JP4599704B2 - プリンタ、プリンタの駆動方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
ユーザーがヘッド交換可能であり、そのヘッドを再使用することができるタイプのプリンタにおけるプリンタ、プリンタの駆動方法、ヘッドカートリッジ、ヘッドカートリッジ検査装置、及びヘッドカートリッジの検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードコピーを目的とした代表的な記録装置として、電子写真方式、インクジェット方式、ワイヤドット方式、感熱記録方式、熱転写方式が良く知られている。これらの方式の中で、文字品質と写真画質の両立、コンピュータ、デジタルカメラ等広範囲な入力方式への対応、印画速度の速さ、動作時の静粛性等の理由からインクジェット方式が広く用いられている。インクジェット方式は記録ヘッド上の徹細なインク吐出部からインクを被転写物に向かい吐出させる方式であり、騒音が少なく比較的小型化が容易であるという特徴を有している。
また、インクジェット方式において、写真画質を実現するような高画質化、印刷の高速化が進められている。以下に、これらを実現させるためのその技術について例示する。
【0003】
第1に、インターレース方式と呼ばれるものが挙げられる。インターレース方式において、用紙が一定の速度で送られ、ヘッドがインクを吐出しながら用紙の送り方向と垂直な方向に移動する。すると、ヘッドが紙に対してラインごとに順次印画を行い、高密度の画像が用紙上に形成される。また、この方法を発展させることで、ヘッドの持つノズル間隔の解像度を上回る解像度を実現することができ、高解像度の画像形成が実現できる。
【0004】
第2に複数のノズル列をもつ方法が挙げられる。すなわち、ヘッドの吐出列密度を上げず、さらに前記したインターレースも行わず高解像度を実現する方法である。この方法において、同一色のノズル列が複数配置され、各々のノズル位置の位相をずらす構造が用いられる。具体的には、例えば特開平10−44412号公報に開示されているように、ヘッド基材には、その両側にノズル列が配置されており、中央部にインク注入口が設けられている。そして、この注入口から両側に振り分けたインク導入口よりインクが注入され、両側のノズルピッチの位相がずらされることにより解像度として各ノズル列の2倍を実現している。この方法は、基本的な吐出部レイアウトを変更せずに解像度を2倍に高められる優れた方式である。
【0005】
また、もう一つの重要な課題は、高速化の追求である。ノズル数を増やし用紙の幅とほぼ同一の幅を有するページ幅ヘッドを構成すれば高速化が実現できることは以前から良く知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したいずれの方法においても、紙とヘッドが相対的に移動しながら、ヘッドがノズルから紙に向かってほぼ垂直にインクを吐出する。すると、インクがライン毎に紙に着弾し画像を形成していく。ここで、高画質の印刷を行うため、紙を送るときの搬送速度、ヘッドと紙の間隔及びインクを吐出させるときの吐出速度が重要なパラメータとなる。すなわち、インクが吐出してから着弾するまでの時間はヘッドと紙の間隔と吐出速度で決まり、この着弾するまでの時間と搬送速度により、インクの吐出タイミングが決まる。
【0007】
しかし、ノズルから吐出するインクが紙に向かって垂直に吐出されない場合がある。また、ノズルから吐出されるインクの吐出速度が遅すぎるもしくは速すぎてしまう場合がある。
これらは、ヘッド基材と保持部材上の貼り合わせ組立精度やヘッド吐出口の位置精度ばらつき、組立時の熱変形、応力による影響等から発生するものである。吐出したインクの着弾する位置がずれてしまうと、画質の劣化を招いてしまうという問題がある。
また、このような製造誤差等を抑制し画質の向上を図るためには、機械的、組立精度的な負担が大きくなってしまう。さらに、ヘッドが完成した後は何れの場合においても、ノズルのばらつきや吐出速度のばらつき等は、機械的に修正することはできない。
【0008】
図24は、ページ幅ヘッドを用いた位置精度のばらつき、特にヘッドのノズル列に対し直角方向のばらつきを示すグラフ図であり、図24を参照して具体的に説明する。なお、図24において、吐出基準位置は縦軸の0μmであり、ここでずれ量が0になることを意味する。
まず、図24(A)は、ページ幅ヘッド(ラインヘッド)の単色における全てのノズル列を一つの基材で構成した場合の吐出基準位置に対するインク着弾位置ずれの例である。図24(A)に示すように、単色におけるヘッドカートリッジにおいて、ノズルによって紙に対するインクの着弾位置にばらつきが生じていることがわかる。
【0009】
また、図24(B)は、小サイズのヘッド基材をたとえば4色のインクの色の数だけ並べたページ幅ヘッド(ラインヘッド)の場合の吐出基準位置に対する着弾位置ずれの例である。図24(B)に示すように、複数色におけるヘッドカートリッジにおいて、ノズルによって紙に対するインクの着弾位置にばらつきが生じていることがわかる。
図24(C)は、ページ幅ヘッドを小サイズのヘッド基材を並べて実現し、さらに複数色(本例では2色)を同一保持部材上にページ幅ヘッド(ラインヘッド)を設けた場合の吐出基準位置に対する着弾位置ずれの例である。図24(C)に示すように、複数のヘッド基材におけるヘッドカートリッジにおいて、ノズルによって紙に対するインクの着弾位置にばらつきが生じていることがわかる。
【0010】
このように、いずれの方式で作製されたヘッドカートリッジにおいても、ノズル毎にインクの着弾位置がばらついてしまい、画質の低下を招いててしまうという問題がある。
すなわち、ラインヘッドにおけるヘッド製造時に発生するノズルの位置ずれは、そのままヘッド幅方向の印画位置のばらつきとなり、着弾したインク液滴同士のつながりが一定にならず、濃度にばらつきが生じることとなる。さらに、カラー印刷を行う場合、各色間で色相ばらつきが生じてしまう。このように、印刷画像の品質が低下してしまうという問題がある。
【0011】
ところで、近年の廃棄物処理の問題やエコロジーの観点から、たとえばインクがなくなったときに、インクを補充してヘッドカートリッジの再利用を行うことが考えられている。ここで、使用済みのヘッドカートリッジにおいて、使用したことによるインクの吐出角度の変形及び吐出速度の変異することがある。この場合、ヘッドカートリッジが使用できないものとして廃棄してしまうと、廃棄物処理の問題やエコロジーの観点から好ましくない。
【0012】
そこで本発明は上記課題を解決し、高解像度及び高速性を実現することができるとともに、ヘッドカートリッジの再生効率を高めることができるプリンタ、プリンタの駆動方法、ヘッドカートリッジ、ヘッドカートリッジ検査装置、及びヘッドカートリッジの検査方法を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、ラインヘッドを有するヘッドカートリッジの複数の吐出アクチュエータをそれぞれ駆動させることにより、ノズルからインク液滴を吐出して印刷を行うプリンタにおいて、複数の前記吐出アクチュエータを駆動させるヘッド駆動部と、前記ヘッド駆動部によって駆動する前記吐出アクチュエータ動タイミングを調整時間によって調整する時間調整部と、前記ノズルの特性に基づいて設定された複数の前記吐出アクチュエータ毎の駆動条件を含むヘッド制御パラメータを取得する情報取得部と、前記時間調整部の動作を制御するとともに、前記情報取得部からの前記ヘッド制御パラメータに基づいて複数の前記吐出アクチュエータ毎に前記時間調整部に前記調整時間を設定する制御部とを有するプリンタにより、達成される。
【0014】
また、上記目的は、ラインヘッドを有するヘッドカートリッジの複数の吐出アクチュエータを駆動することにより、ノズルからインク液滴を吐出し印刷を行うプリンタの駆動方法において、前記ノズルの特性に基づいて設定された複数の前記吐出アクチュエータ毎の駆動条件を含むヘッド制御パラメータを取得し、前記ヘッド制御パラメータに基づいて、複数の前記吐出アクチュエータ毎にそれぞれ調整時間を算出し、複数の前記吐出アクチュエータを複数の前記吐出アクチュエータ毎に前記調整時間だけ遅延させた駆動タイミングで駆動させるプリンタの駆動方法により、達成される。
【0015】
請求項1又は請求項8の構成によれば、吐出アクチュエータがヘッド駆動部により作動すると、ラインヘッドに設けられたノズルからインク液滴が吐出される。このインク液滴が対象物に着弾することで印刷が行われる。
通常、ヘッド駆動部が吐出アクチュエータを駆動するタイミングとして、ヘッド幅方向において同じ位置に設けられた吐出アクチュエータはほぼ同時に駆動される。
このとき、ラインヘッドに設けられた複数のノズルは、製造誤差や使用頻度等により、それぞれその形状もしくは形成角度を異にする場合がある。そこで、ヘッド駆動部が吐出アクチュエータを駆動するタイミングを調整する時間調整部を設けるとともに、制御部が調整する時間をヘッド制御パラメータに基づいて設定し、時間調整部を制御する。これにより、各ノズルごとにおけるインク液滴の着弾位置のずれをなくすように補正することができるようになる。
【0016】
特に、ヘッド制御パラメータとして、検査時における対象物と前記ヘッドカートリッジの相対速度である基準搬送速度、前記対象物と前記ヘッドカートリッジの間隔である基準印刷間隔及び前記ノズルから吐出されたときのインク液滴の着弾位置のずれ量が設定されている。一方、制御部は印刷時における搬送速度及び印刷間隔を取得する。そして、制御部は、このヘッド制御パラメータと印刷時における搬送速度及び印刷間隔に基づいて複数の前記吐出アクチュエータ毎に前記調整時間を設定する。
このように実際の印刷環境におけるパラメータをも含めた時間調整を行うことで、より正確な吐出アクチュエータの駆動制御を行うことができる。
【0017】
上記目的は、インクを収容した筐体と、前記筐体に設けられており、複数のノズルからインク液滴を吐出させるための複数の吐出アクチュエータを備えたラインヘッドを有し、複数の前記吐出アクチュエータを駆動させるヘッド駆動部と、前記ヘッド駆動部によって駆動する前記吐出アクチュエータの駆動タイミングを調整時間によって調整する時間調整部と、前記ノズルの特性に基づいて設定された複数の前記吐出アクチュエータ毎の駆動条件を含むヘッド制御パラメータを取得する情報取得部と、前記ヘッド駆動部の動作を制御するとともに、前記情報取得部からの前記ヘッド制御パラメータに基づいて複数の前記吐出アクチュエータ毎に前記時間調整部に前記調整時間を設定する制御部とを備え、複数の前記吐出アクチュエータをそれぞれ駆動させることにより、前記ノズルからインク液滴を対象物に吐出して印刷を行うプリンタに設置されるヘッドカートリッジにおいて、前記筐体に設けられていて、前記情報取得部に送る記ヘッド制御パラメータを格納するヘッド識別部を有することを特徴とするヘッドカートリッジにより、達成される。
【0018】
請求項10の構成によれば、ヘッドカートリッジの筐体には、ヘッド識別部が設けられていて、このヘッド識別部にはラインヘッドにおける吐出アクチュエータの駆動条件を設定したヘッド制御パラメータが格納されている。そして、このヘッドカートリッジを用いて印刷を行う際、このヘッド制御パラメータが参照されて印刷が行われる。
このように、各ヘッドカートリッジにそれぞれ対応したヘッド制御パラメータHCPを持たせることにより、各ヘッドカートリッジのそれぞれの吐出特性に対応した駆動を行うことができる。
【0019】
すなわち、各ヘッドカートリッジにより、ノズルの形状や形成角度等が異なり、またプリンタによってもヘッドカートリッジとたとえば紙等の印刷間隔及び紙の搬送速度等が異なる場合がある。そこで、各ヘッドカートリッジの特性を踏まえて設定されたヘッド制御パラメータを用いて印刷を行うことで、インク着弾位置のずれを低減することができるようになる。
【0020】
上記目的は、複数の吐出アクチュエータの駆動によりノズルからインク液滴を吐出するラインヘッドを備えたヘッドカートリッジを検査するヘッドカートリッジ検査装置において、前記ヘッドカートリッジから吐出されるインク液滴を吐出させたときのインク液滴の吐出状態を検出する機能を有する吐出検査機構と、前記吐出検査機構により取得された吐出状態を解析し、着弾位置のずれを補正するように前記ノズルの特性に基づいて設定された複数の前記吐出アクチュエータごとの駆動条件を含むヘッド制御パラメータを設定する制御装置とを有するヘッドカートリッジ検査装置により、達成される。
【0021】
また、上記目的は、複数の吐出アクチュエータの駆動によりノズルからインク液滴を吐出するラインヘッドを備えたヘッドカートリッジを検査するヘッドカートリッジ検査方法において、インク液滴を着弾させる付着部材に対してインク液滴を吐出させたときのインク液滴の吐出状態を検出し、インクの液滴の吐出状態から、着弾位置のずれを補正するように前記ノズルの特性に基づいて設定された複数の前記吐出アクチュエータごとの駆動条件を含むヘッド制御パラメータを設定するヘッドカートリッジ検査方法により、達成される。
【0022】
請求項13又は請求項17の構成によれば、付着部材に対してインクが吐出され、吐出検査機構によりインク液滴の吐出状態が検出される。この吐出状態に基づいて各吐出アクチュエータの駆動条件であるヘッド制御パラメータが設定される。
【0023】
通常、ヘッド駆動部が吐出アクチュエータを駆動するタイミングとして、ヘッド幅方向において同じ位置に設けられた吐出アクチュエータはほぼ同時に駆動される。このとき、ラインヘッドに設けられた複数のノズルは、製造誤差や使用頻度等により、それぞれその形状もしくは形成角度を異にする場合がある。そこで、各吐出アクチュエータごとの駆動条件を各ノズルごとにおけるインク液滴の着弾位置のずれをなくすようにヘッド制御パラメータとして設定することができるようになる。
【0024】
特に、ヘッド制御パラメータとして、検査時における対象物と前記ヘッドカートリッジの相対速度である基準搬送速度、前記対象物と前記ヘッドカートリッジの間隔である基準印刷間隔及び前記ノズルから吐出されたときのインク液滴の着弾位置のずれ量が設定されている。そして、印刷を行う際に、このヘッド制御パラメータと印刷時における搬送速度及び印刷間隔に基づいて印刷が行われる。
このように実際の印刷環境におけるパラメータをも含めた時間調整を行うことで、より正確な吐出アクチュエータの駆動制御を行うことができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0026】
プリンタの第1の実施の形態
図1と図2は本発明のプリンタの好ましい実施の形態を示す斜視図であり、図1と図2を参照してプリンタについて説明する。
図1のプリンタ100の筐体101には給紙台102が着脱可能に配置されていて、給紙台102には印刷対象物である紙Wが収容されている。
筐体101にはヘッドカートリッジ120を着脱可能に保持するためのホルダ121が設けられている。このホルダ121は、インク液滴を吐出するラインヘッド120aが下を向くようにヘッドカートリッジ120を保持する。このときラインヘッド120aは、給紙台102から給紙されて送られる紙Wと印刷間隔Dpで対面するように位置決めされる。またラインヘッド120aには、紙Wに対してインク液滴を吐出するためのノズルが形成されている。
【0027】
ホルダ121にはヘッドカートリッジ120の状態を検出するためのヘッド検出部202が配置されている。ヘッド検出部202は、たとえばヘッドカートリッジ120に印加されるヘッド電圧を測定し、ヘッドカートリッジ120に収容されているインクの残量を検出する機能を有している。
プリンタ機構部210は、印刷する紙Wを矢印Y1方向に送る機能を有しており、モータM、駆動系110、給紙ローラ111、反転ローラ112、ガイド113、搬送路114、紙送りローラ115等を有している。
モータMは、プリンタ100における駆動源であり、歯車を有する駆動系110を介して給紙ローラ111や反転ローラ112と接続されている。そして、モータMが駆動すると、反転ローラ112と給紙ローラ111は回転する。
【0028】
給紙ローラ111は、給紙台102に格納された紙Wに接触しており、R1方向に回転することで紙Wを1枚ずつガイド113側に送る。
反転ローラ112は円筒形状であり、R2方向に回転し、搬送された紙Wを搬送路114側に搬送するものである。また、ガイド113は、円筒形状の反転ローラ112の外周に沿った曲面を有する平板状の部材である。従って、給紙ローラ111によって搬送されてきた紙Wは、反転ローラ112のR2方向への回転とガイド113の間で反転され搬送路114へ送られる。
【0029】
搬送路114は、反転された紙Wをヘッドカートリッジ120側に向かって搬送する際のガイド機能を有しており、ホルダ121(ヘッドカートリッジ120)の下側に配置されている。搬送路114の上には搬送路114に送られた紙Wを排出口116側に搬送する紙送りローラ115が配置されている。そして、紙Wが紙送りローラ115によりラインヘッド120aの下部を通過する際に、ラインヘッド120aからインク液滴が所定のタイミングで紙W上に着弾する。すると、文字や画像を印刷した紙Wが排出口116から排出される。
【0030】
図3は本発明のプリンタの好ましい実施の形態を示すブロック図であり、図3を参照してプリンタ100について説明する。
プリンタ100において、制御部150は、中央演算ユニット(CPU)151、RAM(Random Access Memory)152、ROM(Read Only Memory)153等を有している。中央演算ユニット151は、ヘッド駆動ユニット300、プリンタ制御部211等の動作を制御し、プリンタ100全体の動作を制御するものである。
また、中央演算ユニット151は、情報取得部400から送られたヘッド制御パラメータHCPを認識し、そのヘッド制御パラメータHCPに基づいてヘッド駆動ユニット300を制御する機能を有している。さらに、制御部150は、プリンタ診断部212から紙Wの搬送速度Sp及び紙Wとヘッド120aの印刷間隔Dpを取得する機能を有している。
【0031】
RAM152は、入力インターフェイス230を介して送られる印刷すべきデータを制御部150に送られてくるデータを一時的に記憶(ラッチ)するものである。また、RAM152は、中央演算ユニット151に送られるヘッド制御パラメータHCPを一時的に記憶する機能を有している。
ROM153はプリンタ100の動作するためのプログラムを記憶し、表示部160等から出力すべき表示情報を記憶するものである。
ヘッド駆動ユニット300は、ヘッドカートリッジ120の吐出アクチュエータR1〜Rnに駆動電圧を印加するものであって、後述するヘッド駆動部310と時間調整部320を有している。このヘッド駆動ユニット300の動作は、制御部150により制御されている。
【0032】
プリンタ制御部211は、プリンタ機構部210の各部材を駆動させる機能を有しており、制御部150により制御されている。すなわち、プリンタ制御部211は、たとえばモータMに駆動電流等を印加し、プリンタ機構部210を動作させる機能を有している。
プリンタ診断部212は、プリンタ機構部210の各部材の状態を監視する機能を有しており、たとえば給紙台102に収容された紙Wの残量や、ガイド113及び搬送路114における紙詰まり等を検出する機能を有している。そして、プリンタ診断部212は検出結果を中央演算ユニット151に送る機能を有している。また、プリンタ診断部212は、紙Wの搬送速度Sp及び紙Wとヘッド120aの印刷間隔Dpを検出し制御部150に送る機能を有している。
出力インターフェイス240は、制御部150から外部へ情報を出力するものであって表示部160等と接続されている。制御部150は、この出力インターフェイス240を介して表示部160等に表示情報を送る。
【0033】
情報取得部400は、ラインヘッド120aを駆動するときの条件を設定したヘッド制御パラメータHCPを取得し、中央演算ユニット151に送る機能を有している。この情報取得部400は、たとえば情報読み取り部401、通信手段410、入力インターフェイス230等を備えている。
【0034】
情報読み取り部401は、たとえばヘッドカートリッジ120に取り付けられたバーコード、ドットコード、色材からヘッド制御パラメータHCPを認識できる光学読み取り装置からなっている。あるいは、情報読み取り部401は、たとえばヘッドカートリッジ120のカートリッジ本体121に形成された凹凸、溝、穴を認識してヘッド制御パラメータHCPを読み取る機械的機構を有している場合もある。さらに、情報読み取り部401は、カートリッジ本体121に取り付けられたICカード、磁気情報記録媒体もしくは光情報記録媒体に格納されたヘッド制御パラメータHCPを接触もしくは非接触で読み取る機能を有している場合もある。そして、情報読み取り部401は、取得したヘッド制御パラメータHCPを制御部150に送る機能を有している。
【0035】
通信手段410は通信制御部411及びモデム412を有しており、たとえばヘッドカートリッジ120のヘッド制御パラメータHCPの情報を有するサーバに接続し、プリンタ100に装着されているヘッド制御パラメータHCPを取得する機能を有している。
具体的には、ヘッドカートリッジ120は固有の認識番号ID−Hを有しており、またプリンタ100も認識番号ID−Pを有している。そして、プリンタ100にヘッドカートリッジ120を装着した状態で識別番号ID−H、ID−Pが通信制御部411及びモデム412からサーバ側に伝えられる。すると、通信制御部411及びモデム412が、サーバから発信されたヘッド制御パラメータHCPを受信するようになっている。
【0036】
入力インターフェイス230は、たとえばプリンタ100とコンピュータと接続する部位である。従って、コンピュータに入力されたヘッド制御パラメータHCPが、この入力インターフェイス230を介して制御部150に送信することが可能となる。このとき、コンピュータがヘッド制御パラメータHCPを取得する方法として、磁気情報記録媒体や光情報記録媒体等の記録媒体から取得する方法や、いわゆるインターネット等のネットワークを用いて取得する方法が挙げられる。
【0037】
このヘッド制御パラメータHCPは、たとえば各吐出アクチュエータR1〜Rnごとに設定された調整時間ΔT(=ΔT1〜ΔTn)を有している。そしてある吐出アクチュエータRkの調整時間ΔTkは、以下の式(1)で算出される。
なお、式(1)の導出方法については後述する。
ΔTk=D((1/Vk)−(1/V))+(D/S)tanθk・・・(1)
式(1)において、Dは検査時における対象物Wとラインヘッド120aの基準印刷間隔、Sは対象物Wとラインヘッド120aの相対速度(基準搬送速度)、Vkはノズルkから吐出されるインク液滴の吐出速度、Vは平均的な(初期設定された)インク液滴の吐出速度、θkはノズルkから吐出されるインク液滴の吐出角度を示している。
【0038】
図4はヘッド駆動ユニット300の周辺部位を示すブロック図であり、図4を参照してヘッド駆動ユニット300について説明する。
ヘッド駆動ユニット300は、ヘッド駆動部310、時間調整部320を有している。ヘッド駆動部310は、吐出アクチュエータR1〜Rnにそれぞれ駆動電圧Vccを供給する機能を有しており、制御部150によりその動作が制御されている。
【0039】
時間調整部320は、ヘッド駆動部310から供給される駆動電圧Vccを各吐出アクチュエータR1〜Rnに印加するときに、調整時間ΔTだけ調整して送る機能を有している。具体的には、時間調整部320は、複数の吐出アクチュエータR1〜Rnに対応したたとえばプログラマブルディレイ回路からなる複数の時間遅延部321を有している。
この時間遅延部321は、制御部150から送られる調整時間ΔTに基づいて、ヘッド駆動部310から印加される駆動電圧Vccを調整時間ΔTだけ遅延させる機能を有している。
【0040】
プリンタ駆動方法の実施の形態
次に、図5は本発明のプリンタの駆動方法の好ましい実施の形態を示すフローチャート図であり、図1〜図5を参照してプリンタ100の駆動方法について説明する。
まず、ST1において、ヘッド制御パラメータHCPが、情報取得部400を介して制御部150に送られる。このヘッド制御パラメータHCPの取得は、プリンタ100の電源投入時でもよいし、印刷開始時でも良い。
【0041】
すると、ST2において、各吐出アクチュエータR1〜Rn(各ノズル)毎の調整時間ΔTが制御部150によりヘッド制御パラメータHCPから読み取られる。読み取られた調整時間ΔTは、制御部150からヘッド駆動ユニット300に送られる。すると、各吐出アクチュエータR1〜Rnごとに設定された調整時間ΔT1〜ΔTnが、各吐出アクチュエータR1〜Rnにそれぞれ接続されている時間遅延部321に入力される。
【0042】
そして、印刷が開始されると、ST3において、駆動電圧Vccがヘッド駆動部310から時間調整部320を介して吐出アクチュエータR1〜Rnへ印加される。ここで、ST4において、駆動電圧Vccが、時間調整部320に設定された調整時間ΔT1〜ΔTnだけ遅延され、各吐出アクチュエータR1〜Rnへ印加される。すると、各ノズルからインク液滴が吐出し印刷が行われる。
【0043】
具体的には、図6(A)に示すある周波数の基本クロックに基づいて、所定の吐出周期で図6(B)に示す駆動電圧Vccが各吐出アクチュエータR1〜Rnに印加される。そして、図6(C)に示すような、入力データの有無により駆動電圧Vccが各吐出アクチュエータR1〜Rnに印加されるか否かがヘッド駆動部310により判断される。ここで、図6(D)に示す調整時間ΔTkが時間遅延部321に設定されている場合、図6(E)に示すように、駆動電圧Vccがこの調整時間ΔTkだけ遅延して吐出アクチュエータR1〜Rnに印加されることとなる。
【0044】
このように、印刷の対象物Wとラインヘッド120aが相対移動している中で、インク液滴の吐出タイミングを調整することにより、インク液滴の着弾位置を調整することができるようになる。従って、インク液滴の着弾位置にずれが生じてしまうような形状もしくは構造等を有するノズルがラインヘッド120a内に存在していても、ヘッド制御パラメータHCPを用いて吐出タイミングを調整することにより、この着弾位置のずれを補正することができるようになる。従って、印刷結果の高品質化を図ることができるようになる。
【0045】
具体的には、図7と図8は、上述したプリンタの駆動方法で印刷したときに、紙Wに着弾したインクドットの様子を示す模式図である。なお、図7と図8において、ラインヘッド120aは、略A4幅をもち、600dpiの解像度で約5000のノズルを有するインクジェットヘッドであり、その中の10ノズル分について示している。また、インク1滴のサイズは略3pl、インクが付着した状態でのインク滴径は、約20μmであった。また、図7は単色のヘッドカートリッジ120における着弾状態を示し、図8は4色のヘッドカートリッジ120における着弾状態を示している。
【0046】
図7(A)は、調整時間ΔTの補正を行わずにインクを吐出した場合におけるインク着弾状態を示している。図7(A)において、インクの着弾位置は、基準位置に対して約±20μm、吐出角度にして約±0.6°ほどばらついていた。
一方、図7(B)は、調整時間ΔTに基づいてインクを吐出するタイミングをずらした場合におけるインク着弾状態を示している。図7(B)において、インクの着弾位置は、ほぼ基準位置と同一の場所に並んでいることがわかる。
【0047】
図8(A)は、調整時間ΔTの補正を行わずにインクを吐出した場合におけるインク着弾状態を示している。図8(A)において、インクの着弾位置は、各色ごとに見たとき、基準位置に対して約±20μm、吐出角度にして約±0.6°ほどばらついていた。また、各色間のずれ量は、最大約50μmであった
一方、図8(B)は、調整時間ΔTに基づいてインクを吐出するタイミングをずらした場合におけるインク着弾状態を示している。図8(B)において、インクの着弾位置は、各位ごと及び各色間において、ほぼ基準位置と同一の場所に並んでいることがわかる。
【0048】
このように、インク液滴を吐出するタイミングを調整時間ΔTを用いて各ノズル毎に補正することで、製造誤差もしくは使用頻度等による着弾位置のずれを低減することができるため、印刷画像の高品質化を図ることができる。また、ノズル間のばらつき以外にヘッド間のばらつき、所謂色間の位置補正も行うことができる。
さらに、ヘッド制御パラメータHCPは、ヘッドカートリッジ120の個体別に持つことが可能であるので、ラインヘッド120aからのインク吐出はそのヘッド個体に適当な方法で行うことが可能であり最適な駆動制御を行うことができる。
また、ヘッドカートリッジ120を再利用(リサイクル)する場合に、ヘッドカートリッジ120の使用によりインクの吐出にばらつきが生じてしまった場合でも、各ノズルごとに補正を行うことで、再利用したときにでも高品質の印刷を提供することができる。
【0049】
プリンタ及びプリンタ駆動方法の第2の実施の形態
図9と図10は、プリンタ及びプリンタ駆動方法の第2の実施の形態を示す図であり、図9と図10を参照してプリンタ100及びプリンタ駆動方法について説明する。この第2の実施の形態と上述した第1の実施の形態と異なる点はヘッド制御パラメータHCPのデータ構造及び調整時間ΔTを算出するための式である。
【0050】
図9において、制御部150に送られるヘッド制御パラメータHCPは、基準印刷間隔D、基準搬送速度S、基準ずれ量ΔX、ΔYを有している。
基準印刷間隔Dは、後述するヘッドカートリッジ検査装置500においてヘッド120aの検査をしたときの、ヘッドカートリッジ120と付着部材521の間隔を示すものである。基準搬送速度Sは、後述するヘッドカートリッジ検査装置500においてラインヘッド120aの検査をしたときの、ヘッドカートリッジ120と付着部材521の相対速度を示すものである。
【0051】
基準ずれ量ΔXは、ヘッドカートリッジ120と付着部材521の相対速度S=0のときのずれ量であって、基準ずれ量ΔYはヘッドカートリッジ120と付着部材521の所定の基準相対速度Sのときのずれ量を示している。なお、基準ずれ量ΔX、ΔYは各ノズルごとに設定されていて、たとえばノズルkのヘッド制御パラメータHCPは、そのノズルk固有の基準ずれ量情報ΔXk、ΔYkを有していることとなる。
【0052】
次に、図10を参照して本発明のプリンタ駆動方法の別の実施の形態について説明する。
まず、ST11において、ヘッド制御パラメータHCPが、情報取得部400から制御部150に送られる。すると、ST12において、各吐出アクチュエータR1〜Rnに対応した調整時間ΔTが式(2)に基づいて算出される。なお式(2)の導出方法は後述するものとする。
ΔT=ΔYk/Sp×(Dp/D)+(ΔXk/S)×(Dp/D)×(Sp/S)・・・(2)
ここで、Dpはプリンタ100におけるヘッドカートリッジ120と紙Wの印刷間隔、Spはプリンタ100における紙Wの搬送速度を示している。この式(2)はたとえばROM153に記憶されていて、中央演算ユニット151により実行される。
【0053】
そして、ST13において、印刷が開始されると、制御部150の指令によりヘッド駆動部310から吐出アクチュエータR1〜Rnに対してヘッド駆動電圧Vccが印加される。このとき、ST14において、駆動電圧Vccは、時間遅延部321により、調整時間ΔT1〜ΔTnだけ遅れて各吐出アクチュエータR1〜Rnに印加される。
【0054】
このように、検査したときのパラメータである基準印刷間隔D、基準搬送速度S及び基準ずれ量ΔX、ΔYのみを用いて、調整時間ΔTを算出するのではなく、検査したときの条件と実際のプリンタ100の印刷条件との比率を用いて、調整時間ΔTを算出している。これにより、より高精度な補正を行うことができ、より高品質な画質を提供することができる。
【0055】
すなわち、検査したときの基準搬送速度情報Sと基準間隔Dは、実際に印刷を行うプリンタ100の搬送速度Sp及び間隔Dpと異なることがある。さらに、各プリンタ100ごとにより、搬送速度Sp及び間隔Dpはそれぞれ異なるものとなってしまう場合がある。
そこで、式(2)を用いて実際のプリンタ100の印刷条件を含めた吐出アクチュエータR1〜Rnの駆動タイミングを補正することにより、これらの各プリンタ100の印刷条件に対応した調整時間ΔTを算出することが可能となり、より高精度な補正を行得ることができ、画質の向上を図ることができる。
【0056】
プリンタ及びプリンタ駆動方法の第3の実施の形態
ところで、図11に示すように、たとえばカラープリンタに用いられる複数のノズル列が形成されたラインヘッド120aの場合、これら複数のノズルからインク液滴を吐出する吐出アクチュエータもノズルに対応する数だけ必要となる。従って、このノズルの数だけ駆動電圧Vccを印加するタイミングを補正する必要がある。
図12は本発明のプリンタの第3の実施の形態における時間調整部を示すブロック図であり、図11と図12を参照してプリンタ1000について説明する。なお、図12のプリンタ100において図1のプリンタ100と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図12に示すように時間調整部1320は、時間遅延部321、接続切り換え部1330を有している。接続切り換え部1330は、時間遅延部321と吐出アクチュエータRの間に配置されている。そして、接続切り換え部1330は、印刷方向(矢印Y方向)に対して同位相の複数の吐出アクチュエータRと接続されている。
【0058】
たとえば、図11に示すように、異なる色のインク液滴を吐出するノズルa1、b1、c1、d1が矢印Y方向に対して同位相で配置されている。このノズルに対応した図12の吐出アクチュエータRa1、Rb1、Rc1、Rd1が同じ接続切り換え部1330に接続されている。そして、接続切り換え部1330は制御部150の指令により、各吐出アクチュエータRa1、Rb1、Rc1、Rd1と時間遅延部321の接続を切り換える機能を有している。
吐出アクチュエータRa1が駆動されるとき、接続切り換え部1330は時間遅延部321と吐出アクチュエータRa1を接続する。そして、ヘッド駆動電圧Vccが調整時間ΔTa1だけずらされて吐出アクチュエータRa1に印加される。
【0059】
次に、吐出アクチュエータRb1が駆動されるとき、接続切り換え部1330は時間遅延部321と吐出アクチュエータRb1を接続する。このとき、時間遅延部321には調整時間ΔTb1が制御部150により設定されている。そして、ヘッド駆動電圧Vccが調整時間ΔTb1だけずらされて吐出アクチュエータRb1に印加される。
このように、接続切り換え部1330が順次吐出アクチュエータRa1〜Rd1と時間調整部321の接続を切り換えて、各吐出アクチュエータRa1〜Rd1に対応した調整時間ΔTa1〜ΔTd1で駆動電圧Vccの印加タイミングが補正される。すべての吐出アクチュエータRa1〜Ran、Rb1〜Rbn、Rc1〜Rcn、Rd1〜Rdnについても同様の駆動制御がなされる。
【0060】
接続切り換え部1330に接続された吐出アクチュエータRa1〜Ran、Rb1〜Rbn、Rc1〜Rcn、Rd1〜Rdnは、それぞれ異なるノズル列である。そこで、時間遅延部1321と、吐出アクチュエータRa1〜Ran、Rb1〜Rbn、Rc1〜Rcn、Rd1〜Rdnを接続切り換え部1330が時分割でそれぞれ接続し、吐出タイミングの調整が行われる。
【0061】
具体的には、図13に示すように、4つのヘッドチップ126a〜126dに対して図13(B)〜図13(E)のような駆動電圧Vccが印加されるとき、時間遅延部321により、所定の調整時間ΔTだけ遅延され、図13(F)〜図13(I)に示すようなタイミングで駆動電圧Vccが印加される。
このように、印刷方向(矢印Y方向)に複数のノズル列を配置し、カラー印刷を行うことができるようにしても、ノズル形状等によるインク液滴の着弾位置のずれを補正することができ、印刷の高品質化を図ることができる。
【0062】
ヘッドカートリッジの実施の形態
図14は本発明のヘッドカートリッジの好ましい実施の形態を示す斜視図であり、図14を参照してヘッドカートリッジ120について説明する。
ヘッドカートリッジ120は、カートリッジ本体121、上蓋122、インクカートリッジ123、ラインヘッド120a等を有している。
カートリッジ本体121には、4つの中空部127a〜127dが形成されていて、この中空部129a〜129dの底面には、それぞれ穴128a〜128dが形成されている。この中空部129a〜129dにはそれぞれ色の異なる4つのインクタンクからなるインクカートリッジ123が収容される。穴128a〜128dは、インクカートリッジ123に収容されたインクをラインヘッド120aに供給するためのものである。
【0063】
また、カートリッジ本体121の上面には上蓋122が着脱可能に配置されている。従って、インクカートリッジ123に収容されたインクがなくなった場合、上蓋122をカートリッジ本体121からはずし、インクカートリッジ123を新しいものに交換する事ができる。なお、インクを再充填したインクカートリッジ123が再びカートリッジ本体121に収容されるようにしてもよい。このようにヘッドカートリッジ120にインクの再充填が行われることとなる。
【0064】
インクカートリッジ123は、吐出するインクを収容するものであって、カートリッジ本体121に対して着脱可能に配置されている。このインクカートリッジ123は、たとえばイエロー、マゼンタ、シアン及び黒に対応したインクタンクを有していて、穴128a〜128dを介してラインヘッド120aにインクを供給する。
【0065】
カートリッジ本体121の下面にはラインヘッド120aが取り付けられている。ラインヘッド120aは、ヘッドフレーム125、ヘッドチップ126及びヘッドフィルム127を有している。ヘッドフレーム125はたとえば4つの短冊状の開口部を有しており、この開口部にたとえば各色に対応した4つのヘッドチップ126a〜126dが取り付けられている。
【0066】
ヘッドチップ126は、インクカートリッジ123から供給されるインクをノズルから吐出させるためのサーマル素子や圧電素子等の吐出アクチュエータRを有している。そして、ヘッドチップ126に外部からヘッド電圧が印加されると、インク液滴が紙Wに着弾して印刷が行われる。
ヘッドチップ126はヘッドフィルム127によりヘッドフレーム125に保持されていて、ヘッドフィルム127にはインク液滴を吐出するための複数のノズル130が形成されている。
【0067】
ここで、複数のノズル130から吐出されるインク液滴の着弾する位置は、ノズル形状やノズルの形成角度等によりそれぞれ異なる場合がある。これは、ノズル形成時の製造誤差や使用頻度によるノズルの変形もしくは吐出アクチュエータRの機能変化等によるものと考えられる。インク液滴の着弾位置のずれは、印刷品質の低下を招くことがある。一方、ノズルの変形等は、ノズルの製造誤差や使用頻度等に依存するものであるため、各ヘッドカートリッジ120ごとに異なるものである。従って、複数のヘッドカートリッジ120に対してそれぞれ固有のヘッド制御パラメータHCPを設定し、ヘッドカートリッジ120を使用するときにそのヘッド制御パラメータHCPに基づいて印刷を行えば、印刷品質の低下を防止することができるようになる。
【0068】
このヘッド制御パラメータHCPをプリンタ100に伝送する方法として、ヘッドカートリッジにヘッド識別部を設ける方法、ヘッド制御パラメータHCPを情報記録媒体に格納して提供する方法、ヘッド制御パラメータHCPをネットワークを介してプリンタ100に伝送する方法が挙げられる。なお、ヘッド制御パラメータHCPは、上述したように、調整時間ΔTを格納した場合や、基準印刷間隔D、基準搬送速度S、基準ずれ量ΔX、ΔYを有する場合がある。
【0069】
具体的には、図15にヘッドカートリッジ120にヘッド識別部を設けた場合について例示している。図15(A)において、ヘッド識別部300は、カートリッジ本体121に貼られたバーコード131からなっていて、情報読み取り部401がこのバーコード131を読み込むことによりヘッド制御パラメータHCPを取得する。
【0070】
また、図15(B)に示すように、ヘッド識別部130は、カートリッジ本体121に貼られたドットコード132からなっていて、このドットコード132は、たとえばシール等の表面に複数の点(ドット)を描画したものでもよい。。
そして、情報読み取り部401がこのドットコード132を読み込むことによりヘッド制御パラメータHCPを取得する。
【0071】
さらに、図15(C)に示すように、ヘッド識別部130は、カートリッジ本体121に貼られた色材133からなっていて、この色材133は、たとえばシール等の表面に各ヘッドカートリッジ120ごとに異なる色パターンが形成されていてもよい。そして、情報読み取り部401がこの色材133を読み込むことによりヘッド制御パラメータHCPを取得する。
【0072】
図16においては、カートリッジ本体121に別途ヘッド識別部130が設けられた構造を有しているが、カートリッジ本体121にヘッド識別部130が形成されるようにしても良い。
具体的には、図16(A)に示すように、カートリッジ本体121の側面に、凹凸部134からなるヘッド識別部130が形成されており、情報読み取り部401が、凹凸部134とプリンタ100の接地面の相違によりヘッドカートリッジ120を識別するようにしてもよい。
【0073】
また、図16(B)に示すように、カートリッジ本体121の側面に、複数の溝部135からなるヘッド識別部130が形成され、情報読み取り部401がこの溝部135のパターンを認識することにより、カートリッジ120を認識する事ができるようにしても良い。
さらに、図16(C)に示すように、カートリッジ本体121の側面に、複数の穴部136からなるヘッド識別部130が形成され、情報読み取り部401がこの穴部136のパターンを認識することにより、カートリッジ120を認識する事ができるようにしても良い。
【0074】
また、図17(A)に示すように、ヘッド識別部130は、カートリッジ本体121に貼られた磁気情報記録媒体137からなっていて、情報読み取り部401がこの磁気情報記録媒体137を読み込むことによりヘッド制御パラメータHCPを取得するようにしてもよい。
さらに、図17(B)に示すように、ヘッド識別部130は、カートリッジ本体121に貼られた光情報記録媒体138からなっていて、情報読み取り部401がこの光情報記録媒体138を読み込むことによりヘッド制御パラメータHCPを取得するようにしてもよい。
【0075】
また、図17(C)に示すように、ヘッド識別部130は、カートリッジ本体121に貼られた接触型ICカード139からなっていて、情報読み取り部401がこの接触型ICカード139を読み込むことによりヘッド制御パラメータHCPを取得するようにしてもよい。ここで、図17(D)に示すように、ヘッド識別部130は、カートリッジ本体121に貼られた非接触型ICカード140からなっていて、情報読み取り部401がこの非接触型ICカード140を読み込むことによりヘッド制御パラメータHCPを取得するようにしてもよい。
【0076】
なお、カートリッジ120とは別に情報記録媒体にヘッド制御パラメータHCPを格納し、プリンタ100がこの情報記録媒体から入力インターフェイス230を介してヘッド制御パラメータHCPを読み込むことにより、カートリッジ120を認識するようにしても良い。
具体的には、図18(A)に示すように、ヘッドカートリッジ120に駆動パラメータを保持する手段は、ROM等のICチップとプリンタに対し電気的接続を得るための電極、あるいは図18(B)に示すように簡単に内容が書き換えできるEEPROMとの記録媒体に加えて非接触でプリンタ側に信号を送ることができる送信機等の手段を用いることができる。
【0077】
このように、各ヘッドカートリッジ120にそれぞれ対応したヘッド制御パラメータHCPを持たせることにより、各ヘッドカートリッジ120のそれぞれの吐出特性に対応した駆動を行い、出力結果の高品質化を図ることができる。
また、ヘッドカートリッジ120が再利用されるとき、使用によりインク液滴の着弾位置のずれが生じた場合であっても、ヘッド制御パラメータHCPを書き換えることにより、高品質な印刷状態を維持することができるようになる。従って、ヘッドカートリッジ120のリサイクル効率の向上を図ることができる。
【0078】
ヘッドカートリッジ検査装置の実施の形態
図19は本発明のヘッドカートリッジ検査装置の好ましい実施の形態を示す斜視図であり、図19を参照してヘッドカートリッジ検査装置500について説明する。
ヘッドカートリッジ補正装置500は、ヘッド保持機構510、吐出検査機構520、ヘッド駆動ユニット530、制御装置600等を有している。ヘッド保持機構510は、ヘッドカートリッジ120を保持するものであって、ベース501の上に配置されている。
【0079】
吐出検査機構520は、インク液滴の吐出状態を検出する機能を有しており、付着部材521、着弾認識部522、吐出確認部523等を有している。
付着部材521は、たとえば透明なガラスやプラスチック等のような、裏面からインクの着弾の様子を認識でき、伸縮しにくい材料からなっていて、ラインヘッド120aに対向して設けられている。また、付着部材521は、ベース501上に配置されたレール511、511により保持されていて、矢印Y方向に移動可能に設けられている。
【0080】
図20の着弾認識部522は、たとえば解像度の高いイメージセンサからなっていて、具体的にはCCDを用いたラインセンサー、スリットを用いたマイクロデンシトメータ、レーザーや絞り込んだ光源を用いたスキャナー等汎用の装置等により構成されている。着弾認識部522は、付着部材521に着弾したインク液滴を画像(イメージ)として認識する機能を有しており、取得した画像を制御装置600に送る機能を有している。なお、色を区別する方法としては、たとえば、着弾識別部522に各色に分解するフィルターを付け加えることが考えられる。
【0081】
ここで、着弾認識部522は、図20(A)に示すように、透明の付着部材521の下側に配置されるようにして、インク液滴が着弾された状態で送られてくる付着部材521を順次読み取るようにしてもよい。また、図20(B)に示すように、着弾認識部522が付着部材521のインク着弾面側に配置されるようにして、インク液滴が着弾された状態で送られてくる付着部材521を順次読み取るようにしてもよい。さらに図20(C)に示すように、着弾認識部522は、ミラー522aを介してインク液滴の着弾状態を取得してもよい。
吐出確認部523は、ノズルから吐出されるインク液滴の速度V及び吐出角度θを検出する機能を有している。ここで、吐出確認部523は、吐出角度θをノズルから付着部材521に向かって垂直方向を基準として測定する。
【0082】
図19の移動機構530は、付着部材521を矢印Y方向に移動させるものであって、モータ531と送りねじ532を有している。モータ531は送りねじ532を回転駆動させるものであって、駆動機構540により制御されている。送りねじ532は、付着部材521と接続されており、送りねじ532がモータ531の作動により回転すると、付着部材521が矢印Y方向に移動することとなる。
【0083】
駆動機構540は、ヘッドカートリッジ120に駆動電圧Vccを印加し、インク液滴を吐出させるとともに、モータ531を駆動して付着部材521を矢印Y方向に移動させる機能を有している。ここで、駆動機構540は、付着部材521の搬送速度S(ヘッドカートリッジ120と付着部材521の相対速度)がプリンタ100の紙Wの送り速度とほぼ同じになるようにモータ531を駆動する。
【0084】
制御装置600は、ヘッドカートリッジ検査装置500の動作を制御するものである。特に、制御装置600は着弾認識部522から送られる画像イメージを解析し、各ノズルにおける着弾位置のずれを把握する機能を有している。そして、制御装置600は、画像イメージに基づいて後述するようにヘッド制御パラメータHCPを生成する機能を有している。
【0085】
図21は、本発明のヘッドカートリッジ検査方法の好ましい実施の形態を示すフローチャート図であり、図19から図21を参照してヘッドカートリッジ検査方法について説明する。
まず、ST21において、ヘッドカートリッジ120がプリンタ100に装着される状態とほぼ同一の状態でヘッド保持機構510に取り付けられる。すなわち、ヘッドカートリッジ120と付着部材521の基準印刷間隔Dは、プリンタ100におけるヘッドカートリッジ120と紙Wの印刷間隔Dpとほぼ同一の状態となる。
【0086】
その後、ST22において、制御装置600の指令により、インク液滴がヘッドカートリッジ120の各ノズルから連続して吐出される。なお、インク液滴の吐出を安定させるために、一定期間において付着部材521にはインクが着弾しないようにする。たとえば、付着部材521がベース501から取り外された状態で、もしくはヘッドカートリッジ120を付着部材521に着弾しないように位置決めし、インク液滴が吐出される。
そして、インク液滴の吐出が安定すると、制御装置600の指令によりヘッドカートリッジ120からのインク液滴の吐出が停止する。この状態で、着弾認識部531によりラインヘッド120aのノズルの位置が認識され、ノズルの列方向(矢印X方向)の位置関係が制御装置600に認識される。
【0087】
その後、ST23において、インク液滴の吐出状態が検出される。具体的には、付着部材521を矢印Y方向に移動させながら、インク液滴がヘッドカートリッジ120から一滴だけ吐出される。すると、インク液滴が付着部材521に着弾し、付着部材521上に画像データが形成される。ノズルから吐出されたインク液滴の速度V及び吐出角度θが吐出確認部523により測定され、制御装置600に送られる。
そして、ST24において、インク液滴の速度V及び吐出角度θに基づいてインク液滴の着弾位置のばらつきが認識され、制御装置600によりばらつきを補正するためのヘッド制御パラメータHCPが生成される。
【0088】
以下にヘッド制御パラメータHCPの生成について具体的に説明する。
着弾位置をばらつかせる要因は、主に、インク液滴の吐出方向角度のばらつきと吐出速度のばらつきである。この2つの要因は、独立している場合もあるが、両方を含んでばらつきを発生させる場合が多い。これらの吐出補正を行うために、ばらつきの状態から各要因毎の特性を把握し補正値を作る。
【0089】
具体的には、図22はプリンタヘッド120と対象物W(付着部材521)の関係を示す模式図であり、図22を参照して具体的に説明する。
平均速度でインクが対象物Wに着弾したときに、インク液滴が付着部材521に着弾するまでの到達時間tは、
t=D/V
となる。
一方、着弾位置がずれるノズルkでの到達時間tkは、
tk=D/Vk
となる。
【0090】
到達時間差はtk−tであるから、ヘッドカートリッジ120と付着部材521の相対移動速度をSとすると、付着時のずれ量Xkは、
Figure 0004599704
となる。
ここで、ずれ量Xkが正の値をとるとき、基準位置よりも前方にドットが着弾していることを意味し、負の値を取るときには基準位置よりも後方にドットが着弾していることを意味する。
【0091】
次に、吐出角度によるずれ量Ykについて算出する。
吐出角度θのばらつきによる基準位置からのずれ量Yとするとkノズルでのずれ量Ykは、
Yk=D・tanθk
で表される。ここで、ずれ量Ykが基準に対し吐出角度が正の値をとるときには前方に、負の値をとるときには後方になる。
【0092】
そして、吐出速度と吐出角度が複合された場合のずれ量ZとするとkノズルでのZkは、
Figure 0004599704
となる。
よって、吐出速度Vを定め、吐出速度Vkとtanθkを確認することでずれ量Zkが求まる。そこで、ずれ量を補正するための調整時間ΔTkは、
ΔTk=D((1/Vk)−(1/V))+(D/S)tanθk・・・(1)
となる。
【0093】
そこで、取得した吐出速度Vk及び吐出角度θkを用いて、この式(1)により、各ノズルkの着弾ずれを補正するための調整時間ΔTkが制御装置600により算出される。このとき、調整時間ΔTkは、図23に示すようにインク液滴を最も前に着弾させたノズルkmax を基準として算出する。すなわち、吐出速度Vは、ノズルkmax から吐出されたインク液滴の速度であり、吐出角度θkは、ノズルkmax の吐出角度を0°としたときの吐出角度である。従って、最も前に着弾させたノズルkmax の調整時間ΔTkmax は、
ΔTkmax =D((1/Vk)−(1/V))+(D/S)tan0°=0
となる。一方、他のノズルkの調整時間ΔTkはすべて正の値となる。
【0094】
この位置ずれ精度を簡単に補正する方法として、基準となる位置に対しより前側に吐出するものに対しては、吐出開始の時間を遅らせ、より後ろに吐出するものに対しては、吐出開始時間を早める方法が挙げられる。一方で、一般的にはノズル列の中でヘッドから吐出させるタイミングは電気回路の制約により決められる場合が多い。そのような構成では、吐出開始の時間を早めることはできないので、ノズル列のうち吐出する位置が最も後ろにあるものを基準にし、それよりも前で吐出するものに対して吐出するタイミングを遅らせることで補正することができる。
【0095】
さらに、複数のノズル列を持った場合、例えば同一色に対して複数のノズル列を持つ構造、あるいは複数色のために複数のノズル列を持つ構造に対しても同様の方式が適用できる。基準となる位置に対して、吐出位置がずれたものにについては、ノズル列の吐出タイミングをずらし補正する。あるいは、全ての吐出に対し最も後ろに位置するものを基準に吐出タイミングをずらし補正する。
【0096】
そして、式(1)により各ノズルに対応した調整時間ΔTkが算出され、ヘッド制御パラメータHCPが生成される。ここで、式(1)において、後述するようにプリンタ100側の情報を必要としないため、ヘッド制御パラメータHCPは各吐出アクチュエータR1〜Rnに対応した調整時間ΔT1〜ΔTnにより構成されることとなる。そして、このヘッド制御パラメータHCPが、たとえば情報記録媒体やヘッドカートリッジ120の筐体に取り付けられる等される。
【0097】
このように、各吐出アクチュエータごとの駆動条件を各ノズルごとにおけるインク液滴の着弾位置のずれをなくすようなヘッド制御パラメータHCPを設定することにより、プリンタ100で印刷を行ったときに、着弾位置のずれを生じることがなくなり印刷の高品質化を図ることができる。
【0098】
ヘッドカートリッジ検査方法の別の実施の形態
以下、本発明のカートリッジ検査方法の別の実施の形態を示しており、カートリッジ検査方法の別の実施の形態について説明する。上述したカートリッジ検査方法と以下に示すカートリッジ検査方法の異なる点は、インク液滴の吐出状態を検出するときに取得するデータ種別である。
図21のカートリッジ検査方法のST23において、取得するデータは、インク液滴の速度V及び吐出角度θであるが、以下の実施の形態においては、着弾認識部522から取得される画像データに基づいてヘッド制御パラメータHCPが生成される。
【0099】
まず、インク液滴の吐出が安定化した後、ヘッドカートリッジ120と付着部材521の間の距離をDに保ち、双方を相対的に動かさずにインク滴を吐出させたときの画像データが(基準相対速度=0)着弾認識部522により取得される。その後、ヘッドカートリッジ120と付着部材521を相対移動させ(基準相対速度=S)、そのときに付着部材521に着弾したインク液滴の画像データが着弾認識部522により取得される。
なお、吐出ノズルと記録媒体上のインク液滴を一対一に対応させるため、付着部材521にインク付着後、直ちに着弾識別部522を作動させ測定が開始されることが好ましい。また付着部材521は、インク着弾後直ちに測定することが好ましいが、各色毎に位置補正が終了していれば、色間の相対的位置ずれだけを認識すればよい。
【0100】
そして、取得された画像データに基づいてずれ量ΔX、ΔYが制御装置600により検出される。すると、基準印刷間隔D、基準相対速度S、ずれ量ΔX、ΔYからなるヘッド制御パラメータHCPが生成される。そして、プリンタ100において、このヘッド制御パラメータHCPにより、式(2)を用いて調整時間ΔTが算出されることとなる。
【0101】
以下に式(2)の導出方法について説明する。
まず、ヘッド120aと付着部材521を相対移動させないときに得られた画像データからインク液滴のばらつきが検出され、吐出角度のばらつきの補正が行われる。
具体的には、基準地点から着弾した位置のずれ量をYkとすると、
Yk≒Ds・tanθk
tanθk≒ΔYk/Ds ・・・式(a)
となる。
【0102】
ヘッドカートリッジ120から実際に印刷を行う紙Wまでの距離をDpとしたとき、補正すべき着弾地点のずれ量Ypは、
Yp≒Dp・tanθk ・・・式(b)
式(a)と式(b)により、
Yp≒Yk・(Dp/D)
となる。従って、実際のプリンタ100において、ヘッドカートリッジ120と紙Wを相対速度Spで移動させたときに、補正すべき調整時間ΔTは、
ΔTx=Yp/Sp=(Yk・(Dp/D))/Sp
となる。
【0103】
次に、ヘッドカートリッジ120と付着部材521を相対速度Sで相対的に移動させたときに取得された画像データからずれ量Xが検出される。
具体的には、ずれ量Xkは、
Xk=S(Tk−t)
Tk−t=S/Xk
となる。
ここで、実際に印刷するときのヘッドカートリッジ120と紙Wの相対速度をSpとしたとき、実際のずれ量及び調整時間は、カートリッジ補正装置500におけるずれ量及び調整時間に比例する。たとえば、印刷間隔Dpが長くなると、ずれ量もおおきくなり調整時間ΔTも長くなる。同様に、相対速度Spが速くなれば、ずれ量は小さくなり調整時間ΔTも短くなる。
ΔTy=S/ΔXk×(Dp/D)×(Sp/S)
【0104】
以上により、補正するための調整時間ΔTは、
Figure 0004599704
となる。
式(2)において、ヘッド制御パラメータHCPとして、ヘッドカートリッジ検査装置500側のパラメータである基準印刷間隔D、基準相対速度S、ずれ量ΔX、ΔYが与えられる。そして、プリンタ100側の印刷条件と、ヘッドカートリッジ検査装置500側の検査条件の比率によって調整時間ΔTkが算出される。
【0105】
検査時におけるずれ量を補正するように調整時間ΔTを設定したとき、各プリンタ100による搬送速度及び駆動電圧等の相違により、必ずしも着弾位置が補正できるとは限らない。これは、プリンタ100における搬送速度及びインク液滴の吐出速度は、ヘッドカートリッジ検査装置500における搬送速度及びインク液滴の吐出速度と異なる場合があるからである。
そこで、ヘッド制御パラメータHCPとして、基準印刷間隔D、基準相対速度S、測定ずれ量ΔXk、ΔYkからなるパラメータを与え、各プリンタ100に応じた調整時間ΔTの設定ができるようにすることで、いずれのプリンタ100であっても画質の高品質化を図ることができる。
【0106】
また、上述の方法によれば、基準となる吐出速度V及び吐出角度θを認識する必要がなくなるため、補正する際の測定が容易になる。さらに、例えばプリンタ100の動作都合上相対速度Sの変化に対応した補正を行うことができるため、より正確に吐出時間の制御を行うことができる。
【0107】
例えば、測定時のヘッドノズルと紙Wの距離が5mm、吐出の位置が最も後方のドットに対し20μm程前方に付着させるようなノズルにおいて、実際にプリントする速度V=50mm/秒、印刷間隔D=2mmとすると、このノズルの吐出角度に対する補正時間△Txは、
Figure 0004599704
一方、このノズルの吐出速度に対する補正時間ΔTyは、
Figure 0004599704
となる。従って、算出される調整時間ΔTは、80μm+60μm=140μmとなる。
【0108】
上記各実施の形態によれば、ヘッド制御パラメータHCPを用いてインク着弾ずれを補正することにより、高品質な印刷を提供することができる。また、ヘッド製造上の精度を向上させることなく、吐出位置を高精度に制御できることから、安価で高精度のプリンタシステムが容易に実現できる。
さらに複数のヘッドカートリッジ120がそれぞれ固有の特性を補正するためのヘッド制御パラメータHCPをもつことができ、それをプリンタ100で利用することで、プリンタ100とヘッドカートリッジ120の相互互換性が生まれ、ラインヘッド120aのリサイクル等により特性が変化しても、対応が可能であり、環境に優しいヘッドカートリッジ120のリサイクルシステムが構築できる。
【0109】
また、プリンタ100及びヘッドカートリッジ120の製造都合によるバージョン違い等を吸収でき、メーカの違いや型違い等による形状の異なったプリンタ100及びヘッドカートリッジ120に於いても、取付方法だけを標準化しておくことで最適駆動を行うことができ、プリンタ100及びヘッドカートリッジ120の共通化が実現できる。
【0110】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高解像度及び高速性を実現することができるとともに、ヘッドカートリッジの再生効率を高めることができるプリンタ、プリンタの駆動方法、ヘッドカートリッジ、ヘッドカートリッジ検査装置、及びヘッドカートリッジの検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリンタの好ましい実施の形態を示す斜視図。
【図2】本発明のプリンタの好ましい実施の形態を示す斜視図。
【図3】本発明のプリンタの好ましい実施の形態を示すブロック図。
【図4】本発明のプリンタにおけるヘッド駆動ユニットを示すブロック図。
【図5】本発明のプリンタ駆動方法の好ましい実施の形態を示すフローチャート図。
【図6】本発明のプリンタ駆動方法における駆動電圧の印加タイミングを示すタイミングチャート図。
【図7】単色のインクを用いて図5のプリンタ駆動方法により印刷したときの印刷結果を示す図。
【図8】複数の色のインクを用いて図5のプリンタ駆動方法により印刷したときの印刷結果を示す図。
【図9】本発明のプリンタにおけるヘッド駆動ユニットの第2の実施の形態を示すブロック図。
【図10】本発明のプリンタ駆動方法の別の実施の形態を示すフローチャート図。
【図11】複数のノズル列を有するラインヘッドの状態を示す模式図。
【図12】本発明のプリンタにおけるヘッド駆動ユニットの別の実施の形態を示すブロック図。
【図13】図12のヘッド駆動ユニットにおける駆動電圧の印加タイミングを示すタイミングチャート図。
【図14】本発明のヘッドカートリッジの好ましい実施の形態を異示す斜視図。
【図15】本発明のヘッドカートリッジの別の実施の形態を示す斜視図。
【図16】本発明のヘッドカートリッジの別の実施の形態を示す斜視図。
【図17】本発明のヘッドカートリッジの別の実施の形態を示す斜視図。
【図18】本発明のヘッドカートリッジの別の実施の形態を示す斜視図。
【図19】本発明のヘッドカートリッジ検査装置の好ましい実施の形態を示す斜視図。
【図20】本発明のヘッドカートリッジ検査装置における着弾識別部を示す模式図。
【図21】本発明のヘッドカートリッジ検査方法の好ましい実施の形態を示すフローチャート図。
【図22】本発明のヘッドカートリッジ検査方法におけるヘッドカートリッジと付着部材の様子を示す模式図。
【図23】本発明のヘッドカートリッジ検査方法における付着部材のインク着弾の様子を示す模式図。
【図24】従来のプリンタで印刷したときのインク液滴の着弾位置ずれを示すグラフ図。
【符号の説明】
100・・・プリンタ、120・・・ヘッドカートリッジ、120a・・・ラインヘッド、150・・・制御部、230・・・入力インターフェイス、300・・・ヘッド駆動ユニット、310・・・ヘッド駆動部、320・・・時間調整部、321・・・時間遅延部、400・・・情報取得部、401・・・情報読み取り部、410・・・通信手段、HCP・・・ヘッド制御パラメータ、R1〜Rn・・・吐出アクチュエータ、W・・・紙(対象物)

Claims (7)

  1. ラインヘッドを有するヘッドカートリッジの複数の吐出アクチュエータをそれぞれ駆動させることにより、ノズルからインク液滴を対象物に吐出して印刷を行うプリンタにおいて、
    複数の前記吐出アクチュエータを駆動させるヘッド駆動部と、
    前記ヘッド駆動部によって駆動する前記吐出アクチュエータの駆動タイミングを調整時間によって調整する時間調整部と、
    前記ノズルの特性に基づいて設定された複数の前記吐出アクチュエータ毎の駆動条件を含むヘッド制御パラメータを取得する情報取得部と、
    前記ヘッド駆動部の動作を制御するとともに、前記情報取得部からの前記ヘッド制御パラメータに基づいて複数の前記吐出アクチュエータ毎に前記時間調整部に前記調整時間を設定する制御部と
    を有し、
    前記制御部は、前記ヘッド制御パラメータに設定された、前記ヘッドカートリッジの検査時における対象物と前記ヘッドカートリッジの相対速度である基準搬送速度、検査時における前記対象物と前記ヘッドカートリッジの間隔である基準印刷間隔及び検査時における前記ノズルから吐出されたときのインク液滴の着弾位置のずれ量と、印刷時における搬送速度及び印刷間隔に基づいて、複数の前記吐出アクチュエータ毎に前記調整時間を設定する機能を有することを特徴とするプリンタ。
  2. 前記時間調整部は、すべての前記吐出アクチュエータの駆動タイミングを遅延させる時間遅延部を有することを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
  3. 前記時間調整部は、印刷方向に対して異なるノズル列であって、前記ノズル列の形成方向に対して同一位置に形成された複数のノズルに対応した前記吐出アクチュエータと接続されていて、複数の前記吐出アクチュエータと前記時間遅延部を接続させる接続切り換え部を有することを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
  4. 前記情報取得部は、前記ヘッドカートリッジから前記ヘッド制御パラメータを取得する情報読み取り部を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のプリンタ。
  5. 前記情報取得部は、コンピュータから前記ヘッド制御パラメータを取得するための入力インターフェイスを有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のプリンタ。
  6. 前記情報取得部は、ネットワークを介して前記ヘッド制御パラメータを取得するための通信手段を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のプリンタ。
  7. ラインヘッドを有するヘッドカートリッジの複数の吐出アクチュエータを駆動することにより、ノズルからインク液滴を吐出し印刷を行うプリンタの駆動方法において、
    前記ノズルの特性に基づいて設定された複数の前記吐出アクチュエータ毎の駆動条件を含むヘッド制御パラメータを取得し、
    前記ヘッド制御パラメータに基づいて、複数の前記吐出アクチュエータ毎にそれぞれ調整時間を算出し、
    複数の前記吐出アクチュエータを複数の前記吐出アクチュエータ毎に前記調整時間だけ遅延させた駆動タイミングで駆動させ
    前記調整時間の算出は、前記ヘッド制御パラメータに含まれる、検査時における対象物と前記ヘッドカートリッジの相対速度である基準搬送速度、検査時における前記対象物と前記ヘッドカートリッジの間隔である基準印刷間隔及び検査時における前記ノズルから吐出されたときのインク液滴の着弾位置のずれ量と、印刷時における搬送速度及び印刷間隔に基づいて行われることを特徴とするプリンタの駆動方法。
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