JP4597417B2 - 電子写真用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やファクシミリ、プリンター等に用いられている電子写真用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トナーを定着するには熱定着が多く使われている。
定着の原理としては一般に熱定着の場合、定着されるトナーなどは定着機の熱により軟化或いは溶融していなければならず、更にこの軟化或いは溶融したトナーが定着機から圧力を受けて紙の繊維中へめり込んだり、また、軟化或いは溶融したトナーの表面は粘着性がでているのでその粘着力で接着する。従って、トナーに使用する樹脂の融点或いは軟化点は定着機の温度以下である必要がある。
【0003】
ところで、近年、地球環境の保全のために省エネルギーの要求が高まっており、定着機で消費できるエネルギーが制限されつつある。実際、定着エネルギーを下げるためには定着機の温度を下げるしかなく、このように定着エネルギーをさげた定着機に対応したトナーの樹脂は必然的に低融点にならざるを得ない。しかし、このように融点を下げた樹脂は柔らかくなりやすく、トナーに加工した後簡単にブロック化したり、表面に粘着性があるためにトナー中の外添剤との相互作用が経時で変化し特性変化が起こったり保存性の面で問題がある。また、現像機内部に於いても同様にトナーが柔らかく粘着性があるために、キャリアにトナーがスペントしたり、現像ローラにトナーがフィルミングしたり、あるいは現像ブレードにトナーが固着したりする問題がある。更には、印刷した後の画像についても環境の変化によって、被印刷紙同士がブロッキングをおこしたりしやすいという問題がある。そのほかに、トナーの加工上の問題もあり、従来の樹脂で低融点化を図ると樹脂が柔らか過ぎる為に、粉砕工程に於いてトナーが粉砕しにくいという問題や、粉砕機内に貼り付いてしまうという問題もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決し、従来の電子写真用トナーに比べ、定着温度を下げることによる省エネルギー化を図り、さらに以下の特性を良好にした電子写真用トナーを提供することをその課題とする。
(イ)保存性を良好にする。
(ロ)外添剤との相互作用に経時変化をおこさない。
(ハ)トナースペント、フィルミング、固着を生じない。
(ニ)被印刷物の保存性を良好にする。
(ホ)良好な粉砕加工性をうる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
従来技術の問題を解決するために、本発明者らは定着の最低温度より高い融点の樹脂と定着の最低温度より低い融点のワックスを使用し、ワックスの融点以上の温度においてワックスが溶剤あるいは可塑剤として機能することにより樹脂がワックスにより分子レベルで溶解し、該樹脂を軟化あるいは溶解して樹脂の融点より低い温度で定着できる系を発見し、この知見に基づき使用樹脂の融点よりはるかに低いワックスの融点近傍の温度で融点の高い環化ゴムを使用しても定着が可能となり省エネルギー化ができる電子写真用トナーを実現することができた。
【0006】
なお、本発明における樹脂の融点とはフローテスター法による軟化点を指し、また本発明におけるワックスの融点とはワックスの結晶が殆どアモルファス化し透明になる点を指し、いわゆるDSC法におけるTgや吸熱のトップピークとは異なる概念の融点である。例えば、環化イソプレンの場合、DSC法によれば50℃から80℃の間に吸熱ピークが出るが、実際には100℃程度でも明らかに固体状態である。
【0007】
以下、本発明の課題解決手段を述べる。
本発明の第1は、着色剤及びバインダーを含む電子写真用トナーであって、該バインダーがバインダー樹脂を含み、さらに該バインダーが環化ゴムを含むことを特徴とする電子写真用トナーにある。
本発明の第2は、該環化ゴムが、該バインダー樹脂全体の重量に対して10wt%以上含有されていることを特徴とする前記第1の電子写真用トナーにある。
本発明の第3は、該環化ゴムの環化度が40%以上であることを特徴とする前記第1又は第2の電子写真用トナーにある。
本発明の第4は、該バインダーがさらにワックスを含み、該ワックスの融点以上の温度で該ワックスは溶剤として該環化ゴムを溶解していることを特徴とする前記第1〜第3の電子写真用トナーにある。
本発明の第5は、該環化ゴムに対する該ワックスの組成比が97:3〜5:95であることを特徴とする前記第4の電子写真用トナーにある。
本発明の第6は、該ワックスの融点が該環化ゴムの融点より低いことを特徴とする前記第4又は第5の電子写真用トナーにある。
本発明の第7は、該ワックスの溶融粘度が150℃において1〜10000000 c poiseであることを特徴とする前記第4〜第6の電子写真用トナーにある。
本発明の第8は、該ワックスの25℃における針入度が0以上20以下であることを特徴とする前記第1〜第7の電子写真用トナーにある。
本発明の第9は、該ワックスがパラフィン、マイクロクリスタリン、オレフィン及びこれらの酸化ワックスよりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする前記第1〜第8の電子写真用トナーにある。
本発明の第10は、該環化ゴムの融点以下で定着可能であることを特徴とする前記第1〜第9の電子写真用トナーにある。
本発明の第11は、前記第1〜第10の電子写真用トナーを使用したことを特徴とする電子写真画像形成方法にある。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電子写真用トナーについてさらに具体的に説明する。
本発明においては、メインバインダーとして融点が高く保存性や耐スペント、耐フィルミング、耐固着性の良い環化ゴムを使用し、これをワックスで溶解したものを固化させトナーとする。従って、これを熱定着にかけた時ワックスの融点以上の温度で環化ゴムがワックスにより溶解し環化ゴムの融点に温度が達しなくとも環化ゴムが軟化、あるいは溶解し定着性能が発現する。なお、環化ゴム自体の融点は高いので樹脂が柔らかすぎるということはなく、良好な粉砕性が得られる。
バインダー樹脂構成比で環化ゴムが10wt%以上で従来の樹脂と混合して使用する場合、少なくともバインダー樹脂全体中の環化ゴム含有量が10wt%以上処方されていることが好ましく、10wt%より少ない処方量では従来の樹脂と混合されたトナーの融点を充分に下げることができず、定着不良をおこしてしまうことがある。環化ゴム含有量は、好ましくは15wt%以上、より好ましくは20wt%以上、更に好ましくは30wt%以上、更に好ましくは40wt%以上、もっとも好ましくは50wt%以上である。
【0009】
環化ゴムに対するワックスの組成比については、ワックスの処方量が多ければ多い程、環化ゴムの溶融粘度は低下するが、環化ゴム処方量が減少するとワックスが他の樹脂を溶解することはなく樹脂と交じることもないので、樹脂とワックスが分離してしまいトナー化が難しい。環化ゴムの処方量が多くワックスが少ないと、環化ゴムがワックスに溶解しても溶融粘度が高すぎて定着性能がでない。そこで、鋭意検討した結果、環化ゴムとワックスの組成比が97:3〜5:95であれば性能がでることが明らかとなった。しかし、実使用上はオフィスのような空調の効いた場所での定着のみとは限らず高温、低温、高湿、低湿など色々の定着環境が考えられ、好ましくは95:5〜20:80、より好ましくは90:10〜30:70、余裕度を考慮すれば更に好ましくは80:20〜40:60が良い。
【0010】
ワックスの融点が環化ゴムの融点より低いものを使用しないと環化ゴムの融点以下でワックスが溶融しないので当然環化ゴムをワックスで溶解することはできず、トナーの融点を下げることができない。したがって、ワックスの融点は、好ましくは50℃以上130℃以下、より好ましくは50℃以上110℃以下、更に好ましくは50℃以上100℃以下、もっとも好ましくは50℃以上90℃以下である。
ワックスの溶融粘度は低ければ低い程よいが1 c poiseを切るようなワックスについては知見がない。逆にワックスの溶融粘度が高い場合、環化ゴムのワックス溶液は高粘度となり、10000000 c poiseを超えるワックス粘度では溶融粘度が高すぎて定着不良を起こし易い。また、実使用上はオフィスのような空調の効いた場所での定着のみとは限らず高温、低温、高湿、低湿など色々の定着環境が考えられ、ワックスの溶融粘度は、好ましくは1〜100000 c poise、より好ましくは1〜10000 c poise、更に好ましくは1〜1000 c poise、余裕度を考慮するともっとも好ましくは1〜100 c poiseが良い。したがって、ワックスの溶融粘度が150℃において1〜10000000 c poise以下であるようなワックスであれば良い。
【0011】
さらに、本発明で用いるワックスについて検討した結果、25℃における針入度が0以上20以下であるワックスであれば本発明において十分な効果を使用できることが明らかとなった。すなわち、一般にワックスの針入度が高いとワックス自体の粘着性が高くなり現像の設計上スペントやフィルミング、固着等が発生し易くなり好ましくなく、さらに高温環境での使用を考えるとワックスの針入度は0以上8以下、もっとも好ましくは0以上5以下が望ましい。
【0012】
一般にワックスは直鎖のパラフィンや少し分岐したマイクロクリスタリン、オレフィン、脂肪酸、脂肪族エステル、脂肪族ケトン、アミン、アミド、アルコール、ステロールなどがあるが、これはあくまで分子の一部分の結合や基であり、メインとなるアルキル基の部分が非常に長いので全体としては極性が極端に低くなるが、本発明で用いるワックスとしては、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、或いはこれらの酸化ワックス、モンタン酸、モンタン酸エステル、カルナウバ、キャンデリラ、ライス、エスパルト、カスター、木ロウ、ミツロウ、ホホバ、ステロール類、ケトン、などが挙げられる。
【0013】
特に本発明で用いるワックスの種類としては、パラフィン、マイクロクリスタリン、オレフィン、あるいはこれらの酸化ワックスが好ましい。これらのワックスを使用することにより環化ゴムの溶解性が高くトナーを製造する際、短時間で環化ゴムがワックスに溶けることが明らかとなった。これはこれら、パラフィン、マイクロクリスタリン、オレフィン、あるいはこれらの酸化ワックスの極性が特に低く環化ゴムの環状部とのなじみが良いことが原因と思われる。
【0014】
本発明で用いる環化ゴムについて鋭意検討した結果、その環化度が平均で40%以上であれば良好な環化ゴムとしての性質が発揮できることが明らかとなった。環化度が低いとワックスに対する溶解性が失われていき、本発明において十分な効果を発揮できない。また環化度30%程度では環化ゴム自体が柔らかくなって行き液体としての性質が強くなる。従って、検討した結果、より好ましい値は環化度70%以上が良い。
【0015】
前記環化ゴムの製法の一例としては、以下に示される方法が挙げられる。
Fisherの方法はゴムに環化剤として濃硫酸を5%練りこみ130℃で15時間加熱することにより環化ゴムを得る。環化剤として前記濃硫酸の他に、有機スルホン酸、塩化すず、塩化鉄、非金属ハロゲン化物及びハロゲン化第一、第二すず酸等を用いる方法があり種々の樹脂状可塑性物質ができる。これらは、下記表1に示すように酸化薬品の作用により異性化現象を起こし、比重が増加し不飽和度が減少して性質の全くことなった物質をうるものであり本発明における環化ゴムはこのような方法で作成することが可能である。
【0016】
【表1】
【0017】
本発明の電子写真用トナーに使用できるサブレジンとしては、以下のようなものがあげられる。
トナーそれぞれに使用されるバインダー樹脂の一例としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、 スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、 スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、などが挙げられ、単独であるいは混合して使用できるが、特にこれらに限定するものではなく、これらの樹脂に、必要に応じてカーボンブラックやカラー顔料を混練分散して使用すればよく、当然帯電制御剤の併用も可能である。また、粉体化した後、トナーの流動性を調整するためにシリカ、チタン、ストロンチウム等の添加剤を加えても良い。
【0018】
従来からトナーの樹脂中にワックスを分散して使用する方法は公知である。これは定着ローラにトナーがつかないようトナー中の樹脂にワックスを分散して、定着する時にこの分散されたワックスが染み出してトナーと定着ローラとの離型性を良くする方法がとられている。しかし、従来使用されている樹脂はワックスによる溶解性がなくそのために樹脂自身を溶解や軟化させることはできない。これに対して本発明の環化ゴムはワックスの融点以上の温度において液状のワックスに溶解或いは可塑化されるので明らかに従来の方法とは異なるものである。また、本発明に類似のものに、特開平7−271100、特公平7−15596、特公平7−31418、特公平7−40146、特公平7−62765、特公平7−82248、特公平7−104612、特許公報第2548091号公報、特許第2759482号掲載公報があるが、これらはいずれも懸濁重合トナー作成時の分散安定剤、又は、ブロッキング防止等の目的で重合トナー形成時における重合された低軟化点樹脂をくるむ為の殻を形成する目的で使用されており、いわゆるカプセル形成剤である。従って、これらは本発明とは根本的に異なるまったく別の発明である。
【0019】
【実施例】
以下実施例をもとに本発明をさらに具体的に説明する。
【0020】
実施例1
環化ポリイソプレン 78wt%
サゾールH2 16wt%
カーボンブラック 5wt%
CCA 1wt%
【0021】
実施例2
環化ポリイソプレン 50wt%
サゾールH2 10wt%
磁性体 39wt%
CCA 1wt%
【0022】
実施例3
環化ポリイソプレン 72wt%
カルナウバワックス 22wt%
カーボンブラック 5wt%
CCA 1wt%
【0023】
参考例4
環化ポリイソプレン 72wt%
モンタン酸エステル 39wt%
カーボンブラック 5wt%
CCA 1wt%
【0024】
実施例5
環化ポリイソプレン 78wt%
155F°パラフィン 16wt%
カーボンブラック 5wt%
CCA 1wt%
【0025】
参考例6
環化ポリイソプレン 74wt%
ライスワックス 20wt%
カーボンブラック 5wt%
CCA 1wt%
【0026】
実施例7
環化ポリイソプレン 74wt%
酸化パラフィン 20wt%
カーボンブラック 5wt%
CCA 1wt%
【0027】
参考例8
環化ポリイソプレン 94wt%
カーボンブラック 5wt%
CCA 1wt%
【0028】
実施例9
環化ポリイソプレン 74wt%
酸化パラフィン 20wt%
シアン 5wt%
CCA 1wt%
【0029】
実施例10
環化ポリイソプレン 72wt%
カルナウバ 22wt%
イエロー 5wt%
CCA 1wt%
【0030】
実施例11
環化ポリイソプレン 42wt%
高融点ポリエステル(融点155℃) 30wt%
カルナウバ 22wt%
カーボンブラック 5wt%
CCA 1wt%
【0031】
比較例1
高融点ポリエステル(融点155℃) 94wt%
カーボンブラック 5wt%
CCA 1wt%
【0032】
比較例2
低融点ポリエステル(融点94℃) 94wt%
カーボンブラック 5wt%
CCA 1wt%
【0033】
比較例3
高融点ポリエステル(155℃) 78wt%
サゾールH2 16wt%
カーボン 5wt%
CCA 1wt%
【0034】
上記実施例1〜3、5、7、9〜11、参考例4、6、8、及び比較例1〜2について、3本ロールにて5回混練し冷却後粉砕し、外添剤としてシリカをトナー100部に対して1部加え混合し、最終的なトナーとした。比較例3についてはワックスと樹脂が分離してトナー化ができなかった。これらのトナーを用い実際に定着機の温度を変えて実験を行った所、下表2の結果が得られた。
【0035】
【表2】
【0036】
また、ワックスが入っている処方は定着ローラにオイルを塗布する必要はないが、条件を統一する意味で、すべてのトナーについてローラにオイル塗布を行った。
環化ゴムとワックスとを用いた系では、比較例1の高融点ポリエステルのみをバインダーに使用した場合と比べて60〜80℃定着温度を下げることができた。
上記トナーを用いて保存性テストを行った所、下表3の結果が得られた。(保存環境40℃2週間)
【0037】
【表3】
【0038】
上記表中、○印は変化がないことを表す。
帯電量は一成分現像のスリーブ上の帯電量を表す。
OPC地肌汚れはOPC上に付着したトナーを透明な粘着テープでとり白い紙の上に貼り付けてマクベス反射濃度計により濃度ID1を測定し、更にトナーのついていない透明な粘着テープを白い紙の上に貼り付けその濃度ID2を測定したものの差であり、数値が小さい程汚れが少ない。ΔID=ID1−ID2
【0039】
以上の結果より、本発明のトナーの保存性や特性に変化がないことが分かる。また、通常の高融点ポリエステルについても保存性に問題はなく、特性についてはやや変化があるものの問題にならないレベルである。しかし、低融点ポリエステルを使用したものは保存テストで完全に固化していまい、特性を測ることすらできない。
【0040】
次に、トナーのランニング後の経時変化(画像出し2000枚後)について調べた結果を下表4に示す。画像出しは一成分現像で行い帯電量はスリーブ上のトナーの帯電量である。
【0041】
【表4】
【0042】
上記結果より、環化ゴム単独かあるいは環化ゴムとワックスの組み合わせの場合、帯電量の変化が殆どなく、地肌汚れも殆ど変化していないことがわかる。
高融点ポリエステル単独の場合、帯電量の低下と地肌汚れの増加があるが、使えないレベルではない。
低融点ポリエステル単独では大幅な帯電量低下と地肌汚れの劣化が起こり、使えないレベルである。
【0043】
また、作像系におけるテストを行った。
トナースペントについては二成分現像、現像ローラフィルミングと現像ブレード固着については一成分現像にてテストを行い、一成分、二成分現像とも2000枚の画像を出した後、評価した。その結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
上記表中、レベル1は発生なし、レベル2は発生はしているが程度が軽く問題とならない、レベル3は画像品質に大きな影響がでて使えない、を示す。
環化ゴムや環化ゴムとワックスの組み合わせの系では初期品質と殆ど変化がなかった。
環化ゴムと高融点ポリエステルの組み合わせでは現像ローラフィルミングがわずかに発生しているが画像上全く問題にならない。高融点ポリエステルのみの場合ニ成分現像ではキャリアへのトナースペント、一成分現像では現像ローラフィルミング、現像ブレードへのトナー固着がやや見られるが、問題となるレベルではなく従来からの性能である。低融点ポリエステルの場合ニ成分現像におけるトナースペント、一成分現像における現像ローラフィルミング、現像ブレードへのトナー固着とも激しいトナーの付着がみられる。この時画像上では画像濃度ムラ、転写紙の地肌汚れ、画像の縦白スジなどさまざまな異常画像の発生が見られ画像品質の上からもこの系は使用できない。
【0046】
次に、被印刷物の保存性であるが、片面印刷と両面印刷両方の場合に分けてテストした。その結果を下表6に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
以上より、比較例2の低融点ポリエステルを使用した場合のみ転写紙の汚染やブロック化が起こり使用できないことがわかる。
【0049】
また、トナー化する際の粉砕工程についての評価を行った。その結果を下表7に示す。表7のものは一定量のトナーが所望の粒径のトナーとして出来上がるまでの時間と付着状況の評価である。
【0050】
【表7】
【0051】
以上のように実施例1〜3、5、7、9〜11、参考例4、6、8までは工程上問題ないといえる。しかし、比較例1と2ではかなりの粉砕時間を要し実用的ではない。さらに、比較例2のトナーの粉砕においては、粉砕室内のトナーの付着が激しく粉砕中に粉砕条件が変化してしまう。従って、低融点ポリエステルの系ではトナー加工上大きな問題があると言える。
【0052】
【発明の効果】
本発明の電子写真用トナーによれば、前記構成としたので、以下のような顕著なる効果が得られる。
1.環化ゴムより融点の低いワックスで環化ゴムが溶解することにより、環化ゴムの融点より低い温度で定着が可能となり、省エネルギーが可能となった。
2.低融点トナーであっても環化ゴム自体の融点は高いので保存性が良好になった。
3.環化ゴムは硬い樹脂なので、外添剤がトナーにめり込むことや、低分子の樹脂により外添剤が汚染することがなくなり、特性変化を最小限に抑えることができた。
4.硬く粘着性のない環化ゴムを使用することにより、トナースペント、フィルミング、固着等を防止できた
5.融点の高い樹脂で硬く粘着性のない樹脂なので被印刷物がブロック化しない。
6.低融点トナーでありながら使用している環化ゴムが柔らか過ぎず適度に硬いので良好に粉砕することができた。
Claims (7)
- 着色剤及びバインダーを含む電子写真用トナーであって、該バインダーが該電子写真用トナーの定着の最低温度より高い融点の環化ポリイソプレンを含み、さらに該バインダーが該電子写真用トナーの定着の最低温度より低い融点のワックスを含むことを特徴とする電子写真用トナー。
- 該環化ポリイソプレンが、該バインダー全体の重量に対して45wt%以上含有されていることを特徴とする請求項1記載の電子写真用トナー。
- 該環化ポリイソプレンの環化度が70%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真用トナー。
- 該ワックスの融点以上の温度で該ワックスは溶剤として該環化ポリイソプレンを溶解していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用トナー。
- 該環化ポリイソプレンに対する該ワックスの組成比が83:17〜65:35であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナー。
- 該ワックスがパラフィン、マイクロクリスタリン、オレフィン及びこれらの酸化ワックスよりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用トナー。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真用トナーを使用したことを特徴とする電子写真画像形成方法。
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