JP4577906B2 - 勾配屋根の緑化構造 - Google Patents

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Description

この発明は、戸建て住宅等の勾配屋根を芝生等の植物によって緑化するための緑化構造に関する。
近年、都市部においては、街並みの景観向上、大気汚染やヒートアイランド現象の緩和等を目的として、建物の緑化対策が進められている。この建物の緑化対策としては、建物の屋上面において植物を植栽した屋上緑化、建物の外壁面において植物を植栽した壁面緑化が一般的であり、また戸建て住宅の勾配屋根において植物を植栽する勾配屋根緑化も見受けられる。
勾配屋根緑化に際しては、植栽部分の屋根勾配方向への滑りを防止するといった対策が必要となる。例えば、特許文献1には、植栽基盤の滑りを防止するアングルを備えた複数の緑化用下地板を、屋根下地面に取り付けた桟材に1つ1つ釘等によって固定しながら勾配方向に沿って順次並設して、それら緑化用下地板上に載せた植栽基盤に植物を植え付けるようにした勾配屋根の緑化構造が開示されている。また、特許文献2には、植栽基盤の滑りを防止するアングルを備えた複数の緑化用下地板を、屋根下地面に1つ1つ釘等によって固定しながら勾配方向に沿って順次並設して、それら緑化用下地板上に載せた植栽基盤に植物を植え付けるようにした勾配屋根の緑化構造が開示されている。
特開2004−150139号公報 特開平8−13713号公報
しかしながら、従来の勾配屋根の緑化構造においては、複数の緑化用下地板を、桟材や屋根下地面に1つ1つ釘等によって固定しながら勾配方向に沿って順次並設していたので、釘打ち箇所が多くなって緑化用下地板の取り付けに手間がかかり、施工性が悪いといった問題があった。また、緑化用下地板のアングルによって勾配方向に沿って流れる水が堰き止められて、植栽基盤に水が溜まり易くなり、植物の根腐れの原因となることもあった。さらに、植栽基盤の勾配方向への滑りはアングルによって規制することができるものの、これらの桁行方向へのずれに対しては十分な対策がなされておらず、例えば強風や激しい降雨によって植栽基盤が勾配方向へずれて局部的に盛り上がったり、場合によっては部分的にめくれ上がるといった危険性もあった。
一方、屋根葺き工法の1つとして、勾配方向に沿った複数の屋根板を、屋根下地面上において勾配方向に沿った通し吊子及びキャップを介して連結した瓦棒葺き屋根が知られている。このような瓦棒葺き屋根の連結構造を適用して、勾配方向に沿った複数の緑化用下地板を、屋根下地面上において通し吊子及びキャップを介して連結しながら桁行方向に沿って順次並設して、これら緑化用下地板に設置した植栽基盤に植物を植え付けるといった緑化構造も検討されている。
この場合には、複数の緑化用下地板を1つ1つ釘止めする構造のものと比較して、釘打ち箇所を少なくすることができるものの、逆に緑化用下地板同士の連結に手間がかかって依然として施工性が悪いといった問題があった。また、隣接する緑化用下地板間の隙間に通し吊子及びキャップが介在して、これらが植栽面にも露出して見栄えが悪くなることもあった。さらに、植栽基盤の勾配方向への滑りを防止するために、緑化用下地板にアングル等を取り付ける必要があるが、このアングルによって上記のように排水性が損なわれることもあった。
この発明は、上記不具合を解決するため、施工性及び排水性の向上を図ることができ、見栄えも良好な勾配屋根の緑化構造の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、この発明の勾配屋根の緑化構造は、勾配屋根の屋根下地面1上に、勾配方向に沿った複数の緑化用下地板2・・を桁行方向に並設するとともに、これら緑化用下地板2・・上に設置した複数の植栽基盤30・・に植物50を植え付けたものであって、前記緑化用下地板2・・は、勾配方向に沿った両端部を折曲してなる立上がり片6、6と、これら立上がり片6、6間において桁行方向に沿って立設されて、前記植栽基盤30・・の勾配方向への滑りを防止する滑り止め片7・・とを備え、隣接する緑化用下地板2、2の立上がり片6、6同士を重ね合わせて、これら立上がり片6、6に勾配方向に沿った連結キャップ20を被せることで、隣接する緑化用下地板2、2を連結するとともに、前記連結キャップ20・・と前記滑り止め片7・・との間に前記緑化用下地板2・・上を勾配方向に沿って流れる水を軒側へ逃がすための排水用の隙間26・・を確保し、前記連結キャップ20・・と前記滑り止め片7・・とによって囲まれた基盤設置領域25・・に前記植栽基盤30・・を設置し、前記連結キャップ20・・に、複数の押さえ部材40・・を上方から被せるようにして取り付け、これら押さえ部材40・・の押さえ片44、44によって、前記基盤設置領域25・・に設置した前記植栽基盤30・・の端部上面を押さえ付けるとともに、前記押さえ部材40・・に、前記押さえ片44、44よりも上側においてホース取付部43・・を設けて、これらホース取付部43・・に潅水ホース47を取り付けるようにしたことを特徴とする。
具体的に、前記植栽基盤30・・の上面が、前記連結キャップ20・・の略先鋭状の上端部と略同じ高さに位置するように、前記植栽基盤30・・を前記基盤設置領域25・・に設置している。
また、前記勾配屋根の屋根下地面1に複数の吊子10・・を取り付け、これら吊子10・・は、前記勾配屋根の屋根下地面1に固定される固定片12と、この固定片12から立ち上がって前記隣接する緑化用下地板2、2の立上がり片6、6によって挟み込まれる垂直片13と、この垂直片13の上端部から互いに相対する方向に延出して前記垂直片13を挟み込む立上がり片6、6の上端部に夫々係合する一対の係合片14、14とを備えている。
この発明の勾配屋根の緑化構造では、緑化用下地板を縦葺きして、立上がり片同士を重ね合わせて連結キャップによって連結するようになっているので、複数の緑化用下地板を1つ1つ釘止めする構造のものと比較して、釘打ち箇所を少なくすることができ、しかも瓦棒葺き屋根の連結構造と比較して、緑化用下地板同士の連結も連結キャップをワンタッチで被せるだけで簡単に行うことができ、これによって施工性の向上を図ることができる。
また、緑化用下地板には、予め立上がり片や滑り止め片が形成されていて、曲げ剛性が高められているので、長尺の緑化用下地板であってもその撓みやしなりを抑えることができ、運搬や敷設を良好に行って施工性をさらに高めることができる。
さらに、連結キャップと滑り止め片とによって格子状に区画形成された基盤設置領域に植栽基盤を設置しているので、植生基盤の勾配方向への滑り及び桁行方向へのずれを防止して、勾配屋根に対して植栽基盤を整然と安定して保持させることができる。しかも、連結キャップと滑り止め片との間には、排水用の隙間が確保されているので、植栽基盤に溜まった余剰水を排水用の隙間を通じて軒側へ速やかに逃がすことができ、排水性を向上して植物の根腐れ等を防止することができる。
また、連結キャップの上端部を略先鋭状として、この上端部の高さ位置に植栽基盤の上面を合わせるようにしているので、植栽面において連結キャップの上端部が目立つことはなく、植物を植え付けることで連結キャップの上端部は完全に隠され、見栄えを良好に維持することができる。
さらに、屋根下地面に取り付けた吊子によって、隣接する緑化用下地板の立上がり片を互いに重ね合わせた状態で係止して、緑化用下地板を位置決めしているので、連結キャップによる連結作業を簡単かつ確実に行うことができ、施工性をより一層高めることができる。
さらにまた、連結キャップに取り付けた押さえ部材によって、植栽基盤の上面を押さえ付けているので、植栽基盤の浮き上がりを防止してより安定した設置が可能となる。しかも、押さえ部材のホース取付部に潅水ホースを取り付けることで、新たにホース取付用の部材を設ける必要がなく、部品の共有化を図って施工費を削減することができる。
以下、この発明の一実施形態に係る勾配屋根の緑化構造を、その施工手順に従って図面に基づいて詳細に説明する。まず、図1に示すように、勾配屋根の屋根下地面1上に、勾配方向に沿った複数の緑化用下地板2・・を桁行方向に並設する。なお、屋根板地面1は、野地板3上にルーフィング4を敷設して防水処理を施すことによって構成された防水面である。また、図1中、Aは勾配方向、Bは桁行方向を示している。
各緑化用下地板2は、例えば鋼板製であって、その板本体5の勾配方向に沿った両端部を折曲することによって立上がり片6、6が形成されている。なお、これら立上がり片6、6の上端部は、互いに近接する方向に鋭角状に折り返されている。また、緑化用下地板2には、立上がり片6、6間において勾配方向に間隔をあけて桁行方向に沿った複数の滑り止め片7・・が立設されている。このように、緑化用下地板2は、立上がり片6、6や滑り止め片7・・を有していることから、長尺の緑化用下地板2であってもその撓みやしなりを抑えることができ、運搬や敷設を良好に行うことができる。
緑化用下地板2・・の並設に際しては、予め屋根下地面1に対して緑化用下地板2・・の割り付けを行い、その割り付けに応じて屋根下地面1に吊子10・・を取り付けておく。各吊子10は、例えば金属製であって、図2に示すように、屋根下地面1にビス止め固定されるビス孔11、11付きの固定片12と、この固定片12から立ち上がった垂直片13と、この垂直片13の上端部から互いに相対する方向に鋭角状に折り返された一対の係合片14、14を備えている。
そして、隣接する緑化用下地板2、2の立上がり片6、6によって吊子10の垂直片13を挟み込みながら、それら立上がり片6、6の上端部に係合片14、14を夫々被せるように係合させることで、緑化用下地板2・・が、吊子10・・によって係止された状態で割り付け位置に位置決めされる。このとき、隣接する緑化用下地板2、2の立上がり片6、6同士は、互いに重ね合わされた状態となっている。そして、これら立上がり片6、6の上端部間には、防止材15が貼り付けられて、重ね合わされた立上がり片6、6間の隙間からの水の浸入が防止され、雨仕舞いを良好にしている(図5参照)。
続いて、図3に示すように、隣接する緑化用下地板2、2の互いに重ね合わされた立上がり片6、6に、勾配方向に沿った連結キャップ20を被せることで、隣接する緑化用下地板2、2を連結する。このとき、吊子10・・も連結キャップ20によって覆い隠される。
各連結キャップ20は、例えば金属製であって、図4に示すように、その上端部を構成する略先鋭状の頂片21と、この頂片21の下端部から下方へ延出した一対の側片22、22とからなり、側片22、22は、その中間部が互いに近接する方向にく字状に折曲され、その下端部が互いに近接する方向に折り返しされている。この連結キャップ20を、緑化用下地板2、2の立上がり片6、6に対して上方から被せると、側片22、22が立上がり片6、6の折り返し部に当接して互いに離間する方向に押し広げられ、立上がり片6、6の折り返し部が頂片21内に納まったときに、側片22、22が元の状態に復帰するようになっている。この状態において、図5に示すように、立上がり片6、6の折り返し部が連結キャップ20の側片22、22の折曲部に引っ掛かって、連結キャップ20の抜けが防止されるようになっている。なお、図5において、24は鋼製母屋である。
このようにして複数の連結キャップ20・・を取り付けることで、図3に示すように、緑化用下地板2・・上に、連結キャップ20・・と滑り止め片7・・とによって囲まれた基盤設置領域25・・が格子状に区画形成される。また、連結キャップ20・・と滑り止め片7・・との間には、緑化用下地板2・・上を勾配方向に沿って流れる水を軒側へ逃がすための排水用の隙間26・・が確保されている。なお、排水用の隙間26・・は、連結キャップ20・・と滑り止め片7・・との間だけでなく、例えば滑り止め片7・・の桁行方向の中間部にも形成しても良い。このように、排水用の隙間26・・を確保することで、例えば激しい降雨や過剰給水等によって余剰水が生じた場合でも、排水用の隙間26・・を通じて余剰水を軒側へ速やかに排出することができ、植物の根腐れ等を防止することができる。
そして、図6に示すように、例えば人工軽量土壌等からなる植栽基盤30・・を基盤設置領域25・・に夫々設置する。このとき、植栽基盤30・・の上面が、連結キャップ20・・の略先鋭状の上端部と略同じ高さに位置し、植栽面において連結キャップ20・・の上端部が目立たなくなっている。
植栽基盤30・・を設置した後には、図7に示すように、連結キャップ20・・に勾配方向に間隔をあけて複数の押さえ部材40・・を取り付けて、植栽基盤30・・の上面を押さえ付けるようにしている。各押さえ部材40は、例えば金属製であって、図8に示すように、連結キャップ20を挟み込む一対の挟持片41、41と、これら挟持片41、41の上端部から上方へ延出して互いに重ね合わされた一対の垂直片42、42と、これら垂直片42、42の上端部から互いに相対する方向へ延出した複数の水平片43・・と、垂直片42、42に取り付けられた一対の略L字形の押さえ片44、44とからなる。挟持片41、41は、連結キャップ20の略相似形に形成されており、連結キャップ20に対して上方から被せるようにして取り付けられるようになっている。押さえ片44、44は、その垂直部44a、44aが垂直片42、42にボルト45、45及びナット46、46によって固定されて、水平部44b、44bが互いに相対する方向へ張り出している。水平片43・・は、図9に示すように、潅水ホース47を取り付けるホース取付部とされている。
このように基盤設置領域25・・に植栽基盤30・・を設置し、しかもその上面を押さえ部材40・・によって押さえ付けることで、植生基盤30・・の勾配方向への滑り及び桁行方向へのずれ、さらには浮き上がりを防止して、勾配屋根に対して植栽基盤30・・を整然と安定して保持させることができる。なお、植栽基盤30・・を設置した後に、押さえ部材40・・を取り付けるだけでなく、押さえ部材40・・を取り付けた後に、植栽基盤30・・を設置するようにしても良い。
続いて、図10及び図11に示すように、植栽基盤30・・上に、例えば芝類やセダム類、多年草等の植物50を植え付ける。この植え付けは、植栽基盤30・・の設置前に予め行っておいても良い。このように植物50を植え付けることで、連結キャップ20・・の上端部は完全に隠され、また押さえ部材40・・や潅水ホース47の一部も植物50によって埋もれて外部から見え難くなり、見栄えを良好に維持することができる。
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
この発明の一実施形態に係る勾配屋根の緑化構造における緑化用下地板の敷設時の状態を示す斜視図である。 吊子の斜視図である。 連結キャップの取り付け時の状態を示す斜視図である。 連結キャップの斜視図である。 連結キャップによる連結状態を示す縦断面図である。 植栽基盤の設置時の状態を示す斜視図である。 押さえ部材の取り付け時の状態を示す斜視図である。 押さえ部材の斜視図である。 潅水ホースの取り付け時の状態を示す斜視図である。 緑化構造の縦断面図である。 緑化構造の斜視図である。
符号の説明
1・・屋根下地面、2・・緑化用下地板、6・・立上がり片、7・・滑り止め片、10・・吊子、12・・固定片、13・・垂直片、14・・係合片、20・・連結キャップ、25・・基盤設置領域、26・・隙間、30・・植栽基盤、40・・押さえ部材、43・・ホース取付部、47・・潅水ホース、50・・植物

Claims (3)

  1. 勾配屋根の屋根下地面(1)上に、勾配方向に沿った複数の緑化用下地板(2)・・を桁行方向に並設するとともに、これら緑化用下地板(2)・・上に設置した複数の植栽基盤(30)・・に植物(50)を植え付けた勾配屋根の緑化構造であって、前記緑化用下地板(2)・・は、勾配方向に沿った両端部を折曲してなる立上がり片(6)(6)と、これら立上がり片(6)(6)間において桁行方向に沿って立設されて、前記植栽基盤(30)・・の勾配方向への滑りを防止する滑り止め片(7)・・とを備え、隣接する緑化用下地板(2)(2)の立上がり片(6)(6)同士を重ね合わせて、これら立上がり片(6)(6)に勾配方向に沿った連結キャップ(20)を被せることで、隣接する緑化用下地板(2)(2)を連結するとともに、前記連結キャップ(20)・・と前記滑り止め片(7)・・との間に前記緑化用下地板(2)・・上を勾配方向に沿って流れる水を軒側へ逃がすための排水用の隙間(26)・・を確保し、前記連結キャップ(20)・・と前記滑り止め片(7)・・とによって囲まれた基盤設置領域(25)・・に前記植栽基盤(30)・・を設置し、前記連結キャップ(20)・・に、複数の押さえ部材(40)・・を上方から被せるようにして取り付け、これら押さえ部材(40)・・の押さえ片(44)(44)によって、前記基盤設置領域(25)・・に設置した前記植栽基盤(30)・・の端部上面を押さえ付けるとともに、前記押さえ部材(40)・・に、前記押さえ片(44)(44)よりも上側においてホース取付部(43)・・を設けて、これらホース取付部(43)・・に潅水ホース(47)を取り付けるようにしたことを特徴とする勾配屋根の緑化構造。
  2. 前記植栽基盤(30)・・の上面が、前記連結キャップ(20)・・の略先鋭状の上端部と略同じ高さに位置するように、前記植栽基盤(30)・・を前記基盤設置領域(25)・・に設置した請求項1記載の勾配屋根の緑化構造。
  3. 前記勾配屋根の屋根下地面(1)に複数の吊子(10)・・を取り付け、これら吊子(10)・・は、前記勾配屋根の屋根下地面(1)に固定される固定片(12)と、この固定片(12)から立ち上がって前記隣接する緑化用下地板(2)(2)の立上がり片(6)(6)によって挟み込まれる垂直片(13)と、この垂直片(13)の上端部から互いに相対する方向に延出して前記垂直片(13)を挟み込む立上がり片(6)(6)の上端部に夫々係合する一対の係合片(14)(14)とを備えた請求項1又は2記載の勾配屋根の緑化構造。
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