以下、本発明の実施の形態を図1乃至図7に沿って説明する。まず、以下に本発明を適用し得る自動変速機20について図1及び図2に沿って説明する。
例えばFF(フロントエンジン、フロントドライブ)タイプの車両に用いて好適な自動変速機20は、図1に示すように、トルクコンバータ4、3速主変速機構2、3速副変速機構5及びディファレンシャル(図示せず)を備えており、かつこれら各部は互に接合して一体に構成されるケースに収納されている。そして、トルクコンバータ4は、ロックアップクラッチ4aを備えており、エンジンクランクシャフト13から、トルクコンバータ内の油流を介して又はロックアップクラッチによる機械的接続を介して主変速機構2の入力軸3に入力する。そして、一体ケースにはクランクシャフトと整列して配置されている入力軸3及び該入力軸3と平行にカウンタ軸6及びディファレンシャルの左右出力軸が回転自在に支持されており、また該ケースの外側に後述する油圧制御装置30が配設されている。
主変速機構2は、シンプルプラネタリギヤ7とダブルピニオンプラネタリギヤ9からなるプラネタリギヤユニット15を有しており、シンプルプラネタリギヤ7はサンギヤS1、S2、リングギヤR1、及びこれらギヤに噛合するロングピニオンからなるピニオンP1を支持したキャリヤCRからなり、またダブルピニオンプラネタリタリギヤ9はサンギヤS2、リングギヤR2、並びにサンギヤS2に噛合しかつ共通ピニオンとなるピニオンP1及びリングギヤR2に噛合するピニオンP2を互に噛合するように支持する共通キャリヤCRからなる。
そして、エンジンクランクシャフト13からトルクコンバータ4を介して連動している入力軸3は、第1の(フォワード)クラッチC−1を介してシンプルプラネタリギヤ7のリングギヤR1に連結し得ると共に、第2の(ダイレクト)クラッチC−2を介してシンプルプラネタリギヤ7のサンギヤS1に連結し得る。ダブルピニオンプラネタリギヤ9のサンギヤS2は、第1のブレーキB−1にて直接係止し得ると共に、第1のワンウェイクラッチF−1を介して第2のブレーキB−2にて係止し得る。更に、ダブルピニオンプラネタリギヤ9のリングギヤR2は、第3のブレーキB−3及び第2のワンウェイクラッチF−2にて係止し得る。そして、共通キャリヤCRが、主変速機構2の出力部材となるカウンタドライブギヤ8に連結している。
一方、副変速機構(部)5は、第2軸を構成するカウンタ軸6の軸線方向にリヤ側に向って、出力ギヤ16、第1のシンプルプラネタリギヤ10及び第2のシンプルプラネタリギヤ11が順に配置されており、またカウンタ軸6はベアリングを介して一体ケース側に回転自在に支持されている。前記第1及び第2のシンプルプラネタリギヤ10,11は、シンプソンタイプからなる。
また、第1のシンプルプラネタリギヤ10は、そのリングギヤR3が前記カウンタドライブギヤ8に噛合するカウンタドリブンギヤ17に連結しており、そのサンギヤS3がカウンタ軸6に回転自在に支持されているスリーブ軸12に固定されている。そして、ピニオンP3はカウンタ軸6に一体に連結されたフランジからなるキャリヤCR3に支持されており、また該ピニオンP3の他端を支持するキャリヤCR3はUDダイレクトクラッチC−3のインナハブに連結している。また、第2のシンプルプラネタリギヤ11は、そのサンギヤS4が前記スリーブ軸12に形成されて前記第1のシンプルプラネタリギヤのサンギヤS3に連結されており、そのリングギヤR4は、カウンタ軸6に連結されている。
そして、UDダイレクトクラッチC−3は、前記第1のシンプルプラネタリギヤのキャリヤCR3と前記連結サンギヤS3,S4との間に介在しており、かつ該連結サンギヤS3,S4は、バンドブレーキからなる第4のブレーキB−4(摩擦係合要素)にて係止し得る。更に、第2のシンプルプラネタリギヤのピニオンP4を支持するキャリヤCR4は、第5のブレーキB−5にて係止し得る。
ついで、本自動変速機の作用について図1及び図2に沿って説明する。
D(ドライブ)レンジにおける1速(1ST)状態では、フォワードクラッチC−1が係合し、かつ第5のブレーキB−5及び第2のワンウェイクラッチF−2が係止して、ダブルピニオンプラネタリギヤのリングギヤR2及び第2のシンプルプラネタリギヤ11のキャリヤCR4が停止状態に保持される。この状態では、入力軸3の回転は、フォワードクラッチC−1を介してシンプルプラネタリギヤのリングギヤR1に伝達され、かつダブルピニオンプラネタリギヤのリングギヤR2は停止状態にあるので、サンギヤS1、S2を逆方向に空転させながら共通キャリヤCRが正方向に大幅減速回転される。即ち、主変速機構2は、1速状態にあり、該減速回転がカウンタギヤ8,17を介して副変速機構5における第1のシンプルプラネタリギヤのリングギヤR3に伝達される。該副変速機構5は、第5のブレーキB−5により第2のシンプルプラネタリギヤのキャリヤCR4が停止され、1速状態にあり、前記主変速機構2の減速回転は、該副変速機構5により更に減速されて、出力ギヤ16から出力する。
2速(2ND)状態では、フォワードクラッチC−1に加えて、第2のブレーキB−2が作動(係合)し、更に、第2のワンウェイクラッチF−2から第1のワンウェイクラッチF−1に作動が切換わり、かつ第5のブレーキB−5が係止状態に維持されている。この状態では、サンギヤS2が第2のブレーキB−2及び第1のワンウェイクラッチF−1により停止され、従って入力軸3からフォワードクラッチC−1を介して伝達されたシンプルプラネタリギヤのリングギヤR1の回転は、ダブルピニオンプラネタリギヤのリングギヤR2を正方向に空転させながらキャリヤCRを正方向に減速回転する。更に、該減速回転は、カウンタギヤ8,17を介して副変速機構5に伝達される。即ち、主変速機構2は2速状態となり、副変速機構5は、第5のブレーキB−5の係合により1速状態にあり、この2速状態と1速状態が組合されて、自動変速機20全体で2速が得られる。
3速(3RD)状態では、フォワードクラッチC−1、第2のブレーキB−2及び第1のワンウェイクラッチF−1はそのまま係合状態に保持され、第5のブレーキB−5の係止が解放されると共に第4のブレーキB−4が係合する。即ち、主変速機構2はそのままの状態が保持されて、上述した2速時の回転がカウンタギヤ8,17を介して副変速機構5に伝えられ、そして副変速機構5では、第1のシンプルプラネタリギヤのリングギヤR3からの回転がそのサンギヤS3の固定により2速回転としてキャリヤCR3から出力し、従って主変速機構2の2速と副変速機構5の2速で、自動変速機20全体で3速が得られる。
4速(4TH)状態では、主変速機構2は、フォワードクラッチC−1、第2のブレーキB−2及び第1のワンウェイクラッチF−1が係合した上述2速及び3速状態と同じであり、副変速機構5は、第4のブレーキB−4を解放すると共にUDダイレクトクラッチC−3が係合する。この状態では、第1のシンプルプラネタリギヤのキャリヤCR3とサンギヤS3,S4が連結して、プラネタリギヤ10,11が一体回転する直結回転となる。従って、主変速機構2の2速と副変速機構5の直結(3速)が組合されて、自動変速機20全体で、4速回転が出力ギヤ16から出力する。
5速(5TH)状態では、フォワードクラッチC−1及びダイレクトクラッチC−2が係合して、入力軸3の回転がシンプルプラネタリギヤのリングギヤR1及びサンギヤSに共に伝達されて、主変速機構2は、ギヤユニットが一体回転する直結回転となる。また、副変速機構5は、UDダイレクトクラッチC−3が係合した直結回転となっており、従って主変速機構2の3速(直結)と副変速機構5の3速(直結)が組合されて、自動変速機20全体で、5速回転が出力ギヤ16から出力する。
なお、図2においてカッコ内丸印は、コースト時エンジンブレーキが作動状態(4、3又は2レンジ)を示す。即ち、1速時、第3のブレーキB−3が作動して第2のワンウェイクラッチF−2のオーバランによるリングギヤR2の回転を阻止する。また、2速時、3速時及び4速時、第1のブレーキB−1が作動して第1のワンウェイクラッチF−1のオーバランによるサンギヤS1の回転を阻止する。また、黒丸は、ブレーキB−2は係合するが、ワンウェイクラッチF−1がフリー回転することによりトルクを担持することはない。
また、R(リバース)レンジにあっては、ダイレクトクラッチC−2及び第3のブレーキB−3が係合すると共に、第5のブレーキB−5が係合する。この状態では、入力軸3の回転はダイレクトクラッチC−2を介してサンギヤS1に伝達され、かつ第3のブレーキB−3によりダブルピニオンプラネタリギヤのリングギヤR2が停止状態にあるので、シンプルプラネタリギヤのリングギヤR1を逆転方向に空転させながらキャリヤCRも逆転し、該逆転が、カウンタギヤ8,17を介して副変速機構5に伝達される。副変速機構5は、第5のブレーキB5に基づき第2のシンプルプラネタリギヤのキャリヤCR4が逆回転方向にも停止され、1速状態に保持される。従って、主変速機構2の逆転と副変速機構5の1速回転が組合されて、出力軸16から逆転減速回転が出力する。
つづいて、本自動変速機の変速制御装置1について図3乃至図7に沿って説明する。
図3に示すように、制御部(ECU)Uは、例えば不揮発性メモリ(不図示)等を備えたマイクロコンピュータからなり、油圧制御装置30内の油(ATF)の油温を検出する油温センサ31、上記入力軸3の回転数を検出する入力軸回転数センサ32、ドライバのアクセルペダル踏み量を検出するアクセル開度センサ33、図示を省略したエンジン(E/G)の出力回転数を検出するE/G回転数センサ34、出力軸16の回転数を検出し、車速を検出する車速センサ35がそれぞれ接続されており、それら各センサからの信号が入力されている。また、制御部Uは、変速制御手段21、変速状況検知手段22、変速計時手段23、油温状態判別手段24、初期学習完了判定手段25、学習制御手段26を備えており、更に該学習制御手段26は、常温ベース学習手段27、個別学習手段28、学習反映手段29を有して構成されている。
上記変速制御手段21は、油圧制御装置30のソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブも含む)を電子制御するため、上述の各クラッチや各ブレーキの油圧サーボに供給する油圧の指令値を出力可能に構成されており、車速センサ35により検出される車速Vとアクセル開度センサ33により検出されるアクセル開度θdとに基づき変速判断がなされると、詳しくは後述する油圧指令値の演算を行うと共に、後述の学習制御手段26の学習結果を該油圧指令値に加算し、各クラッチや各ブレーキの係合状態を制御することで変速制御を行う。なお、油圧指令値を出力するタイミングは、後述の変速計時手段23により計時された計時結果に基づき制御される。
上記変速計時手段23は、上記変速制御手段21により変速判断がなされた際、詳しくは後述する各タイマの計時を行うように構成されており、これらの計時結果を変速制御手段21や変速状況検知手段22に出力する。
上記変速状況検知手段22は、上記変速制御手段21により制御される変速時において、入力軸回転数センサ32の検出による入力軸回転数NINや変速計時手段23により計時された実際の変速開始から終了までの時間(即ちイナーシャ相の時間)などに基づき、変速の状況を検知し、その状況を詳しくは後述する学習制御手段26に出力する。
上記油温状態判別手段24は、油温センサ31により検出される油温に基づき、変速制御手段21により変速制御された変速が何れの温度状態であるかを判別し、学習制御手段26に判別結果を出力する。本実施の形態においては、図5に示すように、閾値Temp1以上でかつ閾値Temp2未満である際は「最低低温状態Cold−Low1」、閾値Temp2以上でかつ閾値Temp3未満である際は「低低温状態Cold−Low2」、閾値Temp3以上でかつ閾値Temp4(第2の所定温度)未満である際は「中低温状態Cold−Mid」(第2低温状態)、閾値Temp4以上でかつ閾値Temp5(第1の所定温度)未満である際は「高低温状態Cold−High」(第1低温状態)、閾値Temp5以上でかつ閾値Temp6未満である際は「常温状態Normal」、閾値Temp6以上である際は「高温状態Hot」、として判別する。
なお、本実施の形態においては、油の粘性のバラツキに起因して、高温状態Hotの変速、低低温状態Cold−Low2の変速、最低低温状態Cold−Low1の変速における学習結果に信頼性が欠けるため、これらの3つの状態を判別した際は、学習制御手段26による学習制御を行わず、詳しくは後述するように常温状態Normal、高低温状態Cold−High、中低温状態Cold−Midの学習結果を用いて油圧制御の油圧指令を行う。即ち、本実施の形態において、常温状態の変速の学習とは、常温状態Normalの変速時における学習を指し、低温状態の変速の学習とは、高低温状態Cold−High及び中低温状態Cold−Midの変速時における学習を指すものとする。
上記初期学習完了判定手段25は、図3に示すように、詳しくは後述する学習制御手段26の個別学習手段28により常温学習値PS2A,PTAAの学習の進行状態が所定の進行状態以上となった場合、詳しくは所定回数連続した常温状態Normalの変速にて、個別学習手段28により常温学習値PS2A,PTAAの学習に変化がない場合に、初期学習が完了したことを判定する。
上記学習制御手段26は、上記変速状況検知手段22の検知結果に基づき、次回の変速制御における各クラッチや各ブレーキの油圧サーボに供給する油圧の指令値を補正するための学習値を演算・記録することで学習を行うように構成されており、この学習は、各クラッチや各ブレーキの油圧サーボに供給する油圧指令値毎に演算・記録する。なお、本実施の形態においては、パワーオン時の2−3アップシフト変速を一例として説明し、その他の変速ないし摩擦係合要素の油圧指令値の学習については、略々同様のものであるので、その説明を省略する。
上記常温ベース学習手段27は、上記初期学習完了判定手段25により初期学習の完了が判定された後、上記油温状態判別手段24により判別された常温状態Normalの変速にあっては、常温用学習値の学習を継続し、また、上記油温状態判別手段24により判別された高低温状態Cold−Highの変速にあっては、常温用学習値PS2A,PTAAを補正するための第2低温用学習値(第1低温状態の第2低温用学習値)PS2B’,PTAB’の学習を行い、更に、上記油温状態判別手段24により判別された中低温状態Cold−Highの変速にあっては、常温用学習値PS2A,PTAAを補正するための第2低温用学習値(第2低温状態の第2低温用学習値)PS2C’,PTAC’の学習を行う。
上記個別学習手段28は、上記初期学習完了判定手段25により初期学習の完了が判定されるまで、油温状態判別手段24により判別された常温状態Normalの変速と高低温状態Cold−Highの変速と中低温状態Cold−Midの変速とで、それぞれ常温用学習値PS2A,PTAA、第1低温用学習値(第1低温状態の第1低温用学習値)PS2B,PTAB、第1低温用学習値(第2低温状態の第1低温用学習値)PS2C,PTACを個別に学習する。
上記学習反映手段29は、上記個別学習手段28により学習される常温用学習値PS2A,PTAAを、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに反映させる演算処理を行う。なお、本実施の形態においては、高低温状態Cold−Highの変速と中低温状態Cold−Midの変速との学習結果が、油の粘性の増加に起因して、常温状態Normalの変速の学習結果に比して信頼性が低いため、第1低温用学習値PS2B,PTABや第2低温用学習値PS2C,PTACを常温用学習値PS2A,PTAAに反映させる演算処理は行わないが、勿論、相互に反映させる演算処理を行ってもよい。
ついで、まず、変速制御手段21による油圧制御(油圧指令値)について、2−3アップシフト変速を一例に、図7のタイムチャートに沿って説明する。
まず、アクセル開度センサ33及び車速センサ35からの信号に基づき、変速制御手段21が2−3アップシフト変速を判断すると(時点t1)、変速計時手段23による計時が開始される。そして、係合側の第4のブレーキB−4(図2参照)の油圧サーボへの油圧指令値PB4(以下、「係合側油圧」という。)が所定圧PS1になるように、また、解放側の第5のブレーキB−5の油圧サーボへの油圧PB5(以下、「解放側油圧」という。)が、係合圧からなる高い油圧PWになるように、油圧制御装置30の図示を省略したソレノイドバルブに信号出力する(時点t2)。該高油圧PWの供給は、係合側油圧PB4が第1のスイープアップを開始するまで(tSE、時点t5)保持される。
一方、所定圧PS1は、油圧サーボの油圧室を満たすために必要な油圧に設定されており、所定時間tSA保持される。該所定時間tSAが経過すると(時点t3)、係合側油圧PB4は、所定勾配[(PS1−PS2)/tSB]でスイープダウンし、係合側油圧PB4が待機圧PS2になると(時点t4)、該スイープダウンが停止され、該待機圧PS2に保持される。
該待機圧PS2は、詳しくは後述する学習制御手段26により学習された学習値(常温用学習値PS2A、第1低温用学習値PS2B、第1低温用学習値PS2C、或いは常温用学習値PS2A及び第2低温用学習値PS2B’、常温用学習値PS2A及び第2低温用学習値PS2C’)を加算した、つまり学習された油圧値であって、ピストンストローク圧以上でかつ入力軸の回転変化を生じさせない圧となるように学習される。該待機圧PS2は、所定時間tSE経過するまで保持される(時点t5)。
この間、解放側の制御として、係合側油圧PB4及び入力トルクTTの関数[TB5’=fTB5(PB4,TT)]により解放側トルクTB5’が算定され、更に余裕率S1U,S2Uが考慮されて(TB5=S1U×TB5’+S2U)、解放側トルクTB5が算出される。そして、該解放側トルクTB5から解放側油圧PB5が算出される[PB5=fPB5(TB5)]。即ち、まず、係合側摩擦係合要素が分担するトルクTB4が[TB4=AB4+PB4+BB4]にて算出され(AB4;有効半径×ピストン=面積×枚数×摩擦係数、BB4;ピストンストローク圧)、更にこれにより、解放側摩擦係合要素が分担するトルクTB5’が、[TB5’=(1/b)TT−(a/b)TB4]にて算出される。なお、ここで、bは解放側のトルク分担、aは係合側のトルク分担、TTは入力軸トルクである。そして、余裕率(タイアップ度合)S1U,S2Uにより、係合側摩擦係合要素とのタイアップ度合を、ドライブフィーリングを考慮して設定し、解放側トルクTB5が[TB5=S1U×TB5’+S2U]にて算出される。上記余裕率S1U,S2Uは、油温の相違により選択される多数のスロットル開度・車速マップ(不図示)にて、ドライバのフィーリングに合うように任意に設定されるものであって、一般に、S1U>1.0、S2U>0.0からなる。更に、該余裕率を考慮した解放側トルクTB5から、解放側油圧PB5が、[PB5=(TB5/AB5)+BB5]にて算定される(AB5;解放側摩擦係合要素の有効半径×ピストン面積×枚数×摩擦係数,BB5;解放側ピストンストローク圧)。
上述のようにして算出された解放側油圧PB5によるスイープダウンは、係合側油圧PB4に依存するものであるため、入力軸回転数が変化を始めるイナーシャ相開始時(tTA)にて屈曲する2段の勾配、即ち係合側の第1のスイープアップに対応する比較的急勾配のスイープダウンと、係合側の第2のスイープアップに対応する比較的緩勾配のスイープダウンからなる。
そして、該スイープダウンは、詳しくは後述する係合側と同様に、入力軸回転変化量ΔNが、所定回転変化開始判定回転数dNSになるまで続く(時点t8)。ついで、解放油圧の変化δPEが設定され、該油圧変化による勾配でスイープダウンし、該スイープダウンは、解放側油圧PB5が0になるまで続き、これにより、解放側の油圧制御が完了する。
また一方、係合側の制御として、エンジンからのトルクコンバータ4を介して入力される入力トルクTTに応じて変化する所定関数[PTA=fPTA(TT)]に基づき、入力回転数NINの回転変化が開始する直前(イナーシャ相の開始直前)の係合開始圧PTAを算定する。該イナーシャ相開始時直前の係合開始圧PTAは、まず入力トルクTTに対する係合側トルク分担トルクTB4(=1/a・TT;a:トルク分担率)が算定され、更にPTA=(TB4/AB4)+BB4+dPTA[BB4;ピストンストローク圧(=スプリング荷重)、AB4;摩擦板有効半径×ピストン面積×摩擦板枚数×摩擦係数、dPTA;油圧の遅れ分の油圧量]にて該目標係合開始圧PTAが算出される。
また、ここで、算出された目標係合開始油圧PTAに、詳しくは後述する学習制御手段26により学習された学習値(常温用学習値PTAA、第1低温用学習値PTAB、第1低温用学習値PTAC、或いは常温用学習値PTAA及び第2低温用学習値PTAB’、常温用学習値PTAA及び第2低温用学習値PTAC’)が加算され、最終的な目標係合開始圧PTAが算出される。
そして、該入力トルクTTに応じて算定されたイナーシャ相開始時直前の係合開始圧PTAに基づき、予め設定された所定時間tTAにより所定勾配が算定され[(PTA−PS2)/tTA]、該勾配に基づき係合側油圧がスイープアップする(時点t5〜t7)。該比較的ゆるやかな勾配からなる第1のスイープアップにより、係合トルクが増加し、入力回転数変化が開始する直前の状態、即ち前記算出された所定目標係合開始圧PTAまで油圧が上昇する。この状態は、アップシフト前の状態にあって、出力軸トルクが一時的に急降下するトルク相になる。
なお、入力トルクTT(=タービントルク)は、車輌走行状況に基づき、不図示のマップによりスロットル開度とエンジン回転数に基づき線形補間してエンジントルクを求め、ついで変速装置の入出力回転数から速度比を計算し、該速度比によりマップによりトルク比を求め、そして前記エンジントルクに上記トルク比を乗じて求められる。
そして、上記目標係合開始圧PTAに達すると、即ち入力軸回転数の回転変化が開始されるイナーシャ相に入ったと予測される時点t7で、前記油圧の変化δPTAが入力軸回転数NINの回転変化開始時における目標とする目標回転変化率(dωa/dt;ωa′と表記)に応じた関数[δPTA=fδPTA(ωa′)]により算出される。即ち、kを定数、taimを目標変速開始時間、ωa′を目標回転変化率[ωa;目標回転数への勾配]、Iをイナーシャ量とすると、前記油圧変化δPTA=[I・ωa]/[k・taim]にて算定される。そして、該油圧変化δPTAによる勾配でスイープアップされる(時点t7〜t8)。該第2のスイープアップは、回転変化開始時の入力軸回転数NTSからの回転変化分ΔNが所定変速開始判定回転数dNSに達するまで続けられる(時点t8)。
ついで、回転変化分ΔNが所定変速開始判定回転数dNSに達すると、係合側油圧PB4は、バンドブレーキである第4のブレーキB−4のブレーキバンドの巻き込み加速分を考慮して、所定油圧PDWを下降させる(時点t8)。つづいて、係合側油圧変化δPIが、入力軸回転数センサ5の検出に基づく回転数の変化量ΔNにてフィードバック制御されて設定され、該δPIの勾配によりスイープアップされる(時点t8〜t9)。該δPIによるスイープアップは、変速完了までの回転変化量ΔNのα1[%]、例えば70[%]まで続けられる(S15)。即ち、NTSを変速開始時の入力軸回転数、ΔNを回転変化量、giを変速前ギヤ比、gi+1を変速後ギヤ比とすると、[(ΔN×100)/NTS(gi−gi+1)]がα1[%]になるまで続けられる。
更に、上記回転変化量のα1[%]を越えると、滑らかな入力軸回転数変化量ΔNに基づくフィードバック制御により異なる油圧変化δPLが設定され、該δPLの勾配によりスイープアップされる(時点t9〜t10)。該δPLは、一般にδPIより僅かにゆるい勾配となり、該スイープアップは、変速完了近傍までの回転数変化量のα2[%]、例えば90[%]まで続けられる。上記δPI及びδPLによるスイープアップ目標変速時間tIは、油温による異なる複数のスロットル開度・車速マップ(不図示)が選択され、該マップに基づき設定される。
そして、該目標変速時間tIが経過すると、変速終了の判断がなされると共に、該計時時間tFEが設定され(時点t10)、この状態はイナーシャ相が終了した状態と略々対応している。更に、比較的急な油圧変化δPFEが設定されて、該油圧変化により油圧が急激にスイープアップし(時点t10〜t11)、そして時点t10から、係合圧まで上昇するに充分な時間に設定されている所定時間tFEが経過した状態で、係合側の油圧制御が完了し、つまり2−3アップシフト変速が完了する。
つづいて、本発明の要部である学習制御について図4の学習制御のフローチャート、図5の油温状態別の学習値の表、図6の学習値の反映パターンの説明図に沿って説明する。
図4に示すように、例えば上述したような2−3アップシフト変速が完了すると(S1)、まず、初期学習完了判定手段25により初期学習完了の判定がなされているか否かを判定する(S2)。なお、この初期学習完了の判定については、後述のステップS9において詳細説明する。
ここで、例えば車両が製造直後等であって、初期学習が完了していない場合には(S2のNo)、ステップS6に進み、油温センサ31の検出結果、及び油温状態判別手段24の判別結果に基づき、上記2−3アップシフト変速が図5(a)の表の横軸で示す何れの温度状態であったか判別する。例えば油温がTemp4〜Temp5の間であって、油温状態の判別結果が高低温状態Cold−Highであった場合は、ステップS10に進み、個別学習手段28が、上述の待機圧PS2及び係合開始圧PTAに対する第1低温用学習値PS2B,PTABの演算を開始する。
この待機圧PS2に対する第1低温用学習値PS2Bの演算にあっては、変速状況検知手段22によって検知された変速の状況、即ち、入力軸回転数センサ32により検出される入力回転数NINの変化開始までの時間が変速計時手段23によって計時されることによって演算される。変速開始までの時間経過が最良のタイミングより長い場合は待機圧PS2が足りないために遅れを生じているので、第1低温用学習値PS2Bを変速開始までの時間経過に応じて増加させるように演算し、変速開始までの時間経過が最良のタイミングより短い場合は待機圧PS2が高すぎるために変速開始が早くなり過ぎているので、第1低温用学習値PS2Bを変速開始までの時間経過に応じて減少させるように演算する。なお、この第1低温用学習値PS2Bは、修正限度幅が±rに設定されており、第1低温用学習値PS2Cの修正限度幅±sよりも大きい幅で、常温用学習値PS2Aの修正限度幅±qよりも小さい幅(即ちq>r>s)に設定されている。
また、係合開始圧PTAに対する第1低温用学習値PTABの演算にあっては、変速状況検知手段22によって検知された変速の状況、即ち、入力軸回転数センサ32により検出される入力回転数NINの変化によって、エンジン吹き、又はタイアップを生じている状況を検知したことに基づき演算される。エンジン吹きが生じた場合は、係合開始圧PTAが足りないために第4のブレーキB−4の係合(入力軸3の負荷)が遅れているので、そのエンジン吹き量に応じて第1低温用学習値PTABを増加させるように演算し、タイアップが生じた場合には、係合開始圧PTAが高すぎるために第4のブレーキB−4の係合(入力軸3の負荷)が早くなり過ぎているので、そのタイアップ量に応じて第1低温用学習値PTABを減少させるように演算する。なお、この第1低温用学習値PTABは、修正限度幅が±uに設定されており、第1低温用学習値PS2Cの修正限度幅±vよりも大きい幅で、常温用学習値PS2Aの修正限度幅±tよりも小さい幅(即ちt>u>v)に設定されている。
なお、これら待機圧PS2に対する学習値の演算や係合開始圧PTAに対する学習値の演算は、常温用学習値PS2A,PTAA、第1低温用学習値PS2C,PTAC、第2低温用学習値PS2B’,PTAB’、第2低温用学習値PS2C’,PTAC’においても同様な演算となるので、以降それらの演算の説明を省略する。
このように個別学習手段28によって第1低温用学習値PS2B,PTABの演算が行われた後は、この演算結果に基づき変化量PS2ΔB,PTAΔBが前回の記録されている第1低温用学習値PS2B,PTABに加減演算される形で、新たな第1低温用学習値PS2B,PTABとして不揮発性メモリ等に記録され、ステップS11に進む。
また、上記ステップS6において、例えば油温がTemp3〜Temp4の間であって、油温状態の判別結果が中低温状態Cold−Midであった場合も、同様にステップS10に進み、個別学習手段28が、上述の待機圧PS2及び係合開始圧PTAに対する第1低温用学習値PS2C,PTACの演算を修正幅±s,±vを限度として行い、同様に不揮発性メモリ等に記録し、ステップS11に進む。
一方、上記ステップS6において、例えば油温がTemp5〜Temp6の間であって、油温状態の判別結果が常温状態Normalであった場合は、ステップS7に進み、個別学習手段28が、上述の待機圧PS2及び係合開始圧PTAに対する常温用学習値PS2A,PTAAの演算を修正幅±q,±tを限度として行って、不揮発性メモリ等に記録した後、ステップS8に進み、学習反映手段29による学習反映制御を行う。
なお、この学習された常温用学習値PS2A,PTAAの値が第1低温用学習値PS2C,PTACの修正幅±s,±v、或いは第1低温用学習値PS2B,PTABの修正幅±r,±uを越えた場合は、これら修正幅±s,±v,±r,±uを常温用学習値PS2A,PTAAの値に拡大する再設定を行う。
上記学習反映制御は、低温状態の変速に比して信頼性の高い常温状態の変速に基づき演算された常温用学習値PS2A,PTAAを、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに反映するための制御であり、図6(a)に示すような12個の反映パターンによって該反映が行われる。なお、この図6におけるパターンの説明にあっては、紙面の都合上、常温用学習値PS2A,PTAAを「A」、第1低温用学習値PS2B,PTABを「B」、第1低温用学習値PS2C,PTACを「C」、変化量PS2ΔA,PTAΔAを「ΔA」、として省略して示している。
即ち、パターンAにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより小さく、かつ演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAの増加量が少なくて、学習後の常温用学習値PS2A,PTAAも第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより小さい場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに修正を加えず、つまり何ら常温状態の変速の学習を低温状態の変速の学習に反映しない。
パターンBにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより小さいが、演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが増加され、学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより大きくなった場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに学習後の常温用学習値PS2A,PTAAの値を反映し、つまり第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACと学習後の常温用学習値PS2A,PTAAとを同じにする。
パターンCにあっては、例えば低温状態の変速が数回行われて第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACが個別学習手段28により個別に小さい値に学習された後、常温状態の変速が行われた状態などであって、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより大きく、更に演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが増加された学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより大きいままの場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに学習後の常温用学習値PS2A,PTAAの値を反映し、つまり第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAを加算する。
パターンDにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより小さく、かつ演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが減少されて、学習後の常温用学習値PS2A,PTAAも第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより小さいままの場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに修正を加えず、つまり何ら常温状態の変速の学習を低温状態の変速の学習に反映しない。
パターンEにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより大きく、かつ演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが減少された学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより大きいままの場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに学習後の常温用学習値PS2A,PTAAの値を反映し、つまり第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAを減算する。
パターンFにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより大きく、かつ演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが減少された学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより小さくなった場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに学習後の常温用学習値PS2A,PTAAの値を反映し、つまり第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAを減算する。
パターンGにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより小さいが、演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが減少された学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより小さくなると共に正負逆となった場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに学習後の常温用学習値PS2A,PTAAの値を反映し、つまり第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAを減算する。
パターンHにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより大きいが、演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが大幅に減少された学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACより小さくなると共に正負逆となった場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに学習後の常温用学習値PS2A,PTAAの値を反映し、つまり第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAを減算する。
パターンIにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACと正負逆であり、演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが増加され、学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACと正負逆のままであると共に値が近づいた場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに修正を加えず、つまり何ら常温状態の変速の学習を低温状態の変速の学習に反映しない。
パターンJにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACと正負逆であり、演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが増加され、学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACと正負が同じになると共に値が近づいた場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに修正を加えず、つまり何ら常温状態の変速の学習を低温状態の変速の学習に反映しない。
パターンKにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACと正負逆であり、演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが大幅に増加され、学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACと正負が同じになると共に大きくなった(値が遠ざかった)場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに学習後の常温用学習値PS2A,PTAAの値を反映し、つまり第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACと学習後の常温用学習値PS2A,PTAAとを同じにする。
パターンLにあっては、学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACと正負逆であり、演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAが更に減少され、学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACと正負逆のままに小さくなった(値が遠ざかった)場合であり、この際は、第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに学習後の常温用学習値PS2A,PTAAの値を反映し、つまり第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACに演算された変化量PS2ΔA,PTAΔAを減算する。
なお、上記12個のパターンは、第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACが正の値である場合であり、正負を逆転した同じパターンが12個あり、つまり反映のパターンは全24個のパターンがあるが、上記パターンA〜Lと同様であるので、その説明を省略する。
以上の反映パターンを大まかに大別すると、
(1)学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACよりも大きい際に(パターンC,E,F,H)、該常温用学習値PS2A,PTAAにおける学習前と学習後との変化量PS2ΔA,PTAΔAを該第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACに反映。
(2)学習前の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACよりも小さく、かつ学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACよりも大きい際に(パターンB,K)、学習後の常温用学習値PS2A,PTAAを該第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACにそのまま反映。
(3)学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACと正負逆の値で、かつ学習後の常温用学習値PS2A,PTAAが第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACよりも遠ざかる際に(パターンG,H,L)、該常温用学習値PS2A,PTAAにおける学習前と学習後との変化量PS2ΔA,PTAΔAを第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACに反映。
(4)上記(1)〜(3)に該当しない際は、反映無し。
の4つに分けることができる。
これにより、個別学習手段28により個別に学習された第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACを大幅に変更することなく、常温用学習値PS2A,PTAAの学習結果を第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACに反映させることができ、つまり常温状態の変速の学習によって低温状態の変速の学習も進行させることができる。
なお、上述したように、常温用学習値PS2A,PTAAの値が第1低温用学習値PS2C,PTACの修正幅±s,±v、或いは第1低温用学習値PS2B,PTABの修正幅±r,±uを越えた場合は、これら修正幅±s,±v,±r,±uが常温用学習値PS2A,PTAAの値に対応して拡大する再設定がなされるので、上述の学習値同士の反映が必ず行われる状態となる。
つづいて、図4に示すように、上記ステップS8の学習反映制御が終了すると、ステップS9に進み、初期学習完了判定手段25による初期学習完了判定制御が開始される。この初期学習完了判定制御においては、初期学習完了の判定がなされていない常温状態の変速の学習(S7)にて、例えば所定回数連続して学習に変化がないか否か(つまり良好な常温状態の変速が所定回数連続したか否か)を判定する。例えば常温状態の変速の学習(S7)にて、初期学習完了が判定されず、つまり学習に変化があった場合は、後述する初期学習完了の判定まで何もせず、ステップS11にそのまま進む。
なお、以上の説明において、初期学習完了が判定される前の個別学習手段28による個別学習について(ステップS7、S10)説明したが、ステップS6において、変速状態判別手段24が中低温状態Cold−Mid、高低温状態Cold−High、常温状態Normal以外の状態を判別した場合、即ち、最低低温状態Cold−Low1、低低温状態Cold−Low2、高温状態Hotを判別した場合は、油の粘性に起因して学習の信頼性に欠けるので、そのままステップS11に進み、つまり常温用学習値PS2A,PTAA、第1低温用学習値PS2B,PTAB、及び第1低温用学習値PS2C,PTACは、何ら学習しない。
以上のように個別学習手段28による常温用学習値PS2A,PTAA、第1低温用学習値PS2B,PTAB、及び第1低温用学習値PS2C,PTACがそれぞれ学習されている状態で、変速制御手段21により次回の2−3アップシフト変速が判断され、該変速が開始されると(S11)、ここでは、初期学習完了判定手段25による初期学習完了の判定がなされてないので(S12のNo)、ステップS16に進み、油温状態判別手段24により図5(a)に示す何れの温度状態であるかを判別し、常温以上であれば(即ちTemp5以上であれば)、ステップS17に進み、低温以下であれば(即ちTemp5未満)、ステップS18に進む。
温度状態が常温以上にあって、ステップS17においては、図5(a)に示すように、常温状態Normal、高温状態Hotのどちらであっても、変速制御手段21が不揮発性メモリより常温用学習値PS2A,PTAAを読み出し(即ち学習値・展開する学習値(1))、上述の油圧制御(図7参照)における待機圧PS2と係合開始圧PTAとに常温用学習値PS2A,PTAAを加算した油圧指令値に基づき、係合側油圧PB4を油圧制御する。また、この変速が常温状態Normalの変速であれば、この際の変速状況が変速状況検知手段22により検知され、上記ステップS7において再度常温用学習値PS2A,PTAAが学習される。なお、「展開する学習値」とは、ステップS7で学習されず、専ら油圧指令値に用いられる場合を指す。
一方、温度状態が低温以下にあって、ステップS18においては、高低温状態Cold−Highであれば、変速制御手段21が不揮発性メモリより第1低温用学習値PS2B,PTABを読み出し、また、最低低温状態Cold−Low1、低低温状態Cold−Low2、中低温状態Cold−Midであれば、変速制御手段21が不揮発性メモリより第1低温用学習値PS2C,PTACを読み出し(即ち学習値・展開する学習値(1))、上述の油圧制御(図7参照)における待機圧PS2と係合開始圧PTAとに第1低温用学習値PS2B,PTAB又は第1低温用学習値PS2C,PTACを加算した油圧指令値に基づき、係合側油圧PB4を油圧制御する。また、この変速が中低温状態Cold−Midの変速であれば、この際の変速状況が変速状況検知手段22により検知され、上記ステップS10において再度第1低温用学習値PS2C,PTACが学習され、この変速が高低温状態Cold−Highの変速であれば、この際の変速状況が変速状況検知手段22により検知され、上記ステップS10において再度第1低温用学習値PS2B,PTABが学習される。
以上のように、初期学習完了の判定がなされる前の制御が行われている際に、上記ステップS9において、初期学習完了判定手段25により初期学習の完了が判定されると、不図示の不揮発性メモリに初期学習の完了が記録され、その後は、ステップS2及びステップS12において初期学習完了が判定されるようになって、つまり上述した個別学習手段28による個別学習が終了することになる。また、初期学習の完了が判定された際、学習制御手段26は、図6(b)に示すように、その時点の第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACを、常温用学習値PS2A,PTAAと第2低温用学習値PS2B’,PTAB’及び第2低温用学習値PS2C’,PTAC’とに割り当て演算し、常温用学習値PS2A,PTAAと第2低温用学習値PS2B’,PTAB’及び第2低温用学習値PS2C’,PTAC’とが加算された値が第1低温用学習値PS2B,PTAB及び第1低温用学習値PS2C,PTACと同じ値になるようにする。
このように初期学習完了の判定がなされ、第2低温用学習値PS2B’,PTAB’及び第2低温用学習値PS2C’,PTAC’が設定された後は、2−3アップシフト変速が完了すると(S1)、初期学習が完了しているので(S2のYes)、ステップS3に進み、油温状態判別手段24の判別結果に基づき、上記2−3アップシフト変速が常温状態Normalであった場合は、ステップS4に進み、常温ベース学習手段28が、上記ステップS7と同様に、図5(a)に示すような常温用学習値PS2A,PTAAの学習を個別学習から継続した形で行う。
また一方、油温状態判別手段24の判別結果に基づき、上記2−3アップシフト変速が高低温状態Cold−High、又は中低温状態Cold−Midであった場合は、ステップS5に進み、常温ベース学習手段28が、図5(a)に示すように、常温用学習値PS2A,PTAAをベースとして、該常温用学習値PS2A,PTAAを補正した学習値とするための第2低温用学習値PS2B’,PTAB’又は第2低温用学習値PS2C’,PTAC’の学習を行う。この第2低温用学習値PS2B’,PTAB’と第2低温用学習値PS2C’,PTAC’との修正幅は、それぞれ順に±w,±y,±x,±z(±w>±x,±y>±z)に設定されており、常温用学習値PS2A,PTAAの修正幅±q,±tよりも大幅に小さい幅に設定されている。このため、この常温ベース学習手段28による低温状態の変速の学習によって、第2低温用学習値PS2B’,PTAB’又は第2低温用学習値PS2C’,PTAC’が大きくなり過ぎて、低温状態の変速における変速制御の信頼性を低下させてしまうことが防止され、低温状態の変速にあっても常温用学習値PS2A,PTAAをベースとした信頼性の高い変速制御を行うことを可能としている。
以上のように常温ベース学習手段27による常温用学習値PS2A,PTAA、第2低温用学習値PS2B’,PTAB’、及び第2低温用学習値PS2C’,PTAC’がそれぞれ学習されている状態で、変速制御手段21により次回の2−3アップシフト変速が判断され、該変速が開始されると(S11)、既に初期学習完了判定手段25による初期学習完了の判定がなされているので(S12のYes)、ステップS13に進み、油温状態判別手段24により図5(a)に示す何れの温度状態であるかを判別し、常温以上であれば(即ちTemp5以上であれば)、ステップS14に進み、低温以下であれば(即ちTemp5未満)、ステップS15に進む。
温度状態が常温以上にあって、ステップS14においては、図5(a)に示すように、常温状態Normal、高温状態Hotのどちらであっても、変速制御手段21が不揮発性メモリより常温用学習値PS2A,PTAAを読み出し(即ち学習値・展開する学習値(1))、同様に、上述の油圧制御(図7参照)における待機圧PS2と係合開始圧PTAとに常温用学習値PS2A,PTAAを加算した油圧指令値に基づき、係合側油圧PB4を油圧制御する。また、この変速が常温状態Normalの変速であれば、この際の変速状況が変速状況検知手段22により検知され、上記ステップS4において再度常温用学習値PS2A,PTAAが学習される。
また、温度状態が低温以下にあって、ステップS15においては、高低温状態Cold−Highであれば、変速制御手段21が不揮発性メモリより常温用学習値PS2A,PTAAと第2低温用学習値PS2B’,PTAB’とを読み出し(即ち学習値・展開する学習値(1))、また、最低低温状態Cold−Low1、低低温状態Cold−Low2、中低温状態Cold−Midであれば、変速制御手段21が不揮発性メモリより常温用学習値PS2A,PTAAと第2低温用学習値PS2C’,PTAC’とを読み出し(即ち学習値・展開する学習値(1)・展開する学習値(2))、上述の油圧制御(図7参照)における待機圧PS2と係合開始圧PTAとに常温用学習値PS2A,PTAA及び第2低温用学習値PS2B’,PTAB’、又は常温用学習値PS2A,PTAA及び第2低温用学習値PS2C’,PTAC’を加算した油圧指令値に基づき、係合側油圧PB4を油圧制御する。
また、この変速が中低温状態Cold−Midの変速であれば、この際の変速状況が変速状況検知手段22により検知され、上記ステップS5において再度第2低温用学習値PS2C’,PTAC’が学習され、この変速が高低温状態Cold−Highの変速であれば、この際の変速状況が変速状況検知手段22により検知され、上記ステップS5において再度第2低温用学習値PS2B’,PTAB’が学習される。
以上説明したように本自動変速機の変速制御装置1によると、初期学習完了判定手段25により初期学習完了が判定されるまでは、個別学習手段28が、油温状態判別手段24による判別結果に基づき、常温状態Normalの変速と低温状態Cold−High,Cold−Midの変速とで、それぞれ常温用学習値PS2A,PTAAと第1低温用学習値PS2B,PTAB,PS2C,PTACとを個別に学習し、初期学習完了判定手段25により初期学習完了が判定された後は、常温ベース学習手段27が、常温状態Normalの変速において、常温用学習値PS2A,PTAAの学習を継続し、かつ低温状態Cold−High,Cold−Midの変速において、第2低温用学習値PS2B’,PTAB’,PS2C’,PTAC’を学習するので、低温状態Cold−High,Cold−Midばかりで走行する場合であっても、第1低温用学習値PS2B,PTAB,PS2C,PTACが個別に学習されて、低温状態Cold−High,Cold−Midの変速におけるシフトクォリティを向上することができるものでありながら、初期学習が完了した場合には、常温及び低温状態の双方の変速で、信頼性の高い変速制御を行うことを可能とすることができる。
また、初期学習完了判定手段25は、常温状態Normalの変速において、所定回数連続して変速状態検知手段22の検知結果に基づく個別学習手段28の常温用学習値PS2A,PTAAの学習に変化がない場合に、初期学習完了を判定するので、常温用学習値PS2A,PTAAの学習が充分に進行した後に、初期学習の完了を判定することができる。これにより、初期学習が完了した後に、常温及び低温状態の双方の変速で、信頼性の高い変速制御を行うことを可能とすることができる。
更に、常温ベース学習手段27は、常温用学習値PS2A,PTAAの修正限度幅±q,±tよりも第2低温用学習値PS2B’,PTAB’,PS2C’,PTAC’の修正限度幅±w,±y,±x,±zを小さく設定するので、油の粘性が高くてバラツキの多い低温状態Cold−High,Cold−Midの変速によって第2低温用学習値PS2B’,PTAB’,PS2C’,PTAC’が大きくなり過ぎて、低温状態の変速における変速制御の信頼性を低下させてしまうことを防ぐことができ、低温状態の変速にあっても常温用学習値PS2A,PTAAに基づく信頼性の高い変速制御を行うことを可能とすることができる。
また、油温状態判別手段24は、油温センサ31により検出される油温が閾値Temp5以上である際に常温状態Normalの変速を判別し、油温が閾値Temp5未満である際に低温状態Cold−High,Cold−Midの変速を判別するので、つまり常温状態Normalの変速と低温状態Cold−High,Cold−Midの変速とを油温に基づき判別することができる。
更に、油温状態判別手段24は、低温状態の変速を、油温が閾値Temp4以上である際の低温状態Cold−Highの変速と、油温が閾値Temp4未満である際の低温状態Cold−Midの変速とに区別して判別し、個別学習手段28は、初期学習完了判定手段25により初期学習完了が判定されるまで、油温状態判別手段24による判別結果に基づき、低温状態Cold−Highの変速と低温状態Cold−Midの変速とでそれぞれ第1低温用学習値PS2B,PTABと第1低温用学習値PS2C,PTACとを個別に学習し、常温ベース学習手段27は、初期学習完了判定手段25により初期学習完了が判定された後、低温状態Cold−Highの変速にて、常温用学習値PS2A,PTAAを補正するための第2低温用学習値PS2B’,PTAB’を学習し、第2低温状態Cold−Midの変速にて、常温用学習値PS2A,PTAAを補正するための第2低温用学習値PS2C’,PTAC’を学習するので、低温状態の変速におけるシフトクォリティをより細やかに向上することができる。
また、学習制御手段26は、初期学習完了判定手段25により初期学習完了を判定した際に、個別学習手段28により個別に学習された常温用学習値PS2A,PTAAと第1低温用学習値PS2B,PTAB,PS2C,PTACとに基づき、第2低温用学習値PS2B’,PTAB’,PS2C’,PTAC’を演算・取得するので、個別学習手段28により学習された第1低温用学習値PS2B,PTAB,PS2C,PTACの学習結果を、常温ベース学習手段27により学習されることになる第2低温用学習値PS2B’,PTAB’,PS2C’,PTAC’に引き継がせることができる。
また、変速状況検知手段24は、変速時における入力軸3の回転数NINの変化に基づき変速状況を検知するので、学習制御手段26は、エンジン吹きやタイアップ、変速ショック等を考慮した変速状況に基づき、学習値の学習を行うことができる。
更に、変速状況検知手段22は、変速計時手段23の計時結果に基づき変速状況を検知するので、学習制御手段26は、変速における各種の時間経過を考慮した変速状況に基づき、学習値の学習を行うことができる。
また、学習制御手段26が学習する油圧指令値PB4を補正するための学習値は、第4のブレーキB−4の係合を行う前の待機圧PS2に対する学習値であるので、変速(係合)ショックや変速時間の遅延等を防ぐための学習を行うことができる。
更に、学習制御手段26が学習する油圧指令値PB4を補正するための学習値は、第4のブレーキB−4の係合を開始する係合開始圧PTAに対する学習値であるので、エンジン吹きやタイアップ等を防ぐための学習を行うことができる。
また、第4のブレーキB−4は、バンドブレーキからなるので、係合開始圧PTAの学習が充分でないと、ブレーキバンドの巻き込みに起因する係合ショックを生じやすいが、低温状態ばかりで走行する場合であっても、低温状態の変速における学習を行うことができ、かつ初期学習が完了した場合には、常温状態の変速における学習をベースとした信頼性の高い学習を行うことができ、更に、一方の学習値の学習結果によって、常温及び低温状態の双方の変速で、信頼性の高い変速制御を行うことを可能とすることができるので、係合ショック発生の防止を図ることができる。
また、学習を行う変速は、パワーオンアップシフト変速であるので、クラッチやブレーキの掴み換え変速における係合側のクラッチ又はブレーキの油圧制御を高精度に行うことを可能としている。
なお、以上説明した本発明に係る実施の形態においては、例えば前進5速段・後進1速段を達成するFFタイプの自動変速機20に変速制御装置1を適用した一例を説明したが、これに限らず、どのような自動変速機に本変速制御装置1を適用してもよいことは勿論である。
また、本実施の形態においては、2−3アップシフト変速を一例とし、係合側油圧として第4のブレーキB−4の油圧サーボに供給する油圧指令値PB4を一例とした説明を行ったが、これに限るものではなく、特に摩擦係合要素同士の掴み換えを行う変速であればどのような種類の変速(例えばパワーオフ変速、ダウンシフト変速等)であってもよく、また、どのような摩擦系業要素に対する油圧指令値であっても構わない。
更に、本実施の形態においては、待機圧と係合開始圧に対する学習を行うものを一例に説明したが、これらに限らず、ガタ詰めするための圧(PS1)等であってもよく、つまりどのような油圧指令の値に対する学習値であっても、本発明を適用することができる。
また、本実施の形態においては、常温状態Normalにあって学習値PS2A,PTAAを、高低温状態Cold−Highにあって学習値PS2B,PTAB及び学習値PS2B’,PTAB’を、中低温状態Cold−Midにあって学習値PS2C,PTAC及び学習値PS2C’,PTAC’を学習し、その他の温度状態Hot,Cold−Low2,Cold−Low1にあっては、それら学習値を展開する(読み出す)だけのものを説明したが(図5(a)参照)、これに限定されるものではなく、全ての温度状態において、個別に或いは常温をベースに学習を行ってもよく、また、例えば常温状態Normalと高低温状態Cold−Highの2つの温度状態だけで学習を行ってもよい。また、これらの温度状態の区別は6種類でなくてもよいことは勿論のことである。