JP4583902B2 - 自動車ダッシュボード用エア分配システムおよび自動車ダッシュボード - Google Patents

Description

本発明は、自動車ダッシュボード用のエア分配システムに関し、空調エア源からのエアフローを受け入れるように設計された主ダクトと、主ダクトから分岐して、ダッシュボードに設けられたエア流出開口部で終端する複数の副ダクトとを備えるタイプのものである。

今まで生産された上記タイプのエア分配システムでは、自動車のウインドウスクリーン内面に、及び／又はフロント部で乗員室に向かって、及び／又は乗員室の床に向かって下向きにエアフローを方向付けするために、流出開口部がダッシュボードの様々なエリアに分布している。既に提案され使用されているエア分配システムは、空調システムから来るエアフローを「ウインドウスクリーン」「フロント部」「床」のエリアに設けられた流出開口部に分配できることに加えて、運転手のエリアと運転手の横に座る乗客のエリアとの間でエアフローの温度に差を付けることも可能であり、さらに上記３つのエリアに設けられた開口部から出てくるエアフローの温度に差を付けることも可能であり、エアコンによって供給される全く同一の温度設定としている。このタイプのシステムは、例えば、本出願人名義による先のイタリア特許出願ＴＯ２００３Ａ００００３６に記載され図示されており、これは本願の提出日において未公表である。

本発明の目的は、「ウインドウスクリーン」「フロント部」「床」エリア間の差別化に関する点と、「運転手」「乗客」エリア間の差別化に関する点と、さらに運転手や乗客にとってダッシュボードの中央エリアと自動車のサイドウインドウに隣接したエリアとの間の差別化に関する点で、ダッシュボードの様々な開口部から出てくるエアフローを差別化する可能性に関して高い自由度が得られる自動車ダッシュボード用のエア分配システムを提供することによって、先に提案したシステムをさらに改良することである。

本発明の更なる目的を形成するのは、ダッシュボードの様々な開口部から出てくるエアフローの特性、エアフローの温度だけでなくエア流量に関しても差別化する可能性について高い自由度を特徴とするシステムである。

本発明のさらに他の目的は、上述の特徴を提示し、簡単で効率的な様々な流出開口部に向けたエア分配のためのシステムが設けられたエア分配システムを提供することである。

上記の目的を達成するため、本発明の主題は、空調エア源からのエアフローを受け入れるように設計された主ダクトと、主ダクトから分岐して、ダッシュボードに設けられたエア流出開口部で終端する複数の副ダクトとを備え、
前記主ダクトは、複数の副ダクトを分岐させるマニホールド(manifold)と連結しており、
マニホールドから分岐した各副ダクトは、続いて、ダッシュボードでの個別の開口部となって終端する複数の末端ダクトに分岐しており、
各副ダクトには、各副ダクトから分岐した複数の末端ダクトの間でエアフローを分配するための分配装置が取り付けられ、
各副ダクトには、エアフローの少なくとも１つの特性を制御するための独立した制御ユニットが取り付けられた自動車ダッシュボード用のエア分配システムである。

上述の制御ユニットは、少なくとも、ファンユニットからなり、エア流量を調整するためのユニット、または、加熱手段を備え、エアの温度を調整するためのユニット、あるいは上記ファンユニットおよび上記加熱ユニットの両方を備える。

好ましい実施形態では、各ファンユニットは、各副ダクトに取り付けられたファンと、ファンユニットを制御するための電気モータとを備え、別の副ダクトに取り付けられた別のファンユニットから独立して制御可能である。

好ましい実施形態の場合、上記加熱ユニットは、好ましくは、副ダクト内で、好ましくはファンの下流側に設置された電気抵抗器で構成される。

さらに、各副ダクトに取り付けられた分配装置は、コアンダ(Coanda)効果によって、副ダクトのエアフローを１つ以上の末端ダクトに偏向させるための偏向手段を備える。

自動車ダッシュボードでコアンダ効果のエア分配システムを使用することは、例えば、欧州特許出願第０２７３８４８７．４号において本出願人が既に提案している。コアンダ効果は、ダクトから出てくるエアフローが、フロー近傍に設置された壁に「付着する」ようになる現象である。前記現象を研究することによって、上記副ダクトの各々を横切るエアフローの方向に影響を与えて、それぞれ選択された末端ダクトに配向させることが可能になる。好ましくは、コアンダ効果に基づくフロー偏向のための手段は、少なくとも１つの第１可動エレメントを備える。第１可動エレメントは、各副ダクトの壁において末端ダクトの入り口近傍に設けられ、副ダクトでのフローと干渉しない第１の位置と、前記フローに突出する第２の位置との間で変位可能である。その結果、前記第１可動エレメントの第１の位置では、エアの流出が第１の末端ダクトに入って、コアンダ効果によってこの第１の壁に付着するようになる。一方、前記第１可動エレメントの第２の位置では、再びコアンダ効果によって、フローが、第１の壁に対向する第２の壁に付着するようになる。

本発明の更なる特徴によれば、コアンダ効果による偏向手段は、さらに第２可動エレメントを備える。第２可動エレメントは、前記第２の壁に配置され、フローと干渉しない第１の位置と、フローに突出する第２の位置との間で、上述した第１可動エレメントと同期して移動可能であり、その結果、第１可動エレメントが第１の位置にある場合は、第２可動エレメントは第２の位置となり、第１可動エレメントが第２の位置にある場合は、第２可動エレメントは第１の位置となる。

さらに、上述の好ましい実施形態では、第１および第２可動エレメントは、単一のアクチュエータによって制御される単一の可動部材の一部を形成する。アクチュエータは、例えば、電磁アクチュエータ、圧電アクチュエータ、形状記憶アクチュエータなど、何れのタイプのものでもよい。

本発明の更なる特徴によれば、副ダクトから分岐する２つの末端ダクトの先頭端部を分離するエリアには、エア循環通路の入り口が設けられる。エア循環通路は、２つの末端ダクトのうちの１つでのエア循環を発生するような形状であり、フローが別の末端ダクトに偏向する場合、前記末端ダクトの入り口でのフローを妨害する。このようにして、主たるフローの一部が、選択していない末端ダクトに漏れることによる損失が減少し、あるいは全て除去される。システムが、エア循環を既に生成していた末端ダクトの選択位置に切り替わった場合、第１の末端ダクトは、同様なシステムによって、あるいは前記ダクトに隣接した可動エレメントに適切な整列を付与することによって、マスキングされる。

本発明の更なる特徴および利点は、単なる非限定な例を示した添付図面を参照しつつ、裏付ける明細書から明らかとなろう。

図１において、参照番号１は、概略的に図示した自動車のダッシュボードを全体として指示するもので、ここにエア分配システム２が設けられる。システム２は、主ファン４およびヒータ／蒸発器５を含むエアコンシステムからのエアを受け入れる主ダクト３を備える。主ダクト３は、マニホールド(manifold)またはレール６となって終端し、そこから４つの副ダクト７に分岐し、ダッシュボードに沿って平行に分配されており、運転手側の１つのペアと乗客側の１つのペアとなり、各ペアは、ダッシュボードの中央部分に近接したダクトと、自動車のサイドウインドウ寄りのダクトとを備える。各副ダクト７は、３つの末端ダクト８，９，１０に分岐しており（図２も参照）、これらは自動車の乗員室でのエア流出開口部となって終端している。特に、ダクト８は、ウインドウスクリーンの基部に配置されて、ウインドウスクリーンの内表面にエアフローを方向付けるための開口部１１を供給している。ダクト９は、ダッシュボードの正面に配置されて、自動車の乗員室に向けてエアを方向付けるための１つ以上の開口部１２となって終端している。ダクト１０は、乗員室の床に向けてエアフローを方向付ける１つ以上の開口部１３となって終端している。

各副ダクト７が３つの末端ダクト８，９，１０に分岐しているエリアには、末端ダクト間でエアフローを分配するための手段が設けられ、これは詳しく後述する。

本発明の重要な特徴は、各副ダクト７には、エアフローについての少なくとも１つの特性を制御するための追加的な独立のユニットが設けられることである。特に、図示した実施形態の例では、各副ダクト７には、エアの流量を調整するためのユニット１４と、エアの温度を調整するためのユニット１５とが取り付けられる。図示した例では、ユニット１４は、電気制御モータ付きのファンを備え、一方、ユニット１５は、電気抵抗器が挿入されたダクトセクションを備える。

従って、本発明に係るエア分配システムは、開口部１１，１２，１３から出てくるエアフローの流量及び／又は温度の制御が各副ダクト７ごとに可能になり、即ち、図示した例では、運転手エリアと乗客エリアを別個に、そして、各エリアにつきダッシュボードの中央エリアとウインドウの近接エリアを別個に制御可能になる。

図４〜図６は、各副ダクト７から、分岐する末端ダクト８，９，１０に入るエア分配が制御される手法を示す。

前記図面に関して、第１の末端ダクト８は、副ダクト７の対応した壁７ａの延長部に設置された第１の湾曲壁８ａを有する。前記壁に対応した位置において、ダクトには、可動エレメント１６が取り付けられ、壁７ａの関節軸１７の回りに揺動するように搭載され、図４に見えるような第１の位置と図５に見えるような第２の位置との間で変位可能である。図４に示すように、第１の位置では、可動エレメント１６は副ダクト７からの来るエアフローＦと干渉しなくなり、前記フローは、壁７ａ，８ａに「付着した(stuck)」状態となって、第１の末端ダクト８に進入する。図５に示すように、可動エレメント１６の第２の位置では、前記可動エレメントがフローＦの中に突出して、前記フローをコアンダ効果によって、壁８ａに対向して２つの末端ダクト９，１０の入り口に配置された湾曲壁８ｂに付着させる。

末端ダクト８と２つの末端ダクト９，１０の入り口８ｃとの間でより効率的なフロー分配を得るために、可動エレメント１８がさらに設けられ、これは、フローＦと干渉しない第１の位置（図５に示す）と、フローＦの中に突出した第２の位置（図４に示す）との間で変位可能である。２つの可動エレメント１６，１８は、同期制御される必要があり、可動エレメント１６がその第１の位置にある場合は、可動エレメント１８はその第２の位置にあり（図４）、一方、第１の可動エレメント１６がその第２の位置にある場合は、第２の可動エレメント１８はその第１の位置にある（図５）。これは、図示した例の場合、可動エレメント１６および可動エレメント１８が、ダクト７の構造に対して軸１７回りに関節接合された単一の部材１９の一部を形成していると、極めて簡単に実現できる。図７に示すように、部材１９は、可動エレメント１６を規定する羽根付き部と、羽根１６に対してほぼ直交して剛性で結合し、可動エレメント１８を構成する屈曲した交差部材を含むＵ字部とを備える。

図４に示した状態では、可動エレメント１８は、フローＦの壁８への付着を促進して、フローＦが壁８ｂに付着した状態になるのを防止している。図５に示した状態では、エレメント１８は、フローＦを妨害していないことから、このフローはコアンダ効果によって壁８ｂに付着するのが可能になる。

図４〜図６に示すように、上述のものと全く類似した第１の可動エレメント１６および第２の可動エレメント１８を含む可動部材１９が更に、２つの末端ダクト９，１０の入り口８ｃに対応する位置に設けられる。この第２の可動部材の動作モードは、上述のものと全く類似している。図５に示す状態では、前記第２の可動部材は、コアンダ効果によって、末端ダクト９の第１の湾曲壁９ａへのフロー付着を支援して、フローが前記ダクトに進入するようになる。一方、図６に示す状態では、末端ダクト１０の湾曲した壁１０ａへのフロー付着を支援して、フローが前記ダクトに進入するようになる。さらに、この場合、可動エレメント１８は、入り口８ｃに進入すべき主フローＦの可能性ある部分と干渉する機能（図４に示す状態）を果たし、入り口８ｃを妨害する循環運動Ｃ（図４）を付与して、ダクト９，１０において望ましくないエア漏れを最小まで低減している。

同じ目的で、末端ダクト８および末端ダクト９の入り口に対応した位置には、エア循環通路２０が設けられ、これは、図５および図６にそれぞれ示した状態において、可能性ある望ましくないエア漏れが、フローの方向付けされたダクトを妨害するエア循環Ｃを生じさせるような形状をなす。

可動部材１９は、例えば、電磁アクチュエータ（図８に示すアクチュエータ４０など）、圧電アクチュエータ、形状記憶アクチュエータなど、何れのタイプのアクチュエータによって制御される。

図８は、部材１９の変形例を示し、可動エレメント１８を規定するＵ字部が、フローを真っ直ぐにする機能を持つ羽根２１を有している。

当然ながら、本発明の原理に偏見を持つことなく、構成の詳細および実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく、単に例として説明し図示したものに関して広範に変更することができる。

本発明に係るエア分配システムの基礎となる原理を示す図である。 本発明に係る自動車ダッシュボード用のエア分配システムの概略的部分斜視図である。 図２の詳細を拡大した図である。 本発明に係るシステムを別々の動作状態で示すもので、図３の詳細を拡大した断面図である。 本発明に係るシステムを別々の動作状態で示すもので、図３の詳細を拡大した断面図である。 本発明に係るシステムを別々の動作状態で示すもので、図３の詳細を拡大した断面図である。 図４〜図６の詳細の概略斜視図である。 図７に示す部品のアクチュエータの概略図である。 図７の変形例を示す。

符号の説明

２ エア分配システム
４ 主ダクト
６ マニホールド
７ 副ダクト
８，９，１０ 末端ダクト
１１，１２，１３ エア流出開口部
１４ ファンユニット
１５ 加熱ユニット
１６，１８ 可動エレメント
１９ 可動部材

Claims (10)

1. 空調エア源からのエアフローを受け入れるように設計された主ダクト（３）と、
   主ダクト（３）から分岐して、ダッシュボード（１）に設けられたエア流出開口部（１１，１２，１３）で終端する複数の副ダクト（７）とを備える自動車のダッシュボード（１）用のエア分配システムであって、
   前記主ダクト（３）は、複数の副ダクト（７）を分岐させるマニホールド（６）と連結しており、
   マニホールド（６）から分岐した各副ダクト（７）は、ダッシュボード（１）での個別の流出開口部（１１，１２，１３）となって終端する複数の末端ダクト（８，９，１０）に分岐しており、
   各副ダクト（７）には、各副ダクトから分岐した複数の末端ダクト（８，９，１０）の間で、副ダクト（７）を横断するエアフローを分配するための分配装置が取り付けられ、
   各副ダクト（７）には、副ダクト（７）を横断するエアフローの少なくとも１つの特性を制御するための独立した制御ユニットが取り付けられており、
   前記制御ユニットは、副ダクト（７）を横断するエアの温度を制御するための加熱ユニット（１５）を備え、
   各副ダクト（７）に取り付けられた分配装置は、コアンダ効果によってエアフローを偏向させるための偏向手段を備え、
   コアンダ効果による前記偏向手段は、第１可動エレメント（１６）を備え、第１可動エレメント（１６）は、副ダクト（７）の壁（７ａ）に末端ダクト（８；１０）の入り口近傍に設置され、副ダクト（７）でのフローと干渉しない第１の位置と、副ダクト（７）でのエアフロー（Ｆ）の中に突出する第２の位置との間で変位可能であり、
   上記第１可動エレメント（１６）が第１の位置にある場合は、フロー（Ｆ）は前記第１の末端ダクト（８）に進入して、コアンダ効果によって、副ダクト（７）の前記壁（７ａ）の延長部に設置された末端ダクト（８）の第１の壁（８ａ）に付着するようになり、
   さらに第１可動エレメント（１６）が第２の位置にある場合は、エアフロー（Ｆ）は、コアンダ効果によって、前記第１の壁（８ａ）に対向した壁（８ｂ）に付着するようになり、
   コアンダ効果による前記偏向手段は、前記第２の壁（８ｂ）に配置された第２可動エレメント（１８）を備え、第２可動エレメント（１８）は、上記エアフロー（Ｆ）と干渉しない第１の位置と、前記フロー（Ｆ）の中に突出する第２の位置との間で変位可能であり、
   前記第１可動エレメントおよび第２可動エレメントは、互いに同期して変位可能であり、第１可動エレメント（１６）がその第１の位置にある場合、第２可動エレメント（１８）はその第２の位置にあり、一方、第１可動エレメント（１６）がその第２の位置にある場合、第２可動エレメント（１８）はその第１の位置にあることを特徴とするエア分配システム。
2. 前記制御ユニットは、副ダクト（７）を横断するエアの流量を制御するためのファンユニット（１４）を備えることを特徴とする請求項１記載のエア分配システム。
3. 前記制御ユニットは、副ダクト（７）を通過するエアの流量を制御するためのファンユニット（１４）と、副ダクト（７）を横断するエアの温度を制御するための加熱ユニット（１５）とを備えることを特徴とする請求項１記載のエア分配システム。
4. 第１および第２可動エレメント（１６，１８）は、単一の可動部材（１９）の一体的部分を形成していることを特徴とする請求項１記載のエア分配システム。
5. 各可動エレメント（１６，１８，１９）を制御するためのアクチュエータ手段が設けられることを特徴とする請求項４記載のエア分配システム。
6. 前記アクチュエータ手段は、電磁制御手段、圧電制御手段、形状記憶制御手段および流体制御手段の中で選ばれることを特徴とする請求項５記載のエア分配システム。
7. 前記可動部材（１９）は、前記副ダクト（７）の構造に、軸（１７）回りで揺動するように搭載されていることを特徴とする請求項４記載のエア分配システム。
8. ２つの末端ダクト（８，９）の先頭端部を分離するエリアには、エア循環通路（２０）の入り口が設けられ、
   エア循環通路（２０）は、２つの末端ダクトのうちの１つ（８）でのエア循環を発生するような形状であり、フローが別の末端ダクト（９）に偏向する場合、前記末端ダクト（８）の入り口でのフローを妨害することを特徴とする請求項１記載のエア分配システム。
9. 請求項１〜８のいずれかに記載のエア分配システムを備えることを特徴とする自動車用ダッシュボード。
10. 請求項９記載のダッシュボードを備えることを特徴とする自動車。

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