JP3940299B2 - 定序性ポリウレタンウレア重合体 - Google Patents

定序性ポリウレタンウレア重合体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の分野】
本発明はモノマー構造単位の配列が規制された定序性ポリウレタンウレア重合体に関する。
【0002】
【産業上の利用分野】
本発明は、非対称ジイソシアナートモノマーと、芳香族ジアミン及び脂肪族ジオールとから得られる定序性ポリウレタンウレアに関する。定序性重合体は配列異性重合体であり、光学材料や電気材料等の機能材料などに用いられる。
【0003】
【発明の背景】
モノマーの配列を規制することにより得られる高分子(以下、定序性高分子という)は熱的、力学的性質はもちろん、非線形光学、液晶等などの物性においても特異的性質を有するものと期待されている。しかしながら、工業的に製造され広く用いられているポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド等の重縮合系高分子では、モノマーの配列を制御した高分子の製造は困難であり、合成法の確立に大きな関心が持たれている。
【0004】
定序性高分子のモノマー分子設計としては、季刊化学総説18巻 85−95(1993)に記載されているように、用いるモノマーの分子構造に方向性があることはもちろん、重合点となる官能基部位の反応性に十分な差を有する必要があるとされている。
【0005】
多官能イソシアナート化合物はその高反応性を利用して、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド等の原料として広く工業的に利用されており、イソシアナート化合物をモノマーとした定序性高分子は工業的に非常に有用であると考えられる。
【0006】
一官能イソシアナート化合物の場合、イソシアナート基に結合する官能基によってその反応性が大きくことが知られている。例えば、脂肪族イソシアナートと芳香族イソシアナートとでは、トリエチルアミン触媒を用いることによりメタノールのような求核剤を使用した求核反応において300倍以上の反応性差を有するとの報告がある(M.Sato,J.Am.Chem.Soc.vol.82, p3893−3897,(1960))。この性質を利用してこれまでに我々は、非対称モノマーとしてρ−イソシアナトベンジルイソシアナートを用い、対称モノマーとしてエチレングリコールを用いることにより頭頭−尾尾および頭−尾構造単位を有する定序性ポリウレタンが合成できることを見出した(特開平11−171965、特願平2000−230631)。
【0007】
また、前記の非対称イソシアナートと共に、4−アミノフェネチルアルコール(芳香族性アミノ基と脂肪族性水酸基を分子内に有する)などの非対称性のアミノアルコールを用い頭−尾構造を有するポリウレタンウレアが合成できることも見出した(特願2001−61191)。
【0008】
イソシアナート基とアミノ基との反応により得られるウレア結合は、焦電性や圧電性、さらには非線形光学特性などを有することが知られており、定序性ポリマーからなる機能性高分子を得る(機能化)上で非常に有用であると考えられる。しかしながら、分子内に芳香族性アミノ基と脂肪族性水酸基を有する前記のアミノアルコールは、原料モノマーとして汎用性が低く、選択可能なモノマーの種類も限定されるため、このような定序性高分子を材料とした機能化には制約が大きい。
【0009】
そこで、種々の原料から定序性高分子を製造し、機能化を容易とするために、非対称モノマーであるアミノアルコールに代えて、対称芳香族ジアミンと対称脂肪族ジオールを用い、汎用性の高いモノマーから定序性ポリマーを得るべく検討を行った。このような非対称モノマー1種と対称モノマー2種から得られる定序性ポリウレタンウレアについてはこれまで報告はない。
【0010】
本発明の目的は反応性の異なる官能基を分子内に有するジイソシアナートと、ジアミン及びジオールとから新規な定序性ポリウレタンウレアを製造することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、(i)分子内に2つのイソシアナート基を有し、かつ一方のイソシアナート基が芳香環に直接結合し、他方のイソシアナート基が、芳香族に結合した脂肪族性炭素原子に結合している非対称のジイソシアナートモノマーと、(ii)芳香族性ジアミン及び脂肪族性ジオールとの反応性を詳細に検討した。その結果、このような化合物には2つのイソシアナート基の各々、及びジアミンのアミノ基とジオールの水酸基に対応して反応性に明確な差があるとの知見を得た。そして、ジイソシアナートに対して所定の方法で芳香族ジアミンと脂肪族ジオールを反応させることにより定序性ポリマーを製造することが可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本願の第1の発明は、下式(1):
【化5】
Figure 0003940299
(式中、R及びRは各々別個に水素又は低級アルキル基、aは1〜10の整数を意味する。)
で表されるジイソシアナート構造単位、
下式(2):
【0013】
【化6】
Figure 0003940299
(式中、Rは2価の芳香族基を意味する。)
で表されるジアミン構造単位、及び
下式(3):
【0014】
【化7】
Figure 0003940299
(式中、Rは2価の脂肪族基を意味する。)
で表されるジオール構造単位を有し、式(1)の構造単位をk個、式(2)の構造単位をl個、式(3)の構造単位をm個含む数平均分子量2,000〜200,000、好ましくは5,000〜100,000のポリウレタンウレア化合物であって、
かつ、下式(4):
【0015】
【化8】
Figure 0003940299
で表される構造単位をx個含み、前記k,l,m及びxの関係が0.7≦4x/(k+l+m)≦1であるポリウレタンウレアを提供するものである。数平均分子量が前記数値範囲よりも小さいと充分な高分子化合物は得られず、一方これより大きい高分子化合物は実用的でない。なお、上記にポリウレタンポリウレアにおいて式(1)の両端には必ず式(2)または式(3)の構造単位が結合し、式(2)及び式(3)の構造単位は連続して結合しない。式(1)(2)(3)の各々はそれ自身では連続して結合しない。
【0016】
【発明の詳細な開示】
本発明のポリウレタンウレアは式(1)、式(2)及び式(3)の構造単位を有しており、モノマーの反応条件を選択することにより前記4x/(k+l+m)が0.7〜1で式(4)の配列単位が優先するポリウレタンウレアが得られる。
つぎに本発明の定序性ポリウレタンウレアのモノマー及びその重合法について詳細に説明する。
【0017】
(ジイソシアナート化合物)
本発明の定序性ポリウレタンウレアの原料であるジイソシアナートは、
下式:
【0018】
【化9】
Figure 0003940299
で表される。このジイソシアナートモノマーの特徴は、分子内に2つのイソシアナート基を有しており、一方のイソシアナート基が芳香環に直接結合し、他方のイソシアナート基は、芳香環に結合した炭素原子に結合している。このような構造により2つのイソシアナート基は大きな反応性差を示す。
【0019】
芳香環上のイソシアナート基及び炭素原子に結合したイソシアナート基はオルト、メタ、パラ位のいずれの位置であってもよい。式(5)中、n=1〜10である。R及びRは水素原子又はメチル基、エチル基等の低級アルキル基が好ましい。したがって、式(5)の化合物の代表的なものとしては、イソシアナトベンジルイソシアナート、イソシアナトフェネチルイソシアナート、α−(イソシアナトフェニル)−エチルイソシアナート等のジイソシアナートである。本発明にて用いることのできる二価の非対称ジイソシアナートの分子量は、通常174〜500、好ましくは174〜300である。
【0020】
(芳香族ジアミン)
本発明の定序性ポリウレタンウレアの原料である芳香族ジアミンは、
下式:
【0021】
【化10】
Figure 0003940299
(Rは、前記と同じものを意味する。)
で表される2価の芳香族ジアミンである。式(6)において、Rは具体的にはフェニレン、ビフェニレン、ジフェニルエーテルなどの芳香族炭化水素類、ジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどの脂肪族と芳香族の基からなる炭化水素類であり、下記構造式のものが含まれる。
【0022】
【化11】
Figure 0003940299
【0023】
したがって、前記式(6)で表される代表的なジアミンとしては、例えば、1,4−フェニレンジアミン、ビフェニレンジアミン、3,3−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジフェニルメタン、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ネオペンチルグリコールビス(4−アミノフェニル)エーテル、プロペンビス(4−アミノフェニル)エーテル、ブテンビス(4−アミノフェニル)エーテル、ヘプテンビス(4−アミノフェニル)エーテルなど、イソシアナートと反応する二価の芳香族ジアミンである。本発明にて用いられる二価の芳香族ジアミン類の分子量は、通常108〜600、好ましくは108〜400である。
【0024】
(脂肪族ジオール)
一方、脂肪族ジオールは、下式:
【化12】
Figure 0003940299
(Rは、前記と同じものを意味する。)
で表される2価の脂肪族ジオールである。式(7)中、Rは具体的にはジメチレン基、ペンタメチレン基などの直鎖脂肪族炭化水素類、2−メチル−トリメチレン基などの枝分かれ脂肪族炭化水素類、3−オキサ−ペンタメチレン基などの含ヘテロ原子炭化水素基、シクロヘキシニレン基やステロイド骨格などの環式脂肪炭化水素類、ベンゼンジメタノールなど芳香環に結合した肪族性水酸基を有するものでもよい。すなわち、Rの具体例としては例えば下記構造式:
【0025】
【化13】
Figure 0003940299
にて表される脂肪族、芳香族及びヘテロ原子からなる炭化水素基などが挙げられる。
【0026】
したがって、前記式(7)で表される代表的なジオールとしては、例えば、エチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、ジヒドロキシシクロヘキサン、イソマンニド、イソソルビドなどの脂肪族アルコール類、また、ヒドロキノン類、ビスフェノールA、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビス(2,6−メチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−(1,3−アダマンテンジイル)ジフェノールなどの2価の芳香族アルコール類、あるいはデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸などの胆汁酸類、1,5−ジヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等の非等価水酸基を有する化合物など、イソシアナートと反応する2価の水酸基を有する化合物であればよい。用いることのできる二価アルコール類の分子量は、通常62〜500、好ましくは62〜300である。
【0027】
(定序性ポリウレタンウレアの製造法)
つぎに、前記のモノマーを用いて、式(4)の配列単位が優先する、すなわち、4x/(k+l+m)が0.7〜1であるように配列制御のなされた定序性ポリウレタンウレアの製造法について詳細に説明する。
【0028】
ジアミンモノマーとジオールモノマーの量は、共重合体の分子量を充分に大きくするため、ジイソシアナートモノマーのイソシアナート官能基数に対して、ジアミンモノマーのアミノ基数とジオールモノマー水酸基数との合計がほぼ等しく(等モル量)なるように用いるのが好ましいが、これに限定されるものではない。ここで略等モル量とは、ジイソシアナート1モルあたり、ジアミンモノマーとジオールモノマーの総量が、0.8〜1.2モル、好ましくは0.9〜1.1モル、より好ましくは0.99〜1.01モルである。このときジアミンモノマーとジオールモノマーは、これらの合計1モル当たりそれぞれ0.4〜0.6モル、好ましくは0.45〜0.55、より好ましくは0.49〜0.51モルである。
【0029】
式(4)で表される配列単位を主体とするポリウレタンウレアを製造するには、前記イソシアナート化合物と、ジアミン化合物及びジオール化合物を重縮合するにあたり、(イ)ジイソシアナートに対し、各々略1/2倍モル量の芳香族ジアミンと脂肪族ジオールとを実質的に一時に反応させる。又は(ロ)最初に略1/2倍モルのジアミンモノマーのみを滴下し、その後、略1/2倍モルのジオールモノマーを加えてもよい。このような反応操作は、少なくともジオール添加の開始時点で、実質的に全てのジアミンが反応に関与していることを意味する。このようにして、ジアミンのアミノ基とジイソシアナートモノマーの芳香族イソシアナート基が反応したジアミンモノマーとジイソシアナートモノマーの(1:2)付加物が優先的に生成する反応条件を選択する。
【0030】
これに対して、例えば、ジアミンモノマーとジオールモノマーとの混合物をジイソシアナートモノマーに対して滴下したり、先にジオールモノマーを添加した後、ジオールモノマーを添加するなど、ジオールモノマーの添加が先行し、ジオールの添加時点でまだジアミンの添加が終了しておらず実質的にジアミンの全てが反応に関していない反応条件では、式(4)の配列単位の含有量が低下する。
【0031】
このように本発明ではジオールが反応に関与を開始した時点で、実質的にジアミンの全量がジイソシアナートとの反応系に加えられている。このような操作には、▲1▼反応系内にモノマーの全部(ジイソシアナートと、ジアミン及びジオール)を一時に加える。▲2▼ジイソシアナートと、これに対し略1/2倍モルずつのジアミン及びジオール混合物とを等モルずつ反応系に加える。▲3▼ジイソシアナート、又はジアミン及びジオール混合物の存在下、他方を速やかに反応系に加える。
【0032】
またかかる重縮合反応の反応温度は、ジイソシアナートモノマーに対するジアミンモノマーとジオールモノマーの反応選択性の向上を図るために、できるだけ低いのが好ましい。また、低温での反応によりウレタン結合生成時に競合するイソシアナートの三量化反応などの副反応も抑制できる。従って、反応温度は、−40〜40℃、好ましくは−20〜30℃であり、より好ましくは−10〜0℃であり特に0℃付近で反応させるのが好ましい。また、反応温度は、反応開始から終了まで一定の温度で行なってもよく、初期に低温で行ないその後、温度上げてもよい。
【0033】
また、重合時間は、重合の進行を考慮に入れて、5〜48時間で行ない、好ましくは、10〜24時間で行なうのがよい。
【0034】
反応に用いる溶媒は、目的ポリマーが高極性であることと、重合を効率的に進行させるため、高極性溶媒を用いる必要がある。例えば、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリドン)等の高極性非プロトン溶媒を選択することが好ましいが、反応基質及び目的物が良好に溶解しさえすればシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの溶媒であってもよく、これらを混合して用いてもよい。これら溶媒の使用量は、反応の選択性向上の点からモノマー基質をできる限り希釈するのが好ましいが、反応を効率よく進行させること、反応操作を考慮に入れるとモノマー基質が0.1〜2mol/Lになるように調製するのがよい。
【0035】
イソシアナートに対するアミノ基の反応性は、水酸基の反応性よりも高いことからウレア結合を生成させるためには、一般に触媒を必要としないが、ウレタン結合生成を効率よく進行させるため、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アルキルアミン類、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−エンなどの縮環アミン類、DBTL、テトラブチルスズ、トリブチルスズ酢酸エステルなどのアルキルスズ類等、公知のウレタン結合生成触媒を用いることができる。
【0036】
芳香族イソシアナートとアミノ基との反応を優先的に生じ、芳香族イソシアナートと水酸基の反応性を抑制するため、重合初期は無触媒で行い、その後、効率的にウレタン結合生成を行うよう、より活性の高いアルキルスズ類及び縮環アミン類などの触媒を用いるのが好ましい。
触媒の使用量は、効率のよい反応及び反応操作を考慮してモノマー基質に対して0.1〜30mol%用いるのが好ましい。
【0037】
以上のように、式(4)の構造単位を優先して生成させるには、ジアミンモノマーとジオールモノマーの各イソシアナート基に対する反応性の違いが必要であるほか、少なくともジオールの添加開始時点で実質的にジアミンの全てを添加し、ジアミンモノマーのアミノ基が、ジイソシアナートモノマー中の芳香族イソシアナートに優先的に反応し、ジオールモノマーの水酸基が脂肪族イソシアナート基と優先的に反応する条件を選択することが重要である。
【0038】
こうして得られた高分子の定序性に関する定量的検討には、特開平11−171965号に開示のように高分子主鎖中のジオールモノマー由来の13C−NMRメチレン基のピークが、頭−頭構造、尾−尾構造、頭−尾構造により異なることを利用した。即ち、配列それぞれに対応するモデル化合物3種を合成し、これと実施例にて得られたモノマーとを比較した。得られた高分子においてジオールモノマー由来のメチレン基のシグナルが、尾−尾構造であればもう一方のジアミンモノマーの配列構造は、頭−頭構造であり、所望の配列構造を有していると判断できる。
【0039】
なお、ここで非対称なジイソシアナート化合物とジオールとが反応して得られる高分子重合体の配列単位のうち、下式:
【化14】
Figure 0003940299
で表される配列(中央のジオール単位に対して反応性の高い芳香族性イソシアナート基が両端に結合する)を頭−頭配列単位と定義する。
【0040】
また、下式:
【化15】
Figure 0003940299
で表される配列を尾−尾配列単位と定義する。
【0041】
さらに、下式:
【化16】
Figure 0003940299
で表される配列を頭−尾配列単位と定義する。
【0042】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例及び比較例により、さらに詳細に説明する。
[参考例1] 頭−頭構造に対応したモデル化合物の合成
1,4−ジオキサン50mLにDBTL0.55g(0.87mmol)、エチレングリコール1.28g(20.6mmol)、フェニルイソシアナート4.96g(41.6mmol)を加え、60℃で1日撹拌を行った。溶媒留去後、酢酸エチルで再結晶精製し結晶性固体を得た。ここで得られた生成物の13C−NMR測定を行った(図1)。その結果154.9ppmにカルボニル基(b)のピークが観察され、140.8、130.0、123.8、119.6ppmに芳香環(a)のピークが観察され、64.2ppmにメチレン(c)のピークが観察されたことから、期待する頭−頭構造に対応した化合物であることを確認した。収量4.76g(収率76%)
【0043】
[参考例2] 尾−尾構造に対応したモデル化合物の合成
1,4−ジオキサン50mLにDBTL0.55g(0.87mmol)、エチレングリコール1.10g(17.7mmol)、ベンジルイソシアナート4.74g(35.6mmol)を加え、60℃で1日撹拌を行った。溶媒留去後、酢酸エチルで再結晶精製し結晶性固体を得た。ここで得られた生成物の13C−NMR測定を行った(図2)。その結果158.0ppmにカルボニル基(c)のピークが観察され、141.4、129.6、128.6、128.2ppmに芳香環(a)のピークが観察され、64.3ppmにメチレン(d)のピークが観察され、45.7ppmにベンジル位メチレン(b)のピークが観察されたことから、期待する尾−尾構造に対応した化合物であることを確認した。収量4.72g(収率81%)
【0044】
[参考例3] 頭−尾構造に対応したモデル化合物の合成
N−ベンジル−(2−ヒドロキシ)エチルカルバミン酸エステル2.93gにDBTL0.73g(1.16mmol)とフェニルイソシアナート1.81(15.2mmol)を加え、1,4−ジオキサン90mL中60℃で1日撹拌した。溶媒を留去し、n−ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒で再結晶精製して結晶性固体を得た。ここで得られた生成物の13C−NMR測定を行った(図3)。その結果、158.0ppmにカルボニル基(e)のピークが観察され、155.0ppmにカルボニル基(b)のピークが観察され、141.0、130.1、123.8、119.7ppmに芳香環(a)のピークが観察され、141.4、129.6、128.6、128.2ppmに芳香環(g)のピークが観察され、64.5ppmにメチレン(d)のピークが観察され、64.1ppmにメチレン(c)のピークが観察され、45.8ppmにベンジル位メチレン(f)のピークが確認されたことから、期待する頭−尾構造に対応した化合物であることを確認した。収量2.84g(収率60%)
【0045】
[実施例1] 定序性ポリウレタンウレア(ジオール;尾−尾構造)の合成
DMF10mLに溶解したp−イソシアナトベンジルイソシアナート0.871g(5.0mmol)に対してDMF10mLに2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン1.30g(2.5mmol)、エチレングリコール0.155g(2.5mmol)を溶解した溶液を0℃ですばやく添加し、さらに1時間撹拌した。次にDBTL0.0947g(0.15mmol)を添加し、30℃で1日撹拌した。溶媒を留去して反応溶液を濃縮し、これをメタノールで再沈殿精製した後、70℃にて1日真空乾燥を行ない化合物を得た。収量2.16g(収率93%)
【0046】
得られた化合物の13C−NMRスペクトル(図4、図5)においてメチレン基のピークが62.6ppmにのみ観測され、エチレングリコールが尾−尾構造である配列構造を有するポリウレタンウレアが得られていることがわかった(4x/(k+l+m)=1)。
【0047】
分子量をGPCを用いてポリスチレンを基準物質にして求めたところ重量平均分子量は250000、分子量分布は4.8であった。
【0048】
[比較例1] ランダムポリマーの合成
DMF5mLに溶解した2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン1.30g(2.5mmol)、エチレングリコール0.155g(2.5mmol)、DBTL0.0947g(0.15mmol)に対してDMF15mLに溶解したp−イソシアナトベンジルイソシアナート0.871g(5.0mmol)を50℃加温下30分かけてゆっくり滴下し、1時間撹拌した。さらに、室温にもどして30℃で1日攪拌した。溶媒を留去して反応溶液を濃縮し、これをメタノールで再沈殿精製し、70℃にて1日真空乾燥を行い化合物を得た。収量2.09g(収率90%)
【0049】
得られた化合物の13C−NMRスペクトル(図6、図7)においてメチレン基のピークが62.8、92.6、62.4ppmに現れ、エチレングリコールが頭−尾、頭−頭、尾−尾構造の配列構造をすべて有するランダム構造のポリウレタンウレアが得られていることがわかった。
【0050】
分子量をGPCを用いてポリスチレンを基準物質にして求めたところ重量平均分子量は22000、分子量分布は3.5であった。
【0051】
【発明の効果】
モノマー構造単位の配列が規制された定序性ポリウレタンウレアが容易に得られる。このポリウレタンウレアは光学材料や電気材料等の機能材料などに用い得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1で得られたモデル化合物の13C−NMRスペクトルである。
【図2】 参考例2で得られたモデル化合物の13C−NMRスペクトルである。
【図3】 参考例3で得られたモデル化合物の13C−NMRスペクトルである。
【図4】 実施例1で得られた定序性ポリウレタンウレアの13C−NMRスペクトルである。
【図5】 実施例1で得られた定序性ポリウレタンウレアの13C−NMRスペクトルのEG由来メチレン部位の拡大図である。
【図6】比較例1で得られたランダムポリウレタンウレアの13C−NMRスペクトルである。
【図7】比較例1で得られたランダムポリウレタンウレアの13C−NMRスペクトルのEG由来メチレン部位の拡大図である。

Claims (1)

  1. 下式(1):
    Figure 0003940299
    (式中、R及びRは各々別個に水素又は低級アルキル基、aは1〜10の整数を意味する。)
    で表されるジイソシアナート構造単位、
    下式(2):
    Figure 0003940299
    (式中、Rは2価の芳香族基を意味する。)
    で表されるジアミン構造単位、及び
    下式(3):
    Figure 0003940299
    (式中、Rは2価の脂肪族基を意味する。)
    で表されるジオール構造単位を有し、式(1)の構造単位をk個、式(2)の構造単位をl個、式(3)の構造単位をm個含む数平均分子量2,000〜200,000のポリウレタンウレア化合物であって、
    かつ、下式(4):
    Figure 0003940299
    で表される構造単位をx個含み、前記k,l,m及びxの関係が0.7≦4x/(k+l+m)≦1であるポリウレタンウレア。
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