が、退避状態へ変位する排出従動ローラホルダ35と干渉しない非干渉位置であるホームポジションに位置し、キャップ部材61が当接状態となることにより、キャップ変位回動軸64に連動して第2リンクカム部材66が回動する。これにより、第2リンクカム部材66の高部66bに第2リンク第2部材42の接触部42bが接触し、第2リンク第2部材42を付勢力に抗して揺動(図7において時計方向)させる。そして、第2リンク第1部材41が揺動支点41aを中心として揺動(図7において反時計方向)し、ロック部41bが突軸51の移動経路から退避する。
そして、図6及び図7に示す状態から、第2ポジションにあるスタッカ50を持ち上げることにより、図8から図10に示す如く、第1リンク機構30により排出従動ローラホルダ35が接触状態から退避状態へと変位する。すなわち、スタッカ50を第2ポジションから第1ポジションへと変位させることにより、スタッカ50とともに移動する突軸51に連動して第1リンク第1部材31が持ち上げられ、これにより第1リンク回動軸33を、第1リンク第2部材32を介して回動(図9において時計方向)させる。これにより第1リンク第4部材34が第1リンク回動軸33を中心として揺動され、この第1リンク第4部材34に取り付けられた排出従動ローラホルダ35を上昇させて退避状態とする。
この排出従動ローラホルダ35の接触状態から退避状態への変位は、図10に示す如く、サイドメインフレーム80に形成されたガイド面81に沿って排出従動ローラホルダ35が退避状態位置決め部84に移動することによって行われる。
すなわち、サイドメインフレーム80には、排出従動ローラホルダ35が接触状態である場合に位置決めする接触状態位置決め部82、83と、退避状態である場合に位置決めする退避状態位置決め部84と、状態を変位させる際にガイドとして機能するガイド面81が形成されている。このような構成により、排出従動ローラホルダ35は、接触状態で場合には接触状態位置決め部82、83によって、退避状態である場合には退避状態位置決め部84によって的確に位置決めされる。
そして、接触状態から退避状態へと変位する場合には、排出従動ローラホルダ35の下流側が第1リンク第4部材34との揺動軸35aにおいて持ち上げられ、上流側がガイド面81に案内されて持ち上げられ、略水平に移動して退避状態位置決め部84に位置決めされる。
従って、排出従動ローラホルダ35の接触状態での位置を正確に決めることができ、また、排出従動ローラホルダ35を略水平に退避させて退避状態とすることができる。
また、スタッカ50の第1ポジションから第2ポジションへの変位(すなわち、排出従動ローラホルダ35の退避状態から接触状態への変位)は、第2リンク機構40によっては規制されないように構成されている。
なお、上述した実施形態においては、第1リンク機構を規制することにより排出従動ローラホルダの退避状態への変位を制限していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、排出従動ローラホルダを接触状態に保持するロック状態と、退避状態への変位を可能とするアンロック状態とを切換可能に構成されたロック手段を設けることもできる。
また、上述した実施形態においては、スタッカがポジション変位可能に構成された形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、CDRなどの剛性記録媒体に記録を実行する際に使用する専用カセットをセット可能に構成されたものでもよい。
また、上述した実施形態においては、キャリッジがホームポジションにあり、かつ、キャップ部材が当接状態である場合のみ、排出従動ローラホルダの退避状態への変位を可能とした形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、キャリッジが退避状態へ変位する排出従動ローラホルダと干渉しない非干渉位置にあるときに、排出従動ローラホルダの退避状態への変位を可能とすることができる構成でも良い。ここで、非干渉位置としては、ホームポジションの他に、フラッシングポジション、ホームポジションと印刷領域との中間領域などを挙げることができる。