JP4603500B2 - 車上用自動改札装置 - Google Patents

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Description

本発明は、主としてワンマン列車に搭載され、ICカードを利用した乗車券(移動体電話機に乗車券としての機能を持たせる場合もこれに準じる)のように入場駅が書き込まれ、また出場駅において自動的に精算を行うことができる車上用自動改札装置に関するものである。
近年、列車用の乗車券として非接触でデータを読み書き可能なICカードが普及してきている。また、従来からデータを読み書き可能な磁気カードを用いた乗車券も用いられている。ICカードや磁気カードを用いた乗車券では、駅に設置された自動改札機(以下、「地上用自動改札機」と呼ぶ)により入場(改札を通り列車に乗車可能にすること)および出場(改札を通り列車に乗車不能にすること)の処理が行われる(たとえば、特許文献1参照)。
入場処理の際には乗車券に入場駅が書き込まれ、出場処理の際には乗車券に書き込まれている入場駅と地上用自動改札機が設置されている出場駅との関係に応じて運賃を精算する。運賃の精算は乗車券の種類によって異なるので、以下の説明では、事前にチャージしたSF(Stored Fare)の残額から運賃が減算されるプリペイド型の乗車券と、乗降可能な区間および有効期間が設定された定期券型との2種類の乗車券を例として説明する。プリペイド型では事前にチャージされたSFの残額からその場で減算されるのに対して、SFをチャージせずに地上用自動改札機において精算した運賃を乗車券の所有者に後日請求する(通常は、金融機関の口座からの自動引き落としになる)乗車券(ポストペイ型の乗車券)も存在するが、貨幣価値との交換の手順が異なるだけで、プリペイド型かポストペイ型かにかかわらず運賃を精算する手順は同様であるから、以下ではプリペイド型についてのみ説明する。なお、ICカードを用いた乗車券のうち定期券型はプリペイド型(あるいは、ポストペイ型)の乗車券としても用いることができるものとする。
プリペイド型の乗車券の運賃の精算には、入場駅と出場駅との間の運賃を求め、乗車券のSF残額が運賃に対して充足されているか不足しているかを判断し、充足されている場合にはSF残額から運賃を減額する。また、不足の場合には通知して精算機などによる不足金額の支払いを要求する。
一方、定期券型での運賃の精算では、有効期間の判断がなされるとともに、入場駅と出場駅との間が、定期区間内であるか定期区間外を含むかの判断がなされる。定期区間内であればそのまま出場させる。定期区間外を含むときには、入場駅が定期区間外であり出場駅が定期区間内である場合と、入場駅は定期区間内であるが出場駅が定期区間外である場合と、入場駅と出場駅とがともに定期区間外であり入場駅と出場駅との間に定期区間が含まれる場合とがある。
入場駅と出場駅との一方のみが定期区間外である場合には、定期区間外の運賃のみを精算対象の運賃とする。また、入場駅と出場駅とがともに定期区間外である場合には、入場駅と出場駅との間の運賃を第1の運賃として求め、定期区間外について入場駅側と出場駅側とについてそれぞれ求めた運賃の加算値を第2の運賃として求め、第1の運賃と第2の運賃との安いほうを精算対象の運賃とする。精算対象の運賃については、プリペイド型(あるいはポストペイ型)の乗車券と同様に処理がなされる。
ところで、この種の乗車券では不正乗車を防止するために、入場駅が書き込まれていない乗車券では出場が禁止され、入場駅がすでに書き込まれている乗車券では入場が禁止される。したがって、入場駅において地上用自動改札機を通らずに入場した場合には出場駅において地上用自動改札機を通ることができず、また出場駅において地上用自動改札機を通らずに出場した場合には次の入場が拒否される。このような事態が生じたときには、駅係員に事情を説明し乗車券のデータを書き換えてもらうことが必要である。
特開2002−92663号公報
上述したように、ICカードや磁気カードを乗車券として用いる場合には、入場処理と出場処理とを行う駅を識別する必要がある。また、出場処理における運賃の精算には、利用者が入場する各駅と出場駅との間の運賃のデータが必要である。地上用自動改札機では、設置駅が固定されているから、駅を識別する情報は設置時に登録すれば変更の必要はない。また、運賃のデータについても出場駅が固定されているから、他の駅との間の運賃のみを保持していればよく、照合すべきデータ量が少ないから運賃の精算を短時間で行うことが可能である。
磁気カードを用いた乗車券は、地上用自動改札機に設けた投入口から乗車券を投入し地上用自動改札機の内部でデータの読み書きがなされるから、磁気カードが地上用自動改札機を通過する時間を調節することにより、データの読み書きに要する時間を多少は調節することができる。しかしながら、ICカードを用いた乗車券では、データの読み書きに利用できる時間が利用者による乗車券の扱いに依存して変化するから、上述のように、運賃の精算を短時間で行うことが必要である。地上用自動改札機では、駅を識別する情報と運賃のデータとが固定的に設定されているから、上述のように短時間で運賃の精算をすることが実現されている。
ところで、利用者の比較的少ない系統ではワンマン列車が運行されている系統があり、この種の系統では、いまだ地上用自動改札機が設置されていないことも多い。ただし、この種の系統であっても、地上用自動改札機が設置された系統との乗り継ぎが可能になっていたり、一部の駅で地上用自動改札機が設置されていることもある。したがって、ワンマン列車の運行されている系統であっても磁気カードやICカードを用いた乗車券を利用するために、列車内にこれらの乗車券の入場処理および出場処理を可能とする自動改札装置を設置することが要望されている。
しかしながら、列車内に自動改札装置を設置する場合には、停車駅ごとに駅を識別するデータを変化させる必要があり、運賃のデータに関しても利用者が乗降するすべての駅の駅間の運賃を保持している必要がある。ここに、利用者が乗降するすべての駅とは、列車の運行されている系統の駅のほか、当該系統の利用者の多くが乗降すると推定される範囲の他の系統の駅を含む。つまり、複数の系統に跨る多数の駅間の運賃を駅に対応付けた運賃表データが必要である。この種の運賃表データは、データ量が膨大であるから大容量の記憶装置が必要である。
ワンマンバスでは1回の乗降のたびに運賃を収受するから1つの系統について運賃のデータを保有していればよいが、列車の場合には乗降のたびに運賃を収受するのではなく、入場駅から出場駅までの全体の運賃を一括して収受するから、複数の系統に跨る運賃表データが必要であり、入場駅と出場駅との組を運賃表データから検索して求めるとすれば、ICカードに対応する程度の短時間で入場処理および出場処理を行うために、処理能力の高い高価な装置が必要になる。一般に、ワンマン列車が運行されている系統は利用者が少なく採算性が低いから、高価な装置を車上に設置することは鉄道会社にとっては大きな経済的負担になる。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、入場処理および出場処理を地上用自動改札機と同程度の処理負荷で実現できるようにし、とくに出場処理の際に運賃表データの全体を検索することなく運賃を精算可能とした車上用自動改札装置を提供することにある。
請求項1の発明は、列車に搭載され利用者が所持する乗車券との間でデータの読み書きが可能である改札機本体と、利用者が乗降する駅を駅間の運賃に対応付けている運賃表データが格納された運賃表記憶手段と、列車が停車する駅の順序と各駅における自動改札機の有無とを格納した系統データ記憶部と列車の運転状態を検出するセンサ群の出力とを用いて列車が停車している停車駅を求める停車駅検出手段と、停車駅検出手段で求めた停車駅が自動改札機の設置されていない駅であるときに改札機本体を介して乗車する利用者の乗車券に停車駅を入場駅として記録し、降車する利用者の乗車券に記録された入場駅に対して停車駅を出場駅として運賃表記憶手段から得られる運賃に従って精算する改札機制御手段とを備え、改札機制御手段は、列車が駅で停車してから次の駅に到着するまでの期間に、少なくとも次の停車駅を出場駅とした場合の各入場駅との間の運賃が入場駅の指定によって抽出できるように、運賃表記憶手段に格納された運賃表データのうち運賃を抽出す
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記停車駅検出手段が、列車の停車している停車駅を検出すると停車駅の後に停車する規定数の停車予定駅を求める機能を有し、前記改札機制御手段が、停車予定駅を出場駅とした場合の他の駅との運賃を運賃表記憶手段から抽出する機能を有し、前記改札機本体は、少なくとも停車予定駅を含む所定数の駅を出場駅としたときの他の駅との間の運賃を保持する運賃レジスタと、運賃レジスタに保持された運賃を用いて運賃を精算する精算処理手段とを備えることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記運賃レジスタが停車駅より前に停車した規定数の既停車駅に関して他の駅との間の運賃を保持しており、運賃レジスタに保持された各駅のうち前記改札機本体で次に停車駅として使用する駅名を表示可能な表示手段と、運賃レジスタに保持された各駅のうち停車駅として用いる駅名を変更可能な操作手段とが付加されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記運賃表記憶手段が各駅間のキロ程を格納しており、前記停車駅検出手段が、列車が停車した駅においてキロ程の参照により推定した停車駅の候補を前記表示手段に表示するとともに、表示手段に表示された停車駅の候補を前記操作手段により確定させる機能を有していることを特徴とする。
請求項1の発明の構成によれば、利用者が乗降する駅を駅間の運賃に対応付けた運賃表データを運賃表記憶手段に格納しているから、ワンマン列車においても運賃表記憶手段を参照することによって駅間の運賃を容易に算出することができる。しかも、列車が駅で停車してから次の駅に停車するまでの間に、次の停車駅を出場駅とした場合の各入場駅との間の運賃を、入場駅の指定によって求めることができるように運賃表データからの運賃の抽出範囲を制限するから、次の停車駅では運賃表データのうちで制限された少数のデータと照合するだけで、運賃を求めることができる。つまり、運賃表データの全体を検索する場合に比較すると、入場駅と出場駅との間の運賃を求める処理の負荷が大幅に軽減されるから、ICカードを用いる場合であっても地上用自動改札機と同程度の軽負荷で出場処理を行うことができる。
請求項2の発明の構成によれは、停車予定駅を出場駅とした場合の他の駅との間の運賃を運賃表記憶手段から運賃レジスタに展開しているから、次の停車駅では停車予定駅の運賃を用いて運賃の精算ができる。しかも、運賃レジスタに保持する運賃は所定数の駅に制限しているから、運賃表記憶手段の運賃表データと直接照合する場合に比較して照合するデータ数が少なく、短時間での運賃の抽出が期待できる。また、運賃表記憶手段としては大容量かつ低価格であるハードディスク装置あるいはアクセス速度の遅い安価な半導体メモリを用い、運賃レジスタはアクセス速度の速い高価な半導体メモリを用いる。このように、アクセス速度を使い分けることにより、出場処理を迅速に行うことができる。
なお、運賃レジスタには、停車駅を含む停車駅以降の規定数の駅を出場駅とした場合の運賃のデータを保持する場合と、停車駅を含み停車駅の前後の規定数の駅を出場駅とした場合の運賃データを保持する場合とがある。いずれの場合も、各駅のデータはFIFOとして格納しておき、列車が駅に到着するたびに古いデータから順に消去する。
請求項3の発明の構成によれば、次の停車駅の駅名を表示手段に表示するとともに、運賃レジスタが保持している各駅のうち出場駅とすることができる駅名を操作手段により変更可能としているから、停車駅検出手段で検出されることにより表示手段に表示されている駅名が実際の停車駅とは異なっているときに、列車の乗務員の判断で操作手段を操作することにより駅名を訂正することができる。しかも、停車駅とともに停車駅の前後の規定数の駅を出場駅とした場合の運賃を運賃レジスタに保持しているから、操作手段により駅名を変更しても運値レジスタに保持されている複数個の出場駅の範囲で運賃を検索すればよいから、運賃の精算を軽負荷で迅速に行うことができる。
請求項4の発明の構成によれば、キロ程によって停車駅の候補を推定し表示手段に表示することができるから、たとえばY字状などに分岐する系統であって停車駅が変更される場合であっても、分岐点からのキロ程に応じて停車駅の候補を表示手段に表示し、操作手段を乗務員に操作させることにより候補から停車駅を確定することができる。つまり、停車駅が突然変更になった場合でも停車駅を選択することにより、入場処理および出場処理を適切に行うことができる。
本実施形態では、ワンマン列車に車上用自動改札装置を搭載する場合を例とするが、ワンマン列車以外であっても車上用自動改札装置を搭載することは可能である。また、以下では車上用自動改札装置を搭載したワンマン列車を単に列車と表記する。以下に説明する車上用自動改札装置は、磁気カードを用いた乗車券にも対応しているが、本実施形態ではICカードを用いた乗車券に関連する構成についてのみ説明する。ただし、磁気カードに対してデータを読み書きする装置が異なる点、および磁気カードを用いた乗車券では磁気記録された他の乗車券と重ねて投入できる点がICカードを用いた乗車券との主な相違であり、本発明の実施に関しては、ICカードを用いた乗車券との本質的な差異はないから、磁気カードを用いた乗車券についてはとくに説明しない。
さらに、以下では、図4に示すように、列車が10個の駅G1〜G10を有する2線区A,Bで運行されている場合を想定して説明する。この例では、駅G4において分岐を有し、駅G4において乗り継ぎが可能になっている。なお、実際に扱う駅の個数は図4に示す例よりも大幅に多く、100個以上の駅を扱う場合もあるが、駅の個数が多くなった場合でも図4を用いて説明するパターンのいずれかに当て嵌めることができる。
各駅の駅間の運賃を求めるには、運賃表データが必要であり、一般に三角表データと称する運賃表データが用いられている。三角表データは、図5に示すように、横方向に入場駅を並べ縦方向に出場駅を並べた表であって、入場駅を見出しとする縦列と出場駅を見出しとする横列との交点の位置に入場駅と出場駅との駅間の運賃を配置してある。また、出場駅には地上用自動改札機の有無も示してある。図示していないが、運賃表データには、各駅間のキロ程も含まれる。キロ程については、運賃の三角表データと同様に、入場駅と出場駅との交点の位置に各駅間のキロ程を配置した三角表データを用いる。
運賃の三角表データにおける駅名の並び順としては、系統別に駅の並び順に配列する場合と、起点となる駅(たとえば、駅G1)からの距離の順に配列する場合とがあり、本実施形態では後者を採用している。すなわち、図4に示す一方の線区A,Bに関わりなく駅G1を起点とし、駅G1からの距離に応じて駅G1〜G10を配列してある。
また、列車の運行には、1つの線区A,Bのみで運行する場合、異なる線区A,Bに跨って運行する場合、一部の駅では停車しない場合など様々な運行形態があるから、各運行形態をそれぞれ系統とし、図6に示すように、系統別に停車駅を並べた運行系統データを設定してある。運行系統データでは、各系統ごとに停車する駅の順序を対応付けてある。なお、図6において丸印は地上用自動改札機の設置駅を表す。系統データは後述する系統データ記憶部に格納される。列車の運行時には系統を指定して系統データに照合することにより、指定した系統に含まれる駅名が抽出される。ここに、列車を運転する方向に応じて読み出し順序を入れ換えることにより、列車を運転する方向にかかわらず同データを用いることができる。系統データから抽出された駅名は、運賃の三角表データあるいはキロ程の三角表データに照合される。これらの動作は後述する。
図2に示すように、列車には列車の運行状況を監視するセンサ群2が設けられている。センサ群2としては、列車の車軸の回転速度に応じた周波数の交流を出力する速度発電機21と、列車に設けた扉の開閉を検出する扉センサ22と、列車の進行方向を検出する運転方向センサ23と、列車が走行しているか停車しているかを検出する走行センサ24とが設けられる。センサ群2の出力は、マイクロコンピュータからなる統括制御部3に入力される。統括制御部3には、列車の乗務員が操作する入力装置(操作手段)31および乗務員が見ることのできる液晶表示器などからなる表示器(表示手段)32が接続され、さらに列車の内外に音声で報知するためのスピーカ33,34も統括制御部3に接続される。入力装置31は表示器32と別体であってもよいが、タッチパネル式として表示器32と一体化すれば列車内の限られた空間に省スペースで配置することができる。
統括制御部3には、運賃の収受に用いる各種装置がデイジーチェイン接続される。運賃の収受に用いる装置には、利用者の乗車駅ごとに駅名に対応した紙の整理券を発行する整理券発行機41、利用者が運賃を現金で支払う場合に現金を投入する運賃収受装置42、液晶表示器などからなる旅客向けの表示器43があり、さらに2台の車上用改札装置1a,1bも統括制御部3にデイジーチェイン接続される。運賃収受装置42は、現金を投入するだけでなく紙の乗車券や整理券を投入することもできる。車上用改札装置1a,1bは、それぞれ列車に乗車する際に用いる入場用と列車から降車する際に用いる出場用とであって、以下では、入場用の車上用改札装置1aと出場用の車上用改札装置1bとを区別するときには、それぞれ入場機1aおよび出場機1bと呼ぶ。ただし、入場機1aと出場機1bとは基本的には同構成であり、内蔵したプログラムの処理手順が入場処理であるか出場処理であるかの点で相違する。なお、統括制御部3に各装置をデイジーチェイン接続する構成は一例として示したものであり、他の接続形態(たとえば、バス接続、スター接続など)を採用してもよいのはもちろんのことである。
図2に示す各装置は、図3のように列車50に配置される。図3において運転席51には、入力装置31と表示器32とが配置される。また、運転席51に隣接して出場機1bと運賃収受装置42とが配置される。運転席51の側方上部には旅客用の表示器43が配置され、表示器43には次の停車駅や整理券に対応した運賃などが表示される。また、運転席51の近傍には出口の扉52が設けられており、扉52の開閉が扉センサ22により検出される。
一方、列車50には走行方向における運転席51とは反対側の端部に入口の扉53が設けられており、扉53の開閉も扉センサ22により検出される。扉53の近傍には入場機1aが配置される。また、扉52と扉53との間には座席54が設けられる。
図1に示すように、車上用改札装置1a,1bは、利用者が所持するICカード型の乗車券との間でデータの読み書きが可能である改札機本体としてのリーダライタ11を備え、リーダライタ11はインタフェース12を介して主制御装置10に接続される。主制御装置10は後述する動作のプログラムを実行するマイクロコンピュータからなり、主制御装置10と同じ基板PBには半導体メモリからなる運賃レジスタ13が実装される。また、主制御装置10には運賃レジスタ13よりも大容量である記憶装置14が接続される。
記憶装置14は基板PBとは別に設けられる。また、記憶装置14は、とくに高速なアクセス速度を要求されないから、安価な半導体メモリを用いるかハードディスク装置を用い、運賃レジスタ13は、一種のキャッシュメモリとして用いるために高速にアクセスすることができる半導体メモリを用いる。
三角表データを格納している記憶装置14は電源供給が遮断されてもデータを保持しかつ大容量であることが必要があり、この種のデータストレージ用の記憶装置14は半導体メモリを用いてさえも十分に高速とは言えない。とくに、運賃の演算のために三角表データを参照する場合に、記憶装置14の全体を参照していたのでは、ICカードを用いた乗車券の処理に許容されている処理時間の大半を三角表データを参照する時間が占めることになり、ICカードの読み取りや書き込み、あるいは運賃演算の処理に使用できる時間の余裕が少なくなる。しかしながら、記憶装置14に高速な半導体メモリを用いるときわめて高価になる。
そこで、上述したように、高速にアクセスできる半導体メモリを用いた運賃レジスタ13を採用しているのである。すなわち、記憶装置14に格納されている三角表データのうちの一部分をあらかじめ運賃レジスタ13に展開しておくことで、三角表データの参照の際に運賃レジスタ13から検索できるようにしておき、乗車券の処理に許容されている処理時間の中で三角表データを参照する時間を短縮しているのである。
記憶装置14には、図5に示した運賃の三角表データおよびキロ程の三角表データ(図示せず)が格納される運賃表記憶部(運賃表記憶手段)14aとして機能する領域と、図6に示した運行系統データが格納される系統データ記憶部14bとして機能する領域と、主制御装置10の動作を決めるプログラム(運賃計算および経路判定のプログラム)を格納する領域(図示せず)とが設けられている。
インタフェース12には、スピーカやブザーのような音声による報知装置15と、文字表示の可能な表示装置16とが接続される。表示装置16には、乗車券にチャージされているSFの残額や運賃の不足額が表示される。
以下では、入場機1aと出場機1bとの動作を説明する。入場機1aと出場機1bとの動作は、乗車券が定期券であるときには、乗車可能な区間と入場駅(改札駅)と出場駅(集札駅)との関係によって異なり、また各駅における自動改札機の設置の有無によっても変化する。自動改札機が設置されている駅では、通常は入場機1aと出場機1bとの動作を停止させておけばよいから、以下の説明では、説明を簡単にするために、図4に示す駅G1〜G10のうち線区A,Bが交差している駅G4にのみ自動改札機が設置され、他の駅G1〜G3,G5〜G10には自動改札機が設置されていないものとする。駅G4では自動改札機が設置されているから入場機1aと出場機1bとの動作を停止させておいてもよいが、ここでは乗り換え処理を行うものとする。また、乗車券は定期券であって利用可能な区間が線区Aの駅G3〜G7である場合を想定する。
図4に示す駅G1〜G3、G5〜G10のいずれにも自動改札機を設置していないから、列車への乗車時に利用者(乗客)は乗車券を入場機1aに触れるかかざす必要があり、入場機1aのリーダライタ11では乗車券の接近を検出すると主制御装置10に通知する。主制御装置10ではリーダライタ11からの通知を受け取ると、リーダライタ11に対して停車駅を与え入場駅として記録させる。このとき、入場時刻も同時に記録する。この処理が入場処理になる。
また、駅G1〜G3,G5〜G10では、利用者が列車から降車する際に乗車券を出場機1bに触れるかかざすと、出場機1bのリーダライタ11では乗車券の接近を主制御装置10に通知する。主制御装置10では、乗車券に記録されている入場駅などの情報の読取をリーダライタ11に指示して乗車券に記録された入場駅を取得する。主制御装置10では、入場駅を取得すると適正な使用か否かを判定し、適正に使用されている場合には、停車駅を出場駅として入場駅との関係を三角表データに照合して運賃を求める。三角表データと照合する処理については後述する。
運賃を求める処理は、従来の技術として説明した通りであって、まず入場駅と出場駅との間が、定期区間内であるか定期区間外を含むかの判断を行い、定期区間内であればそのまま出場させる。定期区間外を含む場合であって、入場駅と出場駅との一方だけが定期区間外である場合には、定期区間外の運賃のみを精算対象の運賃とする。また、入場駅と出場駅とがともに定期区間外であり入場駅と出場駅との間に定期区間が含まれる場合には、入場駅と出場駅との間の運賃を第1の運賃として求め、定期区間外について入場駅側と出場駅側とについてそれぞれ求めた運賃の加算値を第2の運賃として求め、第1の運賃と第2の運賃との安いほうを精算対象の運賃とする。精算対象の運賃については、SFの残額が運賃を充足していればSFから運賃を減額する処理を行い、SFの残額が運賃に不足している場合は不足金額を表示装置16および表示器32に表示する。これらの処理は主制御装置10が行うのであって、主制御装置10が精算処理手段として機能する。
上述のようにして運賃を求めたときに、入場駅が定期区間内であって入場時刻が適正であれば、主制御装置10は乗車券に記録された入場駅および入場時刻を処理済みとするようにリーダライタ11に指示する。また、入場駅と出場駅との少なくとも一方が定期区間外であって別途に運賃を支払った場合には、運賃の支払い対象になった駅名と金額と日時とがICカードに記録される。出場機1bによるこれらの一連の処理が出場処理になる。
これらの一連の処理は主制御装置10が行うのであって、主制御装置10が改札機制御手段として機能する。
ところで、図4に示す駅G4は自動改札機を設置した乗り継ぎ駅であるから、入場機1aによる入場処理および出場機1bによる出場処理は行わないが、乗車時において乗車券の記録内容を入場機1aに読み取らせることにより、乗車券の入場処理が適正に行われたか否かを知ることができる。たとえば、入場駅が記録されていなければ不正に入場した可能性があり、また入場時刻が不自然であれば(たとえば、当日の入場時刻ではない場合)不正に入場した可能性がある。この場合、表示器32により乗務員に通知する。したがって、乗り継ぎ駅では入場機1aにICカード型の乗車券に対する検札の機能を持たせることが可能になる。同様の処理を出場機1bでも行うようにしてもよい。上述した駅G4における入場機1a(出場機1b)による処理を乗り継ぎ処理と呼ぶ。乗り継ぎ処理も改札機制御手段としての主制御装置10が行う。
上述した説明から明らかなように、入場処理と出場処理と乗り換え処理とのいずれにおいても入場機1aおよび出場機1bでは停車駅を取得する必要がある。以下では停車駅を取得する技術について説明する。停車駅の取得にはセンサ群2の出力と系統データ記憶部14bに格納された駅名とを用いる。
すなわち、入力装置31によって乗務員が系統をあらかじめ指示することにより、統括制御部3では入場機1aと出場機1bとのいずれかの記憶装置14から運行系統データを読み出し、列車を運行する系統に含まれる停車すべき各駅名を抽出する。また、停車すべき各駅名の抽出にあたっては運転方向センサ23の出力に基づいて読み出し順序を決定する。この処理は起点となる駅で停車している間に行われる。
列車が走行すればセンサ群2の一つである速度発電機21から速度に応じた周波数の交流が出力されるから、速度発電機21の出力を矩形波状に波形整形してパルス列を発生させ、統括制御部3において単位時間毎のパルス数を計数すれば車軸の回転速度を求めることができ、またパルス数の総数を計数すれば車軸の回転数を求めることができる。つまり、列車の速度と走行距離との目安を得ることができる。もっとも、車輪は空転したり滑走したりすることがあるから、列車の速度と走行距離とを精度よく求めることができるわけではない。
一方、統括制御部3では、センサ群2として設けた扉センサ22により扉の開状態が検出されている間には列車が駅に停車していると判断し、また扉センサ22により扉の閉状態が検出されるとともに走行センサ24により停止状態が検出されていなければ、駅間で走行していると判断する。さらに、走行センサ24により停止状態が検出されていないときには扉を開くことができないようにインターロックを行う。
統括制御部3では、列車が駅に停車すると、速度発電機21の出力により求めた走行距離を出場機1bに与え、出場機1bでは走行距離が与えられると運賃表記憶部14aに格納されたキロ程の三角表データと照合する。この照合によって出場機1bでは停車駅を求めることができる。ただし、走行距離は必ずしも正確ではないから、場合によっては出場機1bが求めた停車駅が実際に停車している駅とは異なっている場合もある。そこで、出場機1bが求めた停車駅を候補として表示器32に表示し、乗務員による確認を促すようにしてある。
表示器32に表示された停車駅が正しければ、乗務員は入力装置31を用いて確認の操作を行い、停車駅が誤っていれば、停車駅を修正することができるようにしてある。また、場合によっては複数の駅が停車駅の候補として抽出されることもある。この場合には、複数の停車駅が候補として表示器32に表示されるから、乗務員は停車駅の候補から正しい停車駅を入力装置31により指示する。
出場機1bにおいて停車駅が確定すると、停車駅が入場機1aにも通知され、入場機11と出場機1bとがともに使用可能になる。このように、統括制御部3がセンサ群2の出力を主制御装置10に通知するから、主制御装置10は記憶装置14のデータを用いて停車駅を求めるのであって、主制御装置10が停車駅検出手段として機能する。
ところで、出場処理の際に乗車券から読み取った入場駅および停車駅を運賃の三角表データと照合する処理は以下のように行う。運賃の三角表データは運賃表記憶部14aに格納されているが、運賃表記憶部14aには各駅における入場処理や出場処理に必要なデータ以外の多くのデータが格納されているから、入場処理、出場処理、乗り継ぎ処理に際して運賃表記憶部14aと照合を行うと、運賃の精算に時間遅れが生じる。また、地上用自動改札機とは異なる処理が必要になる。
そこで、本実施形態では、停車駅を出場駅としたときの各入場駅との間の運賃のデータを運賃の三角表データから運賃レジスタ13に読み込んでおき、乗車券に記録された入場駅を運賃レジスタ13と照合することにより、運賃表データを時間遅れなく参照できるようにしてある。もっとも簡単には、図7(a)に示すように、図5に示した三角表データのうち停車駅を出場駅としたときのデータのみを読み込む。すなわち、縦列と横列とからともに停車駅を選択したときの他の駅との間の運賃が、停車駅を出場駅とするときの入場駅との間の運賃に相当するから、このようにして得られる1つの出場駅に対する各入場駅との運賃を運賃レジスタ13に読み込むのである。
運賃レジスタ13に読み込んだ運賃のデータを用いるようにすれば、地上用自動改札機において出場駅を固定している場合と同じ処理で運賃の精算が可能になり、出場機1bにおいて地上用自動改札機と同じアルゴリズムを用いることが可能になる。言い換えると、出場処理に際して三角表データの全体を検索する場合のような大きな処理負荷にならず、地上用自動改札機と同程度の軽負荷になるから地上用自動改札機と同様の処理が可能になる。
ところで、上述したように停車駅が確定してから三角表データの内容を運賃レジスタ13に読み込むと、列車が停車してから出場処理が可能になるまでに時間遅れが生じる。この時間遅れを少なくするには、列車が停止する前に三角表データから運賃レジスタ13にデータを展開すればよい。すなわち、停車駅が確定すれば、系統データ記憶部14bを参照することにより、次駅以降に停車する予定の停車予定駅を取得することができる。そこで、列車が停車駅に停車してから次駅に到着するまでの期間に、少なくとも次以降の停車予定駅に関するデータを運賃レジスタ13に展開しておけば、列車の停止から出場処理が可能になるまでの時間を短縮することができる。
ここに、停車駅は走行距離から求めているから必ずしも正確ではなく、また催しの開催などによって停車駅が変更になる場合もある。このような場合には、1つの出場駅に関するデータを運賃レジスタ13に読み込んでいても、当該データを使用することができない場合がある。そこで、運賃レジスタ13には、少なくとも次の停車予定駅を含む複数の駅を出場駅としたときの他の駅との間の運賃のデータを読み込んでおくのが望ましい。たとえば、図7(b)のように4駅分のデータを読み込んでおけば、走行距離から求めた停車駅が誤っている場合でも、運賃レジスタ13のうちのどのデータを用いるかを変更するだけで迅速に対応することが可能になる。
運賃レジスタ13に展開しておく駅数は一定とする。したがって、使用済みのデータは運賃レジスタ13から消去することになる。運賃レジスタ13のデータはFIFOとして格納してあり、運賃レジスタ13のデータを更新する際には、古いデータから順に消去する。通過した駅のデータはただちに消去することができるが、停車駅の前後の規定数の駅に関するデータを消去せずに保持していてもよい。つまり、運賃レジスタ13には、停車駅を含む停車駅以降の規定数の駅を出場駅とした場合の運賃のデータを保持する場合と、停車駅を含み停車駅の前後の規定数の駅を出場駅とした場合の運賃データを保持する場合とがある。後者の場合には入力装置31を用いて停車駅を変更した場合であっても運賃レジスタ13の参照によって対応することが可能になる。
本発明の実施形態を示すブロック図である。 同上を用いるシステムの概略構成図である。 同上の配置例を示す図である。 同上における運行系統の例を示す図である。 同上に用いる三角表データの例を示す図である。 同上に用いる運行系統データの例を示す図である。 同上に用いる運賃レジスタのデータ例を示す図である。
符号の説明
1a 車上用改札装置(入場機)
1b 車上用改札装置(出場機)
2 センサ群
3 統括制御部
10 主制御装置
11 リーダライタ(改札機本体)
14 記憶装置
14a 運賃表記憶部(運賃表記憶手段)
14b 系統データ記憶部
21 速度発電機
22 扉センサ
23 運転方向センサ
24 走行センサ
31 入力装置(操作手段)
32 表示器(表示手段)
50 列車

Claims (4)

  1. 列車に搭載され利用者が所持する乗車券との間でデータの読み書きが可能である改札機本体と、利用者が乗降する駅を駅間の運賃に対応付けている運賃表データが格納された運賃表記憶手段と、列車が停車する駅の順序と各駅における自動改札機の有無とを格納した系統データ記憶部と列車の運転状態を検出するセンサ群の出力とを用いて列車が停車している停車駅を求める停車駅検出手段と、停車駅検出手段で求めた停車駅が自動改札機の設置されていない駅であるときに改札機本体を介して乗車する利用者の乗車券に停車駅を入場駅として記録し、降車する利用者の乗車券に記録された入場駅に対して停車駅を出場駅として運賃表記憶手段から得られる運賃に従って精算する改札機制御手段とを備え、改札機制御手段は、列車が駅で停車してから次の駅に到着するまでの期間に、少なくとも次の停車駅を出場駅とした場合の各入場駅との間の運賃が入場駅の指定によって抽出できるように、運賃表記憶手段に格納された運賃表データのうち運賃を抽出する範囲を制限する機能を有することを特徴とする車上用自動改札装置。
  2. 前記停車駅検出手段は、列車が停車している停車駅を検出すると停車駅の後に停車する規定数の停車予定駅を求める機能を有し、前記改札機制御手段は、停車予定駅を出場駅とした場合の他の駅との運賃を運賃表記憶手段から抽出する機能を有し、前記改札機本体は、少なくとも停車予定駅を含む所定数の駅を出場駅としたときの他の駅との間の運賃を保持する運賃レジスタと、運賃レジスタに保持された運賃を用いて運賃を精算する精算処理手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の車上用自動改札装置。
  3. 前記運賃レジスタは停車駅より前に停車した規定数の既停車駅に関して他の駅との間の運賃を保持しており、運賃レジスタに保持された各駅のうち前記改札機本体で次に停車駅として使用する駅名を表示可能な表示手段と、運賃レジスタに保持された各駅のうち停車駅として用いる駅名を変更可能な操作手段とが付加されていることを特徴とする請求項2記載の車上用自動改札装置。
  4. 前記運賃表記憶手段は各駅間のキロ程を格納しており、前記停車駅検出手段は、列車が停車した駅においてキロ程の参照により推定した停車駅の候補を前記表示手段に表示するとともに、表示手段に表示された停車駅の候補を前記操作手段により確定させる機能を有していることを特徴とする請求項3記載の車上用自動改札装置。
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