JP4581074B2 - 定序性ポリウレタン及びその製造法 - Google Patents

定序性ポリウレタン及びその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はモノマーとして非対称ジイソシアナートを用いた定序性ポリウレタン及びその製造法に関する。定序性重合体は配列異性重合体であり、光学材料や電気材料等の機能材料などに用いることができる。
【0002】
【発明の背景】
モノマーの配列を規制、制御して得られる高分子化合物(以下、定序性高分子という)は、熱的性質、力学的性質はもちろん、非線型光学、液晶などの物性においても特異的性質を有するものと期待されている。しかしながら、工業的に広く製造されているポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド等の重縮合系高分子の定序性高分子については、非対称モノマーの設計が困難なところから、その製造例はこれまで非常に少ない。
【0003】
定序性高分子を得るためのモノマー分子設計としては、季刊化学総説18巻 85−95(1993)に記載されているように、モノマーの分子構造が方向性を有することはもちろん、重合点となる官能基部位間の反応性に充分な差異が必要であることが知られている。
【0004】
多官能イソシアナート化合物は反応性が高く、ポリウレタン、ポリアミド等の原料として工業的に広く用いられている。このためイソシアナート化合物をモノマーとする定序性高分子の工業的製法が従来から望まれているが、このような汎用性のあるイソシアナートを用いた定序性重合体の製造例は未だ報告されていない。
【0005】
【発明の目的及び概要】
本発明者らは前記の課題について鋭意検討を行った。その結果、芳香族ジイソシアナートの分子内に有機基Rを有し、一方のイソシアナート基が有機基Rと隣り合った非対称のジイソシアナートは、Rの立体障害により、2つのイソシアナート基の反応性に大きな差異が存在するとの知見が得られた。そして、この反応性差を用いると共に、このジイソシアナート基と有効に反応する適当な反応試剤を用いることにより定序性ポリマーが得られることを知り本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下式(1):
【0006】
【化4】
Figure 0004581074
(式中、Rは有機基、Rは二価の有機基である。)
で表される頭−頭−尾−尾構造単位、及び下式(2):
【0007】
【化5】
Figure 0004581074
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で表される頭−尾構造単位を有し、xは整数、yは0又は整数であり、{x/(x+y)}×100が60〜100であり、x+yが1〜10000である定序性ポリウレタンを提供するものである。また、本発明はかかるポリウレタンの製造法も提供するものである。なお、x+yは30〜100程度が実用的である。
【0008】
前記重合体のうち、特に好ましいポリマーは、下式(3)及び下式(4)で表される構造単位を有する。
【0009】
【化6】
Figure 0004581074
【0010】
【化7】
Figure 0004581074
(式中、x及びyは前記と同じ意味を有する)。
【0011】
【発明の詳細な開示】
本発明の定序性ポリウレタンは、式(5)のジイソシアネート化合物に由来する骨格とジオールに由来する骨格とから構成され、反応を制御することにより前記の式(1)及び式(2)の構造単位を特定割合で含む定序性ポリウレタンが得られる。
【0012】
つぎに、本発明の定序性ポリウレタンのモノマー及びその重合法について詳細に説明する。
【0013】
(ジイソシアナート化合物)
本発明の定序性ポリウレタンの製造に用いられるジイソシアネートモノマーは、下式(5):
【0014】
【化8】
Figure 0004581074
で表される。このジイソシアネート化合物の特徴は、分子内に2つのイソシアナート基を有しており、かつ一方のイソシアナート基に有機基Rが隣接しており構造的に非対称である。一方のイソシアナート基は、隣接する有機基Rにより立体障害をうけ、2つのイソシアネート基の間に大きな反応性差が存在する。2つのイソシアナート基は、メタ位の関係で直接芳香環に結合しており、有機基Rはいずれかのイソシアナートに対してオルト位にある。ここでRは有機基であり、例えば、メチル基、プロピル基などの直鎖脂肪族炭化水素類や2-メチルブチル基などの枝分かれ脂肪族炭化水素類、2-メトキシエチル基などの含ヘテロ原子炭化水素類、シクロヘキシル基やステロイド骨格などの環式脂肪族炭化水素類、フェニル、ビフェニルなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。
【0015】
また、これらの有機基は、直接芳香環に結合していてもよく、例えばエーテル結合、エステル結合、アミド結合などの種々の結合を介していてもよい。ジイソシアネート化合物としては、Rがメチル基である下記のジイソシアネートが特に好ましい。
【0016】
【化9】
Figure 0004581074
【0017】
二価の有機Rとしては通常二価のアルコール残基であり、アルコールとしては下記のものが例示される。
(アルコール)
一方、前記ジイソシアナート化合物と反応を行うアルコールとしては、イソシアナート基と有効に反応する二価アルコール類が挙げられる。このような二価のアルコール類としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコールなどの直鎖脂肪族アルコール類、ヒドロキノン、ビスフェノールA、4,4'−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−(1,3−アダマンテンジイル)ジフェノールなどの2価の芳香族アルコール類、あるいはデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸などの胆汁酸類、1,5−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等の非等価水酸基を有する化合物など、イソシアナートと反応する2価の水酸基を有する化合物であればよい。
【0018】
したがって、二価の有機基Rとしては具体的にはエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖脂肪族炭化水素類、2−メチルトリメチレン基などの分枝を有する脂肪族炭化水素類、3−オキサペンタメチレン基などの含ヘテロ原子炭化水素類、シクロヘキシレン基やステロイド骨格などの環状脂肪族炭化水素類、フェニレン、ビフェニレンなどの芳香族炭化水素類、さらに2,2−ジフェニレンプロパン類などの脂肪族−芳香族からなる炭化水素類、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ジフェニレンプロパンなどの脂肪族、芳香族およびヘテロ原子からなる炭化水素類などが挙げられ、前記のモノマーとして用いる二官能アルコール類に由来する骨格がいずれも望ましい。
【0019】
(定序性ポリウレタンの製造法)
本発明の定序性ポリウレタンを製造するには、ジイソシアナートモノマー中にイソシアナート基と有効に反応する多官能アルコール類のほか、本発明の目的を阻害しない範囲で多官能ジアミン類、多官能カルボン酸類、多官能イソシアナート類などをコモノマーとして用いてもよい。重合反応にあたっては、これらを反応基質及び目的物を良好に溶解する溶媒に加える。
【0020】
本発明の定序性重合体の製造には、基本的に特開平9−370533号公報に記載の方法を用いることができる。つぎに、その重合法を詳細に説明する。
【0021】
[頭頭−尾尾構造の製造]
式(1)に示す構造単位を主体とするポリウレタンを製造するには、ジイソシアナートモノマーの置換基Rと隣接せず(立体障害がなく)反応性の高いイソシアナート基を先にジオールモノマーと反応させ、ついで置換基Rに隣接し(立体障害により)反応性の低い方のイソシアナート基を反応させる逐次的な反応条件を選択することが必須である。
【0022】
具体的には、反応初期時においてジイソシアナートモノマーのイソシアナート基に対し等モル量以下のジオールモノマーの滴下や粉末添加等の手法によりゆっくりと加えることで、ジオールモノマーに対しジイソシアナートモノマーが常に過剰量存在することになり、この結果ジイソシアナートモノマー中の各イソシアナート基に対するジオールモノマーの反応選択性を高め、逐次的反応の進行が可能となる。最初に加えるジオールモノマーの量は、ジイソシアナートモノマーのモル数に対して、等モル(1等量)以下であり、好ましくは、0.1から0.8等量、より好ましくは0.3から0.6等量用いる。
本発明のポリウレタン製造法では、ジイソシアナート化合物に対して、ジオール化合物を実質的にゆっくりと反応させて重合反応を行なう。すなわち、モノマーの添加方法としては、ジイソシアネート:ジオール=1:2付加物中間体の生成が必要であり、その化学量論比を考慮に入れるとジイソシアネートに対して等モル以下のジオールをできる限り遅く加えることが好ましい。
ジオール化合物を「実質的にゆっくと反応させて」とは、反応開始から1等量以下のジオールを反応させる反応時間の実質上のすべてにわたり、ジイソシアネートと1等量以下のジオールモノマーが反応系に存在することを意味する。
従って、つぎのような操作を含む▲1▼ジイソシアネートに対して1等量以下のジオールを1時間かけて連続的に滴下する。▲2▼1等量以下のジオールを1時間かけて断続的に滴下する。
【0023】
ジオールモノマー量は、分子量を十分に伸長させるうえから、ジイソシアナートモノマーのイソシアナート官能基数とジオールモノマーの水酸基数がほぼ等しく(等モル量)なるように用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。ここで略等モル量とは、総ジイソシアナート量の1モルあたり、ジオールを0.8〜1.2モル、好ましくは0.9〜1.1モル、より好ましくは0.99〜1.01モル用いる。
【0024】
本発明の定序性ポリウレタンの製造法では、最初に、反応性の高い方のイソシアナート基とジオールモノマーとを反応させて式(1)の構造単位を予め伸長させ、ついで他方のイソシアナート基と反応させる逐次的な反応が優先する条件を選択する。
【0025】
すなわち、最初にイソシアナートモノマーに対し、略1/2モル以下のジオールを加えて、Rに隣接していないイソシアナート基と反応させる第1の工程を用い、さらにRと隣接する他方のイソシアナート基とジオールモノマーとの反応を行う第2工程により重合を完了させ目的の定序性ポリウレタンを製造する。
【0026】
このような反応を行うには、第1工程において、非対称性ジイソシアナートモノマーに対し、これの略1/2モル量のジオールモノマーを加える必要がある。
ジオールモノマーの加え方は種々の方法を採用し得る。たとえば、数回にわけて段階的に加えてもよいが、好ましくは、滴下により継続的に加える。溶媒に希釈しそれを徐々に加えてもよい。用いるジオールモノマーが粉末であるか、液状であるかなど形態に合わせ、適宜の方法でゆっくりと加えてもよい。ゆっくり加える操作としては、数日間以上の長期に渡り加えてもよいが、効率の問題から好ましくは10〜48時間、より好ましくは1〜5時間かけて加える。
【0027】
このように第1工程でジオールモノマーをゆっくりと加える操作により、ジオールモノマーに対してジイソシアナートモノマー混合物が過剰量存在する反応条件を選択することになるため、反応性の高い方のジイソシアナート基が優先的にジオールモノマーと反応し、頭−頭構造を有する中間体が優先的に生成する。
【0028】
従って、第1段階の反応に用いられるジオールモノマーの総量はジイソシアナートモノマーに対し、略1/2モル量が好ましい。
また第1段階でジオールモノマーを可能な限りゆっくりと前記規定量加えることにより、式(1)の構造単位部分がより確実に伸長する。第2工程におけるジオールの添加には特に制限はなく、適宜の方法で加えてよい。
【0029】
さらに反応初期時の反応選択性を向上させるため、反応温度をできるだけ低くし反応を緩やかに進行させる条件を選んでもよい。ただし反応温度が低すぎると反応速度が低下し、またウレタン結合生成時に競合するイソシアナート三量化反応などの副反応も進行しやすくなる。このため、温度条件としては、0〜30℃が好ましく、特に0℃付近においてジオールモノマーを滴下することが好ましい。
【0030】
反応に用いる溶媒としては、得られるポリマーが高極性であるため、重合を効率よく進行させるには高極性溶媒を用いる必要があるが、これら溶媒はモノマーに対しての溶媒和によりウレタン結合生成速度を低下させることが知られており (Adolf E.Oberth and Rolf S.Bruenner, J.Phys.Chem., Vol72, 845-855 (1968))、その結果反応選択制も低下させるため、反応初期のジオールモノマー添加時においては、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン等のケトン類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの低極性溶媒を用いることで必要な反応選択性を維持するの好ましい。低極性溶媒としては反応操作性やモノマー基質溶解性を考慮に入れるとTHFなどのエーテル類が特に好ましい。
つぎに、重合反応を完結させるため、さらに高極性溶媒を加えるか、または低極性溶媒を留去などにより除去した後、高極性溶媒を加えるのが好ましい。このような高極性溶媒としては、例えば、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスホキシド)、NMP(N-メチルピロリドン)等の高極性非プロトン溶媒を用いるのが好ましい。なお、これらの溶媒はいずれも2種以上を混合しても良い。
【0031】
反応に用いる溶媒量としては選択性向上のためモノマー基質をできる限り希釈するよう用いることが好ましい。また、反応を効率よく進行させること、反応操作を考慮に入れると、モノマー基質が0.1〜0.3mol/Lになるよう用いることが望ましい。
【0032】
反応触媒としてはウレタン結合生成を効率よく進行させるため、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アルキルアミン類、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンなどの縮環アミン類、DBTL(ジブチルスズジラウリン酸エステル)、テトラブチルスズ、トリブチルスズ酢酸エステルなどのアルキルスズ類を用いることができる。これらのうちアルキルスズ類及び縮環アミン類は、アルキルアミン類に比べウレタン結合生成反応に対して活性の高い触媒であり(F.Hostettler and E.F.Cox, Ind.Eng.Chem., Vol.52, 609-610, (1960))、その結果、反応初期において必要な反応選択性を低下させる。したがって、反応初期においてはトリアルキルアミンを用いるのが好ましく、特に反応操作性を考慮に入れるとトリエチルアミンを用いることが望ましく、その後、効率のよい反応を行うためより活性の高い触媒を用いることが好ましい。
【0033】
前記反応に用いるトリアルキルアミン類の触媒量としては、反応選択性を高くすること、反応を効率よく進行させること、反応操作を考慮に入れると、モノマー基質に対し、1〜30mol%になるよう用いることが望ましい。
このようにして得られた式(1)及び式(2)で表される構造単位を有するポリウレタンは、xが1以上の整数、yが0又は1以上の整数であって、x+yは1〜10000、好ましくは10〜1000、さらに好ましくは30〜100である。また{x/(x+y)}×10は60〜100、好ましくは70〜100、さらに好ましくは80〜100である。
【0034】
得られた高分子化合物の定序性に関する定量的検討は、高分子主鎖中の頭−頭構造、尾−尾構造、頭−尾構造それぞれに対応するモデル化合物3種を合成し、これらモデル化合物の13C−NMRスペクトルと、実際に得られた高分子の13C−NMRスペクトルとを比較することにより行った。
【0035】
具体的には重水素化DMF溶媒中600MHz 13C−NMMRを用いて、3種のモデル化合物のエチレングリコール由来のメチレン基が、頭−頭構造の場合64.3ppm、尾−尾構造の場合64.6ppm、頭−尾構造の場合64.4,64.5ppmと区別が可能なことを確認した。
【0036】
実施例にて得られた高分子化合物について、同様に13C−NMRでのスペクトル分析を行ったところ、エチレングリコール由来のメチレン基のピークは重合条件によって変化し、そのピーク位置はモデル化合物と同様であることが確認できた。さらにそのピークの積分比を求めることにより得られた高分子化合物の定序性の定量化を行った。
【0037】
【実施例】
つぎに本発明を実施例、比較例によりさらに詳細に説明する。
(試験例1) 頭−頭構造に対応したモデル化合物(構造式1)の合成
【0038】
【化10】
Figure 0004581074
【0039】
THF50mLにDBTL0.67g(1.1mmol)、エチレングリコール1.21g(19.5mmol)、p−トリルイソシアナート5.38g(40.4mmol)を加え、60℃で1日撹拌を行った。溶媒留去後、酢酸エチルで再結晶精製することにより、結晶性固体を得た。ここで得られた生成物の13C−NMR測定を行った(図1)。その結果155.2ppmにカルボニル基(c)のピークが観察され、133.2、130.7、119.9、138.5、21.4ppmそれぞれ芳香環(b)とメチル基(a)のピークが観察され、64.3ppmにメチレン(d)のピークが観察されたことから、期待する頭−頭構造に対応した化合物であることを確認した。収量5.01g(収率78%)
【0040】
(試験例2) 尾−尾構造に対応したモデル化合物(構造式2)の合成
【0041】
【化11】
Figure 0004581074
【0042】
THF50mLにDBTL0.66g(1.0mmol)、エチレングリコール1.28g(20.6mmol)、o−トルイルイソシアナート5.48g(41.2mmol)を加え、60℃で1日撹拌を行った。溶媒留去後、酢酸エチルで再結晶精製することにより、結晶性固体を得た。ここで得られた生成物の13C−NMR測定を行った(図2)。その結果156.0ppmにカルボニル基(c)のピークが観察され、132.7、131.9、127.6、126.1、125.5、138.4、18.9ppmにそれぞれ芳香環(b)とメチル基(a)のピークが観察され、64.5ppmにメチレン(d)のピークが観察されたことから、期待する尾−尾構造に対応した化合物であることを確認した。収量4.98g(収率74%)
【0043】
(試験例3) 頭−尾構造に対応したモデル化合物(構造式3)の合成
【0044】
【化12】
Figure 0004581074
【0045】
THF40mLにDBTL2.47g(3.9mmol)、エチレングリコール50.5g(812.6mmol)を加えここにp−トルイルイソシアナート10.69g(80.3mmol)/THF40mlを2時間かけてで滴下した。 室温で1時間攪拌した後、60℃で1日撹拌を行った反応終了後、生成物を酢酸エチルに抽出し、数回水洗を行った。有機層を回収し硫酸マグネシウムで乾燥し溶媒を留去した。こうして得た反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (展開溶媒:酢酸エチル/n−ヘキサン=1/1→酢酸エチルのみ)で精製し、結晶性固体を得た。ここで得られた中間体の13C−NMR測定を行った。
【0046】
その結果、115.5ppmにカルボニル基のピークが観察され、119.8,130.7,133.0,138.7,21.4ppmに芳香環とメチル基 のピークが観測され、67.7と61.6ppmにメチレン基のピークが観測されることから目的とするN−(p−トルイ)−(2−ヒドロキシ)エチルカルバミン酸エステルであることを確認した。収量12.42g(収率77%)
【0047】
つぎに、この中間体5.86g(30.0mmol)にDBTL0.90g(1.4mmol)とo−トルイルイソシアナート4.07g(30.6mmol)を加え、THF80ml中60℃で1日撹拌した。溶媒留去後、酢酸エチルで再結晶精製することにより結晶性固体を得た。ここで得られた生成物の13C−NMR測定を行った(図3)。
【0048】
その結果、155.3,156.0ppmにカルボニル基(c),(f)のピークが観察され、125.4,126.1,127.6,131.9,132.7,138.4,18.9ppm及び119.9,130.7,133.2,138.5,21.5ppmに芳香環(b),(g)及びメチル基のピークがそれぞれ観測され、64.5,64.4ppmメチレン(d),(e)のピークが観測されたことから期待する頭−尾構造に対応した化合物であることを確認した。収量7.09g(収率72%)
【0049】
[実施例1]
(i) 2,4−TDI:EG=2:1重合中間体(構造式4)の製造
氷浴中でトリレン−2,4−ジイソシアナート5.08g(29.2mmol)に対してエチレングリコール0.37g(5.9mmol)、DBTL0.15g (0.24mmol)のトルエン溶液10mLsを1時間かけて滴下し、滴下終了後、0℃で1時間攪拌した。室温に戻した後、生成した白色沈殿をろ別し、これをそのまま真空乾燥した。収量1.77g (収率73%)
【0050】
構造確認するために得られた中間体をエタノールで末端封止した。中間体1.00g(2.44mmol)にエタノール0.90g(19.5mmol)とDBTL0.07g(0.12mmol)加えて、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)5mL中室温で2時間反応させた。これを水/MeOH=1/1(v/v)中に投入して、白色粉末の目的物を単離した。収量1.18g(収率98%)ここで得られた目的物の13C−NMR測定を行った(図4)。
【0051】
その結果、155.9ppmにカルボニル基(c)のピークが観察され、126.7、139.2、115.8、138.5、116.2、131.9、18.3ppmに芳香環(e)とメチル基(d)のピークが観測された。64.3ppmにメチレン(g)のピークが観察され、15.7、61.7ppmに末端エチル基(a),(b)のピークが観測された。以上のことから期待する重合中間体両末端がエチル基により封止された化合物(構造式5)であることが確認された。したがって、中間体として、2,4−TDI:EG=2:1重合中間体(構造式4)が生成していることが確認された。
【0052】
【化13】
Figure 0004581074
【0053】
【化14】
Figure 0004581074
【0054】
(ii) 頭−頭、尾−尾型定序性ポリウレタンの製造
前記(i)で製造した2,4−TDI:EG=2:1重合中間体1.10g(2.68mmol)をDMAc5.5mLに溶解し、エチレングリコール0.16g(2.64mmol)、DBTL0.11g(0.17mmol)を加えて、室温で1晩攪拌した。この重合溶液をMeOH/水=1/1(v/v)へ投入し、再沈澱させてポリマーを単離した。70℃で1晩乾燥して白色粉末のポリマーを得た。収量1.18g(収率94%)
【0055】
こうして得られた化合物の13C−NMRにおいて(図5)64.3ppmに現れた頭−頭構造由来のピーク及び64.6ppmに現れた尾−尾構造由来のピークに対する64.5、64.4ppmに現れた頭−尾ピークの吸収強度比からこの高分子は90%が頭−頭−尾−尾構造のポリウレタンが得られていることがわかった。分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)を用いてポリスチレンを基準物質にして求めたところ重量平均分子量は19000、分子量分布は2.43であった。
【0056】
[実施例2] one−potによる頭−頭、尾−尾型定序性ポリウレタンの製造
氷浴中でトリレン−2,4−ジイソシアナート1.74g(10.00mmol)に対してエチレングリコール0.31g(5.00mmol)、DBTL0.16g(0.25mmol)のトルエン溶液5mLを1時間かけて滴下し、滴下終了後、0℃にて2時間攪拌した。室温に戻した後、減圧下にてトルエンを留去した。これをDMAc20mLに溶解し、エチレングリコール0.31g(5.00mmol)、DBTL0.16g(0.25mmol)を一括添加し、室温で24時間攪拌した。得られたポリマーは実施例1と同様に精製後処理した。収量2.29g(収率97%)。
【0057】
こうして得られた化合物の13C−NMRスペクトル(図6)において64.3ppmに現れた頭−頭構造由来のピーク及び64.6ppmに現れた尾−尾構造由来のピークに対する64.5、64.4ppmに現れた頭−尾ピークの吸収強度比から、この高分子化合物は90.0%が頭−頭−尾−尾構造のポリウレタンであることがわかった。分子量を実施例1と同様にして求めたところ重量平均分子量は12400、分子量分布は2.39であった。
【0058】
[比較例1] ランダムポリウレタンの合成
トリレン−2,4−ジイソシアナート1.74g(10.0mmol)に対して、DMAc20mLにエチレングリコール0.62g(10.0mmol)とDBTL0.31g(0.49mmol)を溶解した溶液を一括して加えて、室温にて1晩撹拌した。得られたポリマーは実施例1と同様に精製後処理した。収量1.89g(収率80%)
【0059】
こうして得られた化合物の13C−NMRスペクトル(図7)において64.3ppmに現れた頭−頭構造由来のピーク及び64.6ppmに現れた尾−尾構造由来のピークに対する64.5,64.4ppmに現れた頭−尾ピークの吸収強度比から、この高分子化合物は50%が頭−頭−尾−尾構造のポリウレタンであることがわかった。分子量を実施例1と同様にして求めたところ重量平均分子量は7000、分子量分布は2.81であった。
【0060】
【発明の効果】
新規な定序性ポリウレタンを得ることができる。この高分子化合物は特有の熱的、力学的性質を有し、液晶性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1で得られたモデル化合物13C−NMRスペクトルである。
【図2】試験例2で得られたモデル化合物13C−NMRスペクトルである。
【図3】試験例3で得られたモデル化合物13C−NMRスペクトルである。
【図4】実施例1で得られた中間体の13C−NMRスペクトルである。
【図5】実施例1で得られた生成物の13C−NMRスペクトルである。
【図6】実施例2で得られた生成物の13C−NMRスペクトルである。
【図7】実施例3で得られた生成物の13C−NMRスペクトルである。

Claims (2)

  1. 下式(1):
    Figure 0004581074
    (式中、Rメチル基、Rエチレン基である。)で表される頭−頭−尾−尾構造単位、及び下式(2):
    Figure 0004581074
    (式中、R及びRは前記に同じ。)で表される頭−尾構造単位を有し、xは整数、yは0又は整数であり、{x/(x+y)}×100が60〜100であり、x+yが3〜10000である定序性ポリウレタン。
  2. トリレン−2,4−ジイソシアナートと、これに対して1/2モル量のエチレングリコールを反応させる第1の工程、並びに前記ジイソシアネート化合物にさらにをエチレングリコール反応させて重合反応を完了する第2工程からなる請求項1の定序性ポリウレタンの製造法。
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