JP4597418B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学フィルムに関し、特にノルボルネン系ポリマーからなるフィルム成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置や光ディスクなどに用いられる光学部品用のフィルムは、無色透明で複屈折が小さいことに加えて、高耐熱性、低吸湿性などが求められる。従来、光学用フィルムには、ポリカーボネート(PC)やポリメチルメタクリレート(PMMA)系ポリマーなどの透明プラスチックが使用されてきた。しかしながら、PCは耐熱性は高いものの、光弾性係数が大きいために僅かな応力で複屈折が出やすく、複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値の小さな、あるいはレターデーションのムラの小さなフィルム製造が困難であるという、光学特性面の問題があった。一方、PMMAは透明性が良く低複屈折であり、光学特性面の大きな問題は無いものの、耐熱性が低く、吸水性が高いために耐久性に問題があった。
【0003】
近年、光学用ポリマーとして、ノルボルネン系の非晶質ポリオレフィン樹脂が注目されている。このポリマーは、優れた耐熱性、透明性、および低吸湿性を有する材料である上に、光弾性係数の小さいポリマーなので、このポリマーを用いたフィルムはレターデーションのむらが生じにくい。またPCやPMMAに比べて比重が小さく、部品の軽量化に好ましい材料である。
【0004】
ノルボルネン系ポリマーを用いたフィルムの成形方法は、これまで主に溶融押出し法や溶融射出法などの溶融法が用いられてきた。
【0005】
溶融法と異なるフィルム成形方法として、溶液法がある。溶液法は、樹脂を溶媒に溶解もしくは分散させたのち、支持体(キャリア)上に流延や塗布などを行い乾燥しフィルム成形を行う方法であり、溶融法のように樹脂に高温をかける必要がなく温和な条件で成形でき、また成形中のフィルムは応力の影響を受けにくいためにレターデーションなどの光学特性の面内ばらつきが少ないフィルム成形体が得られるという利点がある。また、厚みむらが小さく、かつ表面性の高いフィルムが得られることから、特に光学フィルムの製造法として優れている方法である。
【0006】
溶液法によるノルボルネン系ポリマーの製造方法については、例えば特開平9−120001号公報や特開平9−120002号公報に提案されているように、トルエン溶液を用いた方法がある。また、ノルボルネン系ポリマーを主成分とした例は、特開平5−148413号公報や、特開平6−304941号公報に開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開平9−120001号公報や特開平9−120002号公報に提案されているようにトルエン溶液を用いて、溶液法でフィルムを得る場合、トルエンの沸点は100℃以上と高いので、残存揮発成分が少ない最終製品を工業的に生産するには、溶媒の乾燥を効率良く行わなければならない。そこで、上記各公報においては、溶媒を蒸発させるために200℃という高温で乾燥を行っているが、高温によって着色が生じたり、位相差のムラが生じやすくなる。また、ポリマーのガラス転移温度が200℃以下の場合にはフィルムにしわやたるみが入ったり、変形が生じることがある。
【0008】
ノルボルネン系ポリマーの溶解に低沸点で揮発性の高い溶媒を使用すると、高温乾燥の必要はなくなるが、密度の低いノルボルネン系ポリマーはポリカーボネートなどと比較して溶液からの溶媒の揮発が起こりやすく、支持体上での乾燥途中にフィルムが支持体から自然剥離してしまうという問題があった。支持体からのフィルムの自然剥離は、連続生産ができない、あるいはロール状に巻取ることができないという問題につながる。
【0009】
一つの解決策として、支持体の表面粗さを調節して剥離を起こりにくくする方法がある。しかしながら、透明性の高い光学フィルムを得るためには、キャスティング支持体の表面が製品のフィルムに転写しないよう、支持体表面はできるだけ平滑であることが好ましいので、支持体の表面粗さの調節には自ずと限界がある。
【0010】
以上述べたような理由から、ノルボルネン系ポリマーを揮発性の高い溶媒に溶解し、溶液法にてフィルム化する方法は、透明性の高いフィルムを安定的に得るという点で問題があり、工業的に長尺フィルムを得る方法が確立されていなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために次のような手段を取るものである。すなわち、本発明に関る光学フィルムの製造方法の要旨とするところは、溶液法による光学フィルムの製造方法であって、樹脂組成物の溶液を、表面に易接着処理層または粘着処理層を有する支持体上に、連続的に流延または塗布する工程を含むものである。
【0012】
一つの実施態様として、前記樹脂組成物は、ノルボルネン系ポリマーを主成分とする樹脂組成物である。
【0013】
前記支持体は、好ましくは、高分子フィルムである。
【0014】
前記樹脂組成物溶液は、好ましくは、沸点が20℃以上100℃以下の溶媒を含有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の光学フィルムの製造方法の実施の形態について詳しく説明する。
【0016】
本発明に用いることのできる樹脂組成物とは、例えば、ポリエチレンテレフタレート系ポリマー、ポリエチレンナフタレート系ポリマー等のポリエステル系ポリマー、ポリエチレン系ポリマー、ポリプロピレン系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、エチレンビニルアルコール系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー、ポリメチルペンテン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトンイミド系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリメタクリレート系ポリマー、ポリアクリレート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、フッ素系ポリマー、を主成分とする樹脂組成物である。支持体からの樹脂フィルムの剥がれ難さは用いる樹脂によって異なり、本発明は支持体から剥がれ安い樹脂ほど効果が顕著であり、支持体から剥がれ安い樹脂として、ノルボルネン系ポリマーが挙げられる。
【0017】
ノルボルネン系ポリマーとしては、下記一般式(1)または一般式(2)で表わされる構成単位を有するポリマーが挙げられる。
【0018】
【化1】
Figure 0004597418
【0019】
(但し式中R1およびR2は、水素、炭化水素残基またはハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジルなどの極性基でそれぞれ同一または異なっていてもよく、またR1およびR2は互いに環を形成していてもよい。lは正の整数である。pは0または正の整数である。)
【0020】
【化2】
Figure 0004597418
【0021】
(但し式中R3およびR4は、水素、炭化水素残基またはハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジルなどの極性基でそれぞれ同一または異なっていてもよく、またR3およびR4は互いに環を形成していてもよい。mおよびnは正の整数である。
qは0または正の整数である。)
一般式(1)で表わされる構成単位を有するポリマーは、単量体としては、例えば、ノルボルネン、及びそのアルキル及び/またはアルキリデン置換体及びハロゲン、エステル等の極性置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5−(1−メチルエチル)−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−クロロ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキソキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン等:ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、これらのメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル置換体、及びハロゲン、エステル等の極性置換体:ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキル及び/またはアルキリデン置換体、及びハロゲン等の極性置換体、例えば6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等:シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等を1種または2種以上使用し、公知の開環重合方法により重合して得られる開環重合体を通常の水素添加方法により水素添加して製造されるポリマーである。
【0022】
一般式(2)で表わされる構造単位を有するポリマーは、単量体として、前記のごときノルボルネン系モノマーの1種以上、エチレンを公知の方法により付加共重合して得られるポリマーおよび/またはその水素添加物であって、いずれも飽和ポリマーである。
【0023】
またノルボルネン系ポリマーは、一般式(1)および一般式(2)の製造工程で、分子量調整剤として、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンを存在させたり、あるいはシクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロシクロペンタジエン等のシクロオレフィンなどの他のモノマー成分を少量成分として添加することにより、共重合したポリマーであってもよい。
【0024】
これらの重合体は、耐熱性の観点から、そのガラス転移点が100℃以上、好ましくは150℃以上であることが好ましい。また用いる樹脂の数平均分子量は、低過ぎるとフィルムが脆く、強度が不足することとなり、高過ぎると溶媒に溶解させて得られるドープの粘度が高くなり加工性が悪くなるため、1〜10万、好ましくは2〜5万である。また、分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加により飽和させる場合には、水添率は90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。飽和度が高くなることにより、耐候劣化性や耐湿劣化性、耐光劣化性などが改良される。
【0025】
ノルボルネン系ポリマーは、1種のみを用いてもよく,また2種類以上を用いてもよい。また同一種で分子量が異なるものをブレンドしてもよい。 また、ノルボルネン系ポリマーには、酸化防止剤や帯電防止剤、滑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0026】
次に、本発明のフィルムの製造方法について述べる。
【0027】
本発明において、ノルボルネン系ポリマーを溶解させるために用いる溶媒としては、製膜後のフィルム中の残留揮発成分を少なくするために、できるだけ沸点の低い溶媒を用いることが好ましい。しかしながら、沸点が室温よりも低くなると、溶媒の揮発によって固形分濃度が変化しやすいなど、樹脂溶液の安定性に問題が発生することから、本発明で用いる溶媒の沸点は、好ましくは20℃以上100℃以下、さらに好ましくは30℃以上70℃以下である。また、溶液法で実施するためには、溶媒に対して樹脂が5重量%以上、好ましくは15重量%以上溶解することが好ましい。そのような観点から、本発明に用い得る溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジエチルエーテル、石油エーテル、1,4−ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ギ酸メチルなどが挙げられるが、特に限定されるわけではない。すなわち、ポリマーの置換基によっても溶解性は大きく異なるため、用いるポリマーに応じて最適な溶媒を選択する必要がある。
【0028】
本発明に用いる樹脂の溶液粘度は、支持体上に塗布もしくは流延することができる粘度である限り特に限定されない。粘度が高すぎると厚みを制御する事が難しくなり、粘度が低すぎる場合には支持体の端部より溶液がこぼれ落ちたり、キャスト幅が安定しないというおそれがあることから、5poise以上300poise以下、好ましくは20poise以上100poise以下である事が好ましい。
【0029】
高い樹脂濃度は、高粘度化につながるおそれがあるので、溶媒に対して樹脂成分は50重量%以下、好ましくは35重量%以下とする。
【0030】
本発明に用いることのできる支持体(キャリア)としては、剛性が高く搬送が容易で、かつフィルムの乾燥温度条件における耐熱性を有するものであり、また表面処理が可能な材質であることが望ましい。具体的には、ステンレス等の金属製、高分子フィルム製、ガラス製などが挙げられる。しかしながら、表面処理層は定期的に再処理もしくは交換が必要な場合もあるため、表面処理のし易さ、支持体の交換の容易さの点で、高分子フィルムを材質とした支持体を用いることが好ましく、長尺高分子フィルムがより好ましい。なお、本明細書中においては、長尺高分子フィルムとは、ロール状に巻き取られた10m以上の高分子フィルムのことをいう。フィルムの長さは、生産性の点から100m以上がより好ましく、更に好ましくは500m以上である。長尺の支持体を用いれば、生産効率は上がるが、長すぎる場合には、ロール径やロール重量が大きくなり取り扱いに困難を生じたり、繰り出し装置や巻き取り装置に過度の強度が要求され、設備費用が高くなるおそれがあるので、現実的には10000m以下が好ましく、より好ましくは7000m以下、さらに好ましくは5000m以下である。
【0031】
高分子フィルムの厚みは、25μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上である。厚みが薄すぎる場合には、支持体としての機能を果たさなくおそれがあり、ロール搬送時にしわが発生するおそれもある。
【0032】
また、高分子フィルムの厚みは、1mm以下が好ましく、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。厚すぎる場合には、ロール径が大きくなって、前記好ましい長さが確保できなくなったり、生産コストが高くなるおそれがある。
【0033】
支持体の材質となる高分子フィルムとして、好ましくは、剛性、耐熱性が高く、また耐有機溶剤性が高いものであり、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリサルホン系樹脂が挙げられる。なかでもポリエチレンテレフタレート(PET)は比較的安価でかつ剛性や加工性に優れ耐薬品性も高く、また表面に易接着処理あるいは粘着処理されたものが既に市販されていることから利用しやすく特に好ましい材料である。
【0034】
本明細書中における易接着処理とは、支持体に対して、その隣接層との剥がれにくさを向上させる機能を付与する処理のことをいう。この易接着処理により、支持体上で乾燥途中のフィルムが自然剥離しなくなる。いいかえれば、自然剥離しなくなる処理を易接着処理という。
【0035】
易接着処理としては、主に支持体表面にコーティングを行なう方法が知られており、処理後の表面は、ノルボルネン系フィルムと支持体との密着力を高めると共に、乾燥後に支持体からフィルムを剥離できることが必要である。易接着層を支持体表面に形成させるための方法については、各種公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。例として、支持体表面にアクリル系やウレタン系、シリコン系、ポリエステル系の樹脂などをコーティングする方法が挙げられる。
【0036】
溶液法においては、隣接層がキャスティング直後の自己支持性のない樹脂溶液であったり、自己支持性のある樹脂フィルムであったりするが、支持体から自己支持性を有する樹脂フィルムを引剥がす時点の剥がれにくさが、特に重要である。この場合の自己支持性を有する樹脂フィルムとは、乾燥途中の溶媒を含んでいる樹脂フィルムも含む。
【0037】
粘着層を支持体表面に形成するための方法については、支持体表面に粘着効果のある樹脂などをコーティングする方法や、支持体全面もしくは端部に粘着効果のあるフィルムやテープを貼合する場合も含まれる。
【0038】
表面処理を行う場合には、支持体に対し、上記の各処理方法を単独で行っても良いし、複数の処理を組み合わせて行っても構わない。また、上記の処理はフィルム全面に行っても構わないし、部分的に行っても構わない。しかしながらいずれの場合においても、乾燥中にフィルムが支持体から自己剥離せず、引き剥がす際に、糊残りやコーティング層の溶出によるフィルム側への転写等が起こらない事が重要である。剥離強度を適切化するために、例えば易接着層もしくは粘着層の厚みや種類を変更することや、フィルムの乾燥状態を変更する方法などが用いられる。
【0039】
次に、本発明に係るノルボルネン系フィルムの製造方法の実施形態について、更に詳細に説明する。
【0040】
本発明に適用されるノルボルネン系フィルムの製膜方法は、溶液法による製膜方法であって、樹脂を溶媒に溶かした水飴状のドープを支持体上に流延または塗布などを行って一定の厚みにし、乾燥工程を経て成形されるものである。一般に、製膜工程で変形応力を受けると、分子の配向が進んでフィルムの複屈折は増大し、その面内のばらつきも増大する。溶液法による製膜は、溶融法に比べてフィルムにかかる応力のむらを小さくすることができるため、複屈折率の小さいフィルムを製膜することができ、光学フィルムの製膜方法として好ましい方法である。
【0041】
上記溶液法における樹脂のコーティングやキャストの方法は特に限定されるものではないが、コンマコーター、リップコーター、ダイコーター、ドクターブレードコーター、バーコーター、ロールコーター等が挙げられる。中でも、コンマコーターやダイコーターは厚み制御の精度が高く、厚みむらがレターデーションなどの特性に大きな影響を与える光学フィルムの製造において特に好ましく用いることができる。
【0042】
フィルムを乾燥させる際には、急激な風の流れや加熱などを避ける必要がある。そのような急激な変化によって厚みが変化してムラが出やすく、光学製品におけるコントラストむらなどの原因になるため、厚みむらを無くすよう注意する必要がある。すなわち、ある程度表面の固化が進むまでは直接的にフィルムに風を当てない様にしたり、急激な加熱・冷却を防いだりすることが重要となる。
【0043】
フィルムが固化した後、支持体から引き剥がし二次乾燥を行うことで、フィルム中の残留揮発成分の割合を少なくすることができる。二次乾燥の温度は、残留揮発成分を蒸発させるためには高温で行うことが望ましいが、ポリマーのガラス転移温度より高くなるとフィルムが軟化して変形を生じ、その結果、しわ・変形が生じたりレターデーションのばらつきの原因になるため、ガラス転移温度以下、好ましくはガラス転移温度よりも10℃以下の温度で乾燥を行う。
【0044】
また、上記の方法によって製膜されたノルボルネン系樹脂フィルムにおいては、用途に応じて公知の技術を用いて一軸もしくは二軸延伸を行う事もできる。
【0045】
【実施例】
以下に実施例に基づいて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0046】
なお、実施例における光学フィルムの残留溶媒の測定方法としては、重量乾燥法を用い、得られたフィルムを180℃のオーブン中で30分乾燥し、下式;
(乾燥前の重量−乾燥後の重量)/(乾燥前の重量)×100(%)
より算出した。
【0047】
フィルム平均厚みは、アンリツ(株)製触針式厚み計KG601Aを使用し、厚み曲線からその平均値を読み取った。
【0048】
レターデーションは王子計測機器(株)製 KOBRA−21SDHを使用して測定を行った。
【0049】
本発明において、易接着性あるいは粘着性を判定する方法として、残留揮発成分が15〜20%程度になるよう加熱・乾燥した厚み50〜60μmのフィルムを、250mm×360mm(B4大にほぼ相当する)に支持体ごと切り出して、支持体面の4辺を両面テープで固定し、10分間静置する。その場合に支持体から自然に剥離が起こらず、かつ手で剥がした場合に易接着層あるいは粘着層の転写が起こらずにシール状に剥がせる場合を適、加熱乾燥中もしくは10分間静置中に自然に剥離が起こった場合や、易接着層あるいは粘着層の転写が起こる場合を不適とする。
【0050】
(実施例1)
溶媒としてジクロロメタン(沸点:39.8℃)を用いて、ポリノルボルネン系ポリマー(JSR(株)製、商品名 ARTON−G、ガラス転移温度171℃)の20重量%溶液を調合した。易接着処理を行った厚み125μmのPETフィルム(東レ(株)製、品番:ルミラーU94)を支持体として、この樹脂溶液を用い、コンマコーターを用いた溶液塗布法によりフィルムを製膜した。フィルムの乾燥は、支持体に塗布後、風を直接的に当てないよう注意しながら、50℃、60℃、80℃、100℃の乾燥炉でそれぞれ1分ずつ乾燥を行った。乾燥中フィルムは支持体に密着しており、剥れは見られなかった。その後、支持体から引き剥がし、150℃の乾燥炉で15分乾燥させることで、フィルム内の残留揮発成分が0.3重量%、幅方向に測定したレターデーションの値が1〜3nmの範囲にある、平均厚み50μm、幅1300mm、長さ500mの無色透明なフィルムを得た。また、このフィルムに保護フィルムをラミネートした後、ロール状態で室温にて1ヶ月放置したが、巻姿にほとんど変化がなかった。また、ディスプレー用部材に貼合して室温にて放置したが、大きな寸法変化は見られなかった。
【0051】
なお、製膜に用いた樹脂溶液を使用して、支持体に用いたフィルムの易接着性を予め評価した結果は、適であった。
【0052】
(実施例2)
実施例1と同様の樹脂の溶液を用い、表面に粘着加工を施したPETフイルム((株)サンエー化研製、品番SAT106TS)を支持体として用い、実施例1と同様の条件で溶液法による塗布および乾燥を行い、フィルム内の残留揮発成分が0.3重量%、幅方向に測定したレターデーションの値が2〜5nmである、平均厚み50μm、幅1300mm、長さ500mの無色透明なフィルムを得た。また、このフィルムに保護フィルムをラミネートした後、ロール状態で室温にて1ヶ月放置したが、巻姿にほとんど変化がなかった。また、また、ディスプレー用部材に貼合して室温にて放置したが、大きな寸法変化は見られなかった。
【0053】
なお、製膜に用いた樹脂溶液を使用して、支持体に用いたフィルムの易接着性を予め評価した結果は、適であった。
【0054】
(比較例1)
実施例1と同様の樹脂および溶液を用い、表面易接着処理を施していない125μmの厚みのPETフィルム(東レ(株)製、品番:ルミラーK20)を支持体として溶液塗布法により実施例1と同様の乾燥条件で製膜を行った。その結果、オーブン内にフィルムが滞留したため、連続生産を行うことができなかった。
【0055】
比較例1の実験終了後、製膜に用いた樹脂溶液を使用して、支持体に用いたフィルムの易接着性を評価した結果、不適であることが判明した。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係る光学フィルムの製造方法によれば、支持体との剥離が起こりやすい樹脂をフィルム化することが可能である。特に、高耐熱性、透明性、低吸湿性、低複屈折に優れ、光弾性係数の小さいノルボルネン系ポリマーを、溶液法にて工業的にフィルム化することが出来る。さらに、沸点の低い溶媒を用いた場合にも、乾燥途中の支持体からの剥離を防止することができ、安定的に連続生産を行うことができる。これによって、溶液法にフィルム中の残留揮発成分量の少ないフィルムを提供できる。こうして得られるノルボルネン系ポリマーからなるフィルムは位相差や厚みのばらつきが少なく、またディスプレイや光ディスクなどに加工後も寸法変化が少なく反りやうねりを生じず信頼性の高いものとなる。

Claims (3)

  1. 溶液法による光学フィルムの製造方法であって、樹脂組成物の溶液を、表面に易接着処理層または粘着処理層を有する支持体上に、連続的に流延または塗布する工程を含み、前記樹脂組成物が、ノルボルネン系ポリマーを主成分とする樹脂組成物である、光学フィルムの製造方法。
  2. 前記支持体として高分子フィルムを用いる、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記樹脂組成物溶液が、沸点が20℃以上100℃以下の溶媒を含有する、請求項1または請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
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