JP3800180B2 - 車両用自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、摩擦係合装置の係合と解放とによって実行されるいわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速を制御するための制御装置に関し、特にトルク相における解放側の摩擦係合装置の油圧を制御するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近では、自動変速機の小型軽量化のために一方向クラッチを廃止し、それに伴って一方向クラッチに替わる摩擦係合装置を係合もしくは解放し、それと同時に他の摩擦係合装置を係合もしくは解放させることにより実行されるいわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速が行われるようになってきている。したがってこのクラッチ・ツウ・クラッチ変速における解放側の摩擦係合装置は、基本的には、一方向クラッチと同様に動作させる必要がある。すなわち解放側の摩擦係合装置は、トルク相において、係合側の摩擦係合装置が滑りながらトルクを伝達している状態で、その受け持つトルクが次第に低下し、係合側摩擦係合装置が所定以上のトルクを持ち始めることによって受け持つトルクが零になり、この時点で解放して回転変化を生じさせてイナーシャ相に移行する。
【0003】
したがってクラッチ・ツウ・クラッチ変速の際には、係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始めた時点や、それに伴って解放側の摩擦係合装置に作用するトルクが変化し始めたことを検出することが必要である。しかしながら、係合側の摩擦係合装置がトルク容量を持ち始めるのは、その油圧ピストンが前進端(ストロークエンド)に達した以降の時点があるが、油圧ピストンのストロークをセンサで検出することは、自動変速機の小型軽量化の要請から実用上困難である。またトルクセンサを自動変速機に内蔵することも、自動変速機の小型軽量化の要請から困難であり、したがって所定の摩擦係合装置のトルクの変化を直接検出することは、実際的ではない。
【0004】
そこで従来では、解放側の摩擦係合装置の油圧の調圧レベルを決める制御値として一定の値を変速信号の出力と同時もしくはその直後に出力し、その制御値で変速の制御を行った場合のタイアップ状態あるいはエンジンの吹き上がり(オーバーシュート)の状態を回転数変化などに基づいて検出し、その検出結果に基づいて摩擦係合装置の油圧の制御値を学習し、補正するようにしている。
【0005】
その一例が特開平6−341525号公報に記載されている。この公報に記載された発明では、クラッチ・ツウ・クラッチ変速に関与する一方の摩擦係合装置の油圧を制御する調圧バルブに、他方の摩擦係合装置の油圧を作用させるとともに、そのバルブによる調圧レベルをソレノイドバルブによって直接制御している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようにクラッチ・ツウ・クラッチ変速での解放側の摩擦係合装置は、トルクがかからなくなることによって直ちに解放するよう制御する必要がある。しかしながら、上記従来の装置のように、その解放側摩擦係合装置の油圧を制御する場合に係合側の摩擦係合装置の油圧を信号圧として作用させると、係合側摩擦係合装置のトルク容量に応じて解放側摩擦係合装置のトルク容量を変化させることができるものの、油温に基づく粘性の影響などによって解放側摩擦係合装置の油圧の制御精度が低下し、その結果、過剰な滑りによるエンジンのオーバーシュートやこれとは反対にタイアップによる変速ショックが生じる可能性がある。
【0007】
この発明は、上記の事情を背景としてなされたものであり、クラッチ・ツウ・クラッチ変速の際の解放側摩擦係合装置の油圧を適正に制御してエンジンのオーバーシュートや変速ショックを有効に防止することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、所定の摩擦係合装置の解放と他の摩擦係合装置の係合とによって達成されるクラッチ・ツウ・クラッチ変速の際に、解放側摩擦係合装置の油圧を制御する車両用自動変速機の制御装置において、前記解放側摩擦係合装置の滑りの発生を検出する滑り発生検出手段と、該滑り発生検出手段によって解放側摩擦係合装置の滑りが検出されると同時に、前記解放側摩擦係合装置の油圧を、実際に滑りが発生した時点の圧力に増大させる手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
したがって請求項1の発明によれば、解放側摩擦係合装置が滑り始めた場合、その滑りが検出されると同時に、実際に滑りが発生した時点の油圧に解放側摩擦係合装置の油圧が増大させられるので、滑り検出に遅れがあった場合であっても、解放側摩擦係合装置を良好な微少滑り状態に設定することができる。
【0012】
さらに請求項2に記載した発明は、所定の摩擦係合装置の解放と他の摩擦係合装置の係合とによって達成されるクラッチ・ツウ・クラッチ変速の際に、係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始めることに基づいて解放側摩擦係合装置の油圧を制御する車両用自動変速機の制御装置において、前記クラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行する前記解放側摩擦係合装置を、前記係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始める前に、前記車両用自動変速機の入力回転数が変速前の同期回転数から外れるように解放側に制御する手段と、前記クラッチ・ツウ・クラッチ変速によって回転数が変化する入力軸の回転状態を検出する回転検出手段と、前記解放側係合装置を解放側に制御している状態で前記回転検出手段で検出された入力軸回転数の変化率に基づいて前記係合側摩擦係合装置がイナーシャ相の開始前にトルク容量を持ち始めたことを判定する係合判定手段とを備え、前記係合判定手段によって前記係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始めたことが判定されたことに基づいて前記解放側摩擦係合装置の油圧を制御するように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
したがって請求項2の発明によれば、クラッチ・ツウ・クラッチ変速の場合、解放側摩擦係合装置の油圧の低下によって回転変化が生じ、さらに係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始めることによって、入力軸回転数にそれ以前とは異なる回転変化が生じるので、入力回転数の変化率が検出されるとともに、係合判定手段で係合側摩擦係合装置の実質的な係合の開始が判定され、したがって係合開始の判定を正確に行うことができる。
【0014】
そして請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した構成に加え、前記回転検出手段の検出結果に基づいてイナーシャ相の開始を判定するイナーシャ相判定手段と、前記係合判定手段によって係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始めた時点とイナーシャ相判定手段によって判定されたイナーシャ相の開始時点との時間間隔が予め定めた時間間隔となるよう解放側摩擦係合装置の油圧制御内容を変更する解放圧補正手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0015】
したがって請求項3の発明によれば、係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始める以前の所定の時点で解放側摩擦係合装置に滑りが生じるように正確に制御することが可能になり、その結果、過剰な滑りやタイアップをより効果的に防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体化した一例を説明する。まず、この発明で対象とするエンジンEおよび自動変速機Aの一例について説明すると、図7はその全体的な制御系統図であって、自動変速機Aを連結してあるエンジンEは、その出力を電気的に制御するように構成されており、サーボモータからなるスロットルアクチュエータ16によって駆動される電子スロットルバルブ13が吸気管路12に設けられている。一方、エンジンEの出力を制御するためのアクセルペダル15の踏み込み量すなわちアクセル開度は、図示しないセンサによって検出され、その検出信号がエンジン用電子制御装置(E−ECU)17に入力されている。この電子制御装置17は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、この電子制御装置17には、制御のためのデータとして、エンジン(E/G)回転数N、吸入空気量Q、吸入空気温度、スロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチからの信号などの各種の信号が入力されている。そしてこれらのデータに基づいて電子スロットルバルブ13の開度を制御し、またエンジンEの燃料噴射量および点火時期などを制御するようになっている。
【0017】
自動変速機Aは、油圧制御装置18によって変速およびロックアップクラッチやライン圧あるいは所定の摩擦係合装置の係合圧が制御される。その油圧制御装置18は、電気的に制御されるように構成されており、また変速を実行するための第1ないし第3のシフトソレノイドバルブS1 ,〜S3 、エンジンブレーキ状態を制御するための第4ソレノイドバルブS4 、ライン圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLT、アキュームレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLN、ロックアップクラッチや所定の摩擦係合装置の係合圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLUが設けられている。
【0018】
これらのソレノイドバルブに信号を出力して変速やライン圧あるいはアキュームレータ背圧などを制御する自動変速機用電子制御装置(T−ECU)19が設けられている。この自動変速機用電子制御装置19は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、この電子制御装置19には、制御のためのデータとしてスロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチからの信号、シフトポジション、パターンセレクトスイッチからの信号、オーバドライブスイッチからの信号、後述するクラッチC0 の回転速度を検出するC0 センサからの信号、自動変速機の油温、マニュアルシフトスイッチからの信号などが入力されている。
【0019】
またこの自動変速機用電子制御装置19とエンジン用電子制御装置17とは、相互にデータ通信可能に接続されており、エンジン用電子制御装置17から自動変速機用電子制御装置19に対しては、1回転当たりの吸入空気量(Q/N)などの信号が送信され、また自動変速機用電子制御装置19からエンジン用電子制御装置17に対しては、各ソレノイドバルブに対する指示信号と同等の信号および変速段を指示する信号などが送信されている。
【0020】
すなわち自動変速機用電子制御装置19は、入力されたデータおよび予め記憶しているマップに基づいて変速段やロックアップクラッチのON/OFF、あるいはライン圧や係合圧の調圧レベルなどを判断し、その判断結果に基づいて所定のソレノイドバルブに指示信号を出力し、さらにフェイルの判断やそれに基づく制御を行うようになっている。またエンジン用電子制御装置17は、入力されたデータに基づいて燃料噴射量や点火時期あるいは電子スロットルバルブ13の開度などを制御することに加え、自動変速機Aでの変速時に燃料噴射量を削減し、あるいは点火時期を変え、もしくは電子スロットルバルブ13の開度を絞ることにより、出力トルクを一時的に低下させるようになっている。
【0021】
図8は上記の自動変速機Aの歯車列の一例を示す図であり、ここに示す構成では、前進5段・後進1段の変速段を設定するように構成されている。すなわちここに示す自動変速機Aは、トルクコンバータ20と、副変速部21と、主変速部22とを備えている。そのトルクコンバータ20は、ロックアップクラッチ23を有しており、このロックアップクラッチ23は、ポンプインペラ24に一体化させてあるフロントカバー25とタービンランナ26を一体に取付けた部材(ハブ)27との間に設けられている。エンジンEのクランクシャフト(図示せず)はフロントカバー25に連結され、またタービンランナ26を連結してある入力軸28は、副変速部21を構成するオーバドライブ用遊星歯車機構29のキャリヤ30に連結されている。
【0022】
この遊星歯車機構29におけるキャリヤ30とサンギヤ31との間には、多板クラッチC0 と一方向クラッチF0 とが設けられている。なお、この一方向クラッチF0 はサンギヤ31がキャリヤ30に対して相対的に正回転(入力軸28の回転方向の回転)する場合に係合するようになっている。またサンギヤ31の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速部21の出力要素であるリングギヤ32が、主変速部22の入力要素である中間軸33に接続されている。さらにその多板クラッチC0 の回転数すなわち入力回転数を検出するためのNC0センサ34が設けられている。
【0023】
したがって副変速部21は、多板クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態では遊星歯車機構29の全体が一体となって回転するため、中間軸33が入力軸28と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0 を係合させてサンギヤ31の回転を止めた状態では、リングギヤ32が入力軸28に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0024】
他方、主変速部22は三組の遊星歯車機構40,50,60を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構40のサンギヤ41と第2遊星歯車機構50のサンギヤ51とが互いに一体的に連結され、また第1遊星歯車機構40のリングギヤ43と第2遊星歯車機構50のキャリヤ52と第3遊星歯車機構60のキャリヤ62との三者が連結され、かつそのキャリヤ62に出力軸65が連結されている。さらに第2遊星歯車機構50のリングギヤ53が第3遊星歯車機構60のサンギヤ61に連結されている。
【0025】
この主変速部22の歯車列では後進段と前進側の四つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されている第2遊星歯車機構50のリングギヤ53および第3遊星歯車機構60のサンギヤ61と中間軸33との間に第1クラッチC1 が設けられ、また互いに連結された第1遊星歯車機構40のサンギヤ41および第2遊星歯車機構50のサンギヤ51と中間軸33との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0026】
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構40および第2遊星歯車機構50のサンギヤ41,51の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ41,51(すなわち共通サンギヤ軸)とケーシング66との間には、第1一方向クラッチF1 と多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されており、その第1一方向クラッチF1 はサンギヤ41,51が逆回転(入力軸28の回転方向とは反対方向の回転)しようとする際に係合するようになっている。多板ブレーキである第3ブレーキB3 は第1遊星歯車機構40のキャリヤ42とケーシング66との間に設けられている。そして第3遊星歯車機構60のリングギヤ63の回転を止めるブレーキとして多板ブレーキである第4ブレーキB4 と第2一方向クラッチF2 とがケーシング66との間に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ63が逆回転しようとする際に係合するようになっている。
【0027】
上記の自動変速機Aでは、各クラッチやブレーキを図9の作動表に示すように係合・解放することにより前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図9において○印は係合状態、●印はエンジンブレーキ時に係合状態、△印は係合・解放のいずれでもよいこと、空欄は解放状態をそれぞれ示す。
【0028】
図9の作動表から知られるように上記の自動変速機の第2速と第3速との間の変速は、第2ブレーキB2 と第3ブレーキB3 との係合・解放状態を共に切り換えるクラッチ・ツウ・クラッチ変速となる。これらの摩擦係合装置のトルク容量は、変速の状態に応じて正確に制御する必要があるので、その変速のうち例えば第2速から第3速へのアップシフトの場合は、解放側の第3ブレーキB3 の油圧を調圧バルブによって制御し、かつその調圧バルブの調圧値をリニアソレノイドバルブによって直接制御することにより、第3ブレーキB3 の油圧を電気的に直接制御するようになっている。また第2ブレーキB2 の係合圧の上昇に伴って第3ブレーキB3 を次第に解放させる必要があるので、上記の調圧バルブには、第2ブレーキB2 の油圧が信号圧として入力されている。
【0029】
その調圧バルブの一例を図10に模式的に示してある。ここに示すバルブは、 B-3コントロールバルブと称される調圧バルブであって、二つのランドを備えたスプール70を挟んで二つのプランジャ71,72が同一軸線上に配置されている。図10での上側のプランジャ71の端部側には、リニアソレノイドバルブSLUの信号圧PSLU を作用させるための第1制御ポート73が形成され、また他方のプランジャ72の端部側には、第2ブレーキB2 の油圧PB2を作用させるための第2制御ポート74が形成されている。この第2ブレーキB2 の油圧PB2が作用するプランジャ72とスプール70との間にスプリング75が配置されている。
【0030】
またスプール70における二つのランドの間に開口した入力ポート76と出力ポート77とが形成されており、その入力ポート76には、前進第2速でDレンジ圧(ドライブ(D)レンジで出力される油圧)が入力されるようになっている。また出力ポート77は、ソレノイドリレーバルブ(図示せず)を介して第3ブレーキB3 に接続されている。
【0031】
さらにスプール70と図10での下側のプランジャ72との間に開口したフィードバックポート78が形成されており、このフィードバックポート78と出力ポート77とがオリフィス79を介して連通されている。さらに出力ポート77を挟んでフィードバックポート78とは反対側には、スプール70によって選択的に開閉されドレインポート80が形成されている。
【0032】
したがってこの B-3コントロールバルブは、第2ブレーキ圧PB2によるプランジャ72の押圧力がスプリング75の弾性力以下の状態では、リニアソレノイドバルブSLUによるプランジャ71の押圧力(信号圧PSLU とプランジャ71の受圧面積との積)からスプリング75の弾性力を減じた値を、フィードバック圧の受圧面積で除した圧力に、Dレンジ圧を調圧して第3ブレーキB3 に出力する。また第2ブレーキ圧PB2による押圧力がスプリング75の弾性力より大きい場合はに、リニアソレノイドバルブSLUによるプランジャ71の押圧力(信号圧PSLU とプランジャ71の受圧面積との積)から第2ブレーキ圧PB2による押圧力(第2ブレーキ圧PB2とプランジャ72の受圧面積との積)を減じた値を、フィードバック圧の受圧面積で除した圧力に、Dレンジ圧を調圧して第3ブレーキB3 に出力する。
【0033】
そして上記のスプリング75の弾性力は、第2ブレーキB2 がトルク容量を持ち始めるまで(すなわち第2ブレーキB2 を係合させるピストンがストロークエンドに達するまで)の間の第2ブレーキ圧PB2による押圧力以下に設定されている。その結果、第3ブレーキ圧PB3は、第2ブレーキB2 がトルク容量を持ち始めまでは、リニアソレノイドバルブSLUによって制御され、また第2ブレーキB2 がトルク容量を持ち始めた後は、リニアソレノイドバルブSLUおよび第2ブレーキ圧PB2によって制御されるようになっている。
【0034】
つぎに上述した自動変速機Aにおけるクラッチ・ツウ・クラッチ変速時の油圧の制御について説明する。図1は、第2速から第3速へのアップシフトの際の解放側摩擦係合装置である第3ブレーキB3 の油圧の制御例を説明するためのフローチャートであって、データの読み込みなどの入力信号の処理(ステップ1)を行った後に、油温が予め定めた基準温度THO以上か否かを判断し(ステップ2)、否定判断された場合には、リターンする。油温が低いことにより粘性が高い場合には、適正な制御ができないからである。なお、読み込まれるデータには、車速やスロットル開度、油温などが含まれる。
【0035】
ついで第2速から第3速へのアップシフトを判断し(ステップ3)、否定判断された場合にはリターンする。また肯定判断された場合には、所定時間T1 秒の経過を待って(ステップ4)、第3ブレーキB3 の解放圧を制御するリニアソレノイドバルブSLUのデューティ比DSLU を所定の値DSOに低下させる(ステップ5)。この値DS0は、マップ値DS01 と学習値DS02 とからなるものであり、そのマップ値DS01 は、スロットル開度θと油温TOLとをパラメータとして設定され、その一般的傾向を図2に概念的に示してある。なお、学習値については後述する。
【0036】
そしてデューティ比DSLU を所定の勾配DDS1 で低下させる(ステップ6)。その制御時間TA が予め設定した時間T2 に至った場合(ステップ7で肯定判断された場合)、デューティ比の低下勾配を前記の勾配より小さい値DDS2 に設定する(ステップ8)。その制御時間TB が予め設定した時間T3 に至った場合(ステップ9で肯定判断された場合)、デューティ比の低下勾配を前記の勾配より小さい値DDS3 に設定する(ステップ10)。
【0037】
ここでこれらの勾配DDS1 ,DDS2 ,DDS3 およびその継続時間T2 ,T3 は、それぞれ個別に予め用意してあるマップ値を採用することができる。またそれらのマップ値は、例えば上記のデューティ比の初期設定値と同様に、スロットル開度θと油温TOLをパラメータとして設定でき、その一般的傾向は、図2に示すマップ値DS01 と同様に、スロットル開度θが大きいほど、また油温TOLが高いほど小さい値に設定する。
【0038】
上記の各勾配での制御中、すなわちステップ7で否定判断された場合、およびステップ9で否定判断された場合、ならびにステップ10の制御を実行した場合に、第3ブレーキB3 の滑りの発生を判断する(ステップ11)。このステップ11は、この発明における滑り検出手段もしくは滑り発生検出手段に相当する。この第3ブレーキB3 の滑り判断は、必要に応じて種々の方法で判断することができ、例えば入力回転数NC0が第2速の同期回転数より上昇し、その上昇値が予め設定したしきい値を越えることによって判断することができる。
【0039】
ステップ11で否定判断された場合にはリターンし、また肯定判断された場合には、ステップ12に進んでリニアソレノイドバルブSLUのデューティ比を、第3ブレーキB3 の滑りが始まった時点のデューティ比まで戻す(ステップアップさせる)。このステップ12がこの発明で解放側摩擦係合装置の油圧を滑りが検出された時点より以前の圧力に増大させる手段に相当する。すなわち第3ブレーキB3 の滑りは、滑りに伴う回転変化が所定のしきい値を越えることによって判断され、また不可避的な制御の遅れなどがあるので、実際に滑りが生じた時点と滑りが判断された時点との間に時間差があり、これを是正するためである。なお、そのステップアップ値DS1は、滑りが判断された時点のデューティ比の勾配および予め設定したマップ値とに基づいて算出され、決定される。
【0040】
したがって解放側の摩擦係合装置である第3ブレーキB3 は、トルク容量がほぼ零で極わずか滑っている状態に設定される。この状態で係合側の摩擦係合装置である第2ブレーキB2 の油圧ピストン(図示せず)がストロークエンドに達し、第2ブレーキB2 がトルク容量を持ち始めると、第3ブレーキB3 が滑ることにより上昇していた入力回転数NC0が次第に低下し始める。
【0041】
その場合、第3ブレーキB3 のトルク容量は、実質的にほぼ零であるから、第2ブレーキB2 がトルク容量を持ち始めることによって第1遊星歯車機構40のキャリヤ42に従前とは反対方向にトルクが作用し始めると、キャリヤ42がそのトルク方向に回転し始める。これは、一方向クラッチがトルクの作用方向の変更に伴って解放するのとほぼ同様な状況であり、したがってタイアップやそれに伴うショックなどは生じない。
【0042】
そしてその回転数が変速前の変速段である第2速の回転数よりも低下すると、イナーシャ相の開始が判断され、これと同時に第3ブレーキB3 の油圧が大きく低下させられ、実質的に解放状態とされる。それ以降は、第2ブレーキB2 の油圧が次第に昇圧され、最終的には、入力回転数が第3速の同期回転数に達するとともに、第2ブレーキB2 の油圧がライン圧にまで高められ、また第3ブレーキB3 が完全に解放される。このイナーシャ相開始以降の制御は、従来知られているものと特に変わるところはない。
【0043】
上述したように第3ブレーキB3 の解放圧は、理想的には、第2ブレーキB2 がトルク容量を持ち始めた時点で零になるよう制御することが好ましい。そのためには、第2ブレーキB2 の油圧ピストンがそのストロークエンドに達して第2ブレーキB2 がトルク容量を持ち始める時点を検出し、その検出結果に基づいて第3ブレーキB3 の解放圧の制御内容を変更することが好ましい。その制御の一例を以下に説明する。
【0044】
図3において、先ず、油温が予め設定した基準温度THO以上か否かを判断し(ステップ21)、油温がその基準温度THOより低い場合には、特に制御を行うことなくリターンする。オイルの粘性が高いことによる外乱の影響を防止するためである。油温が基準温度THO以上であれば、フラグXSTについて判断する(ステップ22)。このフラグXSTは、第3ブレーキB3 の滑りが検出されることにより“1”にセットされるフラグであり、制御の開始当初は滑りが発生していないので、“0”にセットされており、否定判断される。
【0045】
ステップ22で否定判断されることによりステップ23に進み、第3ブレーキB3 の滑りの発生を判断する。これは、具体的には、入力回転数NC0の回転角速度ωが判断基準値ωST以上になったか否かによって判断することができる。変速制御を開始した当初は、通常であれば、滑りが発生していずに否定判断され、その場合は、イナーシャ相の開始を判断する(ステップ24)。したがってステップ23がこの発明の滑り検出手段もしくは滑り発生検出手段に相当し、またステップ24がイナーシャ相判定手段に相当する。
【0046】
変速信号の出力の直後のためにイナーシャ相が開始していず、ステップ24で否定判断されるので、ステップ25に進んでイナーシャ相開始カウンタCTST を“1”だけアップカウントする。また同時に、ストロークエンドカウンタCTB2ED を“1”だけアップカウントする(ステップ26)。なお、これらのカウンタCTST ,CTB2ED は、変速制御開始時点(デューティ比の低下出力時点)からの時間をカウントするためのものであり、図3に示すルーチンが数ms(ミリ秒)ごとに実行されることにより、そのサイクルタイムを“1”としてカウントするものである。
【0047】
また第3ブレーキB3 に滑りが発生せずにイナーシャ相が開始することによりステップ24で肯定判断されることがある。これは、第2ブレーキB2 がトルク容量を持ち始めた後においても第3ブレーキB3 が実質的に係合している状態である。このような場合には、いわゆるタイアップによりショックが悪化するので、次回の第2速から第3速へのアップシフトの際の第3ブレーキB3 の制御圧を低下させるために、変速開始と同時に設定するリニアソレノイドバルブSLUのデューティ比DS0を予め定めた所定値GDSF1だけ低下させる(ステップ27)。
【0048】
前述したようにこのデューティ比DS0は、マップ値DS01 と学習値DS02 とからなるので、この学習値DS02 が所定値GDSF1だけ低下させられることになる。
【0049】
また変速開始に伴って第3ブレーキB3 の解放圧を前述したように低下させ、その結果、第3ブレーキB3 に滑りが生じると、ステップ23で肯定判断され、その場合はフラグXSTを“1”にセットした後、ステップ25およびステップ26に進んで、各カウンタCTST ,CTB2ED による時間のカウントを継続する。
【0050】
第3ブレーキB3 の滑りが発生してステップ22で肯定判断されると、第2ブレーキB2 の油圧ピストンのストロークエンドを判定する(ステップ29)。これは、具体的には、滑り量ωの変化率(ωドット:入力回転数NC0の変化率)が所定の基準値ωedドット以下か否かによって判断される。このステップ29がこの発明の係合判定手段に相当とする。
【0051】
すなわち前述した B-3コントロールバルブの第2制御ポート74に入力されている第2ブレーキB2 の油圧は、第2ブレーキB2 より上流側の油路での油圧であり、管路抵抗などによる圧力差の分、第2ブレーキB2 での油圧より高い油圧である。これに対して第2ブレーキB2 の油圧ピストンがそのストロークエンドに達すると、オイルの流動がなくなるために、第2ブレーキB2 での油圧と、 B-3コントロールバルブで採用している第2ブレーキ圧PB2との差圧が零になる。したがって見掛け上、第2ブレーキB2 の係合圧が瞬間的に増大した状態となり、タイアップ傾向が生じて入力回転数NC0が一時的に低下する。
【0052】
第2ブレーキB2 の油圧ピストンがそのストロークエンドに達すると、第3ブレーキB3 の滑り起因する入力回転数NC0に上記のような変化が生じるので、その回転変化に基づいてステップ29で第2ブレーキB2 のストロークエンドを検出する。
【0053】
このステップ29で否定判断された場合には、ストロークエンドカウンタCTB2ED によるカウント値を“1”だけアップカウントし(ステップ30)、ついでイナーシャ相の開始を判断する(ステップ32)。このステップ32がこの発明のイナーシャ相判定手段に相当する。また第2ブレーキB2 のストロークエンドが検出されてステップ29で肯定判断された場合には、直ちにステップ32に進んでイナーシャ相の開始を判断する。
【0054】
第2ブレーキB2 がトルク容量を持ち始めると、第3速に向けた変速が進行し、第3ブレーキB3 にかかっていたトルクが次第に低下し、ついにはこれが実質的に解放状態となって回転変化が生じる。この回転変化に基づいてイナーシャ相の開始を判断することができ、そのための方法は、例えば従来行われている方法でよい。すなわち変速前の変速段(この場合は第2速)での変速比に出力回転数N0 を掛けた値と入力回転数NC0との差が所定値以上となったことによりイナーシャ相の開始を判断することができる。
【0055】
イナーシャ相が開始していないことによりステップ31で否定判断された場合には、イナーシャ相開始カウンタCTST のカウントを継続し(ステップ32)、リターンする。これに対してイナーシャ相の開始が判断された場合には、第2ブレーキB2 の油圧ピストンのストロークエンドからイナーシャ相の開始までの時間CTIN (=CTST −CTB2ED )を演算する(ステップ33)。
【0056】
この演算して求められた時間CTIN が目標範囲内、すなわち予め設定した第1の基準値TTIN1以上でかつ第2の基準時間TTIN2以下であるか否かを判断する(ステップ34)。このステップ34で肯定判断されれば、第3ブレーキB3 が過剰に滑らずに、すなわちエンジンの吹き上がり(オーバーシュート)が過剰にならずに、イナーシャ相に移行して変速が進行することになり、したがって変速ショックが悪化したりエンジンが吹き上がったりしないので、第3ブレーキB3 の油圧の制御が適正に行われたことになる。そのためステップ34で肯定判断された場合には、リターンする。
【0057】
これに対してステップ34で否定判断された場合には、前記演算して求めた時間の長短を判断する。すなわち一例として、第1の基準時間TTIN1より小さいか否かを判断する(ステップ35)。第2ブレーキB2 の油圧ピストンのストロークエンドからイナーシャ相開始までの時間CTIN が第1の基準時間TTIN1より短いためにステップ35で肯定判断された場合には、第3ブレーキB3 の制御開始油圧DS0の学習値として、所定値GDS0 を減じた値を採用し、また油圧の低下勾配をDDS1 とする制御時間、すなわち 2-3シフトバルブを切り換えるために第1ソレノイドバルブS1 をONからOFFに制御するまでの時間T2 を所定時間GT2だけ長くする(ステップ36)。
【0058】
すなわち前記演算して求めた時間CTIN が第1の基準時間TTIN1より短ければ、第3ブレーキB3 の解放圧が高めに推移してタイアップ傾向となり、その結果、第2ブレーキB2 の油圧ピストンのストロークエンドの直後にイナーシャ相が開始したことになる。そこでこの場合、次回の変速の際の第3ブレーキB3 の解放圧を低めに制御するよう学習する。
【0059】
これとは反対に、第2ブレーキB2 の油圧ピストンのストロークエンドからイナーシャ相開始までの時間CTIN が第2の基準時間TTIN2より長いことにより、ステップ35で否定判断された場合には、第3ブレーキB3 の制御開始油圧DS0の学習値として、所定値GDS0 を加えた値を採用し、また油圧の低下勾配をDDS1 とする制御時間、すなわち 2-3シフトバルブを切り換えるために第1ソレノイドバルブS1 をONからOFFに制御するまでの時間T2 を所定時間GT2だけ短くする(ステップ37)。
【0060】
すなわち前記演算して求めた時間CTIN が第2の基準時間TTIN2より長ければ、第3ブレーキB3 の解放圧が低めに推移して、第2ブレーキB2 の油圧ピストンがストロークエンドに達してもイナーシャ相の発生までに時間がかかり、その間に第3ブレーキB3 の滑り(エンジンのオーバーシュート)が過剰になることになる。そこでこの場合、次回の変速の際の第3ブレーキB3 の解放圧を高めに制御するよう学習する。したがってステップ36,37がこの発明の解放圧補正手段に相当する。
【0061】
上述した制御による入力回転数NC0の変化とリニアソレノイドバルブSLUのデューティ比の変化をタイムチャートで示せば、図4のとおりである。図4において、t0 時点で第2速から第3速のアップシフトが判断され、所定のT1 秒の経過の後のt1 時点に制御が開始される。このt1 時点にデューティ比がDS0に低下させられるとともに、これに対応した第3ブレーキB3 の油圧を初期油圧としてDDS1 の勾配でデューティ比(第3ブレーキ圧)が次第に低下される。所定時間T2 の経過後のt2 時点に第1ソレノイドバルブS1 の切換え信号を出力し、同時にデューティ比(第3ブレーキ圧)の低下勾配をDDS2 (<DDS1 )に変更する。
【0062】
未だ第3ブレーキB3 の滑りが検出されていない場合には、所定時間T3 秒の経過したt3 時点にデューティ比(第3ブレーキ圧)の低下勾配をDDS3 (<DDS2 )に変更する。その後のt4 時点に第3ブレーキB3 の滑りが発生し、これがt5 時点に検出される。これと同時にデューティ比(第3ブレーキ圧)が滑りの発生した時点の値までステップアップされる。そのステップアップ幅DS1は、勾配および所定の遅れ時間に基づいて演算して求められことは前述したとおりである。
【0063】
その後のt6 時点に第2ブレーキB2 の油圧ピストンがストロークエンドに達して入力回転数NC0が一時的に低下し、すなわち入力回転数NC0の変化率(変化勾配)が変化する。その後、僅かな間、入力回転数NC0が上昇し続けた後、次第に第3速の同期回転数に向けて低下し始め、第2速の回転数に対して所定回転数低下したt7 時点にイナーシャ相の開始が判断される。これと同時にデューティ比が低下させられ、第3ブレーキB3 は、第2ブレーキB2 の油圧の上昇に応じて低下させられる。
【0064】
なお、上述した制御例では、第3ブレーキB3 の解放圧の学習制御を、第2ブレーキB2 の油圧ピストンのストロークエンドからイナーシャ相の開始までの時間の長短に基づいて行うようにしたが、これに替えて、第3ブレーキB3 の滑り(エンジンの吹き上がり)の遅速に応じて学習制御を行うようにしてもよい。
【0065】
その例を図5に簡略化して示してあり、滑り検出フラグXSTが“1”か否かの判断(ステップ41)を行い、滑りが発生していないことにより否定判断された場合には、滑りの発生を判断する(ステップ42)。これは、この発明の滑り発生検出手段に相当し、図3に示すステップ23と同様な判断ステップである。ここで否定判断された場合には、イナーシャ相の開始を判断し(ステップ43)、イナーシャ相が開始していなければ、滑り検出カウンタCTNTOV およびイナーシャ相開始カウンタCTST のそれぞれを“1”づつアップカウントする(ステップ44,45)。なお、ステップ43はこの発明のイナーシャ相判定手段に相当する。
【0066】
また第3ブレーキB3 の滑りが発生せずにイナーシャ相が開始してステップ43で肯定判断された場合には、図3に示す制御例と同様に、次回の第2速から第3速へのアップシフトの際の第3ブレーキB3 の制御圧を低下させるために、変速開始と同時に設定する第3ブレーキB3 の油圧DS0を予め定めた所定値GDSF1だけ低下させる(ステップ46)。さらに第3ブレーキB3 の滑りが検出されてステップ42で肯定判断された場合には、フラグXSTを“1”にセット(ステップ47)した後にステップ44に進む。
【0067】
第3ブレーキB3 の解放圧が次第に低下させられて滑りが生じ、フラグXSTが“1”にセットされた場合には、ステップ41で肯定判断され、ついでイナーシャ相が開始したか否かが判断される(ステップ48)。この判断ステップは、図3に示す制御例におけるステップ31と同様にして実行でき、ここで否定判断された場合には、イナーシャ相開始カウンタCTST を“1”だけアップカウントし(ステップ49)、リターンする。
【0068】
一方、イナーシャ相が開始していてステップ48で肯定判断された場合には、第3ブレーキB3 の滑りが目標範囲に入っているか否かを判断する(ステップ50)。その判断の仕方としては、滑り検出カウンタCTNTOV の値が下限値TT23L以上でかつ上限値TT23H以下であるか否かを判断すればよい。その場合、肯定判断されれば、第3ブレーキ圧の制御値が適正であることになるので、特に制御を行うことなくリターンする。また反対に目標範囲から外れていて否定判断された場合に、カウント値が上限値より大きいか否かを判断する(ステップ51)。
【0069】
このステップ51で肯定判断された場合、および否定判断された場合のそれぞれで、第3ブレーキ圧の制御値の学習補正を行う(ステップ52,53)。これらのステップ52,53がこの発明の解放圧補正手段に相当し、肯定判断された場合、すなわちカウント値CTNTOV が上限値TT23Hを超えている場合には、第3ブレーキB3 の解放圧が高めに推移して滑りの発生が遅れていることによるので、デューティ比の初期制御値DS0を所定値GDS0 だけ低下させる。また反対に否定判断された場合、すなわちカウント値CTNTOV が下限値TT23Lに満たない場合には、第3ブレーキB3 の解放圧が低めに推移して滑りの発生が早いことによるので、デューティ比の初期制御値DS0を所定値GDS0 だけ高くする。
【0070】
またステップ50での目標範囲に入っているか否かの判断の仕方として、滑りの検出からイナーシャ相の開始までの時間(CTST −CTNTOV )が所定の基準値TT23I以下か否かを判断してもよい。その場合、肯定判断されれば、特に制御を行うことなくリターンし、また否定判断されれば、第3ブレーキB3 の滑りが早期に生じ、これは第3ブレーキB3 の制御圧が低めに推移していることに起因するので、デューティ比の初期制御値DS0を所定値GDS0 だけ高くする。このように制御すれば、前述した例と同様に、第3ブレーキB3 の解放圧を適正に制御して、エンジンの吹き上がりや変速ショックのない第2速から第3速へのクラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行することができる。
【0071】
さらに第3ブレーキB3 の解放圧の学習制御を滑りの大小に基づいて行うこととしてもよい。その例を図6に簡略化して示してある。図6において、滑り検出フラグXSTが“1”か否かの判断(ステップ61)を行い、滑りが発生していないことにより否定判断された場合には、滑りの発生を判断する(ステップ62)。これはこの発明の滑り発生検出手段に相当し、図3に示すステップ23と同様な判断ステップである。ここで否定判断された場合には、イナーシャ相の開始を判断し(ステップ63)、イナーシャ相が開始していなければリターンする。また第3ブレーキB3 の滑りが発生せずにイナーシャ相が開始してステップ63で肯定判断された場合には、図3に示す制御例と同様に、次回の第2速から第3速へのアップシフトの際の第3ブレーキB3 の制御圧を低下させるために、変速出力と同時に設定する第3ブレーキB3 の油圧DS0を予め定めた所定値GDSF1だけ低下させる(ステップ64)。したがってステップ64がこの発明の解放圧補正手段に相当する。
【0072】
さらに第3ブレーキB3 の滑りが検出されてステップ62で肯定判断された場合には、フラグXSTを“1”にセット(ステップ65)した後にリターンする。
【0073】
一方、第3ブレーキB3 の解放圧が次第に低下させられて滑りが生じ、フラグXSTが“1”にセットされた場合には、ステップ61で肯定判断される。この場合は、ステップ66に進んで、今回の走査過程で検出された滑り量ωi が前回の走査過程で検出された滑り量ωi-1 より大きいか否かを判断する。今回の滑り量ωi の方が大きい場合には、これを最大値に置き換え(ステップ67)、ついでイナーシャ相の開始を判断する(ステップ68)。また今回検出した滑り量ωi が前回検出した滑り量ωi-1 を上回っていない場合には、直ちにステップ68に進んでイナーシャ相の開始を判断する。
【0074】
イナーシャ相が開始していずにステップ68で否定判断された場合にはリターンし、また肯定判断された場合には、滑り量ωが予め設定した基準滑り量ωtrg 以上か否かを判断する(ステップ69)。滑り量ωが基準滑り量ωtrg 以下であれば、第3ブレーキB3 の過剰な滑りすなわちエンジンの吹き上がりが生じていないことになるのでリターンする。これとは反対に滑り量ωが基準滑り量ωtrg 以上であれば、第3ブレーキB3 の解放圧が低く、過剰な滑りすなわちエンジンの吹き上がりが生じていることになるので、デューティ比の初期制御値DS0を所定値GDS0 だけ高くする(ステップ70)。このステップ70がこの発明の解放圧補正手段もしくは制御補正手段に相当し、このように制御すれば、第3ブレーキB3 の滑り量が適正範囲に収束し、エンジンの吹き上がりや変速ショックのない第2速から第3速へのクラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行することができる。
【0075】
なお、以上述べた例では、第3ブレーキB3 の解放圧の低下勾配DDS1 ,DDS2 ,DDS3 およびその制御時間T2 ,T3 をマップから求めることとしたが、この発明では、これらの値を演算して求めることとしてもよい。例えば各低下勾配での滑り検出遅れは、勾配ごとに実験的に求まるから、第3ブレーキB3 のトルク容量の低下許容量が、低下勾配とそれに応じた滑り検出遅れとの積として演算できることから、各低下勾配DDS1 ,DDS2 ,DDS3 を演算できる。
【0076】
また第2ブレーキB2 に油圧を供給し始めてからストロークエンドに達するまでの時間すなわちストローク時間からDDS2 の勾配での制御時間T3 を減じた値にDDS3 の勾配を掛けた値が、最大限で学習補正できない値に収まる必要があるから、この関係からその制御時間T3 を求めることができる。さらに各低下勾配とそれぞれの制御時間との積の和が、最大限でばらつきによる油圧の振れ以下に収まる必要があるので、その関係から制御時間T2 を求めることができる。
【0077】
またこの発明は、上記の実施例に限定されないのであって、図8に示すギヤトレインを備えた自動変速機以外の自動変速機を対象とする制御装置に適用することができる。したがってこの発明で対象とするクラッチ・ツウ・クラッチ変速は第2速から第3速へのアップシフトに限定されず、またその制御対象となる摩擦係合装置は、第3ブレーキに限定されない。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載した発明によれば、解放側摩擦係合装置の滑りが検出されると同時に、実際に滑りが発生した時点の油圧に解放側摩擦係合装置の油圧がステップアップされるので、滑り検出に遅れがあった場合であっても、解放側摩擦係合装置を良好な微少滑り状態に設定することができる。
【0080】
さらにまた請求項2に記載した発明によれば、クラッチ・ツウ・クラッチ変速の場合、解放側摩擦係合装置の油圧の低下によって、入力軸回転数に回転変化が生じ、さらに係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始めることによってそれ以前とは異なる回転変化が生じるので、入力回転数の変化率が回転検出手段によって検出されるとともに、係合判定手段で係合側摩擦係合装置の実質的な係合の開始が判定され、したがって係合開始の判定を正確に行うことができる。
【0081】
そして請求項3に記載した発明によれば、係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始める以前の所定の時点で解放側摩擦係合装置に滑りが生じるように正確に制御することが可能になり、その結果、過剰な滑りやタイアップをより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置で実行される制御内容を説明するためのフローチャートである。
【図2】 第3ブレーキを解放制御する際のデューティ比の低下勾配とそれぞれの制御継続時間とのマップ値の一般的傾向を示す図である。
【図3】 係合側摩擦係合装置の油圧ピストンのストロークエンドの検出とそれに伴う学習制御のルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】 図1に示す制御を実行した場合の入力回転数およびデューティ比の変化を示すタイムチャートである。
【図5】 滑り検出のタイミングに基づく学習制御のためのルーチンを簡略化して示すフローチャートである。
【図6】 滑り量に基づく学習制御のためルーチンを簡略化して示すフローチャートである。
【図7】 この発明による全体的な制御系統を示す図である。
【図8】 この発明で対象とする自動変速機のギヤトレインの一例を示すスケルトン図である。
【図9】 その自動変速機で各変速段を設定するための摩擦係合装置の係合作動表を示す図である。
【図10】 この発明で使用することのできる B-3コントロールバルブの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
17…エンジン用電子制御装置、 18…油圧制御装置、 19…自動変速機用電子制御装置、 A…自動変速機、 B2 …第2ブレーキ、 B3 …第3ブレーキ、 E…エンジン。
Claims (3)
- 所定の摩擦係合装置の解放と他の摩擦係合装置の係合とによって達成されるクラッチ・ツウ・クラッチ変速の際に、解放側摩擦係合装置の油圧を制御する車両用自動変速機の制御装置において、
前記解放側摩擦係合装置の滑りの発生を検出する滑り発生検出手段と、
該滑り発生検出手段によって解放側摩擦係合装置の滑りが検出されると同時に、前記解放側摩擦係合装置の油圧を、実際に滑りが発生した時点の圧力に増大させる手段と
を備えていることを特徴とする車両用自動変速機の制御装置。 - 所定の摩擦係合装置の解放と他の摩擦係合装置の係合とによって達成されるクラッチ・ツウ・クラッチ変速の際に、係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始めることに基づいて解放側摩擦係合装置の油圧を制御する車両用自動変速機の制御装置において、
前記クラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行する前記解放側摩擦係合装置を、前記係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始める前に、前記車両用自動変速機の入力回転数が変速前の同期回転数から外れるように解放側に制御する手段と、
前記クラッチ・ツウ・クラッチ変速によって回転数が変化する入力軸の回転状態を検出する回転検出手段と、
前記解放側係合装置を解放側に制御している状態で前記回転検出手段で検出された入力軸回転数の変化率に基づいて前記係合側摩擦係合装置がイナーシャ相の開始前にトルク容量を持ち始めたことを判定する係合判定手段と
を備え、
前記係合判定手段によって前記係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始めたことが判定されたことに基づいて前記解放側摩擦係合装置の油圧を制御するように構成されていることを特徴とする車両用自動変速機の制御装置。 - 前記回転検出手段の検出結果に基づいてイナーシャ相の開始を判定するイナーシャ相判定手段と、
前記係合判定手段によって係合側摩擦係合装置がトルク容量を持ち始めた時点とイナーシャ相判定手段によって判定されたイナーシャ相の開始時点との時間間隔が予め定めた時間間隔となるよう解放側摩擦係合装置の油圧制御内容を変更する解放圧補正手段と
を備えていることを特徴とする請求項2に記載の車両用自動変速機の制御装置。
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