JP4580975B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池システムに関する。詳しくは、自動車に搭載される燃料電池システムに関する。
近年、自動車の新たな動力源として燃料電池システムが注目されている。燃料電池システムは、例えば、反応ガスを化学反応させて発電する燃料電池と、反応ガス流路を介して燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給装置と、この反応ガス供給装置を制御する制御装置と、を備える。
燃料電池は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。ここで、各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成され、膜電極構造体は、アノード電極(陽極)およびカソード電極(陰極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。
この燃料電池のアノード電極に水素ガスを供給し、カソード電極に酸素を含む空気を供給すると、電気化学反応により発電する。
ところで、以上の燃料電池システムでは、水素タンクから燃料電池に水素ガスを供給し、燃料電池からは、水素オフガスが排出される。ここで、水素タンクから供給される水素ガスには、発電に必要な水素量よりも多くの水素が含まれているため、燃料電池から排出される水素オフガスには、余剰な水素が含まれる。そこで、循環装置を用いて、水素オフガスを回収し、この回収した水素オフガスを水素タンクからの水素ガスに合流させて、燃料電池に供給している。
この循環装置としては、外部に動力源を必要とせず、圧力エネルギを利用するエゼクタが用いられることが多い。エゼクタは、例えば、筐体と、この筐体内部に進退可能に設けられたニードルと、筐体内部に設けられニードルを収容する略筒状のノズルと、を備える(特許文献1参照)。
ノズル内部には、水素タンクからの水素ガスが導入され、ノズルの吐出口には、水素オフガスが導入される。また、ニードルの基端側には、信号圧が導入される空気極圧導入室が設けられる。この空気極圧導入室に隣接して、燃料極圧導入室が設けられ、この燃料極圧導入室には、水素オフガスが配管を通して背圧として導入される。
空気極圧導入室とノズル内部とは、第1ダイアフラムで仕切られている。空気極圧導入室と燃料極圧導入室とは、第2ダイアフラムで仕切られている。
このエゼクタによれば、空気極圧導入室と燃料極圧導入室との差圧に応じて、ニードルが進退し、回収する水素オフガス流量および燃料電池に供給する水素ガス流量を調整する。
特開2002−227799号公報
しかしながら、特許文献1に示された構成では、水素タンクから導入される水素ガスの圧力が変動すると、この圧力変動は、第1ダイアフラムを介して、空気極導入室に伝わる。よって、空気導入室に導入される信号圧も変動し、その結果、エゼクタから燃料電池に供給する水素ガス流量が変動してしまう、という課題があった。よって、エゼクタに導入する水素ガスの圧力を制御するレギュレータが必要であった。
本発明は、導入されるガスの圧力が変動しても、送出するガスの流量を一定にできるエゼクタを提供することを目的とする。
本発明のエゼクタ(例えば、後述のエゼクタ50)は、筐体(例えば、後述の筐体60)と、当該筐体の内部に形成され、第1ガス(例えば、後述の水素タンク22からの水素ガス)が導入される第1流体室(例えば、後述の第1流体室63)と、前記筐体の内部に固定された棒状のニードル(例えば、後述のニードル70)と、前記筐体の内部に設けられ当該ニードルを内部に収容し、前記第1流体室に導入された第1ガスを前記ニードルとの隙間に流通させて、吐出口(例えば、後述の吐出口84)から吐出するノズル(例えば、後述のノズル80)と、前記筐体の内部のうち前記ノズルの先端側に設けられて第2ガス(例えば、後述の水素還流路45からの水素オフガス)が導入される第2流体室(例えば、後述の第2流体室62)と、前記筐体の内部に形成され前記ノズルから吐出された第1ガスの流速を上昇させて送出し、当該送出される第1ガスの負圧により、前記第2流体室に導入される第2ガスを吸引して第1ガスに合流させるディフューザ(例えば、後述のディフューザ93)と、前記筐体の内部のうち前記ノズルの基端側に設けられて第3ガス(例えば、後述のエア分岐路411からのエア)が導入される第3流体室(例えば、後述の第3流体室64)と、を備え、当該第3流体室に導入される第3ガスの圧力を用いて、前記ノズルの吐出口を前記ニードルの先端に対して進退させることで、当該吐出口の開口面積を変化させて、ノズルから吐出される第1ガスの流量を調整する前記第1流体室は、前記第2流体室と前記第3流体室との間に設けられ、前記第1流体室と前記第2流体室とは、前記ノズルの先端側と前記筐体の内壁面との間に設けられた第1ダイアフラム(例えば、後述の第1ダイアフラム65)で仕切られ、前記第1流体室と前記第3流体室とは、前記ノズルの基端側と前記筐体の内壁面との間に設けられかつ前記第1ダイアフラムと略同一の面積(例えば、後述の面積S)を有する第2ダイアフラム(例えば、後述の第2ダイアフラム66)で仕切られ、前記第3流体室に導入された第3ガスの圧力により、前記ニードルの先端と前記ノズルの吐出口互いに離隔する方向に前記ノズルを移動させ、前記第2流体室に導入された第2ガスの圧力により、前記ニードルの先端と前記ノズルの吐出口互いに接近する方向に前記ノズルを移動させる。
この発明によれば、筐体の内部のうちノズルの先端側に第2流体室を設け、筐体の内部のうちノズルの基端側に第3流体室を設け、第1流体室を、第2流体室と第3流体室との間に設けた。また、第1流体室と第2流体室とをノズルの先端側と筐体の内壁面との間に設けられた第1ダイアフラムで仕切るとともに、第1流体室と第3流体室とをノズルの基端側と筐体の内壁面との間に設けられ、上記第1ダイアフラムと略同一の面積を有する第2ダイアフラムで仕切った。そして、第3ガスの圧力により、ニードルの先端とノズルの吐出口互いに離隔する方向にノズルを移動させ、第2ガスの圧力により、ニードルの先端とノズルの吐出口互いに接近する方向にノズルを移動させた。
例えば、第1ガスの圧力が変動すると、この圧力の変動は、第1流体室の両側に形成されたダイアフラムを介して、第2流体室および第3流体室に伝わる。よって、第2流体室に導入された第2ガスと第3流体室に導入された第3ガスとは、圧力変動の影響を受けることになるが、第2流体室をノズルの先端側に設け第3流体室をノズルの基端側に設けたので、第2ガスと第3ガスとでは、ニードルに対しノズルを移動させる方向が逆になる。またこのとき、第1ダイアフラムと第2ダイアフラムの面積を略同一としたので、上記第1ガスの圧力変動の影響は相殺される。よって、ノズルニードルに対し移動させる力は、第2流体室と第3流体室との差圧に依し、上記第1ガスの圧力変動の影響は及ばないことになるため、第1流体室に導入する第1ガスの圧力を制御するレギュレータは不要となる。
この場合、アノードガス(例えば、後述の水素ガス)およびカソードガス(例えば、後述のエア)を反応させて発電を行う燃料電池(例えば、後述の燃料電池10)にアノードガスを供給するエゼクタであって、前記エゼクタは、上述のエゼクタであり、前記ディフューザの送出口(例えば、後述の送出口61)は、前記燃料電池に接続され、前記第1流体室には、アノードガス供給源(例えば、後述の水素タンク22)から第1ガスとしてアノードガスが導入され、前記第2流体室には、第2ガスとして前記燃料電池から排出されるアノードオフガスが導入され、前記第3流体室には、第3ガスとしてカソードガスが導入されることが好ましい。
従来では、配管を用いて、水素オフガスをニードルの基端側に背圧として導入するが、水素オフガスには燃料電池で生成された水分が含まれるため、水素オフガス内に含まれる水分が配管内で凍結し、エゼクタの性能が低下するおそれがある。
しかしながら、この発明によれば、ノズルの先端側の第2流体室に導入されるアノードオフガスをノズルの基端側に導入しないので、アノードオフガスに含まれる水分が凍結しても、エゼクタの性能が低下するのを防止できる。
この場合、前記ノズルの内壁面と前記ニードルの外壁面との間に設けられたガス遮断手段(例えば、後述のゴムシール86)をさらに備え、前記第3流体室に導入される第3ガスの圧力が所定値以下になると、前記ニードルと前記ノズルとの間隙は、前記ガス遮断手段により塞がれることが好ましい。
従来の燃料電池車両では、アノードガスの圧力による燃料電池内部の破損を防止するため、アノードガスの供給路に遮断弁を設けておき、車両が停止する毎に、この遮断弁を閉じる必要があった。
しかしながら、この発明によれば、燃料電池車両が停止して、第3ガスの圧力が所定値以下になると、ニードルとノズルとの間隙は、ガス遮断手段により塞がれる。よって、エゼクタの下流側の圧力が低下し、燃料電池内部の圧力が低下する。よって、燃料電池内部の破損を自動的に防止でき、遮断弁を省略することが可能となる。
本発明によれば、第1ガスの圧力が変動すると、この圧力の変動は、第1流体室の両側に形成された第1ダイアフラムおよび第2ダイアフラムを介して、第2流体室および第3流体室に伝わる。よって、第2流体室に導入された第2ガスと第3流体室に導入された第3ガスとは、圧力変動の影響を受けることになるが、第2流体室はノズルの先端側に設け第3流体室をノズルの基端側に設けたので、第2ガスと第3ガスとでは、ニードルに対しノズルを移動させる方向が逆になる。またこのとき、第1ダイアフラムと第2ダイアフラムの面積を略同一としたので、上記第1ガスの圧力変動の影響は相殺される。よって、ノズルニードルに対し移動させる力は、第2流体室と第3流体室との差圧に依し、上記第1ガスの圧力変動の影響は及ばないことになるため、第1流体室に導入する第1ガスの圧力を制御するレギュレータは不要となる。
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るエゼクタが適用された燃料電池システム1のブロック図である。
燃料電池システム1は、車両に搭載され、反応ガスを反応させて発電を行う燃料電池10と、この燃料電池10に水素ガスやエア(空気)を供給する供給装置20と、これらを制御する制御装置30と、を有する。
このような燃料電池10は、アノード電極(陽極)側にアノードガスとしての水素ガスが供給され、カソード電極(陰極)側にカソードガスとしての酸素を含むエアが供給されると、電気化学反応により発電する。
供給装置20は、燃料電池10のカソード電極側にエアを供給するエアポンプ21と、アノード電極側に水素ガスを供給するアノードガス供給源としての水素タンク22およびエゼクタ50と、燃料電池10から排出されるガスを処理する希釈器23と、を含んで構成される。
エアポンプ21は、エア供給路41を介して、燃料電池10のカソード電極側に接続されている。
エア供給路41は途中で分岐されており、この分岐した部分は、エア分岐路411となり、後述エゼクタ50に接続される。
エア分岐路411には、このエア分岐路411内のエアを排出することで、エア分岐路411内のエアの圧力を調整するインジェクタ412と、オリフィス413と、が設けられている。
燃料電池10のカソード電極側には、エア排出路42が接続され、このエア排出路42の途中には、上述の希釈器23が設けられる。
水素タンク22は、水素供給路43を介して、燃料電池10のアノード電極側に接続されている。
水素供給路43には、上流側から順に、レギュレータ431、遮断弁432、およびエゼクタ50が設けられる。
燃料電池10のアノード電極側には、水素排出路44が接続され、この水素排出路44は、希釈器23に接続される。この水素排出路44には、パージ弁441が設けられている。また、水素排出路44のうちパージ弁441よりも燃料電池10側では、水素排出路44が分岐されて水素還流路45となり、この水素還流路45は、上述のエゼクタ50に接続されている。また、水素還流路45には、水素ガスの逆流を防止する逆止弁451が設けられている。
このパージ弁441を開くことにより、水素排出路44内の水素ガスは、希釈器23に流入し、エア排出路42内のエアで希釈されて排出される。
エゼクタ50は、燃料電池10から水素排出路44に排出された水素オフガスを、水素還流路45を通して回収し、水素供給路25に還流する。ここで、エゼクタ50は、エア分岐路411から導入するエアの圧力に基づいて、水素還流路45から回収する水素ガス流量を調整する。
制御装置30は、供給装置20を制御して、燃料電池10を発電させる。このとき、インジェクタ412を制御して、水素還流路45から回収する水素ガス流量を調整する。
具体的には、制御装置30は、水素還流路45から回収する水素ガス流量を増加する場合には、インジェクタ412のエア排出量を減少させて、エゼクタ50に導入するエア圧力を上昇させる。一方、水素還流路45から回収する水素ガス流量を減少させる場合には、インジェクタ412のエア排出量を増加させて、エゼクタ50に導入するエア圧力を低下させる。
具体的には、制御装置30は、以下の手順で燃料電池10を発電させる。
すなわち、パージ弁441を閉じるとともに、遮断弁432を開く。そして、エアポンプ21を駆動することにより、エア供給路41を介して、燃料電池10のカソード側にエアを供給する。同時に、水素タンク22から、水素供給路43を介して、燃料電池10のアノード側に水素ガスを供給する。
燃料電池10に供給された水素ガスおよびエアは、発電に供された後、燃料電池10からアノード側の生成水などの残留水と共に、水素排出路44およびエア排出路42に流入する。パージ弁441は閉じているので、水素排出路44に流れた水素ガスは、水素還流路45を通って水素供給路43に還流されて、再利用される。
ここで、エアポンプ21から供給されたエアの一部は、エア分岐路411にも流入する。インジェクタ412からのエア排出量を調整することで、エア分岐路411を通ってエゼクタ50に流入するエアの圧力を変化させ、回収する水素ガス流量を調整する。
その後、パージ弁441を適当な開度で開くことにより、水素排出路44に排出された水素ガスは、希釈器23に流入する。この希釈器23に流入した水素ガスは、希釈器23において、エア排出路42を流通するエアで希釈されて、外部に排出される。
図2は、エゼクタ50の構造を示す断面図である。
エゼクタ50は、筐体60と、この筐体60内部に固定されたニードル70と、このニードルを収容する略筒状のノズル80と、を備える。
ニードル70は、筐体60の内壁面に支持された円盤状の支持部71と、この支持部から突出し筐体の延出方向に沿って延びる棒状のニードル本体72と、を備える。
支持部71には、挿通孔73が形成されている。
ノズル80は、ニードル70の基端側に設けられた基端部81と、ニードル70の先端側に設けられた先端部82と、これら基端部81と先端部82とを連結する連結ピン88と、を備える。
連結ピン88は、ニードル70の支持部71に形成された挿通孔73に挿通されている。
先端部82には、筐体の延出方向に沿って延びる貫通孔83が形成され、この貫通孔83の先端面は、吐出口84となっている。また、この貫通孔83の内径は、吐出口84に接近するに従って小さくなっており、さらに、この貫通孔83の基端側には、円筒状の軸受85が設けられている。
ノズル80の先端部82の基端面には、ガス遮断手段としてのゴムシール86が設けられている。
一方、基端部81には、凹部87が形成されている。
ニードル本体72の先端側は、先端部82の貫通孔83に挿入されて、軸受85に支持される。一方、ニードル本体72の基端側は、基端部81の凹部87に嵌合されて支持される。
これにより、ニードル70は、ノズル80の内部に収容され、ノズル80をニードル70と同軸方向に進退可能に保持している。すなわち、ニードル70の先端とノズル80の吐出口84とが相対移動可能となっている。
以上のニードル70およびノズル80によれば、ノズル80の基端部81と先端部82との間に導入されたガスは、ノズル80の先端部82とニードル本体72との隙間を流通して、ノズル80の吐出口84から吐出される。
筐体60は、略筒状であり、この筐体60の先端面には、送出口61が形成される。この送出口61には、水素供給路43を介して燃料電池10が接続される。
また、筐体60には、ノズル80を付勢してノズル80とニードル70との相対位置を保持するばね91と、筐体60の基端面に螺合されてこのばね91の付勢力を調整する調整ねじ92と、が設けられている。
ノズル80の外壁面と筐体60の内壁面との間の空間は、ノズル80の先端側に位置する第2流体室62、ノズル80の中央部側に位置する第1流体室63、ノズル80の基端側に位置する第3流体室64の3つに仕切られている。つまり、第1流体室63は、第2流体室62と第3流体室64との間に設けられている。
第1流体室63と第2流体室62とは、第1ダイアフラム65で仕切られている。この第1ダイアフラム65は、ノズル80の先端部82と筐体60の内壁面との間に形成されている。
第1流体室63と第3流体室64とは、第2ダイアフラム66で仕切られている。この第2ダイアフラム66は、ノズル80の基端部81と筐体60の内壁面との間に形成されている。
すなわち、第1流体室63は、第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66で仕切られて、ノズル80の基端部81と先端部82との間に設けられることになる。
また、これら第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66の面積は略同一となっている。
筐体60には、第1流体室63に連通する第1連通孔67、第2流体室62に連通する第2連通孔68、および、第3流体室64に連通する第3連通孔69が形成されている。
第1連通孔67には、水素供給路43を介して水素タンク22が接続され、この第1連通孔67を通して、水素タンク22から第1ガスとしての水素ガスが第1流体室63に導入される。そして、この第1流体室63に導入された水素ガスは、ノズル80に導入されて、ノズル80の吐出口84から吐出される。
第2連通孔68には、水素還流路45が接続され、この第2連通孔68を通して、燃料電池10から排出された第2ガスとしての水素オフガスが第2流体室62に導入される。
第3連通孔69には、エア分岐路411が接続され、この第3連通孔69を通して、第3ガスとしてのエアが第3流体室64にエア信号圧として導入される。
筐体60の先端側の形状は、ディフューザ93となっており、ノズル80の吐出口84に接続されている。このディフューザ93は、具体的には、筐体60の内径が送出口61に向かうに従って急激に狭くなり、その後、緩やかに拡がることにより形成される。
ディフューザ93は、ノズル80から吐出された水素ガスの流速を上昇させて送出口61から送出し、この送出される水素ガスの負圧により、第2流体室62に導入される水素オフガスを吸引して、第1流体室63に導入される水素ガスに合流させる。
第3流体室64がノズル80の基端側に設けられているため、第3流体室64に導入されたエア信号圧により、第2ダイアフラム66が第1流体室63および第2流体室62側へ変形し、この第2ダイアフラム66が設けられたノズル80がその先端側へ移動するため、ノズル80の吐出口84とニードル70の先端互いに離隔する方向にノズル80が移動される。一方、第2流体室62がノズル80の先端側に設けられているため、第2流体室62に導入された水素オフガスの圧力により、第1ダイアフラム65が第1流体室63および第3流体室64側へ変形し、この第1ダイアフラム65が設けられたノズル80がその基端側へ移動するため、ノズル80の吐出口84とニードル70の先端互いに接近する方向にノズル80が移動される。
すなわち、第3流体室64に導入されるエア信号圧をPairとし、第2流体室に導入される水素オフガスの圧力をPoutとし、第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66の面積をSとし、ノズル80を後退させるばね91の付勢力をFとすると、ノズル80をニードル70に対し移動させる力のうち第1流体室63に導入される水素ガスの圧力変動の影響は相殺され、結果として以下の式が成立する。
F=(Pair−Pout)×S
したがって、ノズル80とニードル70との相対位置は、ばね91の付勢力Fによって規定される。そして、第2流体室62と第3流体室64との差圧に応じて、ニードル70の先端とノズル80の吐出口84との相対位置が変化し、その結果、吐出口84の開口面積が変化して、吐出口84から吐出される水素ガスの流量が調整される。
以上のエゼクタ50の動作は、以下のようになる。
第3流体室64に導入されたエア信号圧が、所定値ここでは第2流体室62に導入された水素オフガスの圧力よりも高い場合、図3に示すように、ノズル80が前進する。
そして、第1流体室63に導入された水素ガスは、ノズル80に導入され、ノズル80の先端部82とニードル本体72との隙間を流通して、ノズル80の吐出口84から吐出される。ノズル80から吐出された水素ガスは、ディフューザ93により流速が上昇して送出口61から送出される。この送出される水素ガスの負圧により、第2流体室62に導入される水素オフガスを吸引して、第1流体室63に導入される水素ガスに合流させる。
ここで、第3流体室64に導入されたエア信号圧を上昇させると、ノズル80の吐出口84の開口面積が大きくなる。その結果、ノズル80から吐出される水素ガス流量が増加し、この水素ガスの負圧によって吸引される水素オフガス流量も増加する。一方、第3流体室64に導入されたエア信号圧を低下させると、ノズル80の吐出口84の開口面積が小さくなる。その結果、ノズル80から吐出される水素ガス流量が減少し、この水素ガスの負圧によって吸引される水素オフガス流量も減少する。
また、第3流体室に導入されるエア信号圧が、所定値ここでは第2流体室62に導入される水素オフガスの圧力以下である場合、図4に示すように、ノズル80が後退するため、ノズル80の吐出口84とニードル70の先端面とが接近し、ニードル70とノズル80との間隙は、ゴムシール86により塞がれて、ノズル80から吐出される水素ガス流量がゼロになる。
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)筐体60の内部のうちノズル80の先端側に第2流体室62を設け、筐体60の内部のうちノズル80の基端側に第3流体室64を設け、第1流体室63を第2流体室62と第3流体室64との間に設けた。また、第1流体室63と第2流体室62とをノズル80の先端側と筐体60の内壁面との間に設けられた第1ダイアフラム65で仕切るとともに、第1流体室63と第3流体室64とをノズル80の基端側と筐体60の内壁面との間に設けられ、上記第1ダイアフラム65と略同一の面積Sを有する第2ダイアフラム66で仕切った。そして、エア分岐路411からのエアの圧力により、ニードル70の先端とノズル80の吐出口84互いに離隔する方向にノズル80を移動させ、水素還流路45からの水素オフガスの圧力により、ニードル70の先端とノズル80の吐出口84互いに接近する方向にノズル80を移動させた。
例えば、水素タンク22からの水素ガスの圧力が変動すると、この圧力の変動は、第1流体室63の両側に形成されたダイアフラム65、66を介して、第2流体室62および第3流体室64に伝わる。よって、第2流体室62に導入された水素還流路45からの水素オフガスと第3流体室64に導入されたエア分岐路411からのエアとは、圧力変動の影響を受けることになるが、第2流体室62をノズル80の先端側に設け第3流体室64をノズル80の基端側に設けたので、水素還流路45からの水素オフガスとエア分岐路411からのエアとでは、ニードル70に対しノズル80を移動させる方向が逆になる。またこのとき、第1ダイアフラム65と第2ダイアフラム66の面積を略同一としたので、上記水素タンク22からの水素ガスの圧力変動の影響は相殺される。よって、ノズル80をニードル70に対し移動させる力は、第2流体室62と第3流体室64との差圧(P air −P out )に依存し、上記水素タンク22からの水素ガスの圧力変動の影響は及ばないことになるため、第1流体室63に導入する水素ガスの圧力を制御するレギュレータが不要となる。
(2)ノズル80の先端側の第2流体室62に導入される水素オフガスをノズル80の基端側に導入しないので、水素オフガスに含まれる水分が凍結しても、エゼクタ50の性能が低下するのを防止できる。
(3)燃料電池車両が停止して、エア分岐路411からのエアの圧力が所定値以下になると、ニードル70とノズル80との間隙は、ゴムシール86により塞がれる。よって、エゼクタ50の下流側の圧力が低下し、燃料電池10の内部の圧力が低下する。よって、燃料電池10の内部の破損を自動的に防止でき、遮断弁を省略することが可能となる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、第1流体室63と第3流体室64とを仕切る第2ダイアフラム66を1つとしたが、これに限らず、図5に示すように、第2ダイアフラム66Aを2重にして、この第2ダイアフラム66Aの間の空間を大気に開放してもよい。このようにすれば、第2ダイアフラム66Aが破損した場合でも、第1流体室63に導入される水素ガスと第3流体室64に導入されるエアとが混合することなく、燃料電池10の劣化を防止できる。
本発明の一実施形態に係るエゼクタが適用された燃料電池システムのブロック図である。 前記実施形態に係るエゼクタの構造を示す断面図である。 前記実施形態に係るエゼクタについて、第3ガスの圧力が所定値を超える場合の動作を説明するための断面図である。 前記実施形態に係るエゼクタについて、第3ガスの圧力が所定値以下である場合の動作を説明するための断面図である。 本発明の変形例に係るエゼクタの断面図である。
10 燃料電池
22 水素タンク(アノードガス供給源)
50 エゼクタ
62 第2流体室
63 第1流体室
64 第3流体室
65 第1ダイアフラム
66 第2ダイアフラム
70 ニードル
80 ノズル
84 吐出口
86 ゴムシール(ガス遮断手段)
93 ディフューザ

Claims (4)

  1. 筐体と、
    当該筐体の内部に形成され、第1ガスが導入される第1流体室と、
    前記筐体の内部に固定された棒状のニードルと、
    前記筐体の内部に設けられ当該ニードルを内部に収容し、前記第1流体室に導入された第1ガスを前記ニードルとの隙間に流通させて、吐出口から吐出するノズルと、
    前記筐体の内部のうち前記ノズルの先端側に設けられて第2ガスが導入される第2流体室と、
    前記筐体の内部に形成され前記ノズルから吐出された第1ガスの流速を上昇させて送出し、当該送出される第1ガスの負圧により、前記第2流体室に導入される第2ガスを吸引して第1ガスに合流させるディフューザと、
    前記筐体の内部のうち前記ノズルの基端側に設けられて第3ガスが導入される第3流体室と、を備え、
    当該第3流体室に導入される第3ガスの圧力を用いて、前記ノズルの吐出口を前記ニードルの先端に対して進退させることで、当該吐出口の開口面積を変化させて、ノズルから吐出される第1ガスの流量を調整するエゼクタであって、
    前記第1流体室は、前記第2流体室と前記第3流体室との間に設けられ、
    前記第1流体室と前記第2流体室とは、前記ノズルの先端側と前記筐体の内壁面との間に設けられた第1ダイアフラムで仕切られ、前記第1流体室と前記第3流体室とは、前記ノズルの基端側と前記筐体の内壁面との間に設けられかつ前記第1ダイアフラムと略同一の面積を有する第2ダイアフラムで仕切られ、
    前記第3流体室に導入された第3ガスの圧力により、前記ニードルの先端と前記ノズルの吐出口互いに離隔する方向に前記ノズルを移動させ、前記第2流体室に導入された第2ガスの圧力により、前記ニードルの先端と前記ノズルの吐出口互いに接近する方向に前記ノズルを移動させることを特徴とするエゼクタ。
  2. 請求項1に記載のエゼクタであって、
    前記筐体の内部には、前記ノズルを付勢し、当該ノズルと前記ニードルとの相対位置を保持するばねが設けられることを特徴とするエゼクタ。
  3. アノードガスおよびカソードガスを反応させて発電を行う燃料電池にアノードガスを供給するエゼクタであって、
    前記エゼクタは、請求項1または2に記載のエゼクタであり、
    前記ディフューザの送出口は、前記燃料電池に接続され、
    前記第1流体室には、アノードガス供給源から第1ガスとしてアノードガスが導入され、
    前記第2流体室には、第2ガスとして前記燃料電池から排出されるアノードオフガスが導入され、
    前記第3流体室には、第3ガスとしてカソードガスが導入されることを特徴とするエゼクタ。
  4. 請求項3に記載のエゼクタであって、
    前記ノズルの内壁面と前記ニードルの外壁面との間に設けられたガス遮断手段をさらに備え、
    前記第3流体室に導入される第3ガスの圧力が所定値以下になると、前記ニードルと前記ノズルとの間隙は、前記ガス遮断手段により塞がれることを特徴とするエゼクタ。
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