JP4597782B2 - 流動層アンモ酸化触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
有機化合物の流動層アンモ酸化反応に用いられる触媒としては、モリブデン含有酸化物触媒が有効であることが知られており、例えば、プロピレンの流動層アンモ酸化によりアクリロニトリルを製造する際に用いる触媒として、特許文献1記載のモリブデンおよびビスマス含有触媒、特許文献2記載のモリブデン、ビスマスおよび鉄含有触媒、特許文献3記載のモリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、ニッケル等を含有する触媒、特許文献4〜6に記載の更に多成分が複合化した触媒等が知られており、これら触媒の製造方法についても特許文献7〜9等に開示されている。
これらの触媒では、担体としてシリカが用いられており、その原料としてシリカゾルが用いられている。また、触媒活性成分としてモリブデンの他にビスマス、鉄などが用いられるのが一般的であり、併せてカリウムが用いられる場合が多い。
また、これらの触媒の製造方法としては、所定の組成原子比率の水性スラリーを調製し、これを乾燥し、次いで焼成する方法が一般的であり、該水性スラリーの調製方法としては、水に対して所定の組成原子比率となるように各成分の塩類を溶解し、それらをシリカゾルと混合する方法が採られる。例えば、モリブデン酸アンモニウム水溶液、硝酸ビスマス、硝酸鉄、硝酸カリウムなどの混合水溶液およびシリカゾルを混合する方法が通常よく用いられている。
その際、例えば所望の触媒のカリウム/モリブデン原子比が0.2/10であれば、該水性スラリーを調製するに際し、硝酸カリウムおよびモリブデン酸アンモニウムについてカリウム/モリブデン原子比が0.2/10になるような量をそれぞれ秤量し、該水性スラリーを調製する方法が通常よく用いられる。
すなわち、本発明の流動層アンモ酸化触媒の製造方法は、少なくともカリウムとモリブデンをその原子比として0.04/10〜0.4/10の割合で含有する流動層アンモ酸化触媒の製造方法であって、カリウム源として、硝酸カリウム由来のカリウムを20〜90%、かつ、カリウム含有シリカゾル由来のカリウムを10〜80%用いることを特徴とするものである。
ここで、流動層アンモ酸化触媒が、下記一般式(1)で示される組成を有することが望ましい。
Mo10BiaFebKcDdEeFfGgOh(SiO2)i ・・・一般式(1)
(式中、Mo、Bi、Fe、KおよびOは、それぞれモリブデン、ビスマス、鉄、カリウムおよび酸素を示し、Dはコバルト、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、タリウム、タングステン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、カドミウム、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、ニオブ、タンタル、アンチモン及びレニウムから選ばれる1種以上の元素、Eはリチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムから選ばれる1種以上の元素、Fは金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から選ばれる1種以上の元素、Gは燐、硼素、ヒ素、テルル、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素(例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム)、アクチノイド元素(例えば、トリウム、ウラン)から選ばれる1種以上の元素を表し、SiO2はシリカを表す。また、添字a、b、c、d、e、f、g及びhは各元素の原子比を示し、a=0.01〜9、b=0.01〜9、c=0.04〜0.4、d=0〜17、e=0〜4、f=0〜5、g=0〜5、i=20〜150であり、hは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。)
有機化合物のアンモ酸化反応の具体例としては、プロピレンのアンモ酸化反応によるアクリロニトリルの合成、イソブテンやターシャリーブタノールのアンモ酸化反応によるメタクリロニトリルの合成、トルエンのアンモ酸化反応によるベンゾニトリルの合成、キシレンのアンモ酸化反応によるフタロニトリルとフタルイミドの合成、ブタジエンのアンモ酸化反応によるフマロニトリル、マレオニトリルの合成、メタノールのアンモ酸化反応による青酸の合成等が挙げられる。
これらアンモ酸化反応では大きな発熱を伴うため、工業的には通常、流動層反応器にて実施される。
また、上記反応で用いる触媒としては種々挙げることができるが、目的生成物収率が高いこと、耐久性に優れていることなどから、モリブデン、ビスマス、鉄およびカリウムを含有する複合酸化物触媒がより好ましく、なかでも下記一般式(1)で示される組成を有するものが特に好ましい。
Mo10BiaFebKcDdEeFfGgOh(SiO2)i ・・・一般式(1)
(式中、Mo、Bi、Fe、KおよびOは、それぞれモリブデン、ビスマス、鉄、カリウムおよび酸素を示す。Dはコバルト、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、タリウム、タングステン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、カドミウム、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、ニオブ、タンタル、アンチモン及びレニウムから選ばれる1種以上の元素を表す。Eはリチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムから選ばれる1種以上の元素を表す。Fは金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から選ばれる1種以上の元素を表す。Gは燐、硼素、ヒ素、テルル、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素(例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム)、アクチノイド元素(例えば、トリウム、ウラン)から選ばれる1種以上の元素を表す。SiO2はシリカを表す。添字a、b、c、d、e、f、g及びhは各元素の原子比を示し、a=0.01〜9、b=0.01〜9、c=0.04〜0.4、d=0〜17、e=0〜4、f=0〜5、g=0〜5、i=20〜150であり、hは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。)
一般に、シリカゾルは、珪砂をアルカリ溶融したカレットを水に溶解させて得られる水硝子を脱アルカリし、得られた珪酸液(珪酸モノマーを多く含む)を塩基性溶媒中で重合させることにより得られる。しかしながら、出発原料の珪砂中にはアルミニウム等の不純物が含まれており、また、珪砂の溶融に際してアルカリを用いるため、これらが最終的なシリカゾル中に不純物としていくらか残存することは避けられない。通常は、珪砂をアルカリ溶融する際に水酸化ナトリウムを用いるため、最終的にシリカゾル中に不純物として存在するアルカリ金属はナトリウムである。
本発明者らは、流動層アンモ酸化触媒の原料としてのシリカゾルについて鋭意検討した結果、シリカゾルの製造に際し、珪砂のアルカリ溶融工程で水酸化ナトリウムではなく、水酸化カリウムを用いて得られたシリカゾルを用いると、目的生成物収率が高く、かつアンモニア燃焼性が低いという優れた流動層アンモ酸化触媒が製造できることを見出した。特に、カリウム/モリブデン原子比が0.04/10〜0.4/10である流動層アンモ酸化触媒を製造するに際し、カリウム源として20〜90%は硝酸カリウムを、また、10〜80%はシリカゾル含有のカリウムをそれぞれ原料として用いたときにより優れた流動層アンモ酸化触媒が製造できることを見出した。
得られた触媒において、カリウム/モリブデン原子比が0.04/10未満であると、アンモニア燃焼性が高く、目的生成物収率は低くなり、0.4/10超であるとアンモニア燃焼性は低くなるが、目的生成物収率が低くなる。
また、カリウム源として硝酸カリウム由来のカリウムが20%未満、シリカゾル由来のカリウムが80%超であると、目的生成物収率が低く、活性も低くなり、硝酸カリウム由来のカリウムが90%超、シリカゾル由来のカリウムが10%未満であると、目的生成物収率が低く、アンモニア燃焼性が高くなる。
シリカゾル中のシリカ濃度としては15〜50質量%が好ましく、18〜45質量%が特に好ましい。この範囲よりも少ないとゾルの安定性は高くなるが、得られる触媒の強度が低くなる傾向があり、また、輸送を考えると合理的でない。他方、高いと、ゾルの安定性が低くなる傾向がある。
シリカゾル中のカリウム濃度としては200〜1000ppmが好ましく、300〜900ppmが特に好ましい。この範囲よりも少ないとアンモニア燃焼性が高くなり易く、他方、高いと、目的生成物収率が低くなり易い。
シリカゾルにおけるシリカコロイド粒子径としては5〜100nmが好ましく、10〜80nmが特に好ましい。この範囲よりも小さいと、目的生成物収率が低くなり、大きいと得られる触媒の強度が低くなる。
また、シリカゾルのpHは7〜11が好ましく、8〜10.5が特に好ましい。ゾルが安定的に存在できる領域だからである。
該水性スラリーのpHは、得られる触媒の結晶相(例えばα型の二価金属モリブデイト)の生成しやすさを好適な範囲内に制御できるので、0〜2の範囲内が好ましい。また、該水性スラリーは50〜105℃の範囲の温度にて加熱処理してもよいが、50℃以上に加温しない方がより好ましい。上記結晶相の生成しやすさを好適な範囲内に制御できるからである。
水性スラリーの乾燥方法としては特に限定はないが、得られる乾燥物の形状として球形が好ましいこと、また、その外径は1〜200μmが好ましく、5〜100μmが特に好ましいことから、このような乾燥物が得られ易い、回転円盤型スプレー乾燥機、圧力ノズル型スプレー乾燥機、二流体ノズル型スプレー乾燥機等のスプレー乾燥機を使用することが好ましい。この際、スプレー乾燥機の乾燥室内に流通させる熱風の温度は、乾燥室内への導入口付近における温度が130〜450℃であることが好ましく、140〜400℃がさらに好ましい。また、乾燥室出口付近における温度は100〜200℃が好ましく、110〜180℃がさらに好ましい。
ついで、得られた乾燥物を、通常500〜750℃の範囲の温度で焼成することにより、望ましい触媒活性構造を備えた触媒が得られる。焼成時間については特に限定はないが、短すぎると良好な触媒が得られない場合があるため、少なくとも1時間は焼成することが好ましい。焼成方法についても汎用の焼成炉を用いることができ制限はないが、特にロータリーキルン、流動焼成炉等が好ましい。
また、焼成に際しては、乾燥物をそのまま500〜750℃に加熱して焼成してもよいが、250〜400℃程度の温度および/または400〜500℃程度の温度で焼成する1〜2段の予備焼成を行ってから、500〜750℃で焼成する方法がより好ましい。
こうして製造された触媒の形状や大きさについては特に制限はないが、より良好な流動性を発揮するためには、球形であって、その外径が1〜200μm、さらには5〜100μmであることが好ましい。
本発明のアンモ酸化反応に用いることのできる原料有機化合物としてはプロピレン、イソブテン、第3級ブタノール、メチル第3級ブチルエーテルなどが挙げられ、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリルを生成する。
触媒の活性試験はプロピレンのアンモ酸化反応を例として次のように行った。触媒を内径25mmφ、高さ40cmの流動層反応器に、プロピレン転化率が97〜99%になるように充填し、反応温度440℃になるように保持した。この反応器中にプロピレン:アンモニア:酸素:水のモル比が1:1.2:0.5であるプロピレン、アンモニア、空気および水蒸気の混合ガスを1時間当り6.5L(NTP換算)供給した。反応圧力は200kPaとした。反応試験分析はガスクロマトグラフィーにより行った。
実施例中のアクリロニトリル(AN)収率およびアンモニア燃焼率は下記の式により定義される。
アクリロニトリル収率(%)=(生成したアクリロニトリルのモル数)/(供給したプロピレンのモル数)×100
アンモニアの燃焼性の指標となるアンモニア燃焼率(%)は以下のように定義される。
アンモニア燃焼率(%)=100−[(生成物中の窒素の質量+未反応アンモニア中の窒素の質量)/供給アンモニア中の窒素の質量×100]
触媒組成が、Mo10Bi0.5Fe1.35K0.17Ni5.2Mg1.1Cr0.5Ce0.6Rb0.08O45.50(SiO2)35である触媒を以下の要領で調製した。
シリカ含量30質量%かつカリウム含量730ppmのコロイダルシリカ(スタルクヴイテック社製レバジル150N)1609.3質量部および純水1150質量部の混合液に、パラモリブデン酸アンモニウム405.3質量部を溶解した(A液)。
別に、17質量%硝酸水溶液420質量部に、硝酸鉄(III)125.2質量部、硝酸ニッケル347.2質量部、硝酸マグネシウム64.7質量部、硝酸クロム45.9質量部、硝酸セリウム59.8質量部、硝酸ビスマス55.7質量部、硝酸ルビジウム2.7質量部および硝酸カリウム0.9質量部を溶解させた(B液)。
A液をよく撹拌しながら、そこにB液を混合し、水性スラリーを得た。
得られたスラリーを噴霧乾燥機で、入口温度を330℃、出口温度を160℃として噴霧乾燥した。得られた乾燥粉を250℃で2時間、次いで450℃で3時間静置焼成した後、590℃で5時間静置焼成し、触媒を得た。
得られた触媒を接触時間3.0sec.で活性試験を行ったところ、アクリロニトリル収率83.1%、アンモニア燃焼率3.6%であった。
触媒組成が、Mo10Bi0.3Fe1.5K0.04Ni3.5Co2.5Mg0.5Ce0.7Cs0.05O40.91(SiO2)40である触媒を実施例1と同様の要領で調製した。
得られた触媒を接触時間2.5sec.で活性試験を行ったところ、アクリロニトリル収率82.8%、アンモニア燃焼率4.3%であった。
[実施例3]
触媒組成が、Mo10Bi1.1Fe2.1K0.35Ni3.8Co2.1Rb0.04O35.51(SiO2)45である触媒を実施例1と同様の要領で調製した。
得られた触媒を接触時間2.2sec.で活性試験を行ったところ、アクリロニトリル収率82.6%、アンモニア燃焼率5.2%であった。
[実施例4]
触媒組成が、Mo10Bi0.6Fe0.6K0.2Ni6Cs0.05Te0.25O47.3(SiO2)35である触媒を実施例1と同様の要領で調製した。
得られた触媒を接触時間2.7sec.で活性試験を行ったところ、アクリロニトリル収率82.0%、アンモニア燃焼率4.0%であった。
触媒組成が実施例1と同様で、コロイダルシリカとして、シリカ含量30質量%かつ実質的にカリウムを含まないコロイダルシリカ(スタルクヴイテック社製レバジル200CN)に変更して表1に示すように調製した。
得られた触媒を接触時間3.2sec.で活性試験を行ったところ、アクリロニトリル収率81.3%、アンモニア燃焼率16.1%であった。
[比較例2]
触媒組成が、Mo10Bi0.5Fe1.35K0.6Ni5.2Cr0.5Mg1.1Ce0.6Rb0.08O45.07(SiO2)35である触媒を実施例1の要領で表1に示すように調製した。
得られた触媒を接触時間3.5sec.で活性試験を行ったところ、アクリロニトリル収率80.2%、アンモニア燃焼率8.9%であった。
[比較例3]
触媒組成が、Mo10Bi0.5Fe1.35K0.14Ni5.2Cr0.5Mg1.1Ce0.6Rb0.08O45.53(SiO2)35である触媒を実施例1の要領で表1に示すように調製した。
得られた触媒を接触時間3.1sec.で活性試験を行ったところ、アクリロニトリル収率80.9%、アンモニア燃焼率9.2%であった。
[比較例4]
触媒組成が、実施例2と同様で、コロイダルシリカとして、シリカ含量20質量%かつ実質的にカリウムを含まないコロイダルシリカ(日産化学社製スノーテックスN)に変更して調製した。
得られた触媒を接触時間2.8sec.で活性試験を行ったところ、アクリロニトリル収率81.6%、アンモニア燃焼率10.2%であった。
[比較例5]
触媒組成が、Mo10Bi0.3Fe1.5K0.23Ni3.5Co2.5Mg0.5Ce0.7Cs0.05O40.72(SiO2)40である触媒を実施例1の要領で表1に示すように調製した。
得られた触媒を接触時間3.0sec.で活性試験を行ったところ、アクリロニトリル収率81.0%、アンモニア燃焼率18.0%であった。
しかしながら、カリウム源としてシリカゾルを使用していない比較例1、4、カリウム源として硝酸カリウムを使用していない比較例3、5、K/Moが0.6/10の比較例2では、いずれもアクリロニトリルの収率が低く、かつ、アンモニア燃焼率が高いものであった。
Claims (1)
- 少なくともカリウムとモリブデンをその原子比として0.04/10〜0.4/10の割合で含有する流動層アンモ酸化触媒の製造方法であって、
カリウム源として、硝酸カリウム由来のカリウムを20〜90%、かつ、カリウム含有シリカゾル由来のカリウムを10〜80%用いることを特徴とする流動層アンモ酸化触媒の製造方法。
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