JP4598028B2 - ゴム製耐衝撃用残存型枠 - Google Patents

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Description

本発明はコンクリート製で岩石や流木により衝撃を受ける砂防ダム、橋脚等のコンクリート構造物を施工する際に、主としてコンクリート構造物の生コンクリート打設用の型枠として使用し、コンクリートの打設後にコンクリートの表面に壁板としてそのまま残存するタイプのゴム製耐衝撃用残存型枠に関する。
従来、コンクリート製の砂防ダム、橋脚等の構造物を施工する際に、施工の容易さ及び表面の仕上の美しさ及び環境との調和から、構造物の表面に取付ける壁板として、残存型枠が使用されている。
この残存型枠は、型枠本体が一般的にコンクリート製のパネルであり、この型枠本体の内部に補強材を有し、且つ裏面から突出させた金属製品のプレートや形鋼等を用いた結合部材を突出させたものである。又、砂防ダムや橋脚等の構造物には上流から岩石や流木が流れ出し構造物に激しく衝突する。このため砂防ダムでは上部の排水溝の回りあるいは橋脚では上流側にゴム製の残存形枠を使用している。このゴム製の残存形枠は上記コンクリート製の残存型枠と同様な構造であり、型枠部材がコンクリート製かゴム製かの違いに過ぎない。
このゴム製の残存型枠の一例として、特開2003−239256号のものは、ゴム製の残存型枠の裏面から直角に多数本の直棒状の結合部材を突出させたものである。
特開2003−239256号公報
上記従来のゴム製の残存形枠においては、結合部材が金属製のプレートや形鋼であるため、その残存型枠に岩石や流木が衝突すると、これらの結合部材によって型枠部材が切断されたり裂け易くなり、時には型枠部材の剥離が生じる。このことは、型枠本体全体を厚くしても内部の結合部材によって型枠本体の表面から内部の結合部材までの厚さしか耐衝撃性の点において有効に使用できなかった。従ってゴム全体の厚さを相当厚くする必要があり、このためゴム材料の増加による製品コスト高を招き、又、製品重量の増加による施工性の悪さ及び運搬費用が高くなる。更に、砂防ダムを施工する場合に、ゴム製の残存型枠は残存型枠として使用する以外に、砂防ダムの上面では打設した生コンクリートが固化しない間に残存型枠を設置するが、その際に結合部材を生コンクリートの内に押し込んで位置決めするのに従来の結合部材では抵抗が多く容易でなかった。
更に、従来の結合部材を使用した場合の型枠本体の成形において、ゴム材料が流動性で流し込む場合は問題ないが、チップ状のゴム片を使用して圧縮加工する際に型枠本体の上下から圧縮する関係上、断面がコの字状の形鋼を使用した結合部材では、結合部材が邪魔になり全体を押圧できない等の問題点を有していた。
他方、特開2003−239256号の残存型枠では、岩石や流木等の衝突に対してある程度の耐久性を有し、且つ、型枠部材の成形においても、結合部材が棒状で型枠部材の裏面から直角に突出したものであるから、廃ゴムチップ材を使用しての圧縮加工を可能とするが、このゴムチップを使用した成形においては型枠部材が平面な平板の場合に通用するものである。従って、型枠部材が折曲したものでは、ゴムを製造金型に流し込んで型枠部材を成形する際に、突出した結合部材が邪魔になり、製造金型で成形できず、廃ゴムチップ材を使用する場合にも突出した結合部材が邪魔になり、圧縮加工が困難となる等の問題点を有していた。
また、従来のいずれのゴム製残存型枠においては、型枠部材内に埋設した補強材と固着した結合部材が剛性であるため、その補強材と結合部材に型枠部材を介して受ける衝撃圧力が、結合部材で吸収することができず、補強材と結合部材自体により型枠部材を破損又は損傷する危険性を有していた。
本発明は、砂防ダムや橋脚等のコンクリート製構造物に対し、岩石や流木等が型枠本体に衝突しても、その衝撃を吸収しコンクリート構造物を確実に保護すると共に、運搬や保管を容易とし、且つ、型枠本体を成形する際にも型枠本体の形状に左右されることなく製造金型による製造が可能なゴム製耐衝撃用残存型枠を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、岩石や流木等による衝撃を型枠本体と共に、結合部材でも吸収させ、補強材による型枠本体の損傷及び結合部材の破損による型枠本体の剥離等を防止するゴム製耐衝撃用残存型枠を提供するにある。
本発明は、ゴム製の型枠本体(1)と、該型枠本体(1)内に埋設する補強材(2)と、該補強材(2)と固着し、前記型枠本体(1)の裏面(1a)と面一あるいは前記裏面(1a)より凹ませて複数設けた結合部材(3)とから成り、且つ、前記結合部材(3)が、角筒状で可撓性を有する取付体(31)と、該取付体(31)内に装着した雌ネジ部材(32)とから成る。しかも、前記取付体(31)が、細長金属板を略コの字状に折曲した2つの取付片(311),(312)から成る。更に両取付片(311),(312)の互いの端面部(311a),(312a)を直交させ重合して四角筒状に組合せると共に、前記端面部(311a),(312a)を連通するバカ穴(313)を穿設する。
前記雌ネジ部材(32)が角ナットであり、該角ナットを、内側に重合した端面部(312a)と当接可能で、且つ、外側に重合した前記端面部(311a)を有する前記取付片(311)に係着させるのがよい。
本発明の可撓性を有する取付体(31)とは、長細な角筒状の取付体(31)に、その長手方向から圧縮力が加わると取付体(31)が撓み、取付体(31)がクッション性を有することである。
また、前記型枠本体(1)が、折曲して成形するのが好ましい。
また、前記型枠本体(1)が、廃ゴムチップをバインダーで固めて成形するのがよい。
本発明は、型枠本体(1)の裏面(1a)と面一あるいは裏面(1a)から凹ませて結合部材(3)を設けたことにより、型枠本体(1)から接合部材(3)が突出していないため、型枠本体(1)を重ね合せても嵩張らず、保管や運搬に便利である。
また、結合部材(3)が突出していないための他の効果としては、型枠本体(1)を成形する際に、型枠本体(1)の形状、つまり形状が平面や折曲状であっても、製造金型の脱型あるいは製造金型から型枠本体(1)を取り出すことが可能となり、型枠本体(1)を製造金型で容易に成形でき、製造工程が簡略化でき製造コストも安価となる。特に、本発明では、折曲した型枠本体(1)を廃ゴムチップを使用して成形する際に、加熱式製造金型の上型と下型とで投入したゴムチップを加圧成形できる利点がある。
また、本発明では、補強材(2)に固着した結合部材(3)が可撓性を有する取付体(31)を具備したことにより、岩石や流木等が型枠本体(1)に衝撃し、その衝撃が型枠本体(1)を介して補強材(2)に加わると、それと固着した取付体(31)にも強い圧力が加わる。その際に、取付体(31)の可撓性を有する脚部(311b),(312b)が撓み、衝撃を吸収する。従って、補強材(2)にクッション性を付与した状態となり、このため補強材(2)による型枠本体(1)の損傷を防止できる。しかも、取付体(31)が撓んだ状態から、撓んだ型枠本体(1)の形状復帰で取付体(31)も元の形状に復帰し得る。
また、本発明では、結合部材(3)が型枠本体(1)の裏面(1a)から凹ませて設け、且つ、雌ネジ部材(32)の角ナットが衝撃時に移動できるように係着しているため、衝撃時に取付体(31)が凹ませた分構造物側に移動し、取付体(31)が構造物に当接すると、取付体(31)は撓み、この取付体(31)の移動と撓みにより衝撃力を吸収し、衝撃時における型枠本体(1)と、雌ネジ部材(32)に螺合したネジ棒(4)の破損を防止できる。
また、本発明では、取付体(31)が角筒状であるため、型枠本体(1)を成形する際に取付体(31)内に型枠本体(1)が入らず、取付体(31)の内部に空間を保て、雌ネジ部材(32)にネジ棒(4)を螺合することが容易となり、また、角筒状であると、その内に固着しないで装着した雌ネジ部材(32)がネジ棒(4)を螺合する際に回ることがない。
また、本発明では、結合部材(3)に他の雄ネジ部材を螺合でき、その雄ネジ部材の長さや形状も自由に選択でき、つまり、施工箇所によって雄ネジ部材を種々選択し得るので、型枠本体(1)の枠組及び取付けが容易となる。
また、型枠本体(1)の材質が廃タイヤ等の廃ゴムチップ材を使用する場合は、耐久性も高く、廃棄物の再利用化の面で環境的に好ましい役目を成し、製造コストも安くできる。
以下、本発明の実施形態につき図を基に説明する。図1は本発明の断面図、図2は本発明の他の実施形態を示す断面図、図3は本発明の正面図、図4は本発明の結合部材の斜視図、図5は本発明の結合部材の断面図、図6は本発明の結合部材で、雌ネジ部材の係着状態を示す断面図、図7は本発明の型枠本体が折曲した状態の断面図、図8、図9は本発明を使用した施工方法の説明図、図10は結合部材の可撓性を示す説明図である。
図1〜3において、(1)はゴム製の肉厚な型枠本体であり、材質はゴムであるが、岩石や流木が当るため耐衝撃性を要求される。従って使用するゴムは天然ゴム,合成ゴム等の内、耐衝撃性,耐候性等が高いものがよく、これらの点からして、特には廃タイヤをチップ状にして、その廃ゴムチップをバインダーで固めて成形するのが好ましい。また、バインダーは上記チップを結合するための接着剤であり、ウレタン系,アクリル系,エポキシ系等の接着剤が使用され、特にはウレタン系が耐衝撃性の点で好ましい。また、型枠本体(1)の形状は平板の他に図7に示す折曲板があり、この折曲したものはコンクリート構造物の角に利用される。尚、型枠本体(1)の板厚としては、例えば砂防ダムの場合、廃ゴムチップ製のもので15cm〜30cm程度の肉厚とするのがよい。
(2)は型枠本体(1)内に埋設した金属製で網状の補強材であり、この補強材(2)は、金属製の丸棒を網状に組んだものを含み、特には、鉄筋を網状に組み、その組んだ各交叉箇所を溶接で止めたものが強度も高く、また、丸棒は角がなく、衝撃時に型枠本体(1)の損傷が少なく、コストも安価で好ましい。また、補強材(2)の埋設箇所としては、型枠本体(1)の厚さに対し、型枠部材(1)の裏面(1a)側に寄せた位置がよく、好ましくは、型枠本体(1)の厚さに対し、裏面(1a)から約3分の1の所がよく、型枠部材(1)の表面(1b)から補強材(2)までの厚さが充分得られる。これにより補強材(2)に加わる衝撃をより少なくでき、補強材(2)の損傷あるいは補強材(2)による型枠本体(1)の損傷を防止できる。
(3)は補強材(2)に一端を固着させた複数の結合部材であり、図4〜6に示すように、該結合部材(3)は金属製で角筒状の取付体(31)と、該取付体(31)内に装着した雌ネジ部材(32)とから成る。この結合部材(3)は一端を補強材(2)に溶接で固着し、他端を、図1に示すように型枠本体(1)の裏面(1a)と面一に設け、あるいは図2に示すように裏面(1a)よりも凹ませて設け、結合部材(3)が型枠本体(1)の裏面(1a)から突出しないように設けている。この結合部材(3)が裏面(1a)から突出すると、図7に示すように、型枠本体(1)が折曲したものに対し、それを成形する際に、突出した雌ネジ部材(32)が邪魔になり、製造金型による成形が困難となる。従って、結合部材(3)は、裏面(1a)から突出しないように図3の如く複数配置して設けているのである。
前記取付体(31)は、細長金属板を略コの字状に折曲させた2つの取付片(311),(312)を四角筒状に組合せたものである。これを更に説明すると、前記両取付片(311),(312)の互いの端面部(311a),(312a)を直交させて重合することにより、四角筒状に組合せる。そして、重合した両端面部(311a),(312a)を連通するバカ穴(313)を穿設させている。このバカ穴(313)は予め両端面部(311a),(312a)に穿設し、その状態で両端面部(311a),(312a)を重合させてもよい。この組合せによる取付体(31)においては、四角筒状の脚部(311b),(312b)は分離した4枚の板材で構成されているため、脚部(311b),(312b)が可撓性を有し、図10の如く、衝撃時に取付体(31)に圧縮力が加わるとそれぞれの脚部(311b),(312b)の中央が外に膨らんで撓み、衝撃を吸収する役目を成す。要するに、取付体(31)は引張荷重に対しては撓むことなく強く、型枠本体(1)をコンクリート構造物に強固に固着でき、他方、圧縮荷重に対しては可撓性によるクッション性を有しているのである。
雌ネジ部材(32)は、四角又は六角ナットを含む角ナットであり、該雌ネジ部材(32)を取付体(31)内に装着する場合は、図4、5に示すように、角筒状に組合せた取付体(31)内で内側に重合した端面部(312a)と当接可能に、且つ、外側に重合した端面部(311a)を有する取付片(311)に係着させている。この係着の方法としては、取付片(311)の両脚部(311b)に対向して穿設した角穴(311c)に、六角ナットである雌ネジ部材(32)の角を係着させている。この状態においては、係着した六角ナット(32)により、両取付片(311),(312)で組合せた角筒状の形状を保持し、また、六角ナット(32)も溶接等で固着する必要もなく、結合部材(3)が安価にできる。
この六角ナット(32)と取付体(31)との係着は、図6に示すように、通常は六角ナット(32)の上下角が取付片(311)の角穴(311c)に遊嵌し、六角ナット(32)を取付体(311)に係着しているが、六角ナット(32)がネジ棒(4)と螺合した状態においては、取付体(31)の軸方向に一定以上の力が加わると、六角ナット(32)が角穴(311c)から外れるようにしている。つまり、図5の如く、角穴(311c)に挿入された六角ナット(32)の角面が面取りされているため、六角ナット(32)が取付片(311)を押し広げて取付体(31)の内部に移動できるのである。
次に、本発明を使用した施工方法について図8、図9を基に説明すると、砂防ダムや橋脚等のコンクリート構造物を施工する場合に本発明の残存型枠は、砂防ダムでは上部の排水口の回りに使用され、橋脚で上流側の面に使用される。そしてそれらの使用箇所に本発明の残存型枠を型枠として枠組する。
この枠組を図8の砂防ダムを例に説明すると、この図8は砂防ダムの上部排水口断面の枠組を示し、この図の左側が上流側である。従って、枠組する際にはコンクリート構造物の左側上部の角には折曲した型枠本体(1)を使用し、コンクリート構造物(A)の平らな部分には平らな型枠本体(1)を使用している。そして、型枠本体(1)に固着させた結合部材(3)に他のネジ棒(4)を螺合し、このネジ棒(4)と下部の鉄筋杭(5)との間を支持棒(6)で支持させる。この鉄筋杭(5)は、途中まで打設されたコンクリートの上面(A)から突出させたものである。また、図8の右側縦及び左側下部に枠組した型枠(7)は、コンクリート製の残存型枠である。
このように図8の枠組状態で枠組していない上端の右側から生コンクリートを打設する。次いでその打設コンクリートが固化しない間に、上端の枠組されていない箇所に平板の型枠本体(1)を使用し、その螺合したネジ棒(4)を打設コンクリート内に押し込み、図9に示すようにコンクリート構造物の上部に本発明の残存型枠が設置され、コンクリート構造物の上部はゴム製の残存型枠で保護される。
この施工においては、コンクリート構造物の角部に成形が容易な折曲した型枠本体(1)を使用でき、枠組が容易で見栄えがよく、しかもコスト的に安価な施工を可能とする。
本発明の断面図である。 本発明の他の実施形態を示す断面図である。 本発明の正面図である。 本発明の結合部材の斜視図である。 本発明の結合部材の断面図である。 本発明の結合部材で雌ネジ部材の係着状態を示す断面図である。 本発明の型枠本体が折曲した状態の断面図である。 本発明を使用した施工方法の説明図である。 本発明を使用した施工方法の説明図である。 本発明の結合部材の可撓性を示す説明図である。
1 型枠本体
1a 裏面
2 補強材
3 結合部材
31 取付体
311,312 取付片
311a,312a 端面部
313 バカ穴
32 雌ネジ部材

Claims (2)

  1. ゴム製で肉厚な型枠本体(1)と、該型枠本体(1)内に埋設する補強材(2)と、該補強材(2)と固着し、前記型枠本体(1)の裏面(1a)と面一あるいは前記裏面(1a)より凹ませて複数設けた結合部材(3)とから成り、且つ、前記結合部材(3)が、角筒状で可撓性を有する取付体(31)と、該取付体(31)内に装着した雌ネジ部材(32)とから成り、しかも、前記取付体(31)が、細長金属板を略コの字状に折曲した2つの取付片(311),(312)から成り、且つ、両取付片(311),(312)は、その互いの端面部(311a),(312a)を直交させ重合して四角筒状に組合せると共に、前記端面部(311a),(312a)を連通するバカ穴(313)を穿設したゴム製耐衝撃用残存型枠。
  2. 前記雌ネジ部材(32)が角ナットであり、該角ナットを、内側に重合した前記端面部(312a)と当接可能で、且つ、外側に重合した前記端面部(311a)を有する前記取付片(311)に係着した請求項1記載のゴム製耐衝撃用残存型枠。
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