以下、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、さらに詳しく説明する。
本発明のトナー用結着樹脂の調製に用いることのできる重合法としては、溶液重合法や懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。
このうち、溶液重合法は、キシレン、トルエンなどの溶剤を還流温度まで昇温し、これに重合開始剤や必要に応じて連鎖移動剤等を溶解した重合性単量体を滴下して重合を行う方法である。
また、懸濁重合法は、重合性単量体に重合開始剤や、必要に応じて多官能性単量体、連鎖移動剤等を加えた単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁させて造粒を行い、加熱することにより重合を行う方法である。
また、乳化重合法は、重合性単量体に必要に応じて多官能性単量体、連鎖移動剤等を加えた単量体組成物を、乳化剤を用いて微小な粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。
このようにして調製したトナー用結着樹脂に着色剤や荷電制御剤、ワックス等を加えて溶融混練した後、これを微粉砕し、分級することによって、いわゆる粉砕法トナーを製造することができる。
また、上述の乳化重合法によって調製した微小の重合体粒子と着色剤粒子、ワックス等を凝集させ、得られる二次粒子を融着させることによって、いわゆる乳化重合凝集法トナーを製造することができる。
さらに、上述の懸濁重合法において、単量体組成物中に予め着色剤や荷電制御剤、ワックス等、トナー粒子中に内包する必要のある物質を溶解あるいは分散させることによって、重合終了後の重合体粒子をそのままトナー粒子とする、いわゆる懸濁重合法トナーを製造することができる。
本発明者らは、トナーまたはトナー用結着樹脂の製造において、重合性単量体を主成分とする単量体組成物に、連鎖移動剤として特定の構造を有する有機硫黄化合物を含有させることにより、良好な低温定着性と耐高温オフセット性とを両立したトナーの実現が可能であることを見出し、本発明に至った。
ここで、本発明の一例としての懸濁重合法によるトナーについて説明する。
本発明に係る懸濁重合法トナーは、以下のように製造される。
まず、トナー組成物、すなわち結着樹脂となる重合性単量体に、少なくとも着色剤、および連鎖移動剤として分子中に少なくとも3個以上のチオール基を有する有機硫黄化合物を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機を用いてこれらを均一に溶解あるいは分散させた単量体組成物を調製する。このとき、上記単量体組成物中には、必要に応じて多官能性単量体や他の連鎖移動剤、また、離型剤や荷電制御剤、可塑剤、さらにその他の添加剤、例えば、高分子重合体や分散剤等を適宜加えることができる。
次いで、上記単量体組成物を、予め用意した分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁させ、造粒を行う。このとき、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望の粒子サイズとすることにより、得られるトナー粒子の粒度分布をシャープにすることができる。重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加剤を混合する際に同時に加えてもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に混合してもよい。また、造粒直後、重合反応を開始する前に、重合性単量体または他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
その後、得られた懸濁液を、通常の撹拌機を用い、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊や沈降が生じない程度に撹拌しながら重合反応を行う。重合反応後は、公知の方法によって濾過し、洗浄し、乾燥を行って本発明の懸濁重合法トナーが得られる。
本発明によれば、上記したような分子中に少なくとも3個以上のチオール基を有する有機硫黄化合物を連鎖移動剤として用いることにより、トナーを構成する結着樹脂中に分枝構造を有する高分子量成分を形成させることができる。このような分枝構造を有する高分子量成分は、その立体障害のために分枝同士が絡み合った物理的な架橋を形成し、適度なTHF不溶分をトナー粒子中に形成させることができるため、耐高温オフセット性を改善することができる。分子中のチオール基が2個以下の有機硫黄化合物を用いた場合には、このような分枝構造を有する高分子量成分は形成されず、耐高温オフセット性を改善することはできない。また、上記分枝構造を有する高分子量成分は連鎖移動反応によって形成されるものであるから、その結果、上記結着樹脂中には低分子量成分も同時に副生される。したがって、こうして得られるトナーは、低温定着性もまた改善することができる。
通常、多官能性単量体を用いて架橋構造を形成させると、架橋部位は複雑な三次元網目構造となり、少量の添加でも硬質で多量のTHF不溶分が形成されるため、低温定着性を阻害する傾向を示す。本発明によれば、上記した分枝構造を有する高分子量成分は、高分子鎖の末端が化学的な結合を有していないため、形成されるTHF不溶分は比較的軟質なものになると考えられる。したがって、上述したフィルム定着方式による定着時においても、トナー粒子が熱によって容易に変形するため、ワックスの染み出しが容易となり、低温定着性が阻害されないものと考えられる。
また、上記した分子中に少なくとも3個以上のチオール基を有する有機硫黄化合物を連鎖移動剤として用いた場合、一般に用いられている連鎖移動剤と比べると、ブロッキングや現像性の低下、感光体固着に影響を及ぼすような、極低分子量のポリマーやオリゴマーの生成が比較的少ない。したがって、本発明によれば、長期の使用における耐久性にも優れたトナーを得ることができる。
また、本発明において、トナーの耐高温オフセット性の改善効果を助長することを目的として、前記有機硫黄化合物に加えて多官能性単量体をさらに併用し、トナーを構成する結着樹脂中に架橋部位を形成させることができる。この場合、多官能性単量体の添加量は極僅かでよいため、低温定着性を阻害することなく、耐高温オフセット性をより効果的に改善することができる。
本発明において、トナーを構成する樹脂成分中の好ましいTHF不溶分量は、5〜50質量%である。THF不溶分量が5質量%未満になると耐高温オフセット性に対する改善効果が得られず、THF不溶分が50質量%を超えると低温定着性に対する改善効果が著しく損なわれてしまう。より好ましいTHF不溶分量の範囲は、10〜30質量%である。
また、本発明におけるトナーを構成する樹脂成分は、THF可溶分のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られる分子量分布において、5000〜50000の範囲にメインピークを有していることが好ましい。より好ましくは、10000〜30000の範囲である。
このように、本発明は、特定の構造を有する有機硫黄化合物によって発現される新たな作用効果により、低温定着性と耐高温オフセット性との両立を実現しようとするものであって、単に連鎖移動剤による分子量調整作用と多官能単量体による架橋反応とのバランスを調節することによって改善を図ろうとする、従来の技術とは異にするものである。
以上の通りであるから、本発明によれば、良好な低温定着性と耐高温オフセット性とを両立したトナーの実現が可能である。
ここで、THF不溶分量は、以下のようにして測定することができる。
まず、試料トナーを秤量し、円筒濾紙(例えば、東洋濾紙社製No.86R:サイズ28×100mm)に入れて、これをソックスレー抽出器に挿入する。抽出溶媒としてTHF200mlを用い、THFの抽出サイクルが約4〜5分に1回となるような還流速度で、20時間抽出を行う。抽出終了後、円筒濾紙を取り出して乾燥し、残留するトナー質量を秤量することによってTHF不溶分を算出する。トナー中に樹脂成分以外の磁性体や顔料のような不溶分を含有している場合は、円筒濾紙に入れたトナーの重量をW1とし、抽出されたTHF可溶樹脂成分の質量をW2とし、トナーに含まれている樹脂成分以外のTHF不溶成分の質量をW3としたとき、トナー中の樹脂成分のTHF不溶分は下記式を用いて算出する。
THF不溶分(質量%)=〔(W1−(W3+W2))/(W1−W3)〕×100
また、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による、分子量分布およびピーク分子量は、以下のようにして測定することができる。
まず、試料トナーをTHFに浸漬し、樹脂成分の濃度が0.05〜0.6質量%となるように抽出を行い、この抽出液を孔径0.5μmの耐溶剤性メンブランフィルターで濾過して試料溶液とする。次いで、カラムを40℃のヒートチャンバー中で安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを1ml/minの流速で流し、上記試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数の関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えばPressure Chemical Co.製あるいは東ソー製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を使用する。なお、カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適格に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組み合わせるのがよく、本発明においては、次の条件で測定される。
GPC測定条件
装 置 :HLC−8120GPC(東ソー製)
カラム :KF801,802,803,804,805,806,807
(Shodex製)
カラム温度:40℃
solv.:THF
本発明で使用される重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレンなどのスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル類、その他、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどの単量体が挙げられる。
これらの単量体は、単独もしくは混合して使用することができる。これらの単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいは他の単量体と混合して使用することが、トナーの現像特性および耐久性の点から好ましい。
本発明で使用される、分子中に少なくとも3個以上のチオール基を有する有機硫黄化合物としては、チオグリコール酸トリメチロールエタンエステル、β−メルカプトプロピオン酸トリメチロールエタンエステル、チオグリコール酸トリメチロールプロパンエステル、β−メルカプトプロピオン酸トリメチロールプロパンエステル、チオグリコール酸ペンタエリスリトールエステル、β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステルが挙げられる。
これらの有機硫黄化合物は、単独もしくは混合物として使用することができる。連鎖移動剤の好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.5〜10質量部であり、1〜3質量部であることがより好ましい。
また、本発明においては、上記有機硫黄化合物に加えて、他の連鎖移動剤を併用することができる。具体例としては、n−ペンチルメルカプタン、イソペンチルメルカプタン、2−メチルブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘプチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン、n−ペンタデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、t−ヘキサデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類、チオグリコール酸のアルキルエステル類、メルカプトプロピオン酸のアルキルエステル類、クロロホルム、四塩化炭素、臭化エチレン、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
これらの連鎖移動剤は必ずしも併用する必要はないが、併用する場合の好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.05〜3質量部である。
また、本発明においては、少量の多官能性単量体を併用することがより好ましい。多官能性単量体としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ジビニル化合物、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートなどの二重結合を2個有するカルボン酸エステル、または、ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物、さらに、3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。
これらの多官能性単量体を併用する場合の好ましい添加量は、重合性単量体100質量部に対して0.01〜1質量部である。
本発明で使用される重合開始剤としては、懸濁重合法の場合、油溶性重合開始剤として公知のアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤が挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが例示され、過酸化物系重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタンなどのパーオキシケタール、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド、その他として、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネートなどが挙げられる。
これらの重合開始剤の中でも、分解物の残留が少ない過酸化物系重合開始剤が好適に用いられる。また、これらの重合開始剤は、必要に応じて10時間半減期温度の異なる2種以上を併用することもできる。10時間半減期温度は、30〜100℃のものが特に好適に用いられる。
また、乳化重合法では、水溶性重合開始剤として過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素などが好適に用いられる。
本発明において、懸濁重合法では上記分散安定剤として、公知の界面活性剤や有機分散剤、無機分散剤が使用できる。これら中でも無機分散剤は有害な超微粉が生成しにくく、重合温度を変化させても安定性が崩れにくく、洗浄も容易でトナーに悪影響を与えにくいため、好適に使用することができる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛などのリン酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナなどの無機酸化物が挙げられる。
これら無機分散剤を用いる場合、そのまま水系媒体中に添加して用いてもよいが、より細かい粒子を得るため、該無機分散剤を生成し得る化合物を用いて水系媒体中にて無機分散剤粒子生成させて用いることもできる。例えば、燐酸カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウムが副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合による超微粒径トナーが発生しにくくなるので、より好都合である。無機分散剤は、重合終了後に酸あるいはアルカリを加えて溶解することにより、ほぼ完全に取り除くことができる。
また、これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2〜20質量部を単独で使用することが望ましいが、必要に応じて、0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用してもよい。該界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどが挙げられる。
本発明において使用される着色剤としては、公知のものが使用でき、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粉体、また、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180等が好適に用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254等が好適に用いられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が好適に用いられる。
これらの着色剤は単独または混合し、更には固溶体の状態で用いることができる。黒色着色剤として磁性粉体を用いた場合、その添加量は重合性単量体100質量部に対して40〜150質量部であることが好ましい。また、カラートナーの場合、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択され、その好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して1〜20質量部である。
これらの着色剤を懸濁重合法トナーに用いる場合、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要があり、必要に応じて表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を施すことが好ましい。
特に、染料系の着色剤やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので、使用の際には注意を要する。染料系の着色剤を表面処理する好ましい方法としては、予めこれら染料の存在下に重合性単量体を重合させる方法が挙げられ、得られた着色重合体を単量体系に添加する。カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他に、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサンでグラフト処理を行ってもよい。
また、磁性粉体は、四三酸化鉄、γ−酸化鉄などの酸化鉄を主成分とするものであり、一般に親水性を有しているため、分散媒としての水との相互作用によって磁性粉体が粒子表面に偏在しやすく、得られるトナー粒子は、表面に露出した磁性粉体のために流動性および摩擦帯電の均一性に劣るものとなる。したがって、磁性粉体はカップリング剤によって表面を均一に疎水化処理することが好ましい。使用できるカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられ、特にシランカップリング剤が好適に用いられる。
本発明のトナーは、定着性向上のために離型剤を含有することが好ましい。使用可能な離型剤としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムなどの石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスなど、天然ワックスおよびその誘導体などが挙げられる。誘導体には、酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物などが含まれる。さらに、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスなども使用できる。これらの離型剤は単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
これらの離型剤の中でも、示差熱分析による吸熱ピークが40〜130℃のもの、すなわち、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において昇温時に40〜130℃の領域に最大吸熱ピークを有するものが好ましく、さらには45〜120℃の領域に有するものがより好ましい。上記温度領域に最大吸熱ピークを有することにより、低温定着性に大きく寄与しつつ、離型性をも効果的に発現する。最大吸熱ピークが40℃未満であると離型剤成分の自己凝集力が弱くなり、結果として耐高温オフセット性が悪化する。また、定着時以外での離型剤の染み出しが生じやすくなり、トナーの帯電量が低下するとともに、高温高湿下での耐久性が低下する。一方、最大吸熱ピークが130℃を超えると定着温度が高くなり、低温オフセットが発生しやすくなるため好ましくない。さらに、懸濁重合法によって直接トナーを製造する場合、該最大吸熱ピーク温度が高いと、主に造粒中に離型剤成分が析出するなどの問題を生じ、離型剤の分散性が低下するため好ましくない。
離型剤の含有量は、バインダー樹脂に対し1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましい。離型剤の含有量が1質量%未満では、十分な添加効果が得られず、オフセット抑制効果も不十分である。一方、30質量%を超えると、長期間の保存性が低下するとともに、離型剤や着色剤など他のトナー材料の分散性が悪くなり、トナーの流動性の低下や画像特性の低下を招く。また、定着時以外にも離型剤成分の染み出しが生じるようになり、高温高湿下での耐久性に劣るものとなる。
また、本発明のトナーは、荷電特性を安定化するため、必要に応じて荷電制御剤を配合することができる。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、直接重合法によってトナーを製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物を実質的に含まない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤として、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンなどが挙げられる。また、ポジ系荷電制御剤として、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物などが挙げられる。
これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
また、懸濁重合法によってトナーを製造する場合、上述した単量体組成物中に樹脂を添加して重合を行ってもよい。例えば、単量体としては水溶性であり、水性懸濁液中では溶解して乳化重合を起こすために使用できなかったアミノ基、カルボキシル基、水酸基、グリシジル基、ニトリル基など親水基含有の単量体成分をトナー中に導入したい時などは、これらとスチレンあるいはエチレンなどのビニル化合物とのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などの形にして、あるいはポリエステル、ポリアミドなどの重縮合体、ポリエーテル、ポリイミンなどの重付加重合体の形にして使用することが可能となる。こうした極性官能基を含む高分子重合体をトナー中に共存させることによって、前述のワックス成分が相分離しやすくなり、より内包化が強力となるため、耐ブロッキング性、現像性の良好なトナーを得ることができる。
また、材料の分散性や定着性、あるいは画像特性の改良などを目的として上記以外の樹脂を単量体組成物中に添加してもよい。用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単独重合体やスチレン系共重合体などを単独で、あるいは混合して使用することができる。
さらに、重合性単量体を重合して得られるトナーの分子量範囲とは異なる分子量の重合体を、単量体組成物中に溶解して重合すれば、分子量分布の広い、耐オフセット性の高いトナーを得ることができる。
これら樹脂の添加量としては、重合性単量体100質量部に対して1〜20質量部が好ましい。1質量部未満では添加効果が小さく、20質量部以上添加すると重合トナーの種々の物性設計が難しくなる。
そして、本発明のトナーには、流動性向上剤が外部添加されていることが画質向上のために好ましい。流動性向上剤としては、ケイ酸微粉体、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの無機微粉体が好適に用いられる。これら無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイルまたはそれらの混合物などの疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として、あるいは磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。二成分系現像剤として用いる場合、混合するキャリアの平均粒径は10〜100μmであることが好ましく、現像剤中のトナー濃度は2〜15質量%であることが好ましい。
本発明によって得られるトナーの平均円形度は、0.970以上であることが好ましい。平均円形度とは、トナー粒子の凹凸度合いを表す指標であり、トナーが完全な球形の場合1.000を示し、表面形状が複雑になるほど小さな値となる。すなわち、平均円形度が0.970以上であるということは、トナー形状が実質的に球形であることを意味している。このような形状を有するトナーは、帯電が均一になりやすく、カブリやスリーブゴーストの抑制に効果的である。また、トナー担持体上に形成されるトナーの穂が均一であるため、現像部での制御が容易となる。さらに、球形であるが故に流動性も良好であり、現像器内でのストレスを受けにくいため、高湿度下での長期の使用においても帯電性が低下しにくい。そして、定着時においても熱や圧力がトナー全体に均一にかかりやすいため、定着性の向上にも寄与する。
なお、本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する方法として用いたものであり、東亞医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」を用いて測定を行い、3μm以上の円相当径の粒子群について求めたものである。
ここで、平均円形度(C)は、各粒子の円形度(Ci)を下式(1)によってそれぞれ求め、さらに下式(2)に示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数(m)で除した値として定義される。
但し、本発明に用いた測定装置「FPIA−1000」では、各粒子の円形度から平均円形度を算出するに当たって、求められた円形度の値によって円形度0.40から1.00の範囲を61分割した分割範囲に振り分けた後、各々の分割範囲の中心値とその時の頻度値を用いて算出する方法を用いている。この算出法で算出される平均円形度の値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出法によって算出される平均円形度の値との誤差は極めて少なく、実質的に無視できる程度のものであるため、一部変更したこのような算出法を用いても何ら問題はない。
測定手順としては、以下の通りである。
界面活性剤約0.1mgを溶解した水10mlに、試料トナー約5mgを分散させて分散液を調製し、該分散液に5分間超音波分散処理(20KHz、50W)を施した後、分散液濃度を5000〜2万個/μlとして前記装置により測定を行い、3μm以上の円相当径を有する粒子群の平均円形度を求める。なお、本測定において3μm以上の円相当径の粒子群についてのみ円形度を測定する理由は、3μm未満の円相当径の粒子群にはトナー粒子とは独立して存在する外部添加剤の粒子群も多数含まれるため、その影響によりトナー粒子群についての円形度が正確に見積もれないためである。
本発明によって得られるトナーの重量平均粒径は、より微小な潜像ドットを忠実に現像し、高画質な画像を得るため、3〜10μmであることが好ましい。重量平均粒径が3μm未満になると、転写効率の低下から感光体上の転写残トナーが多くなり、接触帯電工程における感光体の削れやトナー融着の抑制が難しくなる。また、トナー全体の表面積が増大することに加え、粉体としての流動性および撹拌性が低下し、個々のトナー粒子を均一に帯電させることが困難となることから、ゴースト、カブリ、転写性が低下する傾向となり好ましくない。一方、重量平均粒径が10μmを超えると、文字やライン画像に飛び散りが生じやすく、高解像度が得られにくくなる。また、装置が高解像度になっていくと、1ドットの再現性が悪化する傾向になる。
ここで、トナーの平均粒径および粒度分布は、コールターカウンターTA−II型あるいはコールターマルチサイザー(いずれもコールター社製)などを用いて測定することが可能である。本発明では、コールターマルチサイザーを用い、これに個数分布と体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)、およびPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続した。また、電解液には、1級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液を使用した。
測定法としては、前記電解液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。次いで、この電解液に超音波分散器で約1〜3分間分散処理を施し、前記コールターマルチサイザーにより、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて2μm以上のトナー粒子の体積および個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから、体積分布から求めた体積基準の重量平均粒径(D4)、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径、すなわち個数平均粒径(D1)を求める。
次に、本発明のトナーを好適に用いることのできる画像形成装置を、図に沿って具体的に説明する。ここでは、一例として、着色剤として磁性粉体を用いた磁性トナーに好適な画像形成装置を示した。
図1において、100は感光体ドラムで、その周囲に帯電ローラー117、現像装置140、転写ローラー114、クリーナー116、給紙ローラー124などが設けられている。感光体ドラム100は、帯電ローラー117によって−700Vに帯電される。次いで、レーザー発生装置121から照射されるレーザー光123によって露光される。こうして感光体ドラム100上に形成された静電潜像は、現像装置140によって磁性トナーで現像される。感光体ドラム100上のトナー画像は、転写材を介して感光体ドラム100に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像をのせた転写材は搬送ベルト125によって搬送され、定着装置126で定着される。また、一部感光体ドラム100上に残されたトナーは、クリーナー116によってクリーニングされる。現像装置140には、図1に示すように、感光体ドラム100に近接してアルミニウム、ステンレスなど非磁性金属で作られた円筒状のトナー坦持体102(以下、現像スリーブと称す)が配設され、感光体ドラム100と現像スリーブ102との間隙は、図示されないスリーブ/感光体間隙保持部材などによって約230μmに維持されている。現像スリーブ102内には、不図示のマグネットローラーが現像スリーブ102と同心的に配設、固定されており、現像スリーブ102のみ回転する構造となっている。マグネットローラーには、複数の磁極が具備されており、S1は現像、N1はトナーコート量規制、S2はトナーの取り込み/搬送、N2はトナーの吹き出し防止にそれぞれ寄与している。さらに、現像スリーブ102に付着して搬送される磁性トナー量を規制する部材として、弾性ブレードが配設されており、現像スリーブ102に対する当接圧により現像領域に搬送されるトナー量が制御される。現像領域では、感光体ドラム100と現像スリーブ102との間に直流および交流の現像バイアスが印加され、現像スリーブ102上の磁性トナーは、静電潜像に応じて感光体ドラム100上に飛翔して可視像となる。
以下、本発明の製造方法について、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定するものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、部数および%は、特に断りのない限り質量基準である。
<実施例1>
イオン交換水720部に0.1M−Na3PO4水溶液450部を投入し、撹拌しながら60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液68部を添加してさらに撹拌を続け、Ca3(PO4)2からなる分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
次いで、以下の処方をアトライター(三井三池化工機製)を用いて均一に分散混合し、単量体組成物を調製した。
スチレン : 80部
n−ブチルアクリレート : 20部
β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステル(チオール基数:4):3部
ジビニルベンゼン : 0.1部
飽和ポリエステル樹脂(エーテル化ビスフェノール−芳香族系多価カルボン酸重縮合体
,Mw:2万,Tg:60℃,酸価:10mg/KOH) : 8部
荷電制御剤(BONTRON(登録商標),E−84(オリエント化学社)): 1部
疎水性磁性酸化鉄 : 80部
上記単量体組成物を60℃に加温し、これにスチレン変性パラフィンワックス(DSCにおける吸熱ピークの極大値:74℃)10部を添加して混合溶解し、さらに重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート5部を溶解した。
これを前記水系媒体中に投入し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、60℃、窒素雰囲気下にて、10,000rpmで15分間撹拌して造粒を行った。
さらに、得られた懸濁液をパドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃にて8時間重合を行った。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて分散安定剤を溶解した後、濾過し、水洗および乾燥して重合体粒子を得た。
その後、ヘキサメチルジシラザンおよびシリコーンオイルで処理した、一次粒径12nm、BET比表面積が120m2/gの疎水性シリカ微粉体を用意し、上記重合体粒子100部に対して、該疎水性シリカ微粉体1部を加え、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)を用い、撹拌羽根の周速を40m/secとして3分間混合し、本発明のトナーを作製した。
<実施例2>
実施例1において、β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステルに代えて、β−メルカプトプロピオン酸トリメチロールプロパンエステル(チオール基数:3)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして本発明のトナーを作製した。
<実施例3>
実施例1において、ジビニルベンゼンの使用量を0.3部としたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のトナーを作製した。
<実施例4>
実施例1において、β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステルの使用量を1部としたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のトナーを作製した。
<比較例1>
実施例1において、β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステルに代えて、エチレンビス3−メルカプトプロピオン酸(チオール基数:2)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例のトナーを作製した。
<比較例2>
実施例1において、β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステルに代えて、n−ドデシルメルカプタン(チオール基数:1)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例のトナーを作製した。
<比較例3>
実施例1において、β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステルに代えて、n−ドデシルメルカプタンを使用し、ジビニルベンゼンの使用量を1.0部としたこと以外は、実施例1と同様にして比較例のトナーを作製した。
<比較例4>
実施例1において、β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステルを使用せず、ジビニルベンゼンの使用量を1.0部としたこと以外は、実施例1と同様にして比較例のトナーを作製した。
これらのトナーの評価には、画像形成装置としてキヤノン製レーザービームプリンターLBP−1760を改造し、概ね図1に示される構造のものを使用した。
定着装置としては、オイル塗布機能のない、フィルムを介してヒーターにより加熱圧着するフィルム定着方式のものを使用した。このとき、加圧ローラーには、フッ素系樹脂の表面層を有する直径30mmのものを使用した。定着温度は180℃とし、ニップ幅を7mmに設定した。また、定着性の評価には、同様の構成の外部定着器を用いた。
なお、転写材としては75g/m2の紙を使用した。
具体的な評価方法と、その判断基準は、以下の通りである。評価は、すべて常温常湿環境下(23℃,60%RH)にて行った。
(1)画像濃度
画像濃度はベタ画像部を形成し、このベタ画像をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定を行った。
(2)転写効率
ベタ黒画像転写後の感光体ドラム上の転写残トナーをマイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、これを紙上に貼リ付けてマクベス濃度を測定し、その値をAとし、転写後定着前のトナーの載った紙上にマイラーテープを貼リ付けてマクベス濃度を測定し、その値をBとし、未使用の紙上にマイラーテープのみを貼リ付けてマクベス濃度を測定し、その値をCとした。転写効率は、近似的に以下の式により算出した。
転写効率(%)=(B−A)/(B−C)×100
上記の計算式から得られた転写効率を以下の基準で判断した。
A:転写効率が96%以上
B:転写効率が92%以上,96%未満
C:転写効率が89%以上,92%未満
D:転写効率が89%未満
(3)カブリ
カブリの測定は、東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用して測定した。フィルターはグリーンフィルターを用い、下式により算出した。
カブリ(%)=標準紙の反射率(%)−サンプル非画像部の反射率(%)
なお、カブリの判断基準は以下の通りである。
A:非常に良好(1.5%未満)
B:良好(1.5%以上,2.5%未満)
C:普通(2.5%以上,4.0%未満)
D:悪い(4%以上)
(4)定着性
単位面積当たりのトナー載り量を0.7mg/cm2に調整したベタ画像部を形成し、定着器の設定温度を130〜230℃の範囲で順次昇温し、5℃毎に定着画像を出力した。得られた定着画像は、4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の低下率が10%以下となる温度を定着開始温度とした。また、高温オフセット温度については、定着画像面上の非画像部および紙裏の汚れの有無を、目視にて観察し、評価した。
実施例1乃至4、および比較例1乃至4で作製した各トナーについて、物性値を表1にまとめて示した。また、表2には、定着性の評価結果および、印字率2%の横線のみからなる画像パターンで2000枚の画出し耐久試験を行った後の画像濃度、転写効率、カブリの各評価結果をそれぞれまとめて示した。
表1に示すように、3個以上のチオール基を有する有機硫黄化合物を用いた本発明の実施例1および実施例2のトナーは、いずれもTHF不溶分が適度に形成されていることがわかる。これに対し、チオール基が2個以下の有機硫黄化合物を用いた比較例1および比較例2のトナーは、ともにTHF不溶分が形成されにくいことがわかった。
また、表2に示すように、本発明の実施例1および実施例2のトナーは、いずれも低温定着性、耐高温オフセット性ともに優れており、広い定着領域を有していることがわかった。また、画出し耐久試験後の画像特性も良好であった。また、実施例3および実施例4から明らかなように、本発明のトナーは、THF不溶分量の変動に対しても、比較的安定した性能を維持することがわかった。
これに対し、比較例1および比較例2のトナーは、低温定着性には優れるものの、早期に高温オフセットが発生し、定着領域の狭いものであった。また、耐久試験後の画像特性の劣化も顕著であった。一方、連鎖移動剤を使用せず、多官能性単量体のみを用いた比較例4のトナーは、耐高温オフセット性には優れるものの、低温定着性の低下が著しく、さらに、従来の連鎖移動剤と多官能性単量体との組み合わせによる比較例3のトナーも、本発明のトナーに比べると定着領域は狭いことがわかった。
<実施例5>
イオン交換水200部にポリビニルアルコール0.2部を溶解し、これにスチレン75部、n−ブチルアクリレート25部、β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステル(チオール基数:4)5部、及び重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキサイド2部を添加し、懸濁分散液とした。
窒素雰囲気下、上記懸濁分散液を80℃に昇温して重合を開始し、さらに、この温度に24時間保持して重合反応を完結させた。反応終了後、懸濁分散液を冷却し、濾別し、水洗および乾燥して、本発明のトナー用結着樹脂を得た。
<比較例5>
実施例5において、β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステルに代えて、t−ドデシルメルカプタンを使用したこと以外は、実施例5と同様にして比較例のトナー用結着樹脂を作製した。
<比較例6>
実施例5において、β−メルカプトプロピオン酸ペンタエリスリトールエステルを使用せず、ジエチレングリコールジメタクリレート1.0部を使用したこと以外は、実施例5と同様にして比較例のトナー用結着樹脂を作製した。
実施例5および比較例5、比較例6で作製したトナー用結着樹脂について、各々100部に対し、カーボンブラック5部、ニグロシン化合物1部、スチレン変性パラフィンワックス(DSCにおける吸熱ピークの極大値74℃)3部を加え、ヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に加熱した2軸混練押出し機によって溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した後、風力分級機で分級した。
こうして得られた微粉体100部に対し、ヘキサメチルジシラザンおよびシリコーンオイルで処理した、一次粒径12nm、BET比表面積が200m2/gの疎水性シリカ1部を加え、ヘンシェルミキサーを用い、撹拌羽根の周速を40m/secとして3分間混合し、トナーを作製した。
これらのトナーの評価には、画像形成装置としてキヤノン製複写機FC−2を改造し、定着器を温度可変となるようにしたものを使用した。
表3には、定着性の評価結果および、2000枚の画出し耐久試験を行った後の画像劣化の評価結果をそれぞれ示した。なお、評価は、すべて常温常湿環境下(23℃,60%RH)にて行った。
表3から明らかなように、本発明のトナー用結着樹脂を使用したトナーは、低温定着性、耐高温オフセット性ともに優れており、広い定着領域を有している。また、画出し耐久後の画像特性も良好であることがわかった。