JP4580479B2 - 抗hiv感染症剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はHIV感染症の治療、予防に有用な医薬に関する。詳細には、本発明は感光色素を有効成分として含有する抗HIV感染症剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome、以下エイズと略する) は世界的に爆発的な流行をみせている。エイズはヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、以下HIVと略する)の感染により引きおこされる。そのため、HIV感染症とよぶのがむしろ正しい。HIVに感染しただけではエイズは発症せず、無症候の期間が数カ月から数年ある。そして、無症候の期間が終わると、HIVによって免疫システムが急速に破壊されはじめ、リンパ節腫脹、食欲不振、下痢、体重減少、発熱、倦怠感等の症状が出現する。これらはエイズ関連症候群(AIDS-related complex、以下ARCと略する)と呼ばれる。さらに免疫力が低下すると、通常は無害の微生物(細菌、ウイルス、真菌、原虫等)が体に深刻な影響を与え始め、日和見感染症などがみられる。このような免疫が低下するとあらわれる感染症をエイズとよぶ。エイズとは、後天性免疫不全症候群を発症するまで免疫が低下したHIV感染症の末期の状態をいうのである。エイズを含めてHIVに感染している病態全体をHIV感染症とよぶ。
【0003】
本来、ヒトは病原体などの異物を認識し排除する機構として免疫システムを持っている。そして、この免疫システムを動かす細胞として、CD4陽性リンパ球がよく知られている。体内に侵入したHIVはCD4陽性リンパ球のCD4蛋白に結合して細胞内に潜り込む。このHIVは逆転写酵素を持っているので自身のRNAをDNAに読み替えて細胞の核内のDNAに組み込むことができる。このため、HIVに感染したCD4陽性リンパ球はウイルスを製造しながら、徐々に死んでいく。こうして、免疫システムを動かす細胞が減少して免疫システムの破壊がおこる。そして、HIV感染症では厄介なことに生体がウイルスに対して免疫システムをもって対応しようとすればするほど、感染細胞内ではウイルスの産生が盛んになり、CD4陽性リンパ球の減少という逆効果になってしまうのである。
【0004】
HIV感染症に関しては、臨床的に有効な抗ウイルス剤やワクチン剤を目指し、現在多くの精力的な研究が行われている。そして、現在臨床で用いられている薬や臨床試験中のものは、逆転写酵素阻害剤、吸着阻害剤、脱殻阻害剤、Tat阻害剤、翻訳阻害剤、プロテアーゼ阻害剤(ウイルス粒子合成阻害剤)、プロウイルス活性化阻害剤、HIV蛋白分解酵素阻害剤等がある。
【0005】
これらのうち、現在最も用いられている薬の一つにアジドチミジン(以下AZTと略する)がある。AZTは、投与を行うと死亡率が有意に低下することから抗HIV剤として認可された。しかしAZTは好中球の減少、貧血、不眠、吐き気、頭痛等の副作用があり、またエイズの発症をしばし遅らせるだけである。また、他の治療薬も試されてはいるが、未だ根本的な治療薬とはなっていないのが現状である。
【0006】
ところで、免疫システムを考えた場合、マクロファージの活性化は極めて重要である。例えば、バクテリアが侵入したとき、マクロファージはそれを貪食し活性化しながら抗原提示細胞になる。抗原の情報はマクロファージからCD4陽性リンパ球を経てBリンパ球に伝わり、Bリンパ球は抗体を産生する。また、抗体の結合したバクテリア即ち免疫複合体はマクロファージによって特異的にスピーディーに貪食排除される。このとき活性化マクロファージは免疫複合体を捕捉するためのFcレセプターを表示し、貪食活性の著しい上昇を示したり、取り込まれた異物を分解するための活性酸素の産生能を上昇させたり、抗原提示機能を増強したり、各種サイトカインを分泌する。また、最終的には活性化マクロファージはNK細胞などと共同して癌細胞やウイルス感染細胞を破壊しているのである。このように、活性化マクロファージによって免疫力が増強されることはよく知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述したようにCD4陽性リンパ球はヒトの免疫システム全体(アレルギーや細菌感染に関する体液性免疫、癌やウイルス疾患に関する細胞性免疫、さらにマクロファージの活性化など)を調整している。エイズの発症はこの命令を下すCD4陽性リンパ球が減少することで説明できる。しかし本当の原因はマクロファージの活性化が起こらず、細胞性免疫が作動できなくなることであろう。ところが、免疫系を持たない下等動物ではマクロファージのような貪食細胞によって異物排除が行われている。そこで、CD4陽性リンパ球が減少してもマクロファージを活性化することができれば、細胞性免疫機能が改善されウイルスの除去が可能になると考えられる。
【0008】
このマクロファージの活性化は前述のCD4陽性リンパ球の産生するマクロファージ活性化因子(インターフェロンγなど)によって起こることはよく知られている。しかし、CD4陽性リンパ球が減少することによりマクロファージ活性化因子の量も減少するのであるから、それに代わる活性化因子を補う必要がある。本発明はこのような観点から研究をすすめ完成されたものである。
【0009】
本発明の目的はHIV感染症の治療、予防に有用な新規医薬を提供することにある。
また本発明の目的はHIV感染症の治療、予防に有用な医薬の投与量を明確にすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、感光色素である一般式(I)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R1 、R2 及びR3 は同一又は異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を表し、X- は生理学的に許容しうる一価のアニオンであり、好ましくはハロゲンアニオンであり、更に好ましくはヨードアニオンを表す。)で表される化合物及び一般式(II)
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、R4 、R5 及びR6 は同一又は異なっていてもよく、それぞれ炭素数5〜10のアルキル基を表し、好ましくは炭素数7の直鎖状のアルキル基を表す。X- は生理学的に許容しうる一価のアニオンであり、好ましくはハロゲンアニオンであり、更に好ましくはヨードアニオンを表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種をHIV感染者に投与した場合、ARCの症状の改善あるいは治癒、CD4陽性リンパ球の増加がおこり、HIV感染症の治療に有効であることを見いだした。
【0015】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)一般式(I)
【0016】
【化5】
【0017】
(式中、R1 、R2 及びR3 は同一又は異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を表し、X- は生理学的に許容しうる一価のアニオンであり、好ましくはハロゲンアニオンであり、更に好ましくはヨードアニオンを表す。)で表される化合物及び一般式(II)
【0018】
【化6】
【0019】
(式中、R4 、R5 及びR6 は同一又は異なっていてもよく、それぞれ炭素数5〜10のアルキル基を表し、好ましくは炭素数7の直鎖状のアルキル基を表す。X- は生理学的に許容しうる一価のアニオンであり、好ましくはハロゲンアニオンであり、更に好ましくはヨードアニオンを表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の感光色素を有効成分として含有する抗HIV感染症剤。
(2)一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の感光色素の1日当たりの投与量が体重1kg当たり2μg〜100μgである上記(1)の抗HIV感染症剤。
(3)一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の感光色素の1日当たりの投与量が体重1kg当たり5μg〜40μgである上記(1)の抗HIV感染症剤。
(4)経口用剤である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗HIV感染症剤。
(5)X- がハロゲンアニオンである上記(1)の抗HIV感染症剤。
(6)X- がヨードアニオンである上記(1)の抗HIV感染症剤。
(7)R1 、R2 及びR3 がエチル基であり、R4 、R5 及びR6 が炭素数7の直鎖状のアルキル基であり、X- がヨードアニオンである上記(1)の抗HIV感染症剤。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
R1 、R2 及びR3 における炭素数1〜4のアルキル基は直鎖状又は分枝鎖状であってよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルが挙げられる。
【0021】
R4 、R5 及びR6 における炭素数5〜10のアルキル基は直鎖状又は分枝鎖状であってよく、例えば、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられ、好ましくは炭素数7の直鎖状のアルキル基である。
【0022】
X- における生理学的に許容しうる一価のアニオンとしては、ハロゲンアニオン(例えば、ヨードアニオン、クロロアニオン、ブロモアニオン、フルオロアニオン)、アルキル硫酸イオン(ここでアルキルは好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である)、硝酸イオン、過塩素酸イオン等の無機アニオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン等の有機スルホン酸アニオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン等の有機カルボン酸アニオン、ニコチン酸イオン、オロト酸イオン等のその他の有機酸アニオンが挙げられ、好ましくはハロゲンアニオンであり、更に好ましくはヨードアニオンである。
【0023】
本発明の抗HIV感染症剤に用いられる有効成分の好ましい例としては、一般式(I)において、R1 、R2 及びR3 がエチル基、X- がヨードアニオンである化合物、一般式(II)においてR4 、R5 及びR6 が−(CH2 )6 CH3 、X- がヨードアニオンである化合物が挙げられる。
【0024】
本発明の有効成分である感光色素は単独で使用しても、又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明に用いられる感光色素は、すでによく知られた化合物であり、Kendall,J.D. and Majer,J.R., J. Chem. Soc., 690 (1948)などに記載の方法又はそれに類似の方法により製造することができる。また、アニオンは既知のアニオン交換法を用いて導入することもできる。一般式(I)においてR1 、R2 及びR3 がエチル基、X- がヨードアニオンである化合物(以下、有効成分Aという)は特開平3−90025号公報に、一般式(II)においてR4 、R5 及びR6 が−(CH2 )6 CH3 、X- がヨードアニオンである化合物(以下、有効成分Bという)は特開昭58−90510号公報に記載されている。本発明に用いられる一般式(I)の化合物及び一般式(II)の化合物は、これらの公報に記載されている通り、毒性が極めて低く、副作用が極めて少なく、安全性に優れているものである。例えば、有効成分Bの腹腔内投与のLD50値は54mg/kgであり、経口投与のLD50値は1.5g/kgである。有効成分Aに関しては、4g/kgの高濃度の経口投与でも何ら中毒症状等の副作用は認められない。なお、経口投与剤の場合には、感光色素は必ずしも高度に精製されておらずともよく、ヒトを含む哺乳類に経口投与して所望の抗HIV感染症作用を発揮するものであれば、その製法、性状、純度は問わない。
【0026】
本発明の抗HIV感染症剤に用いられる感光色素は、例えば▲1▼Cancer Immunology Immunotherapy, 37, 157-162 (1993) 及び▲2▼J. Photochem. Photobiol. B: Biol., 295-306 (1992) で示されるようにマクロファージ活性化作用を有することが明らかにされている。本発明者らは一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の感光色素を有効成分として含有する抗HIV感染症剤が、ウイルス除去が困難である難病のHIV感染症に対して、極めて優れた臨床的効果を発揮することを発見したのである。
【0027】
本発明者らは、まず有効成分A及び有効成分BのHIVに対する抗ウイルス作用を調べた。その結果、これらの化合物にはHIVの複製を抑制する抗ウイルス作用がないことがわかった。しかし、驚くべきことに本発明に用いられる感光色素にHIV感染症患者のCD4陽性リンパ球数の増加効果及びHIV感染症患者のARCの改善あるいは治癒という臨床的効果がみられた。本発明の抗HIV感染症剤に、エイズ発症の抑制あるいはエイズ発症後の延命という効果が期待できるのである。本発明の抗HIV感染症剤の投与と共に輸血を行うと更に治療効果は増大する。これは、Cancer Research, 57, 295-297 (1997) に示されているように、マクロファージの活性化に血清中のGC−グロブリンが必要であることと関係があると考えられる。本発明の抗HIV感染症剤の特徴であるマクロファージの活性化は、リンパ球(Tリンパ球、Bリンパ球)、及びGC−グロブリンの存在によって発現するので、本発明の抗HIV感染症剤と通常のエイズの治療のために行う輸血とは相乗的な効果が期待できるのである。
【0028】
本発明の抗HIV感染症剤はヒト、サル、ウシ及びネコを含む哺乳類に投与することができる。
【0029】
本発明の抗HIV感染症剤は経口投与又は注射投与、直腸内投与、点鼻投与、経皮投与、経粘膜投与、舌下投与等の非経口投与のいずれでも使用することができる。本発明の有効成分は、経口投与、直腸内投与、注射投与、点鼻投与、経皮投与、経粘膜投与、舌下投与等の投与方法に適した固体又は液体の医薬的に許容される無毒性の担体と混合して慣用の医薬製剤の形態で投与することができる。経口投与の場合は特に利用価値が高く、錠剤あるいは散剤などを症状にあわせて1日1回〜数回、適量(通常体重1kg当たり2μg〜12μg程度)の有効成分を投与すればよい。有効成分の1日当たりの投与量(好適には経口投与における1日当たりの投与量)は通常体重1kg当たり2μg〜100μg、好ましくは体重1kg当たり5μg〜40μgである。経口投与の場合、本発明の抗HIV感染症剤を空腹時に口に含んで口内で溶かして服用する形態が好適である。この有効な投与量には個人差があるが、本発明の抗HIV感染症剤は毒性が極めて低く、副作用が極めて少なく、安全性に優れているので、服用する患者の「活力感、食欲、睡眠、利尿、バイオリズム、便秘の解消、その他の発現する有用な自覚的反応」を目安にして投与量の増減が可能である。本発明の抗HIV感染症剤は、生体のバイオリズムを整え、「本人の自覚症状によって適切な服用量を自分で判断できる」という利点を持ち合わせている。
【0030】
本発明の抗HIV感染症剤の剤型としては、経口用剤(例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤等)、注射剤、坐薬、点鼻薬、経皮投与用製剤(例えば、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤等)、経粘膜投与用製剤、舌下剤、噴霧剤、吸入剤等が挙げられる。
【0031】
医薬的に許容される担体としては、乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、ソルビトール、マンニトール、マルトース、トレハロース、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等の賦形剤、メチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、ショ糖脂肪酸エステル等の結合剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等の増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸等の滑沢剤、ポリエチレングリコール、カカオ脂等の坐剤基剤、蒸留水、注射用蒸留水、滅菌精製水、生理食塩水、植物油(オリーブ油、ゴマ油、ダイズ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油)、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール等の無機又は有機溶剤等が挙げられる。さらに本発明の医薬製剤には、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等の保存剤、モノステアリン酸グリセリン等の乳化剤、塩酸、クエン酸、酢酸、酒石酸、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の緩衝剤を含むpH調整剤等の添加剤を添加してもよい。
【0032】
また、本発明の抗HIV感染症剤と他の薬剤とを組み合わせて用いることも可能である。そのような他の薬剤としては、抗ウイルス剤、抗生物質、解熱鎮痛剤、粘膜保護剤、免疫増強剤、ビタミン剤、皮膚保護剤等が挙げられる。
【0033】
本発明の抗HIV感染症剤と組み合わせて用いることができる抗ウイルス剤は、HIV感染症の治療に用いられる抗HIV剤であれば特に限定されるものではない。好適な抗ウイルス剤の例としては、AZT、ジデオキシイノシン(ddI)、ジデオキシシチジン(ddC)、ラミブジン(3TC)、スタブジン(d4T)等のヌクレオシド誘導体、インジナビル(IDV)、サキナビル、リトナビル(RTV)、ネルフィナビル等のプロテアーゼ阻害剤、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ等のインターフェロンが挙げられる。これらの抗ウイルス剤の1種又は2種以上と本発明の抗HIV感染症剤とを組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明の抗HIV感染症剤と組み合わせて用いることができる抗生物質としては、抗菌剤、抗真菌剤(カンジダ症、カリニ肺炎などに対する抗真菌剤を含む)などが挙げられる。
【0035】
本発明において「HIV感染症」とはエイズ、症候性又は無症候性のHIV感染症(ARCを含む)を含めてHIVに感染している病態をいう。
本発明において「抗HIV感染症剤」とは、HIV感染症の予防及び/又は治療用の薬剤を意味する。「治療」とは症状の改善、緩和又は治癒を目的とする処置を含む。「HIV感染症の治療」とは、HIV感染による症状の改善、緩和又は治癒、エイズ発症の予防又は遅延を目的とした処置を含む。具体的には、CD4陽性リンパ球数の増加又は減少の抑制、NK細胞活性の増加又は低下の抑制、ARCの予防、改善、緩和又は治癒、エイズ発症の予防又は遅延、日和見感染症の予防、改善、緩和又は治癒、エイズの症状の改善、緩和又は治癒を目的とした処置を含む。ARCの症状には、リンパ節腫脹、食欲不振、下痢、体重減少、発熱、倦怠感、発疹、気管支喘息等が含まれる。
【0036】
本発明の抗HIV感染症剤による治療効果は、HIV感染症患者におけるARCの症状の改善又は治癒、特に体重の増加又は減少抑制により、あるいはHIV感染患者のCD4陽性リンパ球数の増加又は減少抑制、あるいは細胞性免疫活性(NK細胞活性、T/B比)の増減を測定することにより確認することができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の製剤例、実験例、臨床試験例を示し、本発明を更に詳細に説明する。
製剤例
上記処方において、感光色素として有効成分A又は有効成分Bを用いて2種類の錠剤を常法により調製した。
【0038】
上記処方のトローチ剤を常法により調製した。
【0039】
上記処方において、感光色素として有効成分A又は有効成分Bを用いて2種類の注射用粉末を常法により調製した。
【0040】
上記処方のトローチ剤を常法により調製した。
【0041】
実験例1
HIV感染細胞に対する効果を調べるため、ポウエルズらの方法[Pauels, R. et al., J. Virol. Methods, 16, 171-185 (1987)]に従い、anti-HIVアッセイを行ったMT−4細胞(培養開始細胞数1×104 /well)にHIVとしてHTLV−IIIB(200CCID50/well)を感染させ、37℃、4日間培養し、HIVの複製の抑制効果を測定した。コントロールとしてスラミンを用いた。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
この結果からわかるように、有効成分A及び有効成分Bは試験をした濃度においてはHIVの複製を抑制しなかった。
【0044】
次に本発明の抗HIV感染症剤を使用した臨床試験例を説明する。なお、以下に述べる臨床試験は患者に有効成分である感光色素の化合物名、化学構造等について明かすことなく、タイ国内で実施されたものである。
【0045】
臨床試験例1
ARCの患者(男性、39才)に本発明の抗HIV感染症剤の投与を行った。この患者は、5年前にHIVに感染していることが判明し、1年2ヵ月前からAZT/ddI/RTVの投与を開始した。本発明の抗HIV感染症剤の投与前のCD4陽性リンパ球(以下CD4と略する)数は121/mm3 、体重55.6kgであった。
【0046】
この患者に有効成分Aを用いた本発明の処方1の抗HIV感染症剤(有効成分Aの投与量1日500μg)を8週間投与したところ、CD4数が181/mm3 に増加し、体重が56.9kgに増加した。それに伴い、食欲増加、胸筋増加がみられた。
【0047】
続いてこの患者に有効成分Aを用いた本発明の処方1の抗HIV感染症剤(有効成分Aの投与量1日1000μg)を16週間投与した。CD4数が192/mm3 に増加し、体重が57.1kgに増加した。またARCの症状である気管支喘息が治癒した。
【0048】
臨床試験例2
7名のARC又はエイズ発症患者に対して、有効成分Aを用いた本発明の処方1の抗HIV感染症剤の投与を行った。それぞれの患者の治療前の経歴は次に示す通りである。
【0049】
患者No.1(男性、35才)は、2年4ヵ月前にHIVに感染していることが判明し、7ヵ月前からAZT/3TC/IDVの投与を開始した。本発明の抗HIV感染症剤の投与前のCD4数は165/mm3 、体重76.3kgであった。
【0050】
患者No.2(男性、42才)は、3年5ヵ月前にHIVに感染していることが判明し、その後直ちにAZT/3TC/IDVの投与を開始した。本発明の抗HIV感染症剤の投与前のCD4数は92/mm3 、体重76.2kgであった。
【0051】
患者No.3(男性、32才)は、1年9ヵ月前にHIVに感染していることが判明し、エイズを発症していた。AZT/3TCの投与を過去21週間受けており、本発明の抗HIV感染症剤の投与前のCD4数は180/mm3 、体重53.8kgであった。
【0052】
患者No.4(男性、54才)は、7年2ヵ月前にHIVに感染していることが判明した。2年10カ月前からAZT/ddIを投与開始し、1年11カ月前からRTVを追加した。抗HIV剤の投与開始当初はCD4数が増加したが徐々に減少しており、本発明の抗HIV感染症剤の投与前のCD4数は222/mm3 、体重76kgであった。
【0053】
患者No.5(男性、32才)は、7年前にHIVに感染していることが判明した。本発明の抗HIV感染症剤の投与前のCD4数は317/mm3 であった。
【0054】
患者No.6(女性、33才)は、4年2ヵ月前にHIVに感染していることが判明し、1年8ヵ月前からAZT/ddIの投与を開始した。本発明の抗HIV感染症剤の投与前のCD4数は353/mm3 、体重45.6kgであった。
【0055】
患者No.7(男性、32才)は、3年4ヵ月前にHIVに感染していることが判明し、AZT/ddIの投与を開始した。9ヵ月前からIDV/d4T/3TCに変更した。本発明の抗HIV感染症剤の投与前のCD4数は254/mm3 、体重58.2kgであった。
【0056】
それぞれの患者に有効成分Aを用いた本発明の処方1の抗HIV感染症剤(有効成分Aの投与量1日500μg)を8週間投与したところ、殆どの患者において、CD4数が増加し、体重も増加した。それに伴い、食欲増加がみられ、ARCの症状の一つでもある発疹が減少し、痔が治癒し、不眠も改善された。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
この結果からわかるように、本発明の抗HIV感染症剤の効果は顕著である。なお、処方2〜4においても同様の効果が認められた。
【0059】
【発明の効果】
HIV感染者は毎年その6%がエイズを発症していくとされている。エイズ発症患者は細胞性免疫が極度に低下し、カリニ肺炎などの日和見感染症、カポジ肉腫、脳障害(痴呆状態)などを合併し、死に至るのである。こうしたエイズ発症患者又は発症前のHIV感染症患者の治療において、本発明の抗HIV感染症剤は幾つかの効果をあげることができる。その一つはCD4陽性リンパ球数を増加させる効果である。また、エイズ関連症候群(ARC)を治癒する効果である。さらに、食欲増加、体重増加などの効果も挙げられる。これらの効果により、エイズ発症を予防又は遅延させ、HIV感染者に延命をもたらすことができる。当然、HIV感染症の治療は長期的なものになるが、本発明の抗HIV感染症剤は毒性が極めて低く、副作用が極めて少なく、安全性に優れているのでHIV感染症の治療に極めて有用な薬剤である。
【0060】
本発明の抗HIV感染症剤は、マクロファージを活性化し、その結果、生体の異物排除機能を向上させ、CD4陽性リンパ球数を増加し、そしてARCを治癒するものと考えられる。
Claims (4)
- 一般式(I)
- 一般式(I)で表される化合物の1日当たりの投与量が体重1kg当たり2μg〜100μgである請求項1に記載の抗HIV感染症剤。
- 一般式(I)で表される化合物の1日当たりの投与量が体重1kg当たり5μg〜40μgである請求項1に記載の抗HIV感染症剤。
- 経口用剤である請求項1〜3のいずれかに記載の抗HIV感染症剤。
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