JP4582672B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスチールコードおよび空気いりタイヤに関し、詳しくは、安定した撚り性状で、ゴムの内部への浸透が十分に行われ耐腐食伝播性に優れ、かつ高い破断荷重と伸度とを有するスチールコードおよび該スチールコードをベルトに適用した空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
荒れ地走行を本来の使命とする建設車両用空気入りタイヤや、たとえ一時的ではあっても荒れ地を走行する機会を有する一般のダンプトラック用タイヤは、特にカーカスがラジアル構造の場合、トレッド部の強化のため複数層のスチールコード層がベルトとして用いられている。
【0003】
これらのタイヤは荒れ地走行により路面からのピーク入力が大きくなる上、元来、重荷重が負荷されるため、ベルトの各層に使用するスチールコードには高い引張強さ(切断荷重)が要求される。そのため、ベルトの各層には複数本のスチール素線を撚り合わせたストランドの複数本を更に撚り合わせた、いわゆる複撚り構造のスチールコードが広く用いられている。
【0004】
しかし、かかるタイヤは、カットなどの外傷を受けると、スチールコード内部の、被覆ゴムが浸透していない空隙部に水分が浸入することにより、サビがコード方向に拡大するという問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、例えば、特開平8−81889号公報では、平行に引き揃えた2本のスチール素線からなるコアと、該コアの周囲に撚り合わせたN本(N=6〜8)のスチール素線よりなるシースとからなるストランドをn本(n=2〜5)撚り合わせたn×(2+N)構造のスチールコードが提案され、水分によるコードの耐腐食伝播性が高められることが報告されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ストランドのコアを構成するスチール素線を真直に引き揃えた場合、コード製造時にストランドを撚り上げる段階でコアとシースの撚り縮みの差が大きいために、コアが安定化しようとする力が発生してシースの外側にコアが飛び出てしまい、撚り性状が不均一になってしまうというおそれがあった。一旦、撚り性状が不均一になると、コード内部に被覆ゴムが浸透しない部分ができ耐腐食伝播性に劣り、また撚り性状の不均一が原因でコード破断荷重や伸度も低下してしまうという問題を伴うことになる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、安定した撚り性状で、ゴムの内部への浸透が十分に行われ耐腐食伝播性に優れ、かつ高い破断荷重と伸度とを有するスチールコードおよび該スチールコードをベルトに適用した空気入りタイヤを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、複撚り構造のスチールコードにおけるストランドのコアを互いに撚り合わせた2本のスチール素線として、このコアと、シースと、コードの撚り方向を規定し、併せてストランドを構成する各スチール素線の線径間に特定の関係を持たせたことにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部と、一対のサイドウォール部と、トレッド部とからなり、これら各部をビード部内に埋設されたビードコア相互間にわたって補強する1プライ以上のラジアル配列コードのゴム被覆層からなるカーカスと、該カーカスの外周でトレッド部を強化する2層以上の交差ゴム被覆コード層よりなるベルトとを備える空気入りタイヤにおいて、
前記ベルトの少なくとも最外層のゴム被覆コード層に、複数本のスチール素線からなるストランドの複数本を撚り合わせてなる複撚り構造のスチールコードであって、上記ストランドが、互いに撚り合わせた2本のスチール素線よりなるコアと、該コアの周囲に撚り合わせた6〜9本のスチール素線よりなるシースとを両者同一方向に撚り合わせてなり、かつ該ストランドを構成するスチール素線が次式、
{2πdc+(π−N)ds}/N≧0.03
(式中、dcはコアを構成するスチール素線の線径(mm)、dsはシースを構成するスチール素線の線径(mm)、Nはシースを構成するスチール素線の本数を夫々示す)で表される関係を満足し、
n本(n=3〜5)の上記ストランドを1×nにて上記コアおよびシースと同一方向に撚り合わせてなるスチールコードを適用してなることを特徴とするものである。本発明においては、上記スチール素線の線径dcおよびdsがともに0.15〜0.40mmの範囲内にあることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のスチールコードの実施の形態について説明する。
本発明のスチールコードを構成するストランドは、互いに撚り合わせた2本のスチール素線よりなるコアを有する。本発明においては、このコアを撚り合わせることでコードの撚り性状の不均一化を防止するものである。コアを構成するスチール素線が1本だと、ストランドをコードに撚り上げたときにコアとシースの撚り縮みの差でコアが飛び出す可能性があり、撚り性状の問題を解消することはできず、一方、コアが3本以上のスチール素線だとコアの中心にゴムの浸透を図ることができない。
【0013】
また、上記ストランドを構成するシースは、上記コアの周囲に撚り合わせた6〜9本のスチール素線よりなる。シースの素線本数が5本以下だと、強度を出すためにスチール素線を太くせざるを得ないため、撚るときに無理な力がかかり、断線する可能性がある。一方、10本以上だと、スチール素線がかなり細くなるので、生産性が悪化する。
【0014】
さらに、本発明においては、ストランドを構成するスチール素線が次式、
{2πdc+(π−N)ds}/N≧0.03
好ましくは、次式、
{2πdc+(π−N)ds}/N≧0.10
(式中、dc、ds、Nは夫々上記と同じ意味のものである)で表される関係を満足することを要する。上記式の値が0.03(mm)より小さいとゴムがコード内部に浸透するのに十分な隙間を確保することができなくなる。
【0015】
次に、本発明においては、上記ストランドを1×n(n=3〜5)にて撚り合わせる。かかるストランドが2本だとコードとして高い破断強度を発揮することができず、一方、6本以上だと撚り性状が安定しない。
【0016】
本発明のスチールコードにおいては、ストランドを構成するコアとシースとストランド自体とをすべて同一方向に撚ることにより、スチール素線同士が線接触し、破断強度と伸度とを効果的に向上させることができる。
【0017】
なお、上記スチール素線の線径dcおよびdsについては、ともに0.15〜0.40mmの範囲内にあることが好ましく、これら線径が0.15mmより小さいと生産性が悪化し、一方、0.40mmを超えると単位断面積当たりの破断強度が低くなる。また、ストランドを構成するコアおよびシース並びにストランド自体ピッチは、好ましくは夫々3.0〜20.0mmの範囲内である。
【0018】
次に、本発明の空気入りタイヤの実施の形態の一例について説明する。
図9は、赤道面eからのタイヤの左半断面図であり、タイヤ10は、一対のビード部11および一対のサイドウォール部12と、トレッド部13とからなり、これら各部11、12、13をビード部11内に埋設されたビードコア14相互間にわたって補強する1プライ以上(図示例は1プライ)のラジアル配列コードのゴム被覆になるカーカス15と、該カーカス15の外周でトレッド部13を強化する2層以上(図示例は6層)の交差ゴム被覆コード層よりなるベルト16とを備える。
【0019】
ベルト16は、カーカス15寄りから順に第一コード層16−1、第二コード層16−2、第三コード層16−3、第四コード層16−4、第五コード層16−5および第六コード層16−6の6層を有し、これら各層のうち少なくともタイヤ半径方向最外側の第六コード層16−6に、好ましくは全てのコード層に本発明のスチールコードを適用する。
【0020】
タイヤ種類としては、たとえ一時的でも荒れ地を走行する一般的ダンプトラック用タイヤまたは常時荒れ地走行を前提とする、ダンプトラック、スクレーパ、ローダなどの建設車両用タイヤが好適に適合する。この種のタイヤのカーカスは通常1プライで、スチールコードのラジアル配列になり、ベルトの各層のコードもスチールコードであるのが一般である。
【0021】
本発明のタイヤは、例えば、荒れ地に散在する先端が比較的鋭利な異物の上を走行しトレッドゴムにカット外傷を受け、そのカット傷が本発明のスチールコードを適用したベルトのコード層に達したとしても、該スチールコードは耐腐食伝播性に優れているから錆は一部分で止まり、錆によるセパレーション故障は防げる。また、このスチールコードは伸び易い性質を有していることから、カットエネルギーを緩和してカット傷を最小限度に止め、優れた耐カット性が発揮される。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づき説明する。
下記の表1に示すコード条件に従う各種スチールコードを試作した。実施例1のスチールコードの断面を図1に、実施例2および3のスチールコードの断面を図2に、実施例4のスチールコードの断面を図3に、比較例1のスチールコードの断面を図4に、比較例2のスチールコードの断面を図5に、比較例3のスチールコードの断面を図6に、比較例4のスチールコードの断面を図7に、また比較例5のスチールコードの断面を図8に、夫々示す。図1に示すように、スチールコード1は複数のストランド2からなり、このストランド2はスチール素線3からなるコア5とスチール素線4からなるシース6とから構成されている。これら供試スチールコードについて、以下のようにしてストランド内へのゴム浸透性、コード破断荷重およびコアのスチール素線の飛び出しの有無の評価を行った。
【0023】
(イ)ストランド内へのゴム浸透性
ゴム付きコードのストランドを撚りほぐし、ストランド中心部のゴム量を観察し、ゴムが全くない場合を0%、完全にゴムに覆われている場合を100%とした。
【0024】
(ロ)コード破断荷重
JIS G 3510に記載された切断荷重試験方法による。
【0025】
(ハ)コアのスチール素線の飛び出し
スチールコード製造後、100mにわたってストランドのコアを構成するスチール素線の飛び出しの有無を観察した。
得られた結果を下記の表1および表2に併記する。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
サイズが36.00R51であり、カーカス15は1プライのラジアル配列スチールコードのゴム被覆層からなり、ベルト16は6層の交差ゴム被覆コード層からなる、図9に示す建設車両用ラジアルタイヤを、実施例1のスチールコードをベルト16の第六コード層16−6および第五コード層16−5に夫々適用して試作した。また、同様にして、比較例1のスチールコードを適用した建設車両用ラジアルタイヤを試作した。これらタイヤについて実車走行試験を行ったところ、タイヤ耐久性に明らかな違いが認められた。
【0029】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明のスチールコードにおいては、撚り性状が安定しており、また内部にまでゴムの浸透が十分に行われ耐腐食伝播性に優れ、しかも高い破断荷重と伸度を有する。よって、このスチールコードをベルトに適用した本発明の空気入りタイヤは優れた耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のスチールコードの断面図である。
【図2】実施例2および3のスチールコードの断面図である。
【図3】実施例4のスチールコードの断面図である。
【図4】比較例1のスチールコードの断面図である。
【図5】比較例2のスチールコードの断面図である。
【図6】比較例3のスチールコードの断面図である。
【図7】比較例4のスチールコードの断面図である。
【図8】比較例5のスチールコードの断面図である。
【図9】本発明の実施の一形態例の空気入りタイヤの左半断面図である。
【符号の説明】
1 スチールコード
2 ストランド
3 コアのスチール素線
4 シースのスチール素線
5 コア
6 シース
10 空気入りタイヤ
11 ビード部
12 サイドウォール部
13 トレッド部
14 ビードコア
15 カーカス
16 ベルト
16−1 ベルトの第一コード層
16−2 ベルトの第二コード層
16−3 ベルトの第三コード層
16−4 ベルトの第四コード層
16−5 ベルトの第五コード層
16−6 ベルトの第六コード層
e タイヤ赤道面
Claims (2)
- 一対のビード部と、一対のサイドウォール部と、トレッド部とからなり、これら各部をビード部内に埋設されたビードコア相互間にわたって補強する1プライ以上のラジアル配列コードのゴム被覆層からなるカーカスと、該カーカスの外周でトレッド部を強化する2層以上の交差ゴム被覆コード層よりなるベルトとを備える空気入りタイヤにおいて、
前記ベルトの少なくとも最外層のゴム被覆コード層に、複数本のスチール素線からなるストランドの複数本を撚り合わせてなる複撚り構造のスチールコードであって、上記ストランドが、互いに撚り合わせた2本のスチール素線よりなるコアと、該コアの周囲に撚り合わせた6〜9本のスチール素線よりなるシースとを両者同一方向に撚り合わせてなり、かつ該ストランドを構成するスチール素線が次式、
{2πdc+(π−N)ds}/N≧0.03
(式中、dcはコアを構成するスチール素線の線径(mm)、dsはシースを構成するスチール素線の線径(mm)、Nはシースを構成するスチール素線の本数を夫々示す)で表される関係を満足し、
n本(n=3〜5)の上記ストランドを1×nにて上記コアおよびシースと同一方向に撚り合わせてなるスチールコードを適用してなることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 上記スチール素線の線径dcおよびdsがともに0.15〜0.40mmの範囲内にある請求項1記載の空気入りタイヤ。
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