JP4583501B2 - マイタケ抽出物及びこれを含むヒアルロン酸(ヒアルロナン)産生を促進するための組成物 - Google Patents

マイタケ抽出物及びこれを含むヒアルロン酸(ヒアルロナン)産生を促進するための組成物 Download PDF

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Description

本発明は、マイタケ抽出物及びこれを含むヒアルロン酸(ヒアルロナン)産生を促進するための組成物に関する。
マイタケのエタノール抽出物としては、これまでチロシナーゼ阻害効果、α−アミラーゼ阻害効果、皮膚湿潤効果、免疫低下抑制効果が知られている(特許文献1〜3)。
また、本発明者は、乾燥マイタケ子実体の純エタノール抽出物が、ヒトおよびハムスター皮脂腺において皮脂生合成促進に起因した皮脂産生・分泌促進作用を示すこと、また乾皮症患者に対し皮膚病態の臨床的改善効果をもたらすことを出願している。すなわち、乾燥マイタケ子実体の純エタノール抽出物が、皮脂産生促進に起因して皮膚バリアー機能を改善し、日常的なスキンケアーはもとより疾患予防・治療にも有効であることを出願している。
一方、皮膚のアンチエイジングには皮膚構造タンパク質であるコラーゲン、肌に柔軟性や弾力性を与えるエラスチンおよび肌の保湿機能を司るヒアルロン酸などの細胞外マトリックス(ECM)関連分子の生合成調節が重要である(非特許文献1)。そして、これら細胞外マトリックス(ECM)関連分子が皮膚の真皮に存在する線維芽細胞を主たる産生細胞としていることは知られている。
しかし、乾燥マイタケ子実体の純エタノール抽出物による細胞外マトリックス(ECM)関連分子の発現調節については全く知られていなかった。そこで、正常ヒト皮膚線維芽細胞において、乾燥マイタケ子実体の純エタノール抽出物によるコラーゲン、エラスチンやヒアルロン酸の産生調節をそれらの遺伝子レベルで解析したところ、驚くべきことに乾燥マイタケ子実体の純エタノール抽出物がヒアルロン酸合成酵素の発現を促進、すなわちヒアルロン酸(ヒアルロナン)の産生を促進することを見出した。
特開平2−121905号公報 特開2000−319192号公報 特開平11−263732号公報 Baumann L. Skin ageing and its treatment. J. Pathol. 211: 241-251, 2007
本発明は、より効果的にヒアルロン酸(ヒアルロナン)の産生を促進するマイタケ抽出物及びそれを含む組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、乾燥マイタケの純エタノール抽出物(マイタケ由来エタノール抽出物)が優れたヒアルロン酸産生の促進効果を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)乾燥マイタケを純エタノールにより抽出して得られるマイタケ抽出物;
(2)乾燥マイタケの水分含量が8重量%以下である、(1)記載のマイタケ抽出物;
(3)純エタノールが99.0容量%以上のエタノールを含有する、(1)又は(2)記載のマイタケ抽出物;
(4)(1)〜(3)のいずれか1項記載のマイタケ抽出物を含有する、ヒアルロン酸産生を促進するための組成物;
(5)化粧料の形態にある、(4)記載の組成物;
(6)医薬の形態にある、(4)記載の組成物;
(7)
(a)上記(1)記載のマイタケ抽出物をクロロホルム-メタノール(19:1)に溶解すること、
(b)上記マイタケ抽出物の溶解液を、クロロホルム-メタノール(19:1)で平衡化した順相シリカゲルカラムに添加すること、
(c)クロロホルム-メタノール(19:1)、クロロホルム-メタノール(9:1)、クロロホルム-メタノール(4:1)、メタノールの順番で溶出すること、
(d)溶出物の一部を薄層シリカゲルでクロロホルム-メタノール(9:1)で展開すること、および
(e)Rf値が、1.0≧Rf値>0.45および/または0.07>Rf値≧0の溶出物を得ること、
を含む、Rf値が1.0≧Rf値>0.45および/または0.07>Rf値≧0のヒアルロン酸産生促進溶出物の製造方法;
(8)上記(7)記載の製造方法で得られた、Rf値が1.0≧Rf値>0.45および/または0.07>Rf値≧0のヒアルロン酸産生促進溶出物。
本発明により、ヒアルロン酸(ヒアルロナン)の産生を効果的に促進することができるので、ヒアルロン酸(ヒアルロナン)の減少を伴う皮膚の障害・異常や疾患、ヒアルロン酸(ヒアルロナン)の減少を伴う関節の障害・異常や疾患、ヒアルロン酸(ヒアルロナン)の減少を伴う眼障害・異常や眼疾患を効果的に改善できる。
ヒト皮膚線維芽細胞におけるマイタケ抽出物によるヒアルロン酸合成酵素(HAS)の遺伝子発現促進を示す。*:対未処理群(p<0.05)。 ヒト皮膚線維芽細胞におけるI型コラーゲンα1 mRNA発現に対するマイタケ抽出物の作用を示す。***:対未処理群(p<0.001)。 ヒト皮膚線維芽細胞のエラスチンmRNA発現に対するマイタケ抽出物の作用を示す。*:対未処理群(p<0.05)。 ヒト皮膚線維芽細胞のヒアルロン酸(HA)産生に対するマイタケ抽出物の促進作用を示す。4MU(4-メチルウンベリフェロン、HAS阻害剤)。*および**:対未処理群(p<0.05および0.01)。##および###:対マイタケ抽出物(100 μg/ml)処理群(p<0.01および0.001)。 ヒト皮膚線維芽細胞のヒアルロン酸(HA)産生に対するマイタケ抽出物の分画成分(M1〜M5)の促進作用を示す。IL-1 (interleukin 1、10 ng/ml)。*および**:対未処理群(p<0.05および0.01)。 ヒト皮膚線維芽細胞におけるproMMP-1およびTIMP-2遺伝子発現に対するマイタケ抽出物およびその分画成分の作用を示す。 ヒト線維芽細胞をマイタケ抽出物またはその分画成分(M1-M5) (n=1/処理)で24時間処理した。回収した細胞におけるproMMP-1 (A)およびTIMP-2 mRNA 発現(B) を定量した。マイタケ抽出物はproMMP-1 mRNA発現を促進したが、逆にTIMP-2遺伝子発現を抑制した。 M5は、proMMP-1およびTIMP-2 mRNA発現にはほとんど影響しなかった。一方,proMMP-1遺伝子発現はM2およびM3により促進され、TIMP-2遺伝子発現はM1により抑制された。さらに、interleukin 1α (IL-1) (10 ng/ml)はproMMP-1 mRNA発現を促進したが、TIMP-2遺伝子発現には影響を及ぼさなかった。 ヒト皮膚線維芽細胞におけるproMMP-1(A)およびTIMP-2(B)産生に対するマイタケ抽出物の促進作用を示す。IL-1 (interleukin 1、10 ng/ml)。*および**:対未処理群(p<0.05および0.01)。 ヒト線維芽細胞をマイタケ抽出物M5分画成分(M5-1-M5-8) (n=1/処理)で24時間処理した細胞における培養液中ヒアルロン酸量を定量した。M5-3〜M5-8において、ヒアルロン酸量の増加が観察された。IL-1 (interleukin 1、10 ng/ml)。 マイタケ抽出物含有クリームによる被験者5の治療前と後の皮膚の写真である。
本発明は、乾燥マイタケを純エタノールにより抽出して得られるマイタケ抽出物に関する。
本発明におけるマイタケは、サルノコシカケ科マイタケ属(Polyporaceae Grifola)のきのこをいい、マイタケ(Grifola frondosa)、白マイタケ(Grifola albicans)、チョレイマイタケ(Grifola umbellatus)、トンビマイタケ(Grifola gigantean)等が例示できる。本発明におけるマイタケは、好ましくはグリフォラ・フロンドーサである。マイタケは、子実体及び菌糸体のいずれでもよいが、子実体が好ましい。
抽出原料の乾燥マイタケは、10重量%以下の水分含量を有するマイタケをいう。乾燥マイタケは、好ましくは8重量%以下、より好ましくは7重量%以下の水分含量を有する。乾燥マイタケは、生マイタケを任意の方法(例えば、天日乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等)により脱水・乾燥することにより得ることができる。乾燥マイタケは、粉末の形態にあるものが好ましい。
本発明における純エタノールは、15℃でエタノールを98.0容量%以上含有するエタノールをいう。純エタノールは、好ましくは99.0容量%以上、より好ましくは99.5容量%以上のエタノールを含む。
乾燥マイタケの純エタノールによる抽出は、原料である乾燥マイタケに純エタノールを加えた後、常温で又は加熱下で、一定時間攪拌することにより行う。加熱温度は、通常エタノールの沸点以下の温度であるが、密閉容器中では120℃以下の温度とすることもできる。好ましい抽出温度は、常温(室温)である。抽出時間は、特に限定されないが、例えば5分〜10時間程度である。抽出は、1回又は2回以上行うことができる。
抽出における乾燥マイタケに対する純エタノールの使用量は、乾燥マイタケ100重量部に対して、純エタノールを100〜1000重量部、好ましくは200〜600重量部、より好ましくは300〜500重量部である。
抽出処理後、濾紙又は濾布による濾過又は遠心分離などの分離手段により純エタノール抽出液を得ることができる。
本発明におけるマイタケの純エタノール抽出物は、上記のエタノール抽出液の状態であってもよい。あるいは、純エタノール抽出物は、抽出液から常法によりエタノールを全面的に又は部分的に除去した抽出エキスの状態であってもよい。すなわち、エタノールを実質的に含まない抽出粉末又はエタノールを1〜50重量%含む抽出エキスの状態でもよい。10〜15重量%のエタノールを含む抽出エキスは、保存性がよいことから、好ましい態様である。純エタノール抽出物は、乾燥マイタケに対して2〜10重量%、より特定的には3〜5重量%(固形分として)の収量で得られる。純エタノール抽出物中の有効成分は不明であるが、純エタノール抽出物は、リン脂質、植物性ステロイドが含まれている。
本発明は、上記抽出物を含むヒアルロン酸(ヒアルロナン)産生を促進するための組成物を包含する。
ヒアルロン酸は、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種で、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸が結合した二糖が繰り返す構造をしており、次式:
(式中、nは、1以上の整数である)
で表すことができる。また、ヒアルロン酸は、ヒアルロナンとも呼ばれる。
本発明の組成物は、食品、特にヒアルロン酸産生を促進するための食品の形態を含む。
本発明の組成物はヒアルロン酸産生を促進するため、皮膚の保湿性を保ち、皮膚に潤いや柔軟性及び弾力性を与えることができ、また、紫外線による表皮の損傷防御や修復、さらに皮膚再生をも惹起することができる。したがって、本発明は、化粧料の形態にある、上記抽出物を含むヒアルロン酸産生を促進するための組成物を包含する。
化粧料の形態にある本発明の組成物は、化粧料に配合される慣用の担体、賦形剤、添加物等を含み得る。肌荒れ防止用、肌のきめの改善用、肌の柔軟性の改善用、肌の弾力性の改善用、肌のシワやたるみの改善用、肌の保湿性の改善用等の化粧料として使用することができる。化粧料の剤形としては、洗顔用(洗顔クリーム・フォーム・ジェル化粧料など)、整肌用(ローション・美容液など)、保護用(ミルク・モイスチャークリームなど)、パック・オイル・マッサージ化粧料、ベースメイク用(ファンデーション・白粉などサンスクリーン・日焼け化粧料など)、ポイントメイク用(口紅・アイシャドウ・アイライナーなど)、浴用(ソープ・ボディシャンプー・入浴用化粧料など)、サンケア用(サンスクリーン・日焼け化粧料など)、育毛・養毛用(育毛料・ヘアトニックなど)が挙げられる。これらの化粧料にマイタケ抽出物を有効量、例えばエキス(エタノールを実質的に含まない状態のマイタケ抽出物)換算で0.1〜99.9重量%、好ましくは1〜99重量%配合する。残りの部分には、慣用の担体、賦形剤、または添加剤等を配合する。
さらに、本発明における抽出物は、ヒアルロン酸産生の減少を伴う皮膚障害又は皮膚疾患に対して改善効果を有する。また、本発明における抽出物は、ヒアルロン酸産生の減少を伴う関節障害又は関節疾患に対して改善効果を有する。また、本発明における抽出物は、ヒアルロン酸の減少を伴う眼障害・異常や眼疾患に対して改善効果を有する。したがって、本発明は、上記ヒアルロン酸産生の減少を伴う障害又は疾患を治療または予防するための、医薬の形態にある組成物を包含する。
ヒアルロン酸産生の減少を伴う皮膚障害又は皮膚疾患には、乾皮症(乾燥肌)、魚鱗癬、光老化、乾癬、アトピー性皮膚炎、褥瘡(床ずれ)や火傷による皮膚機能不全症などが挙げられる。好ましくは、光老化、乾癬、アトピー性皮膚炎、褥瘡(床ずれ)や火傷による皮膚機能不全症である。
また、ヒアルロン酸産生の減少を伴う関節障害又は関節疾患には、変形性関節症や関節リウマチなどが挙げられる。好ましくは、変形性関節症や関節リウマチである。
また、ヒアルロン酸産生の減少を伴う眼障害又は眼疾患には、角膜上皮障害、眼精疲労やドライアイなどが挙げられる。好ましくは、ドライアイである。ドライアイとは、涙が不足したり、涙の成分が変化することで目の表面に障害が生じる状態を意味し、涙液分泌減少症や乾性角膜結膜炎が含まれる。
本発明で用いられる、治療や予防の対象は、哺乳動物、例えば、ヒト、犬、猫等の愛玩動物、ウシ、ブタ、ニワトリ等の家畜動物であるが、特にヒトであることが望ましい。
医薬の形態にある本発明の組成物は、医薬に配合される慣用の担体、賦形剤、添加物等を含み得る。医薬の剤形は、たとえば、クリーム、舌下剤、マッサージ油、溶液、懸濁液、ローション、軟膏、ゲル、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、坐剤等を挙げることができる。これらの医薬に、マイタケ抽出物(エタノールを実質的に含まない状態)を有効量、例えば0.1〜99.9重量%、好ましくは1〜99%配合する。残りの部分には、慣用の担体、賦形剤、または添加剤等を配合する。
化粧料または医薬に配合される慣用の担体、賦形剤、または添加剤等には、溶媒、植物油(例えば、アーモンド油、ヒマシ油、カカオ脂、ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、パーム油、落花生油、ケシの実油、菜種油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、および茶の実油などの食用油)、鉱油、脂肪油、流動パラフィン、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、キレート剤、抗酸化剤、安定化剤、乳化剤、懸濁化剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、坐剤基剤、浸透促進剤、芳香剤、および皮膚保護剤などが挙げられる。
溶媒には、水、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、液体ポリアルキルシロキサンおよびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
緩衝剤には、クエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、リン酸水素、ジエチルアミンンおよびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
湿潤剤には、グリセリン、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビトール、乳酸、尿素、BG(1,3-ブチレングリコール)、ダイズステロールおよびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
キレート剤には、EDTAナトリウム、クエン酸およびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
抗酸化剤には、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸およびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体、システイン、ならびにそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
乳化剤には、天然ゴム(例えば、アカシアゴム)、トラガカントゴム、キサンタンガム;天然ホスファチド(例えば、ダイズレシチン);モノオレイン酸ソルビタン誘導体;羊毛脂;羊毛アルコール;ソルビタンエステル;モノグリセリド;脂肪アルコール(例えばベヘニルアルコール);脂肪酸エステル(例えばトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ステアリン酸グリセリル(SE)のような脂肪酸のトリグリセリド);およびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
懸濁化剤には、セルロースおよびその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、カラゲナン、アカシアゴム、アラビアゴム、トラガカントおよびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
ゲル基剤および増粘成分には、流動パラフィン、ポリエチレン、脂肪油、コロイドシリカまたはアルミニウム、亜鉛セッケン、グリセロール、プロピレングリコール、トラガカント、カルボキシビニルポリマー、ケイ酸マグネシウム-アルミニウム、親水性ポリマー(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび他のセルロース誘導体などのセルロース誘導体)、水膨潤性親水コロイド、カラゲナン、ヒアルロン酸塩(例えば、塩化ナトリウムを選択的に含むヒアルロン酸ゲル)、アルギン酸エステル(例えば、アルギン酸プロピレングリコール)およびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
軟膏基剤には、蜜蝋、パラフィン、セタノール、パルミチン酸セチル、セテアリルアルコール ステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸、ステアリン酸PEG-150、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル、ポリエチレングリコール、脂肪酸のソルビタンエステルと酸化エチレンとの間の縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)およびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
疎水性軟膏基剤には、パラフィン、植物油、動物脂、合成グリセリド、ろう、ラノリン、液体ポリアルキルシロキサンおよびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
親水性軟膏基剤には、固体マクロゴール(ポリエチレングリコール)などが挙げられるが、これに限定されることはない。さらに、慣用の担体、賦形剤、または添加剤等には、スクワラン、レシチン、水添レシチン、テトラへキシルデカン酸アスコルビル、アラントイン、グリチルリチン酸2K、グリコシルトレハロース、加水分解水添デンプン 加水分解コラーゲン バラエキス、ジメチコン、カプリリルグリコール、ベタイン、ステアロイルグルタミン酸Na、ノバラ油、バチルアルコール、ハイドロプロキシプロリンなどが挙げられる。
本発明の医薬組成物は、さらにヒアルロン酸産生の減少を伴う疾患もしくは障害の治療または予防ための他の薬剤を含んでもよい。
本発明で用いられる、ヒアルロン酸産生の減少を伴う疾患もしくは障害を治療または予防するために有効な投与量は、疾患もしくは障害の程度、投与方法によって異なり、ヒアルロン酸産生を促進するために有効な量であれば限定されないが、マイタケ抽出物(エタノールを実質的に含まない抽出粉末の形態)の量が、0.1〜1000mg/体重kg・日、好ましくは1〜500mg/体重kg・日、より好ましくは10〜100mg/体重kg・日である。
本発明で用いられる、投与は、全身投与、局所投与であってよく、全身投与、局所投与は、経皮投与、舌下投与、経口投与、経腸投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈投与、経鼻投与、点眼などいずれの投与形態であってもよい。好ましくは、経皮投与、舌下投与、点眼である。
したがって、本発明は、上記の医薬組成物を製造するための、マイタケ抽出物の使用に関するものである。また、本発明は、上記の医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、ヒアルロン酸産生を促進することによるヒアルロン酸産生の減少を伴う疾患もしくは障害を治療または予防するための方法にも関するものである。
以下、実施例等により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1、マイタケ抽出物の製造
マイタケの滅菌乾燥粉末(水分含量:6重量%、ホクト(株)製のマイタケ)1000gに純エタノール(水分量:99.5容量%以上)4000gを加え、20℃の温度にて18時間にわたり攪拌しながら抽出した。残渣を遠心分離により除去し、得られた上澄を濾紙により濾過した。得られた濾液からエタノールを蒸発・除去して、マイタケの純エタノール抽出物(収量43.2g、内固形分37.2g及びエタノール6.0g)を得た。
2、ヒト線維芽細胞の培養および処理方法
正常ヒト線維芽細胞NB1RGB(RCB0222)は、(独)理化学研究所バイオリソースセンターより購入し、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)含有Dulbecco's modified Eagle's medium(DMEM、インビトロジェンより購入)を用いて培養した。また、マイタケ抽出物処理は血清非存在下で実施した。すなわち、60 mm dishに培養したconfluentのヒト線維芽細胞をマイタケ抽出物または細胞外マトリックス合成促進因子であるtransforming growth factor β(TGF-β)(20 ng/ml、R&Dシステムズより購入)を含む0.2%(v/v)lactalbumin hydrolysate(LAH、シグマ・アルドリッチより購入)/DMEMにて24時間培養した。
3、リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(Real-time reverse transcriptase-polymerase chain reaction(real-time RT-PCR))法
(1)全RNAの抽出
細胞からの全RNAの抽出は、Isogen(ニッポンジーンより購入)を用いて添付の操作法に従い行った。すなわち、マイタケ抽出物またはTGF-βにて培養した細胞にIsogen(0.8 ml)を添加して細胞を溶解し、その溶解液にクロロホルム(0.16 ml)を添加して混和した。遠心分離(10000回転/分、10分間)後、上層の水層画分を回収し、さらに回収した水層と同容量のイソプロパノールを添加して混和した。遠心分離(10000回転/分、10分間)後、上清を除去して沈殿したRNAを回収した。回収したRNAをさらに75容量%のエタノール(0.8 ml)を添加して混和した。遠心分離(10000回転/分、10分間)後、上清を完全に除去してRNAを風乾させた。抽出した全RNAは核酸分解酵素不含滅菌蒸留水に溶解し、260 nmにおけるその吸光度を分光光度計(UV-1600、島津製作所社製)を用いて測定することにより定量した。なお、本全RNAの抽出は、Isogenを用いなくとも、Chomczynski P and Sacchi Nの報告(Chomczynski, P. and Sacchi, N. Single-step method of RNA isolation by acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction. Anal. Biochem. 162:156-159(1987))に記載の方法に基づいて実施することもできる。
(2)逆転写酵素反応
QuantiTectR Reverse Transcription Kit(QIAGENより購入)を用い, 添付の操作法に従った。すなわち、全RNA(1 μg)に7 x gDNA Wipeout Bufferを加えて総量を14 μlとし、42℃で2分間ゲノムDNA除去反応を行った。続いて、このゲノムDNA除去反応液全量に5 x Quantiscript RT Buffer、RT Primer MixおよびQuantiscript Reverse Transcriptase(RT)を加えて総量を20 μlとし、42℃で15分間逆転写反応を行った。次に、95℃、3分間の熱処理にて反応を停止させ、一本鎖cDNAを合成した。
なお、本逆転写酵素反応は、QuantiTectR Reverse Transcription Kitを用いなくとも、次の方法に基づいて実施することもできる。すなわち、抽出したRNA溶液に混在するDNAは、DNase反応溶液(40 mM Tris-HCl, 2 mM MgCl2, 0.3 mM CaCl2, pH 7.9)においてdeoxyribonuclease(5 unist)と反応させることで除去できる。また、抽出したRNA(1 μg)を含む水溶液11 μlに、5 x 反応溶液(250 mM Tris-HCl, 200 mM KCl, 30 mM MgCl2, 50 mM dithiothreitol, pH 8.3)4 μl、deoxyribonucleotide mixture溶液(dATP, dGTP, dCTP, dTTPを各10 mM含む)2 μl、oligo dT primer(50 pmol/μl)1 μl、RNase inhibitor(20 units/μl)1 μl、RT(Reverse Transcriptase、50 units/μl)1 μlを添加して全量20 μlとして、37℃、1時間反応させることで相補的DNA(cDNA)を合成できる。
(3)リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
RT反応により合成した一本鎖cDNAを鋳型とし、ヒトヒアルロン酸合成酵素(HAS)プライマーキット(QuantiTect(登録商標)Primer Assays、QIAGENより購入)、またヒトI型コラーゲンα1に特異的なプライマー、ヒトエラスチンに特異的なプライマーおよびヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)に特異的なプライマーを用いてリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を行った。すなわち、RT反応溶液を滅菌蒸留水にて40倍希釈し、その希釈液2 μlに滅菌蒸留水を3 μl、SYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM II(タカラバイオより購入)を6.25 μl、HASプライマーキットを1.25 μlを添加し全量を12.5 μlとして、Thermal Cycler Dice(登録商標)Real Time System(タカラバイオ製)を用いて45サイクル(1サイクル:94℃で5秒間; 60℃で30秒間)のPCR反応を行った。
ヒトI型コラーゲンα1、ヒトエラスチンまたはヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)については、HASプライマーキットの代わりに、それぞれのセンスプライマー(各10 μM;配列番号1、3,5)0.625 μlおよびアンチセンスプライマー(各10 μM;配列番号2、4,6)0.625 μlを添加して同様に行った。
結果は、GAPDHを内標準遺伝子として比較Ct法(ΔΔCt法)を用いて相対的に定量した。ΔΔCt法とは、増幅DNA産物がある量に達するのに必要なサイクル数が分かれば初期量を算出できる、という理論に基づいた方法であり、PCRの鋳型となる相補的DNA(cDNA)の初期量をサイクル数として表すことができる。この方法では、1サイクルの検出の違いが、2倍の遺伝子量の差であるという理論(2-ΔΔCt)を使用する。したがって、ΔΔCt法では基準となる遺伝子(内標準遺伝子)と比較して、未知検体のサイクル数の増減から未知検体の遺伝子量を相対定量することができる。
購入したヒトHAS(カタログ番号 QT00027510)プライマーキット以外の使用したプライマーは次の通りである。
ヒトI型コラーゲンα1(Accession No. NM_000088.3):センスプライマー(配列番号1)、5'-CAGCAGATCGAGAACATCCG-3'およびアンチセンスプライマー(配列番号2)、5'-TCTTGAGGTCACGGCAGGTG-3';
ヒトエラスチン(Accession No. M36860.1):センスプライマー(配列番号3)、5'-TGGACTTGGAGTTGGTGTCG-3'およびアンチセンスプライマー(配列番号4)、5'-CAGGCACTGCTGCTCCATATTT-3';
ヒトGAPDH(Accession No. M33197.1):センスプライマー(配列番号5)、5'-GGTGAAGGTCGGAGTCAACG-3'およびアンチセンスプライマー(配列番号6)、5'-GGCAACAATATCCACTTTACCAGA-3'。
これらのプライマーは、オペロンバイオテクノロジー(株)に合成依頼して作製した。
なお、本リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、QuantiTect(登録商標)Primer Assaysを用いなくとも、次に記載のPCR法に基づいて実施することもできる。すなわち、RT反応後のcDNA含有溶液(2 μl)に、10 x PCR反応溶液(100 mM Tris-HCl, 15 mM MgCl2, 500 mM KCl, pH 8.3)5 μl、deoxyribonucleotide mixture溶液(dATP, dGTP, dCTP, dTTPを各10 mM含む)2 μl、センスプライマー(10 μM)2 μl、アンチセンスプライマー(10 μM)2 μl、Taq DNA polymerase(100 units/μl)0.5 μl、滅菌蒸留水36.5 μlを加えて全量を50 μlとして、PCR法を実施する。PCR反応は、92℃40秒、60℃40秒、72℃60秒を1サイクルとして、35〜45サイクル実施する。合成されたDNAは0.5 μg/mlのエチジウムブロミドを含む2重量%アガロースゲルを用いた電気泳動により分離し、紫外線照射により合成されたDNAを比較定量する。
また、ヒトヒアルロン酸合成酵素(HAS)プライマーは、キットのプライマーの代わりに以下の配列のプライマー:
HASセンスプライマー(配列番号7):5'-GTGTTATACATGTCGAGTTTACTTCC-3'
HASアンチセンスプライマー(配列番号8):5'-GTCATATTGTTGTCCCTTCTTCCGC-3'
(Yamada, Y., Itano, N., Hata, K., Ueda, M., and Kimata, K. Differential regulation by IL-1beta and EGF of expression of three different hyaluronan synthases in oral mucosal epithelial cells and fibroblasts and dermal fibroblasts: quantitative analysis using real-time RT-PCR. J. Invest. Dermatol. 122:631-639, 2004.)を用いて実施することができる。
(4)統計処理
Fisherの多変量分散分析法により各処理間の有意差検定を実施した。
4.実験結果
(1)正常ヒト線維芽細胞において、マイタケ抽出物は濃度依存的にHAS mRNA発現を促進することが明らかとなった(図1)。すなわち、HAS mRNA量は100 μg/mlのマイタケ抽出物において5.4倍、200 μg/mlにおいて22.4倍、400 μg/mlにおいて23.0倍それぞれ有意に増加した。また、TGF-β(20 ng/ml)もHAS mRNA発現を9.3倍促進した。
(2)図2に示したように、マイタケ抽出物はI型コラーゲンα1鎖の遺伝子発現には影響しないことが判明した。一方、TGF-β(20 ng/ml)はそのmRNA発現を有意に促進した(2.4倍)。
(3)図3に示したように、マイタケ抽出物はエラスチンmRNA発現には影響しないことが明らかとなった。一方、TGF-β(20 ng/ml)はそのmRNA発現を有意に促進した(4.9倍)。
5.考察
正常ヒト皮膚線維芽細胞において、マイタケ抽出物は皮膚構造タンパク質のコラーゲンおよびエラスチンの遺伝子発現には影響しないものの、肌に潤いを与えるヒアルロン酸の合成酵素であるHAS遺伝子発現を促進することを初めて明らかにした。したがって、マイタケ抽出物は内因性保湿因子であるヒアルロン酸(Carruthers J, Carruthers A. Hyaluronic acid gel in skin rejuvenation. J. Drugs Dermatol. 5:959-964, 2006.)の生合成を促進することで肌の潤いを増強するヒアルロン酸産生促進物質(ヒアルロン酸産生促進剤)であると強く示唆される。また、マイタケ抽出物は、線維芽細胞に働きかけ、それを活性化することで、加齢と伴に減少するヒアルロン酸を内面から補充するアンチエイジング効果を発揮するものと期待される。さらに、マイタケ抽出物によるヒアルロン酸産生促進作用は、ヒアルロン酸の低下を伴う変形性関節症、関節リウマチ及びドライアイの予防、治療にも有効性を示すものと期待される。
実験方法
1、実施例1で調製したマイタケ抽出物からの分画成分の調製
順相シリカゲル(BW-300、(株)富士シリシア化学製;内径35 mm x 280 mmのガラス製オープンカラム使用)を用いたカラムクロマトグラフィー法により、実施例1で調製したマイタケ抽出物(8.88g)を、15 mlのクロロホルム-メタノール(19:1)に溶解し、順相シリカゲルに添加後、順次移動相を変えながら(クロロホルム-メタノール(19:1、1000 ml使用)→クロロホルム-メタノール(9:1、800 ml使用)→クロロホルム-メタノール(4:1、800 ml使用)→メタノールのみ(1000 ml使用))分離して、約60 mlずつ分取した。分取した1番目のフラクションをFr1とし、全60フラクションを分離した。次に、分離した全フラクション(Fr1-60)から一部を取って、薄層シリカゲル(TLC)プレート(10 cm x 10 cm 、Silica gel 60F254 #1.05715.0009、メルク製)において展開溶媒(クロロホルム-メタノール(9:1))を用いて展開(展開距離:8 cm)した。分離成分はTLCプレートをUV (254 nm)照射後、10%硫酸試薬を噴霧し、さらに加熱することで検出した。その結果、同一成分群からなる以下の5分画(M1〜M5)を得た(表1)。すなわち、相対移動度(Rf値)が0.98≧Rf値≧0.50のフラクションをM1、Rf値が0.45≧Rf値≧0.29のフラクションをM2、Rf値が0.28≧Rf値≧0.16のフラクションをM3、Rf値が0.13≧Rf値≧0.07のフラクションをM4、Rf値が0.07>Rf値≧0のフラクションをM5として纏めた。また、各分画成分は減圧乾固後の収量として風袋消去法により算出した。なお、各成分を100% EtOHにて400 mg/mlに調整して細胞培養系に添加した。
実験方法
1、実施例2で調製したマイタケ抽出物分画5(M5)の分画成分の調製
順相シリカゲル(BW-300、(株)富士シリシア化学製;内径40 mm x 300 mmのガラス製オープンカラム使用)を用いたカラムクロマトグラフィー法により、実施例2で調製したマイタケ抽出物分画5(M5)(1.2 g)を、20 mlのクロロホルム-メタノール-水(4:1:0.1)に溶解し、順相シリカゲルに添加後、順次移動相を変えながら(クロロホルム-メタノール-水(4:1:0.1、1700 ml使用)→メタノールのみ(300 ml使用))分離して、約50 mlずつ分取した。分取した1番目のフラクションをFr1とし、全38フラクションを分離した。次に、分離した全フラクション(Fr1-38) から一部を取って、薄層シリカゲル(TLC)プレート(10 cm x 10 cm、 Silica gel 60F254 #1.05715.0009、メルク製)において展開溶媒(クロロホルム-メタノール-水(4:1:0.1))を用いて展開(展開距離:8 cm)した。分離成分はTLCプレートをUV (254 nm)照射後、10%硫酸試薬を噴霧し、さらに加熱することで検出した。その結果、同一成分群からなる以下の8分画(M5-1〜M5-8)を得た(表2)。すなわち、相対移動度(Rf値)が0.32≧Rf値≧0.12のフラクションをM5-1、Rf値が0.24≧Rf値≧0.11のフラクションをM5-2、Rf値が0.39≧Rf値≧0.11のフラクションをM5-3、Rf値が0.39≧Rf値≧0.15のフラクションをM5-4、Rf値が0.20≧Rf値≧0.15のフラクションをM5-5、Rf値が0.19≧Rf値≧0.05のフラクションをM5-6、Rf値が0.11≧Rf値≧0.05のフラクションをM5-7、Rf値0のフラクションをM5-8として纏めた。また、各分画成分は減圧乾固後の収量として風袋消去法により算出した。なお、各成分を100% EtOHにて200 mg/mlに調整して細胞培養系に添加した。
ヒト線維芽細胞の培養および処理方法
正常ヒト線維芽細胞NB1RGB(RCB0222)は、(独)理化学研究所バイオリソースセンターより購入し、10% (v/v)ウシ胎仔血清(FBS)含有Dulbecco's modified Eagle's medium (DMEM)を用いて培養した。マイタケ抽出物およびその分画成分(M1〜M5、M5-1〜M5-8)の処理は血清非存在下で実施した。すなわち、24 well multiplateまたは60 mm dishに培養したconfluentのヒト線維芽細胞を、マイタケ抽出物(25-400 μg/ml)、その分画成分(100-400 μg/ml)、またはインターロイキン1α(10 ng/ml、DSファーマバイオメディカル製)を含む0.2% (v/v) lactalbumin hydrolysate (LAH))/DMEMにて24または48時間処理した。
さらに、HA(ヒアルロン酸)生合成調節を調べるために、HAS阻害剤の4-メチルウンベリフェロン(4MU) (0.1-1 mM、シグマ・アルドリッチ製)存在下において同様にマイタケ抽出物処理を行った。
2、Real-time reverse transcriptase-polymerase chain reaction (real-time RT-PCR)法
(1)全RNAの抽出
細胞からの全RNAの抽出および全RNAの定量は、実施例1の3の(1)に記載のように行った。
(2)逆転写酵素反応
得られた全RNAを用いて、実施例1の3の(2)に記載のように1本鎖cDNAを合成した。
(3)リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
RT反応により合成した一本鎖cDNAを鋳型とし、ヒト前駆体コラゲナーゼ1 (procollagenase 1/proMMP-1プライマーキット(QuantiTect(登録商標)Primer Assays、カタログ番号 QT00014581、QIAGENより購入)、ヒト組織性マトリックスメタロプロテアーゼインヒビター2 (TIMP-2) プライマーキット (QuantiTect(登録商標)Primer Assays、カタログ番号 QT00017759、QIAGENより購入)およびヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH) (配列番号5、6)に特異的なプライマーを用いて、実施例1の3の(3)に記載のようにSYBR(登録商標) Premix Ex TaqTM II (タカラバイオより購入)により添付の操作法に従い、45サイクル(1サイクル:94℃で5秒間; 60℃で30秒間)のPCRを行うことで各cDNAを増幅した。結果はGAPDHを内標準遺伝子としてΔΔCt法を用いて相対的に定量した。
ヒト前駆体コラゲナーゼ1 (procollagenase 1/proMMP-1)、ヒト組織性マトリックスメタロプロテアーゼインヒビター2 (TIMP-2)についてのPCRは、実施例1の3の(3)におけるヒトHASプライマーキットの代わりに、上記のプライマーキットを用いて実施例1の3の(3)と同様に行った。また、プライマーキットの代わりに、以下のそれぞれのセンスプライマー(各10 μM;配列番号9、11)0.625 μlおよびアンチセンスプライマー(各10 μM;配列番号10、12)0.625 μlを添加して実施例1の3の(3)と同様に行ってもよい。
ヒトproMMP-1プライマーは、キットのプライマーの代わりに以下の配列のプライマー:
proMMP-1センスプライマー(配列番号9):5'-GGTGATGAAGCAGCCCAG-3'
proMMP-1アンチセンスプライマー(配列番号10):5'-CAGTAGAATGGGAGAGTC-3'
(Lin, N., Sato, T., Takayama, Y., Mimaki, Y., Sashida, Y., Yano, M., and Ito, A. Novel anti-inflammatory actions of nobiletin, a citrus polymethoxy flavonoid, on human synovial fibroblasts and mouse macrophages. Biochem. Pharmacol. 65:2065-2071, 2003.)を用いて実施することができる。
ヒトTIMP-2プライマーは、キットのプライマーの代わりに以下の配列のプライマー:
TIMP-2センスプライマー(配列番号11):5'-GGTACCAGATGGGCTGCGAG-3'
TIMP-2アンチセンスプライマー(配列番号12):5'-TTGGAGGCCTGCTTA-3'
(Hirata, M., Sato, T., Tsumagari, M., Shimada, A., Nakano, H., Hashizume, K., and Ito A. Differential regulation of the expression of matrix metalloproteinases and tissue inhibitors of metalloproteinases by cytokines and growth factors in bovine endometrial stromal cells and trophoblast cell line BT-1 in vitro. Biol. Reprod. 68:1276-1281, 2003.)を用いて実施することができる。
3、DNA定量
細胞内DNA量はJohnson-WintとHollisの方法(Johnson-Wint, B., and Hollis, S. A rapid in situ deoxyribonucleic acid assay for determining cell number in culture and tissue. Anal. Biochem. 122: 338-344, 1982.)に従い測定した。すなわち、上記1で処理した細胞を0.25% (w/v) trypsin/0.02% (w/v) EDTA溶液(1.5 ml)を用いて各処理ごとに回収した。得られた細胞懸濁液を氷冷下、密閉式超音波細胞破砕装置 (コスモ・バイオ製) により 200 W、6 秒の超音波処理を 5 分間行ない試料溶液とした。試料溶液(100 μl)を160μlの3,5-diaminobenzoic acid dihydrochloride溶液(400 mg/ml)(シグマ・アルドリッチ製)と混合後、60℃、45 分間反応させた。反応終了後、1 N塩酸を1.5 ml添加し、試料溶液中の蛍光強度(励起波長:430 nm、蛍光波長:535 nm)をマイクロプレートリーダー(インフィニットF200、テカンジャパン製)にて測定した。なお、DNA量は鮭精巣由来DNA(和光純薬工業製)を用いて同様に作成した検量線より算出した。
4、HA定量
上記1の24または48時間培養後から回収した培養液中のHA量は、HA ELISAキット(生化学工業より購入)により添付の操作法に従って定量した。すなわち、回収した各処理ごとの培養液中のHAを購入キットに添付のマイクロプレート上に固相化されたヒアルロン酸結合タンパク質(HABP)に結合させた後、ペルオキシダーゼ結合HABPを添加して反応させた。次に、tetramethylbenzidineおよび過酸化水素を加え、450 nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダー(インフィニットF200、テカンジャパン製)測定した。HA量は、標準HA溶液(50-800 ng/ml)を用いて同時に作成した検量線より算出した。または、各処理における単位細胞当りに産生されるHA量は、測定した各処理ごとのHA量を上記3で定量した各処理ごとのDNA量で割った値(ng/μg DNA)として表記した。
なお、HA定量は、HA ELISAキットを用いなくとも、次の方法に基づいて実施することもできる。すなわち、組換え体ヒトHABP (rHABP)(コスモバイオ製)をカーボネート緩衝溶液(pH8-9)を用いて固相化した96 well multiplateに、回収した培養液を添加し、結合したHAにビオチン結合rHABP(コスモバイオ製)をさらに結合させる。次に、ペルオキシダーゼ結合アビジンを添加し、ビオチン-アビジン複合体を形成させる。さらに、tetramethylbenzidineおよび過酸化水素を加え、450 nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダー(インフィニットF200、テカンジャパン製)測定する。HA量は、標準HA溶液(50-800 ng/ml)を用いて同時に作成した検量線より算出する。
5、ウエスタンブロット法
上記1の24または48時間培養後から回収した細胞培養液に最終濃度3.3% (w/v)のtrichloroacetic acidを添加して一晩4℃にて静置し、タンパク質を不溶化させた。不溶性タンパク質を遠心分離(10,000回転/分、10分)により沈殿させた後、1% (v/v) 2-mercaptoethanolを含むSDS-PAGE sample bufferに沈殿物を溶解させ、12.5% (w/v)ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEを行った。泳動終了後、ゲル中のタンパク質をニトロセルロース膜に転写し、定法に従いニトロセルロース膜をブロッキング溶液 [5% (w/v) fatty-free dry milk/80 mM Na2HPO4/100 mM NaCl/0.1% (v/v) Tween-20 (pH 7.5)]に浸し,1時間のブロッキングを行った。蒸留水およびPBS-T buffer [80 mM Na2HPO4/100 mM NaCl/0.1% (v/v) Tween-20 (pH 7.5)]にてそれぞれ2〜3回洗浄後、1% (w/v) BSA/PBS(-)で希釈した一次抗体[sheep anti-(human proMMP-1)またはanti-(human TIMP-2)IgG、それぞれ王立ロンドン大学ケネディーリウマチ研究所、永瀬秀明教授より分与]溶液に浸し室温で8時間以上緩やかに振とうした。一次抗体結合後、蒸留水およびPBS-T bufferにてそれぞれ2〜3回洗浄し、1% (w/v) BSA/PBS(-)で希釈した二次抗体[peroxidase-conjugated goat anti-(sheep IgG)IgG、シグマ・アルドリッチ製]溶液に室温で1時間浸した。二次抗体結合後、ECL-Western Blotting Detection kitのECL-Western Blotting Detection Reagents (Amersham Biosciences社より購入)に浸して正確に1分間反応させた。反応終了後、proMMP-1およびTIMP-2量をルミノ・イメージアナライザーLAS-1000 plus (富士フィルム社製)により定量した。
ウエスタンブロット法は、当業者に周知な実験法であり、公知の実験書、例えば、神谷美智子 タンパク質実験ハンドブック(竹縄忠臣編)羊土社、p.152-157、2003などに詳細に記載されている。
なお、抗体は上記抗体を用いなくとも、市販品の次の抗体を使用して実施することもできる。
一次抗体
1) 抗ヒトMMP-1モノクローナル抗体(品番:F-67、第一ファインケミカル製)
2) 抗ヒトTIMP-1モノクローナル抗体(品番:F-26、第一ファインケミカル製)
二次抗体
peroxidase-conjugated rabbit anti-(mouse IgG)IgG(シグマ・アルドリッチ製)
6、統計処理
Fisherの多変量分散分析法により各処理間の有意差検定を実施した。
7、実験結果
(1)正常ヒト線維芽細胞NB1RGB(RCB0222)は恒常的にHAを産生しており、マイタケ抽出物 (25-100 μg/ml)はHA産生を増強した(図4)。すなわち、HA量は、未処理群において、15.37 ± 1.56 μg/μg DNAであるのに対し、25 μg/mlのマイタケ抽出物において24.79 ± 2.75 μg/μg DNAであり、50 μg/mlにおいて26.08 ± 2.19 μg/μg DNAであり、100 μg/mlにおいて20.57 ± 1.46 μg/μg DNAであった。マイタケ抽出物(100 μg/ml)により増加したHA産生は、HAS阻害剤の4MU (0.1-1 mM)により濃度依存的に阻害された。マイタケ抽出物はHAS遺伝子発現促進に起因してHA産生を促進する。
(2)HA産生促進に寄与するマイタケ抽出物成分を同定するために、マイタケ抽出物分画成分のHA産生調節を検討した。その結果、M1およびM5画分において濃度依存的なHA産生促進作用が検出された(図5)。また、相対的な促進活性はM5の方がM1より高いことが判明した。すなわち、HA量は、未処理群において、580.21 ± 70.65 ng/mlであるのに対し、M1の25 μg/mlにおいて883.49 ± 159.21 ng/mlであり、50 μg/mlにおいて1237.28 ± 405.80 ng/mlであり、100 μg/mlにおいて1488.19 ± 527.23 ng/mlであり、M5の25 μg/mlにおいて1041.44 ± 186.71 ng/mlであり、50 μg/mlにおいて1587.83 ± 298.10 ng/mlであり、100 μg/mlにおいて2304.25 ± 499.97 ng/mlであった。さらに、M2-M4画分では低濃度でHA産生が促進されるものの、高濃度では逆にその産生を抑制した。
(3)マイタケ抽出物によるHA産生促進の特異性を検討するべく、正常ヒト線維芽細胞が恒常的に発現する既知ECM代謝関連遺伝子であるproMMP-1およびTIMP-2の遺伝子発現に対するマイタケ抽出物およびその分画成分の作用を検討した。マイタケ抽出物はproMMP-1 mRNA発現およびその産生を濃度依存的に促進した(図6Aおよび図7A)。しかし、マイタケ抽出物はTIMP-2 mRNA発現およびその産生には影響を及ぼさなかった(図6Bおよび図7B)。一方、マイタケ抽出物分画成分の結果では、M5画分はproMMP-1 mRNA発現には影響を及ぼさなかった(図6A)。proMMP-1遺伝子発現増加はM2-M4において観察された(図6A)。TIMP-2 mRNA発現に対してはM1画分が抑制傾向を示したものの、全ての画分においてほとんど変化しなかった(図6B)。したがって、マイタケ抽出物によるHA産生およびproMMP-1遺伝子発現促進にはそれぞれ異なるマイタケ抽出物成分が関与する可能性が示唆された。
(4)マイタケ抽出物のM5画分によるHA産生促進作用をより詳細に明らかにするため、M5画分をさらに分画した8成分(M5-1〜M5-8)についてHA産生調節を検討した。その結果、M5-3〜M5-8画分においてHA産生促進が観察された(図8)。
8、考察
正常ヒト皮膚線維芽細胞において、マイタケ抽出物は肌に潤いを与えるHAの合成を促進する。よって、マイタケ抽出物は、重要な潤い成分であるHAの合成に起因した肌の活性化および改善(たとえば皮膚の水分保持機能の改善)を促すものと示唆される。さらに、マイタケ抽出物によるHA産生促進はそれぞれ異なる成分により調節される可能性が示唆される。
皮膚ECMの酵素的代謝促進は、創傷治癒などの皮膚再構築において重要な役割りを担っている。このECM代謝にはMMPとTIMPとの量的バランスが重要であると考えられている。さらに、過度のMMP産生亢進による皮膚ECMの分解増強はしわ形成などの皮膚粗造化(皮膚老化)を惹起する。ヒト皮膚線維芽細胞においてマイタケ抽出物がproMMP-1 mRNAおよびその産生を促進することを初めて明らかにした。
しかし、興味あることにproMMP-1発現促進作用を示すマイタケ抽出物分画(M2-M4)は、HA産生促進作用の分画(M5)とは異なることが判明した。HA産生促進作用を示すM5分画成分としてはM5-6およびM5-7が同定された。すなわち、マイタケ抽出物の成分を分画して用いることで皮膚老化作用を軽減させ、より肌の潤い増強に特化できるものと期待される。
マイタケ抽出物は内因性保湿因子であるHAの生合成を促進することで肌の潤いを増強する新規天然物由来素材であると強く示唆される。さらに、マイタケ抽出物は、線維芽細胞に働きかけ、それを活性化することで、加齢と伴に減少するHAを内面から補充するアンチエイジング効果をも発揮するものと期待される。
〔実施例5〕
以下の配合でマイタケ抽出物を含有する化粧用クリームを作製した。
成分名 配合量(重量%)
マイタケ抽出物 2.0
オリーブ油 10.0
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 10.0
トコフェロール 1.0
精製水 77.0
合計 100.0
〔実施例6〕
以下の配合でマイタケ抽出物を含有する医薬用クリームを作製した。
成分名 配合量(重量%)
マイタケ抽出物 10.0
オリーブ油 10.0
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 10.0
トコフェロール 1.0
精製水 69.0
合計 100.0
〔実施例7〕
マイタケ抽出物の乾皮症に対するヒトでの効果
実施例5に示す、マイタケ抽出物を2重量%含有するクリームを用いて、乾皮症に対する効果の検討を行った。
試験方法
被験対象: 老人保健施設「グッドウェル」内の乾皮症で落屑(皮膚が角質状となって脱落する症状を意味する)を有する患者(76〜97歳)12名(男性6名女性6名)
実施期間: 2006年12月〜2007年1月
方法: 落屑(皮膚が角質状となって脱落する症状を意味する)を基準として3段階(3:重症、2:中症、1:軽症)で被験者の皮膚状態を評価すると供に、マイタケ抽出物含有クリームを被験者の皮膚に適量塗布した。塗布部位は右下腕、左下腕、右下腿、左下腿で評価判定は部位ごとに行った。
結果
以下に、塗布開始から1週間の被験者の皮膚状態の診断評価度(3:重症 2:中症 1:軽症)を示す。なお、診断評価度:0は、完治を示す。
このように塗布開始後の被験者1〜12の皮膚状態の診断評価度は、改善を示した。また、マイタケ抽出物含有クリームの塗布により有意な症状改善効果は、塗布後1〜3日で認められた。
図9は、マイタケ抽出物含有クリームによる被験者5の治療前と後の皮膚の写真である。マイタケ抽出物含有クリームの塗布による治療により、乾皮症状の改善が認められた。
そして、これら結果は、マイタケ抽出物の含有量が2重量%であるクリームにおいても、乾皮症に対して治療効果のあることを示している。
本発明の抽出物によりヒアルロン酸産生が促進されるので、本発明の組成物は、ヒアルロン酸産生の減少による皮膚の異常・障害や疾患を処置するための化粧料や医薬、関節や眼の異常・障害や疾患を処置するための医薬として有用である。

Claims (3)

  1. 水分含量が6重量%以下である乾燥マイタケの子実体100重量部を、98.0容量%以上のエタノール400〜1000重量部により抽出した抽出液から、薄相シリカゲル上でクロロホルム:メタノール=9:1で展開して得られる、Rf値が0.98≧Rf≧0.50および/または0.07>Rf≧0である、ヒアルロン酸産生促進物質
  2. 水分含量が6重量%以下である乾燥マイタケの子実体100重量部を、98.0容量%以上のエタノール400〜1000重量部により抽出すること、そして
    該抽出液から、薄相シリカゲル上でクロロホルム:メタノール=9:1で展開して得られる、Rf値が0.98≧Rf≧0.50および/または0.07>Rf≧0であるヒアルロン酸産生促進物質を精製すること
    を含む、ヒアルロン酸産生促進のための化粧料の製造方法
  3. 水分含量が6重量%以下である乾燥マイタケの子実体100重量部を、98.0容量%以上のエタノール400〜1000重量部により抽出すること、そして
    該抽出液から、薄相シリカゲル上でクロロホルム:メタノール=9:1で展開して得られる、Rf値が0.98≧Rf≧0.50および/または0.07>Rf≧0であるヒアルロン酸産生促進物質を精製すること
    を含む、ヒアルロン酸産生促進のための医薬の製造方法
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