JP4582844B2 - インクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録紙にインク滴を所定パターンに付着させて文字、画像を形成するインクジェットヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧電方式を採用した従来のインクジェットヘッドは、基板の上面に、間にインク流路が形成される多数の圧電隔壁を略平行に一列状に配置するとともに、これら圧電隔壁の頂部に、前記インク流路に連通する多数の吐出孔が穿設された天板を載置した構造を有しており、記録紙を天板の吐出孔に対して相対的に移動させながら、多数の圧電隔壁を外部からの画像データに基づいて個々に選択的に屈曲させてインク流路内のインクを加圧するとともに、前記吐出孔よりインク滴を吐出させ、これを記録紙に付着させることにより所定の印画を形成するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来のインクジェットヘッドを用いて、記録紙の全体または所定の領域を塗りつぶす“べた印画”を行う際、インクが付着しない空白域を完全に無くすには、図6に示す如く、インクの吐出量を多くすることにより、記録紙に形成される個々の印画ドットdの径を大きくする必要があった。
【0004】
しかしながら、空白域が完全に無くなるように印画ドットdの径を大きくした場合、各々が略円形をなすように形成された印画ドットdは、全体の約50%に相当する部分が隣接する印画ドットdと重なり合うこととなり、それ故、記録紙に形成される画像の濃度が上記重なり部(図中の黒塗り部分)で過度に濃くなり、画質が著しく劣化する欠点を有していた。
【0005】
またこの場合、記録紙には多量のインクが付着されるため、インクの使用量が多くなる上に、これらのインクを乾燥させるのに長時間を要する欠点も有していた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、本発明のインクジェットヘッドは、多数の吐出孔が二列状に穿設されている天板を有し、記録紙を前記天板に沿って吐出孔の列と直交する方向に搬送しながら、インクを前記吐出孔から吐出させて印画を形成するインクジェットヘッドであって、前記多数の吐出孔は、一方の列の吐出孔から吐出されるインク滴の吐出量よりも他方の列の吐出孔から吐出されるインク滴の吐出量が少なくなるように、前記一方の列の吐出孔の径よりも前記他方の列の吐出孔の径を小さくし、前記一方の列の吐出孔に比し、前記他方の列の吐出孔が記録紙の搬送方向上流側に傾斜させて穿設されていることを特徴とするものである。
また、本発明の上記インクジェットヘッドにおいては、さらに、基板と、互いに平行または平行な角度から±1度以内の角度で前記基板の上面に配列されていることによって、間にインク流路を形成するための多数の圧電隔壁と、該圧電隔壁の両側面に設けられた電極とを有しており、前記天板は、前記多数の吐出孔が前記インク流路に連通するように、前記多数の圧電隔壁の頂部に載置されており、前記多数の圧電隔壁は、二列状に配列されており、前記一方の列の圧電隔壁が前記他方の列の圧電隔壁間に位置するように設けられていてもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0008】
図1は本発明のインクジェットヘッドの一形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図であり、図2(a),(b)は図1のインクジェットヘッドの主走査方向に係る断面図であり、図3は図1のインクジェットヘッドの副走査方向に係る断面図であり、図4は図1のインクジェットヘッドに使用される天板の平面図であり、1は基板であり、2a,2bは圧電隔壁であり、3はインク流路であり、5は天板であり、6a,6bは吐出孔である。
【0009】
前記基板1は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料から成り、上面で圧電隔壁2a,2b等を支持するための支持母材として機能する。
【0010】
前記基板1は、例えばアルミナセラミックスから成る場合、アルミナ、シリカ、マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加、混合して泥漿状に成すとともに、これを従来周知のドクターブレード法、カレンダーロール法等を採用することによってセラミックグリーンシートを得て、しかる後に、前記セラミックグリーンシートを所定形状に打ち抜いた上で、高温で焼成することによって製作される。
【0011】
また、前記基板1の上面には、例えば7個/mmのピッチで略平行(±1度以内)に配列する多数の圧電隔壁2a,2bが主走査方向にわたって二列状に取着されており、各々の列の隣り合う圧電隔壁間2a−2a,2b−2bにはインク流路3が形成される。
【0012】
前記圧電隔壁2a,2bは、各々がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等を主成分とする圧電セラミックスを高さ0.5mm程度の隔壁状に加工して成り、上部領域及び下部領域は、それぞれが図2(a)の矢印方向に分極処理されていることから、両側面に被着される電極4を介して圧電隔壁2a,2bに所定の電力が印加されると、圧電隔壁2a,2bは、図2(b)に示した如く、剪断モードで“く”の字状に屈曲、変形し、インク流路3内のインクを加圧する。
【0013】
また、前記多数の圧電隔壁2a,2bは、一方の列の圧電隔壁2aを他方の列の圧電隔壁間2b−2bに位置させることによって、一方の列を構成する圧電隔壁2a,2a間のインク流路3と、他方の列を構成する圧電隔壁2b,2b間のインク流路3とを主走査方向に千鳥状に配列させている。
【0014】
ここで、他方の列を構成する圧電隔壁2bは、記録紙Mの全体または所定の領域を塗りつぶす“べた印画”を行う場合に、圧電隔壁2aの駆動によって形成される印画ドット間の空白領域を埋めるための小さなインク滴iを発生させるものであり、従って、“べた印画”以外の印画動作においては、他方の列の圧電隔壁2bは使用されず、一方の列の圧電隔壁2aのみが使用されることとなる。
【0015】
かかる圧電隔壁2a,2bは、まず、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする焼結体を分極処理することによって圧電セラミックスを形成し、これをエポキシ樹脂等の接着剤でもって基板1の上面に接着、固定した上、ダイシングソー等を用いて各々が所定厚みの隔壁状をなすように研削加工することにより形成される。
【0016】
尚、前記インク流路3内のインクは、基板1の副走査方向の両側に配置される図示しないインクタンクより各インク流路3内に供給される。このようなインクとしては、例えば顔料タイプの油性インク、水性染料インク等が使用される。
【0017】
また、前記基板1の上面には、各々の一端が対応する圧電隔壁2a,2bの側面まで導出された多数の電極4が被着されている。
【0018】
前記多数の電極4は、アルミニウム等の金属により所定パターンに被着、形成されており、図示しないドライバーICの駆動に伴って圧電隔壁2a,2bを屈曲、変形させるための所定の電力を印加する作用を為す。
【0019】
尚、前記多数の電極4は、アルミニウム、銅等の金属を従来周知の薄膜手法、具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法等を採用することにより基板1の上面及び圧電隔壁2a,2bの表面に所定厚みに被着させ、これをレーザー等で切断、加工することにより所定パターンに形成される。
【0020】
そして、前記圧電隔壁2a,2bの頂部には、インク流路3に連通する多数の吐出孔6a,6bを二列状に穿設した天板5が載置されており、該天板5によってインク流路3を塞いでいる。
【0021】
前記天板5は、下面に絶縁膜(図示せず)を被着させたモリブデン製のベース5a上に、ポリイミド樹脂から成るフィルム5bを貼着した構造を有しており、前記吐出孔6a,6bはベース5a及びフィルム5bの双方を貫通するように形成されている。
【0022】
前記吐出孔6a,6bは、一方の列Aを構成する吐出孔6aが一方の圧電隔壁2a,2a間のインク流路3に、また、他方の列Bを構成する吐出孔6bが他方の圧電隔壁2b,2b間のインク流路3にそれぞれが連通しており、圧電隔壁2a,2bの屈曲、変形によりインク流路3内のインクが加圧されると、これらの吐出孔6a,6bより所定量のインクが吐出される。
【0023】
また、前記吐出孔6a,6bは、一方の列Aの吐出孔6aより吐出されるインク滴iの吐出量よりも、他方の列Bの吐出孔6bより吐出されるインク滴iの吐出量が少なくなるように、吐出孔6bの径が吐出孔6aの径よりも小さく、具体的には、吐出孔6aの径φ 1 を40μm〜60μmとした場合、吐出孔6bの径φ 2 はφ 1 の40%〜50%に相当する16μm〜30μmの範囲内に設定される。
【0024】
このように、吐出孔6bからのインク吐出量を吐出孔6aからのインク吐出量よりも少なく制御することにより、“べた印画”を行う場合、一方の列Aの吐出孔6aからのインク滴iにより形成した印画ドットd 1 ,d 1 間の空白域を、他方の列Bの吐出孔6bからの小さなインク滴iにより形成される小さな印画ドットd 2 で良好に埋めることができ、図5に示した如き印画ドットパターンが得られるようになる。例えば、吐出孔6aからのインク滴iにより形成される印画ドットd 1 の径が40μm〜50μmの場合、吐出孔6bからのインク滴iにより形成される印画ドットd 2 の径は16μm〜30μmに設定される。
【0025】
この場合、略円形をなすように形成された印画ドットd 1 ,d 2 が隣接する印画ドットd 1 ,d 2 と重なり合う部分(図中の黒塗り部分)を全体の20%以下に抑えることができるため、適正な濃度をもった“べた印画”が得られ、画質を向上させることが可能となる。
【0026】
またこの場合、記録紙に“べた印画”を形成するにあたって記録紙に付着するインクの量は少なくなることから、インクの使用量が節約され、インクを比較的短時間で乾燥させることもできる。
【0027】
更に、前記天板5の吐出孔6a,6bのうち、他方の列Bの吐出孔6bは一方の列Aの吐出孔6aに比し記録紙Mの搬送方向上流側に傾斜させて穿設されており、これによって吐出孔6bより吐出されるインク滴iは、記録紙Mの搬送方向と逆行する方向に吐出されることから、インク滴iが記録紙Mに対して着弾する際の相対速度は速く、従って、インク吐出量が少量となることに起因して吐出孔6bからの吐出速度が遅くなっても、インク滴iを記録紙Mの所定位置に正確に着弾させて良好な印画を形成することが可能となる。尚、吐出孔6aが天板5の上面に対して直角に設けられている場合、天板5の上面に対する吐出孔6bの傾斜角θは例えば45°〜89°に設定される。
【0028】
尚、前記天板5は、モリブデン製のベース5aに吐出孔6a,6bに対応する貫通孔を従来周知のエッチング等によって径80μm〜110μm程度に穿設し、次に前記ベース5aの上面にポリイミド樹脂製のフィルム5bを接着剤により貼着した上で、該フィルム5bにレーザー加工等によって吐出孔6a,6bを形成することにより製作され、得られた天板5を吐出孔6a,6bが対応するインク流路3上に配置されるように位置合わせし、天板5をエポキシ樹脂等の接着剤を介して多数の圧電隔壁2a,2bの頂部に載置させることにより、天板5が圧電隔壁2a,2b上に接着、固定される。
【0029】
また、吐出孔6aで構成される一方の列Aと、吐出孔6bで構成される他方の列Bとの間隔Wは、記録紙Mの搬送速度、圧電隔壁2b,2bの駆動タイミング等に応じて適宜決定され、例えば圧電隔壁2b,2bを同時に駆動する場合、間隔Wは印画ライン間の間隔の1/2に設定される。
【0030】
かくして、上述したインクジェットヘッドは、記録紙Mを天板5の上面に沿って吐出孔6a,6bの列と直交する方向に搬送しながら、多数の圧電隔壁2a,2bをドライバーIC等の駆動に伴って個々に選択的に屈曲、変形させて、インク流路3内のインクを加圧するとともに、該加圧したインクの一部を天板5の吐出孔6a,6bより外部に吐出させ、該吐出したインク滴iを記録紙Mに所定パターンに付着させることにより、記録紙Mに所定の印画が形成される。
【0031】
尚、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0032】
例えば、上述の形態では、基板1をアルミナセラミックス等の電気絶縁性材料により形成するようにしたが、これに代えて、基板1を圧電セラミックスにより圧電隔壁2a,2bと一体的に形成するようにしても構わない。
【0033】
また、上述の形態では、インク吐出量の制御を、吐出孔6a,6bの径を可変させることによってのみ行うようにしたが、このような制御に加えて、圧電隔壁2a,2bへの印加電力、またはパルス波形を可変させるようにすれば、インク滴iの吐出量を細かく制御することができ、より品質の高い印画を形成することができるようになる。
【0034】
【発明の効果】
本発明のインクジェットヘッドによれば、略円形をなすように形成された印画ドットが隣接する印画ドットと重なり合う面積を小さくすることができるため、適正な濃度をもった“べた印画”が得られ、画質を向上させることが可能となる。
【0035】
また、本発明のインクジェットヘッドによれば、記録紙に“べた印画”を形成するにあたって記録紙に付着するインクの量は少なくなることから、インクの使用量が節約され、インクを比較的短時間で乾燥させることもできる。
【0036】
更に、本発明のインクジェットヘッドによれば、他方の列の吐出孔を一方の列の吐出孔に比し記録紙の搬送方向上流側に傾斜させて穿設しておくことにより、該傾斜する吐出孔からのインク滴は、記録紙の搬送方向と逆行する方向に吐出されるため、インク滴が記録紙に対して着弾する際の相対速度は速く、インク量が少量となることに起因して、他方の列の吐出孔からのインク滴の吐出速度が遅くなってもインク滴を記録紙の所定位置に正確に着弾させて良好な印画を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のインクジェットの一形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図2】 (a),(b)は図1のインクジェットヘッドの主走査方向に係る断面図である。
【図3】 図1のインクジェットヘッドの副走査方向に係る断面図である。
【図4】 図1のインクジェットヘッドに使用される天板の平面図である。
【図5】 図1のインクジェットヘッドを用いて“べた印画”を行った場合の印画ドットパターンを示す図である。
【図6】 従来のインクジェットヘッドを用いて“べた印画”を行った場合の印画ドットパターンを示す図である。
【符号の説明】
1・・・基板、2a,2b・・・圧電隔壁、3・・・インク流路、5・・・天板、6a,6b・・・吐出孔
Claims (2)
- 多数の吐出孔が二列状に穿設されている天板を有し、記録紙を前記天板に沿って吐出孔の列と直交する方向に搬送しながら、インクを前記吐出孔から吐出させて印画を形成するインクジェットヘッドであって、
前記多数の吐出孔は、一方の列の吐出孔から吐出されるインク滴の吐出量よりも他方の列の吐出孔から吐出されるインク滴の吐出量が少なくなるように、前記一方の列の吐出孔の径よりも前記他方の列の吐出孔の径を小さくし、前記一方の列の吐出孔に比し、前記他方の列の吐出孔が記録紙の搬送方向上流側に傾斜させて穿設されていることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 基板と、互いに平行または平行な角度から±1度以内の角度で前記基板の上面に配列されていることによって、間にインク流路を形成するための多数の圧電隔壁と、該圧電隔壁の両側面に設けられた電極とを有しており、
前記天板は、前記多数の吐出孔が前記インク流路に連通するように、前記多数の圧電隔壁の頂部に載置されており、
前記多数の圧電隔壁は、二列状に配列されており、前記一方の列の圧電隔壁が前記他方の列の圧電隔壁間に位置するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
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