以下、本発明の燃料噴射装置を、蓄圧式燃料噴射装置に適用して具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の燃料噴射装置の全体構成を示す構成図である。図2は、図2中の高圧供給ポンプの構成を示す模式図である。図3は、本実施形態の作動説明のためのタイムチャートであって、図3(a)〜(d)は高圧供給ポンプの圧送系統が正常な状態を示す図、図3(e)は図3(d)の正常状態に対して第1圧送系統の異常状態を示す図、図3(e)は図3(e)の第1圧送系統の異常状態に対応して噴射する燃料噴射弁の噴射を停止した状態を示す図である。なお、図4は、本実施形態の燃料噴射装置で実行される制御方法を示す図であって、高圧供給ポンプの圧送系統の異常を検出するための制御処理を示すフローチャートである。図5は、図4中の高負荷状態の場合において高圧供給ポンプの圧送系統の異常を判定する制御方法を示すフローチャートである。図6は、図4中の高負荷状態の場合において高圧供給ポンプの圧送系統の異常を判定する制御方法を示すフローチャートである。
図7は、本実施形態に係わる広範囲もしくは小範囲で検出した圧力偏差に基づいて、各圧送系統の異常判定するための判定値を示す図であって、噴射量と判定値の関係を示すグラフである。図8は、図6中の異常な圧送系統を特定するために用いられている物理量を示す図であって、燃料噴射弁が通常の制御状態にあるときの物理量の一例と、その通常制御状態に対して特定の燃料噴射弁の噴射を停止する制御に切替えた状態で再検出した場合の物理量を示すグラフである。
蓄圧式燃料噴射装置1は、図1に示すように、自動車等の車両に搭載された複数気筒(本実施例では、6気筒)のディーゼルエンジン等の内燃機関(以下、エンジン)11の各気筒へ燃料を噴射するものである。
蓄圧式燃料噴射装置1は、燃料タンク12から燃料を汲み上げ加圧して圧送する燃料供給ポンプ(以下、サプライポンプ)2と、このサプライポンプ2により圧送された高圧燃料を蓄圧する蓄圧容器としてのコモンレール3と、このコモンレール3内に蓄圧された高圧燃料をエンジン11の各気筒の燃焼室内へ噴射供給する複数個(本実施例では、6個)の燃料噴射弁(以下、インジェクタ)4と、サプライポンプ2およびインジェクタ4を制御する制御手段としての制御装置(以下、ECUと呼ぶ)13とを含んで構成されている。
サプライポンプ2は、燃料タンク12から吸入される低圧燃料を高圧に加圧してコモンレール3へ圧送する。そして、サプライポンプ2は、例えば加速時又はエンジン始動時に速やかにコモンレール圧力を低圧から高圧へ昇圧させる昇圧性能に優れる周知構造を有する吸入調量型の高圧供給ポンプである。
このサプライポンプ2は、図1および図2に示すように、エンジン11のクランク軸14に伴ってポンプ駆動軸21が回転することで燃料タンク12から燃料を汲み上げる周知の低圧供給ポンプ(以下、フィードポンプ:図示せず)と、ポンプ駆動軸21により回転駆動されるカム軸22と、カム軸22により回転するカム23と、カム23の回転により上死点と下死点との間を往復するように駆動されるプランジャ24と、プランジャ24が往復することにより吸入された燃料を加圧する加圧室25と、この加圧室25内の燃料圧力が所定値以上に上昇すると開弁する吐出弁26とを備えている。
なお、ここで、プランジャ24および加圧室25は、特許請求の範囲に記載の高圧供給ポンプの圧送系統に対応してい。以下説明する本実施形態では、複数個(2個)の圧送系統、すなわちプランジャ24および加圧室25を2つ有しているものとする。
そして、図3(a)および図3(b)に示したように、2つのプランジャ24(以下、第1プランジャ#1、第2プランジャ#2)が上死点位置から下死点位置まで移動する期間が、加圧室25内に低圧燃料を吸入する吸入期間とされ、その後に、吐出弁26が開弁している間、つまり吐出弁26が開弁してから各プランジャ#1、#2が上死点位置に戻るまでの期間が、加圧室25内で加圧された高圧燃料を圧送するポンプ圧送期間とされている。
また、サプライポンプ2では、プランジャ#1、#2間の位相が90度ずれるようにカム23がカム軸22に取り付けられている(図2参照)。このため、プランジャ#1が上死点の位置にある時、プランジャ#2は下死点の位置にある。これにより、プランジャ#1によるポンプ圧送期間とプランジャ#2による圧送期間とが、重ならないようになっている。
さらにまた、サプライポンプ2には、内部の燃料温度が高温にならないように、リークポートが設けられており、サプライポンプ2からのリーク燃料は、燃料還流路27から燃料還流路15を経て燃料タンク12にリターンされる。
サプライポンプ2内に形成されるフィードポンプから加圧室25に至る燃料流路には、その燃料流路の開口度合(弁体のリフト期間または弁口の開口面積)を調整することで、加圧室25内への燃料の吸入量、すなわちサプライポンプ2からコモンレール3への燃料の圧送量(燃料吐出量)を変更する吸入調量弁(以下、SCVと呼ぶ)28が取り付けられている。このSCV28は、燃料流路の開口度合としての弁体のリフト期間または弁口の開口面積を調整可能な電磁式アクチュエータとしての吸入調量型の電磁弁である。
SCV28は、ポンプ駆動回路(図示せず)を介してECU13から印加されるSCV駆動電流によって電子制御されることにより、サプライポンプ2の加圧室25内に吸入される燃料の吸入量を調整する。このSCV28は、フィードポンプから加圧室25内へ燃料を送るための燃料流路の開口度合を調整する弁体(以下、バルブ:図示せず)、バルブを閉弁方向に駆動する電磁コイル(以下、ソレノイドコイル:図示せず)、およびバルブを開弁方向に付勢するスプリング等のバルブ付勢手段(図示せず)を有している。また、SCV28は、ポンプ駆動回路を介してソレノイドコイルに印加される電流(SCV駆動電流)の大きさに比例して、サプライポンプ2の加圧室25からコモンレール3へ吐出される高圧燃料の圧送量を変更して、コモンレール3内の燃料圧力(以下、コモンレール圧力)、すなわち各インジェクタ4からエンジン11の各気筒内へ噴射供給する燃料噴射圧力を制御する。
コモンレール3には、連続的に燃料噴射圧力に相当する高い圧力が蓄圧される必要があり、そのためにコモンレール3に蓄圧される高圧燃料は、高圧配管31を介してサプライポンプ2から供給されている。コモンレール3の一端側には、コモンレール圧力が限界設定圧力を超えることがないように、圧力を逃すためのプレッシャリミッタ33が取り付けられている。そして、プレッシャリミッタ33には、コモンレール圧力が限界設定圧力を超えた場合にコモンレール3から燃料タンク12に燃料をリリーフするリリーフ配管32が接続されている。なお、プレッシャリミッタ33の代わりに、リリーフ配管32への燃料排出路の開口度合を調整することが可能な常閉型の減圧弁を取り付けるようにしてもよい。そして、コモンレール3の他端側には、コモンレール圧力を検出する燃料圧力検出手段としての燃料圧力センサ35が取り付けられている。
インジェクタ4は、エンジン11の各気筒に搭載されて燃料をその気筒の燃焼室内に噴射供給するものであり、コモンレール3より分岐する分岐管(高圧燃料流路)34の下流端に接続されている。なお、ここで、気筒#1、気筒#2、気筒#3、および気筒#4に搭載された各インジェクタ4を、インジェクタ#1、インジェクタ#2、インジェクタ#3、およびインジェクタ#4と呼ぶ。
各気筒のインジェクタ4は、エンジン11の各気筒の燃焼室内に高圧燃料を噴射供給する燃料噴射ノズル(図示せず)と、この燃料噴射ノズル内に収容されたノズルニードル(図示せず)を開弁方向に駆動する電磁式アクチュエータとしての電磁弁(図示せず)と、ノズルニードルを閉弁方向に付勢するリターンスプリング等の付勢手段とを含んで構成されている。電磁弁は、ノズルニードルに連動して動作するコマンドピストン(図示せず)の背圧を制御する背圧制御室(図示せず)内の燃料圧力を制御する周知の2方弁電磁弁などの電磁弁構造のものである。
これらのインジェクタ4からエンジン11の各気筒の燃焼室内への燃料噴射は、電磁弁への通電および通電停止により制御される。つまり、各気筒のインジェクタ4の電磁弁が開弁している間、コモンレール3内に蓄圧された高圧燃料がエンジン11の各気筒の燃焼室内に噴射供給される。ここで、インジェクタ4からのリーク燃料または背圧制御室からの排出燃料(リターン燃料)は、燃料還流路57から燃料還流路15を経て燃料系の低圧側(燃料タンク12)にリターンされる。
また、各インジェクタ4の燃料噴射に対する各圧送系統(各プランジャ#1、#2)の圧送において、図3(a)から図3(c)に示すように、気筒#1、#4のインジェクタ#1、#4の燃料噴射時ではプランジャ#2によるポンプ圧送が行われ、気筒#2、#5のインジェクタ#2、#4の燃料噴射時ではポンプ圧送が行われてはおらず、気筒#3、#6のインジェクタ#3、#6の燃料噴射時ではプランジャ#1によるポンプ圧送が行われている。よって#1、#3、#4、#6気筒が重複気筒となり、#2、#5気筒が非重複気筒となる。
なお、ここで、プランジャ#2の第2圧送系統が行なう圧送は、インジェクタ#1、#4に対して燃料噴射時に圧送を行なう非同期圧送、およびインジェクタ#2に対して燃料噴射時に圧送を行なわない同期圧送に対応する。また、プランジャ#1の第1圧送系統が行なう圧送は、インジェクタ#3、#6に対して非同期圧送、およびインジェクタ#4に対して同期圧送に対応する。
ECU13には、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、RAM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路、ポンプ駆動回路、インジェクタ駆動回路およびDUTY発生回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。そして、ECU13は、図1に示すように、各種センサからのセンサ信号が、A/D変換器でA/D変換された後に、ECU13に内蔵されたマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。また、ECU13は、エンジン11をクランキングさせた後にエンジンキーをIG位置に戻して、イグニッションスイッチ(図示せず)がオン(ON)すると、メモリ内に格納された制御プログラムに基づいて、例えばサプライポンプ2やインジェクタ4等の各制御部品のアクチュエータを電子制御するように構成されている。
マイクロコンピュータには、燃料圧力センサ35と、エンジンの運転状態または運転条件を検出する手段としてのクランク角度センサ16と、アクセル開度センサ17と、冷却水温センサ、燃料温度センサ等(冷却水温センサや燃料温度センサ等を一括して、その他センサ18と呼ぶ)とが接続されている。
クランク角度センサ16は、エンジン11のクランク軸14の回転角度を検出する。アクセル開度センサ17は、アクセル開度(ACCP)を検出する。冷却水温センサは、エンジン冷却水温(THW)を検出する。燃料温度センサは、サプライポンプ2への吸入側の燃料流路、もしくはインジェクタ4のリーク出口側の燃料流路における燃料温度(THF)を検出する。
クランク角度センサ16は、エンジン11のクランク軸14、あるいはサプライポンプ2のポンプ駆動軸21に取り付けられたNEタイミングロータ(図示せず)の外周に対向するように設けられている。NEタイミングロータの外周面には、所定角度ごとに凸状歯が複数個配置されている。そして、クランク角度センサ16は電磁ピックアップ(図示せず)よりなり、NEタイミングロータの各凸状歯がクランク角度センサ16に対して接近離反することにより、電磁誘導によってパルス状の回転位置信号(NEパルス信号)が出力される。そして、ECU13は、このNEパルス信号の間隔時間を計測することによって、エンジン回転速度(NE)を検出する。
また、NEタイミングロータの凸状歯は、気筒判別において基準となる位置(#1気筒および#4気筒における噴射直前位置)では、他の凸状歯よりも幅広になっている。これにより、#1気筒および#4気筒のピストンが噴射直前位置に達したときには幅広のNEパルス信号が出力されるため、気筒判別カウンタによる気筒判別が可能になる。気筒判別は、ECU13が有する気筒判別カウンタ(図示せず)により行われる。
気筒判別カウンタでは、NEパルス信号をカウントし、所定数だけカウントすると前回出力値に1だけプラスしてマイクロコンピュータに出力する。この所定数とは、NEタイミングロータにおいて、ある気筒の噴射直前位置から、次に噴射する気筒の噴射直前位置の間に存在する凸状歯の数である。そして、幅広のNEパルス信号が検出されたら、マイクロコンピュータへの出力値を0とする。これにより、#1気筒および#4気筒のピストンが噴射直前位置に達したときには0が出力され、#2気筒および#5気筒のピストンが噴射直前位置に達したときには1が出力され、#3気筒および#6気筒のピストンが噴射直前位置に達したときには2が出力される。したがって、重複気筒が噴射直前位置にあるときは0または2が出力され、非重複気筒が噴射直前位置にあるときは1が出力される。
また、サプライポンプ2の各圧送系統(プランジャ#1、#2)は、エンジン11の燃焼の1サイクル(720°CA)の間に360°CAの間隔で2回行なっており、圧送系統の圧送動作に関連付けるための仮想気筒判別カウンタCCYLNを設けている。この仮想気筒判別カウンタCCYLNは、90°CA毎に「3」〜「0」の間でカウントダウンされ、360°CAで「0」に戻る。なお、360〜720°CAの間では、0〜360°CAの間の「3」〜「0」に対して、「3#」〜「0#」と区別している。
ECU13は、クランク角度センサ16によって検出されたエンジン回転速度(NE)とアクセル開度センサ17によって検出されたアクセル開度(ACCP)とに応じて設定される目標噴射量(QFIN)を算出する目標噴射量決定手段と、エンジン回転速度(NE)と目標噴射量(QFIN)とから指令噴射時期(TFIN)を算出する噴射時期決定手段と、目標噴射量(QFIN)と、燃料圧力センサ35によって検出されるコモンレール圧力(以下、実コモンレール圧力)(NPC)とから指令噴射パルス時間(TQ)を算出する噴射期間決定手段と、インジェクタ駆動回路を介して各気筒のインジェクタ4の電磁弁にパルス状のインジェクタ駆動電流を印加するインジェクタ駆動手段などを有している。
なお、目標噴射量(QFIN)は、冷却水温センサおよび燃料温度センサ等からの入力値を加味して算出してもよく、指令噴射パルス時間(TQ)は、さらに燃料噴射直前の実コモンレール圧力(以下、直前コモンレール圧力)を加味して、再算出してもよい。
さらに、ECU13は、実コモンレール圧力(NPC)を制御する燃料圧力制御手段を有している。燃料圧力制御手段では、まず目標噴射量(QFIN)とエンジン回転速度(NE)とから、エンジン11の運転条件又は運転状態に応じた最適なコモンレール圧力(目標燃料圧力:PFIN)を演算する。そして、この目標燃料圧力(PFIN)を達成するために、SCV28のソレノイドコイルに印加するSCV駆動電流を調整して、サプライポンプ2よりコモンレール3内へ圧送される燃料の圧送量を変更する。このように燃料圧力制御手段は、サプライポンプ2よりコモンレール3内へ圧送される燃料の圧送量を変更することにより、実コモンレール圧力(NPC)を制御して、目標燃料圧力(PFIN)を達成する。
さらにより好ましくは、燃料噴射量の制御精度を向上させる目的で、実コモンレール圧力(NPC)が目標燃料圧力(PFIN)と略一致するように、PID制御などによってSCV28のソレノイドコイルに印加するSCV駆動電流をフィードバック制御することが好ましい。
さらに、ECU13は、実コモンレール圧力(NPC)の圧力状態を監視する圧力状態監視手段を備えている。この圧力状態監視手段は、燃料漏れを判定する判定手段(以下、燃料漏れ判定手段と呼ぶ)と、実コモンレール圧力(NPC)の圧力状態を形成するサプライポンプ2の各圧送系統が圧送異常であるか否か判定する判定手段(以下、圧送異常判定手段と呼ぶ)とを有している。
燃料漏れ判定手段は、実圧力降下量指標値と見込み圧力降下量指標値との偏差に基づいて燃料漏れがあるか否かを判定する周知の判定手段である。実圧力降下量指標値は、噴射を挟む所定期間内にコモンレール圧センサ35により検出された実コモンレール圧力の降下量に相当する燃料量を算出することにより求められる。また、見込み圧力降下量指標値は、上記所定期間内に予想される圧力降下量に相当する燃料噴射量と予想リーク量の総和を算出することにより求められる。燃料噴射量と予想リーク量の総和は、目標噴射量(QFIN)と、インジェクタ4の静的リーク量(QSL)およびインジェクタの動的リーク(QDL)との総和である。
次に、本実施形態の特徴である圧送異常判定手段を、図3から図8に従って説明する。圧送異常判定手段は、実コモンレール圧力(NPC)の圧力偏差(圧力変化量)を検出する検出範囲を決定する検出範囲決定手段と、決定した検出範囲で検出した圧力偏差(圧力変化量)に基づいてサプライポンプ2の圧送系統に圧送異常があるか否かを判定する異常判定手段(以下、サプライポンプ異常判定手段と呼ぶ)とを有している。
また、圧送異常判定手段では、実コモンレール圧力(NPC)を、仮想気筒判別カウンタCCYLNを読み込む度に、実コモンレール圧力(NPC)を読み込む。具体的には、ECU13は、インジェクタ#1の燃料噴射前の第2圧送系統(プランジャ#2)の圧送開始から順に、仮想気筒判別カウンタCCYLNの「2」、「1」、「0」、「3」、「2#」、「1」、「0」、および「3」に対応して実コモンレール圧力(NPC)を検出し、検出した実コモンレール圧力(NPC)を、「NPC2」、「NPC1」、「NPC0」、「NPC3」、「NPC2」、「NPC1#」、「NPC0#」、「NPC3#」として記憶する。
検出範囲決定手段は、目標噴射量(QFIN)に応じて検出範囲の大きさを選択する機能を有している。具体的には、目標噴射量(QFIN)を、エンジン11の低負荷状態、高負荷状態に設定される2つの噴射量範囲で区分けし、低負荷状態に設定される噴射量範囲内にある目標噴射量(QFIN)での検出範囲(以下、低負荷状態検出範囲)IA、IBを、高負荷状態に設定される噴射量範囲内にある目標噴射量(QFIN)での検出範囲(以下、高負荷状態検出範囲)IIに比べて狭く設定する(図3参照)。
また、低負荷状態検出範囲IAおよび低負荷状態検出範囲IBは、それぞれプランジャ#1による圧送行程、プランジャ#2による圧送行程を含む範囲で設定されている。そして、低負荷状態検出範囲IAでは、実コモンレール圧力(NPC)の圧力偏差ΔP2をNPCSV1とし、NPCSV1は、NPCSV1=NPC1−NPC2より求められる。また、低負荷状態検出範囲IBでの圧力偏差ΔP2をNPCSV2とし、NPCSV2は、NPCSV2=NPC3−NPC0より求められる。
一方、高負荷状態検出範囲IIでの圧力偏差ΔP1をNPCSV12とし、NPCSV12は、NPCSV12=NPC2−NPC2#より求められる。
また、サプライポンプ異常判定手段は、圧力偏差ΔP1、ΔP2と、圧送異常判定するための判定値ΔPa1、ΔPa2(図7参照)を比較することにより異常判定するものであって、判定値ΔPa1、ΔPa2は、目標噴射量(QFIN)に応じて設定されている。これによって、重複気筒である気筒#1、#3、#4、#6での噴射量による圧力降下量分が判定値に反映されている。
なお、図7において、横軸は目標噴射量(QFIN)、縦軸は圧力偏差ΔP1、ΔP2、ΔP3を示すものであって、図中には各判定値ΔPa1、ΔPa2、ΔPa3を示す判定値曲線が示されている。目標噴射量(QFIN)において、噴射固有値QcによってQc以下の噴射領域Iを低負荷状態、Qc以上の噴射領域IIを高負荷状態に区分けしている。この噴射固有値Qcは、実験等により本システム(蓄圧式燃料噴射装置)に適する固有の値を算出したものである。
また、圧力偏差ΔPmは圧送異常検出のための検出限界圧力を示すものであり、圧力偏差ΔPm以下の領域は、全噴射量(QFIN)領域で圧送異常検出不能な圧力偏差区域である。図中の噴射領域IIでは判定値ΔPa1の判定値曲線が用いられ、噴射領域Iでは判定値ΔPa2または判定値ΔPa3の判定値曲線が用いられる。そして、噴射領域Iにおいて、各判定値ΔPa1〜ΔPa3とΔPmの関係は、ΔPa1<ΔPm<ΔPa2<ΔPa3となっている。
さらにまた、サプライポンプ異常判定手段は、圧力偏差ΔP2と判定値ΔPa2との比較により圧送異常ではないと判定(以下、仮判定)する場合には、圧力偏差ΔP1を検出した検出範囲IA、IBで噴射予定のインジェクタの噴射を休止させ、その後圧力偏差を再検出し、再検出した圧力偏差(以下、噴射停止時圧力偏差)ΔP3に基づいて圧送異常であるか否か判定することが好ましい。これにより、重複気筒1、#3、#4、#6での燃料噴射と圧送の干渉状態による圧力変動要因を排除した状態で、圧送異常であるか否か判定することができるので、圧送異常判定を精度よく行なうことができる。
また、サプライポンプ異常判定手段は、噴射停止時圧力偏差ΔP3に対応する判定値ΔPa3を有しており、噴射停止時圧力偏差ΔP3と判定値ΔPa3(図7参照)を比較することにより異常判定する。
なお、上記検出範囲IA、IB(例えば、図3に示すIA)で噴射予定のインジェクタ#1、#4の噴射を休止させる場合において、他のインジェクタ#2、#3、#5、#6の目標噴射量(QFIN)を増加させることが好ましい。これにより、エンジン11の出力トルクの低下を防止するとともに、安定した運転状態で圧力偏差ΔP3を検出することができる。
次に、本実施形態の制御方法を説明する。本実施形態の制御方法では、エンジン11燃焼の1サイクル(720°CA)の間にサプライポンプ2が2回圧送を繰り返すので、2回圧送のうち一方の圧送に対応した気筒#1〜#3の範囲でサプライポンプ2の圧送異常を判定するものとする。なお、サプライポンプ2の圧送異常の判定方法としては、これに限らず、気筒#4〜#6の範囲で圧送異常を判定するものであっても、気筒#1〜#3の範囲および気筒#4〜#6の範囲で判定するもののいずれであってもよい。
図4に示すように、S10(Sはステップ)では、各種センサ信号に基づいてエンジン11の運転状態を読み込む。具体的には、ECU13は、クランク角度センサ16によって検出されるエンジン回転速度(NE)、アクセル開度センサ17によって検出されるアクセル開度(ACCP)およびその他の入力信号(冷却水温、燃料温度センサなどの検出値)を取り込む。そして、S20では、これらの入力値に基づき目標噴射量(QFIN)を算出し、この基本噴射量(QFIN)とエンジン回転速度(NE)とに基づき、目標燃料圧力(PFIN)を算出する。
また、ECU13は、実コモンレール圧力(NPC)が目標燃料圧力(PFIN)と略一致させるように、サプライポンプ2のSCV28を制御して圧送量を変更する。なお具体的にはECU13は、実コモンレール圧力(NPC)を、エンジン11の燃焼1サイクルの間で複数箇所で検出する。そして、複数の実コモンレール圧力(NPC)に基づき、目標燃料圧力(PFIN)に対応する、例えば実圧力指標値を算出し、この実圧力指標値が目標燃料圧力(PFIN)と略一致させるように制御する。なお、目標燃料圧力(PFIN)と、これに略一致させる実コモンレール圧力(NPC)の制御方法としては、目標燃料圧力(PFIN)に対して実圧力指標値を設けるものに限らず、検出した各実コモンレール圧力(NPC)に対してこれに対応する目標燃料圧力(PFIN)を設定するものであってもよい。
S30では、上記実コモンレール圧力(NPC)の取込みを行なう。図3(g)に示すように、ECU13は、仮想気筒判別カウンタCCYLNが「2」、「1」、「0」、「3」、「2#」、「1」、「0」、および「3」にあるとき、検出した実コモンレール圧力(NPC)を、「NPC2」、「NPC1」、「NPC0」、「NPC3」、「NPC2」、「NPC1#」、「NPC0#」、「NPC3#」として取込み、記憶する。
S40では、目標燃料圧力(PFIN)に略一致させるように実コモンレール圧力(NPC)を制御するフィードバック制御において、未達継続による圧力制御不能状態か否かを判断する。具体的には、各実コモンレール圧力(NPC)に対応する実圧力指標値が、目標燃料圧力(PFIN)に未達な状態が所定時間継続しているかを判定する。目標燃料圧力(PFIN)に対する未達継続が所定時間を越える場合には、S50へ進む。その未達継続が所定時間以下である場合には、正常にサプライポンプ2の圧送量を変更し目標燃料圧力(PFIN)に略一致させるフィードバック制御が正常に行なわれていると判断し、当該制御処理を終了する。
S50では、目標燃料圧力(PFIN)が所定時間を越えて継続する不一致要因の一つである燃料漏れがあるか否かを判定する。燃料漏れがあると判断される場合には、S51へ進んで燃料漏れ故障の状態にあると判定し、当該制御処理を終了する。燃料漏れがないと判断される場合には、S60へ進む。
S60では、上記不一致要因の一つである圧送量不足に相当するサプライポンプ2の圧送異常を判定するために、エンジン11の運転状態が低負荷および高負荷のいずれの状態にあるかを判定する。具体的には、目標噴射量(QFIN)が、低負荷状態で設定される噴射量範囲にあるか否かを判定する。目標噴射量(QFIN)が、低負荷状態で設定される噴射量範囲にあり、エンジン11の運転状態が低負荷状態にある場合には、S800へ進む。目標噴射量(QFIN)が低負荷状態で設定される噴射量範囲になく、高負荷状態にある場合には、S700へ進む。
S700では、高負荷状態検出範囲IIを選択し、高負荷状態検出範囲IIに基づき、各実コモンレール圧力(NPC)の圧力偏差ΔP1を検出する。この圧力偏差ΔP1に基づいてサプライポンプ2の圧送異常を判定する。
S800では、低負荷状態検出範囲IA、IBを選択し、低負荷状態検出範囲IA、IBに基づき、各実コモンレール圧力(NPC)の圧力偏差ΔP2を検出する。この圧力偏差ΔP2に基づいてサプライポンプ2の圧送異常を判定する。
次に、上記S700の高負荷時におけるサプライポンプ2の圧送異常を判定する制御処理について、図3および図5に従って説明する。S710では、圧力偏差ΔP1としてNPCSCV12を求める。NPCSCV12は、図3(e)中の高負荷状態検出範囲IIに示すように、NPCSCV12=NPC2#−NPC2より求められる。
S720では、NPCSCV12が判定値ΔPa1以上であるか否かを判定する。圧力偏差ΔP1(NPCSCV12)が判定値ΔPa1以上である場合には、S730へ進む。圧力偏差ΔP1(NPCSCV12)が判定値ΔPa1未満である場合には、S721へ進んで、実コモンレール圧力(NPC)の検出エラーによるものであるとして、実圧エラーを記憶する。
S730では、高負荷状態検出範囲IIで検出した圧力偏差ΔP1(NPCSCV12)に基づいてサプライポンプ2の圧送系統が異常状態にあると判断する。なお、この判断時においては、2つの圧送系統(プランジャ#1、プランジャ#2)のうちのいずれが故障しているかは特定していない。
S750では、圧送系統(プランジャ#1、プランジャ#2)のうちのいずれが故障しているか特定するために、後述する第2圧送系統(プランジャ#2)側の圧力偏差に相当するNPCSCV2を求める。NPCSCV2は、図3(e)に示すように、NPCSCV2=NPC3−NPC0より算出される。
S760では、上記により算出したNPCSCV2が正数である(NPCSCV2>0)か否かを判定する。NPCSCV2が正数である場合には、S761へ進んで、第2圧送系統(プランジャ#2)の圧送異常と判断し、プランジャ#2側のプランジャ摺動不良等もしくはSCV28作動不良によるポンプ片側故障の状態であると判定する。
一方、NPCSCV2が正数でない場合には、S762へ進んで、第1圧送系統(プランジャ#1)の圧送異常と判断し、プランジャ#1側のプランジャ摺動不良等もしくはSCV28作動不良によるポンプ片側故障の状態であると判定する。具体的には、図3(e)のプランジャ#1側の圧送異常時に示すように、プランジャ#1が無圧送状態となるため、NPCSCV2の値はほぼ零の正数でない値を示すので、第1圧送系統(プランジャ#1)の圧送異常と判断し、プランジャ#1側のプランジャ摺動不良等もしくはSCV28作動不良によるポンプ片側故障状態であると特定することができる。
次に、S800の低負荷時におけるサプライポンプ2の圧送異常を判定する制御処理について、図3および図6に従って説明する。S810では、圧力偏差ΔP2として、NPCSCV1およびNPCSCV2を求める。NPCSCV1は、第1圧送系統(プランジャ#1)側の圧力偏差に相当し、図3(e)中の検出範囲IAでの圧力偏差Δ2である。また、NPCSCV2は、第2圧送系統(プランジャ#2)側の圧力偏差に相当し、検出範囲IBでの圧力偏差Δ2である。なお、NPCSCV1は、NPCSCV1=NPC1−NPC2より算出し、NPCSCV2は、NPCSCV2=NPC3−NPC0より算出される。
S820およびS830では、上記で算出したNPCSCV1およびNPCSCV2のいずれかが判定値ΔPa2以上となる圧送系統(プランジャ#1、プランジャ#2)の圧送異常があるか否かを判断する。S820では、NPCSCV1が判定値ΔPa2以上であるか否かを判定する。NPCSCV1が判定値ΔPa2以上である場合には、S860へ進み、NPCSCV1が判定値ΔPa2未満である場合には、S830へ進む。
S830では、NPCSCV2が判定値ΔPa2以上であるか否かを判定する。NPCSCV2が判定値ΔPa2以上である場合には、S860へ進み、NPCSCV2が判定値ΔPa2未満である場合には、S840へ進む。
S840では、圧力偏差Δ2(NPCSCV1、NPCSCV2)に基づくサプライポンプ2の圧送異常判定では、圧送異常ではないと仮判定する。さらに、この仮判定の段階では、低負荷状態であるため、圧送異常による圧力偏差Δ2への影響が小さい可能性があるので、インジェクタ4の特定気筒#1、#4の噴射を一時停止(休止)する。
なお、このとき、特定気筒#1、#4以外の他の気筒のインジェクタ4(インジェクタ#2、#3、#5、#6)の噴射量(目標噴射量QFIN)を増やし、エンジン11の出力トルクの低下防止を図るようにする。さらに、出力トルクを確保することにより、低負荷時での安定したエンジン11の安定した運転状態を維持することができる。これにより、特定のインジェクタ#1、#4の噴射休止状態での後述の圧力偏差Δ3の検出が精度よく行なうことができる。
S850では、インジェクタ#1、#4の噴射休止状態での圧力偏差Δ3を、再検出したNPCSCV1、NPCSCV2より求め、その圧力偏差Δ3(再検出したNPCSCV1、NPCSCV2:以下、NPCSCV#とも呼ぶ)が判定値ΔPa3以上であるか否かを判定する。NPCSCV#が判定値ΔPa3以上である場合には、S860へ進み、NPCSCV#が判定値ΔPa3未満である場合には、S851へ進んで、実圧エラーを記憶する。
S860では、低負荷状態検出範囲IA、IBで検出した圧力偏差ΔP1(NPCSCV1、NPCSCV2)に基づいてサプライポンプ2の圧送系統が異常状態にあると判断する。
S870では、圧送系統(プランジャ#1、プランジャ#2)のうちのいずれが故障しているか特定するために、検出範囲IAでの圧力偏差Δ3と検出範囲IBでの圧力偏差Δ3の差であるDELNPCSCVを求める。DELNPCSCVは、DELNPCSCV=NPCSCV1−NPCSCV2より算出する。
S880では、上記により算出したDELNPCSCVが正数である(DELNPCSCV>0)か否かを判定する。DELNPCSCVが正数である場合には、S881へ進んで、第1圧送系統(プランジャ#1)の圧送異常と判断し、プランジャ#1側のポンプ片側故障の状態であると判定する。
一方、DELNPCSCVが正数でない場合には、S882へ進んで、第2圧送系統(プランジャ#2)の圧送異常と判断し、プランジャ#2側のポンプ片側故障の状態であると判定する。
具体的には、図3(e)のプランジャ#1側の圧送異常時に示すように、NPCSCV2の値は正数の値を示すので、第1圧送系統(プランジャ#1)の圧送異常と判断し、プランジャ#1側のポンプ片側故障状態であると特定することができる。
また、特定のインジェクタ#1、#4の噴射休止状態で圧力偏差Δ3を検出する場合においては、図3(f)に示すように、検出範囲IA側のNPCSCV1が拡大し、検出範囲IAでのNPCSCV2は変化しないため、DELNPCSCVの正数の値が大きくなる(図8参照)。これにより、圧送異常の圧送系統(プランジャ#1またはプランジャ#2)を特定する判定が容易となる。
なお、図8において、縦軸にDELNPCSCVを示し、横軸は3つの運転状態が示されている。3つの運転状態は、噴射量制御が通常状態(インジェクタ#1〜#6は全て噴射停止なし)、特定インジェクタ#1、#4を噴射停止した状態、特定インジェクタ#3、#6を噴射停止した状態の順で示されている。
以上説明した本実施形態では、サプライポンプ2の各圧送系統(プランジャ#1、プランジャ#2)からコモンレール3への圧送量を変更することによりコモンレール圧力を目標燃料噴射圧力に略一致するように制御する蓄圧式燃料噴射装置1において、各気筒#1〜#6に搭載されたインジェクタ4(インジェクタ#1〜#6)から噴射される燃料の目標噴射量(QFIN)に基づいて、サプライポンプ2の圧送異常判定するための、圧力偏差ΔPを検出範囲IA、IB、IIを決定する。これにより、コモンレール内の燃料圧力が非同期圧送により複雑な圧力パターンになる場合であても、実コモンレール圧力(NPC)の圧力偏差(変化量)ΔP1、ΔP2を、目標噴射量(QFIN)の大きさに応じて、圧力パターンのうちの限られた検出範囲に限定することが可能である。例えば目標噴射量(QFIN)が噴射領域Iにあるとき、検出範囲を、目標噴射量(QFIN)に対応した圧送が行われる範囲IA、IBに限定することができる。
さらに、決定した検出範囲IA、IB、IIで圧力偏差(圧力変化量)ΔP1、ΔP2を検出し、その圧力偏差(圧力変化量)ΔP1、ΔP2に基づいてサプライポンプ2に圧送異常があるか否かを判定する。これにより、上記検出範囲IA、IB、IIで検出した変化量ΔP1、ΔP2は、サプライポンプ2の各圧送系統で圧送する圧送量に対応した燃料圧力の変化量(圧力偏差)とされ、その変化量に基づいてサプライポンプ2の圧送異常を判定するので、圧送異常があるか否かを精度よく判定することが可能である。
したがって、サプライポンプ2が各気筒のインジェクタ#1〜#6に非同期圧送するものであったとしても、サプライポンプ2の圧送系の異常を、比較的簡易に精度よく検出することが可能である。
なお、ここで、検出範囲IA、IB、および検出範囲IIは、それぞれ特許請求の範囲に記載の第2検出範囲、第1検出範囲に対応する。また、図7に示されるグラフは、目標噴射量(QFIN)に基づいて、圧力偏差ΔP1、ΔP2、ΔP3を判定する判定値ΔP1、ΔP2、ΔP3を設定するマップに相当し、特許請求の範囲に記載の判定値設定手段に対応する。
また、以上説明した本実施形態では、目標噴射量(QFIN)が燃料噴射量決定手段によりとり得る噴射量範囲を、低負荷状態の噴射領域Iと、高負荷状態の噴射領域IIとに区分けし、目標噴射量(QFIN)が噴射領域IIの場合には、高負荷状態検出範囲IIに決定する。また、目標噴射量(QFIN)が噴射領域Iの場合には、高負荷状態検出範囲IIより範囲の狭い低負荷状態検出範囲IA、IBに決定する。これによると、目標噴射量(QFIN)に基づいて決定する検出範囲を、負荷状態に応じて二つの検出範囲に振分けるだけであるので、圧力偏差ΔP1、ΔP2を検出するための検出範囲を比較的簡易に決定することができる。さらに、エンジン11の負荷状態(燃料噴射量の大小)の全範囲において、高圧供給ポンプの圧送系の異常を判定することができる。
また、以上説明した本実施形態では、目標噴射量(QFIN)が噴射領域Iの場合において、低負荷状態検出範囲IA、IBは、サプライポンプ2の2つの圧送系統(プランジャ#1、プランジャ#2)のうちいずれかの圧送系統に対応した圧送行程を含む範囲である。これにより、低負荷状態検出範囲IA、IBにて圧力偏差ΔP2を検出すると、これらの圧力偏差に基づいて上記圧送系統の圧送行程での圧送異常があるか否かを特定することが可能である。
また、以上説明した本実施形態では、ECU13は、目標噴射量(QFIN)に基づいて、圧力偏差ΔP1、ΔP2、ΔP3を判定する判定値ΔP1、ΔP2、ΔP3を設定する判定値設定手段(図7に示すようなマップ)を備えており、検出範囲での圧力偏差(高負荷状態検出範囲IIでの圧力偏差ΔP1)が判定値を超える場合に、サプライポンプ2に圧送異常があると判定する。
これにより、負荷状態(燃料噴射量の大小)に応じてサプライポンプ2に圧送異常があるか否かを判定する判定精度を確保しつつ、検出した圧力偏差と判定値を比較するという比較的簡易な判定手段によってサプライポンプ2ポンプの異常診断が行なえる。
また、以上説明した本実施形態では、ECU13は、燃料漏れ判定手段を備えており、燃料漏れ判定手段により燃料漏れ異常はないと判定された場合に、圧力偏差ΔP1、ΔP2に基づいてサプライポンプ2の圧送異常があるか否かを判定することが好ましい。これにより、例えばコモンレール圧力が目標燃料噴射圧力に一致しない状態が継続している場合において、サプライポンプ2に圧送異常があるか否かを判定する判定精度の向上が図れる。
また、以上説明した本実施形態では、ECU13は、気筒#1〜#6のうちの一部の気筒(例えば、特定気筒#1、#4)への燃料噴射を選択的に休止する噴射休止手段を備えている。さらに、圧力偏差ΔP2に基づいてサプライポンプ2の圧送異常があるか否かを仮判定する。そして、圧送異常がないと仮判定された場合に、圧力偏差ΔP2を検出した検出範囲IA、IBのうち、いずれかの検出範囲IAで噴射予定のインジェクタ#1の燃料噴射を休止させる。さらに、圧力偏差ΔP2に代えて、インジェクタ#1を休止した状態での圧力偏差Δ3を検出し、その圧力偏差Δ3に基づいてサプライポンプ2に圧送異常があるか否かを判定する。
これによると、圧送異常がないと仮判定された場合において、圧力偏差Δ2を検出した検出範囲で噴射予定のインジェクタ#1の燃料噴射を休止するので、干渉状態等による圧力変動要因を排除した状態で、圧力偏差ΔP2に代えて圧力偏差Δ3にて再検出することができる。したがって、サプライポンプ2に圧送異常があるか否かの判定を、精度よく行うことができる。
また、以上説明した本実施形態では、ECU13は、上記噴射休止した気筒#1、#4分の燃料噴射量に応じて、それ以外の他の気筒#2、#3、#5、#6に搭載されたインジェクタ#2、#3、#5、#6よりの燃料噴射量を増加する減筒運転燃料増量手段を備えている。
これにより、エンジン11の出力トルクの低下を防止し、安定した運転状態を維持することができる。したがって、エンジン11の安定状態が維持されるので、再検出した圧力偏差Δ3に基づいたサプライポンプ2に圧送異常があるか否かの判定精度の向上が更に図れる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用可能である。
例えば上述の実施形態では、目標噴射量(QFIN)に基づいて決定する検出範囲を、負荷状態に応じて2つの検出範囲(低負荷状態検出範囲IA、IBと高負荷状態検出範囲II)に振分けるものとして説明したが、これに限らず、3つの検出範囲あるいは4つの検出範囲等に振分けるものであってもよい。