JP4596932B2 - 立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法 - Google Patents
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特にアルデヒドとケイ素エノラートとのアルドール反応(化1)は、原料の種類あるいは組み合わせによって様々なアルドール生成体を得ることができる。また、得られたアルドール生成体は、水酸基・カルボニル基といった変換可能な置換基を有することから、有機合成における有用な中間体である。さらに原料の種類および光学活性な触媒を選択することで、光学活性なアルドール成績体を立体選択的に得ることもできる。近年開発された医薬品において、光学活性医薬品の占める割合は増加傾向にあり、光学活性なアルドール生成体は有望な中間原料である。
このアルドール反応において使用されるケイ素エノラートは各種のカルボニル化合物とTMS-Y(Yは脱離基として任意の置換基を示す)とから合成され、ここで導入されたTMS基はアルドール反応後に除去・廃棄される(化2)。すなわち、アルドール生成体のTMS基は、加水分解後に生成する水溶性のTMS-OH等の副生成物として廃棄されていた。このTMS-OHは反応性に富む低分子化合物であるためこれを定量的に回収することは困難であった。これは、シリル基を含む副生成物は単一の化合物ではない上、水溶性化合物である場合が多いことから、定量的な回収が困難なことに起因している。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
(式中、TMSはトリメチルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R 2 が次式
で表される1価の基、R 3 が水素原子、およびR 4 がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TMS-O-TMSと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
(式中、TMS、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TMS-O-TMSを得ると同時に、溶媒の沸点とTMS-O-TMSの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTMS-O-TMSをケイ素成分として回収するステップ。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
(式中、TESはトリエチルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R 2 が次式
で表される1価の基、R 3 が水素原子、およびR 4 がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TES-O-TESと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
(式中、TES、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TES-O-TESを得ると同時に、溶媒の沸点とTES-O-TESの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTES-O-TESをケイ素成分として回収するステップ。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
(式中、TiPSはトリイソプロピルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R 2 が次式
で表される1価の基、R 3 が水素原子、およびR 4 がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TiPS-O-TiPSと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
(式中、TiPS、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TiPS-O-TiPSを得ると同時に、溶媒の沸点とTiPS-O-TiPSの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTiPS-O-TiPSをケイ素成分として回収するステップ。
また、原料ケイ素エノラート化合物は各種のカルボニル化合物にシリル化剤TMS-Y、TES-Y、TiPS-Y(Yは任意の脱離基を示す)を作用させて作成することができる。なお、アルドール反応は室温以下の温度で行うことができるが、好ましくは5℃で行う。溶媒は、目的とする生成ケイ素エーテル化合物と精密蒸留により分溜可能な沸点を有する溶媒、好ましくは有機溶媒である。例えば、原料ケイ素エノラート化合物が次式
(式中、R2、R3、およびR4は前記と同義である)の場合は、後述の通り生成ケイ素エーテル化合物がTMS-O-TMS(沸点101℃)となることから溶媒としては高沸点のo-キシレン(沸点144℃)が好ましい。一方、生成ケイ素エーテル化合物がTES-O-TES(沸点232℃)やTiPS-O-TiPS(沸点46〜48℃/0.2mmHg)の場合は、低沸点のトルエン(沸点111℃)が好ましい。
(式中、R 2 、R 3 、およびR 4 は前記と同義である)の場合、生成ケイ素エーテル化合物はTMS-O-TMSに変換される。生成ケイ素エーテル化合物は精密蒸留により溶媒と分離させ、定量的に回収することが可能である。具体的には、前記分離操作の回収液に濃硫酸(ケイ素成分に対して4当量)を5℃下で添加し、その後室温で30分強撹拌し、反応液を水洗、飽和重曹水洗、飽和食塩水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、吸引ろ過して生成ケイ素エーテル化合物を含む有機層を得る。これを常圧下で精密蒸留して、有機溶媒から生成ケイ素エーテル組成物を単離する。
最後に、生成ケイ素エーテル化合物は再生操作を行って原料ケイ素エノラート化合物として再利用することができる。生成ケイ素エーテル化合物のTMS-O-TMS、TES-O-TES、またはTiPS-O-TiPSは、定法によりシリル化剤TMS-Y、TES-Y、TiPS-Y(Yは任意の脱離基を示す)に変換し、さらに原料ケイ素エノラート化合物として再利用が可能である。たとえば、TMS-O-TMSは容易にシリル化剤TMS-Y(Yは脱離基)に容易に変換できる。すなわち、TMS-O-TMSに濃硫酸を溶媒としてNH4Clを反応することでTMS-Clを得ることができるし(Pray, P. O.; Sommer, L. H.; Goldberg, G. M.; Kerr, G. T.; Giorgio, P. A. D.; Whitmore, F. C. J.Am.Chem.Soc. 1948, 70, 433.)、TMS-O-TMSに無溶媒下でTfOTfと加温することでTMS-O-Tfを得ることができる(Aizpurua, J. M.; Palomo, C. Synthesis 1985, 206.)。この出願の本発明の方法により提供される生成ケイ素エーテル化合物は、このような公知の方法により、各種のシリル化剤への変換や、原料ケイ素エノラート化合物へ再生することが可能である(化3)。
そこで、以下に実施例を示し、この出願の発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例により、発明が限定されることはない。
Claims (3)
- アルデヒドとケイ素エノラートのアルドール反応による立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法であって、以下のステップ含むことを特徴とするケイ素成分の回収方法。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
(式中、TMSはトリメチルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R 2 が次式
で表される1価の基、R 3 が水素原子、およびR 4 がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TMS-O-TMSと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
(式中、TMS、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TMS-O-TMSを得ると同時に、溶媒の沸点とTMS-O-TMSの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTMS-O-TMSをケイ素成分として回収するステップ。 - アルデヒドとケイ素エノラートのアルドール反応による立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法であって、以下のステップ含むことを特徴とするケイ素成分の回収方法。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
(式中、TESはトリエチルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R 2 が次式
で表される1価の基、R 3 が水素原子、およびR 4 がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TES-O-TESと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
(式中、TES、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TES-O-TESを得ると同時に、溶媒の沸点とTES-O-TESの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTES-O-TESをケイ素成分として回収するステップ。 - アルデヒドとケイ素エノラートのアルドール反応による立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法であって、以下のステップ含むことを特徴とするケイ素成分の回収方法。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
(式中、TiPSはトリイソプロピルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R 2 が次式
で表される1価の基、R 3 が水素原子、およびR 4 がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TiPS-O-TiPSと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
(式中、TiPS、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TiPS-O-TiPSを得ると同時に、溶媒の沸点とTiPS-O-TiPSの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTiPS-O-TiPSをケイ素成分として回収するステップ。
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