JP2004175740A - α−置換アクリル酸ノルボルナニル類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】α−置換アクリル酸を置換ノルボルネンと直接反応させる。該反応は酸触媒の存在下で行なうことが好ましく、酸触媒としてはリン酸、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、三フッ化ホウ素、四塩化チタン、四塩化スズの群から選ばれる少なくとも一種のものが好ましい。本発明によれば、反応、精製工程を通じて反応混合物が低粘度に保たれるため、その取り扱いが著しく容易になる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、F2レーザ用次世代フォトレジストに対応するモノマーとして有用な化合物である一般式[3]
【0002】
【化6】
【0003】
で表されるα−置換アクリル酸ノルボルナニル類(以下「NB系レジストモノマー」とも表記する。)の製造方法に関する。
【0004】
【従来の技術】
本発明の目的化合物である、一般式[3]で示されるα−置換アクリル酸ノルボルナニル類はα−置換アクリル酸エステル類であり、一般的なエステル化合物の合成法により合成できる。具体的には、(A)カルボン酸ハライドとアルコール類の間の反応、(B)カルボン酸無水物とアルコール類の間の反応、(C)カルボン酸とアルコール類を脱水縮合させる方法、および(D)カルボン酸エステル類とアルコール類の間のエステル交換反応、などの手法が挙げられる。
【0005】
例えば、非特許文献1にはアクリル酸メチルをシクロヘキサノールとのエステル交換反応に付し、アクリル酸シクロヘキシルを合成できることが記されている。
【0006】
【非特許文献1】
日本化学会編,「新実験化学講座(第14巻)有機化合物の合成と反応[II]」,丸善出版株式会社,1977年12月,p.1018
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
α−置換アクリル酸ノルボルナニル類は、F2レーザ用レジスト材料のモノマーとして有用な化合物であり、該モノマーを構成要素として含有するレジストは光の透過性、表面吸着性に優れており、本出願人らはこれらのモノマーとポリマーの発明につき、既に出願した(特願2001−222530号)。特願2001−222530号には、ノルボルナニルアルコールとα−置換アクリル酸を脱水縮合させることにより、対応するα−置換アクリル酸ノルボルナニル類を合成できることが記されている。
【0008】
しかしながら、この方法は小規模での製造には適しているが、工業的製造に用いるには問題がある。
【0009】
上記、非特許文献1および特願2001−222530号に記載された方法はいずれもアルコール類を反応基質として用いるという特徴がある。つまりこれらの方法を本発明の化合物に適用するには、スキーム1に表すように、一般式[2]に示されるノルボルネン類を、ハイドロボレーション、エステル付加反応−エステル加水分解等の手法を用いて一般式[4]に示されるノルボルナニルアルコールへ変換した後、このノルボルナニルアルコールとアクリル酸、もしくはアクリル酸ハライド、アクリル酸無水物、アクリル酸エステル等を反応させる必要がある。
【0010】
【化7】
【0011】
ところが上記方法を本発明者が試みたところ、中間体の一般式[4]で示されるノルボルナニルアルコールの粘性が非常に高いことが明らかとなった。粘度の高い化合物を反応工程や後処理工程で取り扱うことは、大量に生産する場合、その操作を著しく煩雑にする。さらに、目的とする一般式[3]で示されるα−置換アクリル酸ノルボルナニル類を高い化学純度で得るためには、一般式[4]で表されるノルボルナニルアルコールを予め精製してから反応に供することが有効であるが、その粘度が非常に高いために蒸留精製も困難であることが判明した。
【0012】
このように、ノルボルナニルアルコールを中間体とする従来の合成方法は、α−置換アクリル酸ノルボルナニル類を工業的規模で製造するには負荷がかかる。そこで、本発明の目的は、上記のような問題が生じないNB系レジストモノマー合成方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる従来技術の問題点に鑑み、工業的規模での製造に適したNB系レジストモノマー製造法を確立するべく、鋭意検討を行なった。その結果、一般式[1]で示されるα−置換アクリル酸を、一般式[2]で示される置換ノルボルネンに対して直接作用させると、効率的な付加反応が起こって、高収率で目的とする一般式[3]で示されるNB系レジストモノマーが得られることを見出した。
【0014】
本発明によれば、置換ノルボルネンを対応するアルコールに変換する工程が必要ないため、従来、二段階もしくはそれ以上の反応を要していたものが、一段階の反応で済み、操作が著しく簡便になる。さらに、本発明においては、反応工程の途中で高粘度の中間体が生成することは一切なく、終始、低粘度の液体として取り扱うことができることも明らかとなった。本発明者らはさらに、該反応が特定の酸触媒の存在下で特に好適に進行することを見出し、本発明の完成に到達した。本発明の方法をスキーム2にまとめる。
【0015】
【化8】
【0016】
すなわち本発明は、一般式[1]で示されるα−置換アクリル酸
【0017】
【化9】
【0018】
を、式[2]で示される置換ノルボルネン
【0019】
【化10】
【0020】
と反応させることを特徴とする、式[3]で表されるα−置換アクリル酸ノルボルナニル類
【0021】
【化11】
【0022】
の製造方法を提供する。[但し、式[1]〜[3]中のR1は水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基(これらの低級アルキル基は、その水素原子の一部または全部がフッ素原子によって置換されていてもよい。)、またはハロゲン基である。R2、R3、R4、R5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基(これらの低級アルキル基は、その水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基によって置換されていてもよい)、R6OC(O)−で表されるアルキルオキソカルボニル基、R6OC(O)CH2−で表されるアセチルエステル基、R6O−で表されるアルコキシ基、またはR6OCH2−で表されるエーテル基である(ここで、R6は水素原子、炭素数1〜6の低級鎖状アルキル基、または炭素数6〜10の環状アルキル基であり、これらの低級鎖状アルキル基または環状アルキル基は、その水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい)。]
また本発明は、該反応を酸触媒の存在下で行なうことを特徴とする、α−置換アクリル酸ノルボルナニル類の製造方法を提供する。
【0023】
さらに本発明は、該反応における酸触媒がリン酸、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、三フッ化ホウ素、四塩化チタン、四塩化スズの群から選ばれる少なくとも一種の酸触媒であることを特徴とする、α−置換アクリル酸ノルボルナニル類の製造方法を提供する。
【0024】
さらに本発明は、一般式[2]で表される原料の置換ノルボルネンの置換基R2、R3、R4がともに水素原子であり、かつR5がCF3C(CF3)(OH)CH2−基である、上記α−置換アクリル酸ノルボルナニル類の製造方法を提供する。
【0025】
さらに本発明は、一般式[2]で表される原料の置換ノルボルネンの置換基R2、R3がともに水素原子であり、かつR4がCF3基、R5がR6OC(O)−基(ここで、R6は水素原子、炭素数1〜6の低級鎖状アルキル基、または炭素数6〜10の環状アルキル基であり、これらの低級鎖状アルキル基または環状アルキル基は、その水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい)である、上記α−置換アクリル酸ノルボルナニル類の製造方法を提供する。
【0026】
【発明の実施の態様】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の方法は、バッチ式反応装置において実施することができる。以下においてその反応条件を述べるが、それぞれの反応装置において、当業者が容易に調節しうる程度の反応条件の変更を妨げるものではない。
【0027】
本発明に使用する原料の、一般式[1]で表されるα−置換アクリル酸の置換基R1としては水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基(これらの低級アルキル基は、その水素原子の一部または全部がフッ素原子によって置換されていてもよい。)、またはハロゲン基である。R1の具体例としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基(CF3−)、ペンタフルオロエチル基(C2F5−)、CF3CH2−、CF3(CF3)CH−等が挙げられる。これらの中でR1がトリフルオロメチル基であるものは、目的物α−置換アクリル酸ノルボルナニル類の有用性が顕著なことから、特に好ましい例である。
【0028】
これらのα−置換アクリル酸は公知の方法で合成することができる。R1が水素、メチル基、ハロゲン等の場合は試薬としても容易に入手可能である。また、例えばR1がCF3の場合は2−ブロモ−1,1,1−トリフルオロプロペンに対してPdを触媒とするCO挿入反応を行なうことにより(Heck反応)、容易に合成できることが知られている(特開昭59−21648号公報)。
【0029】
本発明に使用する原料の、一般式[2]で表される置換ノルボルネンにおけるR2、R3、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基(これらの低級アルキル基は、その水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基によって置換されていてもよい)、R6OC(O)−で表されるアルキルオキソカルボニル基、R6OC(O)CH2−で表されるアセチルエステル基、R6O−で表されるアルコキシ基、またはR6OCH2−で表されるエーテル基である(ここで、R6は水素原子、炭素数1〜6の低級鎖状アルキル基、または炭素数6〜10の環状アルキル基であり、これらの低級鎖状アルキル基または環状アルキル基は、その水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい)。
【0030】
R2、R3、R4、R5の具体例としては、水素原子の他に、メチル基、エチル基、CF3−、C2F5−、CF3CH2−、CF3(CF3)CH−、(HO)CH2−、(HO)CH2CH2−、CF3CH(OH)CH2−、CF3C(CF3)(OH)CH2−等が挙げられるが、これらに限られない。また、上述のR2、R3、R4、R5の説明におけるR6としては、水素原子の他に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の低級アルキル基、シクロプロピル等の環状アルキル基、CF3CH2等のフッ素化アルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中で、R2、R3、R4がともに水素原子であり、かつR5がCF3C(CF3)(OH)CH2−基である組み合わせ、またはR2、R3がともに水素原子であり、かつR4がCF3基、R5がR6OC(O)−基(ここで、R6は水素原子、炭素数1〜6の低級鎖状アルキル基、または炭素数6〜10の環状アルキル基であり、これらの低級鎖状アルキル基または環状アルキル基は、その水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい)である組み合わせは、目的物のα−置換アクリル酸ノルボルナニル類の有用性が特に顕著であることから、特に好ましい例である。
【0031】
原料の、一般式[2]で表される置換ノルボルネンは、対応するオレフィンとシクロペンタジエンをルイス酸触媒存在、もしくは非存在下、Diels−Alder反応に付することにより合成できることが知られている。例えば、R2、R3、R4が水素原子であり、R5にCF3C(CF3)(OH)CH2−基を有する化合物は1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ペンタ−4−エン−2−オールとシクロペンタジエンとの反応により収率33%で得ることができるとの報告がある(J. Photopolym. Sci. Technol., Vol. 13, No. 4, 2000, 657)。この反応において試薬として用いられる1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ペンタ−4−エン−2−オールはアリルグリニャール試薬とヘキサフルオロアセトンとの反応等により合成できる(J. Photopolym. Sci. Technol., Vol. 13, No. 4, 2000, p.657)。
【0032】
本発明の反応は酸触媒の共存下、行なうことが好ましい。酸触媒としては、リン酸、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、三フッ化ホウ素、四塩化チタン、四塩化スズからなる群より選ばれる少なくとも一種のものが、好適に用いられる。α−置換アクリル酸自身も酸触媒として機能するため、上記酸触媒の非存在下でも目的とする反応は進行する。特にα−置換アクリル酸のpKaが高い場合に、α−置換アクリル酸の触媒としての機能は比較的大きい。しかし、副反応を抑え反応を円滑に進行させるためにこれら酸触媒を添加することが好ましい。なお、これらの酸触媒のうちp−トルエンスルホン酸、硫酸が特に好ましい。
【0033】
本反応に使用する酸触媒の量は、置換ノルボルネン、α−置換アクリル酸、溶媒および酸の種類の組み合わせにより触媒としての効果が変動するため、一義的には決めることができないが、基質の置換ノルボルネン1モルに対して0〜1モルであり、0.005〜0.5モルが好ましく、0.01〜0.2モルがより好ましい。基質の置換ノルボルネン1モルに対して酸触媒が1モルを超えると経済的に好ましくない。
【0034】
本発明において、α−置換アクリル酸と置換ノルボルネンの混合比に特別の制限はないが、α−置換アクリル酸の量は、置換ノルボルネン1モルに対して0.1〜20モルであり、0.5〜5モルが好ましく、1〜3モルがより好ましい。置換ノルボルネン1モルに対してα−置換アクリル酸の量は0.1モル未満では反応の選択率、目的物の収率共に低下し、20モルを超えると経済的に好ましくない。
【0035】
本反応に使用可能な溶媒の種類に特別な制限はないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族化合物、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒が好ましく、これらは単独で用いても、複数の溶媒を併用しても良い。
【0036】
本反応は溶媒の非存在下においても進行するが、副反応を抑え円滑に反応を進行させるためには溶媒を共存させることが好ましい。溶媒量は置換ノルボルネン1gに対して0.5〜100gであり、1〜30gが好ましく、2〜10gがより好ましい。溶媒量が置換ノルボルネン1gに対して100gを超えると後処理および回収等の手間から経済的に好ましくない。
【0037】
本発明を実施する際の反応温度は0〜300℃であり、20〜200℃が好ましく、50℃〜150℃がより好ましい。0℃未満では反応速度が極めて遅く実用的製造法とはならない。また、300℃を超えると置換アクリル酸が重合することから好ましくない。
【0038】
本発明には反応溶媒、兼触媒としてエチルメチルイミダゾリウムのヘキサフルオロフォスフィン塩等のイオン性液体を使用することもできる。
【0039】
本発明の反応を行なう反応器は、四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ガラスなどを内部にライニングしたもの、グラス容器、もしくはステンレスで製作したものが好ましい。
【0040】
本発明を実施する方法は限定されるものではないが、望ましい態様の一例につき、詳細を述べる。反応条件に耐えられる反応器に触媒の酸および、溶媒、原料の置換ノルボルネン、置換アクリル酸を加え、外部より加熱して反応を進行させる。サンプリング等により原料の消費をモニタリングし、反応が終了したのを確認し、反応液を冷却するのが好ましい。
【0041】
本発明の方法で製造された一般式[3]で表されるα−置換アクリル酸ノルボルナニルは公知の方法を適用して精製されるが、例えば、水、もしくはアルカリ水溶液で反応液を処理し、分液操作により過剰なα−置換アクリル酸を除去し、さらに溶媒を留去することで粗有機物が得られる。得られた粗有機物はカラムクロマトグラフィーや蒸留等の精製を行なうことで高純度のNB系レジストモノマーを得ることができる。
【0042】
本反応では原料のノルボルネンの置換基R2、R3、R4、R5がお互いに異なり、ノルボルネンの分子構造が非対称である場合、生成物である一般式[3]で表されるα−置換アクリル酸ノルボルナニル類は次式[3a]と[3b]
【0043】
【化12】
【0044】
で表される2つの異性体の混合物として得られる。これらの中で一方の異性体のみを単離する場合はカラムクロマトグラフィー等の手法によれば良い。異性体の単離を行わずに、異性体の混合物として、レジスト用のモノマーに供することも可能である。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するがこれらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」とは、反応混合物の一部を採取して水で十分洗浄した後、有機成分をジエチルエーテルに抽出したジエチルエーテル層をガスクロマトグラフィーによって測定して得られた、溶媒成分を除く有機成分の「面積%」を表す。
【0046】
[実施例1]
還流冷却器を上部に取りつけた2Lの三つ口フラスコに、トルエンを1.2L、p−トルエンスルホン酸一水和物を6.3g、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸を306g、次式で表される5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルネン
【0047】
【化13】
【0048】
を300g投入し、140℃のオイルバスにより加熱して、還流させた。7.5時間後、組成をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、目的とする次式で表されるα−置換アクリル酸ノルボルナニルの異性体混合物
【0049】
【化14】
【0050】
の存在量は合計75%であった。その他に不純物として、原料が分子内で環化した化合物である5,5−ビス(トリフルオロメチル)−4−オキサトリシクロ[5.2.1.03,8]デカン(以下「環化体」と表記する。)が22%、ならびに原料の5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルネンが1%検出された。反応液を冷却後、15%Na2CO3水溶液1Lを冷却しながら滴下した。水層を除去した後、有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液200mlで洗浄し、さらに溶媒留去を実施したところ、425gの粗有機物が得られた。この粗有機物の減圧蒸留(80Pa)を行い、100℃〜120℃の留分を集めたところ、276gのNB系レジストモノマーが得られた。ガスクロマトグラフィーにより組成を調べたところ、目的物である2’−(トリフルオロメチル)アクリル酸−5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルナニル、2’−(トリフルオロメチル)アクリル酸−6−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルナニルの異性体混合物の合計含量98.5%、環化体が0.2%、原料の5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルネンが0.2%であった。なお、本実施例の全工程(反応、蒸留)にわたり、反応混合物は一貫して低粘度の液体の状態を保ち、その取り扱いは容易であった。
【0051】
[実施例2]
還流冷却器を上部に取りつけた20mLの2つ口フラスコにトルエンを10mL、濃硫酸を36mg、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸を2.0g、5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルネンを1.0g入れ、140℃のオイルバスにより加熱して、還流させた。2時間後、組成をガスクロマトグラフィーにより確認すると、目的とする2’−(トリフルオロメチル)アクリル酸−5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルナニル、2’−(トリフルオロメチル)アクリル酸 6−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−1,1,1−トリフルオロプロピル)−ノルボルナニルの異性体混合物が合計67.3%含まれていた。不純物としては環化体が26%、原料が1.1%であった。なお、本工程を通じて反応混合物は一貫して低粘度を保った。
【0052】
[実施例3]
還流冷却器を上部に取り付けた20mLの2つ口フラスコにトルエン10mL、p−トルエンスルホン酸一水和物を0.14g、アクリル酸を1.05g、5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルネンを1.0g入れ、140℃のオイルバスにより加熱して、還流させた。7時間後、組成をガスクロマトグラフィーにより確認すると、目的とするアクリル酸−5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルナニル、アクリル酸−6−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルナニルの異性体混合物が合計48.1%含まれていた。不純物としては環化体が35%、原料の置換ノルボルネンが2.5%であった。なお、本工程を通じて反応混合物は一貫して低粘度を保った。
【0053】
[比較例1]
2Lの三つ口フラスコにギ酸を192g、5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルネンを253g投入し、100℃のオイルバスにより加熱した。4時間後、組成をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、目的とする次式で表されるギ酸置換ノルボルナニル
【0054】
【化15】
【0055】
の異性体混合物の存在量は合計85%であった。不純物としては環化体が14.5%、原料の5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルネンが0.3%であった。反応液を冷却後、水100mlで2回洗浄を行い、20%KOH水溶液350gを冷却しながら滴下し、100℃で6時間、加熱撹拌した。冷却した後に水層のpH が2程度になるように濃塩酸を添加した。トルエン抽出、溶媒留去、減圧蒸留(670Pa)を行い126〜130℃の留分を集めたところ、212gの留分が得られた。ガスクロマトグラフィーにより組成を調べたところ、目的物である5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルニルアルコール、6−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルニルアルコールの異性体混合物(次式)
【0056】
【化16】
【0057】
の合計含有量は99.9%、環化体が0.1%であった。収率は89%であった。
【0058】
次に100mlフラスコ中に2−(トリフルオロメチル)アクリル酸クロリドを7g、上記の操作で得た5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルニルアルコール、6−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルニルアルコールの異性体混合物を10g、メチル−t−ブチルエーテル80mlをとり、氷冷下、2,6−ルチジン4.8gを1時間かけて滴下した。
【0059】
滴下終了後さらに1時間撹拌を継続した後に10%塩酸水溶液30mlを添加した。分液ロートにより有機層を分離し、さらに5%塩酸20mlで2回の洗浄を実施した後、溶媒留去を行い、15gの粗生成物が得られた。得られた粗生成物の組成を調べたところ、目的物である2’−(トリフルオロメチル)アクリル酸−5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルナニル、2’−(トリフルオロメチル)アクリル酸−6−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルナニルの異性体混合物の合計存在量は88%であった。この粗有機物の減圧蒸留(80Pa)を行い、100℃〜120℃の留分を集めたところ、6.2gのNB系レジストモノマーが得られた。ガスクロマトグラフィーにより組成を調べたところ、目的物である2’−(トリフルオロメチル)アクリル酸−5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルナニル、2’−(トリフルオロメチル)アクリル酸−6−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルナニルの異性体混合物の合計含有率は93.5%、環化体が1.7%、原料の5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルニルアルコール、6−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルニルアルコールの異性体混合物が2.5%であった。収率は44%であった。
【0060】
なお、本比較例では、5−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルニルアルコール、6−(2−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシル−3,3,3−トリフルオロプロピル)−ノルボルニルアルコールの異性体混合物を得る反応が進むにつれて反応混合物の粘度が増大し、その後の取り扱いが煩雑になった。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、置換ノルボルネンから一段階の反応で目的とするNB系レジストモノマーを製造することができる上、低粘度の液体状態を維持したまま反応、精製操作が実施できる。このため本発明は、工業的な規模でNB系レジストモノマーを製造するための優れた方法である。
Claims (5)
- 一般式[1]で示されるα−置換アクリル酸
- 請求項1において、その反応を酸触媒の存在下で行なうことを特徴とする、請求項1に記載の、α−置換アクリル酸ノルボルナニル類の製造方法。
- 請求項2において、酸触媒がリン酸、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、三フッ化ホウ素、四塩化チタン、四塩化スズの群から選ばれる少なくとも一種の酸触媒であることを特徴とする、請求項2に記載の、α−置換アクリル酸ノルボルナニル類の製造方法。
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