JP4574959B2 - α−MSH抑制用の皮膚外用剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−MSH阻害剤及びそれを含有してなる化粧料などに好適な美白用の皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
白く美しい肌は万人が欲するものであり、この様な肌の具現を一大テーマに、種々の美白化粧料が開発されてきた。この様な美白に関する、メカニズムとしては、以前はチロシナーゼ阻害作用が中心に論議されていたが、近年に於いてはこれに加えて、チロシナーゼ関連タンパクの生成阻害作用、ピンクアイダイリュートジーン発現阻害作用、α−MSHの受容体への結合阻害作用等のメカニズムが知られるようになってきている。しかしながら、これらのメカニズムについてのそれぞれの作用を有する物質については未だ多くは知られていない。これらの内、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連蛋白、ピンクアイダイリュートジーンの発現異常が直接アルビノへ関与するのに比して、α−MSHのレセプター発現異常、言い換えれば、α−MSHのそのレセプターへの結合不全は、北部ヨーロッパの赤毛、皮膚の白色化現象であるように、その関与する色素異常症が異なっていることが推定される。その一方、チロシナーゼの発現抑制に優れる物質を投与しても改善しない色黒があることから、前記チロシナーゼ関連蛋白、ピンクアイダイリュートジーンの発現抑制作用或いはα−MSHの結合阻害作用等新規メカニズムを有する有効成分を含有する美白用の皮膚外用剤の開発が望まれていた。中でも、炎症或いは免疫が関与する色黒(色素異常)に対応した美白用の皮膚外用剤の開発が望まれていた。
【0003】
一方、マメ科の植物であるクララ(苦参)の極性溶媒抽出物やその溶媒除去物を化粧料に含有させること及びこれらがチロシナーゼ阻害をメカニズムとするくすみ等の色黒に対して改善効果を有していることは知られていたが、α−MSHとの関係は全く知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、α−MSHの結合抑制剤を提供し、α−MSHの関与するくすみなどの色素異常を改善する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この様な状況に鑑みて、α−MSHの阻害剤を求めて鋭意研究努力を重ねた結果、マメ科の植物であるクララ(苦参)のエッセンスにその様な作用を見出した。更に、このものを皮膚外用剤に含有させたところ、α−MSH関与のくすみなどの色素異常に有効であることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、クララのエッセンスからなるα−MSH阻害剤とこれを含有するα−MSH関与の美白用の皮膚外用剤を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
(1)本発明のα−MSH阻害剤
本発明のα−MSH阻害剤はマメ科クララのエッセンスよりなる。マメ科の植物であるクララは漢方生薬苦参(クジン)の基源植物であり、漢方生薬としてはその根の部分の乾燥物が使用されている。本発明に於いてはその植物体の一部乃至は全部が使用できるが、好ましい部位はやはり根の部分である。本発明において、エッセンスとは、植物体それ自身、植物体を乾燥、細切、粉砕など加工した加工物、加工物に溶媒等を加えて抽出した抽出物、抽出物の溶媒を除去した溶媒除去物、抽出物或いはその溶媒除去物を液液抽出したり、シリカゲルやイオン交換樹脂、分配用の担体を充填したカラムによるカラムクロマトグラフィーなどで精製した分画・精製物等の総称を意味する。本発明のα−MSH阻害剤としては、抽出物及び/又はその溶媒除去物或いはその分画精製物を用いるのが好ましい。抽出物としては、極性の溶媒による抽出物が好ましく、例えば、水、エタノール、1,3−ブタンジオール等のアルコール類、テトラヒドロフランやジエチルエーテルなどのエーテル類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、クロロホルムや塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類等から選ばれる1種乃至は2種以上が好適に例示できる。水及び/又はアルコールが特に好ましい溶媒である。抽出は、植物体乃至はその加工物に1〜10倍量の溶媒を加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数10分乃至は数時間浸漬し、必要に応じて濾過などの不溶物の除去作業を行えばよい。溶媒の除去は減圧濃縮乃至は減圧濃縮した後凍結乾燥等を行えばよい。又、精製手段としてはカラムクロマトグラフが好ましく例示でき、おおざっぱなフラクショニングで精製しうる、イオン交換樹脂を充填したカラムによる分画が好適に例示できる。中でも、ダイアイオン(登録商標)HP−20(三菱化成株式会社製)を担体とし、水−アルコールを溶出溶媒に用いると、イオン交換作用のみならず、吸着クロマトグラムも兼ねて行えるので特に好ましい。本発明に於いては、かかるエッセンスを唯1種を用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明のα−MSH関与の美白用の皮膚外用剤における本発明のα−MSH阻害剤の好ましい含有量は、その目的・剤形により多少異なるが、大凡の剤形を通して0.01〜10重量%であり、更に好ましくは0.05〜1重量%である。これは、少なすぎると阻害作用が得られない場合があり、多すぎると重要な他のα−MSHの作用までも抑制してしまう場合があるからである。
【0007】
(2) 本発明のα−MSH関与の美白用の皮膚外用剤
本発明のα−MSH関与の美白用の皮膚外用剤は上記α−MSH阻害剤を含有することを特徴とする。本発明で言う、皮膚外用剤とは、皮膚上に外用で適用される組成物の総称であり、例えば、化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用消毒剤、皮膚外用殺菌剤等が例示でき、これらの内では、化粧料と皮膚外用医薬が好ましく例示でき、中でも化粧料が特に好適に例示できる。これは、本発明のα−MSH阻害剤の作用が極めてマイルドである為、日常的な使用が可能であるからである。ここで、α−MSH関与の色素トラブルとしては、炎症或いは免疫反応が関与するもの等が例示できる。この様な色素トラブルには、通常のアスコルビン酸乃至はその誘導体などにより緩和することのできないくすみ等が例示できる。本発明の皮膚外用剤に於いては、上記α−MSH阻害剤が、α−MSHとそのレセプターの結合を阻害するため、色素異常以外にもこのものが関与する好ましくない生理作用を阻害することができる。この様な生理作用としては化学物質に対する過敏な反応や炎症反応が例示できる。この為、本発明のα−MSH関与の美白用の皮膚外用剤は炎症反応が起こりやすい夏の時期の化粧料として有用である。又、通常の化粧料などの皮膚外用剤が使用しにくい、敏感肌の人に適用しても、その抗炎症作用のためトラブルを起こすことは通常の化粧料に比較して極めて少ない。この様な目的の皮膚外用剤も本発明の皮膚外用剤として好適である。
【0008】
本発明の皮膚外用剤では、上記本発明のα−MSH阻害剤以外に、通常化粧料、皮膚外用医薬などの皮膚外用剤で使用される任意の成分を含有することができる。この様な任意の成分としては、例えば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス,オレイン酸オクチルドデシル等のエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、リチノレイン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を含有することができる。これらの必須の成分と任意の成分とを常法に従って処理することにより、本発明の皮膚外用剤を得ることができる。
【0009】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【0010】
<実施例1>
マメ科クララの根の部分(苦参)10Kgに30体積%エタノール水溶液20lを加えて、攪拌しながら3時間加熱還流し、室温まで冷却した後、濾紙を用いて濾過し、濾液を1lに減圧濃縮した後、これに10体積%のエタノール水溶液を加え、ダイアイオン(登録商標)HP−20を充填したカラムに通し、10体積%エタノール水溶液30l、次いで30体積%エタノール水溶液30lで更に洗浄し、95体積%エタノール水溶液40lで溶出させた後、減圧濃縮、乾固し、3.3Kgの本発明のα−MSH阻害剤1を得た。更にこのものについて、α−MSHに対する作用を、培養細胞(メラノーマB−16細胞)を用いて、サイクリックAMPの産生量を指標に検討した。細胞は10%FBS加MEM(イーグルの最少培地)で5%炭酸ガス湿度95%37℃の条件で96ウェルのプレートで細胞10個/ウェル、培地160μl/ウェルの条件で1晩培養した。これにα−MSH(1×10-7M)及びα−MSH阻害剤1の種々の濃度を加え、アマシャム社製のバイオトレイク・セルラー・コミュニケーション・アッセーcAMPエンザイムイムノアッセイ・システム(コードRPN225)を用いて、450nmの分光光度として測定した。対照としてはα−MSH、α−MSH阻害剤を共に添加しないものを用い、このcAMP濃度を100として、それぞれのcAMP比濃度を測定した。ここで、cAMPの産生量を指標としたのは、細胞がα−MSHに作用するとcAMPの産生を促す作用が知られているからである。結果を表1に示す。これより本発明のα−MSH阻害剤は優れたα−MSHの活性阻害作用を示すことがわかる。
【0011】
【表1】
Figure 0004574959
【0012】
<実施例2>
下記に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤であるローション(化粧料)を作成した。即ち、処方成分を攪拌・可溶化し、化粧水を得た。このものを今までビタミンCを有効成分とする美白化粧料を使用していてもくすみが改善しなかった人に朝・晩2回3週間使用してもらったところ、著しいくすみの改善を認めた。
【0013】
グリセリン 5 重量部
1,3−ブタンジオール 5 重量部
エタノール 8 重量部
ローヤルゼリー 0.1重量部
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1重量部
α−MSH阻害剤1 0.1重量部
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1重量部
メチルパラベン 0.2重量部
水 81.4重量部
【0014】
参考例1
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤(化粧水)である、乳液を作成した。即ち、イ、ロ、ハをそれぞれ70℃に加熱して、イにロを加え中和し、これにハを徐々に加え乳化し、ホモジナイザーで粒子を整えた後、攪拌冷却し乳液を得た。このものをアトピー性皮膚炎によるくすみに悩む人に6週間朝・晩2回使用してもらったところ、著しい炎症とくすみの改善を観察した。
【0015】

水 47 重量部
メタクリル酸(C10-30)アルキル・アクリル酸ポリマー 0.3重量部
1,2−ペンタンジオール 5 重量部
1,3−ブタンジオール 5 重量部
α−MSH阻害剤1 0.5重量部

水 30 重量部
水酸化カリウム 0.2重量部

スクワラン 8 重量部
ホホバ油 4 重量部
グリセリルモノウンデシレート 2 重量部
【0016】
参考例2
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、乳液(皮膚外用医薬;抗真菌剤)を作成した。即ち、イ、ロ、ハをそれぞれ70℃に加熱して、イにロを加え中和し、これにハを徐々に加え乳化し、ホモジナイザーで粒子を整えた後、攪拌冷却し乳液を得た。このものをビラン性のメンタグロファイトによる水虫に悩む人に6週間1日1回使用してもらったところ、水虫の治癒と炎症部位の色沈の改善を観察した。
【0017】

水 47 重量部
メタクリル酸(C10-30)アルキル・アクリル酸ポリマー 0.3重量部
1,2−ペンタンジオール 5 重量部
1,3−ブタンジオール 5 重量部
α−MSH阻害剤1 0.5重量部

水 30 重量部
水酸化カリウム 0.2重量部

スクワラン 8 重量部
ホホバ油 3 重量部
グリセリルモノウンデシレート 2 重量部
ビフォナゾール 1 重量部
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、α−MSHの阻害剤を提供し、α−MSHの関与するくすみなどの色素異常を改善する皮膚外用剤を提供することができる。

Claims (4)

  1. マメ科クララ(クジン)より、30体積%エタノール水溶液で抽出したエッセンスをダイアイオン(登録商標)HP−20を充填したカラムに通し、カラムに吸着した成分を、95体積%エタノール水溶液で溶出させ、減圧濃縮、乾固して得たα−MSH阻害剤を皮膚外用剤に含有せしめることを特徴とする、α−MSH関与の美白用の皮膚外用剤の製造方法。
  2. α−MSHの受容体への結合が起因する色素異常対応用のものであることを特徴とする請求項1記載のα−MSH関与の美白用の皮膚外用剤の製造方法。
  3. 炎症及び/又は免疫関与の色素異常対応用のものであることを特徴とする請求項1又は2記載のα−MSH関与の美白用の皮膚外用剤の製造方法。
  4. 化粧料であることを特徴とする請求項1〜3何れか1項記載のα−MSH関与の美白用の皮膚外用剤の製造方法。
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