以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す図である。像担持体であるドラム型の電子写真感光体1(以下、感光ドラム1という)は、装置本体Mによって回転自在に支持されている。また、感光ドラム1は、不図示のモータ等の駆動手投によって矢印R1方向に、所定のプロセススピードで回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、回転方向R1に沿って帯電ローラ(帯電装置)2、露光装置3、現像装置4、転写ローラ(転写装置)5、およびクリーニング装置6が回転方向順に配設されている。
給紙カセット7は、装置本体Mの下部に配設され、紙等のシート状の記録材Pを収納している。符号Rは、記録材Pの搬送経路を示す。搬送経路Rに沿って記録材の搬送方向上流側から順に、給紙ローラ15、搬送ローラ8、トップセンサ9、搬送板金10、搬送ローラ12、および排紙ローラ13が配設されている。なお、トップセンサ9と搬送板金10との間には転写ローラ5が配設され、搬送板金10と搬送ローラ12との間には定着装置11が配設されている。
直流高電圧発生部18は、転写ローラ5に印加する転写電圧を発生する。転写電圧制御部19は、直流高電圧発生部18を制御する。定着温度制御部23は、入力した目標温度とサーミスタ(温度検知素子21)が検知する温度とに基づいて、トライアック24を制御して加熱体であるヒータ20に対する通電を制御し、定着ニップ部Nにおいて記録材Pに与える温度を制御する。転写電圧制御部19は、定着温度制御部23に対して目標温度を設定することができる。
また、転写電流検知部31は、転写電圧制御部19が直流高電圧発生部を制御して転写ローラ5に転写電圧を印加する際に、転写ローラ5に流れる転写電流を検知し、検知した転写電流値に応じた信号を転写電圧制御部19に出力する。
なお、トナー像を記録材Pに転写すべく所定の転写バイアスが印加される転写ローラ5は、Fe、SUS等の芯金5aと、この芯金上に設けられた導電性ゴムまたは導電性スポンジ等の弾性体層5bとから構成されている。転写ローラ5の弾性体層5bは、カーボン等の導電性フィラーの含有量を調節して、106〜1010Ωに抵抗値を設定している。従って、弾性体層5bは、電子導電性を有するが、印加する電圧が大きくなるほど弾性体層5bに分散された導電性フィラー同士の集中電界が生じやすいために、抵抗値が小さくなる傾向がある。
弾性体層5bに含まれるカーボン等の導電性フィラーの含有量を調節することで、環境によって抵抗値が大きく変化するよう弾性体層5bの特性を設定することができる。例えば、高温/高湿(H/H)環境(33℃/80%)では2.5×107Ω〜8×107Ωの抵抗値を示し、通常温度/通常湿度(N/N)環境(23℃/60%)では1×108Ω〜3×108Ωの抵抗値を示し、低温/低湿(L/L)環境(15℃/10%)では4×108Ω〜1.2×109Ωを示すように、弾性体層5bの特性を設定することができる。しかしながら、このように設定された転写ローラ5であっても、印刷による機内温度の上昇、電気ノイズなどによって、各環境における抵抗値は、上記の範囲内に収まるとは限らない。
プリンタで使用される記録材は、多種多様化している。例えば、体積抵抗率が108Ω・cm〜1017Ω・cmといった広範囲に分布する様々な記録材が使われている。記録材は、空気中の水分の影響を強く受けるため、記録材が置かれた環境に応じて記録材の抵抗値も大きく変化する。具体的には、気温15℃、湿度10%の低温低湿環境から、気温33℃、湿度80%の高温高湿環境への推移において5桁以上の抵抗値変動がある。
次に、転写電圧制御部19が行う制御の基本動作について説明する。図2に、通紙時における記録材P、感光ドラム1、および転写ローラ5の等価回路を示す。感光ドラム1と転写ローラ5との回転により、記録材Pが搬送される。転写ローラ5は、感光ドラム1上のトナーTを記録材Pに転写するために、転写バイアスを印加する。転写バイアスは、直流高電圧発生部18より発生する転写電圧を、転写電圧制御部19によって制御することにより、転写ローラ5に印加される。適切にトナーを記録材に転写するための転写バイアス制御方式として、定電流制御方式がある。
定電流制御方式とは、転写中において、記録材Pへ流れる電流が一定となるように制御する方式である。最初に、不図示の電流検知部が検知した電流値を、転写電圧制御部19に入力する。次に、転写電圧制御部19は、目標とする電流値と電流検知部が検知した電流値との差分から、直流高電圧発生部18が転写ローラ5へ印加する電圧値を補正する。記録材Pへの転写効率は、一般に記録材Pへ流れる電流値に依存する。従って、記録材の抵抗値等に依存することなく電流値を一定に保つことにより、安定した画質の画像を形成することができる。
なお、記録材Pが転写ニップ部に進入するとき、感光ドラム1および転写ローラ5の接触抵抗(RII)が、急激に増大する。このとき応答性の悪い定電流制御を行うと、転写ローラ5へ印加する電流値が急激に下がり、転写電流が不足することに起因する転写不良を起こしてしまう。そこで、接触抵抗(RII)が急激に増大する記録材Pが転写ニップ部に進入する前後において、転写バイアス制御方式として定電圧制御方式を用いる。定電圧制御方式とは、例えば、特許文献3に開示されているように、転写ローラの抵抗値を予測して転写電圧を適切に制御するATVC(Active Transfer Voltage Control )方式をいう。
ATVC制御方式は、感光ドラム1の表面を所定電位に帯電するための前回転動作中に、転写ローラ5から感光ドラム1に所定の定電流が流れるように直流高電圧発生回路18が印加する電圧値を制御する方式である。ATVC制御方式は、その時の印加電圧値より転写ローラ5の抵抗値(RI)を予測する。感光ドラム1上のトナー像を記録材Pに転写する時に、直流高電圧発生回路18は、予測した転写ローラ5の抵抗値(RI)に応じた適切な転写電圧を転写ローラ5に印加する。記録材Pに転写ローラ5を接触させつつトナー像を転写する接触転写方式は、(1)転写ローラ5の抵抗値(RI)により、記録材先端に印加すべき最適な電圧値が変わる、(2)転写ローラ5は抵抗値(RI)のバラツキが大きい、(3)高湿環境から低湿環境において転写材特性が激しく変化するという特徴がある。そこで、ATVC制御を行って、H/H環境とL/L環境を区別し、環境変動で転写ローラ5による転写性が変わらないようにする。このようにして、ATVC制御を行うことで、環境に応じた適切な転写電圧値により定電圧制御を行うことができる。
図3に、本発明に係る画像形成装置の定着装置を示す。図3は、記録材Pの搬送方向(矢印K方向)に沿った垂直面で、定着装置を切断した縦断面図である。定着装置11は、トナーを加熱する加熱体であるセラミックヒータ20と、このヒータ20を内包する定着フィルム(定着回転体)25と、定着フィルム25に当接された別の定着回転体である加圧ローラ26と、ヒータ20の温度を制御する温度制御部27と、記録材Pの搬送を制御する回転制御部28とを主要構成部材としている。
ヒータ20は、装置本体Mに取り付けられたガイド部材22(以下「ヒータホルダ」という)によって支持されている。ヒータホルダ22は、耐熱樹脂によって半円状に形成された部材であり、定着フィルム25の回転をガイドするガイド部材である。
ポリイミド等の耐熱樹脂を円筒状に形成した定着フィルム25は、ヒータ20及びヒータホルダ22を包んでいる。定着フィルム25は、後述の加圧ローラ26によってヒータ20に押し付けられ、定着フィルム25の裏面がヒータ20の下面に当接される。定着フィルム25は、加圧ローラ26の矢印R26方向の回転により、記録材Pが矢印K方向に搬送されるのに伴って、矢印R25方向に回転する。定着フィルム25の左右の両端部は、ヒータホルダ22のガイド部(不図示)によって規制されており、ヒータ20の長手方向にはずれないように構成されている。
加圧ローラ26は、金属製の芯金26aの外周面に、シリコーンゴム等の弾性を有する耐熱性の離型層26bを設けている。加圧ローラ26は、離型層26bの外周面によって、定着フィルム25をヒータ20に押し付け、定着フィルム25との間に定着ニップ部Nを構成している。
回転制御部28は、加圧ローラ26を回転駆動するモータ29と、モータ29の回転を制御するCPU30とを有する。モータ29として、例えば、ステッピングモータ等を使用することができる。モータ29は、加圧ローラ26を矢印R26方向に連続的に回転させるほか、所定の角度ずつ断続的に回転させることもできる。つまり、加圧ローラ26の回転と停止とを繰り返しながら、記録材Pをステップ送りすることもできる。
温度制御部27は、ヒータ20の裏面に取り付けられたサーミスタ(温度検知素子)21と、サーミスタ21が検出する温度情報に基づいて、トライアック24を制御し、ヒータ20に対する通電を制御する定着温度制御部23とを有する。
定着装置11は、加圧ローラ26の矢印R26方向の回転により、記録材Pを定着ニップ部Nにて狭持搬送し、ヒータ20によって記録材P上のトナーを加熱する。この際、回転制御部28によって加圧ローラ26の回転を制御することにより、記録材Pの送りを適宜に制御する。また、温度制御部27によってヒータ20の発熱量を制御して、定着ニップ部の温度を適宜に制御する。
次に、図1に示されたレーザビームプリンタにおける画像形成時の基本動作について説明する。ホストコンピュータ等から画像信号を入力したレーザビームプリンタは、画像形成動作を開始する。最初に、駆動手段(不図示)によって矢印R1方向に感光ドラム1を回転駆動するとともに、帯電ローラ2により感光ドラム1の表面を所定の極性、所定の電位に一様に帯電させる。帯電された感光ドラム1の表面は、レーザ光学系等を有する露光装置3により画像情報に基づいて露光光Lにより露光される。感光ドラム1の露光部分の電荷が除去されて、画像情報に基づいた静電潜像が形成される。
次に、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像を、現像装置4によって現像し、感光ドラム上にトナー像を形成かる。現像装置4は、現像ローラ4aに現像バイアスを印加することにより、感光ドラム1上の静電潜像にトナーを付着させ、トナー像として現像(顕像化)を行う。
一方、感光ドラム1表面へのトナー像形成動作と並行して、給紙カセット7に収納されている記録材Pが、給紙ローラ15と搬送ローラ8とによって給紙搬送される。記録材Pは、トップセンサ9を通過した後、感光ドラム1と転写ローラ5との間のニップ(以下、転写ニップ部という)に搬送される。記録材Pは、トップセンサ9によって先端が検知され、感光ドラム1上のトナー像と同期が取られて、露光と現像が行われる。従って、記録材Pが転写ニップ部に搬送されると、転写ローラ5に印加される転写バイアスにより、感光ドラム上のトナー像が記録材P上の所定の位置に転写される。
このようにして未定着トナー像を表面に担持した記録材Pは、搬送板金10に沿って定着装置11に搬送される。記録材Pは、加熱ローラ11a(定着フィルム25)と、加熱ローラ11aに圧接する加圧ローラ11b(加圧ローラ26)とにより構成される定着ニップに搬送される。記録材P上の未定着トナー像は、定着装置11により加熱及び加圧されて記録材P表面に定着される。トナー像が定着された記録材Pは、搬送ローラ12により搬送され、排紙ローラ13によって装置本体M上面に設けられた排紙トレイ14上に排出される。
トナー像を転写した後の感光ドラム1は、表面に残った転写残トナーを、クリーニング装置6のクリーニングブレード6aにより除去する。以上の動作を繰り返すことで、複数ページにわたる画像を、記録材P上に画像形成することができる。
以上説明したレーザビームプリンタにおいて、記録材の特性に応じて定着装置の温度設定を適切に制御するために、温度及び湿度の異なる複数の環境において、吸湿度の異なる複数の記録材を用いて実験を行なった。図4に、ATVC制御時に転写ローラ5に生じた電圧を示す。横軸V0は、前回転時の定電流制御時に転写ローラ5に生じた電圧であり、縦軸Vは、転写時の定電流制御時に転写ローラ5に生じた電圧である。
実験では5つの種類の記録材を使用する。記録材P0は、包装された状態から開封した直後の記録材である。記録材P1は、H/H環境において12時間以上放置した記録材である。記録材P2は、N/H環境において12時間以上放置した記録材である。記録材P3は、L/H環境において12時間以上放置した記録材である。記録材P4は、N/N環境において12時間以上放置した記録材である。4つの異なる環境において12時間以上の間放置することとしたのは、記録材に含まれる水分量が安定するまでの時間を考慮したものである。
図4は、V0とVの関係を、それぞれの記録材P0〜P4について上限と下限を示し、併せて、画像形成装置の設置場所それぞれの環境(H/H、N/H、L/HおよびN/N)における範囲を示している。ここで各環境の温度は、H=33℃、N=23℃、L=15℃であり、湿度は、H=80%、N=60%、L=10%を組み合わせたものである。H/H環境とは、温度33度、湿度80%の高温高湿環境であり、L/H環境とは15度80%の低温高湿環境である。なお、記録材PのサイズはA4に統一している。
図4において、画像形成装置の設置場所の環境が、N/N、L/H、N/H、H/Hと変化するにしたがって、同一条件の放置紙に対するV0の値が小さくなっている。これは、湿度が高くなることにより、転写ローラ5と感光ドラム1の水分量が増加し、抵抗値が減少するので、転写ローラ5に印加する電圧が低くても同一の電流値を流すことができるからである。ここで表示されていない環境、例えば、H/N環境は、転写ローラ5の水分量がN/Hとほぼ同じになるため、V0もほぼ同等の値を示す。
Vの値は、記録材の放置状態によって異なる。記録材も転写ローラの水分量と同様に、N/N、L/H、N/H、H/Hと環境が変化するにしたがって、Vが減少している。すなわち、水分量が多くなっていることが判る。例えば、H/H環境での記録材P1を、H/H環境の画像形成装置で通紙した場合には、ゾーンAの領域で転写制御することとなり、L/H環境での記録材P3を、H/H環境の画像形成装置で通紙した場合には、ゾーンBの領域で転写制御することになる。このような各々のゾーンの範囲は、横方向が、転写ローラ5の抵抗、直流高電圧発生部のバラツキによって発生し、縦方向が、記録材Pの種類や印字画像によってバラツキが生じる。
ゾーンA(H/H環境において記録材P1を通紙したとき)には、記録材中の水分量が極端に多いため、排紙トレイ14に排出された記録材は、カール量が大きく、積載性が極端に悪くなる。ゾーンB(H/H環境において記録材P3を通紙したとき)には、記録材Pの温度が15℃と低いため(吸湿度は記録材P1ほど高くない)、定着に通常の定着温度を必要とする。
図5に、記録材のサイズと転写ローラ5に生じた電圧V0,Vとの関係を示す。ここでは、全てのサイズの記録材に記録材P0を用いている。記録材P0とは、記録材をパッケージから取り出した直後の紙を指し、水分量は5%前後のものである。記録材Pをパッケージから出して放置すると、高湿環境下では水分量が上昇し、低湿環境下では低下する。従って、条件を一定にするため、記録材P0は常に袋に入れるなどして、パッケージから取り出した直後と同条件にしなければならない。サイズは、葉書・封筒・A5・B5・A4を用いている。
図5に示す通り、サイズが小さくなるに従い、通紙中の電圧すなわちVは小さくなる。この現象を、図2を用いて説明する。記録材Pが小さくなると、転写ローラ5と感光ドラム1とが接触する転写ニップにおいて、記録材を挟まない箇所の接触抵抗(RII)が小さくなるためである。従って、記録材P0であっても、小サイズ紙では転写電圧Vが小さくなるため、葉書・封筒においてもゾーンAで制御を行うことがある。
図6に、本発明の第1の実施形態に係る、レーザビームプリンタにおける定着装置11の温度設定制御を示す。ステップS101において、ホストコンピュータ等の外部装置からプリント信号を受信する。ステップS102において、プリント信号がノーマルモードか否かを判定する。なお、ノーマルモードか否かは、ユーザが指定した記録材の種類等を示す情報から判定する。ラフ紙、ライト紙、OHT、小サイズ紙等が、プリントすべき記録材として指定されている場合には、NOと判定して、それぞれの種類に応じて予め設定されている制御モードへ移行する。
ステップS102においてノーマルモードの場合(ユーザによって記録材の指定がないと判定された場合)には、レーザビームプリンタの帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、定着装置等の各部を画像形成可能な準備状態へ移行させるための前回転動作を開始する(ステップS103)。
ステップS104において、定着温度通常制御を開始する。定着温度通常制御は、温度検知素子21で定着装置11の温度を検知して、その検知温度に応じた目標温度を設定し、加熱体20への通電を制御する。例えば、複数の制御温度を有する場合、例えば、温度検知素子21が検知した検知温度が45℃以下であれば目標温度として215℃を、検知温度が45℃より大きく80℃以下であれば目標温度として210℃を、検知温度が80℃より大きく120℃以下であれば目標温度として205℃を、検知温度が120℃より大きければ目標温度として200℃をそれぞれ設定する。
ステップS105において、転写ローラ5に対して一定の電流値I(本実施形態では4μA)により定電流制御を開始する。ステップS106において、定電流制御中に転写ローラ5に生じた電圧V0を検出し、転写電圧制御部19が有する記憶媒体(不図示)にV0の値を記憶する。電流値Iは、転写ローラ5の芯金5aに印加された電圧により、芯金5a、弾性体層5b、転写ニップから感光ドラム1を通ってアースに流れる電流である。転写電圧制御部19により一定の電流(本実施形態では4μA)になるように、直流高電圧発生部18からの出力を制御して、発生する電圧を前述したV0とする。なお、V0の値は、所定のサンプリング間隔で複数回取得したV0を元に、それを平均化して算出してもよい。また、ステップS105で開始した定電流制御は、電圧V0を検出したのちに停止させる。
ステップS107では、ステップS106で検知した電圧V0を、所定の電圧(本実施形態では0.55kV)と比較する。なお、0.55kVという電圧は、図4における実験例で得た値であり、レーザビームプリンタのおかれている環境がH/H環境であるか否かを判断する値である。検知した電圧V0が、0.55kV以下であればステップS108へ進む。
ステップS108において、記録材にトナー像を転写するために、転写ローラに印加する転写電圧Vtを算出する。なお、Vtの算出は記録材先端にて、爆発画像などの転写電流不足による現象を防ぐために、前回転によって求められたV0より算出される。本実施形態では、Vt=2.5V0+0.5となっている。これは、使用する転写ローラや高圧回路等によって最適な制御式を用いる。
ステップS109において、トップセンサ9が記録材Pの先端を検知すると、トップセンサ9の検知信号は、転写電圧制御部19に入力される。転写電圧制御部19は、トップセンサ9からの検知信号を基準にして、記録材先端が転写ニップ部に突入したか否かを判断する。なお、転写電圧制御部19は、記録材先端が転写ニップ部に突入するまでに、転写電圧Vtが立ち上がるように、直流高電圧発生部18を制御する。
ステップS110では、直流高電圧発生部18から転写電圧Vtが、転写ローラ5に印加される。転写電圧Vtは、通常環境(転写ローラ5の抵抗が106〜1010Ω)において、2.5kv〜5kvの範囲の値を取る。ステップS111では、転写電圧Vtが出力された後、数百ミリ秒後(本実施形態では150msec後)に定電流制御を開始する。ステップS112において、直流高電圧発生部18は、定電流制御中において転写ローラへ印加する転写電圧Vの検知を開始する。ステップS113では、ステップS109で先端を検知した記録材Pの後端を検知する。
ステップS114では、ステップS112で検知を開始した転写電圧Vと、閾値とを比較する。閾値電圧は、上述した実験例である図4から決定した制御式を用いて算出する(本実施形態では1.5V0+0.2)。なお、転写電圧Vは、転写ニップを通過した記録材の先端が、定着装置11の定着ニップに突入する前に検知しなければならない。これは、定着ニップに突入する前に記録材の状態を正確に把握するために重要である。また、記録材の搬送位置によって転写電圧Vが大きく変化するために、検知する位置を限定された位置とするためである。
例えば、定着装置11にバイアス−600Vを印加している場合、低抵抗の記録材が定着装置11の定着ニップに突入すると、記録材を通して転写電流が定着装置11に流れ込む。このため定着ニップ突入と同時に、転写電圧が急激に変化することになる。これは、記録材Pの先端が定着装置11の定着ニップに突入すると、転写ローラから記録材を通して感光ドラム1に流れる転写電流の一部が、記録材Pを通して定着装置11に流れ込む漏れ電流が発生するためである。これは、図2における抵抗RIVが、記録材Pが定着ニップに突入すると小さくなるためである。本実施形態では、転写バイアスを定電流制御しているため、記録材Pの先端が定着ニップに突入すると、転写電圧の出力を小さくする制御になる。もちろん、定電圧で転写バイアスを出力していれば、記録材Pの先端が定着ニップに突入すると、転写電流が大きくなる。
本実施形態において、転写ニップから定着ニップまでの距離は70mm、プロセススピードは100mm/secに設定されている。このため、転写電圧印加開始から約700msec後に、記録材Pが定着ニップに突入することになる。記録材先端では、転写電流の変化が激しく転写電圧の出力が不安定になる。従って、本実施形態においては、転写電圧印加開始後300msecから700msecの間に出力電圧Vを検知する。
本実施形態では、電圧Vtの印加開始から150msec後に定電流制御を行っているが、例えば、転写電流をモニターし、所定の電流と比較することで数十ミリ秒毎に転写電圧Vの補正を行うこともできる。もちろん、適切な定電圧制御を行って、電流値による比較を行うこともできる。
ステップS114において、転写電圧Vが閾値電圧以下と判断した場合(V≦1.5V0+0.2)には、H/H環境で放置された吸湿度の高い記録材P1であるとして、吸湿度の高いH/H放置紙であるので、ステップS115に進む。ステップS115において、紙サイズが所定サイズ以上か否かを判定する。なお、本実施形態ではトップセンサ9を用いて紙サイズの検知を行っているが、記録材がトップセンサ9を通過する時間によって記録材の大きさ、(例えば、A4か、B4か)を判定している。なお、記録材搬送方向に直交する方向に複数のセンサを設けて、記録材幅を直接的に検知してもよい。また、定着装置11の記録材搬送方向に直交する方向に複数の温度検知素子21を設けて、記録材の通過に伴う温度変化をモニターすることで、記録材のサイズを検出しても良い。
ステップS115において、紙サイズをA4以上と検知した場合(YES)には、ステップS116へ移行し、定着温度を通常の定着温度から変更する処理を行う。従って、紙サイズとしてA4以上を検知した場合にのみ、定着温度を変更しているので、葉書や封筒等の小サイズの記録材が通紙された場合(NO)には、定着温度が変更されることはない。
ステップS116では、通常設定温度に対して一律に定着温度を25℃低下させる。なお、本実施形態においては、サイズを検知した記録材の定着処理が終了した後に、定着温度を変更することが望ましい。本実施形態の構成では、トップセンサ9により記録材Pの後端を検知した後に、初めて記録材サイズを認識することができる。この時点では、記録材Pの先端が定着ニップ近傍に位置しており、定着温度を変更して安定させるために充分な時間を確保することができないからである。また、記録材サイズによっては、記録材Pの先端が定着ニップに突入しており、定着温度を通紙途中で変更すると、記録材P上の画像の画質に影響を及ぼすからである。
図7に、温度設定制御における設定温度の例を示す。通常制御において、定着器の定着ヒータの温度制御は、何種類かの適正温度を設定しておき、必要に応じて、または所定のシーケンスにしたがって適正温度を使い分ける。例えば、レーザビームプリンタが電源を投入されることなく一定時間以上放置された後に、画像形成を開始するときには(例えば、温度検知素子21が45℃以下の温度を検知した場合、以下、コールドスタートという)、通常設定温度は、215℃である。この状態で、ステップS115においてA4サイズ以上の用紙であると判定し、定着温度を変更する場合(ステップS116)は、190℃に設定する。すなわち、積載性のレベルが悪い高湿環境において、水分を多く含む記録材(A4以上)が通紙された場合には、次の記録材が通紙される際には、通常設定温度より25℃低い190℃を設定温度とする。
なお、画像形成を終了してから一定時間以内に画像形成を開始させる場合(例えば、温度検知素子21が45℃より高い温度を検知した場合、以下、ホットスタートという)、または一定枚数以上が通紙された場合には、通常設定温度は、210℃、205℃、200℃などに設定される。このとき、定着温度の変更処理では、通常温度から25℃低くするので、それぞれ185℃、180℃、175℃となる。
図6に示したステップS119において、レーザビームプリンタは、プリント処理を終了する。ただし、ステップS119から所定時間内(本実施形態では30秒以内)に新たなプリント信号を受信した場合には、定着装置11の設定温度を同じままである通常温度より25℃低い温度として再び画像形成を行う。
ステップS120は、ステップS107でNOと判定された場合(高温高湿環境でないと判定された場合)、およびステップS114でNOと判定された場合(記録材がH/H放置紙でないと判定された場合)に実行する。
上述した定着温度の変更処理において、通常温度から25℃低い設定温度とした理由について説明する。図8に、記録材の状態と定着温度による積載性および定着性を示す。図8(a)に、H/H環境に画像形成装置を置いたときに、定着温度制御の設定温度別の、記録材P1のカール量と積載性とを示す。定着温度を通常定着温度から徐々に減じた温度とし、紙種1および紙種2のカール量と、排紙トレイからの定着済み記録材の落下発生枚数の測定結果とを示す。なお、紙種1と紙種2とは、例えば、厚みや坪量等の記録材特性が異なる。落下発生枚数とは、レーザビームプリンタから排出された記録材が連続して積載され、積載可能な状態から積載不能な状態が発生するまでの枚数を示す。カール量が大きいほど積載性が悪くなり、落下発生枚数は低下する傾向にある。
カール量は、印字率の低い(白画像に近い)画像程大きくなる。なお、印字率とは、1ページあたりに印字する画像のドット数を示すものである。本実験では、コールドスタートから印字率3%(一般に印字するとされる最も白画像に近い印字率)の印字結果を有する記録材Pを、20枚出力させた。カール量は、出力された記録材を平らな板の上に1分間放置し、用紙の4つ角の板面からの距離を測定した。定着した記録材のカール量は、定着温度を下げる程少なくなる傾向にある。従って、紙種によって、通常の定着温度−20℃(195℃〜180℃)以下の温度にすることで、ほとんどカールしない。カール量の大きい紙種であっても、通常の定着温度−25℃(190℃〜175℃)以下の温度にすることで、排紙トレイへ100枚積載することができる。
図8(b)に、H/H放置紙の濃度低下率と定着性とを示し、図8(c)に、L/H放置紙の濃度低下率と定着性とを示す。定着温度を通常定着温度から徐々に減じた温度とし、紙種1および紙種3の濃度低下率と、定着性の測定結果とを示す。なお、紙種1と紙種3とは、例えば、記録材の表面性が異なる。定着性は、定性的にハーフトーン画像が最も悪い。そこで、本実験では、記録材の9点にハーフトーンを印字した印字結果を有する記録材を、コールドスタートから5枚出力させた。擦る前の濃度と擦り後の濃度とから濃度低下率を算出している。定着性の悪い紙種では、H/H放置状態において、通常の定着温度−30℃(185℃〜170℃)にてNG(濃度低下率 平均10%以上)が出ているため、通常の定着温度−25℃(190℃〜175℃)以上の定着温度でなければならいないことが判る。
さらに、図8(c)に示すように、L/H放置紙においては、通常の定着温度−25℃の温調でもNGとなってしまう。従って、H/H放置紙に限り、通常温度−25℃の温度制御を行うことで、積載性を満足する定着制御が可能となる。さらに、L/H放置紙では、通常制御を行うことができるため、定着性を低下させることがない。
本実施形態によれば、記録材のサイズに応じて定着装置の温度設定を適切に制御し、通常時のスペックを低下させることなく高湿環境における積載性を向上させることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、記録材の幅サイズを直接的に検知するセンサを用いることで、記録材Pの幅サイズに応じた適切な定着温度の変更を行う。レーザビームプリンタにおいては、プリント信号に記録材Pに関する情報を含んでいる。この情報に基づいて、例えば、OHTシート、小サイズ紙(葉書や封筒など)等の記録材特性に応じたモードを、転写制御と定着制御とに設けることが行われている。
しかし、プリント信号に記録材Pに関する情報が含まれていない場合には、特に小サイズ紙のように厚くて小さなものが通紙された場合に、転写電圧Vが低くなる。これは、転写ローラ5と感光ドラム1とが記録材Pを挟まずに接触する面積が大きく、図2に示した抵抗RIIが小さくなるからである。紙が厚いために熱容量が大きく、従って定着性が悪い傾向にある。
第1の実施形態では、A4以上の記録材を検知し、転写電圧Vを、電圧V0に基づいて算出した閾値と比較することにより、記録材P1についての定着温度を低くすることで記録材Pの積載性を向上させた。第2の実施形態では、記録材Pの幅方向サイズを幅センサで直接的に検知することで、第1の実施形態と同様の効果を得るものである。検知した記録材Pのサイズを考慮して、閾値を算出し、算出した閾値と転写電圧Vとの比較を行い、定着温度を変更する。
第2の実施形態では、記録材Pの通紙領域に、トップセンサ9の他に搬送方向に直交する方向に記録材Pの幅センサ9'を複数設ける。複数の幅センサ9'のオン状態とオフ状態とに基づいて、記録材の幅を検知することができる。また、幅センサでなくとも、定着装置11において記録材の搬送方向に直交する方向に、複数の温度検知素子を設け、記録材の通紙に伴う温度上昇をモニターすることで、記録材のサイズを判断することができる。
例えば、記録材Pの通紙領域の中央部と、封筒通紙領域かつ葉書非通紙領域と、A5通紙領域かつ封筒非通紙領域と、B5通紙領域かつA5非通紙領域と、A4通紙領域かつB5非通紙領域とに、それぞれ温度検知素子21(計5個)を設ける。定着温度制御部23は、記録材Pの定着ニップN通過時に、複数の温度検知素子21の温度上昇をモニターすることにより、紙幅を検知することができる。なお、複数の温度検知素子21を設けることができない場合、温度検知素子21を記録材通紙中央と端部とに設け、端部の温度上昇率により紙幅を予測することもできる。
図9に、記録材の紙幅と転写電圧Vの関係を示す。横軸に転写電圧V、縦軸に紙幅をプロットしている。H/H放置紙をみると、転写電圧V≒V0+紙幅×V0/400、記録材P0でみると、転写電圧V≒V0+紙幅×V0/50が成り立つ。第1の実施形態では、閾値1.5V0+0.2を設けていたが、第2の実施形態では、紙幅に応じて、
閾値=1.5V0+0.2−V0×(200−紙幅(mm))/100
を用いる。もちろん、紙サイズの検知方法や転写ローラ5の特性、あるいは高圧回路の性能によって、上記の式は最適化する必要がある。
さらに、プリント終了時も定着制御温度を記憶しておく。30秒以内に給紙される記録材に関して、上記定着温度制御を用いることにより、間欠で出力された場合でも積載性を満足することができる。30秒以内の通紙では、定着器がホット状態(定着装置11の温度が45℃以上)のため、ヒータ温度が低くても定着性が低下することはない。
第2の実施形態によれば、葉書や封筒といった小サイズ紙においても定着不良を起こさずに、高湿環境における積載性を満足する普通紙と小サイズ紙に適した最適な定着制御を実現することが可能となる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、記録材Pの印字率に応じて定着装置の温度設定を適切に制御する。第1および第2の実施形態で説明してきた転写電圧Vは、印字画像が印字率の高い黒画像を含む場合には、記録材P上のトナーの抵抗により、印字率が低い画像に比べて記録材Pの抵抗値(RII)が高い傾向にある。
図10に、記録材Pの印字率と転写電圧Vとの関係を示す。吸湿度の異なる各記録材P1〜P3のうち、ゾーン内で印字率の高い記録材Pは、各ゾーン領域内の上部に位置する。逆に印字率の低い白画像は、記録材Pのみの抵抗となるため領域内の下部に位置する。従って、記録材Pの放置環境(記録材Pの吸湿度)が異なっていても、印字する画像の印字率によっては、同等の転写電圧Vになることもある。図4で示したH/HゾーンAの中でも印字率80%以上(スリップ現象が発生しやすい)の画像の場合には、上限に張り付く形で存在する(図10のゾーンC)。さらに、印字率低い(定着性の悪いハーフトーンなど)画像の場合には下限に張り付いてゾーンDとして存在することが判る。これは、図2に示したトナーの抵抗が、転写電圧Vに影響しているからである。
図11に、記録材P1の印字率と転写電圧Vとの関係を示す。印字率が高ければ転写電圧Vが大きくなり、印字率が低ければ転写電圧Vが低くなる。転写電圧Vを式で表すと、V≒V0×印字率(%)/100+V0となる。なお、この式におけるV0は、H/H環境においてA4サイズの記録材P1を用いた場合に測定される値である。
印字率は、記録材Pのサイズと、印字したドット数とから求めることができる。ここで印字したドット数は、以下のようにして求めることができる。たとえば、画像上で黒パターンが画像信号Yの1であり、白パターンが0であるとする。画像信号Yが1のときに、基準クロック信号に同期して露光装置3内のレーザダイオードがONされる。従って、画像信号Yが1となる期間の基準クロック信号のカウント値は、レーザダイオードから発せられる光信号のドット数に等しくなる。基準クロック信号をカウントすること、言い替えれば潜像形成したドット数を積算することにより、印字した総ドット数を求めることができる。
図12に、本発明の第3の実施形態に係る、画像形成装置の転写、定着制御を示す。ステップS201からステップS212までの動作は、図6に示したステップS101からステップS112までの動作と同じであるので説明を省略する。ただし、第1の実施形態では、プリント信号には印字率や記録材サイズに関する情報は含まれないものとして説明した。第3の実施形態では、プリント信号に印字率、紙サイズ情報が含まれることが前提となる。記録材が定着ニップに進入する前に、上記情報も合わせて定着温度制御を変更することで、定着性を確保しながらスリップのマージンを上げることが可能となる。
第3の実施形態では、ステップS213において、
閾値=1.5V0+0.2―V0×(200―紙幅(mm))/100)+0.4V0×印字率(%)/100
として定着温度を変更するか否かを判定する閾値を算出する。この閾値算出式によって、スリップに不利な印字率の高い黒画像において、定着温度ダウンゾーンを拡大することで、定着性が不利な記録材P3のハーフトーン画像においても定着性を満足させることができる。
ステップS214において、ステップS212で検知を開始した転写電圧Vを、上述した閾値と比較する。転写電圧Vが閾値電圧以下であると判断された場合には、次のステップS215に進み、定着温度の算出を行う。第1および第2の実施形態では、閾値電圧以下を検知すると、定着温度を通常設定温度より25℃低く設定する定着温調制御を行ってきた。第3の実施形態では定着温度を段階的に変更する。第3の実施形態では、0.5kV≧閾値−転写電圧V≧0の条件(第3の実施形態では、転写電圧Vに下限を設けているためV0以下にはならない)で、目標温度=通常温度−50×(閾値−転写電圧V)に設定する。この算出された温度を、記録材が定着ニップに入る前のステップS216にて変更を行う。
第1の実施形態においては、トップセンサ9により紙後端を検知した後に、初めて記録材サイズを認識することができる。しかし、この時点においては、記録材Pの先端が定着ニップ近傍に位置しており、定着温度を変更して安定させるには充分な時間が確保されない。このような理由から、サイズを検知する対象となった記録材についての定着温度を変更するより、サイズを検知する対象となった記録材の定着処理が終了した後に、定着温度を変更していた。
しかしながら、第3の実施形態では、プリント信号に印字率、紙サイズ情報が含まれることを前提としているので、記録材Pの先端が定着ニップに突入するのに充分余裕をもって定着温度を変更できる。従って、サイズを検知する対象となった記録材について、定着温度を変更することが望ましい。
ステップS217において、定着ニップに突入し、ステップS218においてプリントを終了する。なお、ステップS219は、ステップS207でNOと判定された場合(H/H環境でないと判定された場合)、ステップS214でNOと判定された場合(記録材がH/H放置紙でないと判定された場合)に実行する。
以上のように構成することにより、記録材の印字率に応じて定着装置の温度設定を適切に制御することができ、紙詰まりや画像不良をおこすことのない画像形成装置を提供することができる。
(第4の実施形態)
図13に、本発明の第4の実施形態に係る、レーザビームプリンタにおける定着装置11の温度設定制御を示す。第3の実施形態で説明した定着温度制御は、記録材の特性(サイズ、印字率等)から閾値を算出して記録材の転写中における転写電圧を閾値と比較することにより、定着温度を変更するか否かを制御する。定着温度の変更は、通常温度から低下させる制御の例であった。第4の実施形態は、低湿環境(≒低温環境)では定着性が極端に悪化することから、低湿環境での定着性をさらに向上させるために、環境に応じて、定着温度を上昇又は下降させる制御を行う。
ステップS301からステップS319までの動作は、図12に示した第3の実施形態の制御フローにおけるステップS201からステップS219までの動作と同じである。ただし、定着温度を低下させる際に、第3の実施形態の最高25℃より低下幅の少ない15℃としている点が異なっている。なお、以下では第4の実施形態の特徴的動作を示すステップS320からステップS328を中心に説明する。
ステップS307は、転写電圧V0の値から高湿環境か否かを判定する。高湿環境でない場合、すなわち通常環境若しくは低湿環境である場合には、第3の実施形態の如く通常制御に移行せず、ステップS320へ進む。ステップS320は、転写電圧V0の値から通常環境か低湿環境かを判定する。すなわち、転写電圧V0が1.0kV以上である場合には、低湿環境であると判断してステップS321へ進む。なお、転写電圧V0が0.55kVから1.0kVの間にある場合には、通常環境と判定してステップS319の通常制御へ移行する。
ステップS321からステップS326の動作は、ステップS308からステップS313までの動作と同じであるが、閾値の算出に用いる式は異なる。ステップS327において、転写電圧Vが閾値B以上か否かを判定し、閾値B以上であれば低湿環境であると判定される。
ステップS328は、ステップS327で低湿環境であると判定されたことにより、定着温度を通常より10℃上昇させる。ステップS329において、記録材Pの先端が定着ニップへ突入し、ステップS317においてプリントを終了する。なお、第4の実施形態では、定着温度の上昇/低下幅を一律に10℃上昇/15℃低下に設定するものであったが、第3の実施形態のように、閾値と転写電圧Vとの差によって比例的に温度を上下させてもよい。
以上のように構成することにより、記録材の特性に応じて定着装置の温度設定を適切に制御することができ、紙詰まりや画像不良をおこすことのない画像形成装置を提供することができる。
なお、以上の説明においては、第3の実施形態の変形例として説明したが、第4の実施形態の如く定着温度を上昇/低下させる制御を、第1及び第2の実施形態における制御に適用することができることは言うまでもない。例えば、第1の実施形態に適用する場合には、検知した転写電圧Vが所定の閾値以上であって、さらに検知した記録材サイズが所定サイズ(例えばB5サイズ)以下であった場合に、定着温度を上昇させることで第4の実施形態と同様の制御を実現することができる。
(第5の実施形態)
第1〜第4の実施形態における定着温度制御部23は、感光ドラム1上のトナー像を記録材Pに転写する際に、直流電圧発生部18が印加する転写電圧Vに応じて、記録材Pが吸湿度の高い紙であるか否かを判断するものであった。これに対して、第5の実施形態における定着温度制御部23は、転写電流検知部31が検知する転写電流Iに応じて記録材Pが吸湿度の高い紙であるか否かを判断する。
第1〜第4の実施形態における転写電圧制御部19は、転写電流検知部31が一定電流を検知するように、直流高電圧発生部18が印加する転写電圧Vを制御する。第5の実施形態における転写電圧制御部19は、直流高電圧発生部18が一定の転写電圧Vtを印加する。
図14に、本発明の第5の実施形態に係る、レーザビームプリンタにおける定着装置11の温度設定制御を示す。ステップS401からステップS410までは、図6におけるステップS101からステップS110と同様である。
ステップS411において、転写電圧制御部19は、直流電圧発生部18が転写ローラ5に一定の転写電圧Vtを印加するよう転写定電圧制御を開始する。ステップS412において、転写電圧制御部19は、転写ローラ5に一定の転写電圧Vtが印加される際の、転写電流Iを検知すべく転写電流検知部31の検知結果を記憶する。
ステップS413でトップセンサ9にて記録材Pの先端が検知された後、ステップS414において、転写電圧制御部19は、ステップS412にて検知した転写電流Iが所定の閾値以上であるか否かを判断する。ここで、所定の閾値は、記録材Pの吸湿度が高いか否かを判断する値であり、ステップS405にて転写ローラ5に流した転写電流値をIo(=4μA)として1.2Ioとされる。ステップS412で検知した転写電流Iが所定の閾値1.2Ioよりも大きければ、吸湿度の高い記録材Pであるとして、ステップS415に進む。
ステップS415〜ステップS420については、図6におけるステップS115〜ステップS120と同様なので説明を省略する。以上説明したように、適切な定着装置の温度制御を行うことができる。
(第6の実施形態)
第2の実施形態は、複数の幅センサ9’を用いて、記録材Pの幅を検知して、検知した記録材Pの幅に応じて記録材Pの吸湿度が高いか否かを判断する。第6の実施形態においては、感光ドラム1上のトナー像を記録材Pに転写する際に、転写電圧制御部19は、直流高電圧発生部18が一定の転写電圧Vtを印加するようにする。さらに、閾値を1.2Io+Io・(200−紙幅(cm))/100とする。
第6の実施形態によれば、葉書や封筒といった小サイズ紙においても定着不良を起こさずに、高湿環境における積載性を満足する普通紙と小サイズ紙に適した最適な定着制御を実現することが可能となる。
(第7の実施形態)
図15に、本発明の第7の実施形態に係る、レーザビームプリンタにおける定着装置11の温度設定制御を示す。図15においてステップS501からステップS510までは、図12におけるステップS201からステップS210と同様である。
ステップS511において、転写電圧制御部19は、直流電圧発生部18が転写ローラ5に一定の転写電圧Vtを印加するよう転写定電圧制御を開始する。ステップS512において、転写電圧制御部19は、転写ローラ5に一定の転写電圧Vtが印加される際の、転写電流Iを検知すべく転写電流検知部31の検知結果を記憶する。
ステップS513において、転写電圧制御部19は、
閾値=1.2Io+Io・(200−紙幅(cm))/100−0.2Io×印字率(%)/100
として、定着温度を変更するか否かを判定する閾値を算出する。
ステップS514において、転写電圧制御部19は、ステップS512で検知した転写電流Iを上述した閾値と比較する。ステップS512で検知した転写電流Iが閾値以上であると、転写電圧制御部19は、記録材Pが吸湿度の高い記録材であると判断して、ステップS515へ進む。
ステップS515からステップS519は、図12におけるステップS215からステップS219と同様である。以上のように構成することにより、記録材の印字率に応じて定着装置の温度設定を適切に制御することができ、紙詰まりや画像不良をおこすことのない画像形成装置を提供することができる。
(第8の実施形態)
図16に、本発明の第8の実施形態に係る、レーザビームプリンタにおける定着装置11の温度設定制御を示す。図16においてステップS601からステップS610までは、図13におけるステップS301からステップS310と同様である。
ステップS611において、転写電圧制御部19は、直流電圧発生部18が転写ローラ5に一定の転写電圧Vtを印加するよう転写定電圧制御を開始する。ステップS612において、転写電圧制御部19は、転写ローラ5に一定の転写電圧Vtが印加される際の、転写電流Iを検知すべく転写電流検知部31の検知結果を記憶する。
ステップS613において、転写電圧制御部19は、
閾値C=1.2Io+Io・(200−紙幅(cm))/100−0.2Io×印字率(%)/100
として、定着温度を変更するか否かを判定する閾値Cを算出する。
ステップS614において、転写電圧制御部19は、ステップS612で検知した転写電流Iを上述した閾値Cと比較する。転写電流Iが閾値C以上であると、転写電圧制御部19は、記録材Pが吸湿度の高い記録材である判断として、ステップS615へ進む。
ステップS615からステップS619は、図13におけるステップS315からステップS319と同様である。ステップS620からステップS623は、図13におけるステップS320からステップS323と同様である。
ステップS624において、転写電圧制御部19は、直流電圧発生部18が転写ローラ5に一定の転写電圧Vtを印加するよう転写定電圧制御を開始する。ステップS625において、転写電圧制御部19は、転写ローラ5に一定の転写電圧Vtが印加される際の転写電流Iを検知すべく転写電流検知部31の検知結果を記憶する。
ステップS626において、転写電圧制御部19は、定着温度を変更するか否かを判定する閾値Dを算出する。ステップS627において、転写電圧制御部19は、ステップS625で検知した転写電流Iを上述した閾値Dと比較する。転写電流Iが閾値以下であると、転写電圧制御部19は、記録材Pが吸湿度の低い記録材であると判断して、ステップS628へ進む。
ステップS629は、図12におけるステップS329と同様である。以上のように構成することにより、記録材の印字率に応じて定着装置の温度設定を適切に制御することができ、紙詰まりや画像不良をおこすことのない画像形成装置を提供することができる。